人工呼吸器支持を受けている患者の終末呼気陽圧(PEEPi)を非侵襲的に予測するための方法及び機器
【課題】 本発明は、人工呼吸器の支持を受けている患者における内因性終末呼気陽圧(PEEPi:intrinsic positive end−expiratory pressure)を非侵襲的に予測することを課題とする。
【解決手段】 この課題を解決するために、本発明は、呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積る方法であって、人工呼吸器による援助によって自発的に呼吸する患者の呼吸気道パラメータを非侵襲的にモニタリングするステップと、該モニタリングされた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を計算するステップと、を備えることを特徴とする方法等を提供する。
【解決手段】 この課題を解決するために、本発明は、呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積る方法であって、人工呼吸器による援助によって自発的に呼吸する患者の呼吸気道パラメータを非侵襲的にモニタリングするステップと、該モニタリングされた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を計算するステップと、を備えることを特徴とする方法等を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/582,409号に係る2004年6月24日の出願日の利益を主張するものである。本発明は、一般的には人工呼吸器管理及び呼吸モニタ技術を含む呼吸療法、生理学、及び集中治療医学の分野に関し、特に内因性終末呼気陽圧(PEEPi:intrinsic positive end−expiratory pressure)を一定のマーカを用いて非侵襲的に予測するための方法及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式換気支持は、呼吸不全の患者を支持して治療するための効果的な手段として広く受け入れられている。機械式人工呼吸器は、単に、吸気と呼気を支援するように設計された機械である。多くの場合、換気支持の主たる目的は、人工呼吸器が患者の呼吸仕事量(WOB:work of breathing)の内のいくらか又はすべてを提供することである。この目的は、患者のWOBを正確に測定し滴定することができないという要因もあって、往々にして達成されない。人工呼吸器は、高度に信頼性があり、耐久性があり、精密でなければならない。いくつかある最も現代的な人工呼吸器は電子的に制御されており、その殆どはオペレータによる多くの微小で、けれども異なる、微調整操作を許容するように設計されている。理想的には、オペレータは、人工呼吸器の圧力特性及びフロー出力特性が個々の患者のニーズに添うように適合させるためにこれらの制御装置を用いる。最適化された人工呼吸器設定はまた、換気支持が患者に受け入れられ易くなるようにする役目もする。
【0003】
機械式人工呼吸器の第一世代(1960年代中頃より前)は、(一般的に神経筋疾患又は麻痺といった理由で)自分で呼吸することができない患者のために、肺胞換気を支持して補給酸素を提供するためにのみ設計されていた。これら初期の人工呼吸器は、支持された患者が彼又は彼女自身で呼吸しなかったならば、呼吸するのに必要な仕事量の100%を供給した。患者が自発的に呼吸することを試みたならば、人工呼吸器からの反応が完全に欠如していることは激しい乱れを引き起こし―「人工呼吸器とのファイティング」と称されもした。自発的に呼吸しようとした患者は激しく乱れるようになったので、人工呼吸器との適切な同調を保証するために、患者に多量に鎮静剤を投与するか患者を麻痺させることが一般的慣習であった(いくつかの機関では今も残る)。鎮静状態又は薬剤性筋肉麻痺は、それらが解決するよりも多くの問題を引き起こすことがある。たとえば、多量に鎮静剤を投与され又は麻痺した患者は、全く自発的に呼吸することができず、その結果、人工呼吸器から誤って遮断されると彼等は窒息で即死するであろう。このことは、強化された警戒及び非常に高いレベルのモニタリングを必要とした。さらに重要なことには、麻痺と鎮静状態はまた、患者の呼吸筋群の迅速な劣化、すなわち「非活動性萎縮」として知られるようになった状態をもたらす。逞しく、状態の良い呼吸筋群がないと、臨床医らは、時々、患者の当初の呼吸器系疾患が解決した場合でさえ、彼らの患者を人工呼吸器から解放することを困難ないしは殆ど不可能なことのように思う。これらの潜在的な課題を克服するために、現代の機械式人工呼吸器は、我々が肺に関する病態生理学についての理解を深めるのに応じて遥かに複雑化されるようになった。十分な呼吸筋機能を維持しつつ機械式換気に対する患者の耐性を改善するために、多くの新規なモードが開発されてきた。これらの新規のモードの多くは、自発呼吸、患者トリガ式呼吸や圧支援呼吸、又は患者トリガ式強制呼吸さえも可能にした。これらの圧支援された呼吸は、臨床医によって適切に調節された場合、人工呼吸器が患者とWOBを共有することを可能にする。1970年代初頭までには、ある新規モードの換気は、毎分精密なインターバルで送出するようにプログラムされた強制(機械が送出して制御した)的な呼吸間の時間周期において、患者が自分のペースと大きさで呼吸することを可能にした。このモードは、間欠的強制換気法(IMV:Intermittent Mandatory Ventilation)として知られていた。圧支持換気法(PSV)が数年後に登場し、単独で又はIMVとともに用いることが可能となった。このモードは、各患者によって引き起こされる自発的な吸気努力のための、可変圧力支援を(オペレータにより選択された圧力レベルで)提供した。ひどく害された患者のニーズに取り組む様々な種類の「代替的」換気モードが開発され続けている。
【0004】
人工呼吸器の支持を受ける患者は異なるレベルの援助を必要とする。すなわち、自力で呼吸を維持する能力により、支持レベルを変えることを必要とする者もいれば、換気の完全な制御を必要とする者もいる。提供される人工呼吸器支持を患者によって必要とされるところに一致させることは今日でも大きな課題としてあり続け、あまりにも多くの支持は非活動性萎縮を起こしやすく、あまりにも少ない支持は疲労のサイクルに往々にして至らしめて呼吸不全となる。現在、簡単に利用可能で使い易くて信頼性があり、適切な支持レベルを予測するための方法又は機器は存在しない。問題をさらに複雑にするのは、患者の支持を必要とするレベルが、様々な理由により一日を通じて幅広く変化しうるということである。
【0005】
患者の肺に意図せず捕捉されたガス、すなわちPEEPiは、患者のための適切な支持レベルを見積もろうとする臨床医の最善の試みを阻害する。何年もの間、多くの臨床医はその存在に全く気づかなかった。そのため、それが初めて報告されたとき、(従来のモニタリング技術を用いたときに)視界から隠されているので、「内因性」と、あるいは「神秘的な」とさえ名付けられた。余分な(吐き出されず又は捕捉された)ガスは、次の吸入の始めで患者の肺に残り、新鮮なガスが肺に入ることができるより前に患者の吸気筋群が克服しなければならない吸気閾値負荷(周囲より高いある正圧レベル)を生成する。さらに、吸気筋群は(過膨張により)通常留まっている位置から移動されているので、機械的損害が与えられている。すなわち、吸気筋群の方向が引っ張っていて、もはや力の単位時間当りの最大可能ボリューム変化を生成しない。これはすなわち、動的肺過膨張(DPH:dynamic pulmonary hyperinflation)又はPEEPiの患者が呼吸するには非常に努力しなければならないということを意味する。加えて、人工呼吸器支援を受けている患者、又は、呼吸仕事量の少なくとも一部を生成している患者は、呼吸するためにさらに追加的な努力をしなければならない。すなわち、彼等が人工呼吸器から何らかの支援を受ける前に、彼等は人工呼吸器上で設定されたトリガ圧を克服しなければならない。トリガ圧は、患者の努力を人工呼吸器のレスポンスに同期させるために用いられなければならない(そうでなければ、人工呼吸器はランダムに呼吸を開始し、それらの内のいくらかは患者自身の努力と抗い、ときには打ち消すかもしれないであろう)。検出不能で定量するのが困難なPEEPiレベルと人工呼吸器のトリガ設定とが相俟って、耐えられない追加的仕事量をたびたび生成する。追加的仕事は、多くの場合、特に不十分な呼吸筋機能を備えた患者においては、吸気筋疲労を生成するのに甚だ十分である。自力で呼吸しようとしない患者にとって、検出されていないPEEPiは同じくらいにまったく問題である。それが患者の胸に生成する追加圧は、胸への静脈血の戻りを減少することができ、これは次には心拍出量を減少し、結局、患者の血圧を劇的に減少しうる。肺の中に捕捉された多すぎるガスはまた、過膨張及び構造的損傷を起こしやすく、肺の破損さえも引き起こすことがある。研究によって、PEEPiが一般に考えられているよりも遥かに頻繁に生じることが示された。人工呼吸器依存のCOPD患者において、PEEPiが患者の総換気仕事量の大きな割合を占めることも示された。PEEPiを減少し又は除去することは、そうすると、COPDの急性増悪の患者にとって重要な臨床的影響を及ぼしうる。明らかに、PEEPiを検出して正確に測定することは、害された患者を処置する際に非常に重要な方途である。
【0006】
今日の集中治療室(ICU:intensive care unit)では、最先端の人工呼吸器は患者たちのPEEPiを測定することはできるが、しかし彼等が自力で呼吸しない場合に限られる―つまり、測定の際のどのような動き又は自発的努力でもその測定を無効にするであろう。自発的に呼吸する人工呼吸器に支援された患者等は、事実上彼等のPEEPiを正確に測定することができない。そうするためには、食道バルーンの配置又は胸部インピーダンス測定器の使用が必要である。両アプローチは、高価であり、高度に技術を要し且つ非常に時間を消費する。通例、これらのアプローチは研究者によって用いられているに止まる。食道バルーンは最も一般に使用されるアプローチである。というのも、それは最も高価でなく、バルーンは他の進行中で必要なモニタ又は治療に干渉しにくい傾向があるからである。その概念は、適切に膨張されて配置された、患者の食道に挿入されるバルーン先端カテーテルの使用を伴う。適切に配置された場合、それは食道内圧(Pes)を測定するために用いられる。一定の食道の場所(すべての場所ではない)において、(絶対圧の値は恐らく同じになら「ない」が)食道内の圧力変化が胸膜腔に生じるものと同じ振れ幅であることが示された。呼気フローを0のフロー軸線にちょうど交わる点(肺の中へのフローの開始の直前の瞬間)へ急激に持って来るのに必要とされる食道内圧における(休止、又はベースラインからの)変化は、PEEPiを表わし、動的PEEPi(PEEPi,dyn)とも呼ばれる。
【0007】
食道バルーン技術は、臨床医からこれまで好評を得ることができなかった。バルーンは、配置するのが難しく、栄養管のような重要な器具に干渉することがあり、不正確で誤解を招く測定を防ぐために、適切に配置して膨張しなければならない。さらに食道バルーンの使用手順を複雑にしているのは、信号品質である。頻繁な呑込み又は偶然な食道痙攣は、識別するのが難しいことがあり、さらには信号を一時的に役立たなくしてしまう。加えて、食道は心臓のちょうど前部に位置しており、信号は、その結果、鼓動する心臓に付随して起こる望ましくない圧力変動を除去するための「重いフィルタ」を用いることなく解釈することが往々にして困難となる。胸部インピーダンス装置は、高価であるだけなく、使いにくく、(研究者次第で)一貫して反復可能でないかもしれず、それは、絶対不可欠の心電図モニタリング線、重要な静脈内カテーテル、及び他の重要な装置にしばしば干渉する。これらの理由により、食道バルーン及び胸部インピーダンス装置は、研究用ツールとして止まり続けるであろうと思われる。
【0008】
自発的に呼吸しない患者のために、PEEPiは、適切に計時された、終末呼吸の、気道閉塞マニューバを用いて測定される。これは、呼気弁を突然に閉塞すること(患者の吐き出されたガスによって通常採られる経路のブロッキング)を伴う。呼気弁の閉塞は、(患者の人工呼吸器に取り付けられている)呼吸路及び患者の肺において、未だ患者の肺に残っているかもしれないすべての追加的ガスを捕捉する。(呼吸路において測定された)圧力が安定する場合であって、それが通常のベースライン圧力(終末呼気の圧力)より上にあるとき、患者はPEEPiを有しているという。閉塞技術は自発的に呼吸する患者に対して、潜在的には、用いることができるかもしれない。しかし、そうすることは、息を止めることを患者に要求し、呼吸路における圧力が平衡状態に達するまで、呼吸する試みをまったく行わせず、動くことさえもまったく行わせない。不幸にも、患者が極度に病気であり、意識不明であり、多量に鎮静剤を投与されており、又はPEEPiによって課された追加的仕事量に対して呼吸しようと努力している場合には、そのレベルの協力は殆ど存在しない。
【0009】
米国特許第6,588,422号は、とりわけ肺疾患による呼吸不全のための換気支持の分野に属し、特にPEEPiを取り除くために十分な終末呼気圧を自動的に提供することに属する。この´422特許は、動的な気道圧迫を十分に防ぎ且つ最小量の外部呼気圧力を備えたPEEPiを取り除くように、換気支持の間に呼気の圧力の連続的且つ自動的な調整を提供しようとするものである。この発明の目的は、呼気相の間に人工呼吸器によって加えられた外圧を変えることを伴っており、何らかの方法によってPEEPiを測定することも定量化することもない。また、人がこの特許を用いてどのようにPEEPiを測定することができるのかが自明でない。
【0010】
また、米国特許第6,240,920号は、吸気時の患者の自発的な試み及び/又は吸気時の自発的な試みにおける患者の呼吸努力と関係する少なくとも1つのパラメータを決定する方法を開示する。´920特許において開示されているものもまた、PEEPiに抗って対処する潜在的方法である。つまり、それは、患者の実際のPEEPiレベルを測定し又は定量する方法を提供しない。
【0011】
(換気支持を受けている自発的に呼吸する患者において機能する)PEEPiを非侵襲的に測定する手段を開発することは、多くの因子の分だけ複雑になる。第1に、肺胞のレベルで捕捉されたガスは、殆ど常に非均質的に両方の肺にわたって分配されており、これによって正確なPEEPiを測定することを困難にする。これは、PEEPiのすべての測定が精々2つの肺の平均であることを意味し、それらがあたかも同一であるかのようにみなされる。また、超過圧力(捕捉された空気)は早まって虚脱した気道の後ろに恐らく隠されており―それを事実上検出できなくする。最後に、患者の呼吸しようとする努力は、呼吸対呼吸の方式で変化するアーティファクトを生成する。そのようなアーティファクトは、理想的な受動圧力波形から分離するのが難しいかもしれない。
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,588,422号公報
【0013】
【特許文献2】米国特許第6,240,920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
当該技術分野には、特に自発的に呼吸する患者において、非侵襲的に、PEEPiを正確に検出して定量することに対するニーズがある。患者の内因性PEEPを非侵襲的に決定することは、1)臨床医に患者の状態をより良く知らせ、患者の呼吸療法をより良く管理させ、2)患者分析及び生理学的なモニタリング/モデリングを改善し、3)侵襲的なPEEPi測定から生じる、患者の不快感を最小限にし(非侵襲)、且つ臨床医の介入を最小限にする(閉塞の必要が無い)。その測定は、臨床医たちに対して、彼らが患者の呼吸療法に関するより良い決定を下すことを可能にする、正確で連続的な情報を提供するであろう。本発明は、このニーズに取り組むことを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
