説明

交差コイル式計器

【課題】 本発明は、ヘアスプリングの固定強度を維持することのできる交差コイル式計器を提供することを目的とする。
【解決手段】 渦巻き状からなる帰零用のヘアスプリング8を備えた交差コイル式計器において、ヘアスプリング8には、ヘアスプリング8の外端部の先端を位置決め固定するための折り曲げ部8aが設けられ、交差コイル式計器のハウジング1側に設けられた端子6には、コイル5が電気的に接続される接続部6bと、ヘアスプリング8の折り曲げ部8aを保持する位置決め部6cと、位置決め部6cの手前側に設けられヘアスプリング8の外端部を固定する加締め部6dと、を備えてなることを特徴とする交差コイル式計器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアスプリングの復元力で指針を帰零する方式からなる交差コイル式計器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の交差コイル式計器にあっては、ヘアスプリングの内端側の固定は、ヘアスプリングの内端を加締めたヒゲ玉と呼ばれる部品を指針軸に圧入することによって行われている。また、内端側が固定されたヘアスプリングの外端側は、そのヘアスプリングの外端側の端部を折り曲げ、折り曲げられた折曲端部が交差コイル式計器の本体となる合成樹脂製のハウジングに設けられた固定部に、例えば熱溶着などの手段によって固定保持されている(特許文献1,特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−167680号公報
【特許文献2】実公平7−33168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のこの種の交差コイル式計器にあっては、指針を文字板上の零目盛位置に復帰するためのヘアスプリングを設けているため、例えば車両などの電源をオフすることによって簡単にヘアスプリングの復元力によって復帰することができるという効果がある。
【0005】
しかしながら、ヘアスプリングの外端部分が固定されるハウジングに設けた溶着固定部箇所は、熱溶着にて固定することから、熱溶着時の熱温度管理が難しく温度管理が不十分であると溶着後の形態にばらつきが生じ、例えばオートバイなど過酷な環境下で使用される場合は振動によって熱溶着箇所がはずれてしまい指度不良を発生させる虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題に着目してなされたものであり、過酷な環境下で使用される場合であっても、ヘアスプリングの外れを予防し、ヘアスプリングの固定強度を維持することのできる交差コイル式計器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述した課題を解決するため、請求項1では、指針が取り付け固定された指針軸と、前記指針軸に固定された可動磁石と、前記可動磁石を回転可能に収納支持する非磁性体からなるハウジングと、前記ハウジングの周側部に設けられた端子取付部と、前記端子取付部に圧入固定された導電性からなる金属製の端子と、前記ハウジングの外周に互いに交差するように巻線され、前記端子に電気的に接続されたコイルと、前記指針軸に内端部が固定され、かつ外端部が前記ハウジング側に固定された渦巻き状からなるヘアスプリングと、を備えた交差コイル式計器において、前記ヘアスプリングには、前記外端部の先端を位置決め固定するための折り曲げ部が設けられ、前記ハウジング側に設けられた前記端子には、前記コイルが電気的に接続される接続部と、前記ヘアスプリングの前記折り曲げ部を保持する位置決め部と、前記位置決め部の手前側に設けられ前記ヘアスプリングの外端部を固定する加締め部と、を備えてなることを特徴とする交差コイル式計器である。
【0008】
このように構成することにより、端子に設けた接続部にコイルが電気的に接続されて固定される。この電気的な接続とともに、端子に設けた位置決め部によってヘアスプリングの折り曲げ部が位置決め保持され、かつ位置決め部の手前側に位置したヘアスプリングの外端部が加締め部により強固に固定保持され、これにより過酷な環境下で使用される場合であってもヘアスプリングの外れを防止することのできる交差コイル式計器を提供することができる。
【0009】
また請求項2では、請求項1に記載の交差コイル式計器において、前記端子は、前記ハウジングに圧入固定される端子固定部と、前記端子固定部の上端部に取り付けられる平板状の接続部とからなり、前記接続部に前記位置決め部と前記加締め部とを設けてなることを特徴とするものである。
【0010】
