説明

伝動ベルト

【課題】 異音耐久性を向上させた伝動ベルトを提供することを課題としている。
【解決手段】 プーリに巻き掛けられて用いられ、前記プーリに当接される表面を構成する表面層が形成されている伝動ベルトであって、前記表面層が短繊維を含まず、しかも、ポリエステル系ポリオール及びポリオレフィン系ポリオールの少なくともいずれか一方を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分とから得られる分子量1000〜50000のウレタンプレポリマーを含有するウレタンプレポリマー組成物を硬化させて形成されてなる伝動ベルトを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の補助駆動用等に用いられる、VベルトやVリブドベルトなどの動力伝達用の伝動ベルトにおいて、ベルト駆動時に異音が発生することが知られている。この異音は騒音であり、ベルト駆動時の静粛化のためには抑制されなければならないものである。
このような異音の原因は、駆動中に伝動ベルトが被水した時などに、伝動ベルトとプーリとの間にスリップが生じることによるものであるとされている。
この異音を防止するための伝動ベルトとしては、例えば、Vリブドベルトのリブ外層を短繊維が含有されたゴム組成物で形成したVリブドベルトが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−316787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のごとく、ゴム組成物で形成され、短繊維が三次元的にランダムに配向されたリブ外層を備えたVリブドベルトは、異音の発生を抑制するものの、プーリとリブ外層との間の摩擦せん断力による摩耗を受けやすく、前記短繊維が脱落しやすい。そして、前記短繊維がリブ外層のゴム組成物とともに脱落した結果、Vリブドベルトは異音が発生しやすくなる。即ち、短繊維を含有したゴム組成物で形成されたリブ外層を備えたVリブドベルトは、異音が発生するまでの駆動時間が短く、異音耐久性が低い。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、異音耐久性を向上させた伝動ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る伝動ベルトは、プーリに巻き掛けられて用いられ、前記プーリに当接される表面を構成する表面層が形成されている伝動ベルトであって、前記表面層が短繊維を含まず、しかも、ポリエステル系ポリオール及びポリオレフィン系ポリオールの少なくともいずれか一方を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分とから得られる分子量1000〜50000のウレタンプレポリマーを含有するウレタンプレポリマー組成物を硬化させて形成されてなることを特徴とする。
【0007】
上記構成からなる伝動ベルトによれば、作用機構が必ずしも解明されているわけではないが、前記表面層が短繊維を含まないため、ベルト駆動時におけるプーリとの間の摩擦せん断力に対する前記表面層の耐摩耗性が向上する。即ち、前記表面層が短繊維を含まないため、前記表面層の摩耗を促進するおそれもないものとなる。
しかも、前記表面層が、ゴム組成物を硬化させて形成されてなるものではなく、ポリエステル系ポリオール及びポリオレフィン系ポリオールの少なくともいずれか一方を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分とから得られる分子量1000〜50000のウレタンプレポリマーを含有するウレタンプレポリマー組成物を硬化させて形成されてなるため、異音の発生が抑制され、プーリと前記表面層との間の摩擦せん断力を低下させ、前記表面層の耐摩耗性が向上する。
【0008】
また、本発明に係る伝動ベルトは、前記ウレタンプレポリマー組成物が前記表面層の摩擦係数を低減させる摩擦係数低下剤を含有していることが好ましく、前記摩擦係数低下剤がポリテトラフルオロエチレン又は超高分子量ポリエチレンであることがさらに好ましい。
【0009】
また、本発明に係る伝動ベルトは、前記ウレタンプレポリマー組成物が前記表面層の耐摩耗性を向上させる補強性フィラーを含有していることが好ましく、前記補強性フィラーがカーボンブラック又はシリカであることがさらに好ましい。
【0010】
なお、前記表面層が短繊維を含まないということは、前記ウレタンプレポリマー組成物中に短繊維を共存させることなく前記ウレタンプレポリマー組成物を構成し、該ウレタンプレポリマー組成物を硬化させて表面層を形成させることを意図するものである。
【0011】
