説明

二成分系開始剤及びそれを利用した重合性組成物

【課題】 重合後の変色がなく、水の存在下でも組成物の良好な硬化性を持つ二成分系開始剤及びそれを利用した重合性組成物を提供する。
【解決手段】 (a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(b)芳香族スルフィン酸化合物,(c)第3級アミン化合物,(d)水から成る、(メタ)アクリレート化合物を硬化させるための二成分系開始剤及びそれを用いた重合性組成物とする。特に(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(メタ)アクリレート化合物を含む第1成分と、(b)芳香族スルフィン酸化合物,(c)第3級アミン化合物,(d)水を含む第2成分から構成される重合性組成物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2種の液体やペースト、または粉と液とを混和して使用する(メタ)アクリレート化合物を用いた二成分系の重合性組成物の開始剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性を有するメタクリレートやアクリレートのモノマー、それらのオリゴマー及びプレポリマーを含有する重合性組成物を常温で重合させる方法は、化学重合触媒として有機過酸化物−芳香族第3級アミンを組み合わせて使用する方法が古くから用いられている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は重合性組成物に配合する有機過酸化物と芳香族第3級アミンの量を加減すると共に、重合禁止剤を併用することによって重合開始時間を調整したり重合前の組成物の保存安定性を高めたりしている。しかしながら、この開始剤系での芳香族第3級アミンは重合後の硬化体を時間と共に変色させてしまうという問題があった。また従来の有機過酸化物−芳香族第3級アミンの組み合わせによる重合開始剤系は、口腔内のように水分の多い状況で使用すると、(メタ)アクリレート化合物の充分な重合硬化を得られないという問題があった。
【0003】
一方でトリアルキルボランの酸化を用いた開始材系が水分の多い状況で使用しても充分な硬化を得ること可能であることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしトリアルキルボランは芳香族第3級アミンよりも著しく酸化され易いため、重合前の組成物中に予め含有させておくことができないという大きな欠点があった。そのため、(メタ)アクリレート化合物とは別の容器にトリアルキルボランを保存させておき、使用する際にその都度、組成物へ添加して使用しなければならず保管や操作が面倒であった。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−246514号公報
【特許文献2】特開平10−114615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、重合性組成物が重合後に変色することなく、口腔内のように水分の多い状況でも良好な重合硬化性を持つ二成分系開始剤及びそれを利用した重合性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は前期課題を解決するために鋭意検討した結果、過酸化物として水と相溶または水に溶解する有機過酸化物、還元性物質として芳香族スルフィン酸化合物、促進剤として第3級アミン化合物を用い、過酸化物を溶解して活性化するために水を配合すれば、重合後の変色もなく、かつ水の存在下であっても優れた重合硬化性を有する二成分系開始剤とすることができ、それを利用した重合性組成物を得ることが可能であることを見出して本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(b)芳香族スルフィン酸化合物,(c)第3級アミン化合物,(d)水から成る、(メタ)アクリレート化合物を重合硬化させるための二成分系開始剤である。本発明に係る二成分系開始剤を利用した重合性組成物には、第1の態様として(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(メタ)アクリレート化合物を含む第1成分と、(b)芳香族スルフィン酸化合物,(c)第3級アミン化合物,(d)水を含む第2成分から構成される重合性組成物がある。また第2の態様として、(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(b)芳香族スルフィン酸化合物,反応性充填材を含む粉末成分と、(c)第3級アミン化合物,(d)水,酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む液成分から構成される重合性組成物がある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る二成分系開始剤及びそれを利用した重合性組成物は、重合後の変色もなく、水の存在下でも組成物の良好な重合硬化性を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る二成分系開始剤で用いる(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物は、ペルオキソ二硫酸カリウム,ペルオキソ二硫酸ナトリウム,ペルオキソ二硫酸アンモニウム,tert-ブチルハイドロパーオキサイド,ステアロイルパーオキサイド,コハク酸パーオキサイド,過酸化水素ポリビニルピドリドン複合体等が挙げることができる。これ等はそれぞれ一種または二種以上を混合して使用してもよい。特に水への溶解性と優れた重合特性から、ペルオキソ二硫酸カリウム,tert-ブチルハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0010】
(b)芳香族スルフィン酸化合物は、従来から使用されているものが使用可能である。即ち、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホニルフルオライド、o−トルエンスルホニルイソシアネート、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホニルイミダゾール、p−トルエンスルホニルシアニド、2−(p−トルエンスルホニル)アセトフェノン、p−トルエンスルホニル−N−ジエチルアミド、α−N,α−トルエンスルホニル−N−アルギニン、α−N,p−トルエンスルホニル−L−アルギニンメチルエステル、p−トルエンスルホニルメチルイソシアネート、p−トルエンスルホニル−N−メチル−N−ニトロサミド、N−(p−トルエンスルホニル)−L−フェニルアラニン、N−p−トルエンスルホニル−L−フェニルアラニルクロライド、p−トルエンスルホニルアセトニトリル、2ー(p−トルエンスルホニル)アセトフェノン、トルエン−3,4−ジスルホニルクロライド、ベンゼンスルホンアミド、ベンゼンスルホヒドロキサンミン酸、ベンゼンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルイソシアネート、ベンゼンスルホンアニリド、ベンゼンスルホンクロラミドナトリウム、ベンゼンスルホンジクロラミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニル−N−メチルアミド、2−フェニルスルホニルアセトフェノン、ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−スルホニルジフェノール。スルファピリジン、スルファエアゾール、スルファメチゾール、エチルベンゼンスルホニルクロライド、ニトロベンゼンスルホニルクロライド、ニトロベンゼンスルホニルフルオライド等が挙げられる。なお、これら有機芳香族化合物は含水塩であってもよい。
