説明

二酸化塩素による非口腔生物組織の治療

二酸化塩素の投与による、非口腔生物組織感染の緩和のための方法、デバイス、組成物、およびシステムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
非口腔生物組織の感染および炎症は、ヒトを含む哺乳類において一般的な問題である。非口腔生物組織感染には、非口腔粘膜組織、皮膚、および指の爪等の非口腔硬組織の感染が挙げられる。皮膚または硬組織感染の例としては、座瘡、いぼ、白癬、水虫、および爪の真菌感染が挙げられる。これらの全ては、一般的に、1つまたは複数の局所用薬物により治療される。
【0002】
非口腔粘膜組織の例としては、結膜粘膜、膣粘膜、および副鼻腔粘膜が挙げられる。副鼻腔炎と呼ばれる場合が多い副鼻腔粘膜感染は、急性感染から慢性感染に及び得る。症状には、頭痛、歯痛、鼻づまり、顔面痛、夜間の咳、喘息症状の増加、および黄色または緑色の鼻分泌物が挙げられる。膣炎は、膣粘膜組織の炎症を意味し、膣粘膜の細菌感染、イースト菌感染、および他の病原体感染から起こる場合がある。症状には、痒み、不快感、分泌物、悪臭、および排尿中の不快感を挙げることができる。副鼻腔炎および膣炎はいずれも、特に難治性形態において、生物膜を特徴とする(Swidsinski et al,2005,Obstet. Gynecol.106:1013−1023、Swidsinski et al.,2008,Am.J.Obstet.Gynecol.198:el−6、Chiu et al.,2007,J.Antimicrob.Chemother.59:1130−1134、Cohen et al.,2009,Am J Rhinol Allergy 23:255−260)。これらの生物膜が治療難治性を著しく助長し、膣炎および副鼻腔炎症の双方の再発の一因であると考えられる。
【0003】
二酸化塩素は、消毒剤ならびに強酸化剤であることが知られている。二酸化塩素の殺菌、殺藻、殺真菌、漂白、および脱臭特性も周知である。二酸化塩素の治療および審美用途が知られており、例えば、米国特許第6,280,716号は、膣の痒みの治療に対する安定化二酸化塩素溶液の使用について説明する。米国特許第7,029,705号は、鼻の衛生方法のための安定化二酸化塩素溶液の使用について説明する。
【0004】
二酸化塩素を調製するための従来の方法は、亜塩素酸ナトリウムを、塩素ガス(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩酸(HCl)と反応させることを含む。この反応は、酸性媒体中で非常に速い速度で進行するため、実質的に、全ての従来の二酸化塩素生成化学作用は、pHが3.5未満である酸性生成物溶液をもたらす。
【0005】
二酸化塩素は、酸性化または酸性化と還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンから調製することができる。周囲条件において、塩素酸アニオンを使用する全ての反応は、最も一般的には、7〜9Nの範囲内である強力な酸性条件を必要とする。試薬を高温に加熱し、二酸化塩素を生成物溶液から連続除去することによって、必要とされる酸性度を1N未満まで低減することができる。
【0006】
原位置の二酸化塩素の調製方法は、「安定化二酸化塩素」と称される溶液を使用する。安定化二酸化塩素溶液は、ほとんど、または全く二酸化塩素を含有しないが、実質的に、中性またはわずかにアルカリ性のpHの亜塩素酸ナトリウムから成る。亜塩素酸ナトリウム溶液への酸の添加は、亜塩素酸ナトリウムを活性化し、二酸化塩素は、溶液の原位置で生成される。得られる溶液は、酸性である。典型的には、亜塩素酸ナトリウムの二酸化塩素への変換の程度は低く、亜塩素酸ナトリウムの実質量は、溶液中に残留する。
【0007】
上で要約される現在の文献は、軟粘膜組織を含む生物組織に損傷を与える、二酸化塩素組成物の使用および方法について説明する。生物組織が損傷されない非口腔組織の治療に二酸化塩素を使用するための方法、組成物、デバイス、およびシステムが必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
以下の実施形態は、これらの必要性を満たし、これらに対応する。以下の概要は、広範な概観ではない。様々な実施形態の主要な要素または重要な要素を特定することも、それらの範囲を正確に記述することも意図していない。
【0009】
非口腔生物組織感染を緩和するための方法が提供される。方法は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む、二酸化塩素供給源を含む組成物を、非口腔生物組織に投与し、それによって、接触組織の感染を緩和することを含み、投与ステップは、i)組織を、二酸化塩素供給源を含む実質的に非細胞毒性である組成物と接触させること、ii)組織を、二酸化塩素供給源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスであって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に送達するデバイスと接触させること、またはiii)組織を二酸化塩素供給源およびオキシ−塩素アニオンとオキシ−塩素アニオンが通る通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物が通過することを許可し、それによって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の組織への送達を可能にする、障壁物質と、を含む組成物と接触させることのうちの1つまたは複数を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、組織感染は、軟生物組織感染である。軟生物組織感染は、非口腔粘膜感染または皮膚感染であり得る。非口腔粘膜感染は、膣炎、副鼻腔炎、尿道炎、および結膜炎から成る群から選択され得る。他の実施形態において、組織感染は、ブドウ膜炎、座瘡、尋常性疣贅、体白癬(白癬)、足白癬(水虫)、頑癬(いんきんたむし)から成る群から選択される皮膚感染である。別の実施形態において、組織感染は、爪白癬(爪真菌感染症)等の硬組織感染である。
【0011】
一実施形態において、組成物は、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む。別の実施形態において、組成物は、約20〜約400ppmの二酸化塩素を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、二酸化塩素供給源は、二酸化塩素生成成分として、二酸化塩素の粒子状前駆体を含む。
【0013】
一実施形態において、方法は、第2の治療薬剤を投与することをさらに含む。第2の治療薬は、抗生物質または抗真菌薬、レチノイド、ステロイド、サリチル酸、液体窒素等の抗菌薬であり得る。一態様において、二酸化塩素供給源を含む組成物は、第2の治療薬を含む。別の態様において、方法は、第2の治療薬を含む第2の組成物を投与することを含む。副鼻腔炎を緩和するためのいくつかの実施形態において、第2の治療薬は、ガチフロキサシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、セフタジジム、アミノグリコシド、例えば、トブラマイシンおよびストレプトマイシン、アンフォテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、およびニスタチンから成る群から選択される抗菌薬である。膣炎を緩和するためのいくつかの実施形態において、第2の治療薬は、ネオマイシン、リバキシミン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ポリミキシンB、プログアニル、エコナゾール、およびフルコナゾールから成る群から選択される抗菌薬である。座瘡を緩和するためのいくつかの実施形態において、第2の治療薬は、抗菌薬、レチノイド、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。体白癬、頑癬、または足白癬を緩和するためのいくつかの実施形態において、第2の治療薬は、テルビナフィン、ミコナゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、およびトルナフテートから成る群から選択される抗菌薬である。
【0014】
一態様において、投与ステップは、組織を、二酸化塩素供給源を含む、実質的に非細胞毒性の組成物と接触させることである。いくつかの実施形態において、投与ステップは、組織を、二酸化塩素供給源を含む、実質的に非細胞毒性の組成物と接触させることを、少なくとも2回実質的に連続反復することを含む。いくつかの実施形態において、実質的に非細胞毒性の組成物は、組成物1グラム当り約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む。いくつかの実施形態において、実質的に非細胞毒性の組成物は、約4.5〜約11のpHを有する。
【0015】
別の態様において、投与ステップは、組織を、二酸化塩素供給源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスと接触させることを含み、デバイスは、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に送達する。いくつかの実施形態において、デバイスは、洗浄デバイスである。いくつかの実施形態において、デバイスは、任意選択のバッキング層、二酸化塩素供給源を含む層、および二酸化塩素供給源層と組織との間に置かれる障壁層を含み、障壁層は、オキシ−塩素アニオンの通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許可する。障壁膜は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される膜であり得る。
【0016】
別の実施形態において、デバイスは、バッキング層およびバッキング層に付加されるマトリクスを含み、マトリクスは、二酸化塩素供給源およびオキシ−塩素アニオン、およびオキシ−塩素アニオンの通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許可する、障壁物質を含む。いくつかのデバイスの実施形態において、障壁物質は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱油、パラフィンワックス、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0017】
別の実施形態において、投与ステップは、組織を、二酸化塩素供給源、オキシ−塩素アニオン、および障壁物質を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの組成物の実施形態において、障壁物質は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱油、パラフィンワックス、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0018】
非口腔生物組織感染を緩和するための方法がさらに提供され、方法は、二酸化塩素供給源を含む組成物を非口腔生物組織に投与することを含み、投与ステップは、組織を、二酸化塩素供給源を含む、実質的に非刺激性の組成物と接触させ、それによって、接触組織の感染を緩和することを含む。いくつかの実施形態において、組織感染は、非口腔粘膜感染である。非口腔粘膜感染は、膣炎、副鼻腔炎、結膜炎、およびブドウ膜炎から成る群から選択され得る。他の実施形態において、組織感染は、座瘡、尋常性疣贅、体白癬、足白癬、頑癬、および爪白癬から成る群から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、実質的に非刺激性の組成物は、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む。他の実施形態において、実質的に非刺激性の組成物は、約20〜約400ppmの二酸化塩素を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、実質的に非刺激性の組成物の二酸化塩素供給源は、二酸化塩素生成成分として、二酸化塩素の粒子状前駆体を含む。いくつかの実施形態において、実質的に非刺激性の組成物は、組成物1グラム当り約0.2ミリグラム未満のオキシ−塩素アニオンを含む。実質的に非刺激性の組成物は、約4.5〜約11のpHを有し得る。
【0021】
一実施形態において、非口腔生物組織を、二酸化塩素供給源を含む、実質的に非刺激性の組成物と接触させるステップを含む方法は、第2の治療薬を投与することをさらに含む。第2の治療薬は、抗生物質または抗真菌薬、レチノイド、ステロイド、サリチル酸、液体窒素等の抗菌薬であり得る。一態様において、二酸化塩素供給源を含む組成物は、第2の治療薬をさらに含む。別の態様において、方法は、第2の治療薬を含む第2の組成物を投与することを含む。副鼻腔炎を緩和するためのいくつかの実施形態において、第2の治療薬は、ガチフロキサシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、セフタジジム、アミノグリコシド、例えば、トブラマイシンおよびストレプトマイシン、アンフォテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾールおよびニスタチンから成る群から選択される、抗菌薬である。膣炎を緩和するためのいくつかの実施形態において、第2の治療薬は、ネオマイシン、リバキシミン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ポリミキシンB、プログアニル、エコナゾール、およびフルコナゾールから成る群から選択される、抗菌薬である。座瘡を緩和するためのいくつかの実施形態において、第2の治療薬は、抗菌薬、レチノイド、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。体白癬、頑癬、または足白癬を緩和するためのいくつかの実施形態において、第2の治療薬は、テルビナフィン、ミコナゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、およびトルナフテートから成る群から選択される、抗菌薬である。
