説明

二次元コードの形成方法および該方法により二次元コードの形成された装飾品

【課題】 金属面に剥がれにくく、また読み取り可能な程度に鮮明な二次元コードを形成することができる二次元コードの形成方法および該方法により二次元コードの形成された装飾品を提供する。
【解決手段】 塗装工程(S11)と、刻印工程(S12)と、塗膜剥離工程(S13)とを含む、金属面に二次元コードを形成する二次元コードの形成方法であって、塗装工程(S11)において金属面に有色の塗膜を形成し、刻印工程(S12)において塗膜から金属面に向けて刻印を施し、二次元コードを形成する特定のセル部分の明暗模様で構成された二次元コードを形成し、塗膜剥離工程(S13)において、少なくとも前記形成された二次元コードを構成する明暗模様の刻印された明部分または暗部分のどちらか一方の塗膜を剥離することを特徴とする二次元コードの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元コードの形成方法および該方法により二次元コードの形成された装飾品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、氏名、生年月日、血液型等の個人情報を彫りこんだ金属素材の指輪、ペンダント、キーホルダ等の装飾品が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、人やペットの画像を刻印した装身具用タグが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
一方で近年、QRコード(登録商標)等の、明暗模様の単位セルがマトリックス状に配置された二次元コードが知られており(図4)、この二次元コードは縦、横二方向に情報を持つことで、従来のバーコード以上の情報を記録させることができ、また、同じ情報量のバーコードと比べて、省スペース化が可能であるため、生産・物流・販売等の様々な分野での利用が急速に進んでいる。例えば、下記特許文献3には病院等の医療分野における二次元コードの利用方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−78815号公報
【特許文献2】特開2002−95509号公報
【特許文献3】特開平7−262287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、二次元コードは身近なものとなっている。また、近年二次元コードの読み取りが可能な携帯電話等が広く普及しているので、ますます身近なものとなっている。
【0006】
また二次元コードは、それ自体直接見ても二次元コード中にどのような情報が記録されているのか分からない。よって、二次元コードを使えば、例えばメッセージを二次元コードに変換し、この二次元コードを付したものをメッセージを伝えたい相手に送り、その場ではメッセージの内容が分からないが、後で二次元コードを読み取るとメッセージを伝えられるという演出も可能である。
【0007】
そこで、本発明の発明者は、二次元コードを金属性の装飾品に付し、贈答、受け渡しを通して送り手のメッセージを相手方に伝えるといった新たなコミュニケーション手段に利用することを考えた。
【0008】
この場合、ステンレス等の合金や、貴金属を含む金属に二次元コードを付する方法としては、金属表面へのインキによる印刷や箔押しが考えられる。しかしながら、印刷や箔押しでは、摩擦等により剥がれ易いという問題がある。特に普段身に着けて使用する装飾品の場合、衣類等との間で摩擦が起こり、剥がれ易い。
【0009】
また、金属表面に二次元コードを単に刻印する方法も考えられる。しかしながら刻印の場合には、二次元コードを構成する明暗模様の明部分と暗部分とをそれぞれ刻印されなかった金属表面と刻印された凹部分とで形成することとなる。そのため明部分と暗部分との明暗差がないか、あるいは少なく、また二次元コード部分とその背景部との色の明暗差がないか、あるいは少ないため、二次元コードが不鮮明となり読み取り難いという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とする処は、金属面に剥がれにくく、また読み取り可能な程度に鮮明な二次元コードを形成することができる二次元コードの形成方法および該方法により二次元コードの形成された装飾品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記の技術的構成により前記目的を達成できたものである。
【0012】
(1)塗装工程と、刻印工程と、塗膜剥離工程とを含む、金属面に二次元コードを形成する二次元コードの形成方法であって、前記塗装工程において、前記金属面に有色の塗膜を形成し、前記刻印工程において、前記塗膜から金属面に向けて刻印を施し、二次元コードを形成する特定のセル部分の明暗模様で構成された二次元コードを形成し、前記塗膜剥離工程において、少なくとも前記形成された二次元コードを構成する明暗模様の刻印された明部分または暗部分のどちらか一方の塗膜を剥離することを特徴とする二次元コードの形成方法。
【0013】
