説明

二重被覆弾性糸

【目的】 視角方向により色調変化するストレッチ編物、および経糸と緯糸に同一糸条を用いても後染めで視角方向により色調変化するストレッチ織物を、複雑な工程や特殊糸を用いることなしに、快適性を阻害することなく着用でき、汎用繊維を用いて製造することができる被覆弾性糸の提供。
【構成】 異色に染め分けられた2本のカバー糸、または後染めで異色に染め分けられる2本のカバー糸を弾性糸に被覆した二重被覆弾性糸。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は被覆弾性糸に関する。さらに詳しくはストッキング、水着、ファンデーション、ウインドブレーカー等に用いられ、視角方向により色調変化するストレッチ編織物を提供するための被覆弾性糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、視角方向により色調変化する織物は、先染めて互いに異色に染色した経糸と緯糸あるいは後染で互いに異色に染め分けできる経糸と緯糸を用いて製織し得られている。また、玉虫色発色性編織物は、光の干渉を利用して発色をさせるために、配向フィルムと偏光フィルムとをはり合せ、細く切断した偏平糸を編織しても得られる。
【0003】視角方向により色調変化する編物としては、ラメ糸と繊維糸を無撚で用いて編むという特公昭48−13748号公報の開示がある。しかしながら、経糸と緯糸を互いに異色、特に例えば赤に対して緑、青に対して黄といった補色に染色し、高低差をつけて視角方向により色調変化する効果は織物では発現するが、編物の場合は困難である。
【0004】織物の場合でも、後染めが可能なものは、経糸と緯糸の糸条のどちらか一方を染色する場合他方の糸条は同一染料で染色も、汚染もされないものに限定されており、経糸と緯糸が同一糸条の場合はコストの高い先染めで経糸と緯糸を異色に染めなければならないのが現状である。また、配向フィルムと偏光フィルムをはり合せ、細く切断した偏平糸や、ラメ糸を用いて視角方向により色調変化する編織物は作成することはできるが、特殊糸であるためにコストが高くなってしまう。
【0005】また、フィルムを切断した偏平糸や、ラメ糸は外衣では有効であるが直接肌に触れる衣料としては肌ざわりやその他の快適性の面から、不向きである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記のような複雑な工程や特殊糸を用いることなしに汎用繊維を用いて快適性を阻害することなく着用でき、視角方向により色調変化するストレッチ編物、および経糸と緯糸に同一糸条を用いても後染めで視角方向により色調変化するストレッチ織物を製造するための被覆弾性糸を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、異色に染め分けられた2本のカバー糸あるいは後染めで異色に染め分けられる2本のカバー糸を弾性糸に被覆して得られることを特徴とする二重被覆弾性糸、である。本発明は、視角方向により色調変化するストレッチ編物および経糸と緯糸に同一糸条を用いても後染めで視角方向により色調変化するストレッチ織物を、フィルムを切断した平偏糸やラメ糸といった特殊糸を用いずに製造できる糸条の開発を鋭意進めた結果、本発明に到達した。
【0008】1本の糸条内で異色特に補色に染め分けられる2成分のカバー糸に高低差を発現させた本願発明の二重被覆弾性糸を用いることで、直接肌に接触する衣料としても実用上問題なく視角方向により色調変化するストレッチ編物、および経糸と緯糸に同一糸条を用いても後染めで視角方向により色調変化するストレッチ織物を得ることができることを見出した。
【0009】本発明は視角方向により色調変化するストレッチ編物および経糸と緯糸に同一糸条を用いても後染めで視角方向により色調変化するストレッチ織物を製造することができる糸条として、2本のカバー糸を先染めあるいは後染めによって互いに異色特に補色に染め分けすることができ、該2本のカバー糸のうち下撚のカバー糸でループを上撚のカバー糸でグランドを形成させた二重被覆弾性糸を完成した。