【0022】
様々な組成物および方法を例証する目的で、本明細書に開示される物質および方法の特定の実施形態が図面で描写される。しかしながら、組成物およびそれらの使用方法は、図面に描写される実施形態の正確な配置および手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、二酸化塩素投与量の関数として、生物膜における細菌のログ死滅を描写するグラフである。MRSA=メチシリン耐性黄色ブドウ球菌。PA=緑膿菌。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明は、実施形態の特定の例示的態様および実施を詳細に記述する。しかしながら、これらは、様々な組成物およびデバイスの原理が利用される、様々な手法のいくつかのみを示す。本方法の他の目的、利点、および新規特徴が、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0025】
二酸化塩素は、その消毒、殺菌、殺藻、殺真菌、漂白、および脱臭特性の結果として、生物系の多様な用途において大変有用となり得る。しかしながら、二酸化塩素組成物は、生物組織に損傷を与えることが確認されている。一態様は、二酸化塩素組成物中の細胞毒性成分は、二酸化塩素自体ではないという発明者の判断から部分的に生じている。代わりに、二酸化塩素組成物中に存在するオキシ−塩素アニオンが、細胞毒性成分であることが判断された(他の細胞毒性成分は存在しない)。本明細書に記載される方法は、概して、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性様式で、非口腔生物組織に二酸化塩素を含む組成物を投与し、非口腔生物組織の感染を緩和することに関する。本明細書に記載される方法は、殺生剤、特に、二酸化塩素の局所曝露の影響を受けやすい非口腔生物組織の任意の感染の処置に有用である。方法は、任意の動物の非口腔組織上で実践することができる。動物の例としては、哺乳類、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット、およびブタであるが、これらに限定されない。一実施形態において、方法は、ヒト非口腔組織上で実践される。
定義
【0026】
別途定義されない限り、本明細書に使用される全ての専門用語および科学用語は、概して、当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。概して、本明細書で使用される命名法、ならびに細胞壊死分析、微生物分析、有機および無機化学、および歯科臨床研究における実験手順は、当該分野において周知であり、一般的に利用される。
【0027】
本明細書で使用される、以下の用語のそれぞれは、それと関連付けられる意味を有する。
【0028】
冠詞「a」および「an」とは、本明細書において、冠詞の文法的な目的語の1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素、または1つより多い要素を意味する。
【0029】
本明細書に記述される任意の範囲間の、任意のおよび全ての全整数または部分整数が、本明細書に含まれることを理解する。
【0030】
「約」という用語は、当業者により理解され、それが使用される内容によりある程度変動する。概して、「約」とは、参照値のおよそプラス/マイナス10%の値の範囲を包含する。例えば、「約25%」は、およそ22.5%〜およそ27.5%の値を包含する。
【0031】
本明細書で使用される、「非口腔生物組織」は、口腔内に位置しない任意の動物組織を指し、軟組織および硬組織を含む。本明細書で使用される生物組織は、概して正常な組織、ならびに1つまたは複数の切開、裂傷、または他の組織が透過する開口を有する組織の両方を包含する。
【0032】
本明細書で使用される、「硬生物組織」は、哺乳類等の動物に見られる、足爪および指爪、硬くケラチン化した組織等を指す。
【0033】
本明細書で使用される、「軟生物組織」は、非口腔粘膜組織、上皮組織、真皮組織、および皮下組織(下皮組織とも称される)を指す。
【0034】
本明細書で使用される、「非口腔粘膜組織」は、口腔内に位置しない任意の粘膜組織を指す。典型的な非口腔粘膜組織としては、膣粘膜、鼻および副鼻腔粘膜、結膜粘膜、生殖器粘膜、例えば、亀頭、陰核亀頭、包皮(陰茎包皮)の内側、および陰核包皮、膀胱粘膜、例えば、尿道および肛門粘膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される、「非口腔生物組織感染」は、病原性感染によってもたらされる非口腔生物組織の疾患または障害を指す。病原は、細菌、ウイルス、原虫、または真菌であり得る。
【0036】
本明細書で使用される、「生物膜」は、表面上に層を形成する生物集合体を指し、集合体は、ポリマーの細胞外マトリクスに埋め込まれる微生物の集合体を含む。通常、生物膜は、細菌(好気性および嫌気性)、藻類、原虫、および真菌を含む、微生物の多様な集合体を含む。単種生物膜も存在する。
【0037】
本明細書で使用される、疾患または障害は、疾患または障害の症状の重篤度、そのような症状を患者が経験する頻度、またはそれらの両方が低減される場合に、「緩和される」。
【0038】
「治療的」処置は、それらの徴候を軽減または排除する目的で、病変の徴候を呈する対象に投与される処置である。
【0039】
「予防的」処置は、疾患と関連付けられる病変が進行するリスクを減少させる目的で、疾患の徴候を呈しないか、疾患が進行するリスクがあるか、または疾患の早期徴候のみを呈する対象に投与される処置である。
【0040】
本明細書で使用される、「殺生性」は、細菌、藻類、原生生物、ウイルス、および真菌等の病原体を不活性化または死滅させる特性(例えば、抗細菌、抗藻、抗原虫、抗ウイルス、および抗真菌性)を指す。抗菌剤とは、殺生剤を指す。
【0041】
「二酸化塩素生成成分」という用語は、少なくとも1つのオキシ塩素アニオン供給源および二酸化塩素生成の活性剤を指す。いくつかの実施形態において、活性剤は、酸供給源である。これらの実施形態において、成分は、遊離ハロゲン供給源を任意選択でさらに含む。遊離ハロゲン供給源は、塩素等のカチオンハロゲン供給源であり得る。他の実施形態において、活性剤は、エネルギー活性化可能な触媒である。さらに他の実施形態において、活性剤は、乾燥または無水極性物質である。他の実施形態において、活性剤は、水、唾液、粘膜、および創傷滲出液、および/または水蒸気等の液体である。
【0042】
本明細書で使用される、「極性物質」という用語は、その分子構造の結果として、分子スケール上に電気双極子モーメントを有する物質を指す。最も一般的に、極性物質は、異なる電気陰性度を有する化学元素を含む、有機物質である。有機物質において極性を誘発し得る元素には、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン、および金属が挙げられる。極性は、物質内に異なる程度で存在し得る。物質は、その分子双極子モーメントが大きい場合は極性が高く、その分子双極子モーメントが小さい場合は極性が低いと考えることができる。例えば、短い2炭素鎖上のヒドロキシルの電気陰性度を支持するエタノールは、6炭素鎖上の同程度の電気陰性度を支持するヘキサノール(C613OH)と比較して、比較的極性が高いと考えることができる。物質の誘電率は、物質の極性の便宜的な基準である。適切な極性物質は、約18〜25℃で測定される、2.5より大きい誘電率を有する。「極性物質」という用語は、水および水性物質を除外する。極性物質は、固体、液体、またはガスであり得る。
【0043】
本明細書で使用される、「乾燥」という用語は、極めて少量の遊離水、吸着水、または結晶化の水を含有する、物質を意味する。
【0044】
本明細書で使用される、「無水」という用語は、遊離水、吸着水、または結晶化の水等の水を含有しない物質を意味する。無水物質は、上で定義されるように、乾燥状態でもある。しかしながら、乾燥物質は、必ずしも本明細書に定義されるように無水ではない。
【0045】
「有効量」の薬剤は、所望の生物効果をもたらす薬剤の任意の量を意味することが意図される。その結果は、疾患の徴候、症状、または原因の低減および/または緩和であり得るか、または生物系の任意の他の所望される変化であってもよい。非口腔生物組織感染の場合、感染の程度、感染の期間、および/または感染の頻度の低減および/または緩和を使用して、有効量を測定することができる。任意の個別の例において、適切な治療量は、日常的実験を使用して、当業者によって決定することができる。
【0046】
「細胞毒性」とは、哺乳類細胞構造または機能に致死的または亜致死的損傷をもたらす特性を意味する。活性医薬成分(API)が有効量で存在する時に、組成物が米国薬局方(USP)のUSP<87>「インビトロ生体反応」(2007年現在、承認プロトコル)の寒天ゲル中沈降反応(Agar Diffusion Test)の生体反応の限度に達する場合、組成物は、「実質的に非細胞毒性」または「実質的に細胞毒性ではない」と見なされる。
【0047】
本明細書で使用される、「刺激」とは、即時、長期、または反復接触により、赤色化、腫れ、痒み、熱傷、または皮ぶくれ等の局所的炎症反応を生じる性質を指す。例えば、哺乳類における非口腔粘膜または皮膚組織の炎症は、その組織への刺激の適応である。組成物が、経皮または粘膜刺激を評価するためのあらゆる標準的な方法の使用により、わずかに刺激性である、または全く刺激性ではないと判断される場合、組成物は、「実質的に非刺激性」または「実質的に刺激性ではない」と見なされる。経皮刺激を評価するために有用な方法の例としては、ヒトの皮膚組織モデル(例えば、Chatterjee et al.,2006,Toxicol Letters 167:85−94を参照)であるEpiDerm(商標)(MatTek Corp.,Ashland,MA)、またはエキソビボ真皮検体等の組織操作された経皮組織を用いたインビトロ試験の使用が挙げられるが、これに限定されない。粘膜刺激に有用な方法の例としては、HET−CAM(脾臓の卵試験−絨毛尿膜)、スラグ粘膜刺激試験、および組織工学によって作製された鼻もしくは副鼻腔粘膜または膣−子宮頸膣部組織を使用するインビトロ試験が挙げられるが、これらに限定されない。刺激測定の他の有用な方法は、インビボ方法、例えば、ラットまたはウサギ皮膚の真皮刺激を含む(例えば、Draize皮膚試験(OECD,2002,Test Guidelines 404,Acute Dermal Irritation/Corrosion)およびEPA Health Effects Testing Guidelines、OPPTS 870.2500 Acute Dermal Irritation))。当業者は、経皮または粘膜刺激を評価する技術分野において認識される方法に精通している。
【0048】
「オキシ−塩素アニオン」とは、亜塩素酸塩(ClO2-)および/または塩素酸塩(ClO3-)アニオンを意味する。
【0049】
「実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物」とは、全て本明細書において上述されるように、有効量の二酸化塩素を含み、および非細胞毒性および/または非刺激性濃度のオキシ塩素アニオンを含有する組成物を意味する。組成物は、他の成分を含有し得るか、または本質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素で構成されてもよい。組成物は、二酸化塩素を含むか、または本質的に二酸化塩素から成るガスまたは蒸気であり得るが、溶液または増粘流体を含む任意の種類の流体であってもよい。組成物は、水性流体または非水性流体であり得る。
【0050】
「安定した」とは、二酸化塩素の形成に使用される成分、すなわち、二酸化塩素形成成分が即時に相互に反応して、二酸化塩素を形成しないことを意味する。これらの成分は、ClO2が生成されるそのような時間まで組み合わせが安定している限り、連続して、および/または同時等のあらゆる様式で混合されてもよいことを理解されたい。
【0051】
「非反応性」という用語は、使用される構成成分または成分が、許容されない程度で、二酸化塩素を形成するために存在する他の構成成分または成分と即時に反応しない、または調合において、必要な時間にその機能を実施するためのあらゆる構成成分または成分の性能を軽減しないことを意味するものとする。当業者には認識されるように、非反応性の許容される時間枠は、調合物がどのように調合され保管されるか、どのくらいの期間保管されるか、およびどのように調合物が使用されるかを含む、数多くの要因に依存する。したがって、「即時反応性ではない」における時間枠は、1分以上から1時間以上、1週間以上に及ぶ。
【0052】
