井戸の設置方法、及び井戸
【課題】地盤沈下を抑制しつつ揚注水を行うことができる、井戸の設置方法、及び井戸を提供すること。
【解決手段】井戸4の設置方法は、地盤2の内部に外管を配置する工程であって、外管の内部の土壌を排出しながら当該外管を配置する外管配置工程と、外管配置工程の後に、外管の内部に内管を配置する工程であって、内管の管壁を貫通するように形成された内管孔と、水潤により膨張する膨張部材であって、地盤2から外管を引き抜いた後における当該地盤2と内管との相互間の空間部に介在するように、当該内管の外面における内管孔の周囲に配設された膨張部材と、を備える内管を、外管の内部に挿入する内管配置工程と、内管配置工程の後に、地盤2から外管を引き抜く外管引き抜き工程と、内管配置工程の後であって、外管引き抜き工程の前後いずれか又は同時に、膨張部材を水潤により膨張させる膨張工程とを含む。
【解決手段】井戸4の設置方法は、地盤2の内部に外管を配置する工程であって、外管の内部の土壌を排出しながら当該外管を配置する外管配置工程と、外管配置工程の後に、外管の内部に内管を配置する工程であって、内管の管壁を貫通するように形成された内管孔と、水潤により膨張する膨張部材であって、地盤2から外管を引き抜いた後における当該地盤2と内管との相互間の空間部に介在するように、当該内管の外面における内管孔の周囲に配設された膨張部材と、を備える内管を、外管の内部に挿入する内管配置工程と、内管配置工程の後に、地盤2から外管を引き抜く外管引き抜き工程と、内管配置工程の後であって、外管引き抜き工程の前後いずれか又は同時に、膨張部材を水潤により膨張させる膨張工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸の設置方法、及び井戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存構造物下における地質調査や揚水処理、あるいは土壌浄化等のため、既存構造物下に井戸を設置する場合がある。この場合、既存構造物と干渉することなく井戸を設置するため、例えば斜めボーリングや、既存構造物の周辺に設置された竪穴からの水平ボーリング等の工法が提案されている。
【0003】
例えば、地下坑道の側壁に削孔されたボーリング孔内に、複数の膨縮自在のパッカーを設置し、当該パッカーを膨張させることで当該パッカーを境壁としてボーリング孔内を複数の区間に区切り、各区間の間隙水圧等を測定する多点パッカー式孔内透水試験方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2804995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の方法では、削孔したボーリング孔から土壌、地下水、あるいはガス等の試料を採取した結果、ボーリング孔壁が土圧に耐え切れずに崩壊する可能性があり、ボーリング孔壁の崩壊に伴って地盤沈下が生じる可能性があった。このため、ボーリング孔から積極的に地下水等の試料採取を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地盤沈下を抑制しつつ揚注水を行うことができる、井戸の設置方法、及び井戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の井戸の設置方法は、地盤の内部に外管を配置する工程であって、当該外管の内部の土壌を排出しながら当該外管を配置する外管配置工程と、前記外管配置工程の後に、前記外管の内部に内管を配置する工程であって、当該内管の管壁を貫通するように形成された内管孔と、水潤により膨張する膨張部材であって、前記地盤から前記外管を引き抜いた後における当該地盤と当該内管との相互間の空間部に介在するように、当該内管の外面における前記内管孔の周囲に配設された膨張部材と、を備える内管を、前記外管の内部に挿入する内管配置工程と、前記内管配置工程の後に、前記地盤から前記外管を引き抜く外管引き抜き工程と、前記内管配置工程の後であって、前記外管引き抜き工程の前後いずれか又は同時に、前記膨張部材を水潤により膨張させる膨張工程と、を含む。
【0008】
また、請求項2に記載の井戸の設置方法は、請求項1に記載の井戸の設置方法において、前記膨張部材を、前記内管孔を挟んで前記内管の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、前記内管の周方向に沿った環状に配置する。
【0009】
また、請求項3に記載の井戸の設置方法は、請求項1又は2に記載の井戸の設置方法において、前記外管配置工程の後であって、前記内管配置工程の前後いずれか又は同時に、止水材を注入する注入管を、前記外管と前記内管及び前記膨張部材との相互間に配置する注入管配置工程と、前記外管引き抜き工程及び前記膨張工程の後に、前記膨張部材の相互間の空間部であって前記内管孔が位置していない止水対象空間部に、前記注入管を介して止水材を注入する止水材注入工程と、を含む。
【0010】
また、請求項4に記載の井戸の設置方法は、請求項3に記載の井戸の設置方法において、前記止水材注入工程において、前記内管の管軸方向に沿って複数設けられた前記止水対象空間部の中で、前記注入管の挿入方向の最先側に位置する前記止水対象空間部から前記注入管の挿入方向の最後側に位置する前記止水対象空間部に至るまで順次に、前記注入管の挿入端部が各止水対象空間部に位置するように当該注入管を移動させ、前記止水材を注入する。
【0011】
また、請求項5に記載の井戸の設置方法は、請求項1から4のいずれか一項に記載の井戸の設置方法において、前記内管配置工程の後であって、前記外管引き抜き工程及び前記膨張工程の前後いずれか又は同時に、気体又は液体を注入されることで膨張する複数のパッカー袋と、前記複数のパッカー袋に前記気体又は前記液体を注入するパッカー管と、前記内管の内部において揚水または注水を行う揚注水管であって、当該揚注水管の管壁を貫通するように形成された揚注水孔を有する揚注水管とを、前記内管の内部に挿入するパッカー挿入工程と、前記外管引き抜き工程、前記膨張工程、及び前記パッカー挿入工程の後に、前記地盤における揚注水対象位置に対応する前記内管の内管孔に対応する位置に、前記複数のパッカー袋の相互間に形成された揚注水空間部と前記揚注水孔とが配置されるように前記複数のパッカー袋及び前記揚注水管を移動させた後、前記パッカー管から前記気体又は前記液体を前記複数のパッカー袋に注入することにより当該複数のパッカー袋を膨張させて、前記揚注水孔の周囲における前記揚注水管と前記内管との相互間の空間部を塞ぐことにより、前記揚注水管を介して前記地盤から揚水または注水することを可能とするパッカー膨張工程と、を含む。
【0012】
また、請求項6に記載の井戸の設置方法は、請求項1から5のいずれか一項に記載の井戸の設置方法において、前記外管配置工程の前に、前記地盤に竪穴を配置する竪穴配置工程を含み、前記外管配置工程において、前記竪穴から前記外管を配置する。
【0013】
また、請求項7に記載の井戸は、請求項1から6のいずれか一項に記載の井戸の設置方法によって設置される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る井戸の設置方法、及び請求項7に係る井戸によれば、内管の外面における内管孔の周囲に膨張部材を配設し、外管の内部に内管を挿入した後に当該膨張部材を水潤により膨張させるので、横穴における内管孔以外の位置からの地下水の漏出を膨張部材により防止できると共に、膨張部材により横穴の壁面を保持することで崩壊を防止することができ、地盤の沈下を防止することができる。従って、既存構造物と干渉することなく当該既存構造物下に井戸を設置し、積極的に地下水等の試料採取を行うことができる。
【0015】
また、請求項2に係る井戸の設置方法によれば、膨張部材を、内管孔を挟んで内管の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、内管の周方向に沿った環状に配置したので、内管孔を膨張部材によって確実に囲繞することができ、内管孔以外の位置からの地下水の漏出を確実に防止できる。
【0016】
