五酸化ニオブ及びタンタル化合物
【課題】特定の粉体流動性を有する五酸化弁金属を提供する。
【解決手段】自由落下嵩密度(A)と機械的タッピングによる5000回タップ後の嵩密度(B)との比率(A/B)が0.72を超え1.0未満であることを特徴とする五酸化ニオブ粉末、及び自由落下嵩密度(A)と機械的タッピングによる5000回タップ後の嵩密度(B)との比率(A/B)が0.61を超え1.0未満であることを特徴とする五酸化タンタル粉末等を提供する。
【解決手段】自由落下嵩密度(A)と機械的タッピングによる5000回タップ後の嵩密度(B)との比率(A/B)が0.72を超え1.0未満であることを特徴とする五酸化ニオブ粉末、及び自由落下嵩密度(A)と機械的タッピングによる5000回タップ後の嵩密度(B)との比率(A/B)が0.61を超え1.0未満であることを特徴とする五酸化タンタル粉末等を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の弁金属化合物、特に新規の五酸化ニオブ、ニオブ水和物、五酸化タンタルおよびタンタル水和物に、そしてこのような化合物の改良型製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弁金属は、金属を腐食から保護する傾向がある保護酸化物表面層を特徴とし、その例としては、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、チタン及びハフニウムが挙げられる。本明細書中で用いる場合、「弁金属」とは、タンタル及びニオブを指す。商業的に有益な形態の「弁金属」は、弁金属酸化物、例えば五酸化タンタル(Ta2O5)又は五酸化ニオブ(Ta2O5)である。タンタル及びニオブは、フッ化水素酸(HF)又はフッ化水素酸と硫酸(HF/H2SO4)の混合物により鉱石から慣用的に抽出され、典型的には溶媒抽出により、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いて分離されるヘプタフルオロ錯体を形成して、弁金属のヘプタフルオロ錯体の水性溶液を提供する。弁金属五酸化物は、アンモニアでヘプタフルオロ錯体を処理して沈殿され、濾過により回収される。
【0003】
米国特許第 5,068,097号に開示されているように、弁金属五酸化物は一般に、バッチ法により生成される。従来のバッチ法では、このような前駆体はアンモニアを溶液に付加するとpH範囲の変化の間ずっと沈殿されるため、粒子サイズおよび弁金属酸化物の粒子サイズ分布を制御するのは難しい、と考えられる。アンモニアを付加すると、溶液のpHが上昇する。しかしながら、pHの上昇は、アンモニアが溶液と反応する間起きる。弁金属五酸化物前駆体の沈殿は最初のpHで始まり、pHが上昇中継続し、さらに高pHで終了する、と考えられる。沈殿が実際に起きるpHは沈殿物の粒子サイズに影響を及ぼし、したがって沈殿がpHの範囲に亘って起きると、異なる粒子サイズが生成され、それにより酸化弁金属化合物の粒子サイズ分布が増大される、と考えられる。バッチ法での広範囲のpHでの沈殿はさらに、特定の粒子サイズの五酸化弁金属の生成を困難にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この問題は、例えば弁金属含有鉱石のHF温浸からの溶媒抽出弁金属ヘプタフルオロ錯体が温度、pH及び滞留時間制御条件下で処理加工される本発明の方法により克服し得る、ということを本発明者は発見した。
【0005】
本発明は、弁金属五酸化物前駆体並びに均一粒子サイズ及び狭粒子サイズ分布の弁金属五酸化物を提供する。一つの態様では、本発明は、粒子の大型高密度球状凝集物で、相対的に低表面積及び高嵩密度特性を有し、特に五酸化タンタルの場合にはBET表面積が3平方メートル/グラム(m2/g)未満、及び嵩密度が少なくとも3グラム/立法センチメートル(g/cc)、そして五酸化ニオブに関してはBET表面積が2m2/g未満、及び嵩密度が 1.2g/ccより大の弁金属五酸化物を提供する。本発明の別の態様は、相対的に高表面積および低嵩密度特性を有する微細粒子、特に五酸化タンタルの場合にはBET表面積が3m2/gより大、及び嵩密度が3g/cc未満、そして五酸化ニオブに関してはBET表面積が2m2/gより大、及び嵩密度が 1.2g/cc 未満の弁金属五酸化物を提供する。本発明はさらに、所望の粒子サイズ範囲内に狭粒子サイズ分布を有する五酸化弁金属、例えば五酸化タンタル又は五酸化ニオブの製造方法を提供する。
【0006】
本発明はさらに、弁金属酸化物、例えば五酸化タンタル又は五酸化ニオブの製造方法を提供する。本発明の方法は、所望の粒子サイズ範囲内に狭粒子サイズ分布を有する五酸化弁金属を生成するために用いると有益である。この方法は、1つ又はそれ以上の攪拌反応器中で、温度、pH及び滞留時間制御条件下で弁金属フルオロ錯体をアンモニアと反応させて、水和五酸化弁金属前駆体を沈殿させる工程を包含する。本発明はさらに、X線分析でのライン拡大d値が6±0.3 、3±0.2 及び 1.8±0.1 であることを特徴とする弁金属前駆体を提供する。このような前駆体は、低フッ化物含量、例えば500 ppm 未満であることを特徴とする水和酸化物である。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、
(a)一次容器中で、水和弁金属五酸化物前駆体の沈殿を開始させる温度、pH及び滞留時間条件で、アンモニア溶液とフッ化物イオン及びフルオロタンタル酸及びニオブオキシフルオリドから成る群から選択される弁金属フルオロ化合物を包含する水性溶液との混合物を提供し;
(b)水和弁金属五酸化物前駆体をさらに沈殿させる温度、pH及び滞留時間条件で混合するために、上記混合物を少なくとも1つの他の容器に移し;そして
(c)上記水和弁金属五酸化物前駆体を上記混合物から分離して、焼成により上記水和弁金属五酸化物前駆体を弁金属五酸化物に転化する
工程から成る五酸化弁金属の新規の及び改良の型製造方法を提供する。生成物純度は、反応器系中に供給される弁金属錯体の純度により制御し得る。錯生成剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を水性フルオロ溶液に付加して、溶液中の不純物の保持に役立て得る。
【0008】
反応の温度、pH及び滞留時間を制御するための好ましい方法は、連続攪拌タンク反応器、例えば縦続接続吸出管反応器系を用いる方法であって、この場合、弁金属フルオロ錯体とアンモニアとの間の反応は、一次反応容器中で、最初のpH及び温度で開始され、次に異なるpHおよび/または異なる温度に保持される1つ又はそれ以上の付加的反応容器により継続する。この方法では、一次pH(一次容器中)及び二次pH(二次容器中)は、実質的には同一であるか又は異なってもよく、別々に制御され得る。さらに二次pHを制御するのが望ましい場合、本方法はさらに、二次アンモニア溶液を二次容器中に導入して、二次アンモニア溶液と一次混合物とを混合して二次pHで二次混合物を得て、一次混合物及び二次アンモニア溶液を反応させて、弁金属五酸化物前駆体の沈殿を継続させる。一次及び二次反応容器が記載されているが、付加的反応容器を用いて工程をさらに制御し得る。例えば、わずかに異なるpHに保持された2つの反応容器を、一次および/または二次容器の代わりに用いて、それにより反応容器の総数を4又は5つに増量し得る。好ましい実施態様では、本方法は、二次混合物を三次温度に保持した第三容器に移して、二次混合物をさらに攪拌して、水和弁金属五酸化物前駆体を弁金属五酸化物に転化する前に水和弁金属五酸化物前駆体の沈殿を完了させる付加的工程を含む。本発明が所望の粒子サイズ範囲内で狭粒子サイズ分布を有する五酸化弁金属を生成するための連続方法を提供することは、さらに有益である。
【0009】
水和弁金属五酸化物前駆体は一般に、五酸化弁金属水和物を包含する。水和五酸化弁金属前駆体から弁金属五酸化物への転化は、焼成により、又は熱水法により成し遂げ得る。水和タンタル酸化物前駆体は、少なくとも790 ℃の温度で焼成することにより五酸化タンタルに転化され得る。ニオブ酸化物前駆体は、少なくとも650 ℃の温度で焼成することにより五酸化ニオブに転化され得る。各容器中での反応に関する滞留時間は、溶液が容器中に導入され、容器から移される速度により制御し得る。滞留時間の制御は、粒子のサイズ及び密度に影響を及ぼす。滞留時間を増大すると、粒子のサイズ及び密度が増大される。温度も粒子サイズに影響を与え、温度が高ければ沈殿反応を加速し、より微細な粒子を生じる。
【0010】
本発明の好ましい方法では、各容器のpH及び温度を制御すれば、生成さるべき所望の粒子サイズ及び狭粒子サイズ分布を有する弁金属五酸化物(例えば五酸化タンタル又はニオブ)が生成される。本発明の方法では、pHはアンモニアの付加を制御することにより制御し得る。一次pH(一次容器中のpH)は、五酸化タンタル又はニオブ生成物の沈殿を開始するのに十分なレベルに保持される必要がある。一般に、一次pHは、凝集粒子に関しては6〜9.5、好ましくは7〜8の範囲である。二次pH(二次容器中のpH)は、好ましくは五酸化タンタル又はニオブ前駆体の沈殿を実質的に確実に完了させるに十分なレベルに保持されるべきである。一般に二次pHは、8〜9.5,好ましくは8〜8.5の範囲である。一次反応容器中の一次pHが酸性側に傾いている場合、所望のpHを選るには二次容器中に二次アンモニア溶液を付加する必要がある。本発明の方法の好ましい3容器実施態様では、付加的アンモニアは三次容器に付加されず、三次容器のpHは実質的には二次容器のpHと同じか、又はわずかに低く、したがって沈殿反応が実質的完了に進行することを確証する。
【0011】
各容器に関するpHの選択は、本方法により生成される五酸化物生成物の粒子サイズを一部確定する。概して、極端なpH、即ち一次容器中が約6〜9.5のpHであれば、微細粒子サイズを生成するのに有益であり、中間pH範囲では、即ちpH約7.5であれば、実質的に球状(粗い)粒子サイズを生成するのに有益である。
【0012】
本明細書に用いる場合、滞留時間とは、単数又は複数の反応が起きる時間期間を指す。本方法に関する総又は全滞留時間は、各反応容器での滞留時間の合計である。本方法に関する最小滞留時間は、弁金属五酸化物前駆体を沈殿させるのに十分な滞留時間である。本方法に関する最大滞留時間は、一般に、所望の生成物質及び方法の経済面によって指図される。概して、与えられたpH及び温度に関しては、総滞留時間が短いほど、微細粒子サイズを生成するには望ましく、総滞留時間が長いほど、粗い実質的に球状の粒子サイズの生成には望ましい。さらに、弁金属フルオロ化合物の弁金属五酸化物前駆体への転化を実質的に完了させる与えられた温度及びpHに関しては、総滞留時間が短いほど有益である。長滞留時間が固相の再循環により成し遂げ得ることは、当業者には理解される。