このように構成することにより、端子固定部の上端側に取り付ける接続部にコイルが半田付けなどの手段によって電気的に引き回し配設することができるとともに、この平板状の金属製の材料からなる接続部から一体に位置決め部と加締め部を形成することができるため、コイルの電気的な引き回しとヘアスプリングの外端部の固定手段を一つの部材にて折り曲げ形成することによって簡単に形成することができ、部品点数の削減と組み付け強度の確保を同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、交差コイル式計器の端子に設けた接続部にコイルが電気的に接続されて固定されるとともに、端子に設けた位置決め部によってヘアスプリングの折り曲げ部が位置決め保持され、かつ位置決め部の手前側に位置したヘアスプリングの外端部が加締め部により強固に固定保持され、過酷な環境下で使用される場合であってもヘアスプリングの外れを防止することのできる交差コイル式計器を提供することができるものであり、これにより所期の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である交差コイル式計器の全体構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図2のヘアスプリングの組み付け前の状態を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の第1の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1から図3は本発明の第1の実施形態を示すもので、例えばオートバイなどに搭載される指示計器(エンジン回転計)を例にして交差コイル式計器を説明する。
【0014】
交差コイル式計器の全体概要としては、上下に分割形成した合成樹脂製のハウジング1内に指針軸2を介して可動磁石3が内蔵され、指針軸2の上端をハウジング1の下方から上方に突出し、この先端に指針4が装着され、またハウジング1の周面にはコイル5が交差してそれぞれ巻線され、このコイル5とハウジング1の脚部1aに立設したピン状の端子6とを電気的に接続するようにしている。
【0015】
またハウジング1は可動磁石3を内蔵するとともに、指針軸2の軸受部材であり、またコイル5を巻線するための枠体でもあり、その他コイル5から外部へ電気的に引き廻し形成する端子6の保持部材でもあるが、これらは外部要因となる磁界、たとえば地磁気などの影響を受けないように金属性磁性材料からなるほぼ円筒状ケース7に収納して外乱要因を遮断するようにしている。
【0016】
また電源を投入することによって図示していない駆動回路によりコイル5に電流が流れ、各コイル5を励磁することによって各々磁界ベクトルが働き、これら各磁界ベクトルの強さに応じて可動磁石3が回転し、指針軸2を介して指針4が所定の角度分として回転駆動される。
【0017】
電源の遮断(オフ信号)により、車両のエンジンは停止する。また電源の遮断に伴い指針4は指針軸2側に設けられた帰零用の渦巻き状からなるヘアスプリング8を介して指針4の位置を図示しない文字板上の零目盛位置に復帰作動するように構成している。
【0018】
またヘアスプリング8による帰零手段に加えて、コイル5とヘアスプリング8との間にヘアスプリング8の振れ止め機能を果たす合成樹脂材料にて成形された円盤状のセパレータ9を配置している。
【0019】
また渦巻き状からなるヘアスプリング8の内端部は指針軸2側となるセパレータ9に設けられた支持部9aに固定され、外端部はハウジング1の脚部1aに設けられた端子6側に固定されている。
【0020】
本実施形態よるヘアスプリング8の固定構造としては、端子6はハウジング1の脚部1aに圧入固定されるピン状の端子固定部6aと、端子固定部6aの上端部に取り付けられる金属製材料からなる平板状の接続部6bとからなり、この接続部6bにはヘアスプリング8の外端部先端側に設けられた折り曲げ部8aを保持するための切り込み溝からなる位置決め部6cと、この位置決め部6cの手前側に設けられヘアスプリング8の外端部を固定する折り返し形成された加締め部6dが設けられている。
【0021】
なお、セパレータ9外形寸法は、渦巻き状からなるヘアスプリング8の外形寸法よりも大きく形成されるとともに、ヘアスプリング8の下端部と少許間隙を介して配置されている。
【0022】
交差コイル式計器は、その組み付け時において、帰零用の渦巻き状からなるヘアスプリング8と、セパレータ9とを指針軸2に固定する場合、先ずセパレータ9に設けられた支持部9aに渦巻き状からなるヘアスプリング8の内端側を固定保持し、この状態にて指針軸2にセパレータ9を圧入することにより、ヘアスプリング8の内端側が指針軸2に固定保持される。
【0023】
またヘアスプリング8の外端側は、端子6の接続部6bに設けられた位置決め部6cによってヘアスプリング8の折り曲げ部8aが位置決め保持され、かつ位置決め部6cの手前側に位置したヘアスプリング8の外端部が折り返された加締め部6dを圧着保持することによってヘアスプリング8が強固に加締め固定される。
【0024】
またヘアスプリング8の取り付けとともに、端子固定部6aの上端側に取り付けられた接続部6bにコイル5が半田付けなどの手段によって接続することによって電気的に引き回し配設される。
【0025】