また、請求項3に係る井戸の設置方法によれば、止水対象空間部に注入管を介して止水材を注入するので、内管孔以外の位置からの地下水の漏出を更に確実に防止できる。また、内管孔及び膨張部材以外の位置における横穴の内部空間(止水対象空間部)が止水材で充填されるので、横穴の崩壊を確実に防止することができ、地盤の沈下を防止することができる。
【0017】
また、請求項4に係る井戸の設置方法によれば、注入管の挿入方向の最先側に位置する止水対象空間部から注入管の挿入方向の最後側に位置する止水対象空間部に至るまで順次に止水材を注入するので、複数の止水対象空間部を順次止水することができる。
【0018】
また、請求項5に係る井戸の設置方法によれば、複数のパッカー袋、パッカー管、及び揚注水管を内管の内部に挿入し、地盤における揚注水対象位置に対応する内管の内管孔に対応する位置に揚注水空間部と揚注水孔とが配置されるように複数のパッカー袋及び揚注水管を移動させ、当該複数のパッカー袋を膨張させて、揚注水孔の周囲における揚注水管と内管との相互間の空間部を塞ぐことにより、揚注水管を介して地盤から揚注水することを可能とするので、所望の内管孔を選択して揚水あるいは薬液の注入を行うことができる。
【0019】
また、請求項6に係る井戸の設置方法によれば、地盤に竪穴を配置し、当該竪穴から外管を配置するので、既存構造物の下方に略水平方向の井戸を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】井戸の設置方法を用いて設置した井戸の概要図である。
【図2】竪穴配置工程により配置された竪穴を示す図であり、図2(a)は掘削された竪穴を示す図、図2(b)は竪穴に開口部を設けた状態を示す図である。
【図3】外管配置工程において竪穴から略水平方向に削孔された横穴を示す図であり、図3(a)は横穴が削孔された状態を示す図、図3(b)は削孔された横穴に外管が配置された状態を示す図である。
【図4】外管、当該外管の内部に配置された内管、及び注入管が配置された横穴の断面図である。
【図5】外管、内管、及び注入管の管軸方向と直交する断面を示す図である。
【図6】膨張工程を実施中の横穴の断面図である。
【図7】外管引き抜き工程により外管を引き抜いた後の横穴の断面図である。
【図8】内管、及び注入管の管軸方向と直交する断面を示す図である。
【図9】止水材注入工程における横穴の断面図である。
【図10】止水材注入工程における横穴の断面図である。
【図11】止水材注入工程における横穴の断面図である。
【図12】パッカー挿入工程における内管の内部を示す概略図である。
【図13】パッカー挿入工程における内管の内部を示す概略図である。
【図14】内管における膨張部材の配置の変形例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る井戸の設置方法、及び井戸の実施の形態を詳細に説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(井戸の概要)
まず、本実施の形態に係る井戸の設置方法を用いて設置される井戸の概要について説明する。図1は井戸の設置方法を用いて設置した井戸の概要図である。本実施の形態では、図1に示すように、既存構造物1の地下の所定深度において複数の揚注水対象位置が設定されている場合を例として説明する。本実施の形態によれば、既存構造物1の近傍の地盤2に竪穴3が配置され、揚注水対象位置を貫通するように当該竪穴3から略水平方向に井戸4が設置される。これにより、既存構造物1と干渉することなく、当該既存構造物1の地下に井戸4を設置することができる。なお、図1では竪穴3に1本の井戸4のみを設置された状態を例示しているが、当該竪穴3に複数本の井戸4を設置してもよい。この場合、共通の竪穴3から複数本の井戸4を同一又は異なる深度に相互に並行に設置してもよく、あるいは共通の竪穴3から放射状に井戸4を設置してもよい。なお、井戸4は揚水を行うための揚水井戸、あるいは注水や薬液の注入等を行うための注水井戸として使用可能である。
【0023】
(井戸の設置方法)
次に、井戸4の設置方法について説明する。井戸4の設置方法においては、「竪穴配置工程」、「外管配置工程」、「内管配置工程」、「注入管配置工程」、「膨張工程」、「外管引き抜き工程」、「止水材注入工程」、「パッカー挿入工程」、及び「パッカー膨張工程」が順次実施される。以下、これらの各工程について説明する。
【0024】
(井戸の設置方法−竪穴配置工程)
竪穴配置工程は、地盤2に竪穴3を配置する工程である。図2は竪穴配置工程により配置された竪穴3を示す図であり、図2(a)は掘削された竪穴3を示す図、図2(b)は竪穴3に開口部3aを設けた状態を示す図である。この竪穴配置工程では、公知の地下掘削工法を用いて、井戸4の設置深度以上の深度まで竪穴3を掘削する。なお、竪穴3の開口径は任意であり、例えば以降の各工程で使用する建設機械を搬入可能な程度の開口径を有する竪穴3を配置する。
【0025】
また、掘削した竪穴3の側壁の崩落防止のため、例えば側壁にはコンクリートが打設され、さらに井戸4を設置する部分には開口部3aが設けられる(図2(b))。この開口部3aからの地下水の漏出を防ぐため、開口部3aには薬液注入工法等の止水処理が施される。
【0026】
(井戸の設置方法−外管配置工程)
外管配置工程は、地盤2の内部に外管を配置する工程であり、竪穴配置工程の後に実施される。図3は外管配置工程において竪穴3から略水平方向に削孔された横穴を示す図であり、図3(a)は横穴が削孔された状態を示す図、図3(b)は削孔された横穴に外管が配置された状態を示す図である。図3(a)に示すように、竪穴3の側壁に設けられた開口部3aから略水平方向に横穴5が削孔されると共に、当該削孔された横穴5に外管6が配置される。削孔と外管6の配置との具体的な工法は任意で、例えば公知のボーリングマシンを用いて、地盤2に挿入した外管6の内部の土壌を排出しつつ、さらに当該外管6を地盤2に挿入するケーシング掘りを行う。外管6の挿入については、例えば竪穴3の内部に搬入可能な程度の長さの複数の外管6を順次接続しながら横穴5の内部に挿入する。この様に配置された外管6により、後述する内管や注入管等を外管6の内部に配置するまで、横穴5の崩壊を防ぐことができる。なお、図3(b)に示すように、一つの竪穴3から他の竪穴3まで横穴5を削孔すると共に外管6を配置してもよい。
【0027】
(井戸の設置方法−内管配置工程及び注入管配置工程)
内管配置工程は、外管6の内部に内管を配置する工程である。また、注入管配置工程は、注入管を配置する工程である。これらの内管配置工程及び注入管配置工程は、上記の外管配置工程の後に実施される。なお、注入管配置工程は、内管配置工程の前後何れか又は同時に実施することができるが、本実施の形態では内管配置工程と同時に実施する場合を例として説明する。
【0028】
図4は外管6、当該外管6の内部に配置された内管7、及び注入管が配置された横穴5の断面図、図5は外管6、内管7、及び注入管の管軸方向と直交する断面を示す図である。図4に示すように、内管7は、内管孔7a、及び膨張部材7bを備えている。内管孔7aは、内管7の管壁を貫通するように形成された孔部であり、例えば内管7の軸方向にそって所定間隔にて形成されている。井戸4が設置された後、この内管孔7aを介して地下水の揚水や薬液の注入等を行うことができる。この内管孔7aは、例えば複数の小径孔を並設することで形成されるが、その他の任意の形状とすることができ、例えば図4に示すように内管孔7aをメッシュ状に形成することもできる。なお、内管孔7aを例えば礫石、豆砂利、珪砂、砂等によって形成されたフィルター層で覆うことにより、水や薬液等の液体のみを透過させるようにしてもよい。膨張部材7bは、水潤により膨張するものであって、内管7の外面における内管孔7aの周囲に配設される。例えば、膨張部材7bは、図4に示すように内管孔7aを挟んで当該内管7の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々に配設される。また図5に示すように、膨張部材7bは内管7の周方向に沿った環状に配置される。これにより、外管引き抜き工程において地盤2から外管6を引き抜いた後における当該地盤2と当該内管7との相互間の空間部に、膨張部材7bを介在させることができる。なお、膨張部材7bの具体的な構成は任意で、例えばナイスシール(アクリル酸塩・ビニルアルコール共重合体、スチレン・ブタジエン・ゴム)、アクアケルシーラー(合成ゴムと特殊高吸水性樹脂とで構成された加硫ゴム系水膨張性ゴム止水材)、MWシーラー(非加硫ブチルゴム系水膨張シーラー)等を用いることができる。このように構成された内管7を、図4に示すように外管6の内部に配置する。