【0013】
温度を上げて操作して、以下の反応を右に動かすと、水和弁金属酸化物前駆体の生成における反応の完了が促進される:
H2TaF7+7NH4OH→Ta(OH)5+7NH4F+2H2O
H2NbOF5+5NH4OH→Nb(OH)5+5NH4F+H2O
反応容器の温度は、水ジャケット等を含めた従来の手段により制御し得る。一般に、大規模製造のためには、各容器の温度は40〜95℃の範囲である。与><えられたpH及び滞留時間に関しては、高音であるほどより微細な粒子を生成し、低温であるほどより粗い粒子を生成する。
【0014】
2反応器系に関しては、pH、温度及び滞留時間の間の関係は、一般に以下のように要約される。
【表1】
この表は、説明のために提示されただけであって、本発明の方法の範囲を限定することを意味しないし、そのように解釈されるべきでもない。
【0015】
図1を参照すると、吸出管を伴う一連の反応容器及び循環(攪拌)手段から成る本発明の好ましい実施態様の実施に適した縦続接続吸出管反応器系の流れ図が示される。本発明の方法に用いるのに適したこのような反応容器、吸出管及び循環手段は商業的に公知であって、したがってここでは詳細に説明はしない。さらに、本発明の方法は特定の装置により実行されることに限定されず、上記の及び下記の方法工程の実施に適した広範な異なる装置により実施し得る。
【0016】
本発明の好ましい方法では、例えばニオブ含有鉱石の温浸及び分離からの弁金属フルオロ錯体含有溶液2は、一次反応容器10の上部中央に付加される。弁金属含有溶液2の付加速度は、反応容器のサイズ、容器内で起きる反応に関する所望の滞留時間、及び一次混合物が容器から移される速度に依っている。これらの変数は、所望の粒子の種類により調整される。
【0017】
アンモニア溶液4は、吸出管12により限定される領域の外側の一次反応容器10の底外周に付加される。アンモニア溶液4の付加速度も、反応容器のサイズ、容器内で起きる反応に関する所望の滞留時間、及び一次混合物が容器から移される速度に依る。さらに、アンモニア溶液4の付加速度は、最終生成物中の所望の粒子サイズにより部分的に確定される一次混合物の所望のpH(pH1)に依る。一般に、pH1は6〜9.5の範囲である。与えられた温度及び滞留時間に関しては、範囲の両端近くのpH値(6又は9付近)は最終生成物中に微細粒子サイズを生じ、一方範囲の中央近くのpH1値(7〜8)は最終生成物中に粗い球状粒子サイズを生じる。
【0018】
一次反応容器10は、最終生成物の所望の粒子サイズにより一部確定される一次温度(T1)に保持される。一般に、T1は30〜95℃、好ましくは50〜70℃の範囲である。与えられたpH及び滞留時間に関しては、T1の値が高いほど、より微細な粒子サイズを有する最終生成物を生じる。熱伝達手段、例えば水ジャケット(図1には示されていない)を用いて、反応容器を所望の温度に保持し得る。
【0019】
循環手段14、例えば攪拌器又はポンプを用いて、反応容器10内の弁金属含有溶液2及びアンモニア溶液4を循環又は混合して一次混合物を生成する。一次反応容器内の一次混合物の流れの方向は、矢印で示した通りである。循環中、一次混合物の一部は導管16を通って一次反応容器を出る。一次反応容器内で起きる反応のための滞留時間R1は、スループット率、及び/又は反応器のサイズを変えることにより制御し得るし、最終生成物の密度を、一部確定する。ある種の反応器サイズに関しては、R1は約2分〜2時間の範囲である。与えられたpH1及びT1に関しては、R1値が高いほど、最終生成物は圧縮された嵩密度、例えば1.2 g/cc又はそれ以上の嵩密度を有するようになる。
【0020】
導管16を通って一次反応容器10を出る一次混合物の一部は、吸出管22により限定される領域内の二次反応容器の内周中に導入される。二次反応容器20中への一次混合物の付加速度は、一次混合物が一次反応容器10から移される速度に依る。アンモニア溶液6は、吸出管22により限定される領域の外側の二次反応容器の外周且つ底付近に付加される。アンモニア溶液6の付加速度は、二次反応容器のサイズ、二次反応容器内で起きる反応のための所望の滞留時間、及び一次混合物が二次反応容器中に移される速度に依る。さらに、アンモニア溶液6の付加速度は、最終生成物の所望の粒子サイズにより一部確定される二次混合物の所望のpH(pH2)に依る。一般に、pH2は、一次反応器のpHに依って、8〜9.5の範囲である。与えられた温度及び滞留時間に関しては、pH2値は完全反応を確証するために選択されるが、一方消費されるアンモニアの量を限定する。
【0021】
二次反応容器20は、最終生成物中の粒子の所望の密度及び反応速度により一部確定される二次温度T2に保持される。一般にT2は、30〜95℃、好ましくは60〜85℃の範囲である。与えられたpH及び滞留時間に関しては、T2に関する値が高いほど、最終生成物の粒子サイズは微細になる。循環手段24を用いて、二次反応容器に入る混合物及び反応容器20内のアンモニア溶液6を循環および混合させて、二次混合物を作る。二次反応容器内の二次混合物の流れの方向は矢印で示される。逆流は、所望の生成物に依って、粒子特性に影響を及ぼす。
【0022】
循環中、二次混合物の一部は導管26を通って二次反応容器を出る。二次反応容器内で起きる反応のための滞留時間R2は、循環速度及び反応器のサイズを変えることにより制御し得るし、二次容器内の反応の完了を一部確定する。ある程度まで、それは粒子のさらに沈殿させ且つ高密度化させる。したがって、R2を変えることにより、異なる粒子サイズの生成物が生成される。R2は2〜90分の範囲である。与えられたpH2及びT2に関しては、R2値が高いほど、最終生成物はより密な且つ粗い粒子を有するようになる。
【0023】
導管26を通って二次反応容器20を出る二次混合物の一部は、吸出管32により限定される領域内の三次反応容器30の内周中に導入される。三次反応容器30中への二次混合物の付加速度は、二次混合物が二次反応容器20から移される速度に依る。
【0024】
循環手段34を用いて、三次反応容器内で二次混合物を循環させ、混合を継続して、五酸化ニオブを沈殿させて、実質的完了に進行させる。三次反応容器内の二次混合物の流れの方向は矢印で示されるが、反応の特性を限定しない。付加的アンモニアを三次反応容器に付加しない場合、三次混合容器中の混合物のpH3はアンモニア揮発化率とともに三次反応容器内の反応完了の程度によって、pH2よりわずかに低い。
【0025】
二次反応容器30は、容器中の所望の反応完了程度により一部確定される三次温度T3に保持される。一般にT3は、40〜95℃、好ましくは60〜85℃の範囲である。与えられたpH及び滞留時間に関しては、T3に関する値が高いほど、最終生成物反応が本質的に完了するようになる。循環中、混合物の一部は導管36を通って三次反応容器を出る。三次反応容器中で起きる反応のための滞留時間は、循環速度及び反応容器のサイズを変えることにより制御し得る。三次反応容器中の混合物の滞留時間R3は、最終生成物の反応の完了を一部確定する。したがって、R3を変えることにより、異なる程度の反応を生じ得る。R3は、2〜90分の範囲である。与えられたpH3及びT3に関しては、R3に関する値が高いほど、最終生成物はより高密度の粒子を有するようになる。
【0026】
導管36を通って三次反応容器30を出る溶液は、沈殿弁金属五酸化物前駆体固体が液体/固体分離工程40により溶液から回収される慣用的処理加工装置に移動する。液体/固体分離工程は、当業界で公知のあらゆる方法で、例えば濾過により実行される。好ましくは、液体/固体分離工程は、真空又は圧力フィルターにより実行される。
【0027】
当業者に理解されるように、全滞留時間、又は反応容器内の滞留時間は、各容器を出る溶液および/または固体の全部又は一部をリサイクルさせることにより増大される。特に、全滞留時間を増大する有効な方法は、本方法により生成される沈殿固体の全部又は一部をリサイクルさせて最初の容器中に戻すことである。リサイクルを用いる場合、各容器中の有効滞留時間、および/または有効全滞留時間は、反応溶液の少なくとも一部に関して上記されたものより大きい。
【0028】
五酸化ニオブ固体の分離後、リサイクルされなかった固体は、固体洗浄工程50により示されるように洗浄される。固体洗浄は、当業界での慣用的方法で、例えば約9.0のpHのアンモニア処理水で洗浄することにより、成し遂げられる。
【0029】
洗浄後、乾燥工程60により示されるように、固体を乾燥させる。その結果生じる生成物は、狭粒子サイズ分布及び所望の粒子サイズを有する水和弁金属五酸化物粉末である。水和弁金属五酸化物の焼成は、水和物を五酸化弁金属、例えば五酸化ニオブNb2O5又は五酸化タンタルTa2O5に転化する。
【0030】
物質及び試薬の付加を反応容器の特定部分を参照しながら説明してきたが、異なる特性を有する五酸化物生成物を生成するために、物質及び試薬は反応容器の別の部分に付加し得る。例えば、一次反応容器内では、弁金属含有溶液2を容器の外周に付加し、アンモニア溶液を容器の中央に付加し得る。さらに、前記の実施態様は3反応容器を用いるが、本発明の方法は、最終生成物における所望の特性に依って、それより少ないか又はそれより多い数の反応容器を用いて実行し得る、と理解されるべきである。反応の前記実施態様は図に示すような混合及び流れを用いるが、逆の流れも同様に用い得る。さらに、三次反応器から排出された固体の一部は、所望の場合には粒子をより粗く且つ高密度にするためにリサイクルし得る。
【0031】
さらに、本発明は新規の弁金属五酸化物前駆体、特に新規の五酸化ニオブ水和物及び新規の五酸化タンタル水和物を提供する。本発明の五酸化弁金属水和物を処理加工して、有益な五酸化弁金属を生成し得る。本発明の五酸化弁金属水和物は、X線分析下でのライン拡大d値が6±0.3 、3±0.2 及び 1.8±0.1 で、フッ化物含量が 500ppm 、好ましくは 150ppm 未満であることを特徴とする。
【0032】
本発明の五酸化弁金属前駆体の実施態様はさらに:
(a)BET表面積が2m2/g未満、好ましくは1m2/g未満、さらに好ましくは 0.5m2/g未満である五酸化ニオブ水和物;
(b)BET表面積が2m2/gより大、好ましくは6m2/gより大、さらに好ましくは 50m2/g より大である五酸化ニオブ水和物;
(c)BET表面積が3m2/g未満、好ましくは2m2/g未満、さらに好ましくは1m2/g未満である五酸化タンタル水和物;そして
(d)BET表面積が3m2/gより大、好ましくは7m2/gより大、さらに好ましくは11m2/gより大である五酸化タンタル水和物
であることを特徴とする。
