説明

交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置及びプログラム

【課題】より現実に即した交通信号機の機能検証や制御効果の評価を容易に行うための道路交通シミュレーション装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理端末1は、接続装置2を介して対象交通信号制御機S1、S2、…Snに接続され、情報処理端末1は、制御部11と、道路ネットワーク情報、交差点情報、交通量情報、交通信号機情報及びセンサー情報を設定、記憶する記憶部12と、記憶部12に記憶された情報と交通信号表示情報に基づいて、交通信号シミュレーション処理を行う道路交通シミュレーション部111と、交通信号シミュレーション処理に基づいて、対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御の評価データである信号制御評価データを算出する評価データ演算部113と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交通渋滞を解消して運転者がより快適に交通できると共に、安全でスムーズな交通整理を行うため、交通シミュレーションで交通信号機の機能検証や制御効果の評価をすることがある。
【0003】
この交通シミュレーションは、ワークステーション(Work Station)等の演算処理を
高速で行うことが可能な情報機器を用いて、検証対象となる信号機の灯火やその信号機を設置する場所の交通状況を再現する。交通状況の再現は、検証を行う交通信号機に係る制御情報、その交通信号機を設置する地域の道路交通状況に関する情報及びその地域における他の交通信号機の設置位置や制御情報等の交通量に影響を与える要因となる様々な情報をワークステーションに予め設定し、その設定された情報を元に多変量解析などの手法を用いて算出して行う。
【0004】
交通信号機の機能検証や制御効果等の評価は、上述した交通シミュレーションでの再現結果に基づいて、その信号機の灯火制御に関する調整による信号待ち車両数の変化などを評価値として算出して行う。例えば、灯火制御などが交通状況の変化に及ぼす影響を算出するため、高精度な交通量の予測を高速で行う交通シミュレーションの例としては、渋滞などで道路容量に対して交通量が過飽和である場合も正確に交通シミュレーションが可能な特許文献1などの技術が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−250594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、検証対象となる信号機の灯火やその信号機を設置する地域における他の信号機の灯火などをシミュレートする必要があるため、交通シミュレーション処理に過大な負荷がかかり、評価のリアルタイム性が維持できなくなる点、各信号機の制御情報を設定する手間が発生する点、実際の信号機器が有する誤差まではシミュレートすることができない点などの問題点があった。
【0007】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、より現実に即した交通信号機の機能検証や制御効果の評価を容易に行うための交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、交通信号機を制御する交通信号制御機の機能検証と制御効果の評価を行う交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置において、前記交通信号シミュレーション装置は、情報処理端末を有し、接続手段を介して交通信号シミュレーション処理を行う対象となる対象交通信号制御機又は交通信号シミュレーション処理を行う対象地域の複数の対象交通信号制御機に接続され、前記情報処理端末は、前記対象交通信号機又は前記対象地域に係る交通状況を示す情報として、道路ネットワーク情報、交差点情報、交通量情報、交通信号機情報及びセンサー情報を設定する交通状況設定手段と、前記交通状況設定手段で設定された前記交通状況を示す情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記交通状況を示す情報と前記接続手段を経由して取得される前記対象交通信号機の現在の灯火表示情報である交通信号表示情報に基づいて、実際の時間の流れに即した交通信号シミュレーション処理を行う交通信号シミュレーション手段と、前記交通信号シミュレーション手段で行った交通信号シミュレーション処理の結果に基づいて前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御の評価データである信号制御評価データを算出する信号制御評価データ算出手段と、を備えることを特徴とする交