【0029】
注入管8は、地盤2と内管7との相互間の空間部に水や止水材等を注入するためのものであり、外管6と内管7及び膨張部材7bとの相互間の空間において内管7に沿って配置される。例えば、図4に示すように注入間は内管7及び膨張部材7bと同時に外管6の内部に配置される。この注入管8の本数は任意で、例えば図4及び図5に示すように2本配置される。
【0030】
(井戸の設置方法−膨張工程)
膨張工程は、膨張部材7bを水潤により膨張させる工程であり、上記の内管配置工程の後に実施される。なお、この膨張工程は、後述の外管引き抜き工程の前後いずれか又は同時に実施することができるが、本実施の形態では外管引き抜き工程の前に実施する場合を例として説明する。
【0031】
図6は膨張工程を実施中の横穴5の断面図である。図6に示すように、膨張工程において注入管8から内管7と外管6との相互間に水を注入することにより、当該注入した水を膨張部材7bに含浸させ、当該膨張部材7bを膨張させることができる。膨張部材7bは、注入管8の先端から注入された水の流れに沿って、注入管8の先端側から竪穴3側に向かって順次膨張する。
【0032】
(井戸の設置方法−外管引き抜き工程)
外管引き抜き工程は、地盤2から外管6を引き抜く工程であり、内管配置工程の後に実施される。図7は外管引き抜き工程により外管6を引き抜いた後の横穴5の断面図であり、図8は内管7、及び注入管8の管軸方向と直交する断面を示す図である。外管6の引き抜き方法は任意で、公知の引き抜き工法を用いることができる。外管6を引き抜くことにより、図7及び図8に示すように、地盤2と内管7との相互間の空間部に膨張部材7bを介在させることができる。
【0033】
(井戸の設置方法−止水材注入工程)
止水材注入工程は、注入管8を介して止水材を注入する工程であり、外管引き抜き工程及び膨張工程の後に実施される。図9から図11は、止水材注入工程における横穴5の断面図である。図9に示すように、膨張部材7bの相互間の空間部であって内管孔7aが位置していない止水対象空間部9に、注入管8を介して止水材10を注入する。この際、図9に示すように、内管7の管軸方向に沿って複数設けられた止水対象空間部9の中で、まず注入管8の挿入方向の最先側(先端側)に位置する止水対象空間部9から止水材10の注入を開始する。その後、図10に示すように注入管8の挿入方向の最後側に向かって注入管8を移動させ、注入管8の挿入端部が各止水対象空間部9に位置した場合に止水材10を注入する。これを注入管8の挿入端部が当該注入管8の挿入方向の最後側に位置する止水対象空間部9に至るまで順次繰り返し、図11に示すように全ての止水対象空間部9に止水材10を注入した後、注入管8を横穴5から引き抜く。このように止水対象空間部9に注入された止水材10が固化することにより、当該止水材10によって横穴5の崩壊を防止することができ、地盤沈下を抑制することができる。
【0034】
(井戸の設置方法−パッカー挿入工程)
パッカー挿入工程は、パッカー袋、パッカー管、及び揚注水管を内管7の内部に挿入する工程であり、上記の内管配置工程の後に実施される。なお、このパッカー挿入工程は、外管引き抜き工程及び膨張工程の前後いずれか又は同時に実施することができるが、本実施の形態では外管引き抜き工程及び膨張工程の後に実施する場合を例として説明する。図12はパッカー挿入工程における内管7の内部を示す概略図である。図12に示すように、内管7の内部には複数のパッカー袋11、パッカー管12、及び揚注水管13が挿入される。パッカー袋11は、気体又は液体を注入することで膨張する袋体であり、例えば膨縮自在なゴム等の弾性素材を用いて形成される。パッカー挿入工程においては、このパッカー袋11の内部に液体又は気体が注入されていないため、パッカー袋11は収縮した状態となっている。パッカー管12は、パッカー袋11の内部に液体又は気体を注入又は排出するための配管であり、各パッカー袋11に接続されている。揚注水管13は、内管7の内部において揚水又は注水を行うための管であり、当該揚注水管13の管壁を貫通するように形成された揚注水孔13aを有している。揚注水管13の管軸方向に沿って揚注水孔13aを挟む位置に、一対のパッカー袋11が配設される。これらのパッカー袋11、パッカー管12、及び揚注水管13は、内管7の内部において当該内管7の管軸方向に沿った任意の位置に挿入される。
【0035】
(井戸の設置方法−パッカー膨張工程)
パッカー膨張工程は、パッカー袋11を膨張させる工程であり、外管引き抜き工程、膨張工程、及びパッカー挿入工程の後に実施される。図13はパッカー挿入工程における内管7の内部を示す概略図である。このパッカー膨張工程では、まず、地盤2における所望の揚注水対象位置に対応する内管7の内管孔7a(図13中のA)に対応する位置に、パッカー袋11の相互間に形成される揚注水空間部と揚注水孔13aとが配置されるように、パッカー袋11及び揚注水管13を移動させる。続いて、パッカー管12から気体又は液体を内管孔7aの両側のパッカー袋11に注入し、各パッカー袋11を膨張させる。これにより、揚注水孔13aの周囲における揚注水管13と内管7との相互間の空間部がパッカー袋11によって塞がれる。従って、地盤2における所望の揚注水対象位置において、内管孔7a及び揚注水孔13aから揚注水管13を介して揚注水することが可能となる。あるいは、揚注水管13から揚注水孔13a及び内管孔7aを介して薬液を地盤2における所望の位置に注入することも可能となる。
【0036】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、内管7の外面における内管孔7aの周囲に膨張部材7bを配設し、外管6の内部に内管7を挿入した後に当該膨張部材7bを水潤により膨張させるので、横穴5における内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を膨張部材7bにより防止できると共に、膨張部材7bにより横穴5の壁面を保持することで崩壊を防止することができ、地盤2の沈下を防止することができる。従って、既存構造物1と干渉することなく当該既存構造物1の地下に井戸4を設置し、積極的に地下水等の試料採取を行うことができる。
【0037】
また、膨張部材7bを、内管孔7aを挟んで内管7の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、内管7の周方向に沿った環状に配置したので、内管孔7aを膨張部材7bによって確実に囲繞することができ、内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を確実に防止できる。
【0038】
また、止水対象空間部9に注入管8を介して止水材10を注入するので、内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を更に確実に防止できる。また、内管孔7a及び膨張部材7b以外の位置における横穴5の内部空間(止水対象空間部9)が止水材10で充填されるので、横穴5の崩壊を確実に防止することができ、地盤2の沈下を防止することができる。
【0039】
特に、注入管8の挿入方向の最先側に位置する止水対象空間部9から注入管8の挿入方向の最後側に位置する止水対象空間部9に至るまで順次に止水材10を注入するので、複数の止水対象空間部9を順次止水することができる。
【0040】
また、上述の効果に加えて、複数のパッカー袋11、パッカー管12、及び揚注水管13を内管7の内部に挿入し、地盤2における揚注水対象位置に対応する内管7の内管孔7aに対応する位置に揚注水空間部と揚注水孔13aとが配置されるように複数のパッカー袋11及び揚注水管13を移動させ、当該複数のパッカー袋11を膨張させて、揚注水孔13aの周囲における揚注水管13と内管7との相互間の空間部を塞ぐことにより、揚注水管13を介して地盤2から揚注水することを可能とするので、所望の内管孔7aを選択して揚水あるいは薬液の注入を行うことができる。
【0041】