【0011】
(c)第3級アミン化合物は、芳香族第3級アミン,脂肪族第3級アミン等が有効である。具体的には、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、トリエチルアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の一般的なものが使用可能である。これ等はそれぞれ一種または二種以上を混合して使用してもよい。
【0012】
(d)水は、(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物を、相溶または溶解して活性化させるために配合されている。
【0013】
(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリレートモノマー,オリゴマー,プレポリマーが従来から使用されているものを特に制限無く使用可能である。その一例を挙げると、一般に不飽和ポリエステル等の不飽和二重結合を有する化合物等が用いられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(メタ)アクリロキシフェニルプロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、また分子中にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、特にジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート等がある。これらのメタクリレート及びアクリレートは単独であるいは二種以上を混合して使用することができ、オリゴマーやプレポリマーとしても使用可能である。
【0014】
本発明では後述する態様にあわせて(メタ)アクリレート化合物として酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を選択して使用してもよい。酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、重合性組成物に歯質や歯科用修復材料であるジルコニア及びアルミナ等のセラミックス、または貴金属を含む合金への接着特性を付与する効果がある。酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、リン酸基またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、1分子中にリン酸基またはカルボキシル基を1個または複数個有するものが利用できる。リン酸基はカルボキシル基よりも強い酸性を示すことから、歯面のスメアー層の溶解や歯質脱灰の効果が高く、特にエナメル質に対して高い接着特性の向上効果を発揮する。リン酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中にリン酸基を1個または複数個有する重合性モノマーであり、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス(メタ)アクリロキシエチルフォスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの6−ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物等が挙げられる。中でも10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが接着特性及び自身の安定性の点から特に好ましい。これらのリン酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で使用したり、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸無水物、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。中でも4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸,4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物が接着特性の点から特に好ましい。これらのカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で使用しても二種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明に係る二成分系開始剤を利用した重合性組成物としては、第1の態様として、(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(メタ)アクリレート化合物を含む第1成分と、(b)芳香族スルフィン酸化合物,(c)第3級アミン化合物,(d)水を含む第2成分から構成される2液や2ペースト型の二成分系開始剤を利用した重合性組成物がある。この重合性組成物は歯科用レジンセメントとして使用可能である。口腔内の水分に影響されず優れた接着特性があり、保存性にも優れた重合性組成物を得ることが可能である。
【0017】
更に前記の第1の態様である重合性組成物に対して、従来の歯科用セメントを複合させた重合性組成物も歯科用セメントとして有用である。即ち、(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,反応性充填材を含む粉末成分,(メタ)アクリレート化合物を含む第1成分と、(b)芳香族スルフィン酸化合物,(c)第3級アミン化合物,(d)水,α−β不飽和モノカルボン酸またはα−β不飽和ジカルボン酸の重合体を含む第2成分から構成される2液や2ペースト型の二成分系開始剤を利用した重合性組成物である。必要に応じて第1成分か第2成分の一方あるいは両方に反応性を示さない充填材を配合することもできる。
【0018】
本発明に係る二成分系開始剤を利用した重合性組成物としては、第2の態様として、(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(b)芳香族スルフィン酸化合物,反応性充填材を含む粉末成分と、(c)第3級アミン化合物,(d)水,(メタ)アクリレート化合物を含む液成分から構成される粉液型の重合性組成物がある。この重合性組成物は粉と液から成る組成物であり、第1の態様と同様に口腔内の水分に影響されず優れた接着特性があり、保存性にも優れた重合性組成物である。この態様の場合にも、歯科用セメントの特徴を利用するために、必要に応じて粉末成分か液成分の一方あるいは両方に反応性を示さない充填材を配合してもよい。また、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物に替えてあるいは加えてα−β不飽和モノカルボン酸またはα−β不飽和ジカルボン酸の重合体を使用してもよい。
【0019】