【0033】
本発明の五酸化弁金属前駆体は、前駆体を五酸化弁金属に転化する前に五酸化弁金属前駆体を分離することによる本発明の方法により生成するのが有益である。
【0034】
本発明はさらに、五酸化弁金属前駆体を焼成することにより新規の五酸化弁金属粉末を提供する。このような五酸化弁金属粉末の第一の実施態様は、低表面積、高密度、BET表面積が2m2/g未満、好ましくは1m2/g未満、さらに好ましくは0.75m2/g未満又はそれ以下である焼成五酸化ニオブ粒子の実質的には球状の凝集物、並びに1.8 g/ccより大、好ましくは1.9 g/ccより大、さらに好ましくは2g/ccより大の高嵩密度を特徴とする。
【0035】
五酸化弁金属の第二の実施態様は、BET表面積が2m2/gより大、好ましくは2.5 m2/gより大、さらに好ましくは3m2/gより大、さらには4m2/gより大、いくつかの場合には6m2/gより大でさえある、そして圧縮された嵩密度が1.8 g/cc未満、好ましくは1g/cc未満、いくつかの場合にはさらに好ましくは0.75 g/cc 未満である高表面積、低嵩密度焼成五酸化ニオブ粒子を特徴とする。
【0036】
五酸化弁金属の第三の実施態様は、BET表面積が3m2/g未満、好ましくは2m2/g未満、さらに好ましくは1m2/g未満、いくつかの場合には0.75m2/g未満、例えば0.4 m2/g又はそれ以下でさえある、そして圧縮された嵩密度が3g/ccより大、好ましくは3.5 g/ccより大、さらに好ましくは3.8 g/ccより大、いくつかの場合にはさらに好ましくは4g/ccより大である低表面積、高嵩密度の、実質的には球状凝集物の焼成五酸化タンタル粒子を特徴とする。
【0037】
五酸化弁金属の第四の実施態様は、BET表面積が3m2/gより大、好ましくは4m2/gより大、さらに好ましくは5m2/gより大、さらにいくつかの場合には6m2/gより大、あるいは少なくとも7又は11m2/gでさえある、そして圧縮された嵩密度が3.0 g/cc未満、好ましくは2.5 g/cc未満、さらに好ましくは2g/cc未満、いくつかの場合にはさらに好ましくは1g/cc未満、例えば約0.75 g/cc である高表面積、低嵩密度焼成五酸化タンタル粒子を特徴とする。
【0038】
低密度、高表面積粉末の場合には、粒子の実質的に多数が5μ未満のサイズである。例えば、いくつかの物質は大型粒子に凝集するけれども、典型的には25%又はそれ以上の粒子、例えば少なくとも30%で80%までの粒子が1μ未満のサイズである。高密度、低表面積粉末の場合、粒子のほとんどが、典型的には5μ以上の大型粒子に凝集される。
【0039】
本発明の生成物は、本発明の方法により高純度で生成されると有益である。本発明により生成される微細粒子は、例えばエレクトロニクス、セラミックのような種々の用途における微量添加物として、そして触媒としての使用に対しては高反応性である。大型高密度球状凝集粒子は例外的流動学的特性を有し、テルミット(活性金属、即ちアルミニウムによる熱還元法)又はガラス用途に用い得る。
【0040】
大型球状粒子は、他のガラス形成成分と混合するに際しては、十分混合する。さらに、大型高密度粒子は高気体流蒸気中では容易に空輸されず、したがって高融解効率を生じる。テルミット処理に関するその他の用途は、例えば、より大きいパッキング因子を提供する大型高密度球状粒子を、したがってより大きなテルミットバッチ及びより大きい再現性を提供する。さらに、大型高密度粒子はテルミット反応中に容易に空輸されず、したがってより大きい生成物回収をもたらす。
【0041】
BET表面積、嵩密度及び粒子サイズに関する本発明の生成物の特徴表示は、当業界で普通に用いられる十分公知の手法により実行し得る。例えば、BET表面積は、粒子の表面に吸着された単層の窒素ガスを測定することにより、確定される。フッ化物含量は、硫酸溶液からシリコーン四フッ化物として揮発化することによるアルカリ融解及び分離により確定される。フッ化物含量は、特定のイオン電極を用いて留出物中で確定される。粒子サイズは、レーザー光線散乱法を用いて確定される。凝集物の嵩密度は公知の容量の試料を計量することにより確定される一方、圧縮嵩密度は最大密度をもたらすよう機械的タッピング後に、例えば5000タップ後に、確定される。試料の形態学的特性は、必要な場合には、走査型電子顕微鏡を用いて目で検査することにより確定される。
【0042】
本発明の種々の態様及び実施態様の有効性及び利点をさらに以下の実施例により説明するが、この場合、実質的には図1に示したような3反応容器を用いる連続手法で、五酸化弁金属前駆体が生成された。3つの1500mlビーカーを一次、二次及び三次反応容器として用いて、名目上の作業容量は 1000ml であった。ビーカーは二重ボイラー型セットアップで加熱され、各ビーカーを熱伝導液、例えば水又はその他の熱伝導液の容器で取り囲んだ。吸出管セットアップを得るために、羽根(又はそらせ板)を装備した内部管を各ビーカーの内側に用いた。可変速度羽根車を、循環手段として各ビーカーの底に用いた。可変速度ぜん動ポンプを用いて2つの一次ビーカー反応器への弁金属−フルオロ溶液及びアンモニア溶液の供給速度を制御した。
【実施例】
【0043】
実施例1
本実施例は、相対的に高表面積、低密度の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)の製造のための本発明の方法を説明する。脱イオン(DI)水を充填した反応器浴二重ボイラーを98℃に設定した。ニオブ159 g/L の濃度のニオブオキシフルオリドの溶液を約76℃に予熱して、18.5 ml/分で一次反応器に付加した。5 N アンモニア(7.8 重量%)の溶液を80.5 ml/分で一次反応器に付加した。反応体を一次反応器中で攪拌して、平均温度74℃、pH8.5とした。その結果生じた懸濁液を二次及び三次反応器に流し込んで、さらに混合した。反応を 330分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを濾過し、4回以上洗浄して、濾過し、ケーキを得て、これを85℃で6時間乾燥し、水分28%及びフッ化物 200ppm を含有する水和五酸化ニオブケーキ187gを得た。水和ケーキを900 ℃で4時間焼成して、フッ化物100 ppm を含有する五酸化ニオブ粒子 97.5gを得たが、この場合、99.5%の物質が 1.5μ以下のサイズで(100%が24μ以下)、2.82 m2/g の高BET表面積を有した。上記の並びにその他の手法条件及び生成物特性を、下記の表1に示す。
【0044】
実施例2
本実施例は、高密度、高粒子サイズ(低表面積)の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)の製造のための本発明の方法を説明する。実施例1の手法にしたがったが、但しニオブ溶液は13.1 ml/分で一次反応器に付加し、アンモニア溶液は98.2 ml/分で一次反応器に付加して、平均温度61℃、pH9.14の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、そこにさらにニオブオキシフルオリド溶液を5.6 ml/ 分で攪拌しながら付加した。その結果二次反応器溶液の平均温度及びpHはそれぞれ73℃及び8.28となった。その結果生じた二次懸濁液を三次反応器に流し込んで、さらに混合した。反応を315 分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを実施例1と同様に濾過し、洗浄して、再スラリー化し、濾過して、焼成した。非焼成ケーキは重量が223.5 g (水分44.3%)で、フッ化物 460 ppm を含有した。この場合、73.5%の物質が96μ以上のサイズであった。その他の手法条件及び生成物特性を表1に示す。
【0045】
実施例3
本実施例は、低表面積、高密度の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)生成物の製造のための本発明の方法を説明する。実施例1の手法にしたがったが、但しニオブ溶液は3.5 ml/ 分で、アンモニア溶液は7.8 ml/ 分で一次反応器に付加して、平均温度76℃、pH7.78の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、そこにさらにアンモニア溶液を15.6 ml/分で攪拌しながら付加した。その結果二次反応器溶液の平均温度及びpHはそれぞれ68℃及び8.48となった。その結果生じた二次懸濁液を三次反応器に流し込んで、さらに混合した。反応を1100分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを実施例1と同様に濾過し、洗浄して、再スラリー化し、濾過して、焼成した。非焼成ケーキは重量が143.1 g(水分29.07%)で、フッ化物 1400 ppmを含有した。焼成化ケーキは重量71.5 gで、フッ化物200 ppm を含有し、BET表面積は0.5 m2/gであった。この場合、77.5%の物質が8〜32μのサイズであった。その他詳細及び生成物特性を表1に示す。
【0046】
実施例4
本実施例は、高表面積、低密度の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)生成物の製造のための本発明の方法を説明する。実施例1の手法にしたがったが、但しニオブ溶液は19 ml/分で、アンモニア溶液は34.3 ml/分で一次反応器に付加して、平均温度80℃、pH6.28の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、そこにさらにアンモニア溶液を20.9 ml/分で攪拌しながら付加した。その結果生じたpH8.46の二次懸濁液を三次反応器に流し込んで、さらに混合した。反応を 375分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを実施例1と同様に濾過し、洗浄して、再スラリー化し、濾過して、焼成した。非焼成ケーキは重量が 216.6 g(水分49.9%)で、フッ化物 3600ppm を含有した。焼成化ケーキは重量82.2 gで、フッ化物 300ppm を含有し、BET表面積は2.18 m2/g であった。30.5%の物質が1μ以下のサイズであった。その他詳細及び生成物特性を表1に示す。
【0047】
実施例5
