説明

人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路とプログラムのための情報システム

【課題】人間とて独房の中では人格として機能しないのと同様であって、人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路とプログラムには人間社会の常識や不文律や習慣や風土や文化などの情報と連動しなければならない。従来はこのような情報処理システムを構築するための指針と手法が無く限りなく困難であった。
【解決手段】
明細書に記載した数理モデルに基いて、人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムと、人間社会の実情を実時間で反映している統計情報システムと、人間社会で用いられる言語や記号や音声や動画像を含むサインを実時間で反映するデータベースシステムと、人間社会に流通する価値を可視可する実時間経済情報システムと、人間社会に流通する情報の善悪の価値判断を行う情報システムと、人間社会に作用する公共情報配信システムを構成することによって実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路とプログラムのための情報システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
人間とて独房の中では人格として機能しないのと同様であって、人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路とプログラムには人間社会の常識や不文律や習慣や風土や文化などの情報と連動しなければならない。従来はこのような情報処理システムを構築するための指針と手法が無く限りなく困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
明細書に記載した数理モデルに基いて、人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムと、人間社会の実情を実時間で反映している統計情報システムと、人間社会で用いられている言語や記号や音声や動画像を含むサインを実時間で反映しているデータベースシステムと、人間社会に作用する公共放送すなわち公共情報配信システムを構成することによって実現する。
【0004】
強化学習やマルコフ決定過程などの数理モデルを、政治の基礎理論として使用しようとする者はいない。そのまま使用すると過ちを齎すことが自明だからである。ここでは、強化学習とマルコフ決定過程の数理モデルを更に分解し、人間社会の全体像を示す数理モデルを示す。この数理モデルは、次世代の民主主義政治の基礎数理であり、それと同時に人工人格の基礎数理でもある。
【0005】
強化学習とマルコフ決定過程では状態(s)と行動(a)と報酬(r)を次のように表記する。
【数1】

【0006】
エージェントが採用する方策(π)を次のように表記する。
【数2】

【0007】
エージェントが方策πに基づいて状態を評価する関数を状態価値関数と呼び、次のように表記する。
【数3】

【0008】
エージェントが方策(π)に基づいて行動(a)を評価する関数を行動価値関数と呼び、次のように表記する。
【数4】

【0009】
数学は、何かと何かを = で結ぶことを繰り返すことによって成り立っている。= は、数学という知的活動における基幹的記号である。あらゆる方程式は、何かと何かを = で結ぶことである。あらゆる数学的証明は何かと何かを = で結ぶことを繰り返すことによって、何かが何かであることを示すことである。
【0010】
数式には変数が含まれる。変数の値は可変であり、変数に値を代入することができる。例えば、変数と状態を等号で結ぶことによって、次のようにxという変数に3.14という値を代入することができる。

この例ではxは変数であり、3.14が値である。これはつまり3.14はxの"状態"である。
【0011】
これらの数学的な知的活動の本質は日本語でも英語でも全く同じであり、何かと何かを = で結ぶことを繰り返すことによって成り立つ。次の例を見て欲しい。
【数5】

ここでは、「犬」は変数であり、「走る」が状態である。さらに、Dogは変数であり、runningが状態である。同様に、Dは変数であり、runningが状態である。
【0012】
次に過去形の文を考えてみる。
【数6】

ここではDという変数に t = t0 - tx という時間の概念が含まれるものとする。tは時間の概念を示す変数であり、t0は現在を表す値であり、-txは過去を表す値である。
【0013】
次は命令形の文を考えてみる。
【数7】

ここでは、Yは「あなた」という意味の変数であり、give()が状態であり、tは時間の概念を示す変数であり、t0は現在を表し、+txは将来を表すものとする。
【0014】
更に後悔の念を表す文について考えてみる。
【数8】

ここでは、Iは「わたし」という意味の変数であり、pay()が状態であり、tは時間の概念を示す変数であり、t0は現在を表す値であり、-txは過去を表すものとする。つまり、t = t0 は、今現在を表し、t = t0 - tx は、過去を表し、t = t0 + tx は、将来を表す。
【0015】
次は高度な抽象的価値判断を含む文について考えてみる。
【数9】

