仔魚床構造、仔魚管理方法
【課題】仔魚の動きを抑制しすると共に、仔魚の集中が起こりにくく、魚床全体に効果的に酸素供給を行うことができる仔魚床構造を提供すること、生産性の高い仔魚管理を行うことができること。
【解決手段】回遊魚の人工増殖において仔魚管理に用いられる仔魚床の構造であって、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材１０を底面Ｂ上に複数個一様に敷き詰め、第１の敷設材１０上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材１１を第１の敷設材１０に沿って積層し、第２の敷設材１１は間隔を開けて配置する。
【解決手段】回遊魚の人工増殖において仔魚管理に用いられる仔魚床の構造であって、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材１０を底面Ｂ上に複数個一様に敷き詰め、第１の敷設材１０上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材１１を第１の敷設材１０に沿って積層し、第２の敷設材１１は間隔を開けて配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、サケ・マス類等の回遊魚の人工増殖における仔魚管理に用いられる仔魚床構造及び仔魚管理方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
サケ・マス類等の回遊魚の人工増殖では、ふ化した仔魚の管理は養魚池や浮上槽を用いて行うのが一般的である。「仔魚」とは、ふ化したばかりで「さいのう」と呼ばれる栄養分を貯めた袋を持った生育段階の魚を指す。仔魚は、餌をとらず、さいのう内の養分だけで成長する。その後、餌が取れるまでに育った生育段階を仔魚と区別して「稚魚」と呼んでいる。なお、本発明においては、前述した仔魚と仔魚から稚魚に移る段階及び初期の稚魚を含めて仔魚と定義する。
【０００３】
養魚池や浮上槽では、水中に仔魚床（仔魚が留まる居場所）を形成して、仔魚が動き回って余計な栄養分を消費しない環境を整えてやる必要がある。仔魚は流れの少ない箇所に身を隠す習性があるので、養魚池や浮上槽の仔魚床では、人工的に仔魚が身を隠すための敷設材を配備している。養魚池では底面に小砂利を敷いて仔魚床とするのが一般的であり、浮上槽ではネットリングと呼ばれる網状の円筒部材を重ねて敷いて仔魚床とするのが一般的である。
【０００４】
また、下記特許文献１には、合成樹脂，セラミックス又は金属等で形成されるふ化育成用敷設体（成形体）を養魚池の底に多数個ランダムに敷くことで、仔魚の安息場所となる陰になった相互に連通する小空間を形成すること等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】実開平５−６２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
仔魚の成長にとっては十分な酸素の摂取が不可欠である。養魚池で仔魚に十分な酸素を与えるためには、仔魚床においても緩やかな水の流れが確保されることが必要になる。養魚池の底に小砂利や成形体を敷いて形成される従来の仔魚床では、水の流れが生じ難い養魚池の底面に近いところに留まった仔魚は酸欠を起こし易く、仔魚の成長にばらつきが生じやすい問題があった。また、養魚池内では水の流れが単調であるから、良好な条件が揃ったところに仔魚が集中して酸素摂取の競争を起こすことになり、競争に敗れた仔魚は良好な成長が得られない問題があった。
【０００７】
一方、浮上槽に用いられるネットリングを養魚池の底面に敷いて仔魚床を形成することが考えられる。この場合養魚池の水位を高くすると水面付近での水の流れは速くなるが、仔魚が入り込むネットリングが存在する養魚池の底では十分な水流が得られず、ネットリング内に十分な酸素を供給できない問題がある。これに対して、養魚池の水位を低くすると、ネットリング内で水の流れが得られ酸素供給は可能になるが、ネットリング内に常に直線的な水の流れが生じてネットリング内に居る仔魚を動かすことになり、仔魚がさいのうの栄養分を余計に消費することになるので、仔魚の成長管理上好ましくない。
【０００８】
これに対して、図１に示すように、間隔を開けてネットリングＲを養魚池の底面Ｂに敷くことが行われている。これによると、ある程度水位を高めて流速を大きくすることによって、ネットリングの無いところで適度な水流が得られるので、ネットリング内に酸素を多く含んだ水を供給しやすくなる利点が得られる。しかしながら、この形態では、間隔を開けた箇所の近傍に仔魚が集中しやすくなると共に、養魚池の底面に仔魚床と成らない空きスペースを形成することになるので、養魚池の底面積に対しての仔魚の生産量が低下することになり、生産性の高い仔魚管理を行うことができない問題がある。
【０００９】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、仔魚の動きを抑制すると共に、仔魚の集中が起こりにくく、仔魚床全体に渡って効果的に酸素供給を行うことができる仔魚床構造を提供すること、生産性の高い仔魚管理を行うことができること、使用する水量を少なくして水の消費量を低減させることができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【００１１】