本実施例は、高表面積、低密度の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)生成物の製造のための本発明の方法を説明する。実施例1の手法にしたがったが、但しニオブ溶液は56.5 ml/分で、アンモニア溶液は210.4 ml/ 分で一次反応器に付加して、平均温度80℃、pH7.72の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、そこにさらにアンモニア溶液を攪拌しながら付加して、pH8.49及び70℃の二次懸濁液を得て、これを三次反応器に流し込んで、さらに混合した。2Lの懸濁液を採集し、これを実施例1と同様に濾過し、洗浄して、再スラリー化し、濾過して、焼成した。焼成化ケーキはフッ化物 100ppm を含有し、圧縮嵩密度1,02 g/cc であった。28.4%の物質が1μ以下のサイズであった。その他詳細及び生成物特性を表1に示す。
【0048】
実施例6
本実施例は、高表面積、低密度の本発明の五酸化タンタル前駆体及び五酸化タンタル(Ta2O5)の製造のための本発明の方法を説明する。60℃で熱伝達油を反応器浴二重ボイラーに充填した。五酸化タンタル80 g/Lの濃度のフルオロタンタル酸の溶液を約67℃で、30 ml/分で、5 N(7.8 重量%)アンモニア溶液50 ml/分と一緒に一次反応器に付加した。溶液を一次反応器中で混合して、一次容器懸濁液を温度67℃、pH9.01とし、これを二次反応器中にオーバーフローし、混合させて、72℃、pH8.73とした。懸濁液を三次反応器に流し込んで、78℃、pH8.42でさらに混合した。反応を 180分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを濾過し、洗浄して、5Nアンモニア溶液 2 L で85℃で再スラリー化した。その結果生じたスラリーを濾過し、さらに4回洗浄して、濾過し、湿潤ケーキを得て、これを 100℃で6時間乾燥した。湿潤ケーキは重量121.7 g(水分2.43%)で、フッ化物50 ppmを含有した。これを900 ℃で1時間焼成して、フッ化物50 ppm未満を含有し、BET面積が6.7 m2/g、圧縮密度1.81 g/cc のドライ焼成化ケーキ108 g を得た。この場合、78.6%の焼成化ケーキが1μ以下のサイズであった。他の手法条件及び生成物特性を、下記の表1に示す。
【0049】
実施例7
本実施例は、低密度五酸化タンタル及び前駆体の調製を説明する。実施例6の手法に従ったが、但しフルオロタンタル酸溶液は66℃で、30 ml/分で、アンモニア溶液は35 ml/分で一次反応器に付加して、平均温度74℃、pH8.42の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、77℃、pH8.2でさらに混合し、次に三次反応器に流し込んで、82℃、pH8.0で混合した。反応を 375分間実行した後、懸濁液2L を採集した。湿潤ケーキ(水分11.9%)232 g は、フッ化物310 ppm を含有した。他の詳細及び生成物特性を表1に示す。
【0050】
実施例8
本実施例は、高表面積、低密度五酸化タンタル及び前駆体の生成を説明する。実施例6の手法に従ったが、但しフルオロタンタル酸溶液は73℃で、25 ml/分で、アンモニア溶液は25 ml/分で付加して、平均温度74℃、pH8.42の一次懸濁液を得た。一次懸濁液を二次反応器に流し込んで、さらに50 ml/分のアンモニア溶液と混合して、二次懸濁液を60℃、pH9.5で得て。これを次に三次反応器に流し込んで、71℃、pH9.08で混合した。反応を255 分間実行した後、懸濁液6L を採集した。湿潤ケーキは、フッ化物50 ppm未満を含有した。焼成化ケーキはBET表面積4.96 m2/g 、圧縮密度2.96 g/cc であった。
【0051】
実施例9
本実施例は、本発明の低表面積、高密度の凝集化五酸化タンタル及び前駆体の調製を説明する。本質的には実施例6の手法にしたがったが、但しフルオロタンタル酸溶液(87 g/LTa2O5。そして0.7%EDTA含有)は一定流速で一次反応器に付加し、調整した流速で30%アンモニア溶液と混合して、pHを7.49とした。一次懸濁液を64℃で二次反応器に流し込んで、さらにアンモニア溶液と混合して、懸濁液を61.8℃、pH8.55で得て、これを次に三次反応器に流し込んで、63.5℃、pH8.14で混合した。反応を240 分間実行した後、懸濁液を採集し、これを濾過して、フッ化物90 ppmを含有する湿潤ケーキを得た。湿潤ケーキを1050℃で1時間焼成して、BET表面積1.01 m2/g 、圧縮密度3.98g/ccの焼成粉末を得た。他の手法条件及び生成物特性を表1に示す。
【0052】
実施例10
本実施例は、本発明の高表面積、低密度五酸化タンタル及び前駆体の調製を説明する。本質的には実施例9の手法にしたがったが、但し一次懸濁液は55.6℃、pH9.51であった。二次懸濁液は53.3℃、pH9.06、三次懸濁液は55℃、pH8.84であった。反応を240 分間実行した後、懸濁液を採集した。湿潤ケーキを900 で焼成して、BET表面積5.17 m2/g 、圧縮密度1.6 g/ccの粉末を得た。
【0053】
表1に記載した結果は、本発明の好ましい方法を用いて広範な五酸化ニオブ前駆体、五酸化ニオブ(Nb2O5)粉末生成物、五酸化タンタル前駆体及び五酸化タンタル(Ta2O5)粉末生成物を生成し得ることを示すが、これらは本発明の範囲内である。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1に示した結果は、粒子熟成のための反応器中での沈殿の速度及び滞留時間が生成物密度を増大し得ることを示す。滞留時間が115分及び12分のNb2O5に関する7.7の等電点付近で沈降した物質の走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ図2A〜図2D及び図3A〜図3Dに示す。図2A、図2B、図2C及び図2Dは、異なる倍率での実施例3で生成されたNb2O5の走査電子顕微鏡写真である。図3A、図3B、図3C及び図3Dは、異なる倍率での実施例5で生成されたNb2O5の走査電子顕微鏡写真である。図4A、図4B、図4C及び図4Dは、異なる倍率での実施例9で生成されたTa2O5の走査電子顕微鏡写真である。図5A、図5B、図5C及び図5Dは、異なる倍率での実施例10で生成されたTa2O5の走査電子顕微鏡写真である。顕微鏡写真「A」は、倍率 100倍での生成物粉末を示し、「B」は倍率500 倍での、「C」は 1,000倍での、そして「D」は10,000倍の生成物粉末を示す。
【0057】
図2A〜図2D及び図3A〜図3Dを参照すると、滞留時間12分で実施例5で生成された低密度、高表面積粒子(図3A〜図3Dに示す)は、115分の滞留時間で実施例3で生成された粒子(図2A〜図2Dに示す)よりも、目で見て有意に低密度である。さらに図2A〜図2Dに示された非常に密に圧縮された結晶は、顕微鏡写真で観察されるような結晶内成長及び濃密化を示す。図5A〜図5Dは、滞留時間2時間で、pH9.5で生成されたTa2O5の微細焼成粒子を示し、一方図4A〜図4Dは滞留時間120分でpH7.5で生成されたTa2O5の高密度粒子を示す。これらの顕微鏡写真は、本発明の方法により生成され得る粒子の範囲を示す。
【0058】
本明細書中で考察した実施例は、本発明の方法がフッ化アンモニウム及び微細結晶性五酸化弁金属水和物を生成し、既に定義されたライン拡大X線回析パターン及び焼成化五酸化物類似体を有することを示す。
【0059】
フッ化アンモニウム存在下での五酸化物水和物のゼータ電位は、図6に示すように、8又はそれ以上のpHで負であり、6又はそれ以下のpHでは正電位である。等電点又はゼロ変化の点は、pH7〜8の範囲である。等電点での沈殿は、高密度で実質的に球状の粒子を凝集及び形成させる。本発明の方法のこの特徴は、沈殿粒子サイズの制御を可能にする。等電点の上及び下のpHでは、荷電粒子は互いにはじき合って凝集を防止し、微細粒子が沈殿する。
【0060】
本明細書中に記載した本発明の形態は、本発明の説明のためのものであって、本発明を限定するものではない、ということは明らかに理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の好ましい方法を実施するための反応器系を示す。
【図2A】実施例3に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2B】実施例3に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図2C】実施例3に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図2D】実施例3に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図3A】実施例5に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図3B】実施例5に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図3C】実施例5に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図3D】実施例5に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図4A】実施例9に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図4B】実施例9に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図4C】実施例9に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図4D】実施例9に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図5A】実施例10に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図5B】実施例10に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図5C】実施例10に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図5D】実施例10に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の弁金属化合物、特に新規の五酸化ニオブ、ニオブ水和物、五酸化タンタルおよびタンタル水和物に、そしてこのような化合物の改良型製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弁金属は、金属を腐食から保護する傾向がある保護酸化物表面層を特徴とし、その例としては、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、チタン及びハフニウムが挙げられる。本明細書中で用いる場合、「弁金属」とは、タンタル及びニオブを指す。商業的に有益な形態の「弁金属」は、弁金属酸化物、例えば五酸化タンタル(Ta2O5)又は五酸化ニオブ(Ta2O5)である。タンタル及びニオブは、フッ化水素酸(HF)又はフッ化水素酸と硫酸(HF/H2SO4)の混合物により鉱石から慣用的に抽出され、典型的には溶媒抽出により、例えばメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いて分離されるヘプタフルオロ錯体を形成して、弁金属のヘプタフルオロ錯体の水性溶液を提供する。弁金属五酸化物は、アンモニアでヘプタフルオロ錯体を処理して沈殿され、濾過により回収される。
