説明

仕上げ方法

【課題】岩綿を含む付着強度の小さい被覆層に対して、被覆層表面を強化し、被覆層表面の粗さを滑らかにする、剥落が発生しない、耐火性、断熱性を阻害しない仕上げ方法を提供する。
【解決手段】岩綿を含む被覆層に対して、下塗り材として主成分に合成樹脂エマルションあるいは水溶性珪酸塩溶液のどちらか、またはその両者を含む組成物を用い、200〜1000g/m塗布し、この上に比重0.2〜1.0にある軽量モルタルを施工する。また、下塗り材に主成分に一般式xMO・ySiO・aq(式中Mは周期律表第1A族に属するアルカリ金属を表わし、x及びyは整数であり、y/xは2.0〜4.5の値、aqは水溶液を示す。)で表わされる水溶性珪酸塩溶液(A組成物)と合成樹脂エマルション(B組成物)および/または水溶性樹脂(B組成物)の組成比率、A:B=10:1〜1:10にて配合したものを利用するのが良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩綿を含む材料により建築物の柱、梁等を被覆してある個所に対し、その表面に色付けとなる仕上げ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、岩綿を含む被覆材が、耐火、断熱、吸音、吸湿を目的として施工されていた。しかしながら、岩綿を含む被覆材であっても、その見掛けが石綿を含む被覆材に似ているため、その表面を如何に処理するかが課題になっている。また、岩綿を含む被覆材においても、表面が劣化した場合に、例え健康に害が無いとしてもその表面をどのように補修し、仕上げるかが課題となっている。
【0003】
さらに、耐火等を目的として施工された岩綿を含む被覆材は、その付着強度が小さい場合が有り、その表面への仕上げをスプレー塗装により行おうとした時には、そのスプレーに圧力によって岩綿が飛散したり、その被覆材が剥落することにも繋がった。
【0004】
先行技術の特許文献1として示す、本件出願人と同じ出願人による特開平4−60054号公報では、石綿被覆層の封じ込めおよび仕上げ仕上げ用材料についての発明が開示されている。この特許文献1では、その特許請求の範囲、公報の第2頁上段左欄から第3頁上段左欄には、石綿被覆層に対して水溶性珪酸塩溶液と合成樹脂エマルジョンおよび/または水溶性樹脂を結合材とし、無機質軽量骨材を骨材とする仕上げ用材料を用いることが説明されている。
【0005】
【特許文献1】特開平4−60054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際に、岩綿を含む被覆材が施工された現場において、被覆材の結合材にはセメントを用いてはいるものの、その組成は、岩綿を50〜75%、セメントを20〜40%含んだものであり、硬化後の付着強度はせいぜい100g/cmである。
【0007】
日本石綿製品工業会編「石綿工業製品」昭和41年8月10日発行の中では、吹付石綿の付着強度を100gf/cm(この文献では100g/cmと表記されている。)と説明している。また、内藤龍夫著「建築の耐火被覆工法」昭和56年8月5日、鹿島出版会発行において、岩綿モルタルの付着力を試験しているが、場合によっては測定不能、測定できたときの数値においては20gf/cm〜90gf/cm、平均値では27gf/cmと言う記載がある。(上記文献でも単位はg/cmと表記されている。)
【0008】
一方、この発明の発明者が保温材として用いられる嵩密度0.12g/cmのロックウール保温材に対して直接一定面積の重しを両面テープにより貼り付けて、逆さにしたところ、5g/cmの荷重であっても保持することは不可能であった。このように付着強度が小さいものである時、表面にスプレー塗装による仕上げを施そうとしたときには、その風圧によって岩綿の繊維が飛散することとなる。岩綿を含む被覆材の付着強度が小さくても剥落による落下事故が殆どないのは、被覆材の付着強度が小さくても繊維が絡み合うことによりその自重を支えると言う総持ちの形で付着しているものである。この数値は、嵩密度が0.3g/cm〜0.7g/cmにある被覆材層を厚み5cmに形成しても、その重さを支える強度とはなる。しかしながら、これほどまでに付着強度が小さいと、外力が加わった場合には、その表面の破損、飛散、剥落に繋がることとなった。
【0009】
