説明

仮締切の構築方法及び仮締切

【課題】工事対象部が横に広い場合でも簡単に対応でき、かつ、コスト的及び施工性に優れた仮締切の構築方法及び仮締切を提供する。
【解決手段】コンクリートダムの再開発工事の際に堤体51における上流側の表面(堤体上流側表面52)との間に堤体の上流側からの水の浸入を遮断する水遮断空間53を形成する仮締切1の構築方法であって、前記表面に対して間隔を隔てて対向するとともに上下方向に延長し下端部8が前記表面に固定される片持ち梁部材6を横方向に並ぶように複数設けて水遮断空間53を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートダムの再開発工事の際にダムの堤体における上流側(貯水池側)の表面に設置される構造物としての仮締切に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートダムを運用しながらダムの再開発を行う際に、洪水時の対策としてダムの上流側に仮締切を設けることが知られている。このような仮締切を、例えば、コ字形部材を積み上げて構築する方法が知られている(特許文献1等参照)。また、矢板を用いて仮締切を構築する方法も知られている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−336631号公報
【特許文献2】特開平9−88044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コ字形部材を積み上げて仮締切を構築する方法の場合、工事対象部の横幅寸法に合わせた寸法のコ字形部材が必要となり、工事対象部の大きさに対応して、その都度、寸法の異なるコ字形部材を用意しなければならない。また、横幅寸法の大きいコ字形部材を使用する場合は、コ字形部材の強度を大きくすることがコスト的、構造的に難しい。仮に、コ字形部材の強度を大きくできたとしてもコ字形部材の重量及び大きさが増すので、コ字形部材の取り扱いが大変であり、大型の重機等が必要となってしまうが、再開発を行うダム現場では大型の重機を設置するスペースがなくて大型の重機を使用できない場合が多い。即ち、コ字形部材を積み上げて仮締切を構築する方法では、横幅の長い工事対象部に対応した仮締切を構築する場合、コスト、施工性等において難がある。
また、貯水池の水底地盤に矢板等を建て込んで仮締切を構築する方法では、矢板等を建て込む作業、矢板等の内部にコンクリートを打設して止水壁を構築する作業、施工後の水中での矢板等の撤去作業等、手間が掛かる大変な作業や水中での困難な作業が必要となり、コスト、施工性等において難がある。
本発明は、工事対象部が横に広い場合でも簡単に対応でき、かつ、コスト的及び施工性に優れた仮締切の構築方法及び仮締切を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る仮締切の構築方法は、コンクリートダムの再開発工事の際に堤体における上流側の表面(堤体上流側表面)との間に堤体の上流側からの水の浸入を遮断する水遮断空間を形成する仮締切の構築方法であって、表面に対して間隔を隔てて対向するとともに上下方向に延長し下端部が表面に固定される片持ち梁部材を横方向に並ぶように複数設けて水遮断空間を形成したので、工事対象部が横に広い場合でも、片持ち梁部材の使用本数を多くするだけで簡単に対応でき、コスト的及び施工性に優れた仮締切の構築方法を提供できる。
本発明に係る仮締切は、コンクリートダムの再開発工事の際に堤体における上流側の表面との間に堤体の上流側からの水の浸入を遮断する水遮断空間を形成する仮締切であって、水遮断空間が、表面に対して間隔を隔てて対向するとともに上下方向に延長し下端部が表面に固定される片持ち梁部材が横方向に並ぶように複数設けられて形成された対向壁部と、対向壁部の下端側と表面との間を塞ぐように設けられた床部と、対向壁部の左側部と表面と床部との間を塞ぐように設けられた左壁部と、対向壁部の右側部と表面と床部との間を塞ぐように設けられた右壁部とにより構成されたので、工事対象部が横に広い場合でも、簡単に構築でき、コスト的及び施工性に優れた仮締切を提供できる。