また、地盤2に竪穴3を配置し、当該竪穴3から外管6を配置するので、既存構造物1の地下に略水平方向の井戸4を設置することができる。
【0042】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0043】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0044】
(竪穴について)
上述の実施の形態では、地盤2に竪穴3を配置した後、当該竪穴3から略水平方向に外管6を配置すると説明したが、竪穴配置工程を省略し、地表から斜め方向に外管6を直接地盤2に挿入してもよい。この場合、井戸4は斜め井戸として設置されることとなる。これにより、竪穴3を配置することなく、既存構造物1の地下に当該既存構造物1と干渉することなく井戸4を設置することができる。
【0045】
(各工程の実施順序について)
上述の実施の形態では、「竪穴配置工程」、「外管配置工程」、「内管配置工程」、「注入管配置工程」、「膨張工程」、「外管引き抜き工程」、「止水材注入工程」、「パッカー挿入工程」、及び「パッカー膨張工程」の順に各工程が実施される場合を例として説明したが、これらの各工程の相互の順序を入れ替えて実施するようにしてもよい。
【0046】
例えば、上述の実施の形態では外管引き抜き工程の前に膨張工程を実施する場合を例として説明したが、外管引き抜き工程の後に膨張行程を実施してもよい。この場合、膨張部材7bと外管6との相互間の摩擦抵抗を低減することができ、外管6の引き抜き作業を一層容易に行うことができる。
【0047】
また、上述の実施の形態では、外管引き抜き工程を全て完了した後に止水材注入工程を実施する場合を例として説明したが、外管引き抜き工程の完了前に止水材注入工程を実施してもよい。例えば、図9に示すように、内管7の管軸方向に沿って複数設けられた止水対象空間部9の1つを1ブロックとした場合に、注入管8の挿入方向の最先側(先端側)に位置する止水対象空間部9の1ブロックに相当する範囲にある外管6をまず引き抜き、当該止水対象空間部9を挟んで配置されている2つの膨張部材7bを水潤により膨張させる。その後に、当該止水対象空間部9に対し止水材10を注入する。止水材10の注入が完了したら、注入管8の先端が図9における左から2番目の止水対象空間部9に位置するまで当該注入管8を引き抜く。さらに、当該止水対象空間部9の1ブロックに相当する範囲にある外管6を引き抜き、当該止水対象空間部9を挟んで配置されている2つの膨張部材7bを水潤により膨張させ、当該止水対象空間部9に対し止水材10を注入する。これを注入管8の先端が当該注入管8の挿入方向の最後側に位置する止水対象空間部9に至るまで行う。このように、止水対象空間部9のブロック毎に外管引き抜き工程、膨張工程、及び止水材注入工程を順次繰り返し実施してもよい。このように、地盤の地質に応じて各工程を並行して段階的に実施することで、さらに確実に地盤2の崩壊を防止することができ、地盤2の沈下を防止することができる。
【0048】
(外管配置工程について)
上述の実施の形態では、図3(a)に示すように竪穴3の側壁に設けられた開口部3aから略水平方向に横穴5を削孔し、当該横穴5に外管6を配置すると説明したが、竪穴3の開口部3aから非水平方向(例えば、斜め方向や曲がり形状等)に横穴5を削孔し、当該横穴5に外管6を配置してもよい。
【0049】
(膨張部材について)
上述の実施の形態では、膨張部材7bは内管孔7aを挟んで当該内管7の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、内管7の周方向に沿った環状に配置されると説明したが、これとは異なる配置としてもよい。例えば、図14に示すように、内管7の外面において各内管孔7aの周囲を取り囲むように膨張部材7bを配置してもよい。このように配置した場合であっても、横穴5における内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を膨張部材7bにより防止できる。
【0050】
(止水材注入工程について)
上述の実施の形態では、止水対象空間部9に止水材10を注入する止水材注入工程を実施すると説明したが、当該止水材注入工程を省略してもよい。この場合、横穴5における内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を膨張部材7bのみによって防止すると共に、膨張部材7bにより横穴5の壁面を保持することで崩壊を防止する。
【0051】
(パッカー挿入工程及びパッカー膨張工程について)
上述の実施の形態では、パッカー挿入工程及びパッカー膨張工程を実施すると説明したが、これらのパッカー挿入工程及びパッカー膨張工程を省略してもよい。この場合、全ての内管孔7aから内管7を介して一斉に地盤2から揚水あるいは薬液の注入を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 既存構造物
2 地盤
3 竪穴
3a 開口部
4 井戸
5 横穴
6 外管
7 内管
7a 内管孔
7b 膨張部材
8 注入管
9 止水対象空間部
10 止水材
11 パッカー袋
12 パッカー管
13 揚注水管
13a 揚注水孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸の設置方法、及び井戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存構造物下における地質調査や揚水処理、あるいは土壌浄化等のため、既存構造物下に井戸を設置する場合がある。この場合、既存構造物と干渉することなく井戸を設置するため、例えば斜めボーリングや、既存構造物の周辺に設置された竪穴からの水平ボーリング等の工法が提案されている。
【0003】
例えば、地下坑道の側壁に削孔されたボーリング孔内に、複数の膨縮自在のパッカーを設置し、当該パッカーを膨張させることで当該パッカーを境壁としてボーリング孔内を複数の区間に区切り、各区間の間隙水圧等を測定する多点パッカー式孔内透水試験方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2804995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の方法では、削孔したボーリング孔から土壌、地下水、あるいはガス等の試料を採取した結果、ボーリング孔壁が土圧に耐え切れずに崩壊する可能性があり、ボーリング孔壁の崩壊に伴って地盤沈下が生じる可能性があった。このため、ボーリング孔から積極的に地下水等の試料採取を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地盤沈下を抑制しつつ揚注水を行うことができる、井戸の設置方法、及び井戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の井戸の設置方法は、地盤の内部に外管を配置する工程であって、当該外管の内部の土壌を排出しながら当該外管を配置する外管配置工程と、前記外管配置工程の後に、前記外管の内部に内管を配置する工程であって、当該内管の管壁を貫通するように形成された内管孔と、水潤により膨張する膨張部材であって、前記地盤から前記外管を引き抜いた後における当該地盤と当該内管との相互間の空間部に介在するように、当該内管の外面における前記内管孔の周囲に配設された膨張部材と、を備える内管を、前記外管の内部に挿入する内管配置工程と、前記内管配置工程の後に、前記地盤から前記外管を引き抜く外管引き抜き工程と、前記内管配置工程の後であって、前記外管引き抜き工程の前後いずれか又は同時に、前記膨張部材を水潤により膨張させる膨張工程と、を含む。
【0008】
また、請求項2に記載の井戸の設置方法は、請求項1に記載の井戸の設置方法において、前記膨張部材を、前記内管孔を挟んで前記内管の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、前記内管の周方向に沿った環状に配置する。
【0009】
また、請求項3に記載の井戸の設置方法は、請求項1又は2に記載の井戸の設置方法において、前記外管配置工程の後であって、前記内管配置工程の前後いずれか又は同時に、止水材を注入する注入管を、前記外管と前記内管及び前記膨張部材との相互間に配置する注入管配置工程と、前記外管引き抜き工程及び前記膨張工程の後に、前記膨張部材の相互間の空間部であって前記内管孔が位置していない止水対象空間部に、前記注入管を介して止水材を注入する止水材注入工程と、を含む。