「増粘流体組成物」という表現は、剪断応力印加下で流動することができ、流動する時に、同濃度の対応する水性二酸化塩素溶液の粘度を超える見かけ粘度を有する組成物を包含する。これは、ニュートン流動を示す流体(剪断応力に対する剪断速度の比率が一定であり、剪断応力と無関係である)、チキソトロピー流体(流動前に排除されるべき最小降伏応力を必要とし、持続剪断と共に剪断減粘性も示す)、疑似塑性および塑性流体(流動前に排除されるべき最小降伏応力を必要とする)、ダイラタント流体組成物(剪断速度の増加と共に見かけ粘度が増加する)、および降伏応力印加下で流動することができる他の物質を含む、増粘流体組成物の全スペクトルを包含する。
【0053】
「増粘剤成分」は、それが添加される溶液または混合物を増粘する特性を有する成分を指す。「増粘剤成分」とは、本明細書および上で記載されるように、「増粘流体組成物」を作製するために使用される。
【0054】
「見かけ粘度」とは、流動をもたらすあらゆるセットの剪断条件での、剪断速度に対する剪断応力の比率を意味する。見かけ粘度は、ニュートン流体の剪断応力とは無関係であり、非ニュートン流体組成物の剪断速度により変動する。
【0055】
有機ポリマーに関して本明細書で使用される、「疎水性」または「水不溶性」という用語は、25℃で、100グラムの水当り約1グラム未満の水溶性を有する有機ポリマーを指す。
【0056】
「酸供給源」とは、それ自体が酸性であるか、または液状水または固体オキシ−塩素アニオンと接触する時に、酸性環境を産生する物質、通常、粒子状固体物質を指す。
【0057】
「粒子状」という用語は、全ての固体物質を意味するように定義される。例として、粒子は、相互に散在して、何らかの形で互いに接触し得るが、これらに限定されない。これらの固体物質は、大きい粒子、小さい粒子、または大小の粒子の組み合わせを含む粒子を含む。
【0058】
「遊離ハロゲンの供給源」および「遊離ハロゲン供給源」とは、水との反応時にハロゲンを放出する化合物または化合物の混合物を意味する。
【0059】
「遊離ハロゲン」とは、遊離ハロゲン供給源によって放出されるようなハロゲンを意味する。
【0060】
「二酸化塩素の粒子状前駆体」とは、粒子状である二酸化塩素形成成分の混合物を意味する。ASEPTROL(BASF,Florham Park,NJ)の顆粒剤は、代表的な二酸化塩素の粒子状前駆体である。
【0061】
「固体」とは、固体形状、典型的に、多孔固体形状、または顆粒状粒子成分の混合物を含む錠剤を意味し、粒子状成分のサイズは、実質的に、固体のサイズよりも小さく、「実質的に小さい」とは、粒子の少なくとも50%が、固体のサイズよりも少なくとも1桁、および好ましくは少なくとも2桁小さい粒子サイズを有する。
【0062】
「酸化剤」とは、電子を誘引し、それによって別の原子または分子を酸化することによって、還元を経る、あらゆる物質を意味する。代表的な酸化剤としては、二酸化塩素、および過酸化水素等の過酸化物が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用される、「マトリクス」は、二酸化塩素生成成分の保護担体として機能する物質である。典型的に、マトリクスは、物質中の連続的な固相または液相であり、反応に関与して、懸濁または他の方法で含有される二酸化塩素を形成することができる。マトリクスは、物質の物理的形状を提供することができる。十分に疎水性である場合、マトリクスは、水分との接触から物質を保護し得る。十分に堅固である場合、マトリクスは、構造メンバーに形成され得る。十分に流体である場合、マトリクスは、マトリクス内で物質を輸送する媒体として機能し得る。十分に接着性である場合、マトリクスは、傾向または垂直、あるいは水平な下方表面に物質を接着する手段を提供し得る。流体マトリクスは、剪断応力の印加時に即時に流れるような液体であり得るか、または降伏応力閾値を超えてフローをもたらすことを必要とし得る。いくつかの実施形態において、マトリクスは、液体であるか、または(例えば、加熱時に)液体になることが可能であり、他の成分がマトリクスと、マトリクス中に混合され得る(例えば、反応を開始して、二酸化塩素を形成するため)。他の実施形態において、マトリクスは、連続する固体であり、二酸化塩素の生成は、例えば、水または水蒸気の透過によって、またはエネルギー活性化可能な触媒の光活性化によって、開始することができる。
【0064】
「膜」とは、3次元よりも実質的に大きい2次元の物質の層を意味する。膜は、液体または固体物質であってもよい。いくつかの物質の場合、液体膜は、硬化によって、例えば、蒸発、加熱、乾燥および/または架橋結合によって、固体膜に変換することができる。
【0065】
本明細書で使用される、「二酸化塩素供給源」は、二酸化塩素、二酸化塩素生成成分、またはそれらの組み合わせの1つを指す。
【0066】
別途明記されるか、または文脈から明らかではない限り、上記および本明細書に記載される選好は、本明細書で論じられる実施形態の全体に適用する。
説明
【0067】
二酸化塩素は、十分に証明された強力な殺生活性を有する。不利なことに、先行技術の二酸化塩素含有組成物は、細胞毒性であり得、軟組織を刺激し、硬組織を損傷し得る。二酸化塩素含有組成物の細胞毒性は、主にオキシ−塩素アニオンの存在に起因し、二酸化塩素分解の生成物であり得る塩素の存在に起因しない。二酸化塩素含有組成物中に存在するオキシ−塩素アニオンが、細胞および組織、例えば、処置の標的となる非口腔生物組織と接触するのを実質的に回避または阻害することによって、組織の損傷を測定可能に低減または最小化することができる。
【0068】
I.非口腔組織感染
A.非口腔粘膜
非細胞毒性および/または非刺激性様式で、二酸化塩素組成物を投与することによって、非口腔粘膜組織感染を緩和するための方法が本明細書に提供される。本明細書に記載される方法は、非口腔粘膜組織のあらゆる感染を緩和するために使用され得る。特に、方法は、組織が組成物と局所的に接触し得る、あらゆる非口腔粘膜組織感染に使用することができる。非口腔粘膜組織としては、膣粘膜、鼻および副鼻腔粘膜、結膜粘膜、生殖器粘膜、例えば、亀頭、陰核亀頭、包皮(陰茎包皮)の内側、および陰核包皮、膀胱粘膜、例えば、尿道粘膜および肛門粘膜が挙げられるが、これらに限定されない。非口腔粘膜組織の感染としては、膣炎、副鼻腔炎、尿路感染、および尿道炎が挙げられるが、これらに限定されない。処置のために標的とされる非口腔粘膜組織は、実質的に無傷であり得るか、または1つまたは複数の切開、裂傷、または他の組織貫通開口を有してもよい。
【0069】
方法は、治療的または予防的に実践され得る。したがって、方法は、非口腔粘膜組織病変の徴候を呈する対象において、それらの徴候を軽減または排除する目的で、実践され得る。方法は、非口腔粘膜組織感染の徴候を呈しないか、非口腔粘膜組織感染が進行するリスクがあるか、または非口腔粘膜組織感染の早期徴候のみを呈する対象において、非口腔粘膜組織と関連付けられる病変が進行するリスクを減少させる目的で、実践することもできる。
【0070】
膣炎は、膣粘膜組織の炎症を指し、細菌感染、イースト菌感染、および膣粘膜の他の病原体感染から起こり得る。膣炎をもたらし得る病原体としては、カンジダアルビカンス、ガルドネレラ属、連鎖球菌、および膣トリコモナスが挙げられる。膣炎をもたらし得る他の病原体としては、ヘルペス、カンピロバクター、淋菌、クラミジア、およびマイコプラズマが挙げられる。膣炎の先行技術の予防的および治療的処置としては、経口または局所抗生物質、経口または局所抗真菌薬、および局所ステロイドが挙げられる。現在、膣炎の処置に使用されている抗菌薬としては、ネオマイシン、リバキシミン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ポリミキシンB、プログアニル、エコナゾール、およびフルコナゾールが挙げられるが、これらに限定されない。膣炎に対する他の治療薬は、エストロゲン等のステロイドを含む。膣炎の危険因子は、性行動、糖尿病、妊娠、免疫抑制、中絶装置の使用、最近の抗生物質治療、圧注、骨盤感染症、およびホルモン置換治療を含む。
【0071】
副鼻腔炎は、急性感染から慢性感染に及ぶ副鼻腔粘膜感染を指す。急性副鼻腔炎の一般的な原因病原体は、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、およびカタラリス菌である。真菌感染は、糖尿病または免疫不全のある患者、例えば、AIDS患者および免疫抑制された患者において、急性副鼻腔炎の原因として見られる。肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、およびカタラリス菌は、慢性副鼻腔炎にも関与し、黄色ブドウ球菌および嫌気性菌の関与をさらに特徴とし得る。副鼻腔炎に対する先行技術の予防的および治療的処置としては、鎮痛剤、経口抗生物質、鼻洗浄、スチーム吸入、粘液溶解薬、経口ロイコトリエン、経口充血除去剤、および抗ヒスタミンが挙げられる。慢性副鼻腔炎のいくつかの極端な例において、手術は、症状からの緩和を提供するために必要とされ得る。現在、副鼻腔炎の処置に使用されている抗菌薬としては、ガチフロキサシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、セフタジジム、アミノグリコシド、例えば、トブラマイシンおよびストレプトマイシン、アンフォテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、およびニスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。副鼻腔炎の危険因子は、鼻通路の異常、免疫系障害、花粉症、またはアレルギー状態、喘息、花粉への定期的な曝露、人口呼吸器の使用、および経口または静脈内ステロイド処置を含む。
【0072】
尿道炎は、感染誘導性の尿道の炎症である。尿道炎の原因病原体は、淋菌、クラミジア、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、トリコモナスおよび大腸菌を含む。尿道炎の処置は、一般に、経口抗生物質または抗ウイルス薬を含む。尿道炎の危険因子は、尿路感染、複数の性交渉の相手、STDの履歴、女性であること、カテーテルの使用、膣クリーム、発泡体、およびゼリーの使用を含む。
【0073】
尿路感染の原因病原体は、大腸菌、クレブシエラ、ミラビリス変形菌、緑膿菌、大便連鎖球菌、腐性ブドウ球菌、および黄色ブドウ球菌を含む。尿路感染は、一般に、経口抗生物質を使用して処置される。尿路感染の危険因子は、性行動、膀胱留置カテーテル、カテーテルの挿入期間、および女性であることを含む。
【0074】
伝染性結膜炎(結膜炎)は、瞼および眼球の一部の内側を覆う、透明膜(結膜粘膜)の炎症または感染である。ウイルス性結膜炎は、一般にアデノウイルスによってもたらされる。ブドウ球菌および連鎖球菌は、細菌性結膜炎の原因となる一般的な細菌である。ウイルス性結膜炎および細菌性結膜炎は、一方または両方の眼に影響し得る。細菌性またはウイルス性結膜炎の危険因子は、風邪を引いていること、ウイルスまたは細菌形態の結膜炎に感染した人物への曝露、および長時間のコンタクトレンズの装着を含む。細菌性結膜炎に対する現在の処置は、点眼薬または軟膏の形態の局所抗生物質である。ウイルス性結膜炎に対する処置はなく、単にその経過を辿らなければならない。
【0075】
膣炎、副鼻腔炎、尿道炎、尿路および結膜炎感染は、生物膜として現れる場合がある。生物膜は、崩壊することが特に困難であり得るため、これらの粘膜組織感染の処置耐性形態で見出される場合が多い。有利に、二酸化塩素は、生物膜を崩壊、貫通、および/またはそうでなければ不活性化するときに極めて有用である。二酸化塩素の単独使用または抗菌薬との併用は、膣炎、副鼻腔炎、尿道炎、尿路感染、または他の非口腔粘膜組織感染を緩和する際に有用であり得る。
【0076】
B.非口腔皮膚または硬組織治療
二酸化塩素組成物を、非細胞毒性および/または非刺激性様式で投与することによって、非口腔皮膚または硬組織感染を緩和するための方法も本明細書で提供される。本明細書に記載される方法は、非口腔皮膚または硬組織のあらゆる感染を緩和するために使用され得る。非口腔皮膚組織は、ブドウ膜、上皮組織、皮膚組織、および皮下組織(下皮組織とも称される)を含む。非口腔皮膚組織の感染は、座瘡、尋常性疣贅、足白癬、頑癬、および体白癬を含むが、これらに限定されない。非口腔硬組織は、足の爪、指の爪、および硬くケラチン化した組織を含む。代表的な爪の硬生物組織感染は、爪白癬を含む。治療の標的とされる非口腔皮膚または硬組織は、実質的に正常であり得るか、または1つまたは複数の切開、裂傷、または他の組織貫通開口を有してもよい。
【0077】
代表的な非口腔皮膚または硬組織感染は、以下に記載される。しかしながら、請求される方法は、これらの感染のみを処置することに限定されることを意図しない。特に、方法は、あらゆる非口腔皮膚または硬組織感染に使用することができ、組織は、局所的に組成物と接触され得る。
【0078】
ブドウ膜炎は、眼の中間層であるブドウ膜の腫れおよび痒みである。ブドウ膜は、色素性の血管の多い緩い繊維組織で構成される。大部分の例は、前方ブドウ膜炎であり、眼の正面部分の炎症を伴う。一般的な処置は、点眼薬または軟膏の形態で、局所ステロイドを含み、毛様筋調節薬−散瞳薬を用いる場合もある。感染性ブドウ膜炎は、一般に、単純ヘルペスウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、およびサイトメガロウイルス(CMV)によってもたらされる。ブドウ膜炎の危険因子は、サイトメガロウイルス網膜炎およびヘルペス性歯肉口内炎を含む。
【0079】