回遊魚の人工増殖において仔魚管理に用いられる仔魚床の構造であって、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材を底面上に複数個一様に敷き詰め、前記第１の敷設材上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材を前記第１の敷設材に沿って積層し、前記第２の敷設材は間隔を開けて配置することを特徴とする仔魚床構造。
【００１２】
回遊魚の人工増殖において仔魚管理を行う仔魚管理方法であって、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材を養魚池の底面上に複数個一様に敷き詰め、前記第１の敷設材上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材を前記第１の敷設材に沿って積層し、前記第２の敷設材は間隔を開けて配置し、前記第２の敷設材の最上面より上に水位を任意に設定して、前記第１及び第２の敷設材内で仔魚を管理することを特徴とする仔魚管理方法。
【発明の効果】
【００１３】
このような特徴を有することで、所定の間隔を開けて配置された第２の敷設材を水流が通過することで水流が乱され、乱された水流は第２の敷設材の下に位置する第１の敷設材内に入り込むことになるので、養魚池などの底面に一様に敷き詰められた第１の敷設材内にも十分な酸素供給が可能になる。また、ある程度水位を低くして流速を小さくしても、第２の敷設材によって生じる乱流によって、第１の敷設材に酸素の豊富な水を供給できるので、少ない水量で健全な仔魚管理を行うことができる。これによって、仔魚の動きを抑制すると共に、仔魚の集中が起こりにくく、仔魚床全体に効果的に酸素供給を行うことができる。また、養魚池などの底面全体を利用した仔魚床を形成できるので、生産性の高い仔魚管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】間隔を開けてネットリングを養魚池の底面に敷いた仔魚管理の例を示した説明図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る仔魚床構造及び仔魚管理方法を説明する説明図である。
【図３】本発明の他の実施形態に係る仔魚床構造及び仔魚管理方法を示した説明図である。
【図４】本発明の実施形態に係る仔魚床構造に対してふ化前の卵を支持する卵支持部材を配置した状態を示す説明図である。
【図５】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態を示した説明図である。
【図６】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態を示した説明図である。
【図７】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態（変形例）を示した説明図である。
【図８】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態（変形例）を示した説明図である。
【図９】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態（変形例）を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する（なお、従来と同一の部分には同一の番号を付して重複した説明は省略する。）。図２は本発明の一実施形態に係る仔魚床構造及び仔魚管理方法を説明する説明図である。
【００１６】
本発明の実施形態に係る仔魚床構造１は、回遊魚の人工増殖において仔魚管理に用いられる仔魚床の構造であって、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材１０を底面Ｂ上に複数個一様に敷き詰め、第１の敷設材１０上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材１１を第１の敷設材１０に沿って積層し、第２の敷設材１１は間隔Ｈを開けて配置したものである。図示の例では、１個の敷設材１１毎に間隔Ｈを設けているが、複数個連ねて敷設材１１を並べて、複数個毎に間隔Ｈを設けるものであってもよい。
【００１７】
ここで用いられる第１の敷設材１０，第２の敷設材１１は、網状或いは多孔状などを有することで通水性を有し、水の流れが内部を通過するものであって、その内部に仔魚が留まる居場所が形成されるものであり、水の流れ方向に交差する方向に長手方向を向けて延在する筒状の部材である。断面の外形は円形，楕円形，矩形，三角形などどのような形態であってもよい。第２の敷設材１１の間隔Ｈは、全ての間隔が等間隔であっても、それぞれ又は一部が異なる間隔幅であってもよい。
【００１８】
このような形態の仔魚床構造１によると、第１の敷設材１０上に間隔を開けて配置された第２の敷設材１１によって、第２の敷設材１１を通過する際の水の流れが乱流に変わり、図示矢印で示したように、底面Ｂに敷き詰められた第１の敷設材１０内に流れ込む水の流れが形成される。この際、水の流速を比較的小さくし、水位Ｗｈを比較的低くして第２の敷設材１１の上面よりやや上になる程度にすることが好ましい。このように低い水位Ｗｈにすることで第２の敷設材１１を通過する水の流れを確実に生じさせることができ、そこで発生した乱流を第１の敷設材１０内に流れ込ませることができる。ここでの流速は第２の敷設材１１によって乱流が発生する程度の流速であればよく、水位を低くして流速を小さくすることで、使用する水の水量を少なくすることができる。
【００１９】
この仔魚床構造１は、第１の敷設材１０が養魚池などの底面に間隔無く一様に敷き詰められているので、底面積を有効に仔魚床として活用することができ、更に積層された第２の敷設材１１内にも仔魚を留めることができるので、底面積当たりの仔魚の生産性を高めることが可能になる。