床部と表面との間、左壁部と表面との間、右壁部と表面との間に、水密性能部材が設けられたので、水遮断空間への水の浸入をより効果的に防止できる仮締切を提供できる。
対向壁部が、横方向に間隔を隔てて並ぶように設けられた複数の片持ち梁部材と、隣り合う片持ち梁部材間を塞ぐように設けられた壁部材とにより構成されたので、片持ち梁部材の使用本数を少なくでき、仮締切のコストを低減できる。
片持ち梁部材は、下端部における上下に間隔を隔てた複数の固定位置で表面に固定されたので、堤体に対する応力集中を緩和できるとともに、片持ち梁部材が安定に固定され、安定な構造の仮締切を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ダムの堤体に設置された仮締切の外観を示す斜視図。
【図2】ダムの堤体に設置された仮締切の縦断面を示す図(図1のA−A断面相当図)。
【図3】仮締切を分解して示す分解斜視図。
【図4】片持ち梁部材と片持ち梁部材に取付けられる部材とを分離して示す斜視図。
【図5】片持ち梁部材と壁部材と床板との接合関係を水遮断空間側から見た斜視図。
【図6】片持ち梁部材と壁部材と床板との接合関係を外側から見た斜視図。
【図7】床部の施工を示す図。
【図8】対向壁部の施工を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示すように、コンクリートダム50の再開発工事の際にコンクリートの堤体51における上流側(貯水池54(図2参照)側)の表面(以下、堤体上流側表面という)52との間に堤体51の上流側からの水の浸入を遮断する水遮断空間53を形成する仮締切1は、コンクリートダム50を運用しながら、例えば、堤体51に越流部(堰)を作る場合、堤体51にゲートを作る場合、堤体51に飲料水や発電所等に利用するための水を取るための取水口を作る場合等において、工事中に工事対象部を洪水から守るためや工事対象部からの越流によるダム下流域の被害を防ぐために、堤体上流側表面52に設置される仮設の構造物である。
【0008】
水遮断空間53は、堤体上流側表面52と仮締切1とで囲まれて区画形成される。即ち、水遮断空間53は、堤体上流側表面52と、当該堤体上流側表面52と対向するように形成された仮締切1の対向壁部2と、仮締切1の左壁部3と、仮締切1の右壁部4と、仮締切1の床部5と、で囲まれた五面閉塞で上部開放の矩形状空間により形成される。
対向壁部2、左壁部3、右壁部4、床部5は、例えば、鋼材等の金属材料により形成される。
【0009】
仮締切1の対向壁部2は、片持ち梁を形成するように堤体上流側表面52に固定される複数の片持ち梁部材6と、隣り合う片持ち梁部材6;6間を塞ぐように設けられる複数の壁部材7とにより構成される。
片持ち梁部材6は、縦部材10と、縦部材10の下端部8に設けられた支持梁部11及び取付部12とを備える。
片持ち梁部材6は、縦部材10が上下方向に延長してかつ堤体上流側表面52に対して間隔(例えば、数十cm〜数m程度)を隔てて対向するように下端部8が堤体上流側表面52に固定される。そして、複数の片持ち梁部材6が、堤体上流側表面52の横方向に間隔(例えば、数十cm程度)を隔てて並ぶように配置される。
【0010】
支持梁部11は、例えば真っ直ぐに延長する縦部材10の一端部において縦部材10の一端に近い側に設けられる端部支持梁11Aと当該端部支持梁11Aよりも縦部材10の中央側寄りの位置に設けられる中央寄り支持梁11Bとにより形成される。端部支持梁11Aの一端と縦部材10の一側面とが溶接などの連結手段で互いに連結され、中央寄り支持梁11Bの一端と縦部材10の一側面とが溶接などの連結手段で互いに連結される。
端部支持梁11A及び中央寄り支持梁11Bは、縦部材10の一側面より縦部材10の延長方向と直交して同方向に延長するように設けられる。
【0011】
取付部12は、取付補強部材15と取付板16とにより構成される。