【0010】
また、請求項4に記載の井戸の設置方法は、請求項3に記載の井戸の設置方法において、前記止水材注入工程において、前記内管の管軸方向に沿って複数設けられた前記止水対象空間部の中で、前記注入管の挿入方向の最先側に位置する前記止水対象空間部から前記注入管の挿入方向の最後側に位置する前記止水対象空間部に至るまで順次に、前記注入管の挿入端部が各止水対象空間部に位置するように当該注入管を移動させ、前記止水材を注入する。
【0011】
また、請求項5に記載の井戸の設置方法は、請求項1から4のいずれか一項に記載の井戸の設置方法において、前記内管配置工程の後であって、前記外管引き抜き工程及び前記膨張工程の前後いずれか又は同時に、気体又は液体を注入されることで膨張する複数のパッカー袋と、前記複数のパッカー袋に前記気体又は前記液体を注入するパッカー管と、前記内管の内部において揚水または注水を行う揚注水管であって、当該揚注水管の管壁を貫通するように形成された揚注水孔を有する揚注水管とを、前記内管の内部に挿入するパッカー挿入工程と、前記外管引き抜き工程、前記膨張工程、及び前記パッカー挿入工程の後に、前記地盤における揚注水対象位置に対応する前記内管の内管孔に対応する位置に、前記複数のパッカー袋の相互間に形成された揚注水空間部と前記揚注水孔とが配置されるように前記複数のパッカー袋及び前記揚注水管を移動させた後、前記パッカー管から前記気体又は前記液体を前記複数のパッカー袋に注入することにより当該複数のパッカー袋を膨張させて、前記揚注水孔の周囲における前記揚注水管と前記内管との相互間の空間部を塞ぐことにより、前記揚注水管を介して前記地盤から揚水または注水することを可能とするパッカー膨張工程と、を含む。
【0012】
また、請求項6に記載の井戸の設置方法は、請求項1から5のいずれか一項に記載の井戸の設置方法において、前記外管配置工程の前に、前記地盤に竪穴を配置する竪穴配置工程を含み、前記外管配置工程において、前記竪穴から前記外管を配置する。
【0013】
また、請求項7に記載の井戸は、請求項1から6のいずれか一項に記載の井戸の設置方法によって設置される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る井戸の設置方法、及び請求項7に係る井戸によれば、内管の外面における内管孔の周囲に膨張部材を配設し、外管の内部に内管を挿入した後に当該膨張部材を水潤により膨張させるので、横穴における内管孔以外の位置からの地下水の漏出を膨張部材により防止できると共に、膨張部材により横穴の壁面を保持することで崩壊を防止することができ、地盤の沈下を防止することができる。従って、既存構造物と干渉することなく当該既存構造物下に井戸を設置し、積極的に地下水等の試料採取を行うことができる。
【0015】
また、請求項2に係る井戸の設置方法によれば、膨張部材を、内管孔を挟んで内管の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、内管の周方向に沿った環状に配置したので、内管孔を膨張部材によって確実に囲繞することができ、内管孔以外の位置からの地下水の漏出を確実に防止できる。
【0016】
また、請求項3に係る井戸の設置方法によれば、止水対象空間部に注入管を介して止水材を注入するので、内管孔以外の位置からの地下水の漏出を更に確実に防止できる。また、内管孔及び膨張部材以外の位置における横穴の内部空間(止水対象空間部)が止水材で充填されるので、横穴の崩壊を確実に防止することができ、地盤の沈下を防止することができる。
【0017】
また、請求項4に係る井戸の設置方法によれば、注入管の挿入方向の最先側に位置する止水対象空間部から注入管の挿入方向の最後側に位置する止水対象空間部に至るまで順次に止水材を注入するので、複数の止水対象空間部を順次止水することができる。
【0018】
また、請求項5に係る井戸の設置方法によれば、複数のパッカー袋、パッカー管、及び揚注水管を内管の内部に挿入し、地盤における揚注水対象位置に対応する内管の内管孔に対応する位置に揚注水空間部と揚注水孔とが配置されるように複数のパッカー袋及び揚注水管を移動させ、当該複数のパッカー袋を膨張させて、揚注水孔の周囲における揚注水管と内管との相互間の空間部を塞ぐことにより、揚注水管を介して地盤から揚注水することを可能とするので、所望の内管孔を選択して揚水あるいは薬液の注入を行うことができる。
【0019】
また、請求項6に係る井戸の設置方法によれば、地盤に竪穴を配置し、当該竪穴から外管を配置するので、既存構造物の下方に略水平方向の井戸を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】井戸の設置方法を用いて設置した井戸の概要図である。
【図2】竪穴配置工程により配置された竪穴を示す図であり、図2(a)は掘削された竪穴を示す図、図2(b)は竪穴に開口部を設けた状態を示す図である。
【図3】外管配置工程において竪穴から略水平方向に削孔された横穴を示す図であり、図3(a)は横穴が削孔された状態を示す図、図3(b)は削孔された横穴に外管が配置された状態を示す図である。
【図4】外管、当該外管の内部に配置された内管、及び注入管が配置された横穴の断面図である。
【図5】外管、内管、及び注入管の管軸方向と直交する断面を示す図である。
【図6】膨張工程を実施中の横穴の断面図である。
【図7】外管引き抜き工程により外管を引き抜いた後の横穴の断面図である。
【図8】内管、及び注入管の管軸方向と直交する断面を示す図である。
【図9】止水材注入工程における横穴の断面図である。
【図10】止水材注入工程における横穴の断面図である。
【図11】止水材注入工程における横穴の断面図である。
【図12】パッカー挿入工程における内管の内部を示す概略図である。
【図13】パッカー挿入工程における内管の内部を示す概略図である。
【図14】内管における膨張部材の配置の変形例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る井戸の設置方法、及び井戸の実施の形態を詳細に説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(井戸の概要)
まず、本実施の形態に係る井戸の設置方法を用いて設置される井戸の概要について説明する。図1は井戸の設置方法を用いて設置した井戸の概要図である。本実施の形態では、図1に示すように、既存構造物1の地下の所定深度において複数の揚注水対象位置が設定されている場合を例として説明する。本実施の形態によれば、既存構造物1の近傍の地盤2に竪穴3が配置され、揚注水対象位置を貫通するように当該竪穴3から略水平方向に井戸4が設置される。これにより、既存構造物1と干渉することなく、当該既存構造物1の地下に井戸4を設置することができる。なお、図1では竪穴3に1本の井戸4のみを設置された状態を例示しているが、当該竪穴3に複数本の井戸4を設置してもよい。この場合、共通の竪穴3から複数本の井戸4を同一又は異なる深度に相互に並行に設置してもよく、あるいは共通の竪穴3から放射状に井戸4を設置してもよい。なお、井戸4は揚水を行うための揚水井戸、あるいは注水や薬液の注入等を行うための注水井戸として使用可能である。
【0023】
(井戸の設置方法)
次に、井戸4の設置方法について説明する。井戸4の設置方法においては、「竪穴配置工程」、「外管配置工程」、「内管配置工程」、「注入管配置工程」、「膨張工程」、「外管引き抜き工程」、「止水材注入工程」、「パッカー挿入工程」、及び「パッカー膨張工程」が順次実施される。以下、これらの各工程について説明する。
【0024】
(井戸の設置方法−竪穴配置工程)
竪穴配置工程は、地盤2に竪穴3を配置する工程である。図2は竪穴配置工程により配置された竪穴3を示す図であり、図2(a)は掘削された竪穴3を示す図、図2(b)は竪穴3に開口部3aを設けた状態を示す図である。この竪穴配置工程では、公知の地下掘削工法を用いて、井戸4の設置深度以上の深度まで竪穴3を掘削する。なお、竪穴3の開口径は任意であり、例えば以降の各工程で使用する建設機械を搬入可能な程度の開口径を有する竪穴3を配置する。