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置において、前記信号制御の評価データは、前記交通信号シミュレーション処理の結果により得られた車両の通行状態の平均に基づいて、前記対象交通信号機の渋滞長、通過(停止)時間、平均車両速度又は対象地域を車両が通過する際に要する時間、交差点停止回数、平均走行速度により前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御の評価データであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置において、前記接続手段は、前記交通信号シミュレーション処理を行う対象地域の複数の対象交通信号制御機の各々から出力され、複数の前記交通信号機の各々で現在表示すべき交通灯火を指示する信号である複数の灯器表示信号を一つにまとめた交通信号表示情報に変換して前記情報処理端末に出力する灯器表示情報変換手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置において、前記情報処理端末は、前記交通信号シミュレーション処理において前記センサー情報に応じた位置を車両が通過する場合、このセンサー情報に対応する対象交通信号制御機に接続された感知器に当該対象交通信号制御機に接続された前記交通信号機が交通整理を行う道路に車両が進入したものとして感知させる車両感知情報を前記接続手段に出力する車両感知情報生成手段を備え、前記接続手段は、前記情報処理端末の車両感知情報生成手段で生成される車両感知情報を前記対象交通信号制御機に出力することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置において、前記接続手段は、前記車両感知情報生成手段から出力される車両感知情報を入力すべき対象交通信号制御機毎のセンサー情報に変換して該交通信号制御機に出力する感知情報変換手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、交通信号シミュレーション処理を行う対象となる交通信号機を制御する交通信号制御機又は交通信号シミュレーション処理を行う対象地域の複数の対象交通信号機の各々を制御する複数の交通信号制御機と接続手段を介して接続され、前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果の評価を行う交通信号シミュレーション装置を構成するコンピュータに実行させるプログラムであって、前記対象交通信号機又は前記対象地域に係る交通状況を示す情報として、道路ネットワーク情報、交差点情報、交通量情報、交通信号機情報及びセンサー情報を設定する交通状況設定処理と、前記交通状況設定手段で設定された前記交通状況を示す情報を記憶する処理と、前記記憶手段に記憶された前記交通状況を示す情報と前記接続手段を経由して取得される前記対象交通信号機の現在の灯火表示情報である交通信号表示情報に基づいて、実際の時間の流れに即した交通信号シミュレーションを行う処理と、前記交通信号シミュレーション処理を行った結果に基づいて前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御の評価データである信号制御評価データを算出する処理と、前記信号制御評価データを表示部に出力する処理との、前記各処理を前記コンピュータに実行させる交通信号シミュレーション装置のプログラムである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の交通信号シミュレーション装置のプログラムにおいて、前記信号制御評価データを算出する処理は、
前記交通信号シミュレーション処理を行った結果に基づいて車両の通行状態の平均を取得して、前記対象交通信号機の渋滞長、通過(停止)時間、平均車両速度又は対象地域を車両が通過する際に要する時間、交差点停止回数、平均走行速度により前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御評価データを算出する処理であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載のプログラムにおいて、更に、前記交通信号シミュレーション処理において前記センサー情報に応じた位置を車両が通過する場合、このセンサー情報に対応する対象交通信号制御機に接続された感知器に当該対象交通信号制御機に接続された前記交通信号機が交通整理を行う道路に車両が進入したものとして感知させる情報であって、前記接続装置を介して対応する前記対象交通信号制御機に出力される情報である車両感知情報を生成する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜3、6、7に記載の発明によれば、交通信号シミュレーション処理を行う対象となる対象交通信号制御機又は交通信号シミュレーション処理を行う地域の対象となる複数の対象交通信号制御機と接続し、この対象交通信号制御機から接続手段を経由して取得される現在の灯火表示情報である交通信号表示情報と、記憶手段に記憶された交通状況を示す情報とに基づいて、実際の時間の流れに即した交通信号シミュレーション処理を行うことができ、一つの交通信号機に係る交通シミュレーションや対象地域における複数の交通信号機に係る交通シミュレーションを行う場合に、その交通信号機の制御アルゴリズムをシミュレーションする必要がなく、その設定の手間を省くことができるとともに、より現実に即した交通信号機の機能検証や制御効果の評価を行うことができる。