尋常性座瘡(座瘡)は、皮膚の毛根の閉塞の結果として起こる。炎症は、細菌プロピオン酸菌座瘡によってもたらされる場合があり、皮膚の炎症病変をもたらす。座瘡に対する一般的な処置は、局所殺菌薬、例えば、過酸化ベンゾイル、局所抗生物質、例えば、エリスロマイシン、クリンダマイシン、およびテトラサイクリン、局所網膜症、例えば、トレチノインおよびアダパレン、および経口抗生物質を含む。
【0080】
尋常性疣贅は、ヒトパピローマウイルス(HPV)によってもたらされる皮膚成長である。疣贅は、一般に、局所サリチル酸により処置され、それらを例えば、液体窒素で凍結させるか、または電気ニードルで燃焼させる。
【0081】
白癬(体白癬とも称される)は、体または顔面の皮膚組織の表面的真菌感染を指す。白癬は、皮膚糸状菌感染症である。皮膚糸状菌感染症は、上皮の最上層である死亡したケラチン上で感染および生存する、関連真菌の群である。白癬と関連付けられる3つの最も一般的な真菌は、紅色白癬菌、犬小胞子菌、および毛瘡白癬菌である。白癬の治療は、通常、局所抗真菌薬、例えば、テルビナフィン、ミコナゾール、クロトリマゾール、およびケトコナゾールである。危険因子は、白癬病変との接触、動物、土壌、および植物との接触、長時間の暖かく湿った環境の存在、および良好な衛生の欠如を含む。皮膚糸状菌は、足白癬(水虫)の原因物質でもある。足白癬と関連付けられる最も一般的な真菌は、紅色白癬菌および毛瘡白癬菌である。治療は、クロトリマゾールおよびトルナフテート等の一般に局所的な抗真菌薬である。
【0082】
頑癬または「いんきんたむし」は、股間の皮膚の真菌感染である。頑癬をもたらす最も一般的な真菌は、紅色白癬菌と称される。真菌は皮膚の最上層に影響するため、頑癬は、通常、局所抗真菌クリームまたは軟膏で治療される。有用な抗真菌薬は、トルナフテート、クロトリマゾール、およびミコナゾールを含む。局所ステロイドは、発疹がかゆい場合に使用され得る。
【0083】
指および/または足の爪の真菌感染は、爪甲真菌症または爪白癬と称される。大部分の真菌爪感染に関与する真菌有機体は、紅色白癬菌である。通常、処置は数ヶ月の経口抗真菌薬投与である。爪白癬の危険因子は、つま先が温かく湿った状態で保たれるきつい靴、下爪皮に対する軽傷の反復、共同シャワー、糖尿病を罹患していること、および免疫不全であることを含む。
【0084】
II.非細胞毒性および/または非刺激性組成物
一態様において、方法は、二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性および/または非刺激性組成物を投与することを含む。実施形態において、組成物は、活性医薬成分(API)として、本質的に二酸化塩素で構成される。他の実施形態において、組成物は、二酸化塩素、および少なくとも1つの他のAPI、例えば、抗生物質または抗真菌薬を含む。組成物は、任意選択で、1つまたは複数の他の成分を含む。そのような成分として、着色剤および芳香剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の任意選択成分は、抗菌薬、例えば、抗細菌薬および抗真菌薬、酵素、悪臭制御剤等を含む。膣炎に対する代表的な抗菌薬としては、ネオマイシン、リバキシミン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ポリミキシンB、プログアニル、エコナゾール、およびフルコナゾールが挙げられるが、これらに限定されない。膣炎に対する他の治療薬は、エストロゲン等のステロイドを含む。副鼻腔炎に対する代表的な抗菌薬としては、ガチフロキサシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、セフタジジム、アミノグリコシド、例えば、トブラマイシンおよびストレプトマイシン、アンフォテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾールおよびニスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。座瘡の治療に有用な他の治療薬は、エリスロマイシン、クリンダマイシン、およびテトラサイクリン、トレチノインおよびアダパレンを含む。尿道炎処置は、局所ステロイドおよび任意選択で毛様筋調節薬−散瞳薬をさらに含み得る。尋常性疣贅の処置は、局所サリチル酸、凍結または燃焼させることをさらに含み得る。体白癬に有用な他の治療薬は、クロトリマゾールおよびトルナフテートを含む。トルナフテート、クロチマゾールおよびミコナゾールは、頑癬の代表的な治療薬である。
【0085】
いくつかの実施形態において、あらゆる任意選択の成分は、二酸化塩素による酸化に対して比較的耐性があり、これは、二酸化塩素による組成成分の酸化が、その意図される機能に対して、酸化に使用できる二酸化塩素を減少させる。「比較的耐性のある」は、適用において、二酸化塩素含有組成物を調製および使用する時間尺度において、任意選択の成分の機能は、許容し難いほど消滅せず、組成物は、二酸化塩素に関する有用性/能力の許容可能なレベルを維持し、実質的に非細胞毒性を維持することを意味する。いくつかの実施形態において、組成物は、実質的に非刺激性のままであり得る。耐性成分を識別することに関するガイダンスは、同一出願人による米国特許出願、表題「Additives for Chlorine Dioxide−Containing Compositions」、シリアル番号(tbd)、提出日(tbd)に提供される。
【0086】
二酸化塩素から成る酸化剤を含む組成物の場合、細胞毒性は、オキシ−塩素アニオンの存在に主に起因し、細胞毒性に寄与する他の成分は存在しない。したがって、代表的な実施形態において、組成物1グラム当り0ミリグラム(mg)のオキシ−塩素アニオン〜組成物1グラム当り約0.25mg未満のオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当り0〜約0.24、0.23、0.22、0.21、もしくは0.20mgのオキシ−塩素アニオン、組成物1グラム当り0〜約0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、もしくは0.10mgのオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当り0〜0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、もしくは0.04mgのオキシ−塩素アニオンを含む、二酸化塩素を含み、細胞毒性の一因となる他の構成物が不在である組成物は、実質的に非細胞毒性である。
【0087】
軟組織の刺激は、反応性の高い酸素種および/または酸性および塩基性両方のpHの極端に起因し得る。二酸化塩素含有組成物による軟組織の刺激を最小限にするために、実質的に非細胞毒性である組成物は、少なくとも3.5のpHを有する。代表的な実施形態において、組成物は、少なくとも5、または約6より大きいpHを有する。特定の実施形態において、pHは、約4.5〜約11、約5〜約9、または約6より大きいが約8未満の範囲である。一実施形態において、pHは約6.5〜約7.5である。オキシ−塩素アニオンの濃度は、軟組織の刺激の主要な因子とは考えられていない。
【0088】
二酸化塩素を含む非細胞毒性および/または非刺激性組成物を調製する方法は、同一出願人による米国出願第12/502,761号および第12/502,781号、2009年7月14日提出の表題「Tooth Whitening Compositions and Methods」、および米国出願第12/502,326号および第12/502,356号、2009年7月14日提出の表題「Non−Cytotoxic Chlorine Dioxide Fluids」に記載され、それぞれその全体を参照することにより本明細書に援用される。
【0089】
一実施形態において、二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である組成物は、中性pHを有する実質的に純粋な二酸化塩素溶液を用いて調製され得る。いくつかの実施形態において、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、約5〜約9、または約6.5〜約7.5の範囲のpHを有する。
【0090】
実質的に純粋な二酸化塩素は、あらゆる既知の方法を使用して、二酸化塩素溶液を調製することにより調製されてもよく、その後、その溶液を通して(散布)、脱イオン水の第2の容器にガス(例えば、空気)を気泡化し、実質的に純粋な二酸化塩素の生成物溶液を調製する。ClO2と、場合によってはある程度の水蒸気のみが、源溶液から生成物溶液に移入される。全ての塩成分および酸が源溶液に残る。したがって、実質的に純粋な生成物溶液中にオキシ−塩素アニオンは存在しない。二酸化塩素を調製するための一方法は、亜塩素酸ナトリウムの水性溶液を鉱酸と混合して溶液のpHを約3.5未満に低下させ、十分な時間、例えば、約30分間、溶液を反応させて二酸化塩素を生成することを含む。その後、上述のように、得られた溶液を散布して実質的に純粋な二酸化塩素の生成物溶液を調製する。
【0091】
実質的に純粋な二酸化塩素は、ある程度の分解を起こす場合があるが、速度は、比較的遅い。溶液に栓をし、紫外線曝露から保護することにより、分解速度は、7日間で、二酸化塩素において、約5%〜約25%の減少速度に低下され得る。実質的に純粋な二酸化塩素は、パーベーパレイション技術を使用して調製されてもよく、例えば、米国特許第4,683,039号に開示される。さらに、亜塩素酸金属および酸供給源は、溶液中で反応して、二酸化塩素への高い変換をもたらし、2000ppmより大きい二酸化塩素溶液を産生する。濃縮された溶液は、その後、中性pHに緩衝され得る。同様に、二酸化塩素溶液は、酸性pHで高濃度の二酸化塩素溶液をもたらす、米国特許第5,399,288号に記載される組成物を用いて調製され得る。濃縮された溶液は、その後、実質的に純粋な二酸化塩素溶液を調製するために、緩衝されて実質的に中性pHに達し得る。
【0092】
実質的に純粋な二酸化塩素溶液の別の供給源は、ASEPTROL(BASF Corp.,Florham Park,NJ)物質を使用して調製される二酸化塩素であり、同一出願人による米国特許第US6,432,322号および第6,699,404号に記載される。これらの特許は、水に添加されると二酸化塩素の高い変換溶液を調製するための粒子状成分を含む、実質的に無水の固体を開示する。固体中の粒子状成分は、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸金属、硫酸水素ナトリウム等の酸供給源、および任意選択で、を含み、ジクロロイソシアヌル酸のナトリウム塩、またはその水和物(集約的に、本明細書では「NaDCCA」と称される)等の遊離ハロゲンの供給源を含む。二酸化塩素は、ASEPTROL物質が、水または水性媒体と接触すると生成される。ASEPTROL物質は、米国特許第6,432,322号、および第6,699,404に記載されるように水性溶液中で極端に高い変換率を有するように作製され得、高濃度の二酸化塩素と、低濃度のオキシ−塩素アニオンとをもたらす。したがって、ASEPTROL物質は、実質的に中性pHで、二酸化塩素を効率的に生成するための手段を提供し、したがって、初期の酸性二酸化塩素ベースの生成物に既存する問題を回避する。
【0093】
いくつかの実施形態において、組成物は、組成物を増粘水性流体とする増粘剤成分をさらに含む。実質的に細胞毒性でない二酸化塩素を含む増粘水性組成物を調製するために、いくつかの実施形態において、非刺激性で、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、増粘剤成分および水性媒体と混合され得る。
【0094】
方法の実践に使用される水性増粘流体組成物は、水性媒体中にあらゆる増粘剤成分を含むことができ、増粘流体組成物は、非細胞毒性であり、いくつかの実施形態において、軟組織に対して非刺激性である。加えて、代表的実施形態において、二酸化塩素は、組成物の調製および処置における使用の時間尺度で増粘剤に悪影響を及ぼさない。多くの増粘剤は、当該分野において既知であり、カルボマー(例えば、CARBOPOL増粘剤、Lubrizol Corp.,Wickliffe,OH)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、天然スメクタイト粘土(例えば、VEEGEM,R.T.Vanderbilt Co.,Norwalk,CT)、合成粘土(例えば、LAPONITE(Southern Clay Products,Gonzales,TX)、メチルセルロース、ポリアクリレート(例えば、LUQUASORB1010,BASF,Florham Park,NJ)等の高吸収性ポリマー、ポロキサマー(PLURONIC,BASF,Florham Park,NJ)、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、およびキサンタンガムを含むが、これらに限定されない。そのような増粘剤は、天然親水コロイド(「ガム」とも称される)、半合成親水コロイド、合成親水コロイド、および粘土の4つの群に分類され得る。天然親水コロイドのいくつかの例としては、アカシア、トラガカント、アルギン酸、カラゲナン、イナゴマメゴム、グアーガム、およびゼラチンが挙げられる。半合成親水コロイドの例としては、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。合成親水コロイド(ポリマー、架橋ポリマー、およびコポリマーを含む「ポリマー」とも称される)のいくつかの例としては、ポリアクリレート、高吸収性ポリマー、高分子量ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、ポリ酸化エチレン、ならびにCARBOPOLが挙げられる。粘土(膨張粘土を含む)の例としては、LAPONITE、アタパルジャイト、ベントナイト、およびVEEGUMが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、増粘剤成分は、半合成親水コロイドである。代表的な増粘剤成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0095】
