説明

仮想エンジン音の制御システム及びその制御方法

【課題】仮想エンジン音を有効に調節する仮想エンジン音の制御システム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】この仮想エンジン音の制御システムは、ハイブリッド自動車または電気自動車の仮想エンジン音の制御システムにおいて、車両が室内にあるか否かを測定する感知センサーと、車両の仮想エンジン音を発生する仮想エンジン音発生部と、感知センサーによって測定されたデータを受信して仮想エンジン音を調節し、これを仮想エンジン音発生部に送信する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は仮想エンジン音の制御システム及びその制御方法に係り、より詳しくは、ハイブリッド自動車及び電気自動車の仮想エンジン音の制御システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle;HEV)や電気自動車(Electric Vehicle;EV)などの環境にやさしい自動車には、動力源としてエンジン及びモータが提供される。ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)がモータによって走行される場合に、車両から発生する騒音が非常に低くなる。このため、歩行者、特に、視覚障害者は、車両の接近有無を判断することが困難である。これを改善すべく、スピーカを介して仮想のエンジン音を出力し、歩行者に車両の接近を容易に認識せしめる仮想エンジン音システム(Virtual Engine Sound System;VESS)が開発されている。
【0003】
このような仮想エンジン音システム(VESS)は、車速、アクセル開度またはモータの回転数などの車両走行情報を用いて、仮想エンジン音の作動有無及び音量などを制御する。しかしながら、仮想エンジン音は、車両の外部環境によっては周辺騒音の原因になることがあるため、これを考慮して作動有無及び音量などを制御する必要がある。特に、車両が室内を走行する場合、周辺騒音の基準が室外よりも低い。このため、発生する仮想エンジン音を、室外騒音を基準として制御するときに、室外よりも大きな騒音として働くことがある。このため、車両が室内を走行する場合には、周辺騒音の基準に基づいて仮想エンジン音を制御する必要がある。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−289887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、車両の外部環境によって仮想エンジン音を有効に調節する仮想エンジン音の制御システム及びその制御方法を提供することにある。本発明の他の目的は、車両の室内外走行の有無を判断して仮想エンジン音を有効に調節する仮想エンジン音の制御システム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による仮想エンジン音の制御システムは、ハイブリッド自動車または電気自動車の仮想エンジン音の制御システムにおいて、車両が室内にあるか否かを測定する感知センサーと、前記車両の仮想エンジン音を発生する仮想エンジン音発生部と、前記感知センサーによって測定されたデータを受信して前記仮想エンジン音を調節し、これを前記仮想エンジン音発生部に送信する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記感知センサーは、衛星航法装置(global positioning system;GPS)受信機であることが好ましい。
【0008】
前記感知センサーは、感光装置であることが好ましい。
【0009】
前記感知センサーは、物体を感知するセンサーであり、前記物体感知センサーは、車両の上方の物体を感知することが好ましい。
【0010】
車両走行情報を測定する測定部をさらに備え、前記制御部は、前記測定部において測定された車両走行情報を考慮して前記仮想エンジン音を調節することが好ましい。
【0011】
本発明による仮想エンジン音の制御方法は、ハイブリッド自動車または電気自動車の仮想エンジン音の制御方法において、予め設定された仮想エンジン音により前記仮想エンジン音を発生するステップと、車両が室内にあるか否かを感知するステップと、前記感知された結果に基づいて、前記予め設定された仮想エンジン音を制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記車両が室内にあるか否かを感知するステップは、車両の衛星航法装置(GPS)受信率を測定するステップと、測定された受信率を予め設定された受信率と比較するステップと、を含むことが好ましい。
【0013】
前記車両が室内にあるのかを感知するステップは、車両の衛星航法装置(GPS)受信率を測定するステップと、所定の時間の間に測定された受信率の変化量を予め設定された受信率の変化量と比較するステップと、を含むことが好ましい。
【0014】
前記車両が室内にあるか否かを感知するステップにおいては、前記車両の上に感知される近距離の物体があるか否かを判断することが好ましい。
【0015】
前記車両が室内にあるか否かを感知するステップは、前記車両外部の光量を測定するステップと、前記測定された光量が予め設定された光量よりも少ないか否かを比較するステップと、を含むことが好ましい。
【0016】
前記感知された結果に基づいて、前記予め設定された仮想エンジン音を制御するステップは、前記感知された結果が室内である場合には、前記予め設定された仮想エンジン音の音量を下げるステップを含むことが好ましい。
【0017】
