説明

二酸化炭素の固定方法

【課題】鉄酸化細菌による炭酸同化が、長期にわたって継続できるようにする。
【解決手段】ステップS101で、鉄を含む培地で鉄酸化細菌(Thiobacillus ferrooxidans)を培養する。次に、ステップS102で、上記培地に2価の鉄イオン(Fe(II)イオン)を供給する。例えば、培地の電位を2価の鉄イオンと3価の鉄イオンの平衡電位にするなどのことにより、培地に含まれる3価の鉄イオンを還元することで、2価の鉄イオンを供給すればよい。また、培地に、例えば、予め設定されている時間毎に、新たに鉄を供給することで2価の鉄イオンを供給してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄酸化細菌を用いた二酸化炭素の固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄を酸化させる微生物として鉄酸化細菌(チオバキラス フェロオキシダンス:Thiobacillus ferrooxidans)が知られている(非特許文献1参照)。鉄酸化細菌は、化学合成独立栄養微生物と呼ばれ、成長や生命維持のためのエネルギー獲得のために、無機物である鉄イオンを摂取し、化学反応によりいわゆる炭酸同化を行っている。
【0003】
鉄酸化細菌の代謝では、2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化する際に生じるエネルギーを利用し、空気中の二酸化炭素を炭酸同化して有機物を合成している。従って、鉄を含む培地で鉄酸化細菌を培養(生育)することで、空気中の二酸化炭素を有機物として固定させることができるものと期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本材料科学会編、「先端材料シリーズ 微生物と材料」、日本材料科学会、第1版、74−76項、2001年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鉄を含む培地に鉄酸化細菌を含有させるだけでは、培地に含まれる2価の鉄の全てが3価の鉄に酸化されて失われると、炭酸同化(二酸化炭素の固定)が停止されてしまうため、長期にわたって炭酸同化を継続させることができず、実用に供すことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、鉄酸化細菌による炭酸同化が、長期にわたって継続できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る二酸化炭素の固定方法は、鉄を含む培地で鉄酸化細菌を培養する第1ステップと、培地に2価の鉄イオンを供給する第2ステップとを少なくとも備える。
【0008】
上記二酸化炭素の固定方法において、第2ステップでは、培地に含まれる3価の鉄イオンを還元することで、2価の鉄イオンを供給すればよい。この場合、3価の鉄イオンの還元は、培地の電位を3価の鉄イオンと2価の鉄イオンの平衡電位にすることで行えばよい。また、第2ステップでは、培地に鉄を供給することで2価の鉄イオンを供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、鉄酸化細菌を培養している鉄を含む培地に、2価の鉄イオンを供給するようにしたので、鉄酸化細菌による炭酸同化が、長期にわたって継続できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における二酸化炭素の固定方法を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態2における二酸化炭素の固定方法を実現するためのシステムの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0012】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における二酸化炭素の固定方法を説明するフローチャートである。本実施の形態における二酸化炭素の固定方法は、まず、ステップS101で、鉄を含む培地で鉄酸化細菌(Thiobacillus ferrooxidans)を培養する。次に、ステップS102で、上記培地に2価の鉄イオン(Fe(II)イオン)を供給する。例えば、培地の電位を2価の鉄イオンと3価の鉄イオンの平衡電位にするなどのことにより、培地に含まれる3価の鉄イオンを還元することで、2価の鉄イオンを供給すればよい。また、培地に、例えば、予め設定されている時間毎に、新たに鉄を供給することで2価の鉄イオンを供給してもよい。
【0013】
上述した本実施の形態によれば、鉄を含む培地で鉄酸化細菌を培養している環境に、2価の鉄イオンを供給するようにしたので、鉄酸化細菌に対して継続的に2価の鉄イオンが供給されるようになり、鉄酸化細菌による空気中の二酸化炭素の同化が、継続的に行われるようになる。
【0014】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図2は、本発明の実施の形態2における二酸化炭素の固定方法を実現するためのシステムの構成を示す構成図である。このシステムは、鉄を含んで鉄酸化細菌が培養されている培地201と、培地201に2価の鉄イオンと3価の鉄イオンの平衡電位を印加する平衡電位印加部202とを備える。培地201は、例えば、土壌に鉄を混合したものであればよい。ここで、pH=2の状態が、鉄酸化細菌が生息する環境として適しているため、培地201は、酸性であることが望ましく、特に、培地201は、pH=2の状態とするとよい。
【0015】
また、平衡電位印加部202には、例えば、ポテンショスタットを用いればよい。ところで、ポテンショスタットなどの平衡電位印加部202を動作させるためには、電源が必要となるが、例えば、太陽電池などの光電変換装置を用いて太陽より電源を得るようにすればよい。
【0016】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、培地に2価の鉄イオンを供給するために培地に鉄を供給する場合、いわゆるくず鉄などの廃材を用いることも可能である。また、廃棄された鉄鋼類が収容されている廃棄場などの土壌を、このまま培地として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0017】
201…培地、202…平衡電位印加部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を含む培地で鉄酸化細菌を培養する第1ステップと、
前記培地に2価の鉄イオンを供給する第2ステップと
を少なくとも備えることを特徴とする二酸化炭素の固定方法。
【請求項2】
請求項1記載の二酸化炭素の固定方法において、
前記第2ステップでは、前記培地に含まれる3価の鉄イオンを還元することで、前記2価の鉄イオンを供給することを特徴とする二酸化炭素の固定方法。
【請求項3】
請求項2記載の二酸化炭素の固定方法において、
前記3価の鉄イオンの還元は、
前記培地の電位を3価の鉄イオンと2価の鉄イオンの平衡電位にすることで行うことを特徴とする二酸化炭素の固定方法。
【請求項4】
請求項1記載の二酸化炭素の固定方法において、
前記第2ステップでは、前記培地に鉄を供給することで前記2価の鉄イオンを供給することを特徴とする二酸化炭素の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−160676(P2011−160676A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23948(P2010−23948)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】