【0010】図1は本発明の二重被覆弾性糸の一例を示す斜視図である。2本のカバー糸のうち下撚糸は糸条よりとび出したループを形成し、上撚糸は弾性糸と下撚糸をしっかりカバーしたグランドを形成する。本発明の二重被覆弾性糸は、視角方向により色調の変化するストレッチ編織物を得るのに必要な該ループと該グランドを形成させるために、下撚カバー糸と上撚カバー糸のデニールおよびそれらの撚数バランスを考慮することが好ましい。
【0011】本発明の二重被覆弾性糸は下撚と上撚の撚数バランスでトルクのない糸にする必要がある。上撚カバー糸と下撚カバー糸は同一デニールあるいは、下撚カバー糸のデニールが上撚カバー糸のデニールより大きく、上撚カバー糸のデニールの1.5倍より小さい場合には、トルクのない状態に撚バランスを取ると、視角方向により色調の変化するストレッチ編織物を得るに十分な大きさをもったループが得られにくい。
【0012】逆に、下撚カバー糸のデニールが上撚カバー糸のデニールの6倍よりも大きい場合には下撚数に比べ上撚数が多くなりすぎるために下撚カバー糸が押えられすぎてループが飛び出しにくくなる。従って、下撚カバー糸のデニールは上撚カバー糸のデニールの1.5〜6倍であることが好ましく、上撚数は下撚数より小さくなく、下撚数の3倍より大きくない範囲であることが好ましい。ここで撚数とはカバーリング加工機上で所定倍率伸長された弾性糸1m当りのカバー糸の巻付け回数(ターン/m)であり、伸長された倍率をカバリングドラフト率とする。
【0013】本発明に用いる弾性糸例えばポリウレタン弾性糸は、例えば両末端にヒドロキシル基を持つ、分子量600〜5000である実質的に線状の重合体、有機ジイソシアネート、多官能性活性水素原子を有する鎖伸長剤および単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を1段または多段階に反応させ、得られた分子内にウレタン基を有する弾性高分子重合体を乾式紡糸、湿式紡糸、溶融紡糸等により紡糸して、または上記の両末端にヒドロキシル基を持つ重合体と有機ジイソシアネートからなるプレポリマーに、上記の鎖伸長剤および末端封鎖剤を反応させながら紡糸して得られる。
【0014】上記両末端ヒドロキシル基を有する線状の重合体としては、例えばポリエステルジオール、ポリラクトンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリ炭化水素ジオール、ポリカーボネートジオール、ポリシロキサンジオール、ポリウレタンジオール等が挙げられる。有機ジイソシアネートとしては、例えば、m−およびp−フェニレンジイソシアネート、2,4−および2,6−トルイレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、1−アルキルフェニレン−2,4−および2,6−ジイソシアネート、3−(α−イソシアナートエチル)フェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニル−ジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。好ましくは、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートである。
【0015】鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4′−ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、1,4−ジアミノピペラジン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,8−ヘキサンジオール、水等の1種またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。特に好ましいのはジアミン類である。また末端停止剤としては、例えばジアルキルアミン等が用いられる。これらは1種単独でまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0016】ポリウレタン弾性糸を紡糸する際には、重合体紡糸溶液に、所望により有機または無機の配合剤、例えば、ガス黄変防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛等の無機微粒子、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリテトラフルオロエチレン、オルガノポリシロキサン等の粘着防止剤等を適宜配合することもできる。
