説明

代理店制度を残した新規な製造小売流通システム

【課題】お客様が重い美容商品を持ち帰らなくてよいこと及び美容室の来店サイクルの途中に商品がなくなった場合、他の商品で代替させないで、美容院が勧める美容製品メーカーの商品が容易に購入できるシステムの構築が課題であった。また、製品を企画し、リスクを追いながら新製品を顧客に提供する製造小売的な体制づくりも重要な課題であった。
【解決手段】本発明では、顧客に密着している美容室やサロンに販売をゆだね、顧客が振り込んだ代金は指定口座にストックし、定期的に美容サロンに送金した時点で指定口座への売上を取り消し、新たに代理店に売上計上するシステムであって、物品の輸送と顧客の支払い以外をインターネットで行なうビジネスモデルである。代理店を残したまま、代理店には在庫を置かないで、顧客に商品を直送できる新規なビジネスシステムを確立して解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容室、代理店、美容製品メーカーが共同して行なう新規な製造小売流通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、製品メーカーの製品が、消費者に渡るまでに、代理店或いは一次問屋、二次問屋又は商社のような中間業者が取り次いでいるのが古くからの慣例である。しかし、海外の製造小売の安価な製品が輸入される時代となり、国内生産の縮小による工場閉鎖が続いている。とくに、繊維製品では顕著であって、国内消費の70から80%が輸入品に取って代わった。その中で、消費者ニーズにマッチした付加価値製品を製造するため、自ら企画し、リスクを負いながら自ら販売する、いわゆる製造小売企業が、最近復活し成長している。メーカーに情報が入り易く、売り逃しと売れ残りによる生産ロスと流通ロスが大幅に減少するという成果が上っている。
【0003】
美容製品の場合には、製品メーカーは代理店を通して美容室や美容サロンに製品を販売している。依然として生産ロスと流通ロスを抱えた流通の仕組みであり、このままでは、グローバル化が進みつつある美容製品産業の中で、外国資本の美容製品メーカーとの競争において太刀打ちできない危機感がある。早急に情報技術の進歩を取り入れた流通システムを美容製品の流通分野で確立する必要があった。しかし、歴史的に見て代理店の貢献も大なるものがあり、他の業界で発生している中抜きの流通システムへと進むには色々の問題がある。しかし、一方では、美容室においても固定客の確保のために、顧客のニーズを美容製品メーカーに直接伝えて、顧客に適した美容製品を紹介し、家庭での美容製品として永続的な使用を勧め、固定客として売上拡大につなげたい背景があった。公開特許公報フロントページのキーワード検索では、関連した先行特許はなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの顧客が、自分の髪のパーマやカラーリングについて、美容室に全てをまかす方式ではなく、自分の体質や髪の傷み具合を考慮した上で、それぞれの顧客に適した美容製品を、美容師との対話の中から選択して、美容室での使用と家庭での使用に分けて、頭皮頭髪の清潔性、カールの保持、ストレート形状の維持、染色した髪の維持、白髪の染色、痛んだ髪の修復等を、家庭で行なえる仕組みを作る。顧客の情報や声が、代理店を通しての間接入手ではなく、美容室や美容サロンより直接、美容製品メーカーに届く仕組みを、代理店を残したまま構築するのが解決しようとする課題である。
【0005】
さらに、他の課題として、顧客は美容院から結婚式、パーティー等へ直行するケースがしばしばあり、家庭での美容製品を持ち帰れない場面が多く、販売機会を逃す事が起こっていた。美容院のお勧めの商品が欲しくてもそのためだけに美容院に行かず、ドラッグストアで、別の商品を入手するケースもあった。これが解決しようとするもう一つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
美容室や美容サロンでのサービス部分と顧客が家庭で実行可能な作業に分けて、後者の製品を充実させ、かつ顧客に販売するチャンスを喪失しないようにするには、1美容師の勧める顧客に適した美容製品の情報が、直接美容製品メーカーに入る仕組みを作る。2その情報の伝達は、記録が残り相互に通信の可能なインターネットで行なう。3顧客の必要とする製品は、可能な限り直送し、その配送と受け取った顧客の代金支払いのみリアルサービスで実施する。4顧客の支払い代金は、代理店でもなく美容室でもなく、美容製品メーカーの指定口座に一時的にストックし、一定の期間を決めて、美容室に振り込む。5その時点で、指定口座の売上を消滅させ、代わりに代理店に売上計上をする。6代理店は美容室や美容サロンからマージンを受け取る。これらの仕組みをインターネットにより実行し、汎用品の販売の代理店を残したままの製造小売流通システムを構築して、顧客に対して高付加価値製品の実質的な製造小売体制を確立すると同時に、顧客への直送により販売機会を確保して課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