非細胞毒性組成物を調製する際に、組成物の1つまたは複数の成分を、組成物の調製時に先立って混合してもよい。代替的に、組成物の全ての成分は、使用時に調製されてもよい。非細胞毒性溶液または非細胞毒性増粘組成物のいずれかにおいて、本明細書の他の箇所で記載するように、任意に、非細胞毒性である二酸化塩素溶液の使用目的に好適な他の成分が含まれてもよい。溶液中の二酸化塩素は、経時的に分解する。亜塩素酸アニオンの効力および生成の損失を含む、このような分解から生じる問題を避けるために、いくつかの実施形態において、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、希釈または増粘成分および水性媒体と混合される直前に調製される。
【0096】
さらに、いくつかの実施形態において、二酸化塩素を含む増粘組成物は、非口腔組織感染を緩和する方法において、使用される直前に調製され得る。本明細書で使用される、「直前に」とは、効力低下または細胞毒性の証拠を生じない期間を指す。概して、「直前」とは、約14日未満、好ましくは約24時間以下、およびより好ましくは約2時間以下である。代表的な実施形態において、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、組成物の調製の約8時間以内に調製される。二酸化塩素溶液または調製される組成物の強力な紫外線光または高い温度(例えば、周囲温度よりも高い温度、例えば、約25℃)に対する曝露を回避することにも注意する。
【0097】
二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である増粘組成物も、ClO2の粒子状前駆体および水性増粘流体組成物を用いて調製されてもよい。二酸化塩素形成成分は、亜塩素酸金属、塩素酸金属、酸供給源、および任意選択でハロゲン供給源を含む。粒子状前駆体は、これらのうちの1つ、またはこれらのあらゆる組み合わせを含んでもよい。代表的な粒子状前駆体は、ASEPTROL製品である。代表的なASEPTROL製品は、ASEPTROL S−Tab2である。ASEPTROL S−Tab2は、以下の化学組成(重量%)を有する。NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、NaDCC(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)。米国特許第6,432,322号の実施例4は、S−Tab2の代表的な製造プロセスを記載している。顆粒剤は、圧搾されたS−Tab2錠剤を粉砕するか、またはS−Tab2成分の非圧搾粉末を乾燥ローラー圧縮してから、得られた圧縮リボンまたはブリケットを破砕し、その後スクリーニングして所望の大きさの顆粒を得るかのいずれかにより産生され得る。水または水性増粘流体への曝露時、二酸化塩素は、ASEPTROL顆粒剤から生成される。一実施形態において、二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性である組成物は、−40メッシュ顆粒剤を水性増粘流体と混合することにより調製される。一実施形態において、増粘流体の増粘剤成分は、カルボキシメチルセルロースまたはHPMCである。当業者は、ClO2の粒子状前駆体を用いて調製された増粘流体組成物における二酸化塩素産生が、急速だが、即時ではないことを認識するだろう。したがって、二酸化塩素の生成に十分な時間と、対応する亜塩素酸アニオンの消費は、実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物を得るために必要である。当業者は、本開示の教示および当該分野の知識を考慮して、どのくらいの時間が十分であるかを容易に決定することができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、水性増粘流体は、増粘剤成分の完全な水和を可能にするために、ASEPTROL顆粒剤と混合する十分前に調製される。一実施形態において、増粘流体組成物は、高粘度NaCMC粉末を蒸留水に添加することにより形成される。NaCMCを少なくとも8時間水和させ、その後、混合物を均質化するために攪拌する。実質的に非細胞毒性である組成物は、その後、寸法決定されたASEPTROL顆粒剤をNaCMC増粘流体と混合することにより調製される。水和されたNaCMC混合物中での水性媒体との接触は、ASEPTROL顆粒剤を活性化し、二酸化塩素が生成される。
【0099】
別の実施形態において、実質的に非細胞毒性である増粘流体組成物は、使用目的の部位で形成されてもよい。例えば、粘膜組織の粘液等の体液、または呼気等の湿った蒸気は、二酸化塩素の粒子状前駆体、例えばASEPTROL顆粒体を活性化するための水性媒体として機能し得る。一実施形態において、混合物は、粉末の形態での粒子物であってもよく、増粘剤成分の層に混合されることにより、増粘マトリックスを形成してもよい。マトリックスは、非口腔粘膜組織に直接適用されてもよく、組織に存在する水分への曝露は、二酸化塩素の産生を活性化し、実質的に非細胞毒性である組成物を形成する。代替的に、マトリックスは、使用直前に加湿され、次いで、非口腔組織に適用されてもよい。
【0100】
III.非細胞毒性投与のためのデバイスおよび組成物
別の態様において、方法は、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を非口腔組織に送達するデバイスまたは組成物を用いて実践される。二酸化塩素およびオキシ−塩素アニオンを含む組成物を、二酸化塩素が標的組織に有効量で到達するが、オキシ−塩素アニオンが標的組織または処置の標的でない周辺組織を刺激することを実質的に阻害するような方法で投与するためのそのようなデバイス、組成物、システム、および方法は、同一出願人による米国出願第12/502,845号、第12/502,858号、および第12/502,877号、2009年7月14日に提出された、表題「Methods,Systems and Devices for Administration of Chlorine Dioxide」に記載される。一般に、方法は、二酸化塩素自体または二酸化塩素生成成分のいずれかを含む二酸化塩素供給源を提供することを含み、組織に細胞毒性をもたらすオキシ−塩素アニオンをさらに含み、オキシ−塩素アニオンの通過を実質的に阻害し、二酸化塩素の通過を許可するオキシ−塩素アニオン障壁をさらに提供する。いくつかの実施形態において、オキシ−塩素アニオン障壁は、プロトンの通過を実質的に阻害し得る。二酸化塩素供給源は、二酸化塩素供給源と組織との間に置かれるオキシ−塩素アニオン障壁を有する組織に適用され、したがって、オキシ−塩素アニオンが組織に到達するのを回避するか、または実質的に最小化し、それによって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の組織への送達を可能にする。
【0101】
二酸化塩素供給源は、あらゆる二酸化塩素含有組成物または二酸化塩素を原位置で形成することができる成分を含み得る。代表的な実施形態において、二酸化塩素供給源に存在する成分は、方法の実践中に、ならびに成分が障壁と接触する任意の前使用期間中に、オキシ−塩素アニオン障壁と適合可能である。「適合可能である」とは、成分が、二酸化塩素供給源中の二酸化塩素の濃度、オキシ−塩素アニオンの通過の阻害、または障壁によって許可される二酸化塩素の通過に、許容され得ない程度の悪影響を及ぼさないことを意味する。
【0102】
障壁は、二酸化塩素供給源と感染した非口腔粘膜組織の間の層の形態であってもよい。一態様において、二酸化塩素供給源を有しないオキシ−塩素障壁は、最初に組織に適用される。次に、二酸化塩素供給源は、障壁層に適用される。他の実施形態において、二酸化塩素供給源は、最初に障壁に適用され、次に混合物が組織に適用されて、障壁層は組織に接触する。二酸化塩素供給源が二酸化塩素生成成分を含む実施形態において、二酸化塩素の生成は、非口腔組織への(二酸化塩素供給源を有するか、または有しない)障壁の適用前、中、および/または後に活性化されてもよい。
【0103】
別の実施形態において、感染組織は、実質的に非細胞毒性であり、実質的に非刺激量のオキシ−塩素アニオンを含有する二酸化塩素供給源と接触されてもよいが、第2の二酸化塩素供給源は、非口腔組織の反対側の障壁上に位置付けられる場合があり、第2の供給源からの追加の二酸化塩素は、障壁を通過して、非口腔組織に接触するが、第2の供給源内のオキシ−塩素アニオンの障壁を通過することは阻害される。
【0104】
別の実施形態において、二酸化塩素供給源は、1つまたは複数の障壁物質を含むマトリクス中に分散されてもよく、オキシ−塩素アニオンが、組織から隔離されるが、二酸化塩素は、必要に応じて障壁物質を通過し、マトリクスは非口腔組織に接触する。この実施形態において、マトリクスは、組織に直接適用されるか、または任意選択の介入組織接触層に適用される。一態様において、マトリクス自体が障壁物質である。障壁としても機能し得る代表的なマトリクス物質としては、パラフィンワックス等のワックス、ポリエチレン、ワセリン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニル酢酸(EVA)、ポリウレタン、その混合物等が挙げられる。別の態様において、二酸化塩素供給源は、障壁物質によって被覆またはカプセル化される。代表的な障壁物質としては、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンとポリテトラフルオロエチレンとの混合物、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱油、パラフィンワックス、ポリイソブチレン、ポリブテン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。代表的な障壁物質は、親和性の高いオキシ−塩素アニオンに結合し、アニオンの遷移または拡散を妨害または停止させる化合物も含み、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない組成物が、組織に送達されるようにする。化合物は、オキシ−塩素アニオンと不溶性の沈殿物を形成する場合があり、それによって、拡散を妨害または停止させる。代替的に、化合物は、物体または物質上で固定され、それによって拡散または遷移を妨害する。化合物は、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、およびスルホニウム、ならびにマトリクスの一部となり得る他の正電荷化合物等のカチオンであり得る。任意選択で、化合物は、オキシ−塩素アニオン障壁物質上でマトリクスに固定され得るか、または任意選択のバッキング層上で固定され得る。
【0105】
様々な物質および膜を、オキシ−塩素アニオン障壁として使用することができる。障壁は、あらゆる形態であり得、典型的に流体または固体のいずれかである。
【0106】
いくつかの実施形態において、オキシ−塩素アニオン障壁は、流体、例えば、ワセリンである。この実施形態において、流体は、最初に組織に適用され得るか、または介入する組織接触層に適用されて、層としての障壁を形成した後、続いて二酸化塩素供給源が流体障壁層に適用される。二酸化塩素供給源は、粒子として適用され得るか、または膜を形成する物質に包含され得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、オキシ−塩素アニオン障壁は、無孔膜である。膜は、二酸化塩素に対して透過性であり、オキシ−塩素アニオンに対して実質的に不透過性であり続けるならば、任意の厚さであり得、単層または複数層であり得る。代表的な無孔物質は、ポリウレタン膜である。いくつかの実施形態において、ポリウレタン膜は、約30〜約100ミクロン、例えば、約38〜約76ミクロン厚である。代表的な市販のポリウレタン膜には、CoTran(商標)9701(3M(商標))Drug Delivery Systems,St.Paul,MN)およびELASTOLLAN(BASF Corp.,Wyandotte,MI)が挙げられる。ELASTOLLAN製品は、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンである。ELASTOLLANの特定の例は、ELASTOLLAN 1185 A10である。
【0108】