予め設定された仮想エンジン音によって前記仮想エンジン音を発生するステップにおいて、予め設定された仮想エンジン音は、車両の走行時に測定された車両の走行情報に基づいて設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両の外部環境によって仮想エンジン音を有効に調節することができる。また、車両の室内外走行の有無を判断して仮想エンジン音を有効に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による仮想エンジン音の制御システムの概略図である。
【図2】本発明による仮想エンジン音の制御システムの概略作動図である。
【図3】本発明による仮想エンジン音の制御方法のフローチャートである。
【図4】本発明による仮想エンジン音の制御方法のフローチャートである。
【図5】本発明による仮想エンジン音の制御方法のフローチャートである。
【図6】本発明による仮想エンジン音の制御方法のフローチャートである。
【図7】本発明による仮想エンジン音の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。これらの実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず、種々の異なる形態で実現することができるため、これらの実施形態に制限されるものではない。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明による仮想エンジン音の制御システムの概略図であり、図2は、仮想エンジン音の制御システムの概略作動図である。仮想エンジン音の制御システムは、ハイブリッド自動車または電気自動車のようにモータによって走行する車両1に適用され、モータの駆動による走行や停車時における仮想エンジン音を車両1の外部環境条件によって調節して出力する。
【0022】
図1及び図2に示すように、仮想エンジン音の制御システムは、感知センサー10と、測定部20と、仮想エンジン音発生部30と、制御部40と、を備える。感知センサー10は、車両1に取り付けられて車両1が室内にあるか否かを判断する。車両が室内にある場合、室内の建物壁またはトンネル壁などの壁が車両1の周囲を取り囲み、感知センサー10は、これによって変化された環境条件を感知する。感知センサー10は、種々のセンサーを用いて室内感知信号を検出する。例えば、衛星航法装置(GPS)の受信機11は衛星から受信された位置信号の受信率またはその変化量を検出し、感光装置15は光量を検出し、あるいは、物体感知センサー13は近距離内の物体を認識して室内を感知することができる。
【0023】
測定部20は、モータの回転数、車両の速度、またはアクセル開度(または、スロットル弁開度)などの車両走行情報を測定し、これを制御部40に送信する。仮想エンジン音発生部30は、車両1がモータによって走行する場合、または、車両1が停車しエンジンが切られていない場合、制御部40の信号によって仮想エンジン音を出力する。このとき、運転者は、車両1内の制御装置(図示せず)によって仮想エンジン音制御システムをオン/オフにすることができる。例えば、仮想エンジン音発生部30は、仮想エンジン音を車両1のエンジンルーム(図示せず)に取り付けられたスピーカ(図示せず)を介して車両1の外部に送信する。
【0024】
制御部40は、仮想エンジン音の制御信号を仮想エンジン音発生部30に提供する。制御部40は、感知センサー10からデータを受信して仮想エンジン音を調節する。具体的に、仮想エンジン音が出力される場合、制御部40は、感知センサー10から受信されたデータを予め設定されたデータと比較して車両1が室内にあるか否かを判断し、判断された結果に基づいて仮想エンジン音を調節する。車両1が室内にあると判断された場合に、制御部40は、仮想エンジン音の音量、音圧、周波数などを室内環境に合わせて調節する。また、制御部40は、測定部20からデータを受信して仮想エンジン音を調節する。具体的に、車両1が走行する場合に、制御部40は、測定部20から受信されたデータと予め設定されたデータとを比較して車両走行情報を判断し、これにより、仮想エンジン音を調節する。さらに、制御部40は、感知センサー10から受信されたデータと測定部20から受信されたデータの両方を考慮して仮想エンジン音を調節することができる。すなわち、制御部40は、室内を走行する車両1の状態に応じて仮想エンジン音を調節することができる。
【0025】
以下、このような構成を有する仮想エンジン音の制御方法について説明する。図3〜図7は、本発明のよる仮想エンジン音の制御方法のフローチャートである。
【0026】
図3に示すように、電気自動車またはハイブリッド自動車が走行(S100)するとき、測定部20は、モータの回転数、車両の速度、またはアクセル開度などの車両走行情報を測定する(S110)。制御部40は、測定部20から受信された車両走行情報に基づいて、仮想エンジン音制御信号を仮想エンジン音発生部30に送信する。これにより、仮想エンジン音発生部30は、受信された仮想エンジン音制御信号に基づいて、仮想エンジン音を出力する(S120)。感知センサー10によって室内感知データが測定されると(S200)、制御部40は、測定された室内感知データに基づいて、車両1が室内にあるか否かを判断する(S210)。
【0027】
車両1が室内にあると判断された場合に、制御部40は、仮想エンジン音が変更されるように制御する。具体的に、出力中の仮想エンジン音の音圧及び音量などが低減されるように、あるいは、音源が除去されるように仮想エンジン音制御信号を変更する。これにより、仮想エンジン音発生部30は、変更された仮想エンジン音制御信号に基づいて、仮想エンジン音を出力する(S220)。車両1が室内にないと判断された場合に、出力中の仮想エンジン音をそのまま維持する(S230)。
