説明

人体モデル

【課題】 人体全体にわたる血管モデルではその容積が大きくなるので、排出系若しくは循環系の管が大型になり、またポンプにも大きな容量が要求される。かかる大型の補助器具の収納、整理が必要となる。人体全体にわたる血管モデル自体も大型化するので、これを安定して支持する必要がある。
【解決手段】 この発明の人体モデルは、透明材料からなるマネキン本体と透明材料からなるマネキン本体に仕切り部材が内蔵され、血管モデルが該仕切り部材の一方の面で支持されるとともに、該仕切り部材の他の面には血管モデルを動作させるための補助器具が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は人体モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、人の脳血管を再現したブロック状の立体モデルを提案している(特許文献1)。この立体モデルは人の脳の断層像データに基づき血管を積層造形し、該血管モデルの周囲を立体モデル成形材料で囲繞して該立体モデル成形材料を硬化させ、その後血管モデルを除去することにより得られる。
【0003】
【特許文献1】WO 03/096309 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の立体モデルによれば脳血管の複雑かつ微妙な立体形状が正確に再現されるので、患部の確認やカテーテル挿入シミュレーション用として好適なものとなる。
実際の手術においてカテーテルは大腿部等から血管内に挿入されるので、よりリアルな挿入シミュレーションを実行するには、人体全体の血管モデルを形成する必要がある。
そこで本発明者らは、人体全体の血管モデルを形成してこれをマネキン等の人体模型内に組み込むべく鋭意検討を重ねてきた。
その結果、次の解決すべき課題を見出すに至った。
【0005】
動脈のモデルを形成してこの脈動をシミュレートするには動脈モデルへ擬似血液を送り込むとともにその排出系若しくは循環系が必要となる。また、擬似血液を圧送するためのポンプも必要となる。
従って、第1の課題として、人体全体にわたる血管モデルではその容積が大きくなるので、排出系若しくは循環系も大型になり、またポンプにも大きな容量が要求される。かかる大型の補助器具の収納、整理が必要となる。
また、第2の課題として人体全体にわたる血管モデル自体も大型化するので、これを安定して支持する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は本発明者らが見出した上記課題を解決すべくなされたものであり、その構成は、透明材料からなるマネキン本体と
透明材料からなるマネキン本体に仕切り部材が内蔵され、血管モデルが該仕切り部材の一方の面で支持されるとともに、該仕切り部材の他の面には血管モデルを動作させるための補助器具が配置される、
ことを特徴とする人体モデル。
【0007】
このように構成された人体モデルによれば、仕切り部材により血管モデルと補助器具とが仕切られるので、人体モデルの意匠面に専ら血管モデルを配置することができる。そして、補助器具を仕切り部材で遮蔽することにより、血管が観察できる人体モデルとして意匠性に優れたものとなる。
また、仕切り部材により血管モデルが支持されるので、血管モデルが大型化してもこれを安定して支持することができる。例えば、マネキン本体が柔軟な材料で形成されていたとしても、仕切り部材が血管モデルを支持するので、マネキン本体中で安定しており、また、外部からの衝撃力に対する機械的強度も確保できる。
仕切り部材により血管モデルと補助器具とが分離されることにより、補助器具の配置が容易になる。特に、補助器具を多少ストレスを加えながら配置しても、その反力は仕切り部材で遮蔽されて血管モデルに及ばないので、血管モデルの安定性が向上するとともに、補助器具の配置自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の各構成要素を詳細に説明する。
(マネキン本体)
マネキン本体は、血管が透けて見えるように、透明材料で形成される。マネキン本体の形状は特に限定されるものではないが、人体の全部又は一部を模したものである。
マネキン本体をシリコーンゴムやウレタンゴムなどの柔軟性のある材料で形成した場合には、当該材料で血管モデルを隙間無く囲繞されることが好ましい。
【0009】
仕切り部材には血管モデルを支持できるだけの機械的強度を備えることが好ましい。仕切り部材の形状は特に限定されるものではないが、平板状、曲板状などマネキン本体の形状、血管モデルの位置などに応じて任意に設計することができる。
血管は三次元に屈曲しているので仕切り部材に支持部を立設し、これで血管モデルを支持することが好ましい。
【0010】
血管モデルは周知の方法で形成することができる。試料人体のCT画像から三次元血管像を形成し、当該血管像にもとづき血管の雄型を積層造形する。この血管の雄型の周囲をシリコーンゴム等からなる柔軟な材料で被覆して皮膜を形成する。その後、血管の雄型を除去することにより、膜状の血管モデルが形成される。かかる膜状血管モデルの詳細な製造方法は特許文献1を参照されたい。
【0011】
補助器具は、人体モデルの用途に応じて、任意に選択される。