このように構成された本実施形態における交差コイル式計器は、車両(オートバイ)の電源の投入によって、駆動回路を介して各コイル5を励磁することにより各々磁界ベクトル(作用磁界)が働き、これら各磁界ベクトルの強さに応じて着磁された可動磁石3が回転し、その回転力が指針軸2を介して指針4へと角度運動するものであり、例えばエンジン回転に応じた入力信号に基づいて指針4が図示しない文字板上にて作動指示される。
【0026】
また車両の走行時に発生する振動が交差コイル式計器に加わり、ヘアスプリング8に振動が伝わり共振したり、ヘアスプリング8に縦振れが生じたりした場合、ヘアスプリング8と少許間隙を介してセパレータ9により、ヘアスプリング8が共振した際にヘアスプリング8の縦方向の振れをセパレータ9に接触させることによって抑えることができ、交差コイル式計器の指示に影響を及ぼすことを未然に防ぐことができる。
【0027】
また振動に対して、従来例構造のあっては、ヘアスプリング8の外端部分が固定されるハウジングに設けた溶着固定部箇所は、例えばオートバイなど過酷な環境下で使用される場合は振動によって熱溶着箇所がはずれてしまい指度不良を発生させてしまう虞があったが、本実施形態においては、端子6に設けた位置決め部6cによってヘアスプリング8の折り曲げ部8aが位置決め保持され、かつ位置決め部6cの手前側に位置したヘアスプリング8の外端部が加締め部6dにより強固に固定保持され、これにより過酷な環境下で使用される場合であってもヘアスプリング8の外れを防止することができる。
【0028】
また本実施形態においては、端子固定部6aの上端側に取り付ける接続部6bにコイル5が半田付けなどの手段によって電気的に引き回し配設することができるとともに、この平板状の金属製の材料からなる接続部6bから一体に位置決め部6cと加締め部6dを形成することができるため、コイル5の電気的な引き回しとヘアスプリング8の外端部の固定手段を一つの部材にて折り曲げ形成することによって簡単に形成することができ、部品点数の削減と組み付け強度の確保を同時に行うことができる。
【0029】
なお、本実施形態では、セパレータ9によってヘアスプリング8の縦振れを防ぐように構成していたが、セパレータ9が不要であるような場合にあっては、セパレータ9を削除し、ヒゲ玉などにヘアスプリング8の内端側を固定し、このヒゲ玉を指針軸2に圧入固定するように形成しても良い。
【0030】
また本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。上述した本実施形態では、端子6に設けた接続部6bに位置決め部6cと加締め部6dとを個別に形成していたが、位置決めを兼ねた加締め部として形成することも可能であり、その形状や配置など適宜設定すればよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
また、前述した実施形態において詳述したように、オートバイにおける指示計器を例にして交差コイル式計器を説明したが、車両用に限らず船舶用計器あるいは農業用機械や建設機械などの指示計器などにおいても適用することが可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ハウジング
2 指針軸
3 可動磁石
4 指針
5 コイル
6 端子
6a 端子固定部
6b 接続部
6c 位置決め部
6d 加締め部
7 円筒状ケース
8 ヘアスプリング
8a 折り曲げ部
9 セパレータ
9a 支持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針が取り付け固定された指針軸と、前記指針軸に固定された可動磁石と、前記可動磁石を回転可能に収納支持する非磁性体からなるハウジングと、前記ハウジングの周側部に設けられた端子取付部と、前記端子取付部に圧入固定された導電性からなる金属製の端子と、前記ハウジングの外周に互いに交差するように巻線され、前記端子に電気的に接続されたコイルと、前記指針軸に内端部が固定され、かつ外端部が前記ハウジング側に固定された渦巻き状からなるヘアスプリングと、を備えた交差コイル式計器において、前記ヘアスプリングには、前記外端部の先端を位置決め固定するための折り曲げ部が設けられ、前記ハウジング側に設けられた前記端子には、前記コイルが電気的に接続される接続部と、前記ヘアスプリングの前記折り曲げ部を保持する位置決め部と、前記位置決め部の手前側に設けられ前記ヘアスプリングの外端部を固定する加締め部と、を備えてなることを特徴とする交差コイル式計器。
【請求項2】
前記端子は、前記ハウジングに圧入固定される端子固定部と、前記端子固定部の上端部に取り付けられる平板状の接続部とからなり、前記接続部に前記位置決め部と前記加締め部とを設けてなることを特徴とする請求項1に記載の交差コイル式計器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−68496(P2013−68496A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206772(P2011−206772)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)