【数10】


を人間の集合、すなわち人間社会とし、

はある特定の人物とする。

は人間の集合

に所属する人数を示すものとする。
【数11】

【0016】
"bad"は悪人すなわち有罪の意味の状態であり、"good"は善人すなわち無罪の意味の状態である。"good"と"bad"は状態であって定数ではない。このことを説明するためには人間社会の全体像の数理モデルが必要である。当論文では、以下、順を追ってそれを説明する。ここまでのこれらの例文からも判るように、人間の知的活動の本質は日本語でも英語でも数学全く同質であり、何かと何かを = で結ぶことを繰り返すことである。
【0017】
人間の知性の本質は、何かと何かの類似点を発見して = で結ぶことを繰り返すことによって成り立つ。

を記憶の集合とすると、

のうち、任意の

と、任意の

の類似点を発見して = で結んで新しい

を生成の連続を次のように表記することができる。

【数12】

【0018】
これを更に細分化して表記すると次のようになる。
【数13】

【0019】
尚、ここでの記述例では

が昇順になっているが、記憶の集合

のうち、任意の

と、任意の

の類似点を発見するのであって、順序は不規則である。

【数14】

【0020】
ここではこれを記憶処理と呼ぶことにし、この記憶処理のことを次のように表記する。

は時間を示し、

は記憶処理の数を示すものとする。

【数15】

【0021】
人格とは、人間社会の構成員としての必要十分条件のことである。人間社会は物理現象として実在しているのではなく、人々が物理現象を介してお互いの心を推測し合うことによって実在している。人が3人集おうとも、お互いが血と肉の塊だと思っていたら、そこに人間社会は実在しえない。我々は、思い合うが故に人間社会あり、である。人工的に形成する人格のことを

と表記することにする。ここでは、人格

は、思考、意図形成、外部状況の把握、内部の状況把握、という4つの基本的な記憶処理を行いながら感情という状態を持つものとする。感情は大きく喜怒哀楽の4つに分類できるものとし、意図が満たされたとき、感情は喜楽に傾き、意図が満たされないとき、感情は怒哀に傾くものとする。また、意識とは人格が記憶処理にもとづいて自己と他者と状況を分析すること、と考える。人格と人格を仲介しているのは物理である。つまり人格は物理に対して働きかける機能と、物理から信号を読み取る機能を持つ必要がある。人格が物理に対して働きかける出力の集合を次のように表記する。
【0022】
【数16】

【0023】
人格が物理から信号を読み取る入力の集合を次のように表記する。
【数17】

【0024】
人格の持つ記憶の集合を次のように表記する。
【数18】

【0025】
また、人格の機能の集合を、ここでは次のように表記する。
【数19】

ここで、

は入力機能の数、

は出力機能の数、

は記憶処理機能の数を示すものとする。
【0026】
出力価値関数について記述する。人格は記憶に基づいて出力機能を介して、出力を行い、物理に対して働きかける。人格が自らの記憶の状態を判定して出力を行う機能を、出力価値関数と呼び、次のように表記する。
【数20】

【0027】
出力価値関数

は、記憶の集合

に基づいて出力を行う。また、ここでは人格が持つつあらゆる記憶の集合

とその任意の部分集合

を次のように表記する。

【数21】

【0028】
入力価値関数について記述する。人格は物理から信号を読み取って記憶する機能を持つ。人格が物理を判定して記憶を行う機能を、入力価値関数と呼び、次のように表記する。

【数22】

【0029】
入力価値関数

は、物理

に基づいて信号の読み取りを行う。ここでは全ての物理信号の集合

とその任意の部分集合

を次のように表記する。

【数23】

【0030】
入出力と物理について述べる。人格が物理に対して働きかける出力の集合

が物理

に反映する。ただし、人格と人格の間は物理で満ちているものの、人間の知覚器官は視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、の5感である。人間の身体機能が極端な変化をしない限り、人格が知覚できる物理信号は、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、の5感に基いて分類することができる。つまり、全ての物理信号の集合

は次のように分解することができる。
【数24】

【0031】
同様に人間の身体機能が劇的に変化しない限り、人格が物理を知覚する入力価値関数は、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、の5感に基いて分類することができる。つまり、入力価値関数の集合