大まかにいうと、本発明は、PEEPiを非侵襲的に予測する(見積る)方法及び機器を提供する。PEEPiの存在は、これは往々にして検出されていないままであるが、新鮮なガスが肺に入ることができる前に患者の吸気筋群が克服しなければならない吸気閾値負荷(周囲より高い正圧レベル)を生成する。加えて、過度のレベルのPEEPiは、心機能障害、圧外傷(過度の肺容量に付随して起こる構造的な肺損傷)のリスク増加、吸気筋の圧生成能力の削減、呼吸仕事量の異常な増加に至る場合がある。
【0016】
発明者らは、PEEPiを非侵襲的に検出して定量するために、複数のインジケータを革新的に開発した。これらのマーカのうちのいくつかはPEEPiを予測するために単独で用いることができるが、いくつかのマーカは主として検出に適し、その一方でいくつかのものは定量化に最適であることが観察される。さらに、一定のマーカが特定グループの被験者上で最も良く機能する点にも気づく。そこで、本発明の一側面では、PEEPiの予測を改善するためにこれらのマーカのいくつかを同時に用いることが示されており、広範囲の患者に対してその実施可能性を広げる。
【0017】
主要な利点は、当該方法が非侵襲性であり、呼吸対呼吸であって且つリアルタイムであるということである。したがって、患者にカテーテルを挿入する必要はない。その方法は、次の1つ又は複数を含め、被験者の気道で当該測定がなされることのみを要する:口で測定された、気道圧力、呼気終末CO2、及び気流。これらの気道測定は殆どのICUにおいて―人工呼吸器支持を受けている間に患者をモニタリングして維持するために広く用いられている一般的な呼吸装置の何れかを用いることによって―慣例的にモニタリングされている。
【0018】
閉塞方法は本質的には非侵襲的であるが、それはしかしながら潜在的に不快な「介入」を必要とし、自発的に呼吸する患者にとっては機能しない。この方法は、これらの障害の何れの影響も受けない。患者の気道を閉塞する必要はなく、それは介入なく連続的に決定されうる。
【0019】
該アプローチはいくつかの異なったPEEPiマーカの測定を含んでおり、続いてこれらは専門的な数学モデル(たとえばニューラル・ネットワーク)に供給され、そしてこのモデルがこれらの値に基づいてPEEPi値を予測する。そのモデルは、線形モデル(例えば多変量回帰)でも非線形モデル(例えばニューラル・ネットワーク、ファジィ論理など)でも良い。
【0020】
PEEPiマーカないしインジケータには次のものが含まれる。
【0021】
フロー/ボリューム軌跡―フロー/ボリューム波形をプロットする概念は、多くの患者において機能する有用な定量化マーカであることが実験的に証明されている。
【0022】
CO2フロー/ボリューム軌跡―このマーカは、PEEPiのインジケータであることが実験的に証明されている。PEEPが高いレベルの患者を同定するのに、また早期の気道虚脱又は呼気フロー制限で苦しむ人にとって特に有用である。
【0023】
CO2/ボリューム比―このマーカは、厳しい呼気フロー制限を示す患者においてPEEPiを発見するためのインジケータであることが実験的に証明されている。
【0024】
吸気努力開始時フロー―このマーカは、PEEPiを定量するのに有用であることが実験的に証明されている。
【0025】
患者の呼気波形のモデリング―これは2つの異なる方法を用いて成し遂げることができる:1)最小2乗法、及び2)指数関数的モデル化。両方法は、PEEPiを定量するのに有用であることが実験的に証明されている。
【0026】
ピーク中間呼息フロー比:フロー制限患者は、非常に急速に衰える高ピークのフローを有する場合がある。中間の呼息フローが低い場合、このパラメータは高く、存在するであろうフロー制限及び結果としてのPEEPiを示す。
【0027】
低呼息フロー時間:フロー制限患者は、低フローで生じる呼気割合が異常に高い場合がある。このパラメータは、低フローで生じる呼気の割合を(ボリューム又は時間によって)決定する。
【0028】
カプノグラフ波形形状:フロー制限患者は、通常の患者に対して特定可能な程度に独特のCO2波形を有する場合がある。特に、フェーズIII勾配(CO2の急な立ち上がり時間後の勾配)は、水平でなく、呼気の全体にわたって上昇し、持続的な低フロー呼気を示す。
【0029】
負呼気圧又は増加呼気勾配:患者の呼気フローは、呼息間の圧力勾配(呼吸路における圧、肺間の圧力差)に正比例するに違いない。呼息の間に(呼吸路における)圧力がない場合、その勾配は、呼吸路において、呼息フェーズの間に、短い時間負圧を印加することにより良く増加できる場合がある。呼息の間に追加的な圧力を受けている患者に関しては、その勾配は追加圧力を短時間除去することにより増加しうる。呼気フローが増加された勾配に応じて増加しない場合、患者は呼気フロー制限で苦しみ、例外的にPEEPiを発展させる傾向がある。
【0030】
上記で言及されたマーカに加えて、これらの及び/又は潜在的には他のPEEPiのためのマーカの2つ以上を、PEEPiを予測する数学的モデル(ニューラル・ネットワークのように、直線又は非線形)への入力として用いる概念は新規且つ独特である。2つ以上のマーカ(上に言及されたもの及び他のもの)を用いることにより提供される一体化された情報は、PEEPiのより正確な見積もりへと帰着しうる。
【0031】
本発明の一側面において、該方法は、標準の呼吸モニタによって集められたパラメータのような、非侵襲的に集められた所定のパラメータを用いて患者のPEEPiの数学的モデルを生成することを備える。呼吸モニタは、典型的には時間の関数として患者に流入出するガスのフロー及び圧力を測定する気道圧力センサ及び気道フローセンサを含む。これらの時間対フロー又は圧力の波形から、患者の呼吸及び/又は患者の人工呼吸器との相互作用に関する異なる側面を特徴付けるのに用いられる、種々のパラメータが選択的に導き出される。これらのパラメータは、内因性PEEPを正確に見積るために抽出された情報を含む。
【0032】
より具体的には、本発明の当該方法は、患者及び/又は人工呼吸器に取り付けられた前述のセンサ及び他のものから導き出された複数のパラメータの組合せを用いて実PEEPiを見積る方法を備える。PEEPiパラメータは、フロー/ボリューム軌跡、CO2フロー/ボリューム軌跡、CO2/ボリューム比、フロー開始、呼気波形上モデリング、及びピーク中間呼息フロー比を含め(これらに限定されない)、肺における超過圧力の量を表わす任意のパラメータであってよい。
【0033】
この方法は、ニューラル・ネットワーク、ファジィ論理、混合エキスパート、又は多項式モデルを含め(これらに限定されない)、パラメータの線形一次結合又はパラメータの非線形結合を用いることを含む。さらに、異なるサブセットの患者のPEEPiを予測するために複数の異なるモデルを用いることができる。これらのサブセットは、患者の条件(病態生理学)、患者の生理学的なパラメータ(肺抵抗及び肺コンプライアンス)、又は他のパラメータを含め(これらに限定されない)、種々の手段によって決定することができる。
【0034】
本発明の一側面において、患者のPEEPiを見積る方法は、ニューラル・ネットワークの使用を備える。そこでは、ニューラル・ネットワークは、入力データに基づいて患者に関するPEEPi情報を提供する。入力データは、次のパラメータの少なくとも1つを含む:フロー/ボリューム軌跡、CO2フロー/ボリューム軌跡、C02/ボリューム比、フロー開始、呼気波形上モデリング、ピーク中間呼息フロー比、低フロー呼息時間、及びカプノグラフ波形形状。そこでは、内因性PEEP情報は出力変数として提供される。
【0035】
上記で言及された方法において、ニューラル・ネットワークは、上記で言及された入力情報を備えたティーチングデータを得るのに慣れているテスト集団の患者から臨床データを集めることによりトレーニングを受け、ニューラル・ネットワークにティーチングデータを入力し、これによってニューラル・ネットワークは内因性PEEPに対応する出力変数を提供するようにトレーニングされる。
【0036】
患者の内因性PEEPを見積るシステムとして、当該システムは、テスト集団の患者の臨床試験からの得られた1次ティーチングデータとしてまず受け取るニューラル・ネットワークを備え、それによってニューラル・ネットワークはティーチングデータを学習し、内因性PEEPのための出力変数を提供するようにトレーニングされ、前記ニューラル・ネットワークが患者から得られた上記で言及されたパラメータの形で患者入力データを受けたとき、ニューラル・ネットワークがその患者のための内因性PEEPを見積る出力変数を提供するようになる。
【0037】
この発明は、次のものを含む多くの方法において実施することができる:(コンピュータ処理システム又はデータベース・システムを含む)システムとして、(入力データを収集して処理するコンピュータ化された方法を含む)方法として、及び出力を提供するためにかかるデータを評価する方法、機器、コンピュータ可読メディア、コンピュータ・プログラム製品、又はコンピュータ可読メモリに有形的に固定されたデータ構造として。本発明に係るいくつかの実施形態は、下記で議論する。
【0038】
システムとして、本発明の一実施形態は、入出力装置を有するプロセッサ・ユニットを含む。そのプロセッサ・ユニットは、入力パラメータを受け取り、入力を処理し、PEEPiに対応する出力を提供するように作動する。この出力は、その後、人工呼吸器のような外部装置を制御するために用いられうる。データの処理は、ニューラル・ネットワーク、並列分散処理システム、神経形態学的システムなどのような種々の手段によって遂行することができる。
【0039】
PEEPiを予測する方法として、当該方法は、予め定められた入力変数(パラメータ)の処理を含み、好ましくはニューラル・ネットワークの使用を通じてなされる。
【0040】
プログラム指令を含んでいるコンピュータ可読メディアとして、本発明の一実施形態は次のものを含む:入力変数を受け、入力を処理し、そしてPEEPiを示す出力を提供するコンピュータ可読コード装置。好ましい実施形態において、処理は、ニューラル・ネットワークを利用することを備える。当該方法は、得られた出力に応じて人工呼吸器を制御することをさらに含んでいてもよい。
【0041】
本発明の方法は、コードを有しているコンピュータ可読メディアを備えたコンピュータ・プログラム製品として実施されてもよい。そのプログラム製品は、プログラム、及びそのプログラムを保持する信号保持メディアを含む。
【0042】
機器として、本発明は、少なくとも1つのプロセッサ、該プロセッサに接続されたメモリ、及び該メモリ内に存在して本発明の方法を実現するプログラムを含むことができる。
【0043】
本発明の他の側面及び利点は、本発明の原理を具体例によって図示する添付の図面に関連してなされる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
上記で述べられた方法並びに本発明の他の利点及び目的を得るために、上記で概説された発明についてのより詳細な説明が、それの具体的な実施形態であって添付の図面において図示されているものへ言及することによって与えられるであろう。これらの図面は本発明の典型的な実施形態のみを表し、したがってその範囲を限定するものと考えるべきでないことを理解されたい。本発明は、添付の図面を用いることを通じて追加的な具体性及び詳細によって記載及び説明されるであろう。
【0045】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を記載する。
【0046】
図1に表された実施形態において、呼吸支持を必要としており人工呼吸器12に接続された患者10は、気道のフロー及び圧力センサ14と、恐らくは標準人工呼吸器回路16のYピースで取り付けられた二酸化炭素検出器と、を有するであろう。これらのセンサは、患者へ流入出するガスにおけるフロー、圧力及び二酸化炭素分圧を測定する。これらの元信号18は、信号を綺麗にし、センサバイアスやオフセット等を除去するために、アナログ及びデジタル信号処理により、信号プロセッサ20で前処理されてもよい。これらの信号は、次に、パラメータ抽出モジュール22で処理され、当該フロー、圧力及びCO2データから様々な他のパラメータを計算し、PEEPiを示すマーカないしはインジケータを同定する。本発明の一側面において、人工呼吸器がコントローラ26を通じて制御可能となるように、ニューラル・ネットワーク24がパラメータをモデル化するために提供されてもよい。
【0047】
PEEPi測定に対するアプローチは、何人かの異なる患者のパラメータをリアルタイムでモニタリングすることに依存する。この概念は、PEEPiの存在を示す「いくつかのマーカ」を測定して、ニューラル・ネットワーク、線形回帰モデル、又はこれらに類するものにそれらの適格なマーカを供給することを伴う。PEEPiに対する値は、その後、ニューラル・ネットワーク、線形多変量回帰モデリング、又は非線形多変量回帰モデリングと同種のものとして最も良く記載される方法を利用することによって、それらの検出された異なるマーカのすべてを用いて予測される。ニューラル・ネットワーク・モデルが用いられる場合、ネットワークはPEEPiの程度―食道バルーンを用いて可及的に正確に測定されたレベル―が変化して苦しんでいる患者から収集された実際の臨床データを用いることにより「予めトレーニングされる」。食道バルーン技術を介して測定されたPEEPi(PEEPi,pes)は、基準、すなわち真のPEEPiとみなされる。PEEPi,pesは、ニューラル・ネットワークのトレーニングに加え、アプローチの妥当性検査のために用いられる。ニューラル・ネットワークは、入力パラメータとしてPEEPiマーカを用いることにより、実際のPEEPiを予測するためにトレーニングされる。
【0048】
PEEPiマーカの例には次のものが含まれる:
・終末呼息をマーキングする突然のフロー反転。
・終末呼息における頻繁なボリューム・チャネルの「リセット」。現代のボリューム測定器は各呼吸でゼロのボリュームからスタートするので、これが生じる。
・少なくとも2つの区別可能な呼気フロー減衰パターンに伴われた呼気フローの開始でのスパイク。
・呼気時間に関係しない終末呼気二酸化炭素(ETCO2:end−tidal carbon dioxide)の連続的増加。
・高い全呼吸器系抵抗及びコンプライアンスと、加えて高呼吸数又は高一回換気量。全抵抗とコンプライアンスの積は肺の時定数と等しいので(Vrの上のボリュームの60%が1つの時定数のインターバルにおいて吐き出されるであろう)、時定数が大きいほど、患者がPEEPiを示すであろう可能性は大きくなる。急速に呼吸する場合又は大きな息をつく場合は特にそうである。
【0049】
発明のバックボーンを形成し、PEEPiの振れ幅及びタイプと関係する情報を提供する追加的マーカが発見された。これらのマーカは、フロー/ボリューム軌跡、二酸化炭素(CO2)フロー/ボリューム軌跡、CO2/ボリューム比、吸入開始時の呼気フロー、及び呼気波形上でのモデリング、に基づいてPEEPiを見積る。これらのマーカの多くは独特で、PEEPiを測定するためにそれら単独で用いることができる。しかしながら、それらのマーカの2つ以上の組合せは、よりロバストでより正確な手段を提供しうる。
【0050】
