説明

二液混合装置

【課題】本発明は、混合する二液の配合比差が大きく、且つ粘度差が大きく硬化開始時間が極端に短い場合であっても、長時間安定して必要な混合性能を確保できる二液混合装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の二液混合装置は、第1液を導入する第1導入路と第2液を導入する第2導入路とを有する液導入部と、この液導入部に接続し、第1液と第2液とを混合する混合手段とを備え、混合手段は、先端に混合液を排出するノズルを有する中空のケースと、該中空内に回転自在に配置される混合軸とを備える二液混合装置であって、ケースの中空底部はノズルに向かって縮径するテーパ状に形成され、また、混合軸の先端部は中空底部に対応する形状を有する円錐状に形成されるとともに、この円錐面混合軸の先端側に延伸する少なくとも1本の溝部を有し、中空底部に混合軸の先端部を摺接させて混合軸を回動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二液混合硬化性樹脂の二液を混合する二液混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二液性の接着剤、塗料等の比較的粘性の高い二液を混合する二液混合装置が開示されている。この二液混合装置は、各々異なる第1液と第2液とを導入する第1導入路と第2導入路とを接続して二液の混合室を形成し、この混合室の下端を漏斗状部とするとともに、混合室内に二液の混合を行う混合軸を回動可能に挿入し、この混合軸の下端に混合室の漏斗状部の内面に近接して回動する掻き取りプレートを突出するとともに、この掻き取りプレートとは別個に混合軸の下端に混合軸の軸心と平行に掻き取りピンを突出し、この掻き取りピンを漏斗状部の下端に形成したノズルの先端まで突出配置したことを特徴としている。そして、掻き取りプレートと掻き取りピントで混合液から生じる硬化物を早期に掻き取ることができるので、ノズルが目詰まりして外部への液の排出が不能となったり、混合軸の回転が困難となるなどの不都合を生じることがなく円滑な混合液の排出を維持できるとしている。
【特許文献1】特開2002−263532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の方法では比較的粘性の高い二液を混合する場合には有効であるが、二液の配合比差が大きく、且つ粘度差が大きく硬化開始時間が極端に短い場合には、混合液の滞留部で硬化物が生じてしまい必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされた上記の二液混合装置の改良発明であり、混合する二液の配合比差が大きく、且つ粘度差が大きく硬化開始時間が極端に短い場合であっても、長時間安定して必要な混合性能を維持できる二液混合装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の二液混合装置は、第1液を導入する第1導入路と第2液を導入する第2導入路とを有する液導入部と、この液導入部に接続し、第1液と第2液とを混合する混合手段とを備え、混合手段は、先端に混合液を排出するノズルを有する中空のケースと、該中空内に回転自在に配置される混合軸とを備える二液混合装置であって、ケースの中空底部はノズルに向かって縮径するテーパ状に形成され、また、混合軸の先端部は中空底部に対応する形状を有する円錐状に形成されるとともに、この円錐面において混合軸の先端側に延伸する少なくとも1本の溝部を有し、中空底部に混合軸の先端部を摺接させて混合軸を回動することを特徴とする。
【0006】
本発明の二液混合装置では、混合軸の先端部と中空底部とが摺接するように形成されており、且つ混合軸の先端部に円錐面に沿って先端側に延伸する溝部が形成されているので、混合軸を回動して混合された混合液は全て溝部を流通してノズルから排出され、混合室内に滞留することがない。従って、混合室内に硬化物を生じることがなく、ノズルの目詰まりや、混合軸などが固着してその作動が阻害されることがない。
【0007】
ここで、混合軸の周方向における溝部の幅は、混合液の排出方向において一定であることが望ましい。溝部の幅が混合液の排出方向である長手方向で変化しないので混合液を円滑に流通させることができる。なお、混合液の排出方向とは、混合された混合液を混合手段の下端に設けたノズルから外部に排出する方向である。
【0008】
また、本発明の二液混合装置において、混合手段は、第1液又は第2液の混合手段への流入を制御する開閉弁機構を備えることができる。この開閉弁機構を備えることで、必要に応じて第1液又は第2液のいずれかの液の混合手段への流入を阻止することができるので、二液の接触を防いで混合手段内の液の硬化を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の二液混合装置において、混合手段にこの混合手段の先端近傍を冷却する冷却手段を備えてもよい。冷却手段を備えることにより二液の混合によって生じる発熱を抑制することができる。二液は混合によって発熱すると、温度上昇によって反応が促進され、硬化が急速に進行する。混合状態の二液を冷却液によって冷却することにより、硬化開始時間の極めて短い混合液であっても反応の進行を緩やかにすることができる。
【0010】
また、本発明の二液混合装置において、混合軸の先端に該混合軸の軸心に偏芯してノズルの内周面に摺接するピンを突出して備えることが望ましい。このようなピンを備えることで、混合液のノズルからの円滑な排出を長時間維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二液混合装置は、上述の如く構成したものであるから、二液混合後の硬化開始時間が短い接着剤についてもノズルの目詰まりや部材の作動不良を生じることがない。従って、従来オフラインで行われていた接着作業を1個流しするラインに組み込むことができるので生産性を大幅に向上することができる。