【0025】
また、掘削した竪穴3の側壁の崩落防止のため、例えば側壁にはコンクリートが打設され、さらに井戸4を設置する部分には開口部3aが設けられる(図2(b))。この開口部3aからの地下水の漏出を防ぐため、開口部3aには薬液注入工法等の止水処理が施される。
【0026】
(井戸の設置方法−外管配置工程)
外管配置工程は、地盤2の内部に外管を配置する工程であり、竪穴配置工程の後に実施される。図3は外管配置工程において竪穴3から略水平方向に削孔された横穴を示す図であり、図3(a)は横穴が削孔された状態を示す図、図3(b)は削孔された横穴に外管が配置された状態を示す図である。図3(a)に示すように、竪穴3の側壁に設けられた開口部3aから略水平方向に横穴5が削孔されると共に、当該削孔された横穴5に外管6が配置される。削孔と外管6の配置との具体的な工法は任意で、例えば公知のボーリングマシンを用いて、地盤2に挿入した外管6の内部の土壌を排出しつつ、さらに当該外管6を地盤2に挿入するケーシング掘りを行う。外管6の挿入については、例えば竪穴3の内部に搬入可能な程度の長さの複数の外管6を順次接続しながら横穴5の内部に挿入する。この様に配置された外管6により、後述する内管や注入管等を外管6の内部に配置するまで、横穴5の崩壊を防ぐことができる。なお、図3(b)に示すように、一つの竪穴3から他の竪穴3まで横穴5を削孔すると共に外管6を配置してもよい。
【0027】
(井戸の設置方法−内管配置工程及び注入管配置工程)
内管配置工程は、外管6の内部に内管を配置する工程である。また、注入管配置工程は、注入管を配置する工程である。これらの内管配置工程及び注入管配置工程は、上記の外管配置工程の後に実施される。なお、注入管配置工程は、内管配置工程の前後何れか又は同時に実施することができるが、本実施の形態では内管配置工程と同時に実施する場合を例として説明する。
【0028】
図4は外管6、当該外管6の内部に配置された内管7、及び注入管が配置された横穴5の断面図、図5は外管6、内管7、及び注入管の管軸方向と直交する断面を示す図である。図4に示すように、内管7は、内管孔7a、及び膨張部材7bを備えている。内管孔7aは、内管7の管壁を貫通するように形成された孔部であり、例えば内管7の軸方向にそって所定間隔にて形成されている。井戸4が設置された後、この内管孔7aを介して地下水の揚水や薬液の注入等を行うことができる。この内管孔7aは、例えば複数の小径孔を並設することで形成されるが、その他の任意の形状とすることができ、例えば図4に示すように内管孔7aをメッシュ状に形成することもできる。なお、内管孔7aを例えば礫石、豆砂利、珪砂、砂等によって形成されたフィルター層で覆うことにより、水や薬液等の液体のみを透過させるようにしてもよい。膨張部材7bは、水潤により膨張するものであって、内管7の外面における内管孔7aの周囲に配設される。例えば、膨張部材7bは、図4に示すように内管孔7aを挟んで当該内管7の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々に配設される。また図5に示すように、膨張部材7bは内管7の周方向に沿った環状に配置される。これにより、外管引き抜き工程において地盤2から外管6を引き抜いた後における当該地盤2と当該内管7との相互間の空間部に、膨張部材7bを介在させることができる。なお、膨張部材7bの具体的な構成は任意で、例えばナイスシール(アクリル酸塩・ビニルアルコール共重合体、スチレン・ブタジエン・ゴム)、アクアケルシーラー(合成ゴムと特殊高吸水性樹脂とで構成された加硫ゴム系水膨張性ゴム止水材)、MWシーラー(非加硫ブチルゴム系水膨張シーラー)等を用いることができる。このように構成された内管7を、図4に示すように外管6の内部に配置する。
【0029】
注入管8は、地盤2と内管7との相互間の空間部に水や止水材等を注入するためのものであり、外管6と内管7及び膨張部材7bとの相互間の空間において内管7に沿って配置される。例えば、図4に示すように注入間は内管7及び膨張部材7bと同時に外管6の内部に配置される。この注入管8の本数は任意で、例えば図4及び図5に示すように2本配置される。
【0030】
(井戸の設置方法−膨張工程)
膨張工程は、膨張部材7bを水潤により膨張させる工程であり、上記の内管配置工程の後に実施される。なお、この膨張工程は、後述の外管引き抜き工程の前後いずれか又は同時に実施することができるが、本実施の形態では外管引き抜き工程の前に実施する場合を例として説明する。
【0031】
図6は膨張工程を実施中の横穴5の断面図である。図6に示すように、膨張工程において注入管8から内管7と外管6との相互間に水を注入することにより、当該注入した水を膨張部材7bに含浸させ、当該膨張部材7bを膨張させることができる。膨張部材7bは、注入管8の先端から注入された水の流れに沿って、注入管8の先端側から竪穴3側に向かって順次膨張する。
【0032】
(井戸の設置方法−外管引き抜き工程)
外管引き抜き工程は、地盤2から外管6を引き抜く工程であり、内管配置工程の後に実施される。図7は外管引き抜き工程により外管6を引き抜いた後の横穴5の断面図であり、図8は内管7、及び注入管8の管軸方向と直交する断面を示す図である。外管6の引き抜き方法は任意で、公知の引き抜き工法を用いることができる。外管6を引き抜くことにより、図7及び図8に示すように、地盤2と内管7との相互間の空間部に膨張部材7bを介在させることができる。
【0033】
(井戸の設置方法−止水材注入工程)
止水材注入工程は、注入管8を介して止水材を注入する工程であり、外管引き抜き工程及び膨張工程の後に実施される。図9から図11は、止水材注入工程における横穴5の断面図である。図9に示すように、膨張部材7bの相互間の空間部であって内管孔7aが位置していない止水対象空間部9に、注入管8を介して止水材10を注入する。この際、図9に示すように、内管7の管軸方向に沿って複数設けられた止水対象空間部9の中で、まず注入管8の挿入方向の最先側(先端側)に位置する止水対象空間部9から止水材10の注入を開始する。その後、図10に示すように注入管8の挿入方向の最後側に向かって注入管8を移動させ、注入管8の挿入端部が各止水対象空間部9に位置した場合に止水材10を注入する。これを注入管8の挿入端部が当該注入管8の挿入方向の最後側に位置する止水対象空間部9に至るまで順次繰り返し、図11に示すように全ての止水対象空間部9に止水材10を注入した後、注入管8を横穴5から引き抜く。このように止水対象空間部9に注入された止水材10が固化することにより、当該止水材10によって横穴5の崩壊を防止することができ、地盤沈下を抑制することができる。
【0034】
(井戸の設置方法−パッカー挿入工程)
パッカー挿入工程は、パッカー袋、パッカー管、及び揚注水管を内管7の内部に挿入する工程であり、上記の内管配置工程の後に実施される。なお、このパッカー挿入工程は、外管引き抜き工程及び膨張工程の前後いずれか又は同時に実施することができるが、本実施の形態では外管引き抜き工程及び膨張工程の後に実施する場合を例として説明する。図12はパッカー挿入工程における内管7の内部を示す概略図である。図12に示すように、内管7の内部には複数のパッカー袋11、パッカー管12、及び揚注水管13が挿入される。パッカー袋11は、気体又は液体を注入することで膨張する袋体であり、例えば膨縮自在なゴム等の弾性素材を用いて形成される。パッカー挿入工程においては、このパッカー袋11の内部に液体又は気体が注入されていないため、パッカー袋11は収縮した状態となっている。パッカー管12は、パッカー袋11の内部に液体又は気体を注入又は排出するための配管であり、各パッカー袋11に接続されている。揚注水管13は、内管7の内部において揚水又は注水を行うための管であり、当該揚注水管13の管壁を貫通するように形成された揚注水孔13aを有している。揚注水管13の管軸方向に沿って揚注水孔13aを挟む位置に、一対のパッカー袋11が配設される。これらのパッカー袋11、パッカー管12、及び揚注水管13は、内管7の内部において当該内管7の管軸方向に沿った任意の位置に挿入される。
【0035】
(井戸の設置方法−パッカー膨張工程)