ここで、図2a及び図2bを参照すると、各呼吸での呼気のフロー及びボリュームを分析することにより、フロー/ボリューム軌跡が得られることが分かる。通常の状態の下では、呼気フローに対するボリュームのプロットは、およそ0でボリューム軸29と交差する殆ど真っすぐな線28となる(図2a)。すなわち、終末呼息では、肺から出て来るガスのボリュームは0である。フロー/ボリューム軌跡の勾配は、肺の平均時定数と関係する。PEEPiがある患者についての典型的なフロー/ボリュームのループは、図2bにおいて示される。この特定の場合において、軌跡線30は、0よりずっと下でボリューム軸29と交差する。これは、呼息フェーズが継続されたならば、追加的な0.24L(Y軸切片27)のガスが肺から出されたであろうことを示す。追加的なガス量を患者の呼吸コンプライアンスで割ることにより、PEEPi圧力の定量可能な推論が与えられる。
【0051】
CO2フロー/ボリューム軌跡は、吐き出されたフローの代わりに図3に示されるようにCO2フロー36がプロットされる点を除き、フロー/ボリューム軌跡に類似する。CO2フローは、吐き出されたCO2と吐き出されたフローを掛け合わせることにより得られる。何人かのPEEPi患者において、吐き出されたCO2は、非常に小さい呼息フローがある場合に上昇し続ける傾向がある(図3)。CO2フロー・パラメータは、この増加CO2トレンド38を捉え、図4bにおいて示されるようにボリュームに対してプロットされたときに、PEEPi患者のためのボリューム軸33に大体平行する軌跡34となる。図4a及び図4bは、それぞれ、PEEPiを有している患者と有していない患者との対比を示す。図4aにおいて示されるように非PEEPi患者において、軌跡32は、ボリューム33とフロー35軸が出会う点の近くで最終的には交差する。軌跡32、34の勾配は、PEEPiの厳しさに対する徴候を提供することができ、図4bにおいて示されているような急な勾配は厳しいPEEPiを示し、図4aにおいて示されているような緩やかな勾配は低レベルのPEEPiを示す。
【0052】
別のPEEPiマーカであるCO2/ボリューム比は、吐き出されたCO2を吐き出されたボリュームで割った分数値である。最大の吐き出されたCO2値及び呼息間のボリューム変化が各呼吸について求められる。その比は以下によって与えられる:
【0053】
【数1】
【0054】
PEEPi患者は、PEEPiを有していない患者に対して、より大きな比の値を有していることが観察された。
【0055】
追加的PEEPiマーカの4つめ、すなわち吸入開始時呼気フローは、吸入努力の開始を捜し出すことにより、終末呼息の精密なモーメントで吐き出されたフロー割合を捕らえようと試みる。ガスが吸入始めで肺からまだ流れ出ている場合、このガス・フローを駆動する唯一の力は、まさにこの瞬間において、PEEPiであると推論することができる。
【0056】
吸入始めのPEEPi(PEEPi,onset)は、吸入開始時の呼気エアフロー(flowonset)と肺の気道によって生成されたエアフローに対する抵抗(Raw)との積を用いて見積られる。
【0057】
【数2】
【0058】
全呼吸抵抗(Rtotal)は、強制呼吸―これらは、患者でなくオペレータが、ガスフロー比、ガスのフローパターン、一回換気量及びそれらが1分当りに伝えられる頻度を決定する呼吸である―を伝える時に、終末吸気休止(通常、この休止は0.5秒以上続く)を生成するように患者の人工呼吸器をプログラムすることにより伝統的に決定される。各強制呼吸の間に、ピーク膨張圧(PIP:peak inflation pressure)とプラトー圧(Pplat)との間の差が決定される。この差は、PIPが観察された瞬間に、測定されたエアフローで割られる。また、この測定は、正方形フローパターンを用いて、60リッター/分(1リッター/秒)で又はその極めて近くでプログラムされたガスフローで行なわれるのが伝統的である。これが行われるのは、ガスが正確に60リットル/分(1リットル/秒)で流れている場合の(cm H2Oで測定される)圧力降下として抵抗が定義されるからである。記号を用いて、抵抗は以下のように決定される。
【0059】
【数3】
【0060】
上に定義されたように、このようにして求められた抵抗は、呼気器系の全抵抗を表わし、両方の肺が似たような抵抗値を有している限り受容できる。
【0061】
終末吸気休止の間、ガスは肺から漏れることができないので、それは過膨張したalveoliから不足膨張したalveoliまで徐々に再分配される。この過程はpendelluftと呼ばれる。
【0062】
エアフロー(のみ)に対する抵抗は、その特定の呼吸に関するフロー対圧力ループを分析することにより、殆どのPIP対Pplat圧力差から分離することができる。pendelluftがある状態において、ループの呼気側は、2つの区別可能なフロー圧力減衰の比ないしはスロープを含む(図5)。圧力が非常に急速に変化している第1のスロープ40(スロープ1、図5の40)は気道が生成する抵抗により、圧力変化の割合がはるかに遅い第2のスロープ42(図5のスロープ2)はガスの再分配から生じる。PIPと第1の減衰比から得られた圧力(Pplat,new)との間の圧力降下における差は、差分の気道圧力がかつてはエアフロー抵抗のみを決定したことを意味する。Rawは、その後、PIPとPplat,newの差を、PIPが到達された瞬間に測定されたフローで割ることにより得られる。
【0063】
別のマーカは、呼息の間に、呼吸器系時定数(抵抗とコンプライアンスの積)変化を見積る呼気波形の数学的モデル化である。この概念は、系の動特性に係るより良い測定を得て、PEEPiを予測するというものである。2つのモデリング技法が探究された。すなわち、1)最小2乗法を用いる系時定数及び肺コンプライアンスの予測、並びに2)指数関数を用いる抵抗のモデル化の2つである。両方法は、類似する原理に依存する。
【0064】
呼吸器系及び患者の人工呼吸器は、電気回路図を用いて表わすことができる(図6)。次の表1は、図6において用いられている用語の定義をリストするものである。
表1
C−肺コンプライアンス
V1−肺ボリューム
f−フロー
Raw−気道抵抗
Rex−人工呼吸器呼息弁抵抗
Pl−肺圧
Paw−気道圧
【0065】
気道の圧力及びフローは、圧力差変換器によって患者の口で測定される。測定されたフローからの対応するガス量(Vnico)は、フローを呼息時間間隔で積分することによって求められる。人工呼吸器呼息抵抗は、呼息終末においてPawをPEEP圧で維持するために、人工呼吸器のPEEP設定に基づいて変化する。
【0066】
図6に関し、以下のように最小2乗法を用いる系時定数及び肺コンプライアンスの予測は、以下のとおりである。
【0067】
呼息の間において、フローは次のように定義される。
【0068】
【数4】
【0069】
肺圧は肺コンプライアンスで割られた肺ボリュームとして表わすことができるので、したがって、フローは次のように書くことができる。
【0070】
【数5】
【0071】
肺ボリュームを表すために整理すると、次のようになる。
【0072】
【数6】
【0073】
ここで、τは時定数であり、以下のように定義される。
【0074】
【数7】
【0075】
肺の機能的残気量(FRC)の上の肺ボリュームは、患者によって吸入された実際の測定されたガス量、PEEPによるボリューム、及び捕捉された全てのガスの合計として近似することができる。
【0076】
【数8】
【0077】
したがって、肺ボリュームは、次のように記述することができる。
【0078】
【数9】
【0079】
PEEPとPEEPiによるボリュームは一定であるので、差分変化のみを観察することによりそれらは方程式から除去することができる。
【0080】
【数10】
【0081】
時定数とコンプライアンスは最小2乗法によって解くことができる。PEEPとPEEPlによるボリュームは次のようにして求めることができる。
【0082】
【数11】
【0083】
そうすると、PEEPi圧は次式から簡単に求めることができる。
【0084】
【数12】
【0085】
指数関数を用いて抵抗をモデル化することは、以下のように行なわれる。
【0086】
呼息の間において、肺圧は次のように記載することができる。
【0087】
【数13】
【0088】
フローは、呼息の間に指数関数的に衰える波形によって次のように記載することができる。
【0089】
【数14】
【0090】
またRawは、次式によって解くことができる。
【0091】
【数15】
【0092】
そうすると、肺圧は次式のように記述することができる。
【0093】
【数16】
【0094】
この方程式から、PEEPi圧は、吸入開始(tonset)と0フローにおける位置(tend)との間の肺圧における差を計算することにより見積ることができる。
【0095】
【数17】
【0096】
吸入開始は先に記載されたように(フロー開始マーカ)又はPi自体を観察することによって検出することができ、それは開始時に突然の勾配変化をする。
【0097】
このPEEPi予測は、1)肺コンプライアンスは呼息の間に固定されたままであり、且つ2)呼息中のフローは指数関数的に衰える、という仮定に基づいてなされている。
この方法の少し異なった変形例は、呼息間に、肺コンプライアンスの代わりに、抵抗が固定され続けると仮定する。この場合、肺圧は、肺コンプライアンスのモデル化によって定義される。
【0098】
ピーク中間呼息フロー比。このマーカは、ピーク呼息フローを、一回換気量の約20%乃至30%、好適には約25%が肺に残る(75%が吐き出された)ときに計算されたフローで割ることにより計算される。フロー制限患者は、非常に急速に衰える高ピークフローを有している。このパラメータは、吐き出されたフローが非常に迅速に衰えるときに大きくなり、フロー制限を示す。
【0099】
ニューラル・ネットワークの説明
人工ニューラル・ネットワークは、人間の脳のような生物学上のニューラル・ネットワークの機能を緩くモデル化するものである。したがって、ニューラル・ネットワークは、相互に連結したニューロンの体系のコンピュータ・シミュレーションとして典型的には実現される。特に、ニューラル・ネットワークは、相互に連結された処理エレメント(PEs:processing elements)の階層的集合である。これらのエレメントはいくつかの層に典型的には配置され、入力層は入力データを受け、隠れ層はデータを変形し、そして出力層が所望出力を生成する。他の態様のニューラル・ネットワークを用いても良い。
【0100】
ニューラル・ネットワークの各処理エレメントは、複数の入力信号すなわちデータ値を受け、これらを処理して単一の出力を求める。入力は、前の層のPEsの出力から又は入力データから受け取られる。PEの出力値は、入力データ値間の関係を明らかにする活動関数ないしは伝達関数として当該技術分野において知られている数学方程式を用いて計算される。当該技術領域において知られているように、活動関数は、閾値、すなわちバイアス要素を含むことができる。低次元のネットワークのエレメントの出力は、高次元のエレメントに入力として提供される。最高次元の一つのエレメント又は複数のエレメントは、最終的な一つのシステム出力又は複数の出力を生成する。
【0101】
本発明の文脈において、ニューラル・ネットワークは、先に述べた数量化された内因性PEEPの非侵襲的見積もりを生成するために用いられるコンピュータ・シミュレーションである。本発明のニューラル・ネットワークは、ネットワークを構築する処理エレメントの数、配列及び結合を明示することによって構築されてもよい。ニューラル・ネットワークの単純な態様は、処理エレメントが完全に結合されたネットワークからなる。図7に示されるように、ニューラル・ネットワークの処理エレメントは、複数の層―気道の圧力及びフローセンサから集められ且つ/又は導出されたパラメータがネットワークへ入力される入力層、処理エレメントで構成される隠れ層、結果としての内因性PEEP予測が生成される出力層―へグループ化される。結合の数、したがって結合重みの数は、各層のエレメントの数によって固定される。
【0102】
ニューラル・ネットワークのための最も一般的なトレーニング方法は、所望出力とネットワーク出力との平均2乗差(平均2乗誤差、MSE:mean squared error)を最小限にすることによって、システム・パラメータ(通常は荷重と呼ばれる)を反復改善することに基づく。入力がニューラル・ネットワークに適用され、このニューラル・ネットワークはその階層構造を通じてデータを伝達し、そして出力が生成される。このネットワーク出力はその入力に対応する所望出力と比較され、誤差が計算される。その後、この誤差はシステムの重みを調節するために用いられ、次回その特定の入力がシステムに適用されたときネットワーク出力は所望出力に近くなる。トレーニング・アルゴリズムと呼ばれる重みを調節可能な方法は多数存在する。図8に示されるように、最も一般的なものは逆伝播と呼ばれ、その誤差に対する各重みの寄与度を計算し、勾配降下学習ルールを各重みに用いるために局所勾配をその誤差から計算することを含んでいる。
【0103】
前述の詳説に基づいて、本発明は、コンピュータ・ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア若しくはそれらの任意の組合せないしサブセットを含む、コンピュータ・プログラミング技術又はコンピュータ・エンジニアリング技術を用いて実施されてもよい。そのような最終的プログラムの全ては、コンピュータ可読コード手段を有し、1つ又は複数のコンピュータ可読メディアに実現し又は提供されてもよく、これによって本発明によるコンピュータ・プログラム産物、すなわち製品が作られる。コンピュータ可読メディアは、例えば固定された(ハード)ドライブ、ディスク、光ディスク、磁気テープ、読取り専用メモリ(ROM)のような半導体メモリ等であっても、あるいはインターネット若しくは他の通信網ないしリンクのような任意の送信/受信メディアであってもよい。コンピュータ・コードを含んでいる製品は、1つのメディアからコードを直接に実行することにより、1つのメディアから別のメディアにコードをコピーすることにより、又はネットワーク上でコードを送信することにより、作成し且つ/又は利用されうる。
【0104】
コンピュータ・サイエンスの技術に熟練している者は、本発明の方法を実現するコンピュータ・システム又はコンピュータ・サブシステムを生成するために、記載されたようにして生成されるソフトウェアと適切な汎用の又は専用のコンピュータ・ハードウェアとを簡単に組み合わせることができるであろう。本発明をなし、用い、又は販売するための機器は、本発明を実現するところの、中央処理装置(CPU)、メモリ、記憶装置、通信リンク及びデバイス、サーバ、I/O装置、又はソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア若しくはそれらの任意の組合せないしサブセットを含む1つ若しくは複数の処理システムによる任意のサブコンポーネントを含む1つ又は複数の処理システムとなりうる(これらに限定されない)。ユーザ入力は、キーボード、マウス、ペン、音声、タッチスクリーン、又は人がコンピュータにデータを入力できるその他の手段から受け取られてもよく、アプリケーション・プログラムのような他のプログラムを介することが含まれていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、人工呼吸器に接続された患者に対する本発明の一側面に係る方法を表す図面である。
【図2】図2aは、PEEPiのない対象におけるフロー/ボリュームループのグラフを表す図面である。図2bは、PEEPiのある対象におけるフロー/ボリュームループのグラフを表す図面である。
【図3】図3は、呼息の間に増加するCO2の時間に沿ったプロットを表す図面である。