この発明では、岩綿を含む付着強度の小さい被覆層を仕上げするに当たり、被覆層表面を強化し、被覆層表面の粗さを滑らかにする、剥落が発生しない、耐火性、断熱性を阻害しない仕上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の請求項1の仕上げ方法では、耐火、断熱、吸音等を目的とした岩綿を含む付着強度の小さい被覆層を仕上げするに当たり、下塗り材として主成分に合成樹脂エマルションあるいは水溶性珪酸塩溶液のどちらか、またはその両者を含む組成物を用い、200〜1000g/m塗布し、この上に比重0.2〜1.0にある軽量モルタルを施工することを要旨としている。
【0011】
同様に請求項2の仕上げ方法では、請求項1の発明の軽量モルタル施工後に、塗布量100〜800g/mの上塗り塗料を塗装することを要旨としている。
【0012】
請求項3の仕上げ方法では、請求項1または請求項2の発明において、下塗り材に主成分に一般式xMO・ySiO・aq(式中Mは周期律表第1A族に属するアルカリ金属を表わし、x及びyは整数であり、y/xは2.0〜4.5の値、aqは水溶液を示す。)で表わされる水溶性珪酸塩溶液(A組成物)と合成樹脂エマルション(B組成物)および/または水溶性樹脂(B組成物)の組成比率、A:B=10:1〜1:10にて配合したものを利用することを要旨としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、下塗り材を利用することにより、被覆層表面の強化と被覆層表面の吸水を抑えることが可能となる。また、下塗り材による薄膜が被覆層表面に存在することとなる。従って、表面の吸水が抑制された状態において、軽量モルタルを仕上げることにより、モルタルのドライアウトを防ぐことができ、付着力が向上したものとなる。そして、表面を効率的に仕上げる被覆が行えることとなる。下塗り材の上に塗装される軽量モルタルが着色されたものであるとき、そのモルタルの色斑の発生を抑制することにも繋がる。
【0014】
表面に用いられるモルタルについても、比重が小さく被覆材に掛かる重量負担が小さくなると同時に、多孔質モルタルとなることによりその凝集力の発生も小さいものとなる。
【0015】
請求項2の発明によれば、軽量モルタルが最終仕上がりとなる場合に比べ、任意の色・模様となる仕上がり面が得られるものとなる。
【0016】
請求項3の発明によれば、下塗り材に主成分に一般式xMO・ySiO・aq(式中Mは周期律表第1A族に属するアルカリ金属を表わし、x及びyは整数であり、y/xは2.0〜4.5の値、aqは水溶液を示す。)で表わされる水溶性珪酸塩溶液(A組成物)と合成樹脂エマルション(B組成物)および/または水溶性樹脂(B組成物)の組成比率、A:B=10:1〜1:10にて配合したものを利用することにより被覆層への浸透補強及び表面に樹脂皮膜を形成することとなり、下塗りの上に施工される軽量モルタルとの密着、モルタル層表面の平滑さを得られることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の構成要素を詳細に説明する。この発明では、耐火、断熱等を目的とした岩綿を含む付着強度の小さい被覆層に対して、耐火性あるいは断熱性を損なわない形で仕上げするための手段を提供するものである。
【0018】
始めに、岩綿を含む被覆層とは、その修飾語の通り建築物の柱、梁、屋根、床下、配管、ダクト等に対して耐火、断熱、吸音等を目的に被覆使用されているものである。
【0019】
この発明において付着強度の小さいとは、岩綿を含む被覆材が被覆材自身の付着強度として5000Pa未満にあることを言う。更に、その付着強度が3000Pa未満にある時は、発明の効果がより有効となる。なお、1Kgf/cm=98066Pa≒0.1MPaであり、100gf/cmでは、0.01MPaとなる。同様に、1Kgf/cm=98kPa≒100kPa、1gf/cm≒100Paとなる。
【0020】
下塗り材とは、嵩密度の小さい被覆層の表面と内部を補強し、表面の吸い込みを小さくし、この上に施工される軽量モルタルとの密着を良くするためのものである。下塗り材に用いられる材料の組成としては、主成分に合成樹脂エマルションあるいは水溶性珪酸塩溶液のどちらか、またはその両者を含むものが利用される。
【0021】