取付補強部材15は、端部支持梁11Aの他端と中央寄り支持梁11Bの他端とを連結する縦材により形成される。
取付板16は、取付補強部材15の一端側と他端側とに設けられる。この2つの取付板16;16が、片持ち梁部材6の下端部8における上下に間隔を隔てて設けられた2つの固定位置を形成し、片持ち梁部材6がこの2つの取付板16;16を介して堤体上流側表面52に固定される。一方の取付板16は端部支持梁11Aの延長線上に設けられ、他方の取付板16は中央寄り支持梁11Bの延長線上に設けられる。このように、片持ち梁部材6が2つの取付板16;16により堤体上流側表面52の上下に離れた2つの固定位置で堤体上流側表面52に固定されるので、堤体51に対する応力集中を緩和でき、かつ、取付板16が支持梁11A;11Bの延長線上に設けられているので、堤体上流側表面52に片持ち梁部材6が安定に固定され、安定な構造の仮締切1を得ることができる。
【0012】
片持ち梁部材6の縦部材10、支持梁部11、取付補強部材15は、例えば、H形鋼やI形鋼等の形鋼により形成される。具体的には、例えば、図4に示すように、縦部材10を構成するH形鋼のフランジの面と支持梁11A;11Bを構成するH形鋼のフランジの面とが直交するように、縦部材10を構成するH形鋼の一方のフランジの面と支持梁11A;11Bを構成するH形鋼のH形の一端縁面とが溶接などの連結手段で連結される。また、取付補強部材15を構成するH形鋼のフランジの面と支持梁11A;11Bを構成するH形鋼のフランジの面とが直交するように、取付補強部材15を構成するH形鋼の他方のフランジの面と支持梁11A;11Bを構成するH形鋼のH形の他端縁面とが溶接などの連結手段で連結される。
尚、例えば、縦部材10は長さ8m、支持梁部11は1.2m、取付補強部材15は3m程度である。
【0013】
取付板16は、例えば、図1に示すように、他方の板面が堤体51の堤体上流側表面52と面接触可能なように取付補強部材15に固定される金属製などの平板により形成される。取付板16の他方の板面と取付補強部材15を構成するH形鋼の一方のフランジの面とが接触するように、取付補強部材15と取付板16とが溶接などの連結手段で固定される。取付板16としては、例えば、一辺の長さが取付補強部材15のフランジの面の横幅よりも長い寸法の矩形平板を用い、この矩形平板がフランジの面の左右の側縁間に跨ってかつ矩形平板の左右の側縁がフランジの面の左右の側縁の位置よりも左右に突出するように取付けられる。これにより、堤体上流側表面52に対する取付板16の固定を安定に行える。尚、取付補強部材15に取付板16を補強する補強板17を設けることが好ましい。
【0014】
即ち、片持ち梁部材6は、縦部材10が支持梁部11の設けられている一端部(下端部8となる端部)を下に向けて堤体上流側表面52の上下方向に延長するように、かつ、縦部材10の一方のフランジの面と堤体上流側表面52とが間隔を隔てて互いに平行に対向するように、さらに、支持梁11A;11Bのフランジの面が水平面となるように位置決めされた状態で、取付板16;16及びアンカーボルト18、ナット19等の固定具により堤体上流側表面52に固定された構成である(図2参照)。
例えば、堤体51の堤体上流側表面52の所定の位置にケミカルアンカーのようなアンカーボルト18を固定して堤体上流側表面52よりアンカーボルト18を突出させておき、取付板16に形成されたボルト通孔20にアンカーボルト18を通してアンカーボルト18にナット19を締結することにより、片持ち梁部材6の取付板16;16が堤体上流側表面52に固定される。尚、アンカーボルト18の設置作業、片持ち梁部材6の固定作業などは、仮設の足場を組んで行う。
即ち、片持ち梁部材6は、下端部8が固定端、上端部が自由端となった片持ち梁を形成するように堤体上流側表面52に取付けられる。
【0015】