パッカー膨張工程は、パッカー袋11を膨張させる工程であり、外管引き抜き工程、膨張工程、及びパッカー挿入工程の後に実施される。図13はパッカー挿入工程における内管7の内部を示す概略図である。このパッカー膨張工程では、まず、地盤2における所望の揚注水対象位置に対応する内管7の内管孔7a(図13中のA)に対応する位置に、パッカー袋11の相互間に形成される揚注水空間部と揚注水孔13aとが配置されるように、パッカー袋11及び揚注水管13を移動させる。続いて、パッカー管12から気体又は液体を内管孔7aの両側のパッカー袋11に注入し、各パッカー袋11を膨張させる。これにより、揚注水孔13aの周囲における揚注水管13と内管7との相互間の空間部がパッカー袋11によって塞がれる。従って、地盤2における所望の揚注水対象位置において、内管孔7a及び揚注水孔13aから揚注水管13を介して揚注水することが可能となる。あるいは、揚注水管13から揚注水孔13a及び内管孔7aを介して薬液を地盤2における所望の位置に注入することも可能となる。
【0036】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、内管7の外面における内管孔7aの周囲に膨張部材7bを配設し、外管6の内部に内管7を挿入した後に当該膨張部材7bを水潤により膨張させるので、横穴5における内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を膨張部材7bにより防止できると共に、膨張部材7bにより横穴5の壁面を保持することで崩壊を防止することができ、地盤2の沈下を防止することができる。従って、既存構造物1と干渉することなく当該既存構造物1の地下に井戸4を設置し、積極的に地下水等の試料採取を行うことができる。
【0037】
また、膨張部材7bを、内管孔7aを挟んで内管7の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、内管7の周方向に沿った環状に配置したので、内管孔7aを膨張部材7bによって確実に囲繞することができ、内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を確実に防止できる。
【0038】
また、止水対象空間部9に注入管8を介して止水材10を注入するので、内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を更に確実に防止できる。また、内管孔7a及び膨張部材7b以外の位置における横穴5の内部空間(止水対象空間部9)が止水材10で充填されるので、横穴5の崩壊を確実に防止することができ、地盤2の沈下を防止することができる。
【0039】
特に、注入管8の挿入方向の最先側に位置する止水対象空間部9から注入管8の挿入方向の最後側に位置する止水対象空間部9に至るまで順次に止水材10を注入するので、複数の止水対象空間部9を順次止水することができる。
【0040】
また、上述の効果に加えて、複数のパッカー袋11、パッカー管12、及び揚注水管13を内管7の内部に挿入し、地盤2における揚注水対象位置に対応する内管7の内管孔7aに対応する位置に揚注水空間部と揚注水孔13aとが配置されるように複数のパッカー袋11及び揚注水管13を移動させ、当該複数のパッカー袋11を膨張させて、揚注水孔13aの周囲における揚注水管13と内管7との相互間の空間部を塞ぐことにより、揚注水管13を介して地盤2から揚注水することを可能とするので、所望の内管孔7aを選択して揚水あるいは薬液の注入を行うことができる。
【0041】
また、地盤2に竪穴3を配置し、当該竪穴3から外管6を配置するので、既存構造物1の地下に略水平方向の井戸4を設置することができる。
【0042】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0043】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0044】
(竪穴について)
上述の実施の形態では、地盤2に竪穴3を配置した後、当該竪穴3から略水平方向に外管6を配置すると説明したが、竪穴配置工程を省略し、地表から斜め方向に外管6を直接地盤2に挿入してもよい。この場合、井戸4は斜め井戸として設置されることとなる。これにより、竪穴3を配置することなく、既存構造物1の地下に当該既存構造物1と干渉することなく井戸4を設置することができる。
【0045】
(各工程の実施順序について)
上述の実施の形態では、「竪穴配置工程」、「外管配置工程」、「内管配置工程」、「注入管配置工程」、「膨張工程」、「外管引き抜き工程」、「止水材注入工程」、「パッカー挿入工程」、及び「パッカー膨張工程」の順に各工程が実施される場合を例として説明したが、これらの各工程の相互の順序を入れ替えて実施するようにしてもよい。
【0046】
例えば、上述の実施の形態では外管引き抜き工程の前に膨張工程を実施する場合を例として説明したが、外管引き抜き工程の後に膨張行程を実施してもよい。この場合、膨張部材7bと外管6との相互間の摩擦抵抗を低減することができ、外管6の引き抜き作業を一層容易に行うことができる。
【0047】
また、上述の実施の形態では、外管引き抜き工程を全て完了した後に止水材注入工程を実施する場合を例として説明したが、外管引き抜き工程の完了前に止水材注入工程を実施してもよい。例えば、図9に示すように、内管7の管軸方向に沿って複数設けられた止水対象空間部9の1つを1ブロックとした場合に、注入管8の挿入方向の最先側(先端側)に位置する止水対象空間部9の1ブロックに相当する範囲にある外管6をまず引き抜き、当該止水対象空間部9を挟んで配置されている2つの膨張部材7bを水潤により膨張させる。その後に、当該止水対象空間部9に対し止水材10を注入する。止水材10の注入が完了したら、注入管8の先端が図9における左から2番目の止水対象空間部9に位置するまで当該注入管8を引き抜く。さらに、当該止水対象空間部9の1ブロックに相当する範囲にある外管6を引き抜き、当該止水対象空間部9を挟んで配置されている2つの膨張部材7bを水潤により膨張させ、当該止水対象空間部9に対し止水材10を注入する。これを注入管8の先端が当該注入管8の挿入方向の最後側に位置する止水対象空間部9に至るまで行う。このように、止水対象空間部9のブロック毎に外管引き抜き工程、膨張工程、及び止水材注入工程を順次繰り返し実施してもよい。このように、地盤の地質に応じて各工程を並行して段階的に実施することで、さらに確実に地盤2の崩壊を防止することができ、地盤2の沈下を防止することができる。
【0048】
(外管配置工程について)
上述の実施の形態では、図3(a)に示すように竪穴3の側壁に設けられた開口部3aから略水平方向に横穴5を削孔し、当該横穴5に外管6を配置すると説明したが、竪穴3の開口部3aから非水平方向(例えば、斜め方向や曲がり形状等)に横穴5を削孔し、当該横穴5に外管6を配置してもよい。
【0049】
(膨張部材について)
上述の実施の形態では、膨張部材7bは内管孔7aを挟んで当該内管7の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、内管7の周方向に沿った環状に配置されると説明したが、これとは異なる配置としてもよい。例えば、図14に示すように、内管7の外面において各内管孔7aの周囲を取り囲むように膨張部材7bを配置してもよい。このように配置した場合であっても、横穴5における内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を膨張部材7bにより防止できる。
【0050】
(止水材注入工程について)
上述の実施の形態では、止水対象空間部9に止水材10を注入する止水材注入工程を実施すると説明したが、当該止水材注入工程を省略してもよい。この場合、横穴5における内管孔7a以外の位置からの地下水の漏出を膨張部材7bのみによって防止すると共に、膨張部材7bにより横穴5の壁面を保持することで崩壊を防止する。
【0051】
(パッカー挿入工程及びパッカー膨張工程について)
上述の実施の形態では、パッカー挿入工程及びパッカー膨張工程を実施すると説明したが、これらのパッカー挿入工程及びパッカー膨張工程を省略してもよい。この場合、全ての内管孔7aから内管7を介して一斉に地盤2から揚水あるいは薬液の注入を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 既存構造物