【図4】図4aは、PEEPiのない対象におけるCO2フロー/ボリュームループのグラフを表す図面である。図4bは、PEEPiのある対象におけるCO2フロー/ボリュームループのグラフを表す図面である。
【図5】図5は、気道による圧力降下の分離のグラフを表す図面である。
【図6】図6は、人工呼吸器によって提供された支持を受ける場合の患者の呼吸システムを表す、単純化された電気回路を表す図面である。
【図7】図7は、典型的なニューラル・ネットワーク・アーキテクチャを表す図面である。
【図8】図8は、逆伝搬を有する適応可能システムの入力と出力を表す図面である。
【図9】図9−12は、線形及び非線形モデル(ニューラル・ネットワーク)の両方を用い、及びフロー制限を経験している患者及びフロー制限を経験していない患者を含む複数の患者を用い、及びフロー制限を経験していない患者のサブセットを用いて、複数の患者に関して導出された典型的なシステムの結果を示す実験データのグラフを示す図面である。
【図10】図9−12は、線形及び非線形モデル(ニューラル・ネットワーク)の両方を用い、及びフロー制限を経験している患者及びフロー制限を経験していない患者を含む複数の患者を用い、及びフロー制限を経験していない患者のサブセットを用いて、複数の患者に関して導出された典型的なシステムの結果を示す実験データのグラフを示す図面である。
【図11】図9−12は、線形及び非線形モデル(ニューラル・ネットワーク)の両方を用い、及びフロー制限を経験している患者及びフロー制限を経験していない患者を含む複数の患者を用い、及びフロー制限を経験していない患者のサブセットを用いて、複数の患者に関して導出された典型的なシステムの結果を示す実験データのグラフを示す図面である。
【図12】図9−12は、線形及び非線形モデル(ニューラル・ネットワーク)の両方を用い、及びフロー制限を経験している患者及びフロー制限を経験していない患者を含む複数の患者を用い、及びフロー制限を経験していない患者のサブセットを用いて、複数の患者に関して導出された典型的なシステムの結果を示す実験データのグラフを示す図面である。
【符号の説明】
【0106】
10 患者
12 人工呼吸器
14 センサ(フロー、圧力、CO2)
24 ニューラル・ネットワーク
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/582,409号に係る2004年6月24日の出願日の利益を主張するものである。本発明は、一般的には人工呼吸器管理及び呼吸モニタ技術を含む呼吸療法、生理学、及び集中治療医学の分野に関し、特に内因性終末呼気陽圧(PEEPi:intrinsic positive end−expiratory pressure)を一定のマーカを用いて非侵襲的に予測するための方法及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式換気支持は、呼吸不全の患者を支持して治療するための効果的な手段として広く受け入れられている。機械式人工呼吸器は、単に、吸気と呼気を支援するように設計された機械である。多くの場合、換気支持の主たる目的は、人工呼吸器が患者の呼吸仕事量(WOB:work of breathing)の内のいくらか又はすべてを提供することである。この目的は、患者のWOBを正確に測定し滴定することができないという要因もあって、往々にして達成されない。人工呼吸器は、高度に信頼性があり、耐久性があり、精密でなければならない。いくつかある最も現代的な人工呼吸器は電子的に制御されており、その殆どはオペレータによる多くの微小で、けれども異なる、微調整操作を許容するように設計されている。理想的には、オペレータは、人工呼吸器の圧力特性及びフロー出力特性が個々の患者のニーズに添うように適合させるためにこれらの制御装置を用いる。最適化された人工呼吸器設定はまた、換気支持が患者に受け入れられ易くなるようにする役目もする。
【0003】
機械式人工呼吸器の第一世代(1960年代中頃より前)は、(一般的に神経筋疾患又は麻痺といった理由で)自分で呼吸することができない患者のために、肺胞換気を支持して補給酸素を提供するためにのみ設計されていた。これら初期の人工呼吸器は、支持された患者が彼又は彼女自身で呼吸しなかったならば、呼吸するのに必要な仕事量の100%を供給した。患者が自発的に呼吸することを試みたならば、人工呼吸器からの反応が完全に欠如していることは激しい乱れを引き起こし―「人工呼吸器とのファイティング」と称されもした。自発的に呼吸しようとした患者は激しく乱れるようになったので、人工呼吸器との適切な同調を保証するために、患者に多量に鎮静剤を投与するか患者を麻痺させることが一般的慣習であった(いくつかの機関では今も残る)。鎮静状態又は薬剤性筋肉麻痺は、それらが解決するよりも多くの問題を引き起こすことがある。たとえば、多量に鎮静剤を投与され又は麻痺した患者は、全く自発的に呼吸することができず、その結果、人工呼吸器から誤って遮断されると彼等は窒息で即死するであろう。このことは、強化された警戒及び非常に高いレベルのモニタリングを必要とした。さらに重要なことには、麻痺と鎮静状態はまた、患者の呼吸筋群の迅速な劣化、すなわち「非活動性萎縮」として知られるようになった状態をもたらす。逞しく、状態の良い呼吸筋群がないと、臨床医らは、時々、患者の当初の呼吸器系疾患が解決した場合でさえ、彼らの患者を人工呼吸器から解放することを困難ないしは殆ど不可能なことのように思う。これらの潜在的な課題を克服するために、現代の機械式人工呼吸器は、我々が肺に関する病態生理学についての理解を深めるのに応じて遥かに複雑化されるようになった。十分な呼吸筋機能を維持しつつ機械式換気に対する患者の耐性を改善するために、多くの新規なモードが開発されてきた。これらの新規のモードの多くは、自発呼吸、患者トリガ式呼吸や圧支援呼吸、又は患者トリガ式強制呼吸さえも可能にした。これらの圧支援された呼吸は、臨床医によって適切に調節された場合、人工呼吸器が患者とWOBを共有することを可能にする。1970年代初頭までには、ある新規モードの換気は、毎分精密なインターバルで送出するようにプログラムされた強制(機械が送出して制御した)的な呼吸間の時間周期において、患者が自分のペースと大きさで呼吸することを可能にした。このモードは、間欠的強制換気法(IMV:Intermittent Mandatory Ventilation)として知られていた。圧支持換気法(PSV)が数年後に登場し、単独で又はIMVとともに用いることが可能となった。このモードは、各患者によって引き起こされる自発的な吸気努力のための、可変圧力支援を(オペレータにより選択された圧力レベルで)提供した。ひどく害された患者のニーズに取り組む様々な種類の「代替的」換気モードが開発され続けている。
【0004】
人工呼吸器の支持を受ける患者は異なるレベルの援助を必要とする。すなわち、自力で呼吸を維持する能力により、支持レベルを変えることを必要とする者もいれば、換気の完全な制御を必要とする者もいる。提供される人工呼吸器支持を患者によって必要とされるところに一致させることは今日でも大きな課題としてあり続け、あまりにも多くの支持は非活動性萎縮を起こしやすく、あまりにも少ない支持は疲労のサイクルに往々にして至らしめて呼吸不全となる。現在、簡単に利用可能で使い易くて信頼性があり、適切な支持レベルを予測するための方法又は機器は存在しない。問題をさらに複雑にするのは、患者の支持を必要とするレベルが、様々な理由により一日を通じて幅広く変化しうるということである。
【0005】
患者の肺に意図せず捕捉されたガス、すなわちPEEPiは、患者のための適切な支持レベルを見積もろうとする臨床医の最善の試みを阻害する。何年もの間、多くの臨床医はその存在に全く気づかなかった。そのため、それが初めて報告されたとき、(従来のモニタリング技術を用いたときに)視界から隠されているので、「内因性」と、あるいは「神秘的な」とさえ名付けられた。余分な(吐き出されず又は捕捉された)ガスは、次の吸入の始めで患者の肺に残り、新鮮なガスが肺に入ることができるより前に患者の吸気筋群が克服しなければならない吸気閾値負荷(周囲より高いある正圧レベル)を生成する。さらに、吸気筋群は(過膨張により)通常留まっている位置から移動されているので、機械的損害が与えられている。すなわち、吸気筋群の方向が引っ張っていて、もはや力の単位時間当りの最大可能ボリューム変化を生成しない。これはすなわち、動的肺過膨張(DPH:dynamic pulmonary hyperinflation)又はPEEPiの患者が呼吸するには非常に努力しなければならないということを意味する。加えて、人工呼吸器支援を受けている患者、又は、呼吸仕事量の少なくとも一部を生成している患者は、呼吸するためにさらに追加的な努力をしなければならない。すなわち、彼等が人工呼吸器から何らかの支援を受ける前に、彼等は人工呼吸器上で設定されたトリガ圧を克服しなければならない。トリガ圧は、患者の努力を人工呼吸器のレスポンスに同期させるために用いられなければならない(そうでなければ、人工呼吸器はランダムに呼吸を開始し、それらの内のいくらかは患者自身の努力と抗い、ときには打ち消すかもしれないであろう)。検出不能で定量するのが困難なPEEPiレベルと人工呼吸器のトリガ設定とが相俟って、耐えられない追加的仕事量をたびたび生成する。追加的仕事は、多くの場合、特に不十分な呼吸筋機能を備えた患者においては、吸気筋疲労を生成するのに甚だ十分である。自力で呼吸しようとしない患者にとって、検出されていないPEEPiは同じくらいにまったく問題である。それが患者の胸に生成する追加圧は、胸への静脈血の戻りを減少することができ、これは次には心拍出量を減少し、結局、患者の血圧を劇的に減少しうる。肺の中に捕捉された多すぎるガスはまた、過膨張及び構造的損傷を起こしやすく、肺の破損さえも引き起こすことがある。研究によって、PEEPiが一般に考えられているよりも遥かに頻繁に生じることが示された。人工呼吸器依存のCOPD患者において、PEEPiが患者の総換気仕事量の大きな割合を占めることも示された。PEEPiを減少し又は除去することは、そうすると、COPDの急性増悪の患者にとって重要な臨床的影響を及ぼしうる。明らかに、PEEPiを検出して正確に測定することは、害された患者を処置する際に非常に重要な方途である。
【0006】
今日の集中治療室(ICU:intensive care unit)では、最先端の人工呼吸器は患者たちのPEEPiを測定することはできるが、しかし彼等が自力で呼吸しない場合に限られる―つまり、測定の際のどのような動き又は自発的努力でもその測定を無効にするであろう。自発的に呼吸する人工呼吸器に支援された患者等は、事実上彼等のPEEPiを正確に測定することができない。そうするためには、食道バルーンの配置又は胸部インピーダンス測定器の使用が必要である。両アプローチは、高価であり、高度に技術を要し且つ非常に時間を消費する。通例、これらのアプローチは研究者によって用いられているに止まる。食道バルーンは最も一般に使用されるアプローチである。というのも、それは最も高価でなく、バルーンは他の進行中で必要なモニタ又は治療に干渉しにくい傾向があるからである。その概念は、適切に膨張されて配置された、患者の食道に挿入されるバルーン先端カテーテルの使用を伴う。適切に配置された場合、それは食道内圧(Pes)を測定するために用いられる。一定の食道の場所(すべての場所ではない)において、(絶対圧の値は恐らく同じになら「ない」が)食道内の圧力変化が胸膜腔に生じるものと同じ振れ幅であることが示された。呼気フローを0のフロー軸線にちょうど交わる点(肺の中へのフローの開始の直前の瞬間)へ急激に持って来るのに必要とされる食道内圧における(休止、又はベースラインからの)変化は、PEEPiを表わし、動的PEEPi(PEEPi,dyn)とも呼ばれる。
【0007】
食道バルーン技術は、臨床医からこれまで好評を得ることができなかった。バルーンは、配置するのが難しく、栄養管のような重要な器具に干渉することがあり、不正確で誤解を招く測定を防ぐために、適切に配置して膨張しなければならない。さらに食道バルーンの使用手順を複雑にしているのは、信号品質である。頻繁な呑込み又は偶然な食道痙攣は、識別するのが難しいことがあり、さらには信号を一時的に役立たなくしてしまう。加えて、食道は心臓のちょうど前部に位置しており、信号は、その結果、鼓動する心臓に付随して起こる望ましくない圧力変動を除去するための「重いフィルタ」を用いることなく解釈することが往々にして困難となる。胸部インピーダンス装置は、高価であるだけなく、使いにくく、(研究者次第で)一貫して反復可能でないかもしれず、それは、絶対不可欠の心電図モニタリング線、重要な静脈内カテーテル、及び他の重要な装置にしばしば干渉する。これらの理由により、食道バルーン及び胸部インピーダンス装置は、研究用ツールとして止まり続けるであろうと思われる。
【0008】
自発的に呼吸しない患者のために、PEEPiは、適切に計時された、終末呼吸の、気道閉塞マニューバを用いて測定される。これは、呼気弁を突然に閉塞すること(患者の吐き出されたガスによって通常採られる経路のブロッキング)を伴う。呼気弁の閉塞は、(患者の人工呼吸器に取り付けられている)呼吸路及び患者の肺において、未だ患者の肺に残っているかもしれないすべての追加的ガスを捕捉する。(呼吸路において測定された)圧力が安定する場合であって、それが通常のベースライン圧力(終末呼気の圧力)より上にあるとき、患者はPEEPiを有しているという。閉塞技術は自発的に呼吸する患者に対して、潜在的には、用いることができるかもしれない。しかし、そうすることは、息を止めることを患者に要求し、呼吸路における圧力が平衡状態に達するまで、呼吸する試みをまったく行わせず、動くことさえもまったく行わせない。不幸にも、患者が極度に病気であり、意識不明であり、多量に鎮静剤を投与されており、又はPEEPiによって課された追加的仕事量に対して呼吸しようと努力している場合には、そのレベルの協力は殆ど存在しない。
【0009】
米国特許第6,588,422号は、とりわけ肺疾患による呼吸不全のための換気支持の分野に属し、特にPEEPiを取り除くために十分な終末呼気圧を自動的に提供することに属する。この´422特許は、動的な気道圧迫を十分に防ぎ且つ最小量の外部呼気圧力を備えたPEEPiを取り除くように、換気支持の間に呼気の圧力の連続的且つ自動的な調整を提供しようとするものである。この発明の目的は、呼気相の間に人工呼吸器によって加えられた外圧を変えることを伴っており、何らかの方法によってPEEPiを測定することも定量化することもない。また、人がこの特許を用いてどのようにPEEPiを測定することができるのかが自明でない。
【0010】
また、米国特許第6,240,920号は、吸気時の患者の自発的な試み及び/又は吸気時の自発的な試みにおける患者の呼吸努力と関係する少なくとも1つのパラメータを決定する方法を開示する。´920特許において開示されているものもまた、PEEPiに抗って対処する潜在的方法である。つまり、それは、患者の実際のPEEPiレベルを測定し又は定量する方法を提供しない。
【0011】
(換気支持を受けている自発的に呼吸する患者において機能する)PEEPiを非侵襲的に測定する手段を開発することは、多くの因子の分だけ複雑になる。第1に、肺胞のレベルで捕捉されたガスは、殆ど常に非均質的に両方の肺にわたって分配されており、これによって正確なPEEPiを測定することを困難にする。これは、PEEPiのすべての測定が精々2つの肺の平均であることを意味し、それらがあたかも同一であるかのようにみなされる。また、超過圧力(捕捉された空気)は早まって虚脱した気道の後ろに恐らく隠されており―それを事実上検出できなくする。最後に、患者の呼吸しようとする努力は、呼吸対呼吸の方式で変化するアーティファクトを生成する。そのようなアーティファクトは、理想的な受動圧力波形から分離するのが難しいかもしれない。