また、前記短繊維とは、材質は特に限定されず、通常、長軸方向の長さが0.1〜8mmのものが例示できる。前記短繊維の太さは、通常、合成繊維である場合の2〜10デニールに相当するものが例示できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の伝動ベルトは、ベルト駆動時における異音耐久性が向上しているという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の伝動ベルトは、プーリに巻き掛けられて用いられ、前記プーリに当接される表面を構成する表面層が形成されている伝動ベルトである。具体的には、例えば、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルトであり、通常、無端状に形成されている。
【0014】
以下、本発明に係る伝動ベルトのうちのVリブドベルトの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
本実施形態のVリブドベルトの、長手方向に直交する平面による断面図を図1に示す。図1に示されているように、本実施形態のVリブドベルト1はベルト内周面側から外周面側に向かって、圧縮ゴム層10、接着ゴム層20、背面層30の三層の積層構造が形成されている。
【0016】
前記圧縮ゴム層10には、ベルト長手方向に連続する断面略V字状の溝11が2条形成されており、該溝11により互いに分離された3条のリブ12がベルト長手方向に延在された状態となるように形成されている。
このリブ12は、内周側ほど狭幅となるように形成されており断面形状が略等脚台形となるように形成されている。
この圧縮ゴム層10は、表面(内周面)全体を覆う表面層13と該表面層に内側(接着ゴム層20側)で接する内層14との二層構造が形成されている。
【0017】
前記表面層13は、圧縮ゴム層10の内層14の内周側の表面形状に沿って略均一なる厚さで内層14を覆うように形成されている。
また、前記表面層13は、通常、10〜100μmの厚さTに形成されている。
【0018】
前記表面層13は短繊維を含有しておらず、しかも、ポリエステル系ポリオール及びポリオレフィン系ポリオールの少なくともいずれか一方を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分とから得られる分子量1000〜50000のウレタンプレポリマーを含有するウレタンプレポリマー組成物を硬化させて形成されている。
【0019】
前記表面層に短繊維が含まれていないことにより、前記表面層の耐摩耗性が向上するという利点がある。従って、Vリブドベルトの異音耐久性が向上する。
【0020】
前記ウレタンプレポリマー組成物は、ポリエステル系ポリオール及びポリオレフィン系ポリオールの少なくともいずれか一方を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分とから得られる分子量1000〜50000のウレタンプレポリマーとを含有しているものである。他に、希釈用の溶媒等を含み得る。
前記ウレタンプレポリマー組成物としては、例えば、硬化剤及びイソシアネート基のブロック化剤を含有している、所謂一液硬化型を挙げることができ、また、前記表面層を形成させる直前に硬化剤を含有させる、所謂二液型等も挙げることができる。
【0021】
前記ウレタンプレポリマーの分子量が1000未満であると前記表面層の耐摩耗性が低くなり、異音耐久性が低くなるとともに、伝動ベルトの駆動中に前記表面層が欠落しやすくなるおそれがあり、分子量が50000を超えると前記ウレタンプレポリマー組成物の粘度が大きくなり、製造時の作業性が悪くなるおそれがある。
【0022】
前記ウレタンプレポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により特定される。具体的には、実施例に記載された測定方法、測定条件で分子量が特定される。
【0023】
前記ポリオール成分としては、ポリエステル系ポリオール及びポリオレフィン系ポリオールの少なくともいずれか一方を含むポリオール成分が挙げられる。
ポリエステル系ポリオール及びポリオレフィン系ポリオールの少なくともいずれか一方を含むポリオール成分を用いて合成されたウレタンプレポリマーを含有する前記ウレタンプレポリマー組成物を硬化させてなる前記表面層13を備えた伝動ベルトは、異音の発生が抑制され、異音耐久性が向上されたものとなる。
【0024】
前記ポリエステル系ポリオールとしては、分子中に2以上のエステル結合及び2以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、その他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体、又は、プロピオンラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンのような開環重合体などが挙げられる。
【0025】
前記ポリオレフィン系ポリオールとしては、分子中にオレフィン結合及び2以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物と必要によりスチレン、アクリロニトリルなどを、例えば金属リチウム、金属カリウム、金属ナトリウムなどのアニオン重合触媒の存在下で重合させたのち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させて得られるポリオール、または前記ジエン化合物を、例えば過酸化水素などの水酸基を有するラジカル開始剤によりラジカル重合させて得られるポリオール、またはこれらのものを水素添加したもの等が挙げられる。