いくつかの実施形態において、オキシ−塩素アニオン障壁は、二酸化塩素に対して透過性であり、オキシ−塩素アニオンに対して実質的に不透過性である、微孔膜である。微孔膜は、二酸化塩素に対して透過性であり、オキシ−塩素アニオンに対して実質的に不透過性であり続けるならば、任意の厚さであり得、単層または複数層であり得る。一実施例において、微孔膜は、熱機械的に拡張するポリテトラフルオロエチレン(例えば、Goretex(登録商標))またはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含み得る。例えば、米国特許第4,683,039号を参照されたい。拡張ポリテトラフルオロエチレンの形成のための手順は、米国特許第3,953,566号に記載されている。代表的なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、ポリジメチルシロキサンおよびPTFEの相互浸透ポリマーネットワーク(IPN)は、米国特許第4,832,009号、第4,945,125号、および第5,980,923号に記載されている。この種類の市販製品、Silon−IPN(Bio Med Sciences Inc.,Allentown,PA)は、単層であり、10〜750ミクロンの厚さで入手可能である。一実施形態において、微孔膜は、厚さ約16ミクロンのシリコンおよびPTFEのIPNである。別の実施例において、膜は、微孔ポリプロピレンフィルムである。代表的な微孔ポリプロピレンフィルムは、CHEMPLEX Industries(Palm City,FL)から市販されている物質であり、約25ミクロン厚の単層膜であり、55%の多孔性および約0.21ミクロンX0.05ミクロンの孔サイズを有する。微孔膜物質は、支持物質との複合物として提供され、使用に必要な構造強度を提供することができる。いくつかの実施形態において、膜は、疎水性であり、膜の疎水性質が、水反応媒体および水受容媒体の両方が、膜を通過するのを回避する一方で、二酸化塩素の分子拡散を可能にする。そのような障壁に使用される物質に関して考慮すべき特徴には、微孔物質の疎水性、孔サイズ、厚さ、および二酸化塩素、塩素、亜塩素酸、塩素酸、塩化物、酸、および塩基の攻撃に対する化学安定性が挙げられる。
【0109】
様々な他の物質および膜を使用して、障壁を形成することができる。例えば、障壁は、微小穿孔ポリオレフィン膜、二酸化塩素に対して実質的に透過性であり、組成物のイオン成分に対して実質的に不透過性であるポリスチレンフィルム、比較的開いたポリマー構造を有するポリマー物質から形成されるパーベーパレーション膜、酢酸セルロースフィルム複合体、ポリシロキサンまたはポリウレタン物質、あるいはワックスを含み得る。当然のことながら、軟粘膜組織との接触の場合、微孔障壁は、特に、デバイスおよび組成物の典型的な用途の時間尺度で、実質的に非刺激性であり、実質的に非細胞毒性でなければならない。
【0110】
障壁内の孔サイズは、障壁を通る二酸化塩素の所望の流速に応じて、広く変動し得る。孔は、二酸化塩素ガスフローの通過を妨げるほど小さくてはならないが、液体フローが許されるほど大きくてもいけない。一実施形態において、孔サイズは、約0.21ミクロンx0.05ミクロンである。障壁の孔の量およびサイズは、適用の温度、障壁物質の疎水性、障壁物質の厚さに応じて、および障壁を通過する二酸化塩素の所望の流速によっても広く変動し得る。二酸化塩素供給源からの二酸化塩素の蒸気圧は、高温で高くなるため、低温に対して高温でより少数かつ小さい孔が所定の二酸化塩素流速に必要とされる。水性二酸化塩素供給源が、疎水性の高い障壁の孔を通って流れる傾向は、疎水性の低い障壁の孔を通る場合よりも低いため、ポリウレタン等の疎水性の低い物質と比較して、PTFEなどの疎水性の高い障壁物質とともに、より多くの大きい孔を使用することができる。障壁強度に関する考慮は、選択される多孔性も決定する。一般的に、障壁多孔性は、約1〜約98%、約25〜約98%、または約50%〜約98%の範囲で異なる。
【0111】
方法を実践するために有用なシステム、組成物、およびデバイスも提供される。一態様において、システムは、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素を組織に送達するために提供される。典型的なシステムは、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素供給源、および第1のシステム成分としてオキシ−塩素アニオン、ならびに第2のシステム成分としてオキシ−塩素アニオン障壁、二酸化塩素供給源と組織との間に置かれる障壁を含み、障壁は、オキシ−塩素アニオンの通過を実質的に阻害し、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許可することによって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素の組織への送達を可能にする。
【0112】
組成物およびデバイスは、上述される方法およびシステムを実装するためにも提供される。したがって、一態様は、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に送達するための組成物を特徴とする。組成物は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素供給源を含むマトリクス、ならびにオキシ−塩素アニオン、およびオキシ−塩素アニオンの通過を実質的に阻害するが、二酸化塩素の通過を許可する少なくとも1つの障壁物質を含み、それによって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素の組織への送達を可能にする。一実施形態において、マトリクスは、水性マトリクス、または疎水性または無水マトリクス、例えば、ワセリンであり得る。いくつかの実施形態において、マトリクス自体は、障壁物質である。例えば、マトリクスは、オキシ−塩素アニオンの拡散を阻害しながら二酸化塩素の拡散を許可するための非極性または弱極性であり得る。
【0113】
マトリクスのバルクは、障壁物質であり得るか、またはマトリクスは、十分な量の障壁物質を含み、非口腔組織への二酸化塩素の選択的送達を行うことができる。例えば、マトリクスは、二酸化塩素の形成のための反応物質または前駆体が埋め込まれるか、または分散されるポリマー物質を含み得、ポリマー物質は、二酸化塩素に対して透過性であるが、オキシ−塩素アニオンに対して実質的に不透過性である。例えば、光波に対する曝露によって、およびより具体的に、紫外線放射に対する曝露によって、活性化されて二酸化塩素を産生する、反応物質または前駆体およびポリエチレンに埋め込まれるエネルギー活性化可能な触媒を含む組成物を説明する、米国特許第7,273,567号を参照されたい。
【0114】
いくつかの実施形態において、マトリクスは、接着ポリマーマトリクス等の接着マトリクスであり得る。そのような接着マトリクスにおいて有用なポリマーは、二酸化塩素に対して実質的に透過性であり、代表的な実施形態において、接着において起こり得るポリマーの分解および間接的な変化を制限するために、二酸化塩素による酸化に対して比較的耐性がある。接着ポリマーは、当該技術分野において知られている。例えば、米国特許第7,384,650号を参照されたい。
【0115】
組成物は、例えば、それを組織上で拡散することによって、または他の方法でそれを組織に適用することによって、あるいは以下に記載されるような送達デバイスにそれを組み込むことによって組織に適用することができる。
【0116】
二酸化塩素およびオキシ−塩素アニオンを含む組成物を送達し、非口腔組織を標的として、有効量の二酸化塩素が標的組織と接触する一方で、オキシ−塩素アニオンが、組織との接触を実質的に阻害または回避するように、様々なデバイスが想定される。実質的な阻害は、標的組織およびあらゆる周囲または周辺組織に対する損傷または刺激を低減、最小化、または防止する。
【0117】
デバイスは、典型的に、接触される組織の遠位にある層および接触される非口腔組織の近位にある層を含むように一方向に配向される。遠位層は、本明細書においてバッキング層とも称される。デバイスは、組織接触層に取り付けられて、デバイスを組織に適用する前に除去される、リリースライナーをさらに含んでもよい。一実施形態において、デバイスは、二酸化塩素供給源および障壁層を含む層を含む。別の実施形態において、デバイスは、(1)バッキング層、(2)二酸化塩素供給源を含む層、および(3)障壁層を含む。障壁層は、非口腔組織と接触するように適合され得るか、または別の組織接触層は、障壁層と組織との間に存在し得る。障壁層または追加の組織接触層は、接着性であり得る。任意選択の追加組織接触層も、二酸化塩素に対して実質的に透過性である。いくつかの実施形態において、障壁層は、熱機械的に拡張されたポリテトラフルオロエチレンフィルムから形成され得る。いくつかの実施形態において、二酸化塩素供給源は、二酸化塩素の粒子状前駆体、例えば、ASEPTROLの顆粒である。
【0118】
一般的に、バッキング層は、二酸化塩素および二酸化塩素供給源の他の成分に対して実質的に不透過性である、任意の適切な物質で形成され得る。バッキング層は、マトリクス層の保護カバーとして機能することができ、支持機能も提供し得る。バッキング層の代表的な物質は、高および低密度ポリエチレン、ポリビニリデンジクロリド(PVDC)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリウレタン、金属ホイル等のフィルムを含む。
【0119】
任意選択の組織接触層は、二酸化塩素に対して実質的に透過性である任意の物質であり得る。任意選択の組織接触層は、吸着物質であり得る。この層の非限定例としては、綿または他の天然繊維あるいは合成繊維布またはメッシュ、発泡体およびマットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
別の実施形態において、デバイスは、上述されるように、バッキング層およびマトリクスを含み、ここで二酸化塩素供給源が分散され、少なくとも1つの障壁物質を含む。マトリクスは、組織と接触するために適合され得るか、または追加の組織接触層が存在し得る。マトリクスまたは追加の組織接触層のいずれかは、接着性であり得る。典型的に、マトリクスは調製された後、バッキング層に被覆される。
【0121】
オキシ−塩素アニオンを含有する二酸化塩素溶液を特定の組織に連続的および/または断続的に提供するためのデバイスも想定される。デバイスは、同一出願人による米国出願第61/149,784号に記載される洗浄デバイスである。洗浄デバイスは、本明細書の他の箇所に記載されるように、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性二酸化塩素組成物とともに使用することができる。別の態様において、同一出願人による米国出願第61/149,784号に記載される洗浄デバイスは、オキシ−塩素アニオン障壁の追加によって修正される。修正は、オキシ−塩素アニオン障壁の追加である。具体的に、本明細書で想定されるデバイスは、オキシ−塩素アニオン障壁を含むチャンバを含み、デバイスは、二酸化塩素溶液をチャンバに供給するための入口および二酸化塩素溶液を除去するための出口、ならびにオキシ−塩素アニオン障壁によって被覆される開口を有する。チャンバは、感染領域を取り囲む組織で堅固な実質的に漏れないシールを形成するように設計され、開口は感染領域の近位にある。オキシ−塩素アニオン障壁は、感染領域とチャンバ開口の間に置かれる。オキシ−塩素アニオンを含有する二酸化塩素溶液は、チャンバに導入され、二酸化塩素は、開口を被覆するオキシ−塩素アニオン障壁を通過し、それによって感染領域に接触する一方で、障壁を通るオキシ−塩素アニオンの通過は、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性レベルに制限される。このデバイスは、本明細書に記載されるその他のものと同様に、濃度の高い二酸化塩素溶液(例えば、約700ppmよりもはるかに高い)の使用を可能にしながら、典型的にそのような溶液中に見られるオキシ−塩素アニオンの細胞毒性を最小化または排除する。
【0122】
二酸化塩素を調製するための当該技術分野における任意の方法は、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を送達するデバイスおよび組成物において、二酸化塩素を形成するために、二酸化塩素供給源として使用されてもよい。例えば、水中で亜塩素酸イオンを反応させて、水に溶解された二酸化塩素ガスを産生することによって、二酸化塩素を調製する多数の方法が存在する。二酸化塩素を調製するための従来の方法は、亜塩素酸ナトリウムを塩素ガス(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)、または塩酸(HCl)と反応させることを含む。しかしながら、二酸化塩素生成の動態は、亜塩素酸アニオン濃度において高次であるため、二酸化塩素形成は、一般に高濃度で行われ(1000ppmより大)、得られる二酸化塩素含有溶液は、典型的に、所定の適用の使用濃度に合わせて希釈されなければならない。二酸化塩素は、酸性化または酸性化と還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンからも調製され得る。二酸化塩素は、亜塩素酸イオンを有機酸無水物と反応させることによって産生することもできる。
【0123】
水蒸気と接触すると、二酸化塩素ガスを生成する物質で構成される二酸化塩素生成組成物が、当該技術分野において知られている。例えば、同一出願人による米国特許第6,077,495号、第6,294,108号、および第7,220,367号を参照されたい。米国特許第6,046,243号は、親水性物質中に溶解される亜塩素酸塩と、疎水性物質中の酸放出剤の複合体を開示する。この組成物は、水分に曝露されると、二酸化塩素を生成する。同一出願人の米国特許公開第2006/0024369号は、有機マトリクスに統合される二酸化塩素生成物質を含む、二酸化塩素生成複合体を開示する。二酸化塩素は、複合体が水蒸気または電磁エネルギーに曝露されると生成される。乾燥極性物質を用いた活性化による、乾燥または無水二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素生成は、同一出願人による係属中の出願第61/153,847号に開示される。米国特許第7,273,567号は、亜塩素酸アニオンの供給源とエネルギー活性化可能な触媒を含む組成物から二酸化塩素を調製する方法を説明する。組成物を適切な電磁エネルギーに曝露することは、二酸化塩素ガスの産生を順に触媒する触媒を活性化する。