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,588,422号公報
【0013】
【特許文献2】米国特許第6,240,920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
当該技術分野には、特に自発的に呼吸する患者において、非侵襲的に、PEEPiを正確に検出して定量することに対するニーズがある。患者の内因性PEEPを非侵襲的に決定することは、1)臨床医に患者の状態をより良く知らせ、患者の呼吸療法をより良く管理させ、2)患者分析及び生理学的なモニタリング/モデリングを改善し、3)侵襲的なPEEPi測定から生じる、患者の不快感を最小限にし(非侵襲)、且つ臨床医の介入を最小限にする(閉塞の必要が無い)。その測定は、臨床医たちに対して、彼らが患者の呼吸療法に関するより良い決定を下すことを可能にする、正確で連続的な情報を提供するであろう。本発明は、このニーズに取り組むことを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
大まかにいうと、本発明は、PEEPiを非侵襲的に予測する(見積る)方法及び機器を提供する。PEEPiの存在は、これは往々にして検出されていないままであるが、新鮮なガスが肺に入ることができる前に患者の吸気筋群が克服しなければならない吸気閾値負荷(周囲より高い正圧レベル)を生成する。加えて、過度のレベルのPEEPiは、心機能障害、圧外傷(過度の肺容量に付随して起こる構造的な肺損傷)のリスク増加、吸気筋の圧生成能力の削減、呼吸仕事量の異常な増加に至る場合がある。
【0016】
発明者らは、PEEPiを非侵襲的に検出して定量するために、複数のインジケータを革新的に開発した。これらのマーカのうちのいくつかはPEEPiを予測するために単独で用いることができるが、いくつかのマーカは主として検出に適し、その一方でいくつかのものは定量化に最適であることが観察される。さらに、一定のマーカが特定グループの被験者上で最も良く機能する点にも気づく。そこで、本発明の一側面では、PEEPiの予測を改善するためにこれらのマーカのいくつかを同時に用いることが示されており、広範囲の患者に対してその実施可能性を広げる。
【0017】
主要な利点は、当該方法が非侵襲性であり、呼吸対呼吸であって且つリアルタイムであるということである。したがって、患者にカテーテルを挿入する必要はない。その方法は、次の1つ又は複数を含め、被験者の気道で当該測定がなされることのみを要する:口で測定された、気道圧力、呼気終末CO2、及び気流。これらの気道測定は殆どのICUにおいて―人工呼吸器支持を受けている間に患者をモニタリングして維持するために広く用いられている一般的な呼吸装置の何れかを用いることによって―慣例的にモニタリングされている。
【0018】
閉塞方法は本質的には非侵襲的であるが、それはしかしながら潜在的に不快な「介入」を必要とし、自発的に呼吸する患者にとっては機能しない。この方法は、これらの障害の何れの影響も受けない。患者の気道を閉塞する必要はなく、それは介入なく連続的に決定されうる。
【0019】
該アプローチはいくつかの異なったPEEPiマーカの測定を含んでおり、続いてこれらは専門的な数学モデル(たとえばニューラル・ネットワーク)に供給され、そしてこのモデルがこれらの値に基づいてPEEPi値を予測する。そのモデルは、線形モデル(例えば多変量回帰)でも非線形モデル(例えばニューラル・ネットワーク、ファジィ論理など)でも良い。
【0020】
PEEPiマーカないしインジケータには次のものが含まれる。
【0021】
フロー/ボリューム軌跡―フロー/ボリューム波形をプロットする概念は、多くの患者において機能する有用な定量化マーカであることが実験的に証明されている。
【0022】
CO2フロー/ボリューム軌跡―このマーカは、PEEPiのインジケータであることが実験的に証明されている。PEEPが高いレベルの患者を同定するのに、また早期の気道虚脱又は呼気フロー制限で苦しむ人にとって特に有用である。
【0023】
CO2/ボリューム比―このマーカは、厳しい呼気フロー制限を示す患者においてPEEPiを発見するためのインジケータであることが実験的に証明されている。
【0024】
吸気努力開始時フロー―このマーカは、PEEPiを定量するのに有用であることが実験的に証明されている。
【0025】
患者の呼気波形のモデリング―これは2つの異なる方法を用いて成し遂げることができる:1)最小2乗法、及び2)指数関数的モデル化。両方法は、PEEPiを定量するのに有用であることが実験的に証明されている。
【0026】
ピーク中間呼息フロー比:フロー制限患者は、非常に急速に衰える高ピークのフローを有する場合がある。中間の呼息フローが低い場合、このパラメータは高く、存在するであろうフロー制限及び結果としてのPEEPiを示す。
【0027】
低呼息フロー時間:フロー制限患者は、低フローで生じる呼気割合が異常に高い場合がある。このパラメータは、低フローで生じる呼気の割合を(ボリューム又は時間によって)決定する。
【0028】
カプノグラフ波形形状:フロー制限患者は、通常の患者に対して特定可能な程度に独特のCO2波形を有する場合がある。特に、フェーズIII勾配(CO2の急な立ち上がり時間後の勾配)は、水平でなく、呼気の全体にわたって上昇し、持続的な低フロー呼気を示す。
【0029】
負呼気圧又は増加呼気勾配:患者の呼気フローは、呼息間の圧力勾配(呼吸路における圧、肺間の圧力差)に正比例するに違いない。呼息の間に(呼吸路における)圧力がない場合、その勾配は、呼吸路において、呼息フェーズの間に、短い時間負圧を印加することにより良く増加できる場合がある。呼息の間に追加的な圧力を受けている患者に関しては、その勾配は追加圧力を短時間除去することにより増加しうる。呼気フローが増加された勾配に応じて増加しない場合、患者は呼気フロー制限で苦しみ、例外的にPEEPiを発展させる傾向がある。
【0030】
上記で言及されたマーカに加えて、これらの及び/又は潜在的には他のPEEPiのためのマーカの2つ以上を、PEEPiを予測する数学的モデル(ニューラル・ネットワークのように、直線又は非線形)への入力として用いる概念は新規且つ独特である。2つ以上のマーカ(上に言及されたもの及び他のもの)を用いることにより提供される一体化された情報は、PEEPiのより正確な見積もりへと帰着しうる。
【0031】
本発明の一側面において、該方法は、標準の呼吸モニタによって集められたパラメータのような、非侵襲的に集められた所定のパラメータを用いて患者のPEEPiの数学的モデルを生成することを備える。呼吸モニタは、典型的には時間の関数として患者に流入出するガスのフロー及び圧力を測定する気道圧力センサ及び気道フローセンサを含む。これらの時間対フロー又は圧力の波形から、患者の呼吸及び/又は患者の人工呼吸器との相互作用に関する異なる側面を特徴付けるのに用いられる、種々のパラメータが選択的に導き出される。これらのパラメータは、内因性PEEPを正確に見積るために抽出された情報を含む。
【0032】
より具体的には、本発明の当該方法は、患者及び/又は人工呼吸器に取り付けられた前述のセンサ及び他のものから導き出された複数のパラメータの組合せを用いて実PEEPiを見積る方法を備える。PEEPiパラメータは、フロー/ボリューム軌跡、CO2フロー/ボリューム軌跡、CO2/ボリューム比、フロー開始、呼気波形上モデリング、及びピーク中間呼息フロー比を含め(これらに限定されない)、肺における超過圧力の量を表わす任意のパラメータであってよい。
【0033】
この方法は、ニューラル・ネットワーク、ファジィ論理、混合エキスパート、又は多項式モデルを含め(これらに限定されない)、パラメータの線形一次結合又はパラメータの非線形結合を用いることを含む。さらに、異なるサブセットの患者のPEEPiを予測するために複数の異なるモデルを用いることができる。これらのサブセットは、患者の条件(病態生理学)、患者の生理学的なパラメータ(肺抵抗及び肺コンプライアンス)、又は他のパラメータを含め(これらに限定されない)、種々の手段によって決定することができる。
【0034】
本発明の一側面において、患者のPEEPiを見積る方法は、ニューラル・ネットワークの使用を備える。そこでは、ニューラル・ネットワークは、入力データに基づいて患者に関するPEEPi情報を提供する。入力データは、次のパラメータの少なくとも1つを含む:フロー/ボリューム軌跡、CO2フロー/ボリューム軌跡、C02/ボリューム比、フロー開始、呼気波形上モデリング、ピーク中間呼息フロー比、低フロー呼息時間、及びカプノグラフ波形形状。そこでは、内因性PEEP情報は出力変数として提供される。
【0035】
上記で言及された方法において、ニューラル・ネットワークは、上記で言及された入力情報を備えたティーチングデータを得るのに慣れているテスト集団の患者から臨床データを集めることによりトレーニングを受け、ニューラル・ネットワークにティーチングデータを入力し、これによってニューラル・ネットワークは内因性PEEPに対応する出力変数を提供するようにトレーニングされる。
【0036】
患者の内因性PEEPを見積るシステムとして、当該システムは、テスト集団の患者の臨床試験からの得られた1次ティーチングデータとしてまず受け取るニューラル・ネットワークを備え、それによってニューラル・ネットワークはティーチングデータを学習し、内因性PEEPのための出力変数を提供するようにトレーニングされ、前記ニューラル・ネットワークが患者から得られた上記で言及されたパラメータの形で患者入力データを受けたとき、ニューラル・ネットワークがその患者のための内因性PEEPを見積る出力変数を提供するようになる。
【0037】
この発明は、次のものを含む多くの方法において実施することができる:(コンピュータ処理システム又はデータベース・システムを含む)システムとして、(入力データを収集して処理するコンピュータ化された方法を含む)方法として、及び出力を提供するためにかかるデータを評価する方法、機器、コンピュータ可読メディア、コンピュータ・プログラム製品、又はコンピュータ可読メモリに有形的に固定されたデータ構造として。本発明に係るいくつかの実施形態は、下記で議論する。
【0038】
システムとして、本発明の一実施形態は、入出力装置を有するプロセッサ・ユニットを含む。そのプロセッサ・ユニットは、入力パラメータを受け取り、入力を処理し、PEEPiに対応する出力を提供するように作動する。この出力は、その後、人工呼吸器のような外部装置を制御するために用いられうる。データの処理は、ニューラル・ネットワーク、並列分散処理システム、神経形態学的システムなどのような種々の手段によって遂行することができる。
【0039】
PEEPiを予測する方法として、当該方法は、予め定められた入力変数(パラメータ)の処理を含み、好ましくはニューラル・ネットワークの使用を通じてなされる。
【0040】
プログラム指令を含んでいるコンピュータ可読メディアとして、本発明の一実施形態は次のものを含む:入力変数を受け、入力を処理し、そしてPEEPiを示す出力を提供するコンピュータ可読コード装置。好ましい実施形態において、処理は、ニューラル・ネットワークを利用することを備える。当該方法は、得られた出力に応じて人工呼吸器を制御することをさらに含んでいてもよい。
【0041】
本発明の方法は、コードを有しているコンピュータ可読メディアを備えたコンピュータ・プログラム製品として実施されてもよい。そのプログラム製品は、プログラム、及びそのプログラムを保持する信号保持メディアを含む。
【0042】
機器として、本発明は、少なくとも1つのプロセッサ、該プロセッサに接続されたメモリ、及び該メモリ内に存在して本発明の方法を実現するプログラムを含むことができる。
【0043】
本発明の他の側面及び利点は、本発明の原理を具体例によって図示する添付の図面に関連してなされる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
上記で述べられた方法並びに本発明の他の利点及び目的を得るために、上記で概説された発明についてのより詳細な説明が、それの具体的な実施形態であって添付の図面において図示されているものへ言及することによって与えられるであろう。これらの図面は本発明の典型的な実施形態のみを表し、したがってその範囲を限定するものと考えるべきでないことを理解されたい。本発明は、添付の図面を用いることを通じて追加的な具体性及び詳細によって記載及び説明されるであろう。
【0045】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を記載する。
【0046】
図1に表された実施形態において、呼吸支持を必要としており人工呼吸器12に接続された患者10は、気道のフロー及び圧力センサ14と、恐らくは標準人工呼吸器回路16のYピースで取り付けられた二酸化炭素検出器と、を有するであろう。これらのセンサは、患者へ流入出するガスにおけるフロー、圧力及び二酸化炭素分圧を測定する。これらの元信号18は、信号を綺麗にし、センサバイアスやオフセット等を除去するために、アナログ及びデジタル信号処理により、信号プロセッサ20で前処理されてもよい。これらの信号は、次に、パラメータ抽出モジュール22で処理され、当該フロー、圧力及びCO2データから様々な他のパラメータを計算し、PEEPiを示すマーカないしはインジケータを同定する。本発明の一側面において、人工呼吸器がコントローラ26を通じて制御可能となるように、ニューラル・ネットワーク24がパラメータをモデル化するために提供されてもよい。
【0047】
PEEPi測定に対するアプローチは、何人かの異なる患者のパラメータをリアルタイムでモニタリングすることに依存する。この概念は、PEEPiの存在を示す「いくつかのマーカ」を測定して、ニューラル・ネットワーク、線形回帰モデル、又はこれらに類するものにそれらの適格なマーカを供給することを伴う。PEEPiに対する値は、その後、ニューラル・ネットワーク、線形多変量回帰モデリング、又は非線形多変量回帰モデリングと同種のものとして最も良く記載される方法を利用することによって、それらの検出された異なるマーカのすべてを用いて予測される。ニューラル・ネットワーク・モデルが用いられる場合、ネットワークはPEEPiの程度―食道バルーンを用いて可及的に正確に測定されたレベル―が変化して苦しんでいる患者から収集された実際の臨床データを用いることにより「予めトレーニングされる」。食道バルーン技術を介して測定されたPEEPi(PEEPi,pes)は、基準、すなわち真のPEEPiとみなされる。PEEPi,pesは、ニューラル・ネットワークのトレーニングに加え、アプローチの妥当性検査のために用いられる。ニューラル・ネットワークは、入力パラメータとしてPEEPiマーカを用いることにより、実際のPEEPiを予測するためにトレーニングされる。
【0048】
PEEPiマーカの例には次のものが含まれる:
・終末呼息をマーキングする突然のフロー反転。
・終末呼息における頻繁なボリューム・チャネルの「リセット」。現代のボリューム測定器は各呼吸でゼロのボリュームからスタートするので、これが生じる。
・少なくとも2つの区別可能な呼気フロー減衰パターンに伴われた呼気フローの開始でのスパイク。
・呼気時間に関係しない終末呼気二酸化炭素(ETCO2:end−tidal carbon dioxide)の連続的増加。
・高い全呼吸器系抵抗及びコンプライアンスと、加えて高呼吸数又は高一回換気量。全抵抗とコンプライアンスの積は肺の時定数と等しいので(Vrの上のボリュームの60%が1つの時定数のインターバルにおいて吐き出されるであろう)、時定数が大きいほど、患者がPEEPiを示すであろう可能性は大きくなる。急速に呼吸する場合又は大きな息をつく場合は特にそうである。