【実施例】
【0012】
本発明の一実施例を図1に示す。図1(a)は二液混合装置の断面図であり、(b)は混合軸を先端側から見た正面図である。
【0013】
二液混合装置1は、第1液と第2とを導入する導入部2と、導入された第1液と第2液とを混合する混合手段3とからなる。そして、図示しない各貯留槽から導入部2へ導入された第1液と第2液とを導入部2に接続する混合手段3で混合し、混合された混合液を混合手段3の下端に設けたノズル4から外部に排出して、混合液を被接着物の所定箇所に塗布することができる。
【0014】
導入部2には、第1液を導入する第1導入路5と第2液を導入する第2導入路6とが形成されており、適宜の制御弁(図示せず)を介して各液をそれぞれの貯留槽(図示せず)から導入することができる。また、後述する混合手段3に導入部2を接続することで、第1導入路5と第2導入路6とは、混合室11(後述する)に開口する第1通路51と第2通路61と連通するようになっている。
【0015】
混合手段3は、中空のケース部7と、この中空部に回転自在に嵌合される混合軸部8とからなる。ケース部7は、第1通路51と第2通路61とを有し導入部2に接続する上体9と、ノズル4を有する下体10とからなる。ケース部7の上体9と下体10とは同一軸線上に接続されており、その中空部が二液の混合室11を形成する。また、混合室11の底部12は、ノズル4方向に縮径するテーパ状に形成されている。
【0016】
混合軸部8は、混合室11へ内嵌される混合軸13と、図示しないモータなどの駆動手段に接続し混合軸13を回転する回転軸14とからなっている。混合軸13はその外周に混合突部15を適宜の間隔で突出するとともに、その先端はテーパ状に形成された混合室11の底部12に摺接可能に円錐状に形成されている。また、この円錐面の先端部には、円錐底部から円錐頂部に向けて一定幅の溝部16が形成されている。さらに、この先端部には、混合軸13の軸心と平行にかつ軸心から偏芯してピン17がノズル4の先端まで突出して設けられている。このピン17は混合軸13の回転によりノズル4の内周面に摺接しながら回動するようになっている。
【0017】
また、ケース部7の上体9には、第2導入路6に接続する第2通路61の開閉を制御する開閉弁機構18が設けられている。開閉弁機構18は、弁棒19とこの弁棒19に接続するピストン20とピストン20を収容して進退自在に駆動するシリンダ21とからなっている。弁棒19は、第2通路61に臨んでおり、第2通路61内に進出することで第2液の混合室11への流入を阻止することができる。この開閉弁機構13では、通常時は弁棒14は第2通路61内に進出して第2液の流通を阻止している。そして、混合作業を行う際には、後退して第2液の混合室11への流入を可能にする。
【0018】
また、ケース部7の下体10を収容するようにリング部材22が取り付けられており、このリング部材22と下体10の外周面との間を冷却室23とする冷却手段24を構成している。この冷却室23に水などの冷媒を流通させることで、二液の混合によって生じる発熱を抑制することができ、硬化開始時間の極めて短い混合液であっても反応の進行を緩やかにすることができる。
【0019】
以上のように構成された二液混合装置1により第1液と第2液とを効果的に混合するとともに、混合液の安定した排出を維持することができる。
【0020】
まず、第1導入路5および第2導入路6側の制御弁(図示せず)を開放して各導入路内に第1液と第2液と導入するとともに、弁棒19を後退させて第2通路61を開放する。これにより第1液は、第1導入路5から第1通路51を経由して第1の接続口52から混合室11内へ流入する。また、第2液は第2導入路6と第2通路61とを経由して第2の接続口62から混合室11内に流入する。次に、混合軸13を回転させて混合室11内で第1液と第2液とを攪拌混合する。そして、この混合液をノズル4から排出して目的物に付着させる。
【0021】
ここで、混合軸13の外周に設けられた混合突部15は、所定の距離を隔てて螺旋状に配置されているので、導入された第1液と第2液とは分断と合流を繰り返す回転剪断効果により効率よく混合される。また、混合突部15は、混合軸13の回転方向とは反対方向の螺旋に沿って螺旋状に配置されているので(例えば、回転方向が右回転であれば螺旋は左ねじ)、第1液と第2液とが混合された混合液をノズル4から効果的に排出することができる。
【0022】
また、この二液混合装置1は、混合突部15と混合軸13先端の円錐面とが混合室11の内周面と底面12に摺接するように形成されており、混合軸13先端の円錐面には溝部16が形成されている。このため、混合室11へ導入された二液は、上記のように螺旋状に配置された混合突部15で混合され溝部16を流通してノズル4から排出される。つまり、混合軸13が回転している間は、混合室11内に混合液が滞留することがない。それ故、著しく硬化時間の短い接着剤であっても硬化物が生じることがなく、ノズルの目詰まりや部材の固着あるいは動作不良といった不具合を生じることがない。なお、本実施例の二液混合装置1では、混合軸16の円錐面と混合室11底面のテーパ面との隙間は0.1mm以下である。
【0023】
さらに、混合軸16の先端には、ピン19が軸心に平行に偏芯して設けられている。このピン19は混合軸16の回転によってノズル4の内周面に摺接するように回動する。このため、ノズル4の内周面にも硬化物が付着堆積することがなく、混合液の円滑な排出を維持することができる。