【0017】
請求項4、5、8に記載の発明によれば、交通信号シミュレーション処理の結果に基づいて、センサー情報に応じた位置を車両が通過する場合、このセンサー情報に対応する対象交通信号制御機に接続された感知器に当該対象交通信号制御機に接続された交通信号機が交通整理を行う道路に車両が進入したものとして感知させる車両感知情報を生成して、その車両感知情報を対象交通信号制御機に入力させることができるため、交通信号機を通過すべき車両に基づいて当該交通信号機をフィードバック制御する場合においても、より現実に即した交通信号機の機能検証や制御効果の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明である道路交通シミュレーション装置100の機能的構成を模式的に示したブロック図である。
【図2】情報処理端末1における道路交通シミュレーション処理の動作を例示するフローチャートである。
【図3】道路交通シミュレーションを行う対象地域Mを例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について、図1〜図3を参照して説明するが、この発明は以下の実施の形態に限定しない。また、この発明の実施の形態における発明の用途や用語はこれに限定するものではない。
【0020】
図1は、本発明である道路交通シミュレーション装置100の機能的構成を模式的に示したブロック図であり、図2は、情報処理端末1における道路交通シミュレーション処理の動作を示すフローチャートであり、図3は、道路交通シミュレーションを行う対象地域Mを例示する概念図である。
【0021】
先ず、道路交通シミュレーション装置100の構成について説明する。図1に示すように、道路交通シミュレーション装置100は、ワークステーションなどの多変量解析を高速に行うことが可能な情報処理端末1に実際の交通信号機の灯火制御を行う交通信号制御機S1、S2、…Snが接続装置2を介して電気的に接続する構成である。なお、情報処理端末1に接続する実際の交通信号機の交通信号制御機S1、S2、…Snとは、道路交通シミュレーションの対象である交通信号機や対象地域に属する交通信号機の交通信号制御機のことである。つまり、一つの交通信号機に関する交通シミュレーションを行う場合は、その交通信号機の制御機を接続し、交通シミュレーション対象地域に複数の交通信号機がある場合は、その複数の交通信号機の制御機を接続する。
【0022】
情報処理端末1は、制御部11、記憶部12、表示部13及び操作部14などを有する構成である。
【0023】
制御部11は、特に図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなる。CPUは、RAMの所定領域を作業領域として、ROM又は記憶部12に予め格納された各種制御プログラムや設定情報を当該RAMに読み込んで順次実行し、情報処理端末1を構成する各部の動作を統括的に制御する。制御部11は、記憶部12に格納された道路交通シミュレーションに係る制御プログラム121を読み込んで実行することで道路交通シミュレーション処理(詳細は後述する)を行う道路交通シミュレーション部111、車両感知情報生成部112、評価データ演算部113としての機能を実現する。
【0024】
道路交通シミュレーション部111は、記憶部12に格納された道路交通シミュレーションを行う対象である交通信号機や地域に係る交通状況を示す情報(道路ネットワーク情報122、交差点情報123、交通量情報124、信号機情報125及びセンサー情報126)及び接続装置2を経由して取得されるその道路交通シミュレーションを行う対象に係る交通信号制御機S1、S2、…Snの現在の灯火表示情報である交通信号表示情報Dtに基づいて、実際の時間の流れに即した道路交通シミュレーションを行う機能部である。
【0025】
車両感知情報生成部112は、道路交通シミュレーション部111から出力される道路交通シミュレーションの結果に基づいて、交通信号制御機S1、S2、…Snに入力すべき車両感知情報Dkを生成して接続装置2に出力する機能部である。
【0026】