【0003】
米国特許第 5,068,097号に開示されているように、弁金属五酸化物は一般に、バッチ法により生成される。従来のバッチ法では、このような前駆体はアンモニアを溶液に付加するとpH範囲の変化の間ずっと沈殿されるため、粒子サイズおよび弁金属酸化物の粒子サイズ分布を制御するのは難しい、と考えられる。アンモニアを付加すると、溶液のpHが上昇する。しかしながら、pHの上昇は、アンモニアが溶液と反応する間起きる。弁金属五酸化物前駆体の沈殿は最初のpHで始まり、pHが上昇中継続し、さらに高pHで終了する、と考えられる。沈殿が実際に起きるpHは沈殿物の粒子サイズに影響を及ぼし、したがって沈殿がpHの範囲に亘って起きると、異なる粒子サイズが生成され、それにより酸化弁金属化合物の粒子サイズ分布が増大される、と考えられる。バッチ法での広範囲のpHでの沈殿はさらに、特定の粒子サイズの五酸化弁金属の生成を困難にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この問題は、例えば弁金属含有鉱石のHF温浸からの溶媒抽出弁金属ヘプタフルオロ錯体が温度、pH及び滞留時間制御条件下で処理加工される本発明の方法により克服し得る、ということを本発明者は発見した。
【0005】
本発明は、弁金属五酸化物前駆体並びに均一粒子サイズ及び狭粒子サイズ分布の弁金属五酸化物を提供する。一つの態様では、本発明は、粒子の大型高密度球状凝集物で、相対的に低表面積及び高嵩密度特性を有し、特に五酸化タンタルの場合にはBET表面積が3平方メートル/グラム(m2/g)未満、及び嵩密度が少なくとも3グラム/立法センチメートル(g/cc)、そして五酸化ニオブに関してはBET表面積が2m2/g未満、及び嵩密度が 1.2g/ccより大の弁金属五酸化物を提供する。本発明の別の態様は、相対的に高表面積および低嵩密度特性を有する微細粒子、特に五酸化タンタルの場合にはBET表面積が3m2/gより大、及び嵩密度が3g/cc未満、そして五酸化ニオブに関してはBET表面積が2m2/gより大、及び嵩密度が 1.2g/cc 未満の弁金属五酸化物を提供する。本発明はさらに、所望の粒子サイズ範囲内に狭粒子サイズ分布を有する五酸化弁金属、例えば五酸化タンタル又は五酸化ニオブの製造方法を提供する。
【0006】
本発明はさらに、弁金属酸化物、例えば五酸化タンタル又は五酸化ニオブの製造方法を提供する。本発明の方法は、所望の粒子サイズ範囲内に狭粒子サイズ分布を有する五酸化弁金属を生成するために用いると有益である。この方法は、1つ又はそれ以上の攪拌反応器中で、温度、pH及び滞留時間制御条件下で弁金属フルオロ錯体をアンモニアと反応させて、水和五酸化弁金属前駆体を沈殿させる工程を包含する。本発明はさらに、X線分析でのライン拡大d値が6±0.3 、3±0.2 及び 1.8±0.1 であることを特徴とする弁金属前駆体を提供する。このような前駆体は、低フッ化物含量、例えば500 ppm 未満であることを特徴とする水和酸化物である。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、
(a)一次容器中で、水和弁金属五酸化物前駆体の沈殿を開始させる温度、pH及び滞留時間条件で、アンモニア溶液とフッ化物イオン及びフルオロタンタル酸及びニオブオキシフルオリドから成る群から選択される弁金属フルオロ化合物を包含する水性溶液との混合物を提供し;
(b)水和弁金属五酸化物前駆体をさらに沈殿させる温度、pH及び滞留時間条件で混合するために、上記混合物を少なくとも1つの他の容器に移し;そして
(c)上記水和弁金属五酸化物前駆体を上記混合物から分離して、焼成により上記水和弁金属五酸化物前駆体を弁金属五酸化物に転化する
工程から成る五酸化弁金属の新規の及び改良の型製造方法を提供する。生成物純度は、反応器系中に供給される弁金属錯体の純度により制御し得る。錯生成剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を水性フルオロ溶液に付加して、溶液中の不純物の保持に役立て得る。
【0008】
反応の温度、pH及び滞留時間を制御するための好ましい方法は、連続攪拌タンク反応器、例えば縦続接続吸出管反応器系を用いる方法であって、この場合、弁金属フルオロ錯体とアンモニアとの間の反応は、一次反応容器中で、最初のpH及び温度で開始され、次に異なるpHおよび/または異なる温度に保持される1つ又はそれ以上の付加的反応容器により継続する。この方法では、一次pH(一次容器中)及び二次pH(二次容器中)は、実質的には同一であるか又は異なってもよく、別々に制御され得る。さらに二次pHを制御するのが望ましい場合、本方法はさらに、二次アンモニア溶液を二次容器中に導入して、二次アンモニア溶液と一次混合物とを混合して二次pHで二次混合物を得て、一次混合物及び二次アンモニア溶液を反応させて、弁金属五酸化物前駆体の沈殿を継続させる。一次及び二次反応容器が記載されているが、付加的反応容器を用いて工程をさらに制御し得る。例えば、わずかに異なるpHに保持された2つの反応容器を、一次および/または二次容器の代わりに用いて、それにより反応容器の総数を4又は5つに増量し得る。好ましい実施態様では、本方法は、二次混合物を三次温度に保持した第三容器に移して、二次混合物をさらに攪拌して、水和弁金属五酸化物前駆体を弁金属五酸化物に転化する前に水和弁金属五酸化物前駆体の沈殿を完了させる付加的工程を含む。本発明が所望の粒子サイズ範囲内で狭粒子サイズ分布を有する五酸化弁金属を生成するための連続方法を提供することは、さらに有益である。
【0009】
水和弁金属五酸化物前駆体は一般に、五酸化弁金属水和物を包含する。水和五酸化弁金属前駆体から弁金属五酸化物への転化は、焼成により、又は熱水法により成し遂げ得る。水和タンタル酸化物前駆体は、少なくとも790 ℃の温度で焼成することにより五酸化タンタルに転化され得る。ニオブ酸化物前駆体は、少なくとも650 ℃の温度で焼成することにより五酸化ニオブに転化され得る。各容器中での反応に関する滞留時間は、溶液が容器中に導入され、容器から移される速度により制御し得る。滞留時間の制御は、粒子のサイズ及び密度に影響を及ぼす。滞留時間を増大すると、粒子のサイズ及び密度が増大される。温度も粒子サイズに影響を与え、温度が高ければ沈殿反応を加速し、より微細な粒子を生じる。
【0010】
本発明の好ましい方法では、各容器のpH及び温度を制御すれば、生成さるべき所望の粒子サイズ及び狭粒子サイズ分布を有する弁金属五酸化物(例えば五酸化タンタル又はニオブ)が生成される。本発明の方法では、pHはアンモニアの付加を制御することにより制御し得る。一次pH(一次容器中のpH)は、五酸化タンタル又はニオブ生成物の沈殿を開始するのに十分なレベルに保持される必要がある。一般に、一次pHは、凝集粒子に関しては6〜9.5、好ましくは7〜8の範囲である。二次pH(二次容器中のpH)は、好ましくは五酸化タンタル又はニオブ前駆体の沈殿を実質的に確実に完了させるに十分なレベルに保持されるべきである。一般に二次pHは、8〜9.5,好ましくは8〜8.5の範囲である。一次反応容器中の一次pHが酸性側に傾いている場合、所望のpHを選るには二次容器中に二次アンモニア溶液を付加する必要がある。本発明の方法の好ましい3容器実施態様では、付加的アンモニアは三次容器に付加されず、三次容器のpHは実質的には二次容器のpHと同じか、又はわずかに低く、したがって沈殿反応が実質的完了に進行することを確証する。
【0011】
各容器に関するpHの選択は、本方法により生成される五酸化物生成物の粒子サイズを一部確定する。概して、極端なpH、即ち一次容器中が約6〜9.5のpHであれば、微細粒子サイズを生成するのに有益であり、中間pH範囲では、即ちpH約7.5であれば、実質的に球状(粗い)粒子サイズを生成するのに有益である。
【0012】
本明細書に用いる場合、滞留時間とは、単数又は複数の反応が起きる時間期間を指す。本方法に関する総又は全滞留時間は、各反応容器での滞留時間の合計である。本方法に関する最小滞留時間は、弁金属五酸化物前駆体を沈殿させるのに十分な滞留時間である。本方法に関する最大滞留時間は、一般に、所望の生成物質及び方法の経済面によって指図される。概して、与えられたpH及び温度に関しては、総滞留時間が短いほど、微細粒子サイズを生成するには望ましく、総滞留時間が長いほど、粗い実質的に球状の粒子サイズの生成には望ましい。さらに、弁金属フルオロ化合物の弁金属五酸化物前駆体への転化を実質的に完了させる与えられた温度及びpHに関しては、総滞留時間が短いほど有益である。長滞留時間が固相の再循環により成し遂げ得ることは、当業者には理解される。
【0013】
温度を上げて操作して、以下の反応を右に動かすと、水和弁金属酸化物前駆体の生成における反応の完了が促進される:
H2TaF7+7NH4OH→Ta(OH)5+7NH4F+2H2O
H2NbOF5+5NH4OH→Nb(OH)5+5NH4F+H2O
反応容器の温度は、水ジャケット等を含めた従来の手段により制御し得る。一般に、大規模製造のためには、各容器の温度は40〜95℃の範囲である。与><えられたpH及び滞留時間に関しては、高音であるほどより微細な粒子を生成し、低温であるほどより粗い粒子を生成する。
【0014】
2反応器系に関しては、pH、温度及び滞留時間の間の関係は、一般に以下のように要約される。
【表1】
この表は、説明のために提示されただけであって、本発明の方法の範囲を限定することを意味しないし、そのように解釈されるべきでもない。
【0015】
図1を参照すると、吸出管を伴う一連の反応容器及び循環(攪拌)手段から成る本発明の好ましい実施態様の実施に適した縦続接続吸出管反応器系の流れ図が示される。本発明の方法に用いるのに適したこのような反応容器、吸出管及び循環手段は商業的に公知であって、したがってここでは詳細に説明はしない。さらに、本発明の方法は特定の装置により実行されることに限定されず、上記の及び下記の方法工程の実施に適した広範な異なる装置により実施し得る。