【0124】
二酸化塩素溶液は、粉末、顆粒、ならびに錠剤およびブリケット等の固形圧縮体を含む、固形混合物から産生することもでき、液体水と接触すると、二酸化塩素ガスを生成する成分で構成される。例えば、同一出願人による米国特許第6,432,322号、第6,699,404号、および第7,182,883号、ならびに米国特許公開第2006/0169949号、および第2007/0172412号を参照されたい。いくつかの実施形態において、二酸化塩素は、二酸化塩素の粒子状前駆体を含む組成物から生成される。したがって、二酸化塩素供給源は、二酸化塩素の粒子状前駆体を含むか、または本質的にそれで構成される。用いられる粒子状前駆体は、ASEPTROL製品、例えば、ASEPTROL S−Tab2およびASEPTROL S−Tab10であり得る。ASEPTROL S−Tab2は、以下の化学組成(重量%)を有する。NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物(NaDCC)(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)。米国特許第6,432,322号の実施例4は、S−Tab2錠剤の代表的な製造プロセスを記載している。ASEPTROL S−Tab10は、以下の化学組成(重量%)を有する。NaClO2(26%)、NaHSO4(26%)、NaDCC(7%)、NaCl(20%)、MgCl2(21%)。米国特許第6,432,322号の実施例5は、S−Tab10錠剤の代表的な製造プロセスを記載している。
【0125】
本明細書の他の箇所に記載される、二酸化塩素生成の活性化は、二酸化塩素生成成分を、適切な薬剤(例えば、水性媒体、電磁エネルギー等)と接触させることによる投与前であってもよい。代替的に、二酸化塩素生成は、水性媒体、例えば、粘液と接触させることによって、原位置で開始した。
【0126】
IV.二酸化塩素生成成分
二酸化塩素生成成分は、少なくとも1つのオキシ−塩素アニオン供給源および二酸化塩素生成の活性剤を指す。いくつかの実施形態において、活性剤は、酸供給源である。これらの実施形態において、成分は、任意選択で、遊離ハロゲン供給源をさらに含む。遊離ハロゲン供給源は、塩素等のカチオンハロゲン供給源であり得る。他の実施形態において、活性剤は、エネルギー活性化可能な触媒である。さらに他の実施形態において、活性剤は、乾燥または無水極性物質である。
【0127】
オキシ−塩素アニオン供給源は、概して、亜塩素酸塩および塩素酸塩を含む。オキシ−塩素アニオン供給源は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、アルカリ金属塩素酸塩、アルカリ土類金属塩素酸塩、およびそのような塩の組み合わせであってもよい。代表的な実施形態において、オキシ−塩素アニオン供給源は、金属亜塩素酸塩である。いくつかの実施形態において、金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウムおよび亜塩素酸カリウム等のアルカリ金属亜塩素酸塩である。アルカリ土類金属亜塩素酸塩も、利用され得る。アルカリ土類金属亜塩素酸塩の例としては、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸カルシウム、および亜塩素酸マグネシウムが挙げられる。代表的な金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウムである。
【0128】
酸供給源によって活性化される二酸化塩素生成の場合、酸供給源は、無機酸塩、強酸のアニオンおよび弱塩基のカチオンを含む塩、水と接触するとプロトンを溶液に遊離させ得る酸、有機酸、無機酸、およびそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの態様において、酸供給源は、乾燥保存中、実質的に金属亜塩素酸塩と反応しないが、水性媒体の存在下にある場合、金属亜塩素酸塩と反応して、二酸化塩素を形成する、粒子状の固形物質である。酸供給源は、水溶性、実質的に水に不溶性、またはこれら2つの中間であってもよい。代表的な酸供給源は、約7未満、および約5未満のpHを産生するものである。
【0129】
代表的な実質的に水溶性の酸供給源形成成分は、ホウ酸、クエン酸、酒石酸等の水溶性固体酸、無水マレイン酸等の水溶性有機酸無水物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、硫酸水素カリウム(KHSO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、およびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。代表的な酸供給源形成成分は、硫酸水素ナトリウム(二硫酸ナトリウム)である。さらなる水溶性の酸供給源形成成分は、当業者に既知である。
【0130】
二酸化塩素生成成分は、任意選択で、遊離ハロゲン供給源を含む。一実施形態において、遊離ハロゲン供給源は、遊離塩素供給源であり、遊離ハロゲンは、遊離塩素である。無水組成物に使用される遊離ハロゲンの適切な例は、NaDCCA等のジクロロイソシアヌル酸およびその塩類、トリクロロシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、および次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸の塩類、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントイン等を含む。遊離ハロゲンの代表的な供給源は、NaDCCAである。
【0131】
エネルギー活性化可能な触媒によって活性化される二酸化塩素生成の場合、エネルギー活性化可能な触媒は、金属酸化物、金属硫化物、および金属リン化物から成る群から選択される。代表的なエネルギー活性化可能な触媒は、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化ルテニウム(RuO2)、二酸化イリジウム(IrO2)、二酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸化物(Ta25)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、鉄(III)酸化物(Fe23)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化ニオブ(NbO5)、三酸化インジウム(In23)、酸化カドミウム(CdO)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化銅(Cu2O)、五酸化バナジウム(V25)、三酸化クロム(CrO3)、三酸化イトリウム(YO3)、酸化銀(Ag2O)、TixZr1-x2(式中、xは0〜1の間)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される金属酸化物を含む。エネルギー活性化可能な触媒は、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され得る。
【0132】
二酸化塩素生成成分は、任意選択で、マトリクス中に存在してもよい。そのようなマトリクスは、同一出願人による米国特許公開第2006/0024369号に記載されるもの等の有機マトリクスであってもよい。これらのマトリクスにおいて、二酸化塩素は、複合体が水蒸気または電磁エネルギーに曝露されると生成される。マトリクスは、水和ゲルまたは無水ゲルであってもよい。疎水性マトリクスを用いてもよい。疎水性マトリクス物質は、水不浸透性の固形成分、例えば、疎水性ワックス、疎水性油等の水不浸透性流体、および疎水性固体と疎水性流体の混合物を含む。疎水性マトリクスを使用する実施形態において、二酸化塩素の活性化は、同時係属の米国出願第61/153,847号に記載されるように、乾燥または無水極性物質であってもよい。
【0133】
V.処置レジメン
方法は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む組成物の単回投与を含み得る。他の実施形態において、方法は、接触ステップの1回または複数の反復を含む。代表的な実施形態において、接触ステップの反復は、実質的に連続する。さらに他の実施形態において、組成物は、二酸化塩素に加えて、第2の治療薬を含む。一実施形態において、第2の治療薬は、抗生物質または抗真菌薬等の抗菌薬である。感染した非口腔生物組織との接触は、当該技術分野において知られているあらゆる方法によって達成することができ、連続潅注および断続潅注を含む、流体組成物による洗浄(潅注)、クリームまたは軟膏成分、湿布薬、坐薬等の挿入物、経皮パッチ、およびフィルムの適用を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、方法は、組成物が生物組織と接触している間、組成物を超音波で分解するステップをさらに含む。超音波分解ステップは、二酸化塩素の組織透過性を増大させると考えられる。
【0134】
方法は、交互の処置ステップをさらに含み得、1つ目のステップは、二酸化塩素供給源を含む組成物の投与を含み、2つ目のステップは、第2の非二酸化塩素治療薬を含む組成物の投与を含む。これらのステップは、あらゆる順序および複数反復で行われてもよい。連続ステップは、同一の組成物または異なる組成物を含んでもよい。
【0135】
反復実施形態において、二酸化塩素供給源を含む組成物は、反復中、同一であり得るが、各反復における組成物は、新鮮であることがより一般的である。つまり、1回の反復における組成物は、組成物の新鮮標本と置き換えられる。デバイスまたは組成物を使用して、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織に送達する実施形態において、1回の反復におけるデバイスまたは組成物は、未使用のデバイスまたは組成物の新鮮標本と置き換えられる。「未使用のデバイス」は、ClO2を送達するための組織インターフェースが、以前に生物組織に曝露されていない送達デバイスを意味する。したがって、未使用のデバイスは、二酸化塩素の崩壊が最小であるか、全く崩壊していない。いくつかの実施形態において、二酸化塩素供給源を含む組成物の単一バッチは、連続反復の系全体を網羅するために十分な量で、治療の開始時に調製され、新鮮標本は、各反復のための単一バッチから取られる。他の実施形態において、二酸化塩素を含む組成物は、各反復前に新鮮に調製される。
【0136】
方法は、二酸化塩素源を含む組成物による処置の2つ以上の連続ステップに続いて、他の治療薬による処置の少なくとも1つのステップを含み得る。二酸化塩素供給源を含む組成物による処置の回数および/または期間は、第2の治療組成物による処置の回数および/または期間と同一であるか、または異なり得る。二酸化塩素供給源を含む組成物は、複数のステップにおいて同一であり得るか、または異なり得、例えば、二酸化塩素の濃度が異なる。同様に、第2の治療薬組成物は、複数のステップにおいて同一であり得るか、または異なり得る。同様に、処置ステップの期間は、二酸化塩素供給源を含む組成物に対して、および第2の治療薬組成物に対して同一であるか、または異なり得る。
【0137】
組成物の用量は、広い制限内で変動し、それぞれの特定例において、個別の要件に対して調整されてもよい。用量は、治療される状態、受容者の一般健康状態、投与の回数および頻度、および当業者に知られている他の変数に依存する。したがって、非口腔組織に送達される二酸化塩素の量(すなわち、有効量)は、組織への二酸化塩素の適用から意図される結果に関連する。当業者は、所与の使用に有効な適切な量または範囲量の二酸化塩素を容易に決定することができる。一般に、有用な量は、例えば、約1〜約2000ppmの二酸化塩素、少なくとも約1〜約1000ppmまたは少なくとも約20〜約400ppmを含む。いくつかの実施形態において、二酸化塩素は、少なくとも約5ppm、少なくとも約20ppm、または少なくとも約30ppmで組成物中に存在する。典型的には、二酸化塩素の量は、約1000ppm以下、約700ppm以下、約500ppm以下、および約200ppm以下であり得る。一実施形態において、組成物は、約30〜約100ppmの二酸化塩素を含む。いくつかの実施形態において、有用な用量範囲は、接触領域(平方メートル)当り約2.5mgの二酸化塩素〜約500mg/m2二酸化塩素であり得る。少なくとも約10mg/m2、少なくとも約15mg/m2、および少なくとも約20mg/m2の投与量も有効であり得る。
【0138】