は次のように5種類に分解することができる。

【数25】

【0032】
人格の出力の集合

が、物理

に反映して、任意の人格の入力

によって、記憶の集合

に変換する。ここで、人格

の入力が取り込んだ直後の記憶の集合を

とする。ただし、

【数26】



である。


も同様に5種類に分類できる。

【数27】

【0033】
人格の出力の集合

が、物理

に反映して、入力

が読み取るとき、ナイキスト-シャノンの定理に従う。視角は可視光の範囲までしか知覚出来ないし、聴覚は可聴音の範囲までしか知覚出来ない。可視光の波長はJIS Z8120によると360nm - 830nmであり、可聴音の波長は17mm - 17m、周波数に換算すると 20Hz - 20000Hzの範囲である。人間は超音波やγ線、X線、紫外線、赤外線、サブミリ波、ミリ波、マイクロ波、FM放送やテレビ放送の電波、短波、中波、長波などの電磁波を、可視光と可聴音に変換した信号を用いて知覚している。
【0034】
ここではまず、5感それぞれの量子化ビットを次のように表記することにする。
【数28】

【0035】
また、5感それぞれのサンプリング周波数を次のように表記することにする。

【数29】

【0036】
そして、5感それぞれの入力機能の数を次のように表記する。

【数30】

【0037】
時間tの単位を秒として、人格の一日の活動時間を12時間とすると、t=60x60x12=43200であり、一日のうちに人工人格

が入力Iを介して物理から読み取る信号の総ビット数は次のようになる。

【数31】

【0038】
つまり人格が物理から読み取る信号は無限ではなく有限であり、人間の記憶の集合

は有限である。
【0039】
人間社会は物理現象として実在しているのではなく、人々が物理を介してお互いの心を推測し合うことによって実在している。お互いの心を推測し合うということは、お互いの記憶の集合

の状態を推測し合うということである。文明は世代を超えた記憶の集合

の集積であり、文明を構成している記憶の集合

も有限である。

【0040】
記憶の集合

の変換について述べる。記憶の集合

が人格

の中に蓄積されているものとする。ここで、人格

の入力が取り込んだ直後の記憶の集合を

とする。
人格

は記憶の集合

を、記憶処理

によって、抽象記憶の集合

に変換する。

【数32】

【0041】
人格{AC}は、思考、意図形成、外部状況の把握、内部の状況把握、という4つの基本処理を行うものとする。ここで、記憶処理

は、思考価値関数

、意思形成価値関数

、内部状況価値関数

、外部状況価値関数

の4つに分類できるものとする。

【0042】
ただし、いずれの関数も記憶処理

の集積によって構成されるのであって、思考価値関数

、意思形成価値関数

、内部状況価値関数

、外部状況価値関数

は、記憶処理

の集合として捉えるものとする。
【数33】

【0043】
人格

は、思考価値関数

、意思形成価値関数

、内部状況価値関数

、外部状況価値関数

によって、原始記憶の集合

を抽象記憶

に変換する。同様に、抽象記憶

は、思考

、意思

、外部状況

、内部状況

の4つに分類することができる。
【数34】

【0044】
感情を

と表記することにする。感情は大きく喜怒哀楽の4つに分類できるものとし、意思が満たされたとき、感情は喜楽に傾き、意思が満たされないとき、感情は怒哀に傾くものとする。
【0045】
まず、集合

の任意の

と、内部状況記憶の集合

の任意の

が、記憶処理

によって等号となる総数を次のように表記する。

【数35】

【0046】
意思の集合

の任意の

と、外部状況記憶の集合

の任意の

が、記憶処理

によって等号となる総数を次のように表記する。

【数36】

【0047】
また、意思の集合

の総数を次のように表記する。
【数37】

【0048】
感情

は次の式によって表記することができる。

【数38】

【0049】
人格

の機能の集合を

とし、人格

の質量

を次のように表記することとする。

【数39】

【0050】
また、人格

の持つ機能の総数

を次のように表記することとする。

【数40】

【0051】
人格

の持つ機能のうち、活動している機能の総数を次のように表記することとする。

【数41】

【0052】
また、人格{AC}の持つ機能のうち、休止している機能の総数を次のように表記することとする。

【数42】

【0053】
活動している機能の総数と休止している機能の総数の合計は人格

の持つ機能の総数

と一致する。
【数43】

【0054】
人間の集団{H}において、総人口の平均体重と基礎代謝基準値の統計を採っているものとする。例えば、日本国では厚生労働省が「日本人の栄養所要量」あるいは「日本人の食事摂取基準」として纏めている。
【0055】
まず、人間の集団{H}における平均体重を次のように表記する。
【数44】