【0017】本発明に用いる弾性糸は、ポリウレタン弾性糸、ポリエステル系弾性糸、ポリアミド系弾性糸およびポリウレタンと合成繊維とを合糸した弾性糸等を用いてもよく、実施例によって限定されるものではない。一方、本発明に用いるカバー糸の繊維素材は、例えば梳毛、紡毛、綿紡、絹等の天然繊維およびキュプラレーヨン、ビスコースレーヨン等の半合成繊維を紡績したもの、あるいは半合成繊維フィラメントそのもの、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、アクリル等の非弾性重合体フィラメントそのもの、あるいはそれらを加工することによって得られた捲縮加工糸または非弾性重合体のステープルの粗糸もしくは紡績糸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】上撚カバー糸と下撚カバー糸が同一の染料で染色あるいは汚染されるものである場合は、カバーリング加工前に糸の状態で互いに異色特に補色に先染してカバーリングする工程を通らなければならない。しかし、先染する方法はコスト高となるので、同一染料で互いに染色あるいは汚染されない組合せ例えば、酸性染料可染であるナイロン6またはナイロン66と反応性染料可染性であるキュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、アセテート等の組合せや酸性染料可染性であるナイロン6またはナイロン66とカチオン染料可染性のカチオン可染ナイロン、カチオン可染ポリエステル、アクリル等の組合せであることが望ましく、所望する編織物の用途に応じて選択可能であり、また、2本の内1体を染色しないでおくこともできる。実施例で後記するがこれに限定されるもではない。
【0019】本発明にポリアミド繊維、ナイロン66、ナイロン6を用いる場合は、例えばヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重合により得られるポリヘキサメチレンアジパミドを70重量%以上含むホモポリマー、ε−カプロラクタムの重合により得られるポリカプラミドのホモポリマー等を公知の方法で紡糸して得られる。上記ホモポリマーの重合は公知の方法で行われ、その重合度は、通常の繊維形成の範囲内であれば特に制限はない。また本発明の目的を損なわない範囲内での少量の他の成分との共重合体であってもよい。
【0020】ポリアミド繊維には、通常添加される、例えば艶消剤、安定剤、制電剤等の添加剤を含んでいてもよい。繊維の製造法としては一旦1000〜1500m/分の巻取速度で紡糸後延伸した糸であってもよく、また3500m/分以上の高速度で紡糸巻取する、いわゆる高速紡糸による糸でもよい。
【0021】本発明の二重被覆弾性糸の製造方法の1例を図2に示す。即ち、先ず芯糸となる弾性糸1が、フィードローラ4から解舒され、プレドラフトローラ5によって引き出され、中空スピンドル6内に送り込まれる。この中空スピンドル6の外側には、下撚カバー糸7が巻取られている被覆用ボビン8が装着されていて、この中空スピンドル6の回転によって中空部を通って引き上げられ芯糸1に被覆用ボビン8より解舒された下撚カバー糸7が巻付く。
【0022】次いでこの下撚カバー糸7が巻付けられた芯糸1が中空スピンドル9に送り込まれ、ここで再びこの中空スピンドル9の外側に装着された被覆用ボビン10に巻取られている上撚カバー糸11がこの芯糸1に巻付き、更にトップローラ12を経てテークアップローラ13によってパッケージ14として巻取られる。このとき中空スピンドル6と中空スピンドル9は互いに逆回転し、前述のごとく、下撚カバー糸と上撚カバー糸を互いに逆方向に巻きつけることによってトルクのない二重被覆弾性糸を製造することができる。