【0026】
前記ポリイソシアネート成分は、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物と規定できる。具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'−MDI)、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアナートメチル(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)などの脂環式ポリイソシアネート、上記の各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートなどが挙げられる。
これらのイソシアネート成分は、それぞれ単独または複数組み合わせることができる。
【0027】
前記ウレタンプレポリマーとしては、前記ポリオール成分と前記ポリイソシアネート成分とを周知一般的な方法で反応させ、イソシアネート基を有するポリウレタン化合物として得られるものが挙げられる。
また、前記ウレタンプレポリマーとしては、上記のごとき反応によって得られた市販品を採用することもできる。
【0028】
前記硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族または芳香族環を含む多価アミンおよび多価アルコールから選ばれる1種、または2種以上の混合物を挙げることができる。
【0029】
前記多価アミンの内、ジアミンとしてメチレンビスオルソクロロアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン等の脂肪族ジアミン、p−フェニレンジアミン、m−トリレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
また、3価以上の多価アミンとしてはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0030】
前記多価アルコールの内、ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェンールAなどが挙げられる。
また、3価以上の多価アルコールとしてはトリイソプロパノールアミン、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロールなどが挙げられる。
【0031】
前記ブロック化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトオキシム、アセトキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック化剤、m−クレゾール、キシレノール等のフェノール系ブロック化剤、メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系ブロック化剤などが挙げられる。
【0032】
前記ウレタンプレポリマー組成物は、前記表面層13の摩擦係数を低減させる摩擦係数低下剤を含有していることが好ましい。該摩擦係数低下剤を含有した前記ウレタンプレポリマー組成物を硬化させて形成された前記表面層13は、摩擦係数が低減し、耐摩耗性が向上する。従って、Vリブドベルトの異音耐久性がより向上する。
【0033】
前記摩擦係数低下剤としては、前記表面層13の摩擦係数を低減させるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEともいう)、超高分子量ポリエチレン(以下、UHMWPEともいう)、アラミド、ポリアリレートなどを挙げることができる。
前記摩擦係数低下剤は、通常、粉体状であり、前記プレポリマー組成物中に容易に分散され得るものである。
【0034】
また、前記摩擦係数低下剤はポリテトラフルオロエチレン又は超高分子量ポリエチレンであることがさらに好ましい。PTFE又はUHMWPEを含有した前記ウレタンプレポリマー組成物を硬化させて形成された前記表面層13は、摩擦係数が低減し、耐摩耗性が向上する。従って、Vリブドベルトの異音耐久性がさらに向上する。
【0035】
前記PTFEは、四フッ化エチレンを重合させた高分子化合物であり、通常、分子量3000〜12000が例示できる。また、材質が前記PTFEである前記摩擦係数低下剤は、通常、粉体状である。
【0036】
前記UHMWPEは、JIS K 6936−1、−2に記載されているようにJIS K 7210によるメルトフローレートを測定することができず、190℃、21.6kgの条件によりメルトマスフローレート(MFR)を測定した際に0.1g/10minとなるポリエチレン材料を示す。また、材質が前記UHMWPEである前記摩擦係数低下剤は、通常、粉体状である。
【0037】