【0056】
それから、人間の集団{H}における基礎代謝基準値を次のように表記する。
【数45】

【0057】
人間の年齢・性別毎の標準的な一日あたりの基礎代謝量は、基礎代謝基準値×体重で求めることができる。

【数46】

【0058】
ここでの、

は時間の概念、すなわち年齢を秒で表記したものとする。
また、体重(weight)は質量で表記することができ、代謝(metabolism)は熱量で表記することができる。質量の単位はkgで、熱量の単位はカロリーである。カロリー(cal)を電子ボルト(V)とジュール(J)に換算すると、1カロリーは0.261×10^20ボルトで、ジュールにすると4.1868である。

人格

の質量

と機能の総数

は、

は時間の概念、すなわち年齢によって変化する可変値とする。ここで、人格

の質量



による関数とし、人間社会における性別毎の平均体重を

による関数とすると、両関数のn次微分は限りなく等しくなければならない。

【数47】

【0059】
人格

の機能が働くために必要な熱量を

とする。

は入力が働くために必要な熱量、

は出力が働くために必要な熱量、

は記憶処理が働くために必要な熱量、

は人格

が活動するために必要な熱量とし、機能の総数

と時間

は、次の関係が成り立たせるための可変値とする。ここで、人格

の機能が活動するための熱量を

による関数とし、人間社会における性別毎の平均代謝量を

による関数とすると、両関数のn次微分は限りなく等しくなければならない。

【数48】

【0060】
集合

は、人間の3大欲求、食欲(eat)、休息欲(rest)、性欲(sex)に基づいて形成されているものとし、3種類に分類できるものとする。

【数49】

【0061】
人格

の食欲(eat)、休息欲(rest)、性欲(sex)、意識(consciout)の周期を次のように表記することとする。単位は秒である。

【数50】

【0062】
食欲(eat)周期とは、時間

の概念であって、入力価値関数{I}による外部状況

と内部状況

の変化によって、意思形成価値関数

が 食欲に拘る記憶の集合を更新することに要する時間

のこととする。
【0063】
休息欲(rest)周期とは、入力価値関数の修道

が熱量を発しながら活動し、外部状況

と内部状況

が変化し、意思形成価値関数

が 休息欲に拘る記憶の集合を更新することに要する時間

のこととする。休息欲(rest)周期は、地球の自転の周期と、昼夜の長さと連動する。ここでは地球の自転の周期と、昼の長さ、夜の長さを、時間tの概念で次のように表記することとする。昼夜の長さは地球上の観測地点によって異なるので、人間社会