【0023】本発明の二重被覆弾性糸は下撚カバー糸をZ撚に巻きつけ、上撚カバー糸をS撚に巻きつけたが、下撚カバー糸をS撚に、上撚カバー糸をZ撚に巻きつけることもできる。ここでドラフト率は、トップローラ12の周速をフィードローラ4の周速で除した値で表し、撚数(ターン/m)は中空スピンドル6および9の1分間の回転数をトップローラの周速(m/分)で除した値で表わす。
【0024】なお、比較例1、2で製造した一重被覆弾性糸の場合は図2で中空スピンドル6がなくて、中空スピンドル9が1個の場合である。本発明の二重被覆弾性糸を用いたストレッチ編織物の染色は反物の状態および縫製した製品の状態のいずれで行ってもよい。また、必要に応じてソーピング、フィックス処理、柔軟加工、コーティング加工等を行うこともでき、型付けや目付合せ等のための熱セット等を行うこともできる。
【0025】本発明の二重被覆弾性糸を用いて作ったストレッチ編織物は、視角方向により色調変化極め著しいものが得られる。また、予想外のことに、本発明の糸を用いて作ったストレッチ編織物で視角方向により色調変化するパンティーストッキング、レオタード等の製品は、着用部位を細く見せるという特異な効果を有するものであることが判明した。
【0026】
【実施例】以下、実施例により詳細に説明する。なお物性の測定法は次のとおりに行った。
(1)色調変化の度合色調変化の度合の測定は、スカラー(株)製ビデオマイクロスコープシステム商品名VMS−1000、ソニー(株)製 ビデオプリンターマビグラフ商品名UP−5000およびマクベス社製 分光光度計商品名MS−2020を用いて行った。
【0027】図3にVMS−1000のカメラ部の概略構造と被写体である編織物の位置を示し模式的に測定方法を示す。プローブケーブル15によってビデオマイクロスコープのシステム本体20に内蔵された光源から送られた光はプローブ16内を通り集光ガイド17で集光されて被写体である編織物表面19に照射される。織編物映像は10倍拡大レンズ付カメラ18で拡大され電気信号としてプローブケーブルによってビデオマイクロスコープシステム本体20へ送られる構造になっている。さらにビデオマイクロスコープシステム本体20より信号を送り出しビデオプリンターにてカラー写真としてプリントすることができる。
【0028】視角方向により色調変化する効果は、プローブ16を固定した場合には編織物を傾斜させた時にカラー写真に写された色調が変化することで確認できる。即ち図3の如くプローブ16と平行に光を照射し、編織物表面19が光と垂直になる角度を0°、平行になる角度を90°として、0°、45°、80°傾斜させた編織物表面をビデオプリンターでカラー写真としてプリントした。
【0029】撮影時のビデオプリンターの色調および明暗度調整度合は、R(赤)…2、G(緑)…13、B(青)…4、D(暗度)…13、L(明度)…2に固定して行った。また編織物は10cm×10cmのプラスチック黒色板にたるみなく取り付けて行った。これらのカラー写真を分光光度計MS−2020にて測色し、0°で撮影したカラー写真を基準として45°、80°で撮影したカラー写真との色差を測定した。この色差の値が高いものほど視角方向により色調変化する効果が大きい編織物であることを意味する。
(2)細く見える効果女性のふくらはぎの平均的な円周長31.0cm、高さ30cmの肌色の円筒を1本作製した。また上記の円筒と色と高さは同じで円周長が29.0cmから0.5cmきざみに33.0cmまでの円筒、合計9本を作製した。
【0030】女性のふくらはぎの平均的な円周長の円筒の周囲に実施例及び比較例で得られた編織物の生地または製品をたるみなく巻きつけ、水平板上に垂直に立てた。その円筒の向かって右側に何もかぶせていない円周長29.0cm〜33.0cmの円筒を円周長の短いものから順に一列に並べた。色覚の正常な男性50人、女性50人合計100人をパネラーとして、何もかぶせていない29.0cm〜33.0cmの円筒の中から編織物の生地または製品を巻きつけた円周長31.0cmの円筒と同じ円周長をもつように見える円筒を選択させた。