【００２０】
図３（ａ），（ｂ）は、本発明の他の実施形態に係る仔魚床構造及び仔魚管理方法を示した説明図である。この実施形態では、第２の敷設材１１は、第１の敷設材１０上に多段に積層され、上層に積層される敷設材ほど同層の敷設材間の間隔を広くしている。同図（ａ）に示した実施形態では、第２の敷設材１１が第１の敷設材１０の上に２段積層されており、第１の敷設材１０の直上に積まれた敷設材の間隔Ｈ１よりその上に積層された敷設材の間隔Ｈ２が大きくなっている。すなわち、断面では山形状に第２の敷設材１１が積み重ねられている。
【００２１】
同図（ｂ）に示した実施形態では、第２の敷設材１１が第１の敷設材１０の上に３段、断面山形状に積層されており、第１の敷設材１０の直上に積まれた敷設材の間隔Ｈ１よりその上に積層された敷設材の間隔Ｈ２が大きくなり、更にその上に積層された敷設材の間隔Ｈ３がより大きくなっている（Ｈ１＜Ｈ２＜Ｈ３）。本発明の実施形態としては、更に第２の敷設材１１を４段以上、断面山形状に積み重ねたものであってもよい。
【００２２】
このような実施形態によると、前述した実施形態と同様に、第１の敷設材１０上に間隔を開けて配置された第２の敷設材１１によって、第２の敷設材１１を通過する際の水の流れが乱流に変わり、より下層の敷設材や底面Ｂに敷き詰められた第１の敷設材１０内にも酸素の豊富な水が流れ込むことになる。この際も、前述したように、水の流速を比較的小さくし、水位Ｗｈを比較的低くして第２の敷設材１１の上面よりやや上になる程度にすることが好ましい。このように低い水位Ｗｈにすることで第２の敷設材１１を通過する水の流れを確実に生じさせることができ、そこで発生した乱流を下層の敷設材や第１の敷設材１０内に流れ込ませることができる。
【００２３】
単純に間隔を設けることなく敷設材を積層すると、下の層ほど水の流れが生じ難くなり、最下層の敷設材内に居る仔魚は酸素不足になる。これに対して、図３（ａ），（ｂ）に示すように、積層された第２の敷設材１１に間隔を設けることで、より下層の敷設材内にも酸素供給に効果的な水流を入り込ませることができる。そして、第２の敷設材１１を多段に積層することで、仔魚が留まる場所の容積を増大させることができるので、均一な酸素供給を行うことができる仔魚の居場所を拡大でき、単位底面積当たりの仔魚の生産性を向上させることが可能になる。
【００２４】
図４は、本発明の実施形態に係る仔魚床構造に対してふ化前の卵を支持する卵支持部材を配置した状態を示す説明図である。卵支持部材（卵受け網或いはふ化盆）２０は、受精してふ化前の卵を支持するための網状又は多孔状の板部材である。ふ化した仔魚は卵支持部材の網目又は孔を通って仔魚床内に落下する。
【００２５】
同図（ａ）に示した例では、第１の敷設材１０の上で、第２の敷設材１１の間に、卵支持部材２０を配置している。この例では、水位Ｗｈを低くすることができ、ふ化が完了した後、卵支持部材２０を取り除いてそのまま仔魚管理を行うことができる。同図（ｂ）に示した例では、第２の敷設部材１１上に卵支持部材２０を配置している。この例では、ふ化する前までは水位Ｗｈを比較的高くして卵全体が水に浸かるようにしておき、ふ化が完了した後には、卵支持部材２０を取り除いた後、水位Ｗｈを低く調整して仔魚管理を行う。
【００２６】
図５及び図６は、第１及び第２の敷設材１０，１１の他の形態を示した説明図である。以下に示す敷設材の形態は、第１の敷設材１０と第２の敷設材１１の両方に適用してもよいし、第２の敷設材１１のみに適用してもよい。また、第２の敷設材１１の一部のみに適用してもよい。この敷設材１０，１１は、筒状外周部材２と内部延設部材３によって形成され、内部延設部材３の存在によって、内部を通過する水流がより効果的な乱流になり易い構造になっている。
【００２７】
筒状外周部材２は、側部全体に通水孔２Ａが形成された外形が筒状の部材である。通水孔２Ａの形状は特に限定されないが図示の例では菱形形状を有している。また、図示の例では螺旋状の線状部材を所定間隔で結合することで通水孔２Ａを側部に形成した筒状の部材を形成しているが、これに限らず、側部を板状にして打ち抜き孔（パンチ孔）などで通水孔２Ａを形成したものであってもよい。
【００２８】
内部延設部材３は、筒状外周部材２内に配置され、筒状外周部材２の延長方向に沿って延設される部材である。そして、この内部延設部材３は、複数の異なる方向に対面した水流方向変更面３Ａを有した板状部材によって形成されている。図示の例では、水流方向変更面３Ａは連続的なねじれ面によって形成されているが、その形態は後述する各種の形態に変形可能である。
【００２９】
内部延設部材３は、図７に示すように、筒状外周部材２の内部で方向を様々に変えた水流方向変更面３Ａを形成する。図示の例では、Ｘ１−Ｘ１断面からＸ５−Ｘ５断面に至るまで、４５度ずつ角度を変えた面が形成されている。また、この実施形態では、筒状外周部材２の延長軸に垂直な断面の外周形状が略円形又は楕円形状になっている。
【００３０】
このような敷設材１０，１１を用いた仔魚床構造では、筒状外周部材２の通水孔２Ａからその内部に水が流れ込み、内部延設部材３の水流方向変更面３Ａによって流れ込んだ水の流れ方向が変更される。これによって、筒状外周部材２内に潜む仔魚にとって、様々な方向の水流が形成され、しかもその流れは通水孔２Ａを通過して水流方向変更面３Ａに当たることによって適度な流速に緩められる。これによって、仔魚床内で分散配置された仔魚に対して、均等に酸素取得ができる環境が与えられる。また、筒状外周部材２内で様々な方向に流れる適度に緩やか水流を形成することができるので、筒状外周部材２内に潜む仔魚にとって天然の河川の底に居るような自然な環境を与えることができる。これによって、自然環境に近い条件で健全な仔魚の成長を促すことができる。