が生息している地域の観測値を代入することとする。ここでは仮に約12時間としている。
【数51】

【0064】
人格

を、熱量

を発する



による関数として考えると、地球の自転の周期と昼夜の長さの観測値に合わせて、周期的に変化するように

と、

と、

のそれぞれの機能数

とそれぞれの活動時間

を調整すれば良い。人格

が活動している状態のとき、活動している機能の総数は増加し、休止している機能の総数は減少する。反対に人格

が睡眠している状態のとき、活動している機能の総数は減少し、休止している機能の総数は増加する。
【0065】
性欲(sex)周期とは、時間

の概念であって、外部状況

と内部状況

が変化し、意思形成価値関数

が性欲に拘る記憶の集合を更新することに要する時間

のこととする。自由恋愛を謳歌できる人間社会において、限りなく不規則な値として観測できると思われる。

意識(consciout)周期とは、時間

の概念であって、人格

において、思考価値関数

、意思形成価値関数

、内部状況価値関数

、外部状況価値関数

が活動しているように観測しうるに要する時間

のこととする。
【0066】
これまで述べてきた人格

の数理モデルを用いて、マルコフ決定過程を分解することができる。
【0067】
まず状態(St)を分解するまず状態

を分解して考える。状態は物理

の状態と、記憶の集合

の状態に分解して考えることができる。
【数52】


【0068】
行動

は出力

と物理

と入力

の部分和に分解することができる。行動

は、出力

が物理

を介して入力

によって記憶集合

に反映することなので、出力に拘わった人間集合

と、入力に拘わった人間集合

に依存して変化する。

行動

は、出力

が物理

に反映して

によって読み込まれ、記憶処理

によって形成されるものである。このときの記憶処理



の集積であり、行動

は次の式のように分解して考えることができる。
【数53】

【0069】
時間

には、地球の公転周期と自転周期にあわせた物理時間と、任意の人格

の主観時間に区分できる。物理時間を次のように表記することとする。

【数54】

【0070】
主観時間を次のように表記することとする。

【数55】

【0071】
報酬

とは、

時点において、意図の記憶集合

の任意の

と、内部状況の記憶集合

と外部状況の記憶集合

の任意の

が等号となる記憶

の集合のことである。報酬を主観時間による関数として捉えると、次のように表記することができる。

【数56】

【0072】
期待

とは、

における状態によって、

時点において報酬

が期待できる記憶の集合

の状態のことであり、次のように表記できる。

【数57】

【0073】
状態価値関数と行動価値関数は、状態と時間と人間社会

の数に着目して分解することができる。

【数58】

【0074】
状態価値関数

は、人間社会

、その部分集合

、任意の人物

ごとに分類することができる。任意の人物

にとって、状態価値関数とは、意図の記憶集合

の任意のmと、内部状況の記憶集合

と外部状況の記憶集合

の任意の

が等号となる記憶処理

の集合として分解することができる。
【0075】
人間社会

、その部分集合

の場合も同様であり、つまり、状態価値関数は時間軸

と人間社会

の総数

の関数と考えることができる。つまり、状態の価値を判定するということは時間軸

と人間社会

の総数

を設定するということである。
【0076】
行動価値関数

は状態

にもとづいて行動

を選択する関数である。行動

は出力の集合

と入力の集合

によって定まり、出力に拘わった人間集合

と、入力に拘わった人間集合

に依存する。
【0077】
つまり、行動の価値を判定するということは、出力に拘わる人間集合{H_x}と入力に拘わる人間集合

の母集団

と時間軸

を設定するということである。
【0078】
これまで見てきたように、方策πとは、各集合に属する数

と、各集合の時間

を設定することである。個人方策πとは、Hxという個体の時間軸

を設定することである。このとき



は限りなく1に近い値である。集団方策πとは、

という人間社会の時間軸

を設定することである。このとき



は限りなく総人員あるいは総人口に近い値である。
【数59】

【0079】
次に人間社会の数理モデルについて述べる。人間関係・愛着とは、任意の人間から任意の人間に対する任意の時間軸上の範囲における報酬体験の総和である。ここではこれをattachmentと表記することにする。このattachmentは数値・強度として算出することができる。任意の人

から任意の人

へのattachmentを次のように表記する。

【数60】

【0080】
任意の人

から任意の人間集団

へのattachmentを次のように表記する。

【数61】

【0081】
任意の人間集団

から任意の人

へのattachmentを次のように表記する。

【数62】

【0082】
任意の人間集団

から任意の人間集団

へのattachmentを次のように表記する。
【数63】

【0083】
次に教育と常識と法について述べる。教育とは、世代間を越えた報酬の期待にもとづいて状態価値関数と行動価値関数を伝承することである。

教育を設定する手順は次の通りである。まず、人間集団

を設定する。

に属する人の総数を設定する。それから、人間集団

における、

時点での

を設定する。

時点での

と、

の式より、

の状態を求める。

であり、そして

の式より、

を求める。さらに

の式より、

を求め、さらに

の式より、

の集合を求めることができる。ここで、この

が教育になる。
【0084】
このうち

は語(WD)、文(SC)、常識(CS)、記号(SL)に分類することができる。

【数60】



まず人間集団

を設定し、

に属する人の総数を設定し、それから、人間集団

における、

時点での

を設定することによって、教育を定めることができる。そうすることによって常識を定めることができ、さらに法を定めることができる。
【0085】
信用と価値について述べる。信用とは人間関係・愛着(attachment)と同じ定義を用いることができる。したがって次のように表記することができる。

【数61】

【0086】
価値とは、将来において報酬

を上昇させうる状態

のことである。将来を

とおくと、

の式より、

における 報酬

を実現するための

を定めることができる。
【0087】
国家という人間集団

によって定められている価値のことを、ここでは貨幣

と呼ぶ。まず人間集団

と人

数だけ欲求がある。ここでいう欲求とは意図

のことである。欲求

の充足は



の変化によって成就する。
【0088】
人間集団

は、次の式が成り立ちうる

を貨幣として設定することができる。貨幣

とは欲求

を充足する手段としての

との契約である。

【数62】

【0089】
人間集団

が貨幣

を動かすことによって、

によって行動

が引き出され、

が上昇する。ここで引き出された行動

が商行為である。商行為とは仕入れて加工して販売することであり、入力と出力の集合のことである。
【0090】
経済政策とは、状態に

時点での国民資産の統計を代入し、それから、人間集団における、

時点での報酬の総和を設定する。


時点での

と、

の式より、

の状態を求める。

であり、

の式より、

を求める。さらに

の式より、

を求め、さらに

の式より、

の集合を求めることができる。ここで、この

が経済政策になる。
【0091】
意図にもとづく情報配信(報道)について述べる。まず人間集団において出力の集合と物理の集合がある。これが事件・事実である。ここで、情報配信者の出力の集合が加算されることによって、この事件・事実を配信するための情報が形成される。