前記ウレタンプレポリマー組成物は、前記表面層13の耐摩耗性を向上させる補強性フィラーを含有していることがさらに好ましい。該補強性フィラーを含有した前記ウレタンプレポリマー組成物を硬化させた前記表面層13により、前記表面層13の耐摩耗性が向上し、Vリブドベルトの異音耐久性がより向上する。
【0038】
前記補強性フィラーとしては、前記表面層13の耐摩耗性を向上させるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、ホウ酸アルミニウム、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、グラファイト、カーボンブラック、ガラス等が挙げられる。
前記補強性フィラーは、通常、粉体状であり、前記プレポリマー組成物中に容易に分散され得るものである。
【0039】
また、前記補強性フィラーはカーボンブラック又はシリカであることがさらに好ましい。カーボンブラック又はシリカを含有した前記ウレタンプレポリマー組成物を硬化させた前記表面層13により、Vリブドベルトの耐摩耗性がさらに向上し、異音耐久性がさらに向上する。
【0040】
カーボンブラックとしては、一般的なゴム組成物の材料として通常用いられているものを挙げることができる。
【0041】
シリカとしては、一般的なゴム組成物の材料として通常用いられているものを挙げることができる。
【0042】
なお、前記ウレタンプレポリマー組成物には、ジラウリル−3,3’チオジプロピオン酸エステル、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスビロ[5,5]ウンデカンなどの酸化防止剤が配合されていることが好ましい。酸化防止剤が配合されていることにより、ポリオレフィン系ポリオールを用いたウレタンプレポリマー組成物を硬化させた膜の熱老化保持率を向上させることができ、ベルトの耐摩耗性を向上させ得る。
【0043】
前記内層14は、一般的な伝動ベルトに用いられるゴム組成物で形成されている。このゴム組成物としては、例えば、ベースゴム、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等の架橋剤、加硫遅延剤が挙げられる。さらに、前記ゴム組成物は、本発明の目的を損わない範囲で、その他の添加剤を含有できる。
【0044】
前記ベースゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィンエラストマー、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンやこれらの混合品などを挙げることができる。
【0045】
前記加硫剤としては、例えば、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
イオウ系の加硫剤としては、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
金属酸化物系の加硫剤としては、例えば、亜鉛華、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0046】
前記加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
【0047】
前記加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらの亜鉛塩等が挙げられる。
前記加硫遅延剤としては、例えば、有機酸、ニトロソ化合物、ハロゲン化物の他、2−メルカプトベンツイミダゾール、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等が挙げられる。
【0048】
前記添加剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカなどの補強剤(補強性フィラー)、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの充填剤(フィラー)、マイクロクリスタリンワックス等のワックス類、アロマオイル等のオイル類、ポリマー類、多価アルコール、シランカップリング剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、粘着付与剤、帯電防止剤、加工助剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、ゴム組成物用の一般的なものを挙げることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択される。
【0049】
本実施形態のVリブドベルト1において、前記接着ゴム層20、前記背面層30は一般的なVリブドベルトにおける接着ゴム層、背面層に用いられているものと同様の組成物で形成されている。この組成物としては特に限定されるものではなく、一般的なVリブドベルトにおける接着ゴム層、背面層に用いられているものを挙げることができる。
また、本実施形態のVリブドベルト1における心線40についても、一般的なVリブドベルトに用いられているものと同様のもので構成されている。
【0050】