【００３１】
さらに、水流方向変更面３Ａに当たった水が乱流に効果的に変わるので、より下層の敷設材１０，１１に酸素の豊富な水を効果的に供給することができる。これによって、より下層の敷設材１０，１１内に居る仔魚に酸素を十分に供給することが可能になり、仔魚床全体に均一に酸素供給を行うことができる。
【００３２】
図７〜図９は、敷設材１０，１１の変形例を示している。図７は、筒状外周部材２の延長軸に垂直な断面の外周形状が略円形又は楕円形以外の例を示しており、同図（ａ）に示すように外形断面が四角形状、同図（ｂ）に示すように外形断面が三角形状、同図（ｃ）に示すように外形断面が５〜８角形状であってもよい（図示は六角形状）。
【００３３】
図８は、筒状外周部材２の変形例であり、同図（ａ）は側面部が線状部材を網目状に配置して通水孔２Ａを形成した例、同図（ｂ）は側面部の通水孔部２Ａの形状を四角状にした例、同図（ｃ）は側面部の通水孔部２Ａの形状を多角形状（図示では六角形状）にした例をそれぞれ示している。通水孔２Ａの形状によっても筒状外周部材２内の水の流れは変わるので、この形状を様々に変えることで多様な水の流れを形成することができる。また、一つの筒状外周部材２で様々な形状の通水孔２Ａを組み合わせて形成しても良い。
【００３４】
図９は、内部延設部材３の変形例である。同図（ａ）は、図１の例において、水流方向変更面３Ａを穴あき状にした例である。同図（ｂ）は、図１の例において、水流方向変更面３Ａを網目状部材で形成した例である。同図（ｃ）は、水流方向変更面３Ａが傾斜角度の異なる複数の面によって形成されている例である。同図（ｄ）は、同図（ｃ）において水流方向変更面３Ａを穴あき状にした例である。同図（ｅ）は、同図（ｃ）において水流方向変更面３Ａを網目状部材で形成した例である。水流方向変更面３Ａを穴あき状にすること、或いは水流方向変更面３Ａを網目状部材で形成することで、水流方向変更面３Ａを通過する水流と方向変換される水流が複雑に絡み合い、より多様性の高い水の流れを形成することができる。
【００３５】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る仔魚床構造１を採用した仔魚管理方法は、第１の敷設材１０を養魚池の底面Ｂ上に複数個一様に敷き詰め、第１の敷設材１０上に、第２の敷設材１１を第１の敷設材１０に沿って積層し、第２の敷設材１１は間隔を開けて配置し、第２の敷設材１１の最上面より上に任意に水位を設定して、第１及び第２の敷設材１０，１１内で仔魚を管理する。これによって、間隔を開けて積層された第２の敷設材１１の存在によって、水の流れを効果的に乱流に変えて、下層の敷設材に酸素の豊富な水を供給することができるので、積層された敷設材全体に均一に酸素供給を行うことができる。これによって、仔魚が特定の箇所に集中することがなく、管理する仔魚全体に十分な酸素供給を行うことができる。また、単位底面積当たりの仔魚生産量を高めることができ且つ管理する仔魚全てを健康的に成長させることができるので、生産性の高い仔魚管理を実現できる。
【００３６】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。上述の各図で示した実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【００３７】
１：仔魚床構造，
２：筒状外周部材，２Ａ：通水孔，
３：内部延設部材，３Ａ：水流方向変更面，
１０：第１の敷設材，１１：第２の敷設材，Ｂ：底面，
Ｈ，Ｈ１〜Ｈ３：間隔，Ｗｈ：水位
【技術分野】
【０００１】
本発明は、サケ・マス類等の回遊魚の人工増殖における仔魚管理に用いられる仔魚床構造及び仔魚管理方法に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
サケ・マス類等の回遊魚の人工増殖では、ふ化した仔魚の管理は養魚池や浮上槽を用いて行うのが一般的である。「仔魚」とは、ふ化したばかりで「さいのう」と呼ばれる栄養分を貯めた袋を持った生育段階の魚を指す。仔魚は、餌をとらず、さいのう内の養分だけで成長する。その後、餌が取れるまでに育った生育段階を仔魚と区別して「稚魚」と呼んでいる。なお、本発明においては、前述した仔魚と仔魚から稚魚に移る段階及び初期の稚魚を含めて仔魚と定義する。
【０００３】
養魚池や浮上槽では、水中に仔魚床（仔魚が留まる居場所）を形成して、仔魚が動き回って余計な栄養分を消費しない環境を整えてやる必要がある。仔魚は流れの少ない箇所に身を隠す習性があるので、養魚池や浮上槽の仔魚床では、人工的に仔魚が身を隠すための敷設材を配備している。養魚池では底面に小砂利を敷いて仔魚床とするのが一般的であり、浮上槽ではネットリングと呼ばれる網状の円筒部材を重ねて敷いて仔魚床とするのが一般的である。
【０００４】
また、下記特許文献１には、合成樹脂，セラミックス又は金属等で形成されるふ化育成用敷設体（成形体）を養魚池の底に多数個ランダムに敷くことで、仔魚の安息場所となる陰になった相互に連通する小空間を形成すること等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】実開平５−６２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