仮締切1の床部5は、図7に示すように、隣り合う片持ち梁部材6;6の中央寄り支持梁11B:11B間を塞ぐように各中央寄り支持梁11Bの上側のフランジの面上に設けられる。即ち、複数の矩形板状の床板5Aを用いて対向壁部2の下端側と堤体上流側表面52との間を塞ぐように設けられた床部5が構成される。床板5Aは、例えば、矩形の一方の一対の辺の寸法aが、互いに隣り合う各片持ち梁部材6;6の各中央寄り支持梁11B;11Bのフランジの面の中心線と中心線との間の長さに相当する寸法に形成され、矩形の他方の一対の辺の寸法が、堤体上流側表面52と当該堤体上流側表面52と平行に対向する縦部材10の一方のフランジの面との間の長さに相当する寸法に形成された矩形板を用いる。そして、隣り合う片持ち梁部材6;6の各中央寄り支持梁11B;11Bのフランジの面上に床板5Aが掛け渡されるように取付けられることで、複数の片持ち梁部材6の縦部材10と堤体上流側表面52との間に床部5が形成され、堤体上流側表面52と複数の片持ち梁部材6の縦部材10とが向かい合う空間が床部5の上方に設けられる。尚、床部5の左右の端部に位置される床板5Aは、寸法aが床部5の中央側に位置される床板5Aよりも大きい床板を用いる。そして、床部5の左端部に位置される床板5Aの左端面と左端に位置する縦部材10の一方のフランジの側端面とが同一平面上に位置するように構成され、床部5の右端部に位置される床板5Aの右端面と右端に位置する縦部材10の一方のフランジの側端面とが同一平面上に位置するように構成される。
【0016】
床部5における堤体上流側表面52に沿った一端縁面側の板面上には、アングル材25が図外の固定具や溶接等により床部5の一端縁に沿って取付けられる。アングル材25は、一方方向に長い板材を加工することにより長手方向と直交する断面がL字状に形成された構成である。そして、堤体上流側表面52とアングル材25との間には、水を吸収した場合に膨張する水膨潤ゴムのような水密性能部材26が嵌め込まれて設けられる(図2;図5等参照)。これにより、床部5と堤体上流側表面52との間の水密性能が維持される。尚、堤体上流側表面52の不陸が大きくて堤体上流側表面52とアングル材25との間の隙間が大きくなる場合には、当該隙間に発泡ゴムのような水密性能部材26が嵌め込まれて設けられる。
【0017】
床部5の一端縁と対向する他端縁面側の板面上にも、アングル材27が図外の固定具や溶接等により床部5の他端縁に沿って取付けられる。そして、当該アングル材27と縦部材10の一方のフランジとが溶接や取付ねじ等の連結手段によって連結される。
【0018】
上記床部5は、互いに隣り合う縦部材10;10間に壁部材7を取付けるための作業足場を組む際の床として利用され、床部5の上方の空間は互いに隣り合う縦部材10;10間に壁部材7を取付ける際の作業空間29として利用される。
【0019】
図8に示すように、壁部材7の取付作業は、例えば、堤体51の上からクレーンなどにより壁部材7を吊り下げて隣り合う縦部材10;10間に位置させ、上述した作業空間29内で作業を行う作業員が壁部材7を互いに隣り合う縦部材10;10に連結する。例えば、図4に示すように、壁部材7の左右の縁側に板面を貫通するねじ孔30を形成しておくとともに、縦部材としてのH形鋼の一方のフランジにフランジの板面を貫通するボルト貫通孔31を形成しておく。そして、壁部材7の左右の側縁側の一方の板面(後述する補強桟36が取付けられている他方の板面とは反対側の板面)と縦部材10の堤体上流側表面52側に位置する一方のフランジにおけるウェブ側の面(フランジ内面)とを対面させた状態で、壁部材7のねじ孔30と縦部材10のボルト貫通孔31とを位置合わせし、作業員が作業空間29側からボルト32をボルト貫通孔31を介してねじ孔30に締結することで縦部材10と壁部材7とが連結される。このようにして、縦部材10と壁部材7とからなる対向壁部2が形成される。
【0020】
縦部材10の一方のフランジと他方のフランジとの間には、支持梁11A;11Bのフランジと同一平面上に位置して縦部材10の一方のフランジと他方のフランジとを連結する補強板35が溶接などの連結手段により設けられる。