1お客様が重い商品を持ち帰らなくてよい。2美容室の来店サイクルの途中に商品がなくなった場合、他の商品で代替されないようになる。この効果は販売機会を失しない点から大きい。さらに、顧客等に対して、カールの維持、染色した髪の色維持、白髪染め液の製造小売が可能になった。これまで、それぞれの顧客に対して対応することは困難であったが、美容室や美容サロンを通して顧客のニーズに対応でき、固定顧客の維持が可能となり、グローバル化する国内市場の中で、生き残る事が可能になる。しかも美容製品には、個々の顧客対応の必要でない汎用製品もあり代理店制度の維持は必要であって、本発明で初めて、代理店制度と製造小売の併存する流通システムが可能となる効果も生まれた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の仕組みを採用すると本発明を実施するための最良の形態が構築できる。1美容製品の中の特定製品に関して、取扱い店として登録規約に同意をした美容室や美容サロンのみ登録をする。2登録された美容室や美容サロンが顧客からの注文を受けつける。3美容室や美容サロンには郵便局、銀行等の金融機関に振込み用の口座を開設してもらう。4登録された美容室や美容サロンとの間に、インターネットによるメール、ファクシミリ、携帯電話によるメールによって注文の受け付け、内容の確認を行なう仕組みをつくる。
【0009】
確認した後、所定の時間までの受注分については、その受注日に、物流業者に指示をして、リアルサービスとして発送する。その際、振込み用紙とお買い上げ明細書を同封する。商品は顧客の自宅に発送し、商品を受け取った顧客は、商品を確認して、振込用紙により郵便局、コンビニエントストア、銀行等で支払いをしていただく。これらの商品代金は、美容製品メーカーの指定口座に、一時的にストックし、定期的に、日時を決めて、美容室や美容サロンの口座に振り込む。振込み手数料は、美容製品メーカー持ちとする。その時点で、美容製品メーカーが顧客に計上していた売上を取り消し、代理店の売上計上とする。代理店は、美容室や美容サロンに請求してマージンを受け取る仕組みとする。
【0010】
本発明のビジネスモデルにより顧客は、美容室や美容サロンに発注すれば、代理店に在庫がなくても、必要な美容製品を最短で注文の翌日入手が可能になり、代理店への在庫は必要なくなる。すなわち、代理店制度を残したままで、製造小売が実現できた。最近の携帯電話では、カメラ機能がついており、前回顧客が購入した美容製品の外観を撮影して送信すれば、リピート顧客に対して商品の間違いは完全に避けることができる。
本発明の実施形態を図1で説明する。
【0011】
aは顧客であり、bは特定製品の取り扱いについて登録規約に同意した美容室や美容サロンであり、cが美容製品メーカーである。顧客aは、1により美容室や美容サロンに商品購入を申し込む。2により美容室や美容サロンbは、美容製品メーカーcに、インターネット或いはモバイルコンピューティングにより顧客の求める商品を発注し、オーダーに間違いのないことをメールにより美容室や美容サロンに確認する。このメール交換が所定の時間以前であれば、cは当日出荷を物流業者dに3によって指示をする。物流業者は、4によって顧客へ商品を届ける。送料負担の関係から、場合によっては、bの美容室や美容サロンに5によってまとめて送り、6によってbの美容室から複数の顧客aに商品をそれぞれ受け取ってもらう事もできる。代金は、7によって特定の郵便口座かコンビニエンスストア、銀行等の金融機関eで支払う。顧客が美容室で商品を受け取る場合、その場で代金を支払うことも出来る。振り込まれた代金は、8によって美容製品メーカーの指定口座に一時的にストックする。この売上金は、入金後の所定の時期に、9によって美容室や美容サロンの所定口座に振り込まれる。同時に、美容製品メーカーの指定口座の売上を消滅させ、fの代理店に10で売上計上する。代理店fは、11でbにマージンを請求して完結する。
【実施例1】
【0012】
図1の美容製品メーカーcは、美容師の指示により顧客自ら使用できる色々の美容製品を、Rシリーズとして、従来の代理店方式でなく生産小売方式の商品として拡販することを企画した。商品としては、清潔な頭皮と頭髪の維持、カールの維持、染色した髪の色保持、痛んだ髪を修復するトリートメント、洗髪時に使用を繰り返して染まる白髪染め等であり、これらは絶えず顧客の意見を取り入れて、性能と効果の向上による新製品の開発が必要な製品である。美容室や美容サロンを通して顧客の意見を吸収できる仕組みにした。
【0013】
固定顧客を50人程度維持している美容室と150人の顧客を抱える美容サロンbに、Rシリーズの取り扱いについて打診し、取り扱いに同意されたので、取り扱い美容室及び取り扱い美容サロンとして登録をした。同時に郵便口座の口座開設を依頼し、それぞれ開設してもらった。美容室や美容サロンは、顧客に対して、Rシリーズ製品の特徴と効果を説明し、美容室や美容サロンでの2時間程度の美容処理後に自宅での作業を勧め、賛同した顧客からのRシリーズ製品の発注を受け付けた。1日に2人から5人程度の注文が図1の1により入った。美容室からは、メールでの連絡を、美容サロンからは、パソコンよりファクシミリ送信で美容製品メーカーに発送の依頼が入った。受信したオーダー内容に不備はなかったので、2で受注の確定とし、美容製品メーカーcは顧客に商品代金の売上計上をした。
【0014】