仔魚の成長にとっては十分な酸素の摂取が不可欠である。養魚池で仔魚に十分な酸素を与えるためには、仔魚床においても緩やかな水の流れが確保されることが必要になる。養魚池の底に小砂利や成形体を敷いて形成される従来の仔魚床では、水の流れが生じ難い養魚池の底面に近いところに留まった仔魚は酸欠を起こし易く、仔魚の成長にばらつきが生じやすい問題があった。また、養魚池内では水の流れが単調であるから、良好な条件が揃ったところに仔魚が集中して酸素摂取の競争を起こすことになり、競争に敗れた仔魚は良好な成長が得られない問題があった。
【０００７】
一方、浮上槽に用いられるネットリングを養魚池の底面に敷いて仔魚床を形成することが考えられる。この場合養魚池の水位を高くすると水面付近での水の流れは速くなるが、仔魚が入り込むネットリングが存在する養魚池の底では十分な水流が得られず、ネットリング内に十分な酸素を供給できない問題がある。これに対して、養魚池の水位を低くすると、ネットリング内で水の流れが得られ酸素供給は可能になるが、ネットリング内に常に直線的な水の流れが生じてネットリング内に居る仔魚を動かすことになり、仔魚がさいのうの栄養分を余計に消費することになるので、仔魚の成長管理上好ましくない。
【０００８】
これに対して、図１に示すように、間隔を開けてネットリングＲを養魚池の底面Ｂに敷くことが行われている。これによると、ある程度水位を高めて流速を大きくすることによって、ネットリングの無いところで適度な水流が得られるので、ネットリング内に酸素を多く含んだ水を供給しやすくなる利点が得られる。しかしながら、この形態では、間隔を開けた箇所の近傍に仔魚が集中しやすくなると共に、養魚池の底面に仔魚床と成らない空きスペースを形成することになるので、養魚池の底面積に対しての仔魚の生産量が低下することになり、生産性の高い仔魚管理を行うことができない問題がある。
【０００９】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、仔魚の動きを抑制すると共に、仔魚の集中が起こりにくく、仔魚床全体に渡って効果的に酸素供給を行うことができる仔魚床構造を提供すること、生産性の高い仔魚管理を行うことができること、使用する水量を少なくして水の消費量を低減させることができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【００１１】
回遊魚の人工増殖において仔魚管理に用いられる仔魚床の構造であって、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材を底面上に複数個一様に敷き詰め、前記第１の敷設材上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材を前記第１の敷設材に沿って積層し、前記第２の敷設材は間隔を開けて配置することを特徴とする仔魚床構造。
【００１２】
回遊魚の人工増殖において仔魚管理を行う仔魚管理方法であって、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材を養魚池の底面上に複数個一様に敷き詰め、前記第１の敷設材上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材を前記第１の敷設材に沿って積層し、前記第２の敷設材は間隔を開けて配置し、前記第２の敷設材の最上面より上に水位を任意に設定して、前記第１及び第２の敷設材内で仔魚を管理することを特徴とする仔魚管理方法。
【発明の効果】
【００１３】
このような特徴を有することで、所定の間隔を開けて配置された第２の敷設材を水流が通過することで水流が乱され、乱された水流は第２の敷設材の下に位置する第１の敷設材内に入り込むことになるので、養魚池などの底面に一様に敷き詰められた第１の敷設材内にも十分な酸素供給が可能になる。また、ある程度水位を低くして流速を小さくしても、第２の敷設材によって生じる乱流によって、第１の敷設材に酸素の豊富な水を供給できるので、少ない水量で健全な仔魚管理を行うことができる。これによって、仔魚の動きを抑制すると共に、仔魚の集中が起こりにくく、仔魚床全体に効果的に酸素供給を行うことができる。また、養魚池などの底面全体を利用した仔魚床を形成できるので、生産性の高い仔魚管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】間隔を開けてネットリングを養魚池の底面に敷いた仔魚管理の例を示した説明図である。
【図２】本発明の一実施形態に係る仔魚床構造及び仔魚管理方法を説明する説明図である。
【図３】本発明の他の実施形態に係る仔魚床構造及び仔魚管理方法を示した説明図である。
【図４】本発明の実施形態に係る仔魚床構造に対してふ化前の卵を支持する卵支持部材を配置した状態を示す説明図である。
【図５】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態を示した説明図である。
【図６】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態を示した説明図である。
【図７】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態（変形例）を示した説明図である。
【図８】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態（変形例）を示した説明図である。
【図９】本発明の実施形態における第１及び第２の敷設材の他の形態（変形例）を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する（なお、従来と同一の部分には同一の番号を付して重複した説明は省略する。）。図２は本発明の一実施形態に係る仔魚床構造及び仔魚管理方法を説明する説明図である。