【0049】
発明のバックボーンを形成し、PEEPiの振れ幅及びタイプと関係する情報を提供する追加的マーカが発見された。これらのマーカは、フロー/ボリューム軌跡、二酸化炭素(CO2)フロー/ボリューム軌跡、CO2/ボリューム比、吸入開始時の呼気フロー、及び呼気波形上でのモデリング、に基づいてPEEPiを見積る。これらのマーカの多くは独特で、PEEPiを測定するためにそれら単独で用いることができる。しかしながら、それらのマーカの2つ以上の組合せは、よりロバストでより正確な手段を提供しうる。
【0050】
ここで、図2a及び図2bを参照すると、各呼吸での呼気のフロー及びボリュームを分析することにより、フロー/ボリューム軌跡が得られることが分かる。通常の状態の下では、呼気フローに対するボリュームのプロットは、およそ0でボリューム軸29と交差する殆ど真っすぐな線28となる(図2a)。すなわち、終末呼息では、肺から出て来るガスのボリュームは0である。フロー/ボリューム軌跡の勾配は、肺の平均時定数と関係する。PEEPiがある患者についての典型的なフロー/ボリュームのループは、図2bにおいて示される。この特定の場合において、軌跡線30は、0よりずっと下でボリューム軸29と交差する。これは、呼息フェーズが継続されたならば、追加的な0.24L(Y軸切片27)のガスが肺から出されたであろうことを示す。追加的なガス量を患者の呼吸コンプライアンスで割ることにより、PEEPi圧力の定量可能な推論が与えられる。
【0051】
CO2フロー/ボリューム軌跡は、吐き出されたフローの代わりに図3に示されるようにCO2フロー36がプロットされる点を除き、フロー/ボリューム軌跡に類似する。CO2フローは、吐き出されたCO2と吐き出されたフローを掛け合わせることにより得られる。何人かのPEEPi患者において、吐き出されたCO2は、非常に小さい呼息フローがある場合に上昇し続ける傾向がある(図3)。CO2フロー・パラメータは、この増加CO2トレンド38を捉え、図4bにおいて示されるようにボリュームに対してプロットされたときに、PEEPi患者のためのボリューム軸33に大体平行する軌跡34となる。図4a及び図4bは、それぞれ、PEEPiを有している患者と有していない患者との対比を示す。図4aにおいて示されるように非PEEPi患者において、軌跡32は、ボリューム33とフロー35軸が出会う点の近くで最終的には交差する。軌跡32、34の勾配は、PEEPiの厳しさに対する徴候を提供することができ、図4bにおいて示されているような急な勾配は厳しいPEEPiを示し、図4aにおいて示されているような緩やかな勾配は低レベルのPEEPiを示す。
【0052】
別のPEEPiマーカであるCO2/ボリューム比は、吐き出されたCO2を吐き出されたボリュームで割った分数値である。最大の吐き出されたCO2値及び呼息間のボリューム変化が各呼吸について求められる。その比は以下によって与えられる:
【0053】
【数1】
【0054】
PEEPi患者は、PEEPiを有していない患者に対して、より大きな比の値を有していることが観察された。
【0055】
追加的PEEPiマーカの4つめ、すなわち吸入開始時呼気フローは、吸入努力の開始を捜し出すことにより、終末呼息の精密なモーメントで吐き出されたフロー割合を捕らえようと試みる。ガスが吸入始めで肺からまだ流れ出ている場合、このガス・フローを駆動する唯一の力は、まさにこの瞬間において、PEEPiであると推論することができる。
【0056】
吸入始めのPEEPi(PEEPi,onset)は、吸入開始時の呼気エアフロー(flowonset)と肺の気道によって生成されたエアフローに対する抵抗(Raw)との積を用いて見積られる。
【0057】
【数2】
【0058】
全呼吸抵抗(Rtotal)は、強制呼吸―これらは、患者でなくオペレータが、ガスフロー比、ガスのフローパターン、一回換気量及びそれらが1分当りに伝えられる頻度を決定する呼吸である―を伝える時に、終末吸気休止(通常、この休止は0.5秒以上続く)を生成するように患者の人工呼吸器をプログラムすることにより伝統的に決定される。各強制呼吸の間に、ピーク膨張圧(PIP:peak inflation pressure)とプラトー圧(Pplat)との間の差が決定される。この差は、PIPが観察された瞬間に、測定されたエアフローで割られる。また、この測定は、正方形フローパターンを用いて、60リッター/分(1リッター/秒)で又はその極めて近くでプログラムされたガスフローで行なわれるのが伝統的である。これが行われるのは、ガスが正確に60リットル/分(1リットル/秒)で流れている場合の(cm H2Oで測定される)圧力降下として抵抗が定義されるからである。記号を用いて、抵抗は以下のように決定される。
【0059】
【数3】
【0060】
上に定義されたように、このようにして求められた抵抗は、呼気器系の全抵抗を表わし、両方の肺が似たような抵抗値を有している限り受容できる。
【0061】
終末吸気休止の間、ガスは肺から漏れることができないので、それは過膨張したalveoliから不足膨張したalveoliまで徐々に再分配される。この過程はpendelluftと呼ばれる。
【0062】
エアフロー(のみ)に対する抵抗は、その特定の呼吸に関するフロー対圧力ループを分析することにより、殆どのPIP対Pplat圧力差から分離することができる。pendelluftがある状態において、ループの呼気側は、2つの区別可能なフロー圧力減衰の比ないしはスロープを含む(図5)。圧力が非常に急速に変化している第1のスロープ40(スロープ1、図5の40)は気道が生成する抵抗により、圧力変化の割合がはるかに遅い第2のスロープ42(図5のスロープ2)はガスの再分配から生じる。PIPと第1の減衰比から得られた圧力(Pplat,new)との間の圧力降下における差は、差分の気道圧力がかつてはエアフロー抵抗のみを決定したことを意味する。Rawは、その後、PIPとPplat,newの差を、PIPが到達された瞬間に測定されたフローで割ることにより得られる。
【0063】
別のマーカは、呼息の間に、呼吸器系時定数(抵抗とコンプライアンスの積)変化を見積る呼気波形の数学的モデル化である。この概念は、系の動特性に係るより良い測定を得て、PEEPiを予測するというものである。2つのモデリング技法が探究された。すなわち、1)最小2乗法を用いる系時定数及び肺コンプライアンスの予測、並びに2)指数関数を用いる抵抗のモデル化の2つである。両方法は、類似する原理に依存する。
【0064】
呼吸器系及び患者の人工呼吸器は、電気回路図を用いて表わすことができる(図6)。次の表1は、図6において用いられている用語の定義をリストするものである。
表1
C−肺コンプライアンス
V1−肺ボリューム
f−フロー
Raw−気道抵抗
Rex−人工呼吸器呼息弁抵抗
Pl−肺圧
Paw−気道圧
【0065】
気道の圧力及びフローは、圧力差変換器によって患者の口で測定される。測定されたフローからの対応するガス量(Vnico)は、フローを呼息時間間隔で積分することによって求められる。人工呼吸器呼息抵抗は、呼息終末においてPawをPEEP圧で維持するために、人工呼吸器のPEEP設定に基づいて変化する。
【0066】
図6に関し、以下のように最小2乗法を用いる系時定数及び肺コンプライアンスの予測は、以下のとおりである。
【0067】
呼息の間において、フローは次のように定義される。
【0068】
【数4】
【0069】
肺圧は肺コンプライアンスで割られた肺ボリュームとして表わすことができるので、したがって、フローは次のように書くことができる。
【0070】
【数5】
【0071】
肺ボリュームを表すために整理すると、次のようになる。
【0072】
【数6】
【0073】
ここで、τは時定数であり、以下のように定義される。
【0074】
【数7】
【0075】
肺の機能的残気量(FRC)の上の肺ボリュームは、患者によって吸入された実際の測定されたガス量、PEEPによるボリューム、及び捕捉された全てのガスの合計として近似することができる。
【0076】
【数8】
【0077】
したがって、肺ボリュームは、次のように記述することができる。
【0078】
【数9】
【0079】
PEEPとPEEPiによるボリュームは一定であるので、差分変化のみを観察することによりそれらは方程式から除去することができる。
【0080】
【数10】
【0081】
時定数とコンプライアンスは最小2乗法によって解くことができる。PEEPとPEEPlによるボリュームは次のようにして求めることができる。
【0082】
【数11】
【0083】
そうすると、PEEPi圧は次式から簡単に求めることができる。
【0084】
【数12】
【0085】
指数関数を用いて抵抗をモデル化することは、以下のように行なわれる。
【0086】
呼息の間において、肺圧は次のように記載することができる。
【0087】
【数13】
【0088】
フローは、呼息の間に指数関数的に衰える波形によって次のように記載することができる。
【0089】
【数14】
【0090】
またRawは、次式によって解くことができる。
【0091】
【数15】
【0092】
そうすると、肺圧は次式のように記述することができる。
【0093】
【数16】
【0094】
この方程式から、PEEPi圧は、吸入開始(tonset)と0フローにおける位置(tend)との間の肺圧における差を計算することにより見積ることができる。
【0095】
【数17】
【0096】
吸入開始は先に記載されたように(フロー開始マーカ)又はPi自体を観察することによって検出することができ、それは開始時に突然の勾配変化をする。
【0097】
このPEEPi予測は、1)肺コンプライアンスは呼息の間に固定されたままであり、且つ2)呼息中のフローは指数関数的に衰える、という仮定に基づいてなされている。
この方法の少し異なった変形例は、呼息間に、肺コンプライアンスの代わりに、抵抗が固定され続けると仮定する。この場合、肺圧は、肺コンプライアンスのモデル化によって定義される。
【0098】
ピーク中間呼息フロー比。このマーカは、ピーク呼息フローを、一回換気量の約20%乃至30%、好適には約25%が肺に残る(75%が吐き出された)ときに計算されたフローで割ることにより計算される。フロー制限患者は、非常に急速に衰える高ピークフローを有している。このパラメータは、吐き出されたフローが非常に迅速に衰えるときに大きくなり、フロー制限を示す。
【0099】
ニューラル・ネットワークの説明
人工ニューラル・ネットワークは、人間の脳のような生物学上のニューラル・ネットワークの機能を緩くモデル化するものである。したがって、ニューラル・ネットワークは、相互に連結したニューロンの体系のコンピュータ・シミュレーションとして典型的には実現される。特に、ニューラル・ネットワークは、相互に連結された処理エレメント(PEs:processing elements)の階層的集合である。これらのエレメントはいくつかの層に典型的には配置され、入力層は入力データを受け、隠れ層はデータを変形し、そして出力層が所望出力を生成する。他の態様のニューラル・ネットワークを用いても良い。
【0100】
ニューラル・ネットワークの各処理エレメントは、複数の入力信号すなわちデータ値を受け、これらを処理して単一の出力を求める。入力は、前の層のPEsの出力から又は入力データから受け取られる。PEの出力値は、入力データ値間の関係を明らかにする活動関数ないしは伝達関数として当該技術分野において知られている数学方程式を用いて計算される。当該技術領域において知られているように、活動関数は、閾値、すなわちバイアス要素を含むことができる。低次元のネットワークのエレメントの出力は、高次元のエレメントに入力として提供される。最高次元の一つのエレメント又は複数のエレメントは、最終的な一つのシステム出力又は複数の出力を生成する。
【0101】
本発明の文脈において、ニューラル・ネットワークは、先に述べた数量化された内因性PEEPの非侵襲的見積もりを生成するために用いられるコンピュータ・シミュレーションである。本発明のニューラル・ネットワークは、ネットワークを構築する処理エレメントの数、配列及び結合を明示することによって構築されてもよい。ニューラル・ネットワークの単純な態様は、処理エレメントが完全に結合されたネットワークからなる。図7に示されるように、ニューラル・ネットワークの処理エレメントは、複数の層―気道の圧力及びフローセンサから集められ且つ/又は導出されたパラメータがネットワークへ入力される入力層、処理エレメントで構成される隠れ層、結果としての内因性PEEP予測が生成される出力層―へグループ化される。結合の数、したがって結合重みの数は、各層のエレメントの数によって固定される。
【0102】
ニューラル・ネットワークのための最も一般的なトレーニング方法は、所望出力とネットワーク出力との平均2乗差(平均2乗誤差、MSE:mean squared error)を最小限にすることによって、システム・パラメータ(通常は荷重と呼ばれる)を反復改善することに基づく。入力がニューラル・ネットワークに適用され、このニューラル・ネットワークはその階層構造を通じてデータを伝達し、そして出力が生成される。このネットワーク出力はその入力に対応する所望出力と比較され、誤差が計算される。その後、この誤差はシステムの重みを調節するために用いられ、次回その特定の入力がシステムに適用されたときネットワーク出力は所望出力に近くなる。トレーニング・アルゴリズムと呼ばれる重みを調節可能な方法は多数存在する。図8に示されるように、最も一般的なものは逆伝播と呼ばれ、その誤差に対する各重みの寄与度を計算し、勾配降下学習ルールを各重みに用いるために局所勾配をその誤差から計算することを含んでいる。
【0103】
前述の詳説に基づいて、本発明は、コンピュータ・ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア若しくはそれらの任意の組合せないしサブセットを含む、コンピュータ・プログラミング技術又はコンピュータ・エンジニアリング技術を用いて実施されてもよい。そのような最終的プログラムの全ては、コンピュータ可読コード手段を有し、1つ又は複数のコンピュータ可読メディアに実現し又は提供されてもよく、これによって本発明によるコンピュータ・プログラム産物、すなわち製品が作られる。コンピュータ可読メディアは、例えば固定された(ハード)ドライブ、ディスク、光ディスク、磁気テープ、読取り専用メモリ(ROM)のような半導体メモリ等であっても、あるいはインターネット若しくは他の通信網ないしリンクのような任意の送信/受信メディアであってもよい。コンピュータ・コードを含んでいる製品は、1つのメディアからコードを直接に実行することにより、1つのメディアから別のメディアにコードをコピーすることにより、又はネットワーク上でコードを送信することにより、作成し且つ/又は利用されうる。
【0104】
コンピュータ・サイエンスの技術に熟練している者は、本発明の方法を実現するコンピュータ・システム又はコンピュータ・サブシステムを生成するために、記載されたようにして生成されるソフトウェアと適切な汎用の又は専用のコンピュータ・ハードウェアとを簡単に組み合わせることができるであろう。本発明をなし、用い、又は販売するための機器は、本発明を実現するところの、中央処理装置(CPU)、メモリ、記憶装置、通信リンク及びデバイス、サーバ、I/O装置、又はソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア若しくはそれらの任意の組合せないしサブセットを含む1つ若しくは複数の処理システムによる任意のサブコンポーネントを含む1つ又は複数の処理システムとなりうる(これらに限定されない)。ユーザ入力は、キーボード、マウス、ペン、音声、タッチスクリーン、又は人がコンピュータにデータを入力できるその他の手段から受け取られてもよく、アプリケーション・プログラムのような他のプログラムを介することが含まれていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、人工呼吸器に接続された患者に対する本発明の一側面に係る方法を表す図面である。