【0016】
本発明の好ましい方法では、例えばニオブ含有鉱石の温浸及び分離からの弁金属フルオロ錯体含有溶液2は、一次反応容器10の上部中央に付加される。弁金属含有溶液2の付加速度は、反応容器のサイズ、容器内で起きる反応に関する所望の滞留時間、及び一次混合物が容器から移される速度に依っている。これらの変数は、所望の粒子の種類により調整される。
【0017】
アンモニア溶液4は、吸出管12により限定される領域の外側の一次反応容器10の底外周に付加される。アンモニア溶液4の付加速度も、反応容器のサイズ、容器内で起きる反応に関する所望の滞留時間、及び一次混合物が容器から移される速度に依る。さらに、アンモニア溶液4の付加速度は、最終生成物中の所望の粒子サイズにより部分的に確定される一次混合物の所望のpH(pH1)に依る。一般に、pH1は6〜9.5の範囲である。与えられた温度及び滞留時間に関しては、範囲の両端近くのpH値(6又は9付近)は最終生成物中に微細粒子サイズを生じ、一方範囲の中央近くのpH1値(7〜8)は最終生成物中に粗い球状粒子サイズを生じる。
【0018】
一次反応容器10は、最終生成物の所望の粒子サイズにより一部確定される一次温度(T1)に保持される。一般に、T1は30〜95℃、好ましくは50〜70℃の範囲である。与えられたpH及び滞留時間に関しては、T1の値が高いほど、より微細な粒子サイズを有する最終生成物を生じる。熱伝達手段、例えば水ジャケット(図1には示されていない)を用いて、反応容器を所望の温度に保持し得る。
【0019】
循環手段14、例えば攪拌器又はポンプを用いて、反応容器10内の弁金属含有溶液2及びアンモニア溶液4を循環又は混合して一次混合物を生成する。一次反応容器内の一次混合物の流れの方向は、矢印で示した通りである。循環中、一次混合物の一部は導管16を通って一次反応容器を出る。一次反応容器内で起きる反応のための滞留時間R1は、スループット率、及び/又は反応器のサイズを変えることにより制御し得るし、最終生成物の密度を、一部確定する。ある種の反応器サイズに関しては、R1は約2分〜2時間の範囲である。与えられたpH1及びT1に関しては、R1値が高いほど、最終生成物は圧縮された嵩密度、例えば1.2 g/cc又はそれ以上の嵩密度を有するようになる。
【0020】
導管16を通って一次反応容器10を出る一次混合物の一部は、吸出管22により限定される領域内の二次反応容器の内周中に導入される。二次反応容器20中への一次混合物の付加速度は、一次混合物が一次反応容器10から移される速度に依る。アンモニア溶液6は、吸出管22により限定される領域の外側の二次反応容器の外周且つ底付近に付加される。アンモニア溶液6の付加速度は、二次反応容器のサイズ、二次反応容器内で起きる反応のための所望の滞留時間、及び一次混合物が二次反応容器中に移される速度に依る。さらに、アンモニア溶液6の付加速度は、最終生成物の所望の粒子サイズにより一部確定される二次混合物の所望のpH(pH2)に依る。一般に、pH2は、一次反応器のpHに依って、8〜9.5の範囲である。与えられた温度及び滞留時間に関しては、pH2値は完全反応を確証するために選択されるが、一方消費されるアンモニアの量を限定する。
【0021】
二次反応容器20は、最終生成物中の粒子の所望の密度及び反応速度により一部確定される二次温度T2に保持される。一般にT2は、30〜95℃、好ましくは60〜85℃の範囲である。与えられたpH及び滞留時間に関しては、T2に関する値が高いほど、最終生成物の粒子サイズは微細になる。循環手段24を用いて、二次反応容器に入る混合物及び反応容器20内のアンモニア溶液6を循環および混合させて、二次混合物を作る。二次反応容器内の二次混合物の流れの方向は矢印で示される。逆流は、所望の生成物に依って、粒子特性に影響を及ぼす。
【0022】
循環中、二次混合物の一部は導管26を通って二次反応容器を出る。二次反応容器内で起きる反応のための滞留時間R2は、循環速度及び反応器のサイズを変えることにより制御し得るし、二次容器内の反応の完了を一部確定する。ある程度まで、それは粒子のさらに沈殿させ且つ高密度化させる。したがって、R2を変えることにより、異なる粒子サイズの生成物が生成される。R2は2〜90分の範囲である。与えられたpH2及びT2に関しては、R2値が高いほど、最終生成物はより密な且つ粗い粒子を有するようになる。
【0023】
導管26を通って二次反応容器20を出る二次混合物の一部は、吸出管32により限定される領域内の三次反応容器30の内周中に導入される。三次反応容器30中への二次混合物の付加速度は、二次混合物が二次反応容器20から移される速度に依る。
【0024】
循環手段34を用いて、三次反応容器内で二次混合物を循環させ、混合を継続して、五酸化ニオブを沈殿させて、実質的完了に進行させる。三次反応容器内の二次混合物の流れの方向は矢印で示されるが、反応の特性を限定しない。付加的アンモニアを三次反応容器に付加しない場合、三次混合容器中の混合物のpH3はアンモニア揮発化率とともに三次反応容器内の反応完了の程度によって、pH2よりわずかに低い。
【0025】
二次反応容器30は、容器中の所望の反応完了程度により一部確定される三次温度T3に保持される。一般にT3は、40〜95℃、好ましくは60〜85℃の範囲である。与えられたpH及び滞留時間に関しては、T3に関する値が高いほど、最終生成物反応が本質的に完了するようになる。循環中、混合物の一部は導管36を通って三次反応容器を出る。三次反応容器中で起きる反応のための滞留時間は、循環速度及び反応容器のサイズを変えることにより制御し得る。三次反応容器中の混合物の滞留時間R3は、最終生成物の反応の完了を一部確定する。したがって、R3を変えることにより、異なる程度の反応を生じ得る。R3は、2〜90分の範囲である。与えられたpH3及びT3に関しては、R3に関する値が高いほど、最終生成物はより高密度の粒子を有するようになる。
【0026】
導管36を通って三次反応容器30を出る溶液は、沈殿弁金属五酸化物前駆体固体が液体/固体分離工程40により溶液から回収される慣用的処理加工装置に移動する。液体/固体分離工程は、当業界で公知のあらゆる方法で、例えば濾過により実行される。好ましくは、液体/固体分離工程は、真空又は圧力フィルターにより実行される。
【0027】
当業者に理解されるように、全滞留時間、又は反応容器内の滞留時間は、各容器を出る溶液および/または固体の全部又は一部をリサイクルさせることにより増大される。特に、全滞留時間を増大する有効な方法は、本方法により生成される沈殿固体の全部又は一部をリサイクルさせて最初の容器中に戻すことである。リサイクルを用いる場合、各容器中の有効滞留時間、および/または有効全滞留時間は、反応溶液の少なくとも一部に関して上記されたものより大きい。
【0028】
五酸化ニオブ固体の分離後、リサイクルされなかった固体は、固体洗浄工程50により示されるように洗浄される。固体洗浄は、当業界での慣用的方法で、例えば約9.0のpHのアンモニア処理水で洗浄することにより、成し遂げられる。
【0029】
洗浄後、乾燥工程60により示されるように、固体を乾燥させる。その結果生じる生成物は、狭粒子サイズ分布及び所望の粒子サイズを有する水和弁金属五酸化物粉末である。水和弁金属五酸化物の焼成は、水和物を五酸化弁金属、例えば五酸化ニオブNb2O5又は五酸化タンタルTa2O5に転化する。
【0030】
物質及び試薬の付加を反応容器の特定部分を参照しながら説明してきたが、異なる特性を有する五酸化物生成物を生成するために、物質及び試薬は反応容器の別の部分に付加し得る。例えば、一次反応容器内では、弁金属含有溶液2を容器の外周に付加し、アンモニア溶液を容器の中央に付加し得る。さらに、前記の実施態様は3反応容器を用いるが、本発明の方法は、最終生成物における所望の特性に依って、それより少ないか又はそれより多い数の反応容器を用いて実行し得る、と理解されるべきである。反応の前記実施態様は図に示すような混合及び流れを用いるが、逆の流れも同様に用い得る。さらに、三次反応器から排出された固体の一部は、所望の場合には粒子をより粗く且つ高密度にするためにリサイクルし得る。
【0031】
さらに、本発明は新規の弁金属五酸化物前駆体、特に新規の五酸化ニオブ水和物及び新規の五酸化タンタル水和物を提供する。本発明の五酸化弁金属水和物を処理加工して、有益な五酸化弁金属を生成し得る。本発明の五酸化弁金属水和物は、X線分析下でのライン拡大d値が6±0.3 、3±0.2 及び 1.8±0.1 で、フッ化物含量が 500ppm 、好ましくは 150ppm 未満であることを特徴とする。
【0032】
本発明の五酸化弁金属前駆体の実施態様はさらに:
(a)BET表面積が2m2/g未満、好ましくは1m2/g未満、さらに好ましくは 0.5m2/g未満である五酸化ニオブ水和物;
(b)BET表面積が2m2/gより大、好ましくは6m2/gより大、さらに好ましくは 50m2/g より大である五酸化ニオブ水和物;
(c)BET表面積が3m2/g未満、好ましくは2m2/g未満、さらに好ましくは1m2/g未満である五酸化タンタル水和物;そして
(d)BET表面積が3m2/gより大、好ましくは7m2/gより大、さらに好ましくは11m2/gより大である五酸化タンタル水和物
であることを特徴とする。
【0033】
本発明の五酸化弁金属前駆体は、前駆体を五酸化弁金属に転化する前に五酸化弁金属前駆体を分離することによる本発明の方法により生成するのが有益である。
【0034】
本発明はさらに、五酸化弁金属前駆体を焼成することにより新規の五酸化弁金属粉末を提供する。このような五酸化弁金属粉末の第一の実施態様は、低表面積、高密度、BET表面積が2m2/g未満、好ましくは1m2/g未満、さらに好ましくは0.75m2/g未満又はそれ以下である焼成五酸化ニオブ粒子の実質的には球状の凝集物、並びに1.8 g/ccより大、好ましくは1.9 g/ccより大、さらに好ましくは2g/ccより大の高嵩密度を特徴とする。
【0035】
五酸化弁金属の第二の実施態様は、BET表面積が2m2/gより大、好ましくは2.5 m2/gより大、さらに好ましくは3m2/gより大、さらには4m2/gより大、いくつかの場合には6m2/gより大でさえある、そして圧縮された嵩密度が1.8 g/cc未満、好ましくは1g/cc未満、いくつかの場合にはさらに好ましくは0.75 g/cc 未満である高表面積、低嵩密度焼成五酸化ニオブ粒子を特徴とする。
【0036】