【００１６】
本発明の実施形態に係る仔魚床構造１は、回遊魚の人工増殖において仔魚管理に用いられる仔魚床の構造であって、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材１０を底面Ｂ上に複数個一様に敷き詰め、第１の敷設材１０上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材１１を第１の敷設材１０に沿って積層し、第２の敷設材１１は間隔Ｈを開けて配置したものである。図示の例では、１個の敷設材１１毎に間隔Ｈを設けているが、複数個連ねて敷設材１１を並べて、複数個毎に間隔Ｈを設けるものであってもよい。
【００１７】
ここで用いられる第１の敷設材１０，第２の敷設材１１は、網状或いは多孔状などを有することで通水性を有し、水の流れが内部を通過するものであって、その内部に仔魚が留まる居場所が形成されるものであり、水の流れ方向に交差する方向に長手方向を向けて延在する筒状の部材である。断面の外形は円形，楕円形，矩形，三角形などどのような形態であってもよい。第２の敷設材１１の間隔Ｈは、全ての間隔が等間隔であっても、それぞれ又は一部が異なる間隔幅であってもよい。
【００１８】
このような形態の仔魚床構造１によると、第１の敷設材１０上に間隔を開けて配置された第２の敷設材１１によって、第２の敷設材１１を通過する際の水の流れが乱流に変わり、図示矢印で示したように、底面Ｂに敷き詰められた第１の敷設材１０内に流れ込む水の流れが形成される。この際、水の流速を比較的小さくし、水位Ｗｈを比較的低くして第２の敷設材１１の上面よりやや上になる程度にすることが好ましい。このように低い水位Ｗｈにすることで第２の敷設材１１を通過する水の流れを確実に生じさせることができ、そこで発生した乱流を第１の敷設材１０内に流れ込ませることができる。ここでの流速は第２の敷設材１１によって乱流が発生する程度の流速であればよく、水位を低くして流速を小さくすることで、使用する水の水量を少なくすることができる。
【００１９】
この仔魚床構造１は、第１の敷設材１０が養魚池などの底面に間隔無く一様に敷き詰められているので、底面積を有効に仔魚床として活用することができ、更に積層された第２の敷設材１１内にも仔魚を留めることができるので、底面積当たりの仔魚の生産性を高めることが可能になる。
【００２０】
図３（ａ），（ｂ）は、本発明の他の実施形態に係る仔魚床構造及び仔魚管理方法を示した説明図である。この実施形態では、第２の敷設材１１は、第１の敷設材１０上に多段に積層され、上層に積層される敷設材ほど同層の敷設材間の間隔を広くしている。同図（ａ）に示した実施形態では、第２の敷設材１１が第１の敷設材１０の上に２段積層されており、第１の敷設材１０の直上に積まれた敷設材の間隔Ｈ１よりその上に積層された敷設材の間隔Ｈ２が大きくなっている。すなわち、断面では山形状に第２の敷設材１１が積み重ねられている。
【００２１】
同図（ｂ）に示した実施形態では、第２の敷設材１１が第１の敷設材１０の上に３段、断面山形状に積層されており、第１の敷設材１０の直上に積まれた敷設材の間隔Ｈ１よりその上に積層された敷設材の間隔Ｈ２が大きくなり、更にその上に積層された敷設材の間隔Ｈ３がより大きくなっている（Ｈ１＜Ｈ２＜Ｈ３）。本発明の実施形態としては、更に第２の敷設材１１を４段以上、断面山形状に積み重ねたものであってもよい。
【００２２】
このような実施形態によると、前述した実施形態と同様に、第１の敷設材１０上に間隔を開けて配置された第２の敷設材１１によって、第２の敷設材１１を通過する際の水の流れが乱流に変わり、より下層の敷設材や底面Ｂに敷き詰められた第１の敷設材１０内にも酸素の豊富な水が流れ込むことになる。この際も、前述したように、水の流速を比較的小さくし、水位Ｗｈを比較的低くして第２の敷設材１１の上面よりやや上になる程度にすることが好ましい。このように低い水位Ｗｈにすることで第２の敷設材１１を通過する水の流れを確実に生じさせることができ、そこで発生した乱流を下層の敷設材や第１の敷設材１０内に流れ込ませることができる。
【００２３】
単純に間隔を設けることなく敷設材を積層すると、下の層ほど水の流れが生じ難くなり、最下層の敷設材内に居る仔魚は酸素不足になる。これに対して、図３（ａ），（ｂ）に示すように、積層された第２の敷設材１１に間隔を設けることで、より下層の敷設材内にも酸素供給に効果的な水流を入り込ませることができる。そして、第２の敷設材１１を多段に積層することで、仔魚が留まる場所の容積を増大させることができるので、均一な酸素供給を行うことができる仔魚の居場所を拡大でき、単位底面積当たりの仔魚の生産性を向上させることが可能になる。
【００２４】
図４は、本発明の実施形態に係る仔魚床構造に対してふ化前の卵を支持する卵支持部材を配置した状態を示す説明図である。卵支持部材（卵受け網或いはふ化盆）２０は、受精してふ化前の卵を支持するための網状又は多孔状の板部材である。ふ化した仔魚は卵支持部材の網目又は孔を通って仔魚床内に落下する。
【００２５】
同図（ａ）に示した例では、第１の敷設材１０の上で、第２の敷設材１１の間に、卵支持部材２０を配置している。この例では、水位Ｗｈを低くすることができ、ふ化が完了した後、卵支持部材２０を取り除いてそのまま仔魚管理を行うことができる。同図（ｂ）に示した例では、第２の敷設部材１１上に卵支持部材２０を配置している。この例では、ふ化する前までは水位Ｗｈを比較的高くして卵全体が水に浸かるようにしておき、ふ化が完了した後には、卵支持部材２０を取り除いた後、水位Ｗｈを低く調整して仔魚管理を行う。
【００２６】