評価データ演算部113は、道路交通シミュレーション部111から出力される道路交通シミュレーションの結果に基づいて、例えば、対象である交通信号機の渋滞長、通過(停止)時間、平均車両速度や対象地域を車両が通過する際に要する時間、交差点停止回数、平均走行速度など、交通渋滞を解消して運転者がより快適に交通できると共に、安全でスムーズな交通整理を行うために必要な交通信号機の機能検証や制御効果の評価値を出力する機能部である。
【0027】
記憶部12は、磁気的・光学的記憶媒体、半導体等の不揮発性メモリ等から構成されており、制御部11からの指示に応じたデータの読み取り又は書き込みが可能な構成である。記憶部12は、上述した磁気的・光学的記憶媒体又は半導体等を着脱可能に装填する機構を備える構成であってよく、例えば、フラッシュメモリ、MO(Magneto-Optic)ディスク、CD−R/RW、DVD±R/RW、HDD(Hard Disk Drive)等であり、外部から装填されたこれらのメディアからデータの読み出し又は書き込みを行う構成であってもよい。
【0028】
記憶部12には、制御プログラム121、道路ネットワーク情報122、交差点情報123、交通量情報124、信号機情報125及びセンサー情報126等のデータが予め格納されている。なお、これらデータの設定は、操作部14からの入力指示や、上述したようにデータを格納するメディアが着脱可能な場合は他の情報機器での書き込みなどで行う。
【0029】
制御プログラム121は、制御部11が読み込んで順次実行することで、後述する道路交通シミュレーションを行うためのプログラムコードである。道路ネットワーク情報122は、対象である交通信号機や対象地域における道路マップ(交差点同士の接続関係)、その道路の間隔、車線数、交差点間隔など、各交差点を接続する道路ネットワークに関するデータである。交差点情報123は、対象である交通信号機や対象地域における各交差点の車線数、形状(T字路、Y字路、十字路…)などを示すデータである。交通量情報124は、道路ネットワーク情報122の道路ネットワークにおけるいずれかのポイント毎の通過する車両の車種、単位時間当たりの通過台数、移動方向(目的地)などの交通量を示すデータである。信号機情報125は、道路ネットワーク情報122の道路ネットワークにおける交通信号機と接続装置2に接続する交通信号制御機S1、S2、…Snとの対応関係やその交通信号機の表示ステップや右左折表示の有無などを示すデータである。センサー情報126は、上記道路ネットワーク情報122の道路ネットワークにおいて、対象である交通信号機や対象地域に属する交通信号機毎に設置する感知器の設置位置を示すデータである。
【0030】
表示部13は、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、有機又は無機ELD(ElectroLuminescence Display)、プラズマディスプレイ等から構成されており、制御部11による制御の下、当該制御部11から入力される表示データに基づく画像を画面上に表示する。
【0031】
操作部14は、文字入力キー、数字入力キーその他各種機能に対応付けられたキーを備えたキーボード、マウス等を含み、キー操作等により押下されたキーに対応する押下信号を制御部11に出力する。なお、操作部14は、表示部13と一体的にタッチパネルを構成する態様としてもよい。
【0032】
接続装置2は、特に図示しない接続端子や通信ケーブルなどにより、交通信号制御機S1、S2、…Snと情報処理端末1とを灯器表示情報変換部21又は感知情報変換部22を介して電気的に接続する構成である。灯器表示情報変換部21は、交通信号制御機S1、S2…Snの各々から出力され、交通信号灯器で現在表示すべき交通灯火を指示する信号である灯器表示信号Dt1、Dt2、…Dtnを、一つにまとめた交通信号表示情報Dtに変換して道路交通シミュレーション部111に出力する。感知情報変換部22は、車両感知情報生成部112から出力される車両感知情報Dkを入力すべき交通信号制御機S1、S2、…Sn毎のセンサー感知情報Dk1、Dk2、…Dknに変換して当該交通信号制御機S1、S2、…Snに出力する。
【0033】
交通信号制御機S1は、道路交通シミュレーションに係る一つの交通信号機において、当該交通信号機を実際に制御する装置であり、制御部S11、外線灯器接続部S12及び感知器接続部S13を有する構成である。制御部S11は、運転者に示す交通灯火を表示する交通信号灯器を制御する回路部であり、具体的には、特に図示しない計時回路、論理回路、リレー及び信号灯の灯火タイミングや灯火順序などの設定を行う設定部などを有する。外線灯器接続部S12は、交通信号制御機S1が接続すべき交通信号灯器と特に図示しない通信ケーブルを介して接続し、制御部S11からの指示に応じた灯器表示信号Dt1を当該交通信号灯器に出力する回路部である。感知器接続部S13は、交通信号制御機S1に係る交通信号機が交通整理を行う交差点などに進入する車両等を感知する感知器のセンサー感知情報Dk1を、当該感知器接続部S13に接続する特に図示しない通信ケーブルを介して受け付けて、制御部S11に出力する回路部である。