(2)前記塗膜剥離工程が、少なくとも前記形成された二次元コード面をブラスト処理することにより、二次元コードを構成する明暗模様の刻印された明部分または暗部分の塗膜を剥離したものであることを特徴とする前記(1)に記載の二次元コードの形成方法。
【0014】
(3)前記(1)または(2)に記載の二次元コードの形成方法の前段に、プライマー塗装工程を含む二次元コードの形成方法であって、前記プライマー塗装工程において、前記金属面に接合被膜を形成することを特徴とする二次元コードの形成方法。
【0015】
(4)前記(1)ないし(3)のいずれか一項に記載の二次元コードの形成方法の後段に、クリアー塗装工程を含む二次元コードの形成方法であって、前記クリアー塗装工程において、保護被膜を形成することを特徴とする二次元コードの形成方法。
【0016】
(5)前記(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の二次元コードの形成方法によって二次元コードの形成された装飾品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属面に剥がれにくく、また読み取り可能な程度に鮮明な二次元コードを形成することができる二次元コードの形成方法および該方法により二次元コードの形成された装飾品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。ここでは金属プレートに二次元コードを形成する例を示す。
【実施例1】
【0019】
以下に実施例1に係る、二次元コードの形成方法を説明する。
【0020】
図1は、本実施例に係る二次元コードの形成方法を示す図である。
【0021】
すなわち、まず塗装工程(S11)において、金属プレートに塗装材を塗装し、金属プレート表面に有色の塗膜を形成する。本実施例においては市販のポリエステル樹脂系黒色塗料を用いた。
【0022】
今回塗装材としては黒色のものを用いたが、これに限らず、金属プレートの色と異なる色であって、二次元コード読取装置が読み取り可能なものであればよい。また、塗装材の種類についても特に限定されるものではなく、一般的な塗料でも漆でも良い。
【0023】
また、塗装範囲は、金属プレート全体であってもよいし、金属の風味を活かすために、二次元コードの付される範囲のみを塗装し、残りの部分は金属面が露出していてもよい。
【0024】
続いて150℃で30分間乾燥させる。
【0025】
次に、刻印工程(S12)において、金属プレート表面に二次元コードを刻印する。本実施例では刻印装置としてMPX−60(ローランドDG株式会社製)を用いた。
【0026】
刻印は、刻印装置の打刻針を二次元コードの明部分を構成するセル位置に打ちつけることで行う。刻印装置の打刻針を塗装された金属プレート表面に打ちつけることで、打刻針が打ちつけられた部分の塗膜が塑性変形して白濁化し、不鮮明な二次元コードの模様を形成する。
【0027】
本実施例においては、前記刻印装置を用いて金属プレート表面に二次元コードを刻印したが、レーザ装置により金属表面にレーザを照射することで、金属プレート表面に刻印しても良い。
【0028】
その後、塗膜剥離工程(S13)において、二次元コードを構成する明暗模様の刻印された明部分の、塑性変形して白濁化した塗膜を剥離する。
【0029】
本実施例ではブラスト処理により塗膜の剥離を行った。ブラスト処理は、金属プレート表面に圧縮空気で粒状研磨剤、例えばガラスビーズ等を吹き付けることで塗膜を剥離する方法である。
【0030】
前記刻印工程において形成された二次元コードを構成する明暗模様の刻印された明部分の、塑性変形して白濁化した塗膜は、打刻針がうちつけられたことで金属表面との密着性が暗部分より弱くなっている。
【0031】
そこで、少なくとも二次元コードを構成する明暗模様の塗膜において、刻印した部分の塗膜のみを金属プレート表面から剥がし、その他の部分の塗膜が金属プレート表面から剥がれないように、塗膜を剥離するには、ブラスト処理が有効である。ブラスト処理を行うことで、明部分の塑性変形して白濁化した塗膜が剥離して金属表面が露出するため、二次元コードを構成する明暗模様の明部分と暗部分との明暗差がより大きくなり、二次元コードの読み取りが容易となる。
【0032】
以上の工程により、金属プレート面上に鮮明な二次元コード(n1)を形成することができる。
【0033】
本実施例においては、打刻針を二次元コードの明部分を構成するセル位置に打ち付け、塗膜剥離工程を経て、塗膜が二次元コードの暗部分を、金属面が明部分を形成する構成としたが、これに限られず、塗膜の色と金属の色によっては、塗膜が明部分を、金属面が暗部分を形成する構成としてもよい。
【実施例2】
【0034】
以下に実施例2に係る二次元コードの形成方法を説明する。
【0035】
図2は、本実施例に係る二次元コードの形成方法を示す図である。
【0036】
実施例2に係る方法においては、実施例1に係る形成方法を実施する前に、金属プレート面に接合被膜を形成するプライマー塗装工程(S20)が設けられている。
【0037】
まず、プライマー塗装工程において、金属プレートにプライマー塗装を行い、接合被膜としての樹脂被膜を形成する。本実施例では市販のエポキシ系塗料を用いた。
【0038】
その後150℃で30分間乾燥させる。
【0039】