【数63】

【0092】
情報が到達すると、到達した人間集団あるいは任意の人物において外部状況の記憶集合と内部状況の記憶集合が変化する。外部状況の記憶集合と内部状況の記憶集合の状態が変化すると、欲求の状態も変化する。欲求の状態変化は、すなわち状態の変化であり、行動価値関数の式によって、行動が引き起こされる。
ここで引き起こされた行動によって人間集団の報酬の総和が上昇すれば、良い情報配信であり、下降すれば悪い情報配信である。
情報配信者が情報を形成する時点において、事前に人間集団の報酬の総和を予め設定することは可能だが、行動価値関数の式によって引き起こされた行動の及ぶ範囲が事前に設定した人間集合の範囲と合致しなければ、予め設定した報酬と実際の報酬が異なる。
【0093】
政治とは人間集団における報酬を最大化するための方策を探求することである。これまで見てきたように方策とは時間

と 集合

を設定することであり、政治は究極的に



の実時間調整問題に帰結するようになる。善悪の定義は次の通りである。

【数64】

人間集団の将来の報酬を上昇させる行動が善であり、人間集団の将来の報酬を下降させる行動が悪である。
【0094】
以上、示してきたように人工人格の数理モデルは、人間社会の数理モデルでもあり、国家像の数理モデルの礎となるものである。人格とは、社会の構成員としての必要十分条件のことである。社会は生まれ出でた人間が人格として機能しうるためにあらゆる手を尽くさねばならない。日本国憲法の基礎理念にある基本的人権の保護とは、それを宣言して明文化したものである。半導体とトランジスタの微細化技術が発展し、人類の有史以来、これまでになかったような文明形態を実現することが可能になってきている。国家の基幹を支える情報通信網によって高密度な文明を実現することが出来る。国家の情報通信網は高度な社会知性を創造し続けるための文明の礎とならなくてはならない。当該数理モデルに基いた数理モデルに基く情報システムはが次世代の民主主義国家の礎として発展する。
【実施例】
【0095】
国家、地方自治体、などの単位で、人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムと、人間社会の実情を実時間で反映している統計情報システムと、人間社会で用いられている言語や記号や音声や動画像を含むサインを実時間で反映しているデータベースシステムと、人間社会に流通する価値を可視可する実時間経済情報システムと、人間社会に流通する情報の善悪の価値判断を行う情報システムと、人間社会に作用する公共放送すなわち公共情報配信システムを構成することができる。

【図面の簡単な説明】
【0096】

【図1】人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムの機能ブロック図である
【図2】人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムにおける記憶の構造を示す図である。
【図3】人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムにおける意識を実現している機能を示す図である。
【図4】人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムにおける記憶の構造を示す図である。
【図5】人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムにおける思考処理を示す図である。
【図6】人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムにおける意図形成処理を示す図である。
【図7】人間のように思考する装置すなわち人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムにおける画像解釈を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムであって、明細書に記載のある数理モデルに基いて構成されている情報処理システム

【請求項2】
人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムと、それらと連動する人間社会の実情を実時間で反映している統計情報システムであって、明細書に記載のある数理モデルに基いて構成されている情報処理システム

【請求項3】
人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムと、それらと連動しながら人間社会で用いられている言語や記号や音声や動画像を含むサインを実時間で反映しているデータベースシステムであって、明細書に記載のある数理モデルに基いて構成されている情報処理システム

【請求項4】
人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムと、それらと連動しながら人間社会に流通する価値を可視化する実時間経済情報システムであって、明細書に記載のある数理モデルに基いて構成されている情報処理システム

【請求項5】
人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムと、それらと連動しながら人間社会に流通する情報の善悪の価値判断と状況判断の指針を可視化する情報システムであって、明細書に記載のある数理モデルに基いて構成されている情報処理システム

【請求項6】
人格として機能する半導体装置と周辺電子回路と情報処理システムと、それらと連動しながら人間社会に作用している公共放送すなわち公共情報配信システムであって、明細書に記載のある数理モデルに基いて構成されている情報処理システム




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−271749(P2009−271749A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122067(P2008−122067)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(306045741)