【0031】このとき選択された円筒のもつ円周長を31.0cmの実円周長に対し官能的円周長(cm)とした。官能的円周長が短いほど細く見えることになり、各官能的円周長の選択者の数(%)は指示率とすることができる。
【0032】
【実施例1】キュプラレーヨンフィラメントの20d/22fを下撚糸に、ナイロン66フィラメントの5d/3fを上撚糸にポリウレタン弾性糸の15dを芯糸にして下記の条件で二重被覆弾性糸を作製した。
(1)被覆条件カバーリングドラフト率;2.8倍下 撚 数 ;2000ターン/m上 撚 数 :2800ターン/mこの二重被覆弾性糸を4本用いて4口編機、針本数400本にてパンティーストッキング生機を編立てた。得られたパンティーストッキング生機は1足の重量が33.0g、キュプラレーヨンフィラメントの混率が65%、ナイロン66フィラメントおよびポリウレタン弾性糸の混率が35%であった。このパンティーストッキング生機を下記条件で染色してパンティーストッキング製品を得た。
(2)染色条件染法は、次の2浴2段染色法で染色した。
【0033】第1浴1段目条件染料;Sumifix Supra Blue BRF 1.95%owf助剤;ボウ硝 40g/リットル、炭酸ナトリウム 20g/リットル温度、時間;50℃、45分浴比; 1:20第2浴2段目条件染料;Aminyl Yellow E−3GL 1.05%owfpH;4(酢酸で調製)
温度、時間;100℃、60分浴比; 1:30表2に他の実施例及び比較例とともに色調変化の度合、および細く見える効果の測定結果を示す。
【0034】
【実施例2】キュプラレーヨンフィラメントの20d/22fを下撚糸に、ナイロン66フィラメントの10d/7fを上撚糸にポリウレタン弾性糸の20dを芯糸にして下記の条件で二重被覆弾性糸を作製した。
(1)被覆条件カバーリングドラフト率; 2.3倍下 撚 数; 1600ターン/m上 撚 数; 2060ターン/mこの二重被覆弾性糸36本を、釜径30インチ、40ゲージ/インチの36口丸編機を用いてスムース組織で生機を編立て、縫製を経てレオタード生機を作製した。
【0035】得られたレオタード生機は1着の重量が130g、キュプラレーヨンフィラメントの混率が52%、ナイロン66フィラメント及びポリウレタン弾性糸の混率が48%であった。このレオタード生機を下記条件で染色してレオタード製品を得た。
(2)染色条件染法は、次の2浴2段染色法で染色した。
【0036】第1浴1段目条件染料;Sumifix Supra Blue BRF 1.56%owf助剤;ボウ硝 40g/リットル、炭酸ナトリウム 20g/リットル温度、時間;50℃、45分浴比; 1:20第2浴2段目条件染料;Aminyl Yellow E−3GL 1.44%owfpH;4(酢酸にて調製)
温度、時間;100℃、60分浴比; 1:30
【0037】
【実施例3】下記条件で先染めしたキュプラレーヨンフィラメントの20d/22fを下撚糸に同じく先染めしたナイロン66フィラメントの12d/7f嵩高加工糸を上撚糸にポリウレタン弾性糸の20dを芯糸にして下記の条件で二重被覆弾性糸を作製した。
(1)先染め条件■キュプラレーヨン染色条件繊維集合形態;綛染料;Sumifix Supra Blue BRF 3%owf助剤;ボウ硝 40g/リットル、炭酸ナトリウム 20g/リットル温度、時間;50℃、45分浴比; 1:30■ナイロン66フィラメント染色条件繊維集合形態;チーズ染料;Aminyl Yellow E−3GL 3%owfpH;4(酢酸)
温度、時間;100℃、60分浴比; 1:30(2)被覆条件カバーリングドラフト率; 2.3倍下 撚 数; 1600ターン/m上 撚 数; 2034ターン/m得られた二重被覆弾性糸を4本用いて、4口編機、針数400本にて編立てて、パンティーストッキング製品を得た。
【0038】
【実施例4】キュプラレーヨンフィラメントの50d/38fを下撚糸に、ナイロン66フィラメントの30d/10fを上撚糸にポリウレタン弾性糸の40dを芯糸にして下記条件で二重被覆弾性糸を作製した。