血管モデルに擬似血液を流してその脈動を観察するときには、当該血液を循環させるための循環系が必要になる。当該循環系として、血管モデルの一方の端部に柔軟なチューブを一端をつなぎ、当該チューブの他端を血管モデルの他方の端部へつなぐ。当該チューブの途中に脈動を生成するポンプを介在させることにより、血管モデルに脈動を生じさせることができる。
【0012】
かかる人体モデルは次のようにして形成される。
既述のようにして膜状の血管モデルを形成し、これを仕切り部材に取り付けて支持させる。仕切り部材と血管モデルの一体物をマネキン本体用の金型にインサートとしてセットし、当該金型へマネキン本体の成形材料を注入する。これにより、仕切り部材で安定的に支持された状態で血管モデルがマネキン本体中に内蔵されることとなる。
なお、マネキン本体において血管モデルを支持していない仕切り部材の面の周囲は空洞として、ここに補助器具を収納できるようにする。
マネキン本体内に埋設された血管モデルへカテーテルを挿入したり、擬似血液を注入・排出するための孔を穿設することができる。
また、中空のマネキンを用いる場合には、当該マネキンを下側(背側)と上側(腹側)とに分解してこれを仕切り部材で仕切り、マネキンの下側部分に補助器具をセットし、マネキンの上側部分に血管モデルが配置されるようにする。
【実施例】
【0013】
以下、この発明の実施例を説明する。
図1はこの発明の実施例の人体モデ1の斜視図である。この人体モデルは人型マネキン本体5の中に血管モデル10が埋設されている。
人体マネキン本体5は透明材料からなりかつ中空のマネキンを半割りにしたものであり、その下側部分と上側部分とが仕切り部材3で仕切られている。
仕切り部材3の上面には、図2及び図3に示すように、樋型の受け部4を備えた支持部5が立設される。血管モデル10はこの支持部5の上に載置され、もって支持されることとなる。
マネキン本体の下側部分には、図2に示すように補助器具20が収納される。この例では補助器具20としてチューブ21とポンプ23が備えられる。ポンプ23は外部の制御装置25によりリモートコントロールされる。ポンプはマネキンの外側に配置してもよい。
仕切り部材3にはこれを貫通するコネクタ7が配設されている。このコネクタ7の上側の部分には可撓管8の一端が連結される。可撓管8の他端は血管モデル10において静脈が分岐する部分若しくは静脈に連結される。コネクタ7の下側部分にはチューブ21が連結される。
かかるコネクタ7は仕切り部材の複数の部分に設けておくことが好ましい。血管モデルの形状によって、可撓管8を連結すべき位置が変化するからである。
【0014】
図3は血管モデル10を仕切り部材3の上面で支持させた状態を示す斜視図である。なお、この血管モデル10は試料人体の血管のCT画像に基づき積層造形した血管の雄型の周囲に着色したシリコーンゴムの皮膜を形成し、その後雄型を除去して得られる。仕切り部材3は合成樹脂製の半透明な板材を用いている。血管モデル10と仕切り部材3とは図示の支持部5を所定の位置に介在させることによる。
なお、血管モデル10は複数の部分に分解されることが好ましい。そしてその部分毎に支持部5で支持される。これにより、血管モデルの所望の部分を他の血管モデルの対応する部分と交換することができる。よって、多様なシミュレーションが可能となる。
【0015】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はこの発明の実施例の人体モデルを示す斜視図である。
【図2】図2は同じく人体モデルの使用態様図である。
【図3】図3は血管モデルとこれを支持する仕切り部材を示す斜視図である。
【図4】図4は同じく人体モデルの正面図である。
【図5】図5は同じく人体モデルの側面図である。
【図6】図6は同じく人体モデルの背面図である。
【図7】図7は同じく人体モデルの平面図である。
【図8】図8は同じく人体モデルの底面図である。
【0017】
1 人体モデル
3 仕切り部材
5 マネキン本体
10 血管モデル
20 補助機器
21 チューブ
23 ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り部材、血管モデル、補助器具を備え、前記血管モデルが前記仕切り部材の上面で支持されるとともに、該仕切り部材の下面には前記血管モデルを動作させるための補助器具が配置され、前記仕切り部材にはこれを貫通するコネクタが配設され、該コネクタの一端と前記血管モデルとが連結され、前記コネクタの他端には前記補助器具の管が連結される、ことを特徴とするカテーテル挿入シミュレータ。
【請求項2】
前記血管モデルは複数の部分に分解されており、各部分毎に他の血管モデルの対応する部分と交換可能である、ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレータ。
【請求項3】
前記仕切り部材の一方の面から支持部材が立設され、前記血管モデルは前記支持部材に支持される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−287270(P2008−287270A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156633(P2008−156633)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【分割の表示】特願2005−85746(P2005−85746)の分割
【原出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】