【0028】
図4に示すように、衛星航法装置(GPS)受信機が感知センサー10として用いられる場合、受信機11は、衛星から信号を受信して受信率を測定し、前記受信率の変化度に基づいて、車両1が室内にあるか否かを感知する。これは、車両1が室内にある場合には、外壁の影響により、室外に比べて、衛星航法装置(GPS)受信機の受信率が下がるためである。
【0029】
より具体的に、衛星航法装置(GPS)受信機11は、車両1の走行中に位置信号を受信し続け、信号受信率を測定し続ける(S300)。制御部40は、測定された受信率と予め設定された受信率とを比較するか、あるいは、所定の時間の間に測定された受信率の変化量と予め設定された受信率の変化量とを比較して、車両1が室内にあるか否かを判断する(S310)。
【0030】
測定された受信率が予め設定された受信率よりも低い場合、または、所定の時間の間に測定された受信率の変化量が予め設定された受信率の変化量よりも少ない場合に、すなわち、車両1が駐車のために室内を走行中であるか、あるいは、車両1が室外から室内へと進入した場合に、制御部40は、出力中の仮想エンジン音の音量及び音圧などが低減されるように、あるいは、音源が除去されるように仮想エンジン音制御信号を変更する(S320)。車両1が室内にないと判断された場合に、出力中の仮想エンジン音をそのまま維持する(S330)。
【0031】
図5に示すように、物体感知センサー13が感知センサー10として用いられる場合、近距離内の物体を感知して車両1が室内にあるか否かを感知する。すなわち、車両1が室内にある場合に、天井などの上壁が物体感知センサー13によって感知される。物体感知センサー13は、近距離の物体を感知するセンサーであって、超音波センサーであってもよい。物体感知センサー13は、車両1の上方の物体を感知するように提供される。
【0032】
物体感知センサー13は、車両1の走行中に物体感知信号を測定し続ける(S400)。制御部40は、物体感知センサー13から物体感知信号を受信して、車両1が室内にあるか否かを判断する(S410)。物体感知信号を受信した場合に、すなわち、車両1が室内にあると判断された場合に、制御部40は、出力中の仮想エンジン音の音量及び音圧などが低減され、あるいは音源が除去されるように仮想エンジン音制御信号を変更する(S420)。車両1が室内にないと判断された場合に、出力中の仮想エンジン音をそのまま維持する(S430)。
【0033】
図6に示すように、感光装置15が感知センサー10として用いられる場合に、光量を測定して車両1が室内にあるか否かを感知する。これは、車両1が室内にある場合に、外壁の影響によって室外に比べて光量が減るためである。より具体的に、感光装置15は、車両1の走行中に光量を測定し続ける(S500)。制御部40は、測定された光量と予め設定された光量とを比較して、車両1が室内にあるか否かを判断する(S510)。
【0034】
測定された光量が予め設定された光量よりも少ない場合に、すなわち、車両1が室内にあると判断された場合に、制御部40は、出力中の仮想エンジン音の音量及び音圧などが低減され、あるいは、音源が除去されるように仮想エンジン音制御信号を変更する(S520)。車両1が室内にないと判断された場合に、出力中の仮想エンジン音をそのまま維持する(S530)。
【0035】
図7に示すように、感光装置15が感知センサー10として用いられる場合、車両1の走行時間が夜間であるか、あるいは、昼間であるかを判断することができる。これは、夜間の光量が昼間のそれに比べて少ないためである。制御部40は、車両走行時間が夜間であるか、あるいは、昼間であるかを判断し(S600)、車両走行時間が夜間である場合に、夜間の周辺環境によって仮想エンジン音を制御する(S610)。車両走行時間が昼間である場合には、図6に示す仮想エンジン音の制御方法の流れと同様である。
【0036】
上記の実施形態に係る仮想エンジン音の制御方法は、車両走行情報を測定して仮想エンジン音を出力する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、車両1がモータによって走行する場合には、測定された車両走行情報がなくても任意の設定された仮想エンジン音を出力することができる。また、上記の実施形態に係る仮想エンジン音の制御方法は、車両1が室内にあるか否かのみを判断して仮想エンジン音を調節する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、車両1が室内を走行する場合に、制御部40は車両走行情報をも考慮して仮想エンジン音を調節することができる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、これらの実施形態からのあらゆる変更を含む。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
10 感知センサー
11 衛星航法装置(GPS)受信機
13 物体感知センサー
15 感光装置
20 測定部
30 仮想エンジン音発生部
40 制御部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド自動車または電気自動車の仮想エンジン音の制御システムにおいて、
車両が室内にあるか否かを測定する感知センサーと、
前記車両の仮想エンジン音を発生する仮想エンジン音発生部と、
前記感知センサーによって測定されたデータを受信して前記仮想エンジン音を調節し、これを前記仮想エンジン音発生部に送信する制御部と、
を備えることを特徴とする仮想エンジン音の制御システム。