(1)被覆条件カバーリングドラフト率; 2.5倍下 撚 数; 438ターン/m上 撚 数: 689ターン/m得られた二重被覆弾性糸を経糸と緯糸に用い下記条件で製織して2ウェイストレッチ織物の生機を得た。
(2)製織条件織機;津田駒工業(株)製 レピア織機筬密度:45羽/鯨寸/2つ入緯糸打込密度;65本/インチ生機蜜度;経75本/インチ、緯65本/インチ生機幅 ;185cmこの2ウエイストレッチ織物の生機のキュプラレーヨンフィラメントの混率は52.1%、ナイロン66フィラメント及びポリウレタン弾性糸の混率は47.9%であった。
【0039】この2ウエイストレッチ織物生機を液流染色機にて下記の条件で染色し、ファイナルセットして仕上がり密度、経105本/インチ、緯83本/インチの2ウエイストレッチ織物の仕上反を得た。
(3)染色条件染法は、次の2浴2段染色法で染色した。
【0040】第1浴1段目条件染料;Sumifix Supra Blue BRF 1.563%owf助剤;ボウ硝 40g/リットル、炭酸ナトリウム 20g/リットル温度、時間;50℃、45分第2浴2段目染料;Aminyl Yellow E−3GL 1.437%owf助剤;酢酸 1g/リットル温度、時間;100℃、60分
【0041】
【比較例1】キュプラレーヨンフィラメントの20d/22fとナイロン66フィラメントの10d/7fを引き揃えて被覆用ボビンに巻上げ、下記の条件でポリウレタン弾性糸の15dを芯糸にして、一重被覆弾性糸を作製した。
(1)被覆条件カバーリングドラフト率; 2.8倍撚 数 ; 1800ターン/mこの一重被覆弾性糸を4本用いて、4口編機、針本数400本にてパンティーストッキング生機を編立てた。得られたパンティーストッキング生機は1足の重量が32.0g、キュプラレーヨンフィラメントの混率が66%、ナイロン66フィラメント及びポリウレタン弾性糸の混率が34%であった。このパンティーストッキング生機を下記条件で染色してパンティーストッキング製品を得た。
(2)染色条件染法は、次の2浴2段染色法で染色した。
【0042】第1浴1段目染料;Sumifix Supra Blue BRF 1.98%owf助剤;ボウ硝 40g/リットル、炭酸ナトリウム 20g/リットル温度、時間;50℃、45分浴比; 1:20第2浴2段目染料;Aminyl Yellow E−3GL 1.02%owfpH;4(酢酸にて調製)
温度、時間;100℃、60分浴比; 1:30このとき実施例と染料投入量が異なるのはキュプラレーヨンフィラメントおよびナイロン66フィラメントとポリウレタン弾性糸の混率を考慮したためであり、キュプラレーヨンフィラメント成分重量の3%owf、ナイロン66フィラメントとポリウレタン弾性糸の合計成分重量の3%owfを投入した。以下の比較例についても同様である。
【0043】
【比較例2】キュプラレーヨンフィラメントの20d/22fとナイロン66フィラメントの10d/7fを引き揃えて被覆用ボビンに巻上げ下記の条件でポリウレタン弾性糸の20dを芯糸にして一重被覆弾性糸を作製した。
(1)被覆条件カバーリングドラフト率; 2.3倍撚 数 ;1600ターン/mこの一重被覆弾性糸36本を釜径30インチ、40ゲージ/インチの36口丸編機を用いてスムース組織を編立て、縫製を経てレオタード生機を作製した。
【0044】このレオタード生機は、1着の重量が134g、キュプラレーヨンフィラメントの混率が53%、ナイロン66フィラメント及びポリウレタン弾性糸の混率が47%であった。このレオタード生機を下記条件で染色してレオタード製品を得た。
(2)染色条件染法は次の2浴2段染色法で染色した。
【0045】第1浴1段目条件染料;Sumifix Supra Blue BRF 1.59%owf助剤;ボウ硝 40g/リットル、炭酸ナトリウム 20g/リットル温度、時間;50℃、45分浴比;1:20第2浴2段目条件染料;Aminyl Yellow E−3GL 1.41%owfpH;4(酢酸にて調製)
温度、時間;100℃、60分浴比; 1:30
【0046】