【図2】図2aは、PEEPiのない対象におけるフロー/ボリュームループのグラフを表す図面である。図2bは、PEEPiのある対象におけるフロー/ボリュームループのグラフを表す図面である。
【図3】図3は、呼息の間に増加するCO2の時間に沿ったプロットを表す図面である。
【図4】図4aは、PEEPiのない対象におけるCO2フロー/ボリュームループのグラフを表す図面である。図4bは、PEEPiのある対象におけるCO2フロー/ボリュームループのグラフを表す図面である。
【図5】図5は、気道による圧力降下の分離のグラフを表す図面である。
【図6】図6は、人工呼吸器によって提供された支持を受ける場合の患者の呼吸システムを表す、単純化された電気回路を表す図面である。
【図7】図7は、典型的なニューラル・ネットワーク・アーキテクチャを表す図面である。
【図8】図8は、逆伝搬を有する適応可能システムの入力と出力を表す図面である。
【図9】図9−12は、線形及び非線形モデル(ニューラル・ネットワーク)の両方を用い、及びフロー制限を経験している患者及びフロー制限を経験していない患者を含む複数の患者を用い、及びフロー制限を経験していない患者のサブセットを用いて、複数の患者に関して導出された典型的なシステムの結果を示す実験データのグラフを示す図面である。
【図10】図9−12は、線形及び非線形モデル(ニューラル・ネットワーク)の両方を用い、及びフロー制限を経験している患者及びフロー制限を経験していない患者を含む複数の患者を用い、及びフロー制限を経験していない患者のサブセットを用いて、複数の患者に関して導出された典型的なシステムの結果を示す実験データのグラフを示す図面である。
【図11】図9−12は、線形及び非線形モデル(ニューラル・ネットワーク)の両方を用い、及びフロー制限を経験している患者及びフロー制限を経験していない患者を含む複数の患者を用い、及びフロー制限を経験していない患者のサブセットを用いて、複数の患者に関して導出された典型的なシステムの結果を示す実験データのグラフを示す図面である。
【図12】図9−12は、線形及び非線形モデル(ニューラル・ネットワーク)の両方を用い、及びフロー制限を経験している患者及びフロー制限を経験していない患者を含む複数の患者を用い、及びフロー制限を経験していない患者のサブセットを用いて、複数の患者に関して導出された典型的なシステムの結果を示す実験データのグラフを示す図面である。
【符号の説明】
【0106】
10 患者
12 人工呼吸器
14 センサ(フロー、圧力、CO2)
24 ニューラル・ネットワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積る方法であって、
人工呼吸器による援助によって自発的に呼吸する患者の呼吸気道パラメータを非侵襲的にモニタリングするステップと、
該モニタリングされた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を計算するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
内因性終末呼気陽圧を計算するステップは、該患者の該内因性終末呼気陽圧を示す該呼吸器系パラメータのマーカを同定するステップを備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
内因性終末呼気陽圧を経験しているかもしれない該患者の診断に使用するための入力パラメータを生成するために、該マーカを測定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
内因性終末呼気陽圧を経験している該患者の治療に使用するための各入力パラメータを生成するために、複数の異なるマーカを測定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
該マーカは、呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形のモデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
終末呼気陽圧状態を示す呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡の特性を同定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
該特性を同定するステップは、吐き出されていないガス・ボリュームを予測するステップを備えることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
終末呼気陽圧状態を示す呼気二酸化炭素フロー対エアボリューム軌跡の特性を同定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
該呼気二酸化炭素対呼気エアボリューム比は、患者の呼吸の高くなった終末呼気二酸化炭素フロー及び呼気エアボリュームから導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項10】
該吸入開始時の呼気エアフローは、該患者の吸入開始時のエアフロー及びテストされている該患者の肺の該気道によって生成されたエアフローに対する抵抗から導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項11】
該呼気波形のモデルは、最小2乗法を用いて導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項12】
該呼気波形のモデルは、指数関数解析を用いて導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項13】
該ピーク中間呼息エアフロー比は、一回呼吸量ボリュームの約20%乃至30%が該患者の肺に残るときに計算された、ピーク呼息エアフロー及び呼気エアフローを用いて導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項14】
終末呼気陽圧状態を示す該カプノグラフ波形形状の特性を同定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項15】
該特性は、呼気二酸化炭素フローにおける増加した立ち上がり時間の後に生じる、増加する勾配を備えることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
人工呼吸器の設定を調節するために該入力パラメータを用いるステップをさらに備えることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項17】
表示しるしを生成するために該入力パラメータを用いることをさらに備えることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項18】
異なるパラメータを計算するために該入力パラメータを用いるステップをさらに備えることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項19】
臨床データを用いて生成された数学モデルに該マーカを入力するステップと、
内因性終末呼気陽圧に対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項20】
該数学モデルは、ニューラル・ネットワーク・モデル、ファジィ論理モデル、エキスパート・モデル混合、又は多項式モデルから成るグループから選ばれることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
該数学モデルは、前記少なくとも1つの出力変数を提供するようにトレーニングされたニューラル・ネットワークであって、
該ニューラル・ネットワークの該トレーニングは、該ニューラル・ネットワークへの臨床的なデータ入力として、各患者の気道データを用いてテスト集団の患者を臨床的にテストすることを備えることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項22】
該呼吸気道パラメータは、気道圧力、気道フロー、気道ボリューム及び終末呼気二酸化炭素フローの1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項23】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積る方法であって、
人工呼吸器による援助によって自発的に呼吸していて非侵襲的にモニタリングされている患者の、気道圧力、気道フロー、気道ボリューム及び二酸化炭素フローの1つ又は複数を備える呼吸器系パラメータを受け取るステップと、
該患者の内因性終末呼気陽圧を示す該呼吸器系パラメータのマーカを同定するステップと、を備え、
該マーカは、呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形のモデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の1つ又は複数を備えることを特徴とする方法。
【請求項24】
内因性終末呼気陽圧を経験しているかもしれない該患者を診断するための入力パラメータを生成するために、該マーカを測定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
内因性終末呼気陽圧を予測するための臨床データから構成された数学モデルに該マーカを入力するステップと、
内因性終末呼気陽圧に対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項26】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積る機器であって、 人工呼吸器による援助によって自発的に呼吸する患者の呼吸気道パラメータを非侵襲的にモニタリングするセンサと、
該モニタリングされた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を導出する第1のコンピュータ・コードを有する処理装置と、
を備えることを特徴とする機器。
【請求項27】
該処理装置は、該患者の内因性終末呼気陽圧を示す該呼吸気道パラメータのマーカを測定するための第2のコンピュータ・コードをさらに備え、
該呼吸器系パラメータは、気道圧力、気道フロー、気道ボリューム及び二酸化炭素フローの1つ又は複数を備え、
該マーカは、呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形のモデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項26記載の機器。
【請求項28】
該マーカを受け取ってPEEPiを予測するために臨床データを用いて生成された数学的モデル化デバイスと、
PEEPiに対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供する出力信号と、
をさらに備えることを特徴とする請求項26記載の機器。
【請求項29】
該数学的モデル化デバイスは、前記少なくとも1つの出力変数を提供するようにトレーニングされたニューラル・ネットワークであり、
該ニューラル・ネットワークの該トレーニングは、ニューラル・ネットワークへの臨床的なデータ入力として、各患者の気道パラメータを用いてテスト集団の患者を臨床的にテストすることを備えることを特徴とする請求項28記載の機器。
【請求項30】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積るシステムであって、
人工呼吸器の援助により自発的に呼吸する患者の、該呼吸器系パラメータは、気道圧力、気道フロー、気道ボリューム及び二酸化炭素フローの1つ又は複数を備える呼吸器系パラメータを非侵襲的に測定する手段と、
該モニタリングされた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を導出する手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項31】
該患者の内因性終末呼気陽圧を示す該呼吸器系パラメータのマーカを同定するための手段をさらに備え、
該マーカは、呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形のモデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項30記載のシステム。
【請求項32】
臨床データを用いて生成され、該マーカを受け取る数学モデルを用いて呼吸努力を予測する手段と、
PEEPiに対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供する手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項30記載のシステム。
【請求項33】
該数学モデルは、前記少なくとも1つの出力変数を提供するようにトレーニングされたニューラル・ネットワークであり、
該ニューラル・ネットワークの該トレーニングは、該ニューラル・ネットワークへの臨床的なデータ入力として、各患者の口で気道パラメータを用いてテスト集団の患者を臨床的にテストすることを備えることを特徴とする請求項32記載のシステム。
【請求項34】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積るためのコンピュータ可読メディアであって、
人工呼吸器の援助により自発的に呼吸する患者の非侵襲的に測定された呼吸器系パラメータを受け取るためのコード・デバイスと、
該受け取られた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を導出するためのコード・デバイスと、
を備えることを特徴とするコンピュータ可読メディア。
【請求項35】
呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形モデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の少なくとも1つを示す該呼吸器系パラメータのマーカを測定するためのコード・デバイスをさらに備えることを特徴とする請求項34記載のコンピュータ可読メディア。
【請求項36】
臨床データを用いて生成され、該マーカを受け取る数学モデルを用いて呼吸努力を予測するためのコード・デバイスと、
呼吸努力に対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供するためのコード・デバイスと、
をさらに備えることを特徴とする請求項34記載のコンピュータ可読メディア。
【請求項37】
該数学モデルは前記少なくとも1つの出力変数を提供するようにトレーニングされたニューラル・ネットワークであって、該ニューラル・ネットワークの該トレーニングは、該ニューラル・ネットワークへの臨床的なデータ入力として、各患者の気道フローを用いて、テスト集団の患者を臨床的にテストすることを備えることを特徴とする請求項36記載のコンピュータ可読メディア。
【請求項38】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積るシステムであって、