【0034】
交通信号制御機S1は、制御部S11の制御に応じて予め設定されたタイミングで外線灯器接続部S12に接続する交通信号灯器の表示を制御する。また、交通信号制御機S1は、感知器接続部S13から入力される感知器のセンサー感知情報Dk1に応じて制御部S11の制御タイミングを調整する。つまり、交通信号制御機S1は、当該交通信号制御機S1に係る交通信号機が交通整理を行う交差点に進入する車両に応じて交通信号灯器の表示タイミングを自律調整することが可能な構成である。なお、交通信号制御機S2、…Snについては、交通信号制御機S1と同様な制御部S21…Sn1、外線灯器接続部S22…Sn2、感知器接続部S23…Sn3を有する構成であるため、説明を省略する。
【0035】
次に、道路交通シミュレーション装置100における制御部11が記憶部12の制御プログラム121を読み込み、順次実行することで各部を制御して行う道路交通シミュレーションについて説明する。図2に示すように、制御部11は、記憶部12に格納された道路ネットワーク情報122、交差点情報123、交通量情報124、信号機情報125及びセンサー情報126を取得し(ステップA11〜A15)、当該取得した情報と、接続装置2を経由して取得する交通信号制御機S1、S2、…Snの灯火情報とを元に、道路ネットワーク情報122における道路ネットワークの交通状況を模した交通シミュレーション処理を道路交通シミュレーション部111で行う(ステップA16)。
【0036】
この交通シミュレーション処理においては、道路ネットワーク情報122における道路ネットワークを交通量情報124に応じた交通量で仮想車両が通行することを多変量解析で模しており、車両感知情報生成部112は、センサー情報126に応じた位置をその仮想車両が通過する場合、対応する交通信号制御機S1、S2、…Snに対する車両感知情報Dkを出力する。
【0037】
次いで、ステップA16における交通信号シミュレーション処理の結果から仮想車両の通行状態の平均を取得するなどして、対象である交通信号機の渋滞長、通過(停止)時間、平均車両速度や対象地域を車両が通過する際に要する時間、交差点停止回数、平均走行速度などの信号制御の評価データが評価データ演算部113で算出され(ステップA17)、その算出された評価データが表示部13に表示されて(ステップA18)、終了する。
【0038】
ここで、上述した処理により、対象となる交差点や地域で行う交通シミュレーションの概要を説明する。図3に示すように、交通シミュレーションの対象となる対象地域Mは、交通信号制御機S1、S2、…S10の灯火制御により交通整理が行われている交差点C1、C2、…C10が道路R1、R2、…R12で接続され、当該対象地域Mに流入する地点における交通量が交通量情報K1〜K7として予め測定されている。記憶部12に格納される道路ネットワーク情報122、交差点情報123、交通量情報124、信号機情報125及びセンサー情報126は、この対象地域Mの情報に基づいて操作部14から設定される。
【0039】
制御部11は、この設定情報と接続装置2を経由して電気的に接続する交差点C1、C2…C10に対応する交通信号制御機S1、S2、…S10からの灯火情報に基づいて道路交通シミュレーションを行い、表示部13にその交差点C1、C2…C10における渋滞長、通過(停止)時間、平均車両速度や対象地域Mを車両が通過する際に要する時間、交差点停止回数、平均走行速度などの信号制御の評価データを表示する。
【0040】
以上のように、道路交通シミュレーション装置100は、交通信号シミュレーション処理の対象である交通信号機又は地域に属する交通信号機を制御する交通信号制御機S1、S2、…Snと接続装置2を介して電気的に接続し、その交通信号制御機S1、S2、…Snから出力される灯火情報と、記憶部12により予め設定されるその対象である交通信号機又は地域の交通状況を示す情報とに基づいて交通信号シミュレーション処理を行う構成である。
【0041】
このため、道路交通シミュレーション装置100は、実際の交通信号機の制御機を用いることができ、実際の交通信号機が含む微小な誤差を忠実に反映した正確な交通シミュレーションを行うことができる。また、交通信号機の制御に関する設定を予め行う必要がなく、交通シミュレーションを行う際の手間を軽減することが出来る。また、交通シミュレーションを行う際に交通信号機の制御を情報処理端末1側で再現する必要がなく、処理の負荷を軽減することができる。
【0042】
また、道路交通シミュレーション装置100は、情報処理端末1で再現した交通シミュレーションにおいて、仮想車両の通行に応じて交通信号制御機S1、S2、…Snの感知器に対応する信号を当該交通信号制御機S1、S2、…Snに出力する構成である。このため、道路交通シミュレーション装置100は、交通信号制御機S1、S2、…Snが感知器によるフィードバック制御を行う場合でも正確な交通シミュレーションを行うことができる。