図５及び図６は、第１及び第２の敷設材１０，１１の他の形態を示した説明図である。以下に示す敷設材の形態は、第１の敷設材１０と第２の敷設材１１の両方に適用してもよいし、第２の敷設材１１のみに適用してもよい。また、第２の敷設材１１の一部のみに適用してもよい。この敷設材１０，１１は、筒状外周部材２と内部延設部材３によって形成され、内部延設部材３の存在によって、内部を通過する水流がより効果的な乱流になり易い構造になっている。
【００２７】
筒状外周部材２は、側部全体に通水孔２Ａが形成された外形が筒状の部材である。通水孔２Ａの形状は特に限定されないが図示の例では菱形形状を有している。また、図示の例では螺旋状の線状部材を所定間隔で結合することで通水孔２Ａを側部に形成した筒状の部材を形成しているが、これに限らず、側部を板状にして打ち抜き孔（パンチ孔）などで通水孔２Ａを形成したものであってもよい。
【００２８】
内部延設部材３は、筒状外周部材２内に配置され、筒状外周部材２の延長方向に沿って延設される部材である。そして、この内部延設部材３は、複数の異なる方向に対面した水流方向変更面３Ａを有した板状部材によって形成されている。図示の例では、水流方向変更面３Ａは連続的なねじれ面によって形成されているが、その形態は後述する各種の形態に変形可能である。
【００２９】
内部延設部材３は、図７に示すように、筒状外周部材２の内部で方向を様々に変えた水流方向変更面３Ａを形成する。図示の例では、Ｘ１−Ｘ１断面からＸ５−Ｘ５断面に至るまで、４５度ずつ角度を変えた面が形成されている。また、この実施形態では、筒状外周部材２の延長軸に垂直な断面の外周形状が略円形又は楕円形状になっている。
【００３０】
このような敷設材１０，１１を用いた仔魚床構造では、筒状外周部材２の通水孔２Ａからその内部に水が流れ込み、内部延設部材３の水流方向変更面３Ａによって流れ込んだ水の流れ方向が変更される。これによって、筒状外周部材２内に潜む仔魚にとって、様々な方向の水流が形成され、しかもその流れは通水孔２Ａを通過して水流方向変更面３Ａに当たることによって適度な流速に緩められる。これによって、仔魚床内で分散配置された仔魚に対して、均等に酸素取得ができる環境が与えられる。また、筒状外周部材２内で様々な方向に流れる適度に緩やか水流を形成することができるので、筒状外周部材２内に潜む仔魚にとって天然の河川の底に居るような自然な環境を与えることができる。これによって、自然環境に近い条件で健全な仔魚の成長を促すことができる。
【００３１】
さらに、水流方向変更面３Ａに当たった水が乱流に効果的に変わるので、より下層の敷設材１０，１１に酸素の豊富な水を効果的に供給することができる。これによって、より下層の敷設材１０，１１内に居る仔魚に酸素を十分に供給することが可能になり、仔魚床全体に均一に酸素供給を行うことができる。
【００３２】
図７〜図９は、敷設材１０，１１の変形例を示している。図７は、筒状外周部材２の延長軸に垂直な断面の外周形状が略円形又は楕円形以外の例を示しており、同図（ａ）に示すように外形断面が四角形状、同図（ｂ）に示すように外形断面が三角形状、同図（ｃ）に示すように外形断面が５〜８角形状であってもよい（図示は六角形状）。
【００３３】
図８は、筒状外周部材２の変形例であり、同図（ａ）は側面部が線状部材を網目状に配置して通水孔２Ａを形成した例、同図（ｂ）は側面部の通水孔部２Ａの形状を四角状にした例、同図（ｃ）は側面部の通水孔部２Ａの形状を多角形状（図示では六角形状）にした例をそれぞれ示している。通水孔２Ａの形状によっても筒状外周部材２内の水の流れは変わるので、この形状を様々に変えることで多様な水の流れを形成することができる。また、一つの筒状外周部材２で様々な形状の通水孔２Ａを組み合わせて形成しても良い。
【００３４】
図９は、内部延設部材３の変形例である。同図（ａ）は、図１の例において、水流方向変更面３Ａを穴あき状にした例である。同図（ｂ）は、図１の例において、水流方向変更面３Ａを網目状部材で形成した例である。同図（ｃ）は、水流方向変更面３Ａが傾斜角度の異なる複数の面によって形成されている例である。同図（ｄ）は、同図（ｃ）において水流方向変更面３Ａを穴あき状にした例である。同図（ｅ）は、同図（ｃ）において水流方向変更面３Ａを網目状部材で形成した例である。水流方向変更面３Ａを穴あき状にすること、或いは水流方向変更面３Ａを網目状部材で形成することで、水流方向変更面３Ａを通過する水流と方向変換される水流が複雑に絡み合い、より多様性の高い水の流れを形成することができる。
【００３５】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る仔魚床構造１を採用した仔魚管理方法は、第１の敷設材１０を養魚池の底面Ｂ上に複数個一様に敷き詰め、第１の敷設材１０上に、第２の敷設材１１を第１の敷設材１０に沿って積層し、第２の敷設材１１は間隔を開けて配置し、第２の敷設材１１の最上面より上に任意に水位を設定して、第１及び第２の敷設材１０，１１内で仔魚を管理する。これによって、間隔を開けて積層された第２の敷設材１１の存在によって、水の流れを効果的に乱流に変えて、下層の敷設材に酸素の豊富な水を供給することができるので、積層された敷設材全体に均一に酸素供給を行うことができる。これによって、仔魚が特定の箇所に集中することがなく、管理する仔魚全体に十分な酸素供給を行うことができる。また、単位底面積当たりの仔魚生産量を高めることができ且つ管理する仔魚全てを健康的に成長させることができるので、生産性の高い仔魚管理を実現できる。
【００３６】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。上述の各図で示した実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【００３７】