上記壁部材7は、その最下端が、床板5Aを載置する中央寄り支持梁11Bのフランジと同一面上に位置するように設けられた補強板35の面に突き当たるように設けられるので、床部5のアングル材27と壁部材7の最下端部の一方の面との間には、縦部材10の一方のフランジの厚さに相当する隙間が生じるので、この隙間にも上述した水膨潤ゴムや発泡ゴムのような水密性能部材26が嵌め込まれて設けられる(図2参照)。
【0021】
仮締切1の左壁部3は、対向壁部の左側部を構成する左端に位置する片持ち梁部材6の左側部と床部5の左端部と堤体上流側表面52との間を塞ぐ左壁板3Aにより形成される。
仮締切1の右壁部4は、対向壁部の左側部を構成する右端に位置する片持ち梁部材6の右側部と床部5の右端部と堤体上流側表面52との間を塞ぐ右壁板4Aにより形成される。
【0022】
左壁板3Aの取付方法は、例えば、左壁板3Aの補強桟36を備えた他方の板面とは反対側の一方の板面と床部5の左端部に位置される床板5Aの左端面及び左端に位置する縦部材10の一方のフランジの左側端面とが突き合わされ、かつ、左壁板3Aの一方の側端面と堤体上流側表面52とを対向させた状態において、左壁板3Aの他方の側端面側の板面と左端に位置する縦部材10のフランジとをアングル材37を用いて連結し、左壁板3Aの下端側の板面と床部5とをアングル材37と同様の図外のアングル材を用いて連結し、左壁板3Aの一方の側端側の板面に一方の側端に沿うように上述と同様の図外のアングル材を設け、当該アングル材と堤体上流側表面52との間に上述した水膨潤ゴムや発泡ゴムのような水密性能部材を嵌め込んで設ける。右壁板4Aも左壁板3Aの取付方法と同様に取付ける。
壁部材7、左壁板3A、右壁板4Aは、例えば、平板材の他方の面に補強桟36を備えた構成のものが使用される。また、壁部材7、左壁板3A、右壁板4Aにより形成される壁部は、各図に示すように、上下に連続するように設けられた複数の板材により構成されてもよいし、上下に延長する一枚の板材により構成されてもよい。
【0023】
以上により、対向壁部2と左壁部3と右壁部4と床部5とで囲まれた五面閉塞で上部開放の矩形状の水遮断空間53が形成される。
即ち、少なくとも、不陸の多い堤体上流側表面52と左壁部3との隙間、不陸の多い堤体上流側表面52と左壁部3との隙間、不陸の多い堤体上流側表面52と床部5との隙間、壁部材7と床部5との隙間に、水密性能部材26が嵌め込んで設けられたことによって、水密性能が維持された水遮断空間53が形成される。尚、左壁部3と対向壁部2との間、左壁部3と床部5との間、右壁部4と対向壁部2との間、右壁部4と床部5との間にも、水密性能部材26を設けて、水密性能を向上させた。
【0024】
そして、互いに隣り合うように取付けられた複数の縦部材10の他方のフランジの外面をつなぐ連結補強材を取付ける。例えば、中央寄り支持梁11Bと同一平面上に位置するように下側の連結補強材38を設けるとともに、縦部材10の上端側を連結する上側の連結補強材39を設け、また、連結補強材38と連結補強材39とを連結するブレス連結補強材40を設ける。
【0025】
以上により、仮締切1が構築される。これにより、仮締切1の対向壁部2と対向する堤体51の一部を破壊して越流部などを作成する工事中にこの工事対象部に上流側からの水が入り込むの防止できる。
【0026】
実施形態1によれば、堤体上流側表面52に対して間隔を隔てて対向するとともに上下方向に延長し下端部8が堤体上流側表面52に固定される片持ち梁部材6を横方向に間隔を隔てて並ぶように複数設けて水遮断空間53を形成するので、工事対象部が横に広い場合でも、片持ち梁部材6の使用本数を多くするだけで簡単に対応できる。また、片持ち梁部材6を組み合わせるので、片持ち梁部材6を小型化でき、片持ち梁部材6の取り扱いが容易となる。よって、コスト的及び施工性に優れた仮締切1の構築方法及び仮締切1を提供できる。
また、床部5及び左右の壁部3;4と堤体上流側表面52との間に水密性能を向上させる水密性能部材26を設けたので、水密性能を十分に維持でき、水遮断空間53への水の浸入を効果的に防止できる。