【0043】
なお、本実施の形態における記述は、本発明の一例を示すものであり、これに限定するものではない。本実施の形態における道路交通シミュレーション装置100の構成及び動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0044】
例えば、本実施の形態における交通信号制御機S1、S2…Snは、各交通信号制御機が単体で感知器からの入力に応じた自律制御を行う構成を例示したが、他の交通信号制御機の制御部同士が通信ケーブルなどを介して互いに通信可能に接続し、互いの制御タイミングを同期させる構成などを有するものであってもよく、実際の交通信号制御機を用いる構成であれば、接続レイアウトなどは限定しない。また、交通信号制御機S1、S2…Snは、感知器と接続するための感知器接続部S13、S23…Sn3を備えることなく、常に制御部S11、S12…Sn1に設定された制御タイミングで灯火制御を行う構成であってもよい。
【0045】
また、道路交通シミュレーション装置100における道路交通シミュレーションは、実際の時間の流れに即して行う構成を例示したが、接続装置2を経由して情報処理端末1と接続する交通信号制御機S1〜Snの各計時回路のタイミングを同一に倍速、3倍速…にするなどして調整し、操作部14などで設定を変更することで、制御部11で演算するシミュレーションの時間の速度を倍速、3倍速…などに変えてもよい。
【0046】
また、評価データの出力などは、表示部13の表示画面以外に、特に図示しないプリンターなどに印字する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
100 道路交通シミュレーション装置
1 情報処理端末
2 接続装置(接続手段)
11 制御部
12 記憶部
13 表示部
14 操作部
21 灯器表示情報変換部
22 感知情報変換部
111 道路交通シミュレーション部(交通信号シミュレーション手段)
112 車両感知情報生成部(車両感知情報生成手段)
113 評価データ演算部
121 制御プログラム
122 道路ネットワーク情報
123 交差点情報
124 交通量情報
125 信号機情報
126 センサー情報
Dt 交通信号表示情報
Dt1、Dt2、Dtn 灯器表示信号
Dk 車両感知情報
Dk1、Dk2、Dkn センサー感知情報
S1、S2、Sn 交通信号制御機
S11、S21、Sn1 制御部
S12、S22、Sn2 外線灯器接続部
S13、S23、Sn3 感知器接続部
M 対象地域
C1〜C10 交差点
R1〜R12 道路
K1〜K7 交通量情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通信号機を制御する交通信号制御機の機能検証と制御効果の評価を行う交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置において、
前記交通信号シミュレーション装置は、情報処理端末を有し、接続手段を介して交通信号シミュレーション処理を行う対象となる対象交通信号制御機又は交通信号シミュレーション処理を行う対象地域の複数の対象交通信号制御機に接続され、
前記情報処理端末は、
前記対象交通信号機又は前記対象地域に係る交通状況を示す情報として、道路ネットワーク情報、交差点情報、交通量情報、交通信号機情報及びセンサー情報を設定する交通状況設定手段と、
前記交通状況設定手段で設定された前記交通状況を示す情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記交通状況を示す情報と前記接続手段を経由して取得される前記対象交通信号機の現在の灯火表示情報である交通信号表示情報に基づいて、実際の時間の流れに即した交通信号シミュレーション処理を行う交通信号シミュレーション手段と、
前記交通信号シミュレーション手段で行った交通信号シミュレーション処理の結果に基づいて前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御の評価データである信号制御評価データを算出する信号制御評価データ算出手段と、を備えることを特徴とする交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置。
【請求項2】
前記信号制御評価データは、前記交通信号シミュレーション処理の結果により得られた車両の通行状態の平均に基づいて、前記対象交通信号機の渋滞長、通過(停止)時間、平均車両速度又は対象地域を車両が通過する際に要する時間、交差点停止回数、平均走行速度により前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御の評価データであることを特徴とする請求項1に記載の交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置。