2 地盤
3 竪穴
3a 開口部
4 井戸
5 横穴
6 外管
7 内管
7a 内管孔
7b 膨張部材
8 注入管
9 止水対象空間部
10 止水材
11 パッカー袋
12 パッカー管
13 揚注水管
13a 揚注水孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の内部に外管を配置する工程であって、当該外管の内部の土壌を排出しながら当該外管を配置する外管配置工程と、
前記外管配置工程の後に、前記外管の内部に内管を配置する工程であって、当該内管の管壁を貫通するように形成された内管孔と、水潤により膨張する膨張部材であって、前記地盤から前記外管を引き抜いた後における当該地盤と当該内管との相互間の空間部に介在するように、当該内管の外面における前記内管孔の周囲に配設された膨張部材と、を備える内管を、前記外管の内部に挿入する内管配置工程と、
前記内管配置工程の後に、前記地盤から前記外管を引き抜く外管引き抜き工程と、
前記内管配置工程の後であって、前記外管引き抜き工程の前後いずれか又は同時に、前記膨張部材を水潤により膨張させる膨張工程と、
を含む井戸の設置方法。
【請求項2】
前記膨張部材を、前記内管孔を挟んで前記内管の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、前記内管の周方向に沿った環状に配置する、
請求項1に記載の井戸の設置方法。
【請求項3】
前記外管配置工程の後であって、前記内管配置工程の前後いずれか又は同時に、止水材を注入する注入管を、前記外管と前記内管及び前記膨張部材との相互間に配置する注入管配置工程と、
前記外管引き抜き工程及び前記膨張工程の後に、前記膨張部材の相互間の空間部であって前記内管孔が位置していない止水対象空間部に、前記注入管を介して止水材を注入する止水材注入工程と、
を含む請求項1又は2に記載の井戸の設置方法。
【請求項4】
前記止水材注入工程において、前記内管の管軸方向に沿って複数設けられた前記止水対象空間部の中で、前記注入管の挿入方向の最先側に位置する前記止水対象空間部から前記注入管の挿入方向の最後側に位置する前記止水対象空間部に至るまで順次に、前記注入管の挿入端部が各止水対象空間部に位置するように当該注入管を移動させ、前記止水材を注入する、
請求項3に記載の井戸の設置方法。
【請求項5】
前記内管配置工程の後であって、前記外管引き抜き工程及び前記膨張工程の前後いずれか又は同時に、気体又は液体を注入されることで膨張する複数のパッカー袋と、前記複数のパッカー袋に前記気体又は前記液体を注入するパッカー管と、前記内管の内部において揚水または注水を行う揚注水管であって、当該揚注水管の管壁を貫通するように形成された揚注水孔を有する揚注水管とを、前記内管の内部に挿入するパッカー挿入工程と、
前記外管引き抜き工程、前記膨張工程、及び前記パッカー挿入工程の後に、前記地盤における揚注水対象位置に対応する前記内管の内管孔に対応する位置に、前記複数のパッカー袋の相互間に形成された揚注水空間部と前記揚注水孔とが配置されるように前記複数のパッカー袋及び前記揚注水管を移動させた後、前記パッカー管から前記気体又は前記液体を前記複数のパッカー袋に注入することにより当該複数のパッカー袋を膨張させて、前記揚注水孔の周囲における前記揚注水管と前記内管との相互間の空間部を塞ぐことにより、前記揚注水管を介して前記地盤から揚水または注水することを可能とするパッカー膨張工程と、
を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の井戸の設置方法。
【請求項6】
前記外管配置工程の前に、前記地盤に竪穴を配置する竪穴配置工程を含み、
前記外管配置工程において、前記竪穴から前記外管を配置する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の井戸の設置方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法によって設置された井戸。
【請求項1】
地盤の内部に外管を配置する工程であって、当該外管の内部の土壌を排出しながら当該外管を配置する外管配置工程と、
前記外管配置工程の後に、前記外管の内部に内管を配置する工程であって、当該内管の管壁を貫通するように形成された内管孔と、水潤により膨張する膨張部材であって、前記地盤から前記外管を引き抜いた後における当該地盤と当該内管との相互間の空間部に介在するように、当該内管の外面における前記内管孔の周囲に配設された膨張部材と、を備える内管を、前記外管の内部に挿入する内管配置工程と、
前記内管配置工程の後に、前記地盤から前記外管を引き抜く外管引き抜き工程と、
前記内管配置工程の後であって、前記外管引き抜き工程の前後いずれか又は同時に、前記膨張部材を水潤により膨張させる膨張工程と、
を含む井戸の設置方法。
【請求項2】
前記膨張部材を、前記内管孔を挟んで前記内管の管軸方向に沿って並ぶ2位置の各々において、前記内管の周方向に沿った環状に配置する、
請求項1に記載の井戸の設置方法。
【請求項3】
前記外管配置工程の後であって、前記内管配置工程の前後いずれか又は同時に、止水材を注入する注入管を、前記外管と前記内管及び前記膨張部材との相互間に配置する注入管配置工程と、
前記外管引き抜き工程及び前記膨張工程の後に、前記膨張部材の相互間の空間部であって前記内管孔が位置していない止水対象空間部に、前記注入管を介して止水材を注入する止水材注入工程と、
を含む請求項1又は2に記載の井戸の設置方法。
【請求項4】
前記止水材注入工程において、前記内管の管軸方向に沿って複数設けられた前記止水対象空間部の中で、前記注入管の挿入方向の最先側に位置する前記止水対象空間部から前記注入管の挿入方向の最後側に位置する前記止水対象空間部に至るまで順次に、前記注入管の挿入端部が各止水対象空間部に位置するように当該注入管を移動させ、前記止水材を注入する、
請求項3に記載の井戸の設置方法。
【請求項5】
前記内管配置工程の後であって、前記外管引き抜き工程及び前記膨張工程の前後いずれか又は同時に、気体又は液体を注入されることで膨張する複数のパッカー袋と、前記複数のパッカー袋に前記気体又は前記液体を注入するパッカー管と、前記内管の内部において揚水または注水を行う揚注水管であって、当該揚注水管の管壁を貫通するように形成された揚注水孔を有する揚注水管とを、前記内管の内部に挿入するパッカー挿入工程と、
前記外管引き抜き工程、前記膨張工程、及び前記パッカー挿入工程の後に、前記地盤における揚注水対象位置に対応する前記内管の内管孔に対応する位置に、前記複数のパッカー袋の相互間に形成された揚注水空間部と前記揚注水孔とが配置されるように前記複数のパッカー袋及び前記揚注水管を移動させた後、前記パッカー管から前記気体又は前記液体を前記複数のパッカー袋に注入することにより当該複数のパッカー袋を膨張させて、前記揚注水孔の周囲における前記揚注水管と前記内管との相互間の空間部を塞ぐことにより、前記揚注水管を介して前記地盤から揚水または注水することを可能とするパッカー膨張工程と、
を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の井戸の設置方法。
【請求項6】
前記外管配置工程の前に、前記地盤に竪穴を配置する竪穴配置工程を含み、
前記外管配置工程において、前記竪穴から前記外管を配置する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の井戸の設置方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法によって設置された井戸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−99212(P2011−99212A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252945(P2009−252945)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
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