人工呼吸器の援助により自発的に呼吸している患者の呼気努力に対応するデータを非侵襲的に収集する信号プロセッサと、
該データから内因性終末呼気陽圧を示すマーカを導出するパラメータ抽出モジュールと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項39】
該所望のパラメータから該患者のPEEPiをモデル化し、該患者の現PEEPiを示す少なくとも1つの入力に応答する制御変数を提供する、適応プロセッサをさらに備えることを特徴とする請求項38記載のシステム。
【請求項40】
該患者の呼吸を支援する人工呼吸器に対し該制御変数を提供するコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項39記載のシステム。
【請求項1】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積る方法であって、
人工呼吸器による援助によって自発的に呼吸する患者の呼吸気道パラメータを非侵襲的にモニタリングするステップと、
該モニタリングされた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を計算するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
内因性終末呼気陽圧を計算するステップは、該患者の該内因性終末呼気陽圧を示す該呼吸器系パラメータのマーカを同定するステップを備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
内因性終末呼気陽圧を経験しているかもしれない該患者の診断に使用するための入力パラメータを生成するために、該マーカを測定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
内因性終末呼気陽圧を経験している該患者の治療に使用するための各入力パラメータを生成するために、複数の異なるマーカを測定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
該マーカは、呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形のモデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
終末呼気陽圧状態を示す呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡の特性を同定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
該特性を同定するステップは、吐き出されていないガス・ボリュームを予測するステップを備えることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
終末呼気陽圧状態を示す呼気二酸化炭素フロー対エアボリューム軌跡の特性を同定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
該呼気二酸化炭素対呼気エアボリューム比は、患者の呼吸の高くなった終末呼気二酸化炭素フロー及び呼気エアボリュームから導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項10】
該吸入開始時の呼気エアフローは、該患者の吸入開始時のエアフロー及びテストされている該患者の肺の該気道によって生成されたエアフローに対する抵抗から導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項11】
該呼気波形のモデルは、最小2乗法を用いて導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項12】
該呼気波形のモデルは、指数関数解析を用いて導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項13】
該ピーク中間呼息エアフロー比は、一回呼吸量ボリュームの約20%乃至30%が該患者の肺に残るときに計算された、ピーク呼息エアフロー及び呼気エアフローを用いて導出されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項14】
終末呼気陽圧状態を示す該カプノグラフ波形形状の特性を同定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項15】
該特性は、呼気二酸化炭素フローにおける増加した立ち上がり時間の後に生じる、増加する勾配を備えることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
人工呼吸器の設定を調節するために該入力パラメータを用いるステップをさらに備えることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項17】
表示しるしを生成するために該入力パラメータを用いることをさらに備えることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項18】
異なるパラメータを計算するために該入力パラメータを用いるステップをさらに備えることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項19】
臨床データを用いて生成された数学モデルに該マーカを入力するステップと、
内因性終末呼気陽圧に対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項20】
該数学モデルは、ニューラル・ネットワーク・モデル、ファジィ論理モデル、エキスパート・モデル混合、又は多項式モデルから成るグループから選ばれることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
該数学モデルは、前記少なくとも1つの出力変数を提供するようにトレーニングされたニューラル・ネットワークであって、
該ニューラル・ネットワークの該トレーニングは、該ニューラル・ネットワークへの臨床的なデータ入力として、各患者の気道データを用いてテスト集団の患者を臨床的にテストすることを備えることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項22】
該呼吸気道パラメータは、気道圧力、気道フロー、気道ボリューム及び終末呼気二酸化炭素フローの1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項23】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積る方法であって、
人工呼吸器による援助によって自発的に呼吸していて非侵襲的にモニタリングされている患者の、気道圧力、気道フロー、気道ボリューム及び二酸化炭素フローの1つ又は複数を備える呼吸器系パラメータを受け取るステップと、
該患者の内因性終末呼気陽圧を示す該呼吸器系パラメータのマーカを同定するステップと、を備え、
該マーカは、呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形のモデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の1つ又は複数を備えることを特徴とする方法。
【請求項24】
内因性終末呼気陽圧を経験しているかもしれない該患者を診断するための入力パラメータを生成するために、該マーカを測定するステップをさらに備えることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
内因性終末呼気陽圧を予測するための臨床データから構成された数学モデルに該マーカを入力するステップと、
内因性終末呼気陽圧に対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項26】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積る機器であって、 人工呼吸器による援助によって自発的に呼吸する患者の呼吸気道パラメータを非侵襲的にモニタリングするセンサと、
該モニタリングされた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を導出する第1のコンピュータ・コードを有する処理装置と、
を備えることを特徴とする機器。
【請求項27】
該処理装置は、該患者の内因性終末呼気陽圧を示す該呼吸気道パラメータのマーカを測定するための第2のコンピュータ・コードをさらに備え、
該呼吸器系パラメータは、気道圧力、気道フロー、気道ボリューム及び二酸化炭素フローの1つ又は複数を備え、
該マーカは、呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形のモデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項26記載の機器。
【請求項28】
該マーカを受け取ってPEEPiを予測するために臨床データを用いて生成された数学的モデル化デバイスと、
PEEPiに対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供する出力信号と、
をさらに備えることを特徴とする請求項26記載の機器。
【請求項29】
該数学的モデル化デバイスは、前記少なくとも1つの出力変数を提供するようにトレーニングされたニューラル・ネットワークであり、
該ニューラル・ネットワークの該トレーニングは、ニューラル・ネットワークへの臨床的なデータ入力として、各患者の気道パラメータを用いてテスト集団の患者を臨床的にテストすることを備えることを特徴とする請求項28記載の機器。
【請求項30】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積るシステムであって、
人工呼吸器の援助により自発的に呼吸する患者の、該呼吸器系パラメータは、気道圧力、気道フロー、気道ボリューム及び二酸化炭素フローの1つ又は複数を備える呼吸器系パラメータを非侵襲的に測定する手段と、
該モニタリングされた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を導出する手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項31】
該患者の内因性終末呼気陽圧を示す該呼吸器系パラメータのマーカを同定するための手段をさらに備え、
該マーカは、呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形のモデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の1つ又は複数を備えることを特徴とする請求項30記載のシステム。
【請求項32】
臨床データを用いて生成され、該マーカを受け取る数学モデルを用いて呼吸努力を予測する手段と、
PEEPiに対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供する手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項30記載のシステム。
【請求項33】
該数学モデルは、前記少なくとも1つの出力変数を提供するようにトレーニングされたニューラル・ネットワークであり、
該ニューラル・ネットワークの該トレーニングは、該ニューラル・ネットワークへの臨床的なデータ入力として、各患者の口で気道パラメータを用いてテスト集団の患者を臨床的にテストすることを備えることを特徴とする請求項32記載のシステム。
【請求項34】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積るためのコンピュータ可読メディアであって、
人工呼吸器の援助により自発的に呼吸する患者の非侵襲的に測定された呼吸器系パラメータを受け取るためのコード・デバイスと、
該受け取られた呼吸気道パラメータに基づいて内因性終末呼気陽圧を導出するためのコード・デバイスと、
を備えることを特徴とするコンピュータ可読メディア。
【請求項35】
呼気エアフロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素フロー対呼気エアボリューム軌跡、呼気二酸化炭素ボリューム対呼気エアボリューム比、吸入開始時の呼気エアフロー、呼気波形モデル、ピーク中間呼息エアフロー比、減衰呼出エアフロー時間、及びカプノグラフ波形形状の少なくとも1つを示す該呼吸器系パラメータのマーカを測定するためのコード・デバイスをさらに備えることを特徴とする請求項34記載のコンピュータ可読メディア。
【請求項36】
臨床データを用いて生成され、該マーカを受け取る数学モデルを用いて呼吸努力を予測するためのコード・デバイスと、
呼吸努力に対応する該数学モデルからの少なくとも1つの出力変数を提供するためのコード・デバイスと、
をさらに備えることを特徴とする請求項34記載のコンピュータ可読メディア。
【請求項37】
該数学モデルは前記少なくとも1つの出力変数を提供するようにトレーニングされたニューラル・ネットワークであって、該ニューラル・ネットワークの該トレーニングは、該ニューラル・ネットワークへの臨床的なデータ入力として、各患者の気道フローを用いて、テスト集団の患者を臨床的にテストすることを備えることを特徴とする請求項36記載のコンピュータ可読メディア。
【請求項38】
呼吸器系患者の内因性終末呼気陽圧を見積るシステムであって、
人工呼吸器の援助により自発的に呼吸している患者の呼気努力に対応するデータを非侵襲的に収集する信号プロセッサと、
該データから内因性終末呼気陽圧を示すマーカを導出するパラメータ抽出モジュールと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項39】
該所望のパラメータから該患者のPEEPiをモデル化し、該患者の現PEEPiを示す少なくとも1つの入力に応答する制御変数を提供する、適応プロセッサをさらに備えることを特徴とする請求項38記載のシステム。
【請求項40】
該患者の呼吸を支援する人工呼吸器に対し該制御変数を提供するコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項39記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−504068(P2008−504068A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518267(P2007−518267)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/022248
【国際公開番号】WO2006/012205
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(506413823)コンヴァージェント エンジニアリング インコーポレイティッド (1)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/022248
【国際公開番号】WO2006/012205
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(506413823)コンヴァージェント エンジニアリング インコーポレイティッド (1)
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