中でも、無機・有機複合となるものを用いることが望ましい。使用される無機結合材としては、水溶性珪酸塩溶液が例示され、市販品では、日本化学工業(株)社製のJ珪酸ソーダ1号、2号、3号、珪酸ソーダ4号、A珪酸カリ、2K珪酸カリ、珪酸リチュウム30、珪酸リチュウム40などがある。これらは一般式xMO・ySiO・aq(式中Mは周期律表第1A族に属するアルカリ金属を表わし、x及びyは整数であり、y/xは2.0〜4.5の値、aqは水溶液を示す。)で表わされる水溶性珪酸塩溶液であれば良い。式中、y/xの値を2.0〜4.5の範囲に限るのは、安定性、密着性にバランスのとれたものを得るためであり、y/xの値が2.0未満では安定性にやや問題が生じ、4.5を超えると連続皮膜性に欠け飛散防止効果が悪くなるためである。
【0022】
有機結合材には、合成樹脂エマルションまたは水溶性樹脂が用いられ、その樹脂の選択としては、各種アクリル酸エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2エチルヘキシルエステル等)の共重合物、スチレン・アクリル酸エステル共重合物、ベオバアクリル酸エステル共重合物のようなアクリル樹脂をベースとしたもので、樹脂の末端または/および側鎖等に官能基としてのカルボキシル基を含み、樹脂の酸価で表して2〜30の範囲にある高官能性のものが良く、高官能性である必要性は水溶性珪酸塩溶液と安定に混和できるようにするためである。そして、その場合の酸価を2〜30としたのは、2未満では水溶性珪酸塩溶液との混和性が悪く凝集物を生じたり、高粘度化、ゲル化するからであり30を超えると混和性は良好であっても耐水性が徐々に低下するため良くない。
【0023】
上記無機物と有機物の混合比は、水溶性珪酸塩溶液をA組成物とし、合成樹脂エマルションあるいは水溶性樹脂をB組成物とした時、固形分比においてA組成物:B組成物=10:1〜1:10にて配合するのが良い。中でも、4:1〜1:4の範囲にあるのがバランスのとれたものとなる。両者の混合に於いて、10:1を超えてA組成物が多い時には、耐水性に難のあるものとなり、逆に1:10を超えてB組成物が多いときには、岩綿と呼ばれる人造鉱物繊維に対する付着性能が損なわれる。
【0024】
これら結合材以外に、一般的な塗料配合成分である、消泡剤、分散剤、湿潤剤などとして用いられる界面活性剤、造膜助剤、防凍剤などとして用いられる高沸点溶剤、粘度、粘性調整のための増粘剤、防腐剤、防藻剤、防黴剤を前記性能が損なれない範囲において添加することができる。
【0025】
軽量モルタルは、被覆層の表面を凡そ滑らかにし、耐火性能、断熱性能を損なわない形で仕上げることを可能にするものである。用いられる軽量モルタルの比重は硬化後において0.2〜1.0にあるものが良い。また、好ましくは0.25〜0.4にあるものが良い。
【0026】
モルタルの嵩比重が0.2未満のものは、硬化、乾燥後の比重が0.2未満となるためのモルタルスラリーが安定して得難く、またこのようなスラリーでは均一なスラリーとすることも困難である。そして、得られたモルタルは孔の割合が大きなものであり、表面は粗く、モルタルの強度が小さく、耐久性にも劣るものとなる。
【0027】
また、1.0を超えるものでは重量が大きくなり、下地への負荷も大きくなる。また、硬化時の凝集力の発生が大きく剥落の可能性を大きくする。得られたモルタル層は、熱伝導率が大きく、吸音、吸湿、断熱の性能として劣ったものとなる。
【0028】
軽量モルタルの組成としては、主成分にセメントを15〜60重量%、軽量骨材を10〜68重量%、繊維を0〜3重量%、起泡剤を0〜3重量%含むものが利用される。
【0029】
成分の一つのセメントには、JIS R5210で規定する各種ポルトランドセメント,白色ポルトランドセメント,JIS R5211で規定する各種高炉セメント,JIS R5212で規定する各種シリカセメント,JIS R5213で規定する各種フライアッシュセメントのような混合セメントのいずれかあるいはこれらを組み合わせたものである。
【0030】
成分の一つである軽量骨材には、無機軽量骨材としての天然または工業的に産出するシラス,ガラス屑,真珠岩,黒曜石,雲母状鉱物を加熱加工して中空発泡体としたシラスバルーン,ガラスバルーン,パーライト,焼成ヒルイシ、または、天然軽石を例示することができる。また、耐火性能を問題にしないところでは、有機質のスチレン、エチレン、ウレタンなどの合成樹脂の発泡体を用いることも可能である。
【0031】
成分の一つの繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機系繊維及びビニロン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロプレン繊維などの有機高分子系繊維があげられる。これらも単独あるいは2種以上を組合せて使用できる。