以降は実施例1に係る方法と同じ方法を行うため、説明は省略する。
【0040】
これにより、塗装工程で形成される塗膜の、金属プレートに対する密着度が高まり、より剥がれにくい二次元コード(n2)を形成することができる。
【実施例3】
【0041】
以下に実施例3に係る二次元コードの形成方法を形成する。
【0042】
図3は、本実施例に係る二次元コードの形成方法を示す図である。
【0043】
実施例3に係る方法においては、実施例1、2に係る二次元コードの形成方法により二次元コードの形成された金属プレート面にクリアー塗装を施すクリアー塗装工程(S34)が設けられている。
【0044】
本実施例においては、クリアー塗装用塗装材として、市販のアクリル系クリアー色塗料を用いた。本実施例においてクリアー塗装用塗装材は無色のものを用いたが、特にこれに限定されず、二次元コード読取装置が読み取り可能なものであればよい。
【0045】
本実施例に係るクリアー塗装により、二次元コードを形成する塗膜および金属面上に保護被膜が形成され、摩擦や外部刺激による塗膜の剥がれが抑えられる。また、保護被膜が、塗膜部分を含む金属プレート面の光の乱反射を減少させるため、金属プレート表面が明瞭となる。これにより、より剥がれにくく、且つより鮮明な二次元コード(n3−1、n3−2)を形成することができる。
【0046】
(その他)
また、上記実施例1ないし3では、金属プレートに二次元コードを形成したが、特にこれに限定されることはなく、二次元コードを形成する対象は金属プレート以外の形状のもの、例えば指輪等でもよい。また二次元コードの付された金属プレートは、それ自体装飾品として用いることができ、またネックレス、イヤリング、あるいはペンダントの本体等の装飾品に組み込むこともできる。
【0047】
以上、本発明によれば、金属面に、剥がれにくく、また読み取り可能な程度に鮮明な二次元コードを付することができる。
【0048】
さらに、装飾品としての金属プレートに二次元コードを刻印すれば、二次元コード自体に意匠的役割を持たせることができる。さらに氏名、住所、電話番号等の個人情報を二次元コードに変換しておけば、アドレス情報の受け渡しが迅速、容易になるという効果が得られる。また、パスポートナンバー、住民コード、保険証の番号、常用している薬の名称等の他人に知られたくない個人情報を、二次元コードに変換しておけば、容易に他人に知られることなく携帯でき、必要に応じて迅速に前記情報を引き出せるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例1に係る二次元コードの形成方法を示すフローチャート
【図2】実施例2に係る二次元コードの形成方法を示すフローチャート
【図3】実施例3に係る二次元コードの形成方法を示すフローチャート
【図4】二次元コードの一例を示す図
【符号の説明】
【0050】
S11 塗装工程
S12 刻印工程
S13 塗膜剥離工程
S20 プライマー塗装工程
S34 クリアー塗装工程
n1、n2、n3−1、n3−2 二次元コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装工程と、刻印工程と、塗膜剥離工程とを含む、金属面に二次元コードを形成する二次元コードの形成方法であって、
前記塗装工程において、前記金属面に有色の塗膜を形成し、
前記刻印工程において、前記塗膜から金属面に向けて刻印を施し、二次元コードを形成する特定のセル部分の明暗模様で構成された二次元コードを形成し、
前記塗膜剥離工程において、少なくとも前記形成された二次元コードを構成する明暗模様の刻印された明部分または暗部分のどちらか一方の塗膜を剥離することを特徴とする二次元コードの形成方法。
【請求項2】
前記塗膜剥離工程が、少なくとも前記形成された二次元コード面をブラスト処理することにより、二次元コードを構成する明暗模様の刻印された明部分または暗部分の塗膜を剥離したものであることを特徴とする請求項1に記載の二次元コードの形成方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の二次元コードの形成方法の前段に、プライマー塗装工程を含む二次元コードの形成方法であって、
前記プライマー塗装工程において、前記金属面に接合被膜を形成することを特徴とする二次元コードの形成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の二次元コードの形成方法の後段に、クリアー塗装工程を含む二次元コードの形成方法であって、
前記クリアー塗装工程において、保護被膜を形成することを特徴とする二次元コードの形成方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の二次元コードの形成方法によって二次元コードの形成された装飾品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−244113(P2006−244113A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58662(P2005−58662)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)