【請求項2】
前記感知センサーが、衛星航法装置(global positioning system;GPS)受信機であることを特徴とする請求項1に記載の仮想エンジン音の制御システム。

【請求項3】
前記感知センサーが、感光装置であることを特徴とする請求項1に記載の仮想エンジン音の制御システム。

【請求項4】
前記感知センサーが、物体を感知するセンサーであり、
前記物体感知センサーは、車両の上方の物体を感知することを特徴とする請求項1に記載の仮想エンジン音の制御システム。

【請求項5】
車両走行情報を測定する測定部
をさらに備え、
前記制御部は、前記測定部において測定された車両走行情報を考慮して前記仮想エンジン音を調節することを特徴とする請求項1に記載の仮想エンジン音の制御システム。

【請求項6】
ハイブリッド自動車または電気自動車の仮想エンジン音の制御方法において、
予め設定された仮想エンジン音により前記仮想エンジン音を発生するステップと、
車両が室内にあるか否かを感知するステップと、
前記感知された結果に基づいて、前記予め設定された仮想エンジン音を制御するステップと、
を含むことを特徴とする仮想エンジン音の制御方法。

【請求項7】
前記車両が室内にあるか否かを感知するステップは、
車両の衛星航法装置(global positioning system;GPS)受信率を測定するステップと、
測定された受信率を予め設定された受信率と比較するステップと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の仮想エンジン音の制御方法。

【請求項8】
前記車両が室内にあるか否かを感知するステップは、
車両の衛星航法装置(global positioning system;GPS)受信率を測定するステップと、
所定の時間の間に測定された受信率の変化量を予め設定された受信率の変化量と比較するステップと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の仮想エンジン音の制御方法。

【請求項9】
前記車両が室内にあるか否かを感知するステップにおいては、前記車両の上に感知される近距離の物体があるか否かを判断することを特徴とする請求項6に記載の仮想エンジン音の制御方法。

【請求項10】
前記車両が室内にあるか否かを感知するステップは、
前記車両外部の光量を測定するステップと、
前記測定された光量が予め設定された光量よりも少ないか否かを比較するステップと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の仮想エンジン音の制御方法。

【請求項11】
前記感知された結果に基づいて、前記予め設定された仮想エンジン音を制御するステップは、前記感知された結果が室内である場合には、前記予め設定された仮想エンジン音の音量を下げるステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の仮想エンジン音の制御方法。

【請求項12】
予め設定された仮想エンジン音によって前記仮想エンジン音を発生するステップにおいて、予め設定された仮想エンジン音は、車両の走行時に測定された車両の走行情報に基づいて設定されることを特徴とする請求項11に記載の仮想エンジン音の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−100075(P2013−100075A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138652(P2012−138652)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)