【0024】
上記のように、本実施例の二液混合装置1はケース部7の先端近傍を冷却する冷却手段24を備えている。これ故、二液の混合によって生じる発熱を抑制することができる。二液は混合によって発熱すると混合液の温度が上昇して反応が促進され、硬化が急速に進行する。しかし、混合状態の二液を水などの冷媒によって冷却することにより、反応を遅らせることができ、硬化物の発生を抑制してスムーズな混合液の排出を可能とする。
【0025】
また、本実施例の二液混合装置1をラインに組み込んで他の作業と同期して被接着物に接着剤を塗布するような場合には、他の作業との関係でラインが短時間停止することがある(以後、チョコ停という。)。このようなチョコ停が発生した場合には、開閉弁機構18を用いて弁棒19で第2の接続口62を閉塞し、第2液の混合室11への流入を阻止する。そして、第2の接続口62を閉塞後には、混合室11内に第1液のみを導入し混合室11内に残留した二液の混合液をノズル4から外部に確実に排出するとともに、混合室11を第1液のみで満たす。第1液のみでは混合作業の停止中であっても硬化が起こらないから、作業停止中にノズル4の目詰まりや、混合軸13などの部材の固着が生じることがなく、再開後も二液混合装置1の円滑な使用が可能となる。
【0026】
また、清掃や修理のため、二液混合装置1を分解する場合は、二液混合装置1内の液を完全に排出する作業を行う。この作業は、前記と同様にまず開閉弁機構18を用いて弁棒19で第2の接続口62を閉塞し、第2液の混合室への流入を阻止する。そして、第1導入路5から混合手段3内に溶剤や水を導入して内部を洗浄したり、加圧エアを導入することにより行う。その際、混合手段3内に二液の硬化物が付着していると、その溶解作業などに多くの溶剤や時間を必要とする。しかし、本実施例では、混合室11内に混合液が滞留することがなくさらに冷却手段などにより混合液の硬化を効果的に防止しているので、混合手段3内の洗浄を容易に行うことが可能である。従って、作業の手間やコストを大幅に低減することができる。
【0027】
なお、本発明の二液混合装置は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更してもよい。例えば、冷却手段において、リング22に収容されるケース部7の外周面に放熱用の凹凸部を形成してもよい。凹凸部を形成することで混合室11の冷却効果をさらに高めることができる。また、実施例では混合軸先端部の溝部を1個としたが、流動性向上のために複数個としてもよい。このように混合液の通路面積を増加させることで排出時の圧力損失を低減して安定した塗布作業を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の二液混合装置は、混合する二液の配合比差が大きく、且つ粘度差が大きく硬化開始時間が極端に短い常温硬化型の接着剤又は封止剤などの二液混合装置として好適に用いることができる。この場合には、第1液を主剤とし、第2液を硬化剤とすることが望ましい。また、接着作業あるいは封止作業を他の作業と同期して実施するラインにおいて、本発明の二液混合装置は顕著な効果を発揮し生産性の向上に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例を説明する図である。(a)は断面図、(b)は混合軸13を先端側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0030】
2:液導入部
3:混合手段
4:ノズル
5:第1導入路
6:第2導入路
7:ケース部
8:混合軸部
11:混合室
12:中空底部
13:混合軸
15:混合突部
16:溝部
17:ピン
18:開閉弁機構
19:弁棒
23:冷却室
24:冷却手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液を導入する第1導入路と第2液を導入する第2導入路とを有する液導入部と、
該液導入部に接続し、前記第1液と前記第2液とを混合する混合手段とを備え、
前記混合手段は、先端に混合液を排出するノズルを有する中空のケースと、該中空内に回転自在に配置される混合軸とを備える二液混合装置であって、
前記ケースの中空底部は前記ノズルに向かって縮径するテーパ状に形成され、前記混合軸の先端部は前記中空底部に対応する形状を有する円錐状に形成されるとともに、該円錐面において前記混合軸の先端側に延伸する少なくとも1本の溝部を有し、
前記中空底部に前記混合軸の先端部を摺接させて前記混合軸を回動することを特徴とする二液混合装置。
【請求項2】
前記混合軸の周方向における前記溝部の幅は、前記混合液の排出方向において一定である請求項1に記載の二液混合装置。
【請求項3】
前記混合手段は、前記第1液又は第2液の該混合手段への流入を制御する開閉弁機構を備える請求項1に記載の二液混合装置。
【請求項4】
前記混合手段は、該混合手段の先端近傍を冷却する冷却手段を備える請求項1に記載の二液混合装置。
【請求項5】
前記混合軸の先端に該混合軸の軸心に偏芯して前記ノズルの内周面に摺接するピンを突出して備える請求項1に記載の二液混合装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−68206(P2008−68206A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249434(P2006−249434)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(398041650)株式会社エイ・エム・ケイ (1)
【Fターム(参考)】