【0032】
成分の一つの起泡剤としては、アルキルエーテル系等の非イオン系界面活性剤や、アニオン系界面活性剤等を好適に使用でき、樹脂石鹸類、加水分解蛋白類、表面の酸化を抑制したアルミニウム粉末からなるものも使用可能である。
【0033】
このほか補助的に、珪砂、寒水砂等の細骨材あるいは充填剤、炭酸カルシウム,タルク,クレー,アルミナ等の体質顔料や酸化チタン,ベンガラ,カーボンブラック,フタロシアニンブル一等の各種着色顔料、合成樹脂エマルション、粉末再乳化性合成樹脂、防錆剤、粉塵防止剤を必要に応じて添加することもできる。これらの補助的な添加は、本願の目的を損わない範囲において使用される。
【0034】
下塗り材塗装の前に、被覆層補強剤を用いることが可能である。被覆層補強剤を用いることにより、被覆層の下地に対する付着力を補強することができる。被覆層補強剤には結合材を無機・有機複合となるものを用いることが望ましい。また、無機の結合材を用いることは耐火性能を劣化させないことから好ましい。但し、無機であってもセメントを用いることは、硬化時に収縮し、その凝集力が大きいことから望ましくない。更に、有機物にあっては、熱可塑性樹脂であることが凝集力を大きくしないことから望ましい。
【0035】
この被覆層補強剤に利用される組成物は下塗り材に利用されるものと同様の技術思想により選択されるので、具体的に利用されるものについては、前述の段落0020より段落0023に開示されるものを利用すれば良い。
【0036】
上塗り塗料は、軽量モルタルでは制限されるモルタル色に対して任意の色、模様を付与するために用いられる。この上塗り塗料には、公知の水性塗料を用いれば良い。溶剤形の塗料も使用可能ではあるが、被覆層の形成が基本的に室内であることを考慮すると、推奨できる選択とは言えない。好ましくは、揮発性溶剤を含まない塗料であることが望ましい。
【0037】
上塗り塗料の塗布量は、100〜800g/mの範囲内にあるのが良い。好ましくは、200〜400g/mの範囲である。100g/m未満にあるときは、十分な隠蔽が得難くなり、色斑が生じる仕上がりとなってしまう。また、800g/mを超える範囲においては、上塗り塗料が垂れることがあったり、その乾燥に時間が掛かることとなる。また、乾燥時にひび割れが生じたりする。
【実施例】
【0038】
実施例1では、下地は折板屋根であり断熱目的によるロックウールの吹付けが行われているものである。このロックウール吹付の付着強度は3200Paであった。
【0039】
付着強度の測定は、特製の治具を用いて測定した。測定用治具は、7cm角の平坦な接着面を持つものであり、接着面には両面粘着テープにより粘着剤層が出現するようになっている。接着面の反対側では、対角線方向中央にバネばかりのフックが係るように三角の留め金が接触角を可変の状態にして付けたものとなっている。そして、この測定用治具を被覆層に強く押しつけた後、留め金にバネばかりのフックを引っかけてゆっくり引張り、被覆層から剥がれた時の数値を読み取り、単位面積当りの強度とした。測定用治具の重さは56gであり、この重さと計りの数値の合計を計測面積である49cmで除した数値が付着強度となる。
【0040】
実施例1では、このロックウール被覆層に対して、下塗り材に合成樹脂エマルションを主成分とするものを施工した。下塗り材の組成については、下記配合1に示す。下塗り材の塗布量は500g/mとした。施工に当たっては、(株)明治機械製作所製のエアースプレーの一種であるリシンガンを使用して吐出圧力0.29MPa、送風量80リットル/分の条件により塗装した。下塗り材施工後、翌日に軽量モルタルとして、下記配合2に示すものに水を適当量加えモルタルミキサーにより混練し、エアースプレーガンの一種であるホッパーガンにより施工した。その塗布量は、混練時の配合水を含め凡そ6000g/mであり、その平均厚みは10mmであった。
【0041】
配合1
白色顔料 1.4重量%
充填材 31 重量%
合成樹脂エマルション 16 重量%
(固形分50%)
造膜助剤 2.2重量%
粘性調整剤 0.3重量%
軽量骨材 21 重量%
水 28.1重量%
【0042】
配合2
セメント 30 重量%
再乳化型合成樹脂 4.0重量%
粘性調整剤 2.8重量%
充填材 3.2重量%
軽量骨材 60 重量%