なお、本実施形態のVリブドベルトの表面層を、実施例で示す熱老化保持率、接着力で評価することができる。表面層の熱老化保持率が向上するとベルトの耐熱耐久性が向上する点において好ましい。耐熱耐久性が向上することにより、異音が発生するまでの時間が長くなることに寄与する。他にも、耐熱耐久性が向上することにより、表面層が熱劣化により摩耗しやすくなることを抑制し、圧縮ゴム層がプーリに接触して摩擦発熱によりベルト温度が急上昇したり、せん断力により摩擦速度が急に上がることなどを抑制することができる。また、圧縮ゴム層の内層と表面層との接着力が向上すると、圧縮ゴム層の内層と表面層との密着力が上がる点において好ましい。圧縮ゴム層の内層と表面層との密着力が上がることにより、耐摩耗性が向上することが期待できる。
このように、前記熱老化保持率の向上、前記接着力の向上はベルトの耐摩耗性を向上させるための要因となり得るものであり、ベルトの耐久寿命を長くさせる要因にもなり得る。
【0051】
次に、本実施形態のVリブドベルトの製造方法について説明する。
【0052】
本実施形態のVリブドベルトの製造方法は、背面層30と、接着ゴム層20と、圧縮ゴム層10とをそれぞれ形成するための未加硫ゴムシートを作製する未加硫ゴムシート作製工程と、心線40にレゾルシノール・ホルムアルデヒド・ラテックス処理(以下「RFL処理」ともいう)などの前処理を施す心線前処理工程と、前記未加硫ゴムシートと前記前処理された心線とを用いて円筒形状の予備成形体を形成する予備成形体作製工程と、該予備成形体を加硫一体化させて円筒状の一次成形体を作製する加硫工程と、前記一次成形体に断面略V字状の溝を形成させてリブ形状を形成させるリブ形成工程と、前記リブ形状が形成された一次成型体の表面に表面層形成用の未加硫(未架橋)のウレタンプレポリマー組成物を用いて表面層を形成させ、その後加熱により架橋させる表面層形成工程を実施した後に、この一次成形体からVリブドベルトを所定幅に切り出す切断工程とで構成されている。
【0053】
前記未加硫ゴムシート作製工程は、例えば、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて所定の配合でゴム組成物を混練した後に、カレンダー成形するなどして実施することができる。
【0054】
前記心線前処理工程は、例えば、予め作製しておいたRFL処理液に心線40を浸漬して焼き付けを実施し、必要に応じて、このRFL処理液への浸漬、焼き付けを複数回繰り返して実施した後に、例えば、接着ゴム層20構成するゴム組成物に用いられているゴムと同様のゴムをトルエンなどに溶解してなる接着溶液に浸漬して加熱乾燥するなどして実施することができる。
【0055】
前記予備成形体作製工程は、例えば、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面に前記背面層30を形成する未加硫ゴムシートを巻き付け、次いで接着ゴム層20を形成する未加硫ゴムシートを巻き付け、次いで前処理された心線40を螺旋状にスピニングし、さらに接着ゴム層20を形成する未加硫ゴムシートを巻き付け、最後に圧縮ゴム層10の内の内層14を形成する未加硫ゴムシートを巻き付けて円筒状の予備積層体を作製するなどして実施することができる。
【0056】
前記加硫工程においては、例えば、前記予備積層体を加硫缶内で加熱、及び、加圧することで積層されたそれぞれの未加硫ゴムシートを一体化させて一次成形体を作製する方法を採用することができる。
【0057】
前記リブ形成工程においては、例えば、加硫された一次成形体を駆動ロールと従動ロールとを備える駆動システムに取り付け、張力をかけてこれらのロールを走行させながら研削ホイールによって前記一次成形体の表面(内層の表面)に複数条の溝を形成させて、該溝により互いに分離された複数条のリブ形状を一次成形体の表面に形成させる方法を採用することができる。
なお、前記予備積層体を加硫する際に、リブ形状の金型を前記圧縮ゴム層10に押し当ててリブを形成させることにより、前記加硫工程と前記リブ形成工程とを同時に実施するとも可能である。
【0058】
前記表面層形成工程においては、例えば、まず、未硬化のウレタンプレポリマー組成物を調製する。
次いで、このウレタンプレポリマー組成物をリブ形状が形成された前記一次成形体の表面(内層の表面)に塗工して、さらに、この一次成形体を加熱して前記ウレタンプレポリマー組成物の硬化を実施して内層14の表面に表面層13を接着一体化させる。
【0059】
前記切断工程においては、例えば、表面層が形成された一次成形体を駆動ロールと従動ロールとを備える駆動システムに取り付け、張力をかけてロールを走行させながら所定リブ数ごとに一次成形体を輪切りにしてVリブドベルトを切り出す方法を採用することができる。
【0060】
本実施形態においては、Vリブドベルトを、上記の例示に基づいて説明したが、本発明においては、Vリブドベルトを上記例示に限定するものではない。
また、ここでは詳述しないが、本発明においては、本発明の効果を損ねない範囲において、上記に例示した構成に代えて従来公知の構成を置き換えることが可能である。
また、上記に例示した構成に従来公知の構成をさらに付加したりすることも可能である。