五酸化弁金属の第三の実施態様は、BET表面積が3m2/g未満、好ましくは2m2/g未満、さらに好ましくは1m2/g未満、いくつかの場合には0.75m2/g未満、例えば0.4 m2/g又はそれ以下でさえある、そして圧縮された嵩密度が3g/ccより大、好ましくは3.5 g/ccより大、さらに好ましくは3.8 g/ccより大、いくつかの場合にはさらに好ましくは4g/ccより大である低表面積、高嵩密度の、実質的には球状凝集物の焼成五酸化タンタル粒子を特徴とする。
【0037】
五酸化弁金属の第四の実施態様は、BET表面積が3m2/gより大、好ましくは4m2/gより大、さらに好ましくは5m2/gより大、さらにいくつかの場合には6m2/gより大、あるいは少なくとも7又は11m2/gでさえある、そして圧縮された嵩密度が3.0 g/cc未満、好ましくは2.5 g/cc未満、さらに好ましくは2g/cc未満、いくつかの場合にはさらに好ましくは1g/cc未満、例えば約0.75 g/cc である高表面積、低嵩密度焼成五酸化タンタル粒子を特徴とする。
【0038】
低密度、高表面積粉末の場合には、粒子の実質的に多数が5μ未満のサイズである。例えば、いくつかの物質は大型粒子に凝集するけれども、典型的には25%又はそれ以上の粒子、例えば少なくとも30%で80%までの粒子が1μ未満のサイズである。高密度、低表面積粉末の場合、粒子のほとんどが、典型的には5μ以上の大型粒子に凝集される。
【0039】
本発明の生成物は、本発明の方法により高純度で生成されると有益である。本発明により生成される微細粒子は、例えばエレクトロニクス、セラミックのような種々の用途における微量添加物として、そして触媒としての使用に対しては高反応性である。大型高密度球状凝集粒子は例外的流動学的特性を有し、テルミット(活性金属、即ちアルミニウムによる熱還元法)又はガラス用途に用い得る。
【0040】
大型球状粒子は、他のガラス形成成分と混合するに際しては、十分混合する。さらに、大型高密度粒子は高気体流蒸気中では容易に空輸されず、したがって高融解効率を生じる。テルミット処理に関するその他の用途は、例えば、より大きいパッキング因子を提供する大型高密度球状粒子を、したがってより大きなテルミットバッチ及びより大きい再現性を提供する。さらに、大型高密度粒子はテルミット反応中に容易に空輸されず、したがってより大きい生成物回収をもたらす。
【0041】
BET表面積、嵩密度及び粒子サイズに関する本発明の生成物の特徴表示は、当業界で普通に用いられる十分公知の手法により実行し得る。例えば、BET表面積は、粒子の表面に吸着された単層の窒素ガスを測定することにより、確定される。フッ化物含量は、硫酸溶液からシリコーン四フッ化物として揮発化することによるアルカリ融解及び分離により確定される。フッ化物含量は、特定のイオン電極を用いて留出物中で確定される。粒子サイズは、レーザー光線散乱法を用いて確定される。凝集物の嵩密度は公知の容量の試料を計量することにより確定される一方、圧縮嵩密度は最大密度をもたらすよう機械的タッピング後に、例えば5000タップ後に、確定される。試料の形態学的特性は、必要な場合には、走査型電子顕微鏡を用いて目で検査することにより確定される。
【0042】
本発明の種々の態様及び実施態様の有効性及び利点をさらに以下の実施例により説明するが、この場合、実質的には図1に示したような3反応容器を用いる連続手法で、五酸化弁金属前駆体が生成された。3つの1500mlビーカーを一次、二次及び三次反応容器として用いて、名目上の作業容量は 1000ml であった。ビーカーは二重ボイラー型セットアップで加熱され、各ビーカーを熱伝導液、例えば水又はその他の熱伝導液の容器で取り囲んだ。吸出管セットアップを得るために、羽根(又はそらせ板)を装備した内部管を各ビーカーの内側に用いた。可変速度羽根車を、循環手段として各ビーカーの底に用いた。可変速度ぜん動ポンプを用いて2つの一次ビーカー反応器への弁金属−フルオロ溶液及びアンモニア溶液の供給速度を制御した。
【実施例】
【0043】
実施例1
本実施例は、相対的に高表面積、低密度の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)の製造のための本発明の方法を説明する。脱イオン(DI)水を充填した反応器浴二重ボイラーを98℃に設定した。ニオブ159 g/L の濃度のニオブオキシフルオリドの溶液を約76℃に予熱して、18.5 ml/分で一次反応器に付加した。5 N アンモニア(7.8 重量%)の溶液を80.5 ml/分で一次反応器に付加した。反応体を一次反応器中で攪拌して、平均温度74℃、pH8.5とした。その結果生じた懸濁液を二次及び三次反応器に流し込んで、さらに混合した。反応を 330分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを濾過し、4回以上洗浄して、濾過し、ケーキを得て、これを85℃で6時間乾燥し、水分28%及びフッ化物 200ppm を含有する水和五酸化ニオブケーキ187gを得た。水和ケーキを900 ℃で4時間焼成して、フッ化物100 ppm を含有する五酸化ニオブ粒子 97.5gを得たが、この場合、99.5%の物質が 1.5μ以下のサイズで(100%が24μ以下)、2.82 m2/g の高BET表面積を有した。上記の並びにその他の手法条件及び生成物特性を、下記の表1に示す。
【0044】
実施例2
本実施例は、高密度、高粒子サイズ(低表面積)の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)の製造のための本発明の方法を説明する。実施例1の手法にしたがったが、但しニオブ溶液は13.1 ml/分で一次反応器に付加し、アンモニア溶液は98.2 ml/分で一次反応器に付加して、平均温度61℃、pH9.14の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、そこにさらにニオブオキシフルオリド溶液を5.6 ml/ 分で攪拌しながら付加した。その結果二次反応器溶液の平均温度及びpHはそれぞれ73℃及び8.28となった。その結果生じた二次懸濁液を三次反応器に流し込んで、さらに混合した。反応を315 分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを実施例1と同様に濾過し、洗浄して、再スラリー化し、濾過して、焼成した。非焼成ケーキは重量が223.5 g (水分44.3%)で、フッ化物 460 ppm を含有した。この場合、73.5%の物質が96μ以上のサイズであった。その他の手法条件及び生成物特性を表1に示す。
【0045】
実施例3
本実施例は、低表面積、高密度の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)生成物の製造のための本発明の方法を説明する。実施例1の手法にしたがったが、但しニオブ溶液は3.5 ml/ 分で、アンモニア溶液は7.8 ml/ 分で一次反応器に付加して、平均温度76℃、pH7.78の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、そこにさらにアンモニア溶液を15.6 ml/分で攪拌しながら付加した。その結果二次反応器溶液の平均温度及びpHはそれぞれ68℃及び8.48となった。その結果生じた二次懸濁液を三次反応器に流し込んで、さらに混合した。反応を1100分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを実施例1と同様に濾過し、洗浄して、再スラリー化し、濾過して、焼成した。非焼成ケーキは重量が143.1 g(水分29.07%)で、フッ化物 1400 ppmを含有した。焼成化ケーキは重量71.5 gで、フッ化物200 ppm を含有し、BET表面積は0.5 m2/gであった。この場合、77.5%の物質が8〜32μのサイズであった。その他詳細及び生成物特性を表1に示す。
【0046】
実施例4
本実施例は、高表面積、低密度の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)生成物の製造のための本発明の方法を説明する。実施例1の手法にしたがったが、但しニオブ溶液は19 ml/分で、アンモニア溶液は34.3 ml/分で一次反応器に付加して、平均温度80℃、pH6.28の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、そこにさらにアンモニア溶液を20.9 ml/分で攪拌しながら付加した。その結果生じたpH8.46の二次懸濁液を三次反応器に流し込んで、さらに混合した。反応を 375分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを実施例1と同様に濾過し、洗浄して、再スラリー化し、濾過して、焼成した。非焼成ケーキは重量が 216.6 g(水分49.9%)で、フッ化物 3600ppm を含有した。焼成化ケーキは重量82.2 gで、フッ化物 300ppm を含有し、BET表面積は2.18 m2/g であった。30.5%の物質が1μ以下のサイズであった。その他詳細及び生成物特性を表1に示す。
【0047】
実施例5
本実施例は、高表面積、低密度の本発明の五酸化ニオブ前駆体及び五酸化ニオブ(Nb2O5)生成物の製造のための本発明の方法を説明する。実施例1の手法にしたがったが、但しニオブ溶液は56.5 ml/分で、アンモニア溶液は210.4 ml/ 分で一次反応器に付加して、平均温度80℃、pH7.72の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、そこにさらにアンモニア溶液を攪拌しながら付加して、pH8.49及び70℃の二次懸濁液を得て、これを三次反応器に流し込んで、さらに混合した。2Lの懸濁液を採集し、これを実施例1と同様に濾過し、洗浄して、再スラリー化し、濾過して、焼成した。焼成化ケーキはフッ化物 100ppm を含有し、圧縮嵩密度1,02 g/cc であった。28.4%の物質が1μ以下のサイズであった。その他詳細及び生成物特性を表1に示す。
【0048】
実施例6
本実施例は、高表面積、低密度の本発明の五酸化タンタル前駆体及び五酸化タンタル(Ta2O5)の製造のための本発明の方法を説明する。60℃で熱伝達油を反応器浴二重ボイラーに充填した。五酸化タンタル80 g/Lの濃度のフルオロタンタル酸の溶液を約67℃で、30 ml/分で、5 N(7.8 重量%)アンモニア溶液50 ml/分と一緒に一次反応器に付加した。溶液を一次反応器中で混合して、一次容器懸濁液を温度67℃、pH9.01とし、これを二次反応器中にオーバーフローし、混合させて、72℃、pH8.73とした。懸濁液を三次反応器に流し込んで、78℃、pH8.42でさらに混合した。反応を 180分実行した後、2Lの懸濁液を採集し、これを濾過し、洗浄して、5Nアンモニア溶液 2 L で85℃で再スラリー化した。その結果生じたスラリーを濾過し、さらに4回洗浄して、濾過し、湿潤ケーキを得て、これを 100℃で6時間乾燥した。湿潤ケーキは重量121.7 g(水分2.43%)で、フッ化物50 ppmを含有した。これを900 ℃で1時間焼成して、フッ化物50 ppm未満を含有し、BET面積が6.7 m2/g、圧縮密度1.81 g/cc のドライ焼成化ケーキ108 g を得た。この場合、78.6%の焼成化ケーキが1μ以下のサイズであった。他の手法条件及び生成物特性を、下記の表1に示す。