また、堤体上流側表面52と対向する部材にアングル材を設けて、水密性能部材26の設置可能空間を多くしたので、水密性能をより向上できる。
また、対向壁部2を、横方向に間隔を隔てて並ぶように設けられた複数の片持ち梁部材6と、隣り合う片持ち梁部材6間を塞ぐように設けられた複数の壁部材7とにより構成したので、片持ち梁部材6の使用本数を少なくでき、コストを削減できる。また、片持ち梁部材6を小型化でき、片持ち梁部材6の取り扱いが容易となる。よって、コスト的及び施工性に優れた仮締切1を得ることができる。
また、片持ち梁部材6は、下端部8における上下に間隔を隔てた2つの取付板16;16を介して2つの固定位置で堤体上流側表面52に固定されたので、堤体51に対する応力集中を緩和でき、かつ、片持ち梁部材6が安定に固定され、安定な構造の仮締切1を得ることができる。
また、片持ち梁部材6として、既製の形鋼を組み合わせて形成したものを用いることで、コストを削減できる。
【0027】
尚、壁部材7を用いずに、隣り合う片持ち梁部材6;6の縦部材10;10の一方のフランジの側端面同士が互いに突き合わされることによって、対向壁部2が、隣り合う複数の片持ち梁部材6の縦部材10の一方のフランジにより形成された構成の仮締切1としてもよい。
また、片持ち梁部材6の縦部材10の長さ、支持梁11A;11B間の間隔、片持ち梁部材6に設けられる取付板16の個数、取付板16;16間の間隔は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0028】
1 仮締切、2 対向壁部、3 左壁部、4 右壁部、5 床部、
6 片持ち梁部材、7 壁部材、8 下端部、16 取付板(固定位置)、
26 水密性能部材、50 コンクリートダム、51 堤体、
52 堤体上流側表面(堤体における上流側の表面)、53 水遮断空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートダムの再開発工事の際に堤体における上流側の表面との間に堤体の上流側からの水の浸入を遮断する水遮断空間を形成する仮締切の構築方法であって、
前記表面に対して間隔を隔てて対向するとともに上下方向に延長し下端部が前記表面に固定される片持ち梁部材を横方向に並ぶように複数設けて水遮断空間を形成したことを特徴とする仮締切の構築方法。
【請求項2】
コンクリートダムの再開発工事の際に堤体における上流側の表面との間に堤体の上流側からの水の浸入を遮断する水遮断空間を形成する仮締切であって、
水遮断空間が、前記表面に対して間隔を隔てて対向するとともに上下方向に延長し下端部が前記表面に固定される片持ち梁部材が横方向に並ぶように複数設けられて形成された対向壁部と、対向壁部の下端側と前記表面との間を塞ぐように設けられた床部と、対向壁部の左側部と前記表面と床部との間を塞ぐように設けられた左壁部と、対向壁部の右側部と前記表面と床部との間を塞ぐように設けられた右壁部とにより構成されたことを特徴とする仮締切。
【請求項3】
床部と前記表面との間、左壁部と前記表面との間、右壁部と前記表面との間に、水密性能部材が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の仮締切。
【請求項4】
対向壁部が、横方向に間隔を隔てて並ぶように設けられた複数の片持ち梁部材と、隣り合う片持ち梁部材間を塞ぐように設けられた壁部材とにより構成されたことを特徴とする請求項2に記載の仮締切。
【請求項5】
片持ち梁部材は、下端部における上下に間隔を隔てた複数の固定位置で前記表面に固定されたことを特徴とする請求項2に記載の仮締切。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−236654(P2011−236654A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109389(P2010−109389)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)