【比較例3〜5】比較例3〜5は表1の条件で二重被覆弾性糸を作製し、実施例1と同様の条件でパンティーストッキング生機を作製し、同様の染法、同様の染料でキュプラレーヨン成分重量の3%owf、ナイロン66とポリウレタンの合計成分重量の3%owfで染色して、パンティーストッキング製品を得た。
【0047】
【表1】


【0048】
【表2】


【0049】表2の如く実施例1〜4は色調変化の度合がいずれも80°の場合、0°の場合との色差で26.9以上を示した。実施例1、2は後染めで視角方向により色調変化するストレッチ編物となり、実施例3は先染めで視角方向により色調変化するストレッチ編物となった。また実施例4は経糸と緯糸とに同一糸条を用いても後染めで、視角方向により色調変化するストレッチ織物となった。この時の色差26.9〜27.9の示す色調の変化は官能的にはいずれも黄緑色と濃青色の違いがあった。
【0050】さらに細く見える効果である官能的円周長については実施例1〜4のいずれにおいてもパネラーの91%以上が実円周長よりも細く見えると判定しており、最高で1.5cm細く見えるという結果が得られた。これは本発明の二重被覆弾性糸を用いた編織物を用いた製品はいずれも細く見える効果をもつことを証明している。
【0051】これに対し比較例1〜5は色調変化の度合が80°の場合、0°の場合との色差で9.2以下であり、これらの値の示す色調変化は官能的にはいずれも黄緑色と濃い黄緑色の違いでしかなかった。比較例の官能的円周長については比較例1でパネラーの23%が実円周長よりも細く見えただけでその他の比較例はそれ以下であった。しかも実円周長との差は0.5cmにすぎなかった。
【0052】比較例3については同一デニールであるために下撚糸ループが出にくく、比較例5については上撚糸のグランドの糸が上撚糸より太いために下撚糸がほとんど見えない状態となる。比較例4はグランドの上撚糸のデニールが細く、下撚糸に比べ撚数が非常に高いために上撚糸の撚間隔が近すぎて、太い下撚糸のループが出てこない状態であった。
【0053】上記の如く実施例1〜4は比較例1〜5に比べ視角方向により色調変化する効果も細く見える効果も大きいことが明らかであった。
【0054】
【発明の効果】本発明の二重被覆弾性糸を用いると、視角方向により色調変化するストレッチ編物、および経糸と緯糸との両方に用いても後染めで視角方向により色調変化するストレッチ織物が得られる。さらに、そのストレッチ編織物を着用した場合には着用部位が細く見える効果があり、着用テストの結果でも快適性を阻害することもなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二重被覆弾性糸の一例を示す斜視図。
【図2】本発明の二重被覆弾性糸の製造方法を説明する工程図。
【図3】本発明での色調変化を測定する方法を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
1 弾性糸
2 下撚カバー糸のループ
3 上撚カバー糸のグランド
4 フィードローラ
5 プレドラフトローラ
6,9 中空スピンドル
7 下撚カバー糸
8,10 被覆用ボビン
11 上撚カバー糸
12 トップローラ
13 テークアップローラ
14 パッケージ
15 プローブケーブル
16 プローブ
17 集光ガイド
18 10倍拡大レンズ付カメラ
19 編織物表面
20 ビデオマイクロスコープシステム本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 異色に染め分けられた2本のカバー糸、または後染めで異色に染め分けられる2本のカバー糸を弾性糸に被覆して得られることを特徴とする二重被覆弾性糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−163626
【公開日】平成5年(1993)6月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−316649
【出願日】平成3年(1991)11月29日
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)