１：仔魚床構造，
２：筒状外周部材，２Ａ：通水孔，
３：内部延設部材，３Ａ：水流方向変更面，
１０：第１の敷設材，１１：第２の敷設材，Ｂ：底面，
Ｈ，Ｈ１〜Ｈ３：間隔，Ｗｈ：水位
【特許請求の範囲】
【請求項１】
回遊魚の人工増殖において仔魚管理に用いられる仔魚床の構造であって、
通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材を底面上に複数個一様に敷き詰め、前記第１の敷設材上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材を前記第１の敷設材に沿って積層し、前記第２の敷設材は間隔を開けて配置することを特徴とする仔魚床構造。
【請求項２】
前記第２の敷設材は、前記第１の敷設材上に多段に積層され、上層に積層される敷設材ほど同層の敷設材間の間隔を広くすることを特徴とする請求項１記載の仔魚床構造。
【請求項３】
前記仔魚床の水位を前記第２の敷設材の最上面より上に設定することを特徴とする請求項１又は２記載の仔魚床構造。
【請求項４】
前記敷設材は、側部全体に通水孔が形成されている筒状外周部材と、該筒状外周部材内に配置され、該筒状外周部材の延長方向に沿って延設される内部延設部材とを備え、前記内部延設部材は、複数の異なる方向に対面した水流方向変更面を有することを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の仔魚床構造。
【請求項５】
前記内部延設部材は、前記水流方向変更面が連続的なねじれ面によって形成されていることを特徴とする請求項４に記載された仔魚床構造。
【請求項６】
前記内部延設部材は、前記水流方向変更面が傾斜角度の異なる複数の面によって形成されていることを特徴とする請求項４に記載された仔魚床構造。
【請求項７】
回遊魚の人工増殖において仔魚管理を行う仔魚管理方法であって、
通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材を養魚池の底面上に複数個一様に敷き詰め、前記第１の敷設材上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材を前記第１の敷設材に沿って積層し、前記第２の敷設材は間隔を開けて配置し、前記第２の敷設材の最上面より上に任意に水位を設定して、前記第１及び第２の敷設材内で仔魚を管理することを特徴とする仔魚管理方法。
【請求項１】
回遊魚の人工増殖において仔魚管理に用いられる仔魚床の構造であって、
通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材を底面上に複数個一様に敷き詰め、前記第１の敷設材上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材を前記第１の敷設材に沿って積層し、前記第２の敷設材は間隔を開けて配置することを特徴とする仔魚床構造。
【請求項２】
前記第２の敷設材は、前記第１の敷設材上に多段に積層され、上層に積層される敷設材ほど同層の敷設材間の間隔を広くすることを特徴とする請求項１記載の仔魚床構造。
【請求項３】
前記仔魚床の水位を前記第２の敷設材の最上面より上に設定することを特徴とする請求項１又は２記載の仔魚床構造。
【請求項４】
前記敷設材は、側部全体に通水孔が形成されている筒状外周部材と、該筒状外周部材内に配置され、該筒状外周部材の延長方向に沿って延設される内部延設部材とを備え、前記内部延設部材は、複数の異なる方向に対面した水流方向変更面を有することを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の仔魚床構造。
【請求項５】
前記内部延設部材は、前記水流方向変更面が連続的なねじれ面によって形成されていることを特徴とする請求項４に記載された仔魚床構造。
【請求項６】
前記内部延設部材は、前記水流方向変更面が傾斜角度の異なる複数の面によって形成されていることを特徴とする請求項４に記載された仔魚床構造。
【請求項７】
回遊魚の人工増殖において仔魚管理を行う仔魚管理方法であって、
通水性を有し長手方向に延びる筒状の第１の敷設材を養魚池の底面上に複数個一様に敷き詰め、前記第１の敷設材上に、通水性を有し長手方向に延びる筒状の第２の敷設材を前記第１の敷設材に沿って積層し、前記第２の敷設材は間隔を開けて配置し、前記第２の敷設材の最上面より上に任意に水位を設定して、前記第１及び第２の敷設材内で仔魚を管理することを特徴とする仔魚管理方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【公開番号】特開２０１１−１６７１２２（Ｐ２０１１−１６７１２２Ａ）
【公開日】平成２３年９月１日（２０１１．９．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−３３７５３（Ｐ２０１０−３３７５３）
【出願日】平成２２年２月１８日（２０１０．２．１８）
【出願人】（５９４０９５２４６）
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年９月１日（２０１１．９．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年２月１８日（２０１０．２．１８）
【出願人】（５９４０９５２４６）
【Ｆターム（参考）】
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