【請求項3】
前記接続手段は、前記交通信号シミュレーション処理を行う対象地域の複数の対象交通信号制御機の各々から出力され、複数の前記交通信号機の各々で現在表示すべき交通灯火を指示する信号である複数の灯器表示信号を一つにまとめた交通信号表示情報に変換して前記情報処理端末に出力する灯器表示情報変換手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置。
【請求項4】
前記情報処理端末は、
前記交通信号シミュレーション処理において前記センサー情報に応じた位置を車両が通過する場合、このセンサー情報に対応する対象交通信号制御機に接続された感知器に当該対象交通信号制御機に接続された前記交通信号機が交通整理を行う道路に車両が進入したものとして感知させる車両感知情報を前記接続手段に出力する車両感知情報生成手段を備え、
前記接続手段は、前記情報処理端末の車両感知情報生成手段で生成される車両感知情報を前記対象交通信号制御機に出力することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置。
【請求項5】
前記接続手段は、前記車両感知情報生成手段から出力される車両感知情報を入力すべき対象交通信号制御機毎のセンサー情報に変換して該交通信号制御機に出力する感知情報変換手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の交通信号制御機の交通信号シミュレーション装置。
【請求項6】
交通信号シミュレーション処理を行う対象となる交通信号機を制御する交通信号制御機又は交通信号シミュレーション処理を行う対象地域の複数の対象交通信号機の各々を制御する複数の交通信号制御機と接続手段を介して接続され、前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果の評価を行う交通信号シミュレーション装置を構成するコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記対象交通信号機又は前記対象地域に係る交通状況を示す情報として、道路ネットワーク情報、交差点情報、交通量情報、交通信号機情報及びセンサー情報を設定する交通状況設定処理と、
前記交通状況設定手段で設定された前記交通状況を示す情報を記憶する処理と、
前記記憶手段に記憶された前記交通状況を示す情報と前記接続手段を経由して取得される前記対象交通信号機の現在の灯火表示情報である交通信号表示情報に基づいて、実際の時間の流れに即した交通信号シミュレーションを行う処理と、
前記交通信号シミュレーション処理を行った結果に基づいて前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御の評価データである信号制御評価データを算出する処理と、
前記信号制御評価データを表示部に出力する処理との、前記各処理を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項7】
前記信号制御評価データを算出する処理は、
前記交通信号シミュレーション処理を行った結果に基づいて車両の通行状態の平均を取得して、前記対象交通信号機の渋滞長、通過(停止)時間、平均車両速度又は対象地域を車両が通過する際に要する時間、交差点停止回数、平均走行速度により前記対象交通信号制御機の機能検証と制御効果を示す信号制御評価データを算出する処理であることを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のプログラムにおいて、更に、
前記交通信号シミュレーション処理において前記センサー情報に応じた位置を車両が通過する場合、このセンサー情報に対応する対象交通信号制御機に接続された感知器に当該対象交通信号制御機に接続された前記交通信号機が交通整理を行う道路に車両が進入したものとして感知させる情報であって、前記接続装置を介して対応する前記対象交通信号制御機に出力される情報である車両感知情報を生成する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−96281(P2011−96281A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17972(P2011−17972)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【分割の表示】特願2006−25866(P2006−25866)の分割
【原出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】