本発明で用いることがあるα−β不飽和モノカルボン酸またはα−β不飽和ジカルボン酸の重合体は、アクリル酸,メタクリル酸,2−クロロアクリル酸,3−クロロアクリル酸,アコニット酸,メサコン酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸,グルタコン酸,シトラコン酸の中から選ばれた1種以上を含む共重合体または単独重合体であって、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を含まない重量平均分子量5,000〜40,000の重合体であるものが好ましい。重量平均分子量が5,000未満の場合は硬化体の強度が低くなり易く、また歯質への接着力も低下する傾向があり、40,000を超える場合には、練和時の粘度が高過ぎて練和が難しくなる傾向がある。
【0020】
反応性を示さない充填材は重合性組成物の強度を高めるために配合され、反応性を有する充填材であれば更にセメント反応を示すことで従来の歯科用セメントの優れた特性を使用することができる。反応性を示さない充填材としては、無水ケイ酸,バリウムガラス,アルミナガラス,カリウムガラス等のガラス類、リン酸カルシウム,長石,ヒュームドシリカ,ケイ酸アルミニウム,ケイ酸カルシウム,炭酸マグネシウム,含水ケイ酸,含水ケイ酸カルシウム,含水ケイ酸アルミニウム,石英等の粉末がある。これらの充填材は(メタ)アクリレートと化学的に結合させるために、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,ビニルトリクロロシラン,ビニルトリエトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリアセトキシシラン,ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン等のシランカップリング剤で表面処理されていてもよい。また、前期のフィラーを予め(メタ)アクリレート化合物と混合して重合硬化させた後、粉砕して作製した有機無機複合フィラーも使用することができる。中でも、無水ケイ酸、含水ケイ酸、含水ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウムは、長期間保存した場合でも重合前の重合性組成物がゲル化するのを防止する効果がある。
【0021】
反応性を有する充填材は、組成物中のα−β不飽和モノカルボン酸またはα−β不飽和ジカルボン酸の重合体や酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の酸基を水の存在下でセメント反応を起こすための充填材である。反応性を有する充填材としては、フルオロアルミノシリケートガラスや合成ゼオライトがある。
【0022】
更に本発明に係る重合性組成物には、必要に応じて通常用いられている光重合開始剤、増粘剤,顔料,安定剤及び/または抗菌剤等を配合することも可能である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
表1及び表2に示した配合で重合性組成物を製造した。2ペースト型の重合性組成物は、第1ペーストと第2ペーストを1:1の重量比で混合して使用した。粉液型の重合性組成物は粉末と液とを2:1の重量比で混合して使用した。
表中の略号は以下の通りである。
【0025】
UDMA:ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
4−META:4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物
MDP:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
石英粉末:粒子径5μm以下(龍森社製)
アエロジル(ヒュームドシリカ)粉末:1次粒子径:10〜20nm(日本アエロジル社製)
アエロジル(酸化アルミニウム)粉末:1次粒子径:10〜20nm(日本アエロジル社製)
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
フルオロアルミノシリケートガラス粉末I,II及びIIIの配合を表1に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
フルオロアルミノシリケートガラス粉末I及びIIIについては、原料を充分混合し1200℃の高温電気炉中で5時間保持しガラスを溶融させた。溶融後冷却し、ボールミルを用いて10時間粉砕し、200メッシュ(ASTM)ふるいを通過させた後の粉末をフルオロアルミノシリケートガラス粉末とした。フルオロアルミノシリケートガラス粉末IIについては、1100℃で溶融した以外はフルオロアルミノシリケートガラス粉末I及びIIIと同様の操作を行った。
【0031】
<変色試験方法>
JIS T6514:2005(歯科充(てん)填用コンポジットレジン)4.4 色調安定性に準拠し、37℃の蒸留水中に7日間浸漬させたサンプルの、浸漬前後の色調変化(ΔE)を測定した。色調測定はMINOLTA社製 SPECTROMETER CM-3610dを用いて行った。なおΔEが小さいほど色調変化が小さいことを意味する。結果を表1及び表2に示す。
【0032】
<引張り接着試験方法>
水の存在下での接着力を評価した。牛抜去歯を#600の耐水研磨紙にて研磨し、被着面をプラスチックテープにて直径3mmに面積規制した。引張り冶具用のステンレスロッドに練和した重合性組成物を塗布し、面積規制された牛歯に圧接した。37℃、湿度100%の恒温器中に1時間保管し、その後37℃の蒸留水中に浸漬した。練和開始から24時間後に、クロスヘッドスピード1mm/min.にて引張り試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0033】
<曲げ試験方法>
JIS T6609−2:2005(歯科用ウォーターベースセメント−第2部:レジン添加型セメント)5.12 曲げ試験に準拠して曲げ試験を行った。結果を表1及び表2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(b)芳香族スルフィン酸化合物,(c)第3級アミン化合物,(d)水から成る、(メタ)アクリレート化合物を重合硬化させるための二成分系開始剤。
【請求項2】
(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(メタ)アクリレート化合物を含む第1成分と、
(b)芳香族スルフィン酸化合物,(c)第3級アミン化合物,(d)水を含む第2成分から構成される請求項1に記載の二成分系開始剤を利用した重合性組成物。
【請求項3】
(a)水と相溶または水に溶解する過酸化物,(b)芳香族スルフィン酸化合物,反応性充填材を含む粉末成分と、
(c)第3級アミン化合物,(d)水,酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む液成分から構成される請求項1に記載の二成分系開始剤を利用した重合性組成物。

【公開番号】特開2010−184997(P2010−184997A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29599(P2009−29599)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】