有効性を得るために組織と接触させる期間は、本明細書の教示および該技術分野における知識に照らして、当業者によって容易に決定され得る。接触の期間は、例えば、感染の種類、生物膜の有無、組織型、処置が治療的であるか、または予防的であるか、および二酸化塩素組成物の剤形(例えば、液体またはゲル、あるいは徐放製剤)に影響を受ける。有利に、長時間の接触後も、組成物は、実質的に非口腔組織を刺激しない。一般的に、接触の期間は、数秒から数分、数時間、数日の範囲である。いくつかの実施形態において、接触の期間は、少なくとも約60秒、少なくとも約1、2、3、4、または5分、少なくとも約6、7、8、9、または10分、あるいは少なくとも約11、12、13、14、または15分であり得る。いくつかの実施形態において、接触期間は、16、17、18、19、または20分以下、さらに21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30分以下、およびさらに約35、40、45、50、55、または60分以下であるか、いくつかの状況下においてはそれ以上であり得る。特定の実施形態において、接触の期間は、約1〜約60分、約5分〜約30分の範囲、または約10〜約20分の範囲である。いくつかの実施形態において、処置のための接触の期間は、約15分である。いくつかの実施形態において、接触の期間は、少なくとも約1時間〜約72時間、少なくとも約8時間〜約48時間、または少なくとも約12時間〜約36時間の範囲である。特定の実施形態において、接触の期間は、約1時間〜約6時間、または約1.5時間〜約4時間の範囲である。
【0139】
二酸化塩素の用量は、処置に使用される組成物中の二酸化塩素の濃度(100万分の1)掛ける組織が二酸化塩素と接触する期間(分)の単位でもあり得る(濃度x接触期間)。いくつかの実施形態において、ppm−分単位の用量は、約100ppm−分〜約10,000ppm−分、または約200ppm−分〜約5000ppm−分の範囲であり得る。方法が生物膜を含む感染に関して実践される実施形態において、少なくとも約200ppm−分の用量が有用である。
【0140】
組成物は、1日に数回の頻度で対象に投与され得るか、またはそれよりも少ない頻度、例えば1回、1日1回、1週間に1回、2週間毎に1回、1ヶ月に1回、またはさらに少ない頻度、例えば、数ヶ月に1回または1年に1回未満投与されてもよい。接触の頻度は、熟練者には容易に明らかとなり、処置される疾患の種類および重篤度、ならびに組織に接触させる方法等であるが、これらに限定されないあらゆる数の因子に依存する。処置は、1エピソードの組織接触または1エピソードより多い組織接触を含んでもよい。処置エピソードは、実質的に連続するか、時間で区切られるか(例えば、数時間〜数日、数日〜数週間、および数ヶ月から1年以上を含む長い間隔)または両方であってもよい。いくつかの実施形態において、治療は、組織接触の少なくとも2つの実質的に連続するエピソードを含む。連続エピソードは、約15分という同一期間であり得るか、または10分と20分というような異なる期間であり得る。いくつかの実施形態において、各エピソードの組成物は、新鮮に形成される。本明細書で使用される、「新鮮に形成される」は、最終組成物の他の成分への二酸化塩素の添加が、組織を組成物と接触させる前の約1時間以内、約30分以内、または約15分以内に起こることを意味する。
【0141】
組織と接触する二酸化塩素は、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない。他の実施形態において、組織と接触する実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、1グラム当りゼロミリグラム(mg)のオキシ−塩素アニオン〜1グラム当り約0.25mg以下のオキシ−塩素アニオン、または組成物1グラム当りゼロ〜0.24、0.23、0.22、0.21、または0.20mgのオキシ−塩素アニオン、あるいは組成物1グラム当りゼロ〜0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、または0.10mgのオキシ−塩素アニオン、あるいは組成物1グラム当りゼロ〜0.09、0.08、0.07、0.06、0.05または0.04mgのオキシ−塩素アニオンを含み、細胞毒性に寄与する他の成分は含まないため、実質的に非細胞毒性である。いくつかの実施形態において、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、接触領域1平方メートル当り約400ミリグラム未満、約375mg/m2未満、約350mg/m2未満、約325mg/m2未満、または約300mg/m2未満のオキシ−塩素アニオンを含む。いくつかの実施形態において、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、ゼロ〜約200mg/m2未満のオキシ−塩素アニオンを含む。他の実施形態において、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、ゼロ〜約100mg/m2未満のオキシ−塩素アニオンを含む。
【0142】
オキシ−塩素アニオンは、EPA試験方法300(Pfaff,1993,“Method 300.0 Determination of Inorganic Anions by Ion Chromatography,”Rev.2.1,US Environmental Protection Agency)、または電流測定法(Amperometric Method II in Eaton et al,ed.,“Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater”19th edition,American Public Health Association,Washington DC,1995)に基づく滴定法の一般手順後、イオンクロマトグラフィーを含む、当業者に既知のあらゆる方法を用いて、二酸化塩素溶液または組成物中で測定され得る。代替的に、オキシ−塩素アニオンは、電流測定法と同等の滴定法により測定されてもよいが、この方法は、ヨウ化物のヨウ素への酸化を使用し、その後、電流滴定の代わりにチオ硫酸ナトリウムを用いて澱粉の終点まで滴定するが、この方法は、本明細書で、「pH7緩衝滴定」と称される。亜塩素酸塩の分析標準は、通常、約80重量%の純粋な亜塩素酸ナトリウムを含むと考えられる、工業グレードの固形亜塩素酸ナトリウムから調製され得る。
【実施例】
【0143】
方法は、以下の実験例を参照することによって、さらに詳細に説明される。これらの実施例は、単に例示的な目的として提供されるものであり、別段記載のない限り、限定されることを意図しない。したがって、方法は、以下の実施例に限定されると解釈されるものではなく、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるあらゆる、そして全ての変形を包含するものと解釈されるものとする。
【0144】
二酸化塩素治療は、微生物を一定期間、二酸化塩素に曝露することを含む。治療条件は、二酸化塩素の「投与量または用量」と称される場合が多く、使用する処置時間に渡る、時間の関数としての二酸化塩素濃度C(t)の積分を計算することによって決定することができる。
【0145】
【数1】

【0146】
二酸化塩素濃度が、処置時間に渡って概して一定しているシステム(例えば、±10%相対未満の変化)または処置時間に渡って線形に変化するシステムにおいて、平均二酸化塩素濃度は、開始および終了濃度を平均化し、次に、曝露期間中の該平均二酸化塩素濃度に曝露時間を掛けることによって計算されてもよい(平均濃度x時間)。投与量は、ppm−分の単位で一般に示される。
【0147】
一連の実験を行って、緑膿菌(PA)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、または両方の組み合わせで構成される細菌生物膜を死滅させるために必要な二酸化塩素の投与量を推定した。
【0148】
細菌生物膜は、回転ディスク生物膜反応器内の無孔セラミックディスク上で、7〜10日間成長させた。反応器にPA、MRSA、またはMRSAとPA細菌の混合物を植菌し、PA、MRSA、または混合PA/MRSA生物膜をそれぞれ生成した。
【0149】
二酸化塩素溶液は、ASEPTROL(登録商標)S−Tab10錠剤を使用して、異なる公称濃度で生成し、次に、Hach Model2400UV/Vis分光光度計を使用し、製造者の指示に従って正確な濃度を測定した。生物膜含有ディスクの対は、異なる二酸化塩素濃度の溶液中に異なる時間浸漬し、希釈チオ硫酸ナトリウム溶液で中和した後、プレートに載せて各ディスク上で生存している細菌の数を判断した。2つの未処理ディスクも中和溶液に曝露し、プレートに載せて開始細菌数を判断した。全ての試験において、基準細菌数は、ディスク当り107〜107.5コロニー形成単位(cfu/ディスク)の範囲であった。1ログ減数は、cfu/ディスクの1桁減数、例えば、107.1cfu/ディスクから106.1cfu/ディスクへの減数を指す。したがって、実質的に完全な死滅は、細菌のログ減数が約7〜7.5である場合に達成される。
【0150】
表は、異なる実験で使用される試験条件を要約し、異なる細菌有機体のログ減数に関する結果を提示する。混合PA/MRSA生物膜の場合、結果は総細菌数として示される。データは、図1においても示される。
【0151】
【表1】

【0152】
これらのデータは、約400〜1000ppm−分の間の投与量により、PA生物膜、MRSA生物膜、または混合PA/MRSA生物膜のうちのいずれかの完全な死滅が達成されたことを示す(試料2、9、および15を参照)。PA生物膜は、MRSA生物膜よりも死滅がわずかに容易であるように思われるが、差異は小さい。約200ppm−分よりも多い投与量で、約5桁(すなわち、5ログ)の死滅を達成することができる(試料1、7、および12を参照)。これらのデータは、二酸化塩素が、生物膜を崩壊および全滅させるための優れた能力を有することを証明する。
【0153】
本明細書に引用されるそれぞれの、および全ての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0154】
特定の実施形態を参照しながら方法、デバイス、組成物、およびシステムを開示したが、他の実施形態および変形が、方法、装置、組成物、およびシステムの精神および範囲から逸脱することなく、他の当業者によって考案され得ることは明らかである。付属の特許請求の範囲は、全てのこのような実施形態および同等の変形を含むように解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非口腔生物組織感染を緩和するための方法であって、
前記方法は、有効量の二酸化塩素を提供するために、二酸化塩素供給源を含む組成物を前記非口腔生物組織に投与するステップを含み、
前記投与ステップは、
i)前記二酸化塩素供給源を含む実質的に非細胞毒性の組成物と前記組織を接触させること、
ii)前記二酸化塩素供給源およびオキシ−塩素アニオンを含むデバイスであって、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を前記組織に送達するデバイスと前記組織を接触させること、または
iii)前記二酸化塩素供給源およびオキシ−塩素アニオンと、前記オキシ−塩素アニオンの通過を実質的に阻害して、実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許可し、それによって、前記実質的にオキシ−塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を前記組織に供給することを可能にする障壁物質と、を含む組成物と前記組織を接触させること
のうちの1つまたは複数を含み、それによって、前記接触させた組織の前記感染を緩和する方法。
【請求項2】
前記投与するステップが、
前記組織を、前記二酸化塩素供給源を含む実質的に非細胞毒性の組成物と接触させることを、少なくとも2回実質的に連続して反復することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与するステップが、
洗浄デバイスを使用して、実質的に非細胞毒性の組成物で前記組織を洗浄することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記投与するステップが、
二酸化塩素供給源、オキシ−塩素アニオン、および障壁物質を含む組成物と前記組織を接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
非口腔生物組織の感染を緩和するための方法であって、
前記方法は、有効量の二酸化塩素を提供するために、二酸化塩素供給源を含む組成物を前記非口腔生物組織に投与するステップを含み、
前記投与するステップは、前記二酸化塩素供給源を含む実質的に非刺激性の組成物と前記組織を接触させ、それによって、前記接触させた組織の前記感染を緩和する方法。
【請求項6】
前記組成物が、約4.5〜約11のpHを有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む請求項1または5に記載の方法。
【請求項8】
前記二酸化塩素供給源は、二酸化塩素生成成分として、二酸化塩素の粒子状前駆体を含む、請求項1または5に記載の方法。
【請求項9】
前記非口腔生物組織感染は、軟生物組織感染である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項10】
前記非口腔生物組織感染は、硬生物組織感染である、請求項1または5に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−516893(P2012−516893A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549232(P2011−549232)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/023023
【国際公開番号】WO2010/091068
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】