【実施例】
【0061】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
(ゴム組成物の配合)
Vリブドベルトを形成する圧縮ゴム層の内層、接着ゴム層のゴム組成物には表1に示す配合を用いた。
また、背面層に相当する箇所にはRFL処理が施されたポリアミド製帆布を用いてVリブドベルトの形成を実施した。
【0063】
【表1】

(ウレタンプレポリマーの分子量の測定)
ウレタンプレポリマーの分子量をGPCにて測定した。測定にはHLC−8220 GPC(東ソー製)を用いた。MDIのイソシアネート基がカラムに吸着するのを防ぐため、メタノールを添加してイソシアネート基とあらかじめ反応させた。その後、加温によりメタノールを揮発させてから5mg/mlのクロロホルム溶液にした。TSKgel G4000HHR、G2500HHR、G2000HHRの3本のカラムを連結させ、カラム温度40℃、溶離液クロロホルム、流速1.0ml/min.、検出器RIで測定した。なお、分子量はポリスチレン換算値(重量平均)とした。
【0064】
(ウレタンプレポリマーの調製)
ポリオール成分とジイソシアネート成分(イソシアネートA及びイソシアネートB)とをトルエン中で100℃で4時間反応させた。70℃に冷却した後、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)を加え、30分間撹拌した。溶媒の配合量はポリオール成分とジイソシアネート成分の質量和に対して、トルエン74%、酢酸ブチル74%、MEK18%とした。なお、表2に示すように、ポリオール成分のOH基モル1.0に対して、1.1倍(モル)のイソシアネートAと0.41倍(モル)のイソシアネートBを添加した。
【0065】
【表2】

【0066】
<実施例1>
(Vリブドベルトの作成)
まず、表1の配合に基づき圧縮ゴム層内層、接着ゴム層のそれぞれの配合材料をバンバリーミキサーにより混練し、カレンダーロールにより圧縮ゴム層内層用未加硫シート(厚さ0.8mm)、接着ゴム層用未加硫シート(厚さ0.4mm)を作製する未加硫ゴムシート作製工程を実施した。
次いで、接着ゴム配合を用いてカレンダーロールでフリクション加工された前記帆布を円筒状成形ドラムに巻き付けた上に、接着ゴム層用未加硫シートを1プライ巻き付け、予め前処理を施した心線をらせん状にスピニングし、さらに圧縮ゴム層内層用未加硫シートを4プライ巻きつけて未加硫積層体を作製する予備成形体作製工程を実施した。
また、前記心線には、1100dtex/2×3の構成のポリエチレンテレフタレート製の撚糸を用い、前処理としてRFL処理を施して用いた。
なお、この心線は、下撚りがS撚りで撚りピッチ16回/10cm、上撚りがZ撚りで撚りピッチ10回/10cmのものを用いた。その後、この未加硫積層体を加硫缶中で加硫し、脱型して円筒状の一次成形体を作製する加硫工程を実施した。
そして、この一次成形体の表面に研削砥石を用いてリブ形状を形成するリブ形成工程を実施した。
さらに、表2に示す調製例1の配合内容で表面層形成用の未架橋状態の液状のウレタンプレポリマー組成物を作製した。該液状ウレタンプレポリマー組成物をリブ形状が形成された圧縮ゴム層内層の表面に圧送式スプレーガンにてスプレー塗工し、この一次成形体を90℃で30分間加熱して表面層形成用のウレタンプレポリマー組成物を硬化させる表面層形成工程を実施した。なお、形成された表面層の平均厚さは60μmであった。
最後に、この一次成形体から3リブ分の幅でVリブドベルトを切り出す切断工程を実施して図1に例示のものと略同一の断面形状を有するVリブドベルトを作成した。
なお、この実施例1のVリブドベルトの総厚さ(図1の"h1")は、4.3mmでリブ高さ(図1の"h2")は、2.0mm、ベルト周長1740mmであった。
【0067】
<実施例2>
ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマー及びPTFEの合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0068】
<実施例3>
表2の調製例2のウレタンプレポリマー組成物とした点、ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマー及びPTFEの合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0069】
<実施例4>
表2の調製例2のウレタンプレポリマー組成物とした点、ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマー及びPTFEの合計量に対して30体積%配合した点、ウレタンプレポリマー組成物に酸化防止剤(チオジプロピオン酸ジラウリル、大内新興化学工業社製 商品名「ノクラック400」)をウレタンプレポリマー組成物に対して2質量%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0070】
<実施例5>
ウレタンプレポリマー組成物にUHMWPE(三井化学製 