この軽量モルタルの硬化後の比重は、0.3であった。
【0043】
実施例2では、実施例1と同じ被覆層面に対して、下塗り材に無機・有機複合となる結合材からなるものを使用した。この下塗り材の組成は下記配合3に示す。下塗り材を500g/m塗布した後、翌日に前記配合1からなる軽量モルタルを実施例1と同じ塗装機により吹付け塗装し、表面をコテ押さえして平滑面とした。
【0044】
配合3
珪酸質系塗料の組成は、
合成樹脂エマルション 14.5重量%
(固形分50%)
水溶性珪酸塩溶液 17.8重量%
(固形分25%)
白色顔料と体質顔料 53.1重量%
添加剤 1.7重量%
水 12.9重量%
である。
【0045】
実施例3は、実施例2の施工後、その一部に対して上塗り塗料として、下記配合4に示す合成樹脂エマルション系塗料をエアースプレーにより塗装した。その塗布量は300g/mとした。
【0046】
配合4
合成樹脂エマルション系塗料の組成は、
合成樹脂エマルション 61.4重量%
(固形分50%)
白色顔料 20.4重量%
添加剤 11.0重量%
水 7.2重量%
【0047】
比較例1として、実施例1における下塗り材の施工を省き、直接配合2の軽量モルタルの吹付けを行った。
【0048】
比較例2として、実施例1における軽量モルタルの代わりに下記配合5からなる樹脂入りモルタルの塗装を行った。
【0049】
配合5
セメント 20 重量%
合成樹脂エマルション 9.0重量%
(固形分50%)
粘性調整剤 2.8重量%
充填材 3.2重量%
細骨材 50 重量%
軽量骨材 15 重量%
この樹脂入りモルタルの硬化後の比重は、2.0であった。
【0050】
比較例3として、実施例3にて使用した軽量モルタルを使用せず、上塗り塗料の塗装を行った。
【0051】
実施例あるいは比較例の試験施工を行ったものについて、以下に示す比較試験を行い性能の比較を行った。
比較試験としては、付着試験、軽量モルタルあるいは樹脂モルタルの熱伝導率、モルタル施工時の岩綿飛散程度の比較を行った。付着強度試験は、前述の段落0038に記載した方法であり、付着強度の測定とともに、破断がどの部分から生じたのかを確認した。
【0052】
熱伝導率の測定は、JIS A1412−2「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法―第2部:熱流計法(HFM法)」に倣い、供試材料であるモルタルスラリーから200mm角、10mm厚のモルタル板を作成し、その熱伝導率の測定を行った。
【0053】
モルタル施工時の岩綿飛散程度の比較は、下塗り材の施工の翌日に施工を行った軽量モルタルあるいは樹脂入りモルタルの塗装の際に発生する、岩綿の繊維飛散による空気の濁り具合を、肉眼によっては感じられないものを○、肉眼によっても浮遊する繊維による白濁を感じ取ることができるものを×と評価した。
【0054】
上記した、3種の比較試験による結果を下記表1にまとめて記す。
【0055】
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火、断熱、吸音等を目的とした岩綿を含む付着強度の小さい被覆層を仕上げするに当たり、下塗り材として主成分に合成樹脂エマルションあるいは水溶性珪酸塩溶液のどちらか、またはその両者を含む組成物を用い、200〜1000g/m塗布し、この上に比重0.2〜1.0にある軽量モルタルを施工することを特徴とする仕上げ方法。
【請求項2】
軽量モルタル施工後に、塗布量100〜800g/mの上塗り塗料を塗装することを特徴とする請求項1に記載の仕上げ方法。
【請求項3】
下塗り材に主成分に一般式xMO・ySiO・aq(式中Mは周期律表第1A族に属するアルカリ金属を表わし、x及びyは整数であり、y/xは2.0〜4.5の値、aqは水溶液を示す。)で表わされる水溶性珪酸塩溶液(A組成物)と合成樹脂エマルション(B組成物)および/または水溶性樹脂(B組成物)の組成比率、A:B=10:1〜1:10にて配合したものを利用することを特徴とする請求項1または請求項2記載の仕上げ方法。

【公開番号】特開2007−162351(P2007−162351A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360595(P2005−360595)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)