美容製品メーカーcは、美容室や美容サロンの顧客別のお買い上げ明細書と振込み用紙を作成し、商品発送時に同封し、顧客に直送した。美容サロンに近い顧客の場合には、美容室から6で商品を受け取ることもあるが、大半は顧客の自宅に直送することにより顧客を確実につなぎ留めるようにした。メールで発注する固定客には、物流業者dから4によって自宅で宅配便で受け取る事ができる仕組みに重点を置いた。しかも顧客が急ぐ場合には、午前10時30分までに確定したものについては、当日出荷し翌日受け取ることができるシステムになっている。受け取った顧客は、振込み用紙によりそれぞれ近くの郵便局、コンビニエンスストア、銀行等eで7により振込みをすませた。8の振込先は、美容製品メーカーcの指定口座にし、一時的にストックした商品代金は、月1回美容室や美容サロンの口座に9によって入金する仕組みとし、美容製品メーカーが顧客に計上していた売上は取り消し、新たに10によって代理店に売上計上するシステムとした。
【0015】
代理店は、売上計上後に、美容室や美容サロンに、11によって請求し、所定のマージンを受け取る。このシステムにより顧客対応が求められる製品に対して、代理店に在庫製品を置く必要はなく、しかも従来の代理店方式をそのままにして、Rシリーズ製品に適した製造小売体制が構築できた。物の移動は、図1の3,4,5のみであり、売上代金は、7で現金の持ち運びがあるだけで、その他はパソコン或いは携帯電話のメールにより本システムは完結する。平素より固定客と密接につながっている美容室や美容サロンが販売する形によって、美容製品メーカーに顧客情報が色々届き、新製品を開発し易いビジネスモデルとなった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
グローバル化し海外の美容製品メーカーが国内に進出する中で、効率的でしかもユーザーである顧客のニーズ情報を的確に把握するには、製造小売方式が好ましい。しかし、一般には、美容製品メーカーは、代理店を通して商売をする仕組みになっている。美容化粧品業界では、デパートに販売店を設けて、美容部員が顧客と対応し、化粧品メーカーは、美容部員を通して顧客情報を入手し、開発の速度を速めている。本発明のビジネスモデルは、美容室や美容サロンと提携して、顧客が使用する製品を流通させる新しい仕組みであり、美容製品メーカーとして利用し易く普及の可能性は非常に高い。むしろ国内で生き残り発展するための一つのビジネススタイルと云える。
【0017】
さらに、美容院から直行して結婚式やパーティーへの出席がある場合、商品の持ち帰りが不可能であり、販売チャンスを逃していたことはかねてから認識していた。本システムの利用は、顧客が必要な美容製品を必要な時に自宅へ直送でき、売り逃しと売れ残りを最小にすることが実現できた。美容製品メーカーにとって利用効果の大きいシステムとなり、利用可能性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】代理店や問屋制度を残したまま製造小売を実現し、売り逃しを少なくするシステム図
【符号の説明】
【0019】
a顧客
b美容室或いは美容サロン
c美容製品メーカー
d物流業者
e郵便局、コンビニエンスストア或いは銀行等の金融機関
f代理店
1顧客からの美容製品の発注
2受注品の確認と確定のメール交換
3美容製品の発送指示
4顧客への美容製品の直送
5美容室や美容サロンへの発送
6美容室や美容サロンからの顧客の発注品の受け取り
7顧客の代金支払い
8指定口座への入金
9一定期間後の美容室や美容サロンへの入金
10代理店の売上計上
11代理店の請求

【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容室や美容サロンにおいて、顧客が商品購入を申し込むと、美容室や美容サロンは美容製品メーカーに発注メールをする。美容製品メーカーは返信メールにより発注品の確認をした後、物流業者に商品発送の指示をする。包装し発送された商品には、その明細書と共に、郵便局、コンビニエンスストア、銀行での支払い可能な振込み用紙を同封するか着払い方式とする。顧客や集金代行業者より振り込まれた商品代金は、指定口座に一時的にストックし、一定の期間を経た後で、美容室や美容サロンの所定口座に振り込まれる。その時点で、指定口座の売上を消滅させ、代わりに代理店に売上計上して、美容室や美容サロンから代理店がマージンを受け取る仕組みであって、物品の運送と代金の振込み以外をインターネットにより実施する代理店を残したままの製造小売流通システム
【請求項2】
美容製品メーカーの特定製品に関して、その取扱い店として美容室や美容サロンが登録され、登録された美容室や美容院への顧客の商品購入の申し込み及び美容室や美容サロンから美容製品メーカーへの発注を、記録の残るインターネット、ファクシミリ、携帯電話のようなモバイルコンピューティングで実行し、顧客より振り込まれた商品代金は、美容製品メーカーの指定口座に入金したのち、定期的に美容サロン口座に移す仕組みであって、商品発送のリアルサービス及び顧客の金銭の振込み以外においてインターネットを駆使して代理店には在庫を置かない請求項1の代理店を残したままの製造小売流通システム

【図1】
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【公開番号】特開2006−202249(P2006−202249A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43058(P2005−43058)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(500315884)株式会社ナンバースリー (7)