【0049】
実施例7
本実施例は、低密度五酸化タンタル及び前駆体の調製を説明する。実施例6の手法に従ったが、但しフルオロタンタル酸溶液は66℃で、30 ml/分で、アンモニア溶液は35 ml/分で一次反応器に付加して、平均温度74℃、pH8.42の溶液を得た。その結果生じた懸濁液を二次反応器に流し込んで、77℃、pH8.2でさらに混合し、次に三次反応器に流し込んで、82℃、pH8.0で混合した。反応を 375分間実行した後、懸濁液2L を採集した。湿潤ケーキ(水分11.9%)232 g は、フッ化物310 ppm を含有した。他の詳細及び生成物特性を表1に示す。
【0050】
実施例8
本実施例は、高表面積、低密度五酸化タンタル及び前駆体の生成を説明する。実施例6の手法に従ったが、但しフルオロタンタル酸溶液は73℃で、25 ml/分で、アンモニア溶液は25 ml/分で付加して、平均温度74℃、pH8.42の一次懸濁液を得た。一次懸濁液を二次反応器に流し込んで、さらに50 ml/分のアンモニア溶液と混合して、二次懸濁液を60℃、pH9.5で得て。これを次に三次反応器に流し込んで、71℃、pH9.08で混合した。反応を255 分間実行した後、懸濁液6L を採集した。湿潤ケーキは、フッ化物50 ppm未満を含有した。焼成化ケーキはBET表面積4.96 m2/g 、圧縮密度2.96 g/cc であった。
【0051】
実施例9
本実施例は、本発明の低表面積、高密度の凝集化五酸化タンタル及び前駆体の調製を説明する。本質的には実施例6の手法にしたがったが、但しフルオロタンタル酸溶液(87 g/LTa2O5。そして0.7%EDTA含有)は一定流速で一次反応器に付加し、調整した流速で30%アンモニア溶液と混合して、pHを7.49とした。一次懸濁液を64℃で二次反応器に流し込んで、さらにアンモニア溶液と混合して、懸濁液を61.8℃、pH8.55で得て、これを次に三次反応器に流し込んで、63.5℃、pH8.14で混合した。反応を240 分間実行した後、懸濁液を採集し、これを濾過して、フッ化物90 ppmを含有する湿潤ケーキを得た。湿潤ケーキを1050℃で1時間焼成して、BET表面積1.01 m2/g 、圧縮密度3.98g/ccの焼成粉末を得た。他の手法条件及び生成物特性を表1に示す。
【0052】
実施例10
本実施例は、本発明の高表面積、低密度五酸化タンタル及び前駆体の調製を説明する。本質的には実施例9の手法にしたがったが、但し一次懸濁液は55.6℃、pH9.51であった。二次懸濁液は53.3℃、pH9.06、三次懸濁液は55℃、pH8.84であった。反応を240 分間実行した後、懸濁液を採集した。湿潤ケーキを900 で焼成して、BET表面積5.17 m2/g 、圧縮密度1.6 g/ccの粉末を得た。
【0053】
表1に記載した結果は、本発明の好ましい方法を用いて広範な五酸化ニオブ前駆体、五酸化ニオブ(Nb2O5)粉末生成物、五酸化タンタル前駆体及び五酸化タンタル(Ta2O5)粉末生成物を生成し得ることを示すが、これらは本発明の範囲内である。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1に示した結果は、粒子熟成のための反応器中での沈殿の速度及び滞留時間が生成物密度を増大し得ることを示す。滞留時間が115分及び12分のNb2O5に関する7.7の等電点付近で沈降した物質の走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ図2A〜図2D及び図3A〜図3Dに示す。図2A、図2B、図2C及び図2Dは、異なる倍率での実施例3で生成されたNb2O5の走査電子顕微鏡写真である。図3A、図3B、図3C及び図3Dは、異なる倍率での実施例5で生成されたNb2O5の走査電子顕微鏡写真である。図4A、図4B、図4C及び図4Dは、異なる倍率での実施例9で生成されたTa2O5の走査電子顕微鏡写真である。図5A、図5B、図5C及び図5Dは、異なる倍率での実施例10で生成されたTa2O5の走査電子顕微鏡写真である。顕微鏡写真「A」は、倍率 100倍での生成物粉末を示し、「B」は倍率500 倍での、「C」は 1,000倍での、そして「D」は10,000倍の生成物粉末を示す。
【0057】
図2A〜図2D及び図3A〜図3Dを参照すると、滞留時間12分で実施例5で生成された低密度、高表面積粒子(図3A〜図3Dに示す)は、115分の滞留時間で実施例3で生成された粒子(図2A〜図2Dに示す)よりも、目で見て有意に低密度である。さらに図2A〜図2Dに示された非常に密に圧縮された結晶は、顕微鏡写真で観察されるような結晶内成長及び濃密化を示す。図5A〜図5Dは、滞留時間2時間で、pH9.5で生成されたTa2O5の微細焼成粒子を示し、一方図4A〜図4Dは滞留時間120分でpH7.5で生成されたTa2O5の高密度粒子を示す。これらの顕微鏡写真は、本発明の方法により生成され得る粒子の範囲を示す。
【0058】
本明細書中で考察した実施例は、本発明の方法がフッ化アンモニウム及び微細結晶性五酸化弁金属水和物を生成し、既に定義されたライン拡大X線回析パターン及び焼成化五酸化物類似体を有することを示す。
【0059】
フッ化アンモニウム存在下での五酸化物水和物のゼータ電位は、図6に示すように、8又はそれ以上のpHで負であり、6又はそれ以下のpHでは正電位である。等電点又はゼロ変化の点は、pH7〜8の範囲である。等電点での沈殿は、高密度で実質的に球状の粒子を凝集及び形成させる。本発明の方法のこの特徴は、沈殿粒子サイズの制御を可能にする。等電点の上及び下のpHでは、荷電粒子は互いにはじき合って凝集を防止し、微細粒子が沈殿する。
【0060】
本明細書中に記載した本発明の形態は、本発明の説明のためのものであって、本発明を限定するものではない、ということは明らかに理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の好ましい方法を実施するための反応器系を示す。
【図2A】実施例3に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2B】実施例3に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図2C】実施例3に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図2D】実施例3に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図3A】実施例5に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図3B】実施例5に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図3C】実施例5に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図3D】実施例5に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化ニオブ粉末のSEM写真である。
【図4A】実施例9に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図4B】実施例9に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図4C】実施例9に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図4D】実施例9に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図5A】実施例10に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図5B】実施例10に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図5C】実施例10に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【図5D】実施例10に記載された方法で生成された本発明の焼成五酸化タンタル粉末のSEM写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由落下嵩密度(A)と機械的タッピングによる5000回タップ後の嵩密度(B)との比率(A/B)が0.72を超え1.0未満であることを特徴とする五酸化ニオブ粉末。
【請求項2】
自由落下嵩密度(A)と機械的タッピングによる5000回タップ後の嵩密度(B)との比率(A/B)が0.61を超え1.0未満であることを特徴とする五酸化タンタル粉末。
【請求項1】
自由落下嵩密度(A)と機械的タッピングによる5000回タップ後の嵩密度(B)との比率(A/B)が0.72を超え1.0未満であることを特徴とする五酸化ニオブ粉末。
【請求項2】
自由落下嵩密度(A)と機械的タッピングによる5000回タップ後の嵩密度(B)との比率(A/B)が0.61を超え1.0未満であることを特徴とする五酸化タンタル粉末。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公開番号】特開2011−144110(P2011−144110A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103176(P2011−103176)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2007−335112(P2007−335112)の分割
【原出願日】平成8年10月8日(1996.10.8)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2007−335112(P2007−335112)の分割
【原出願日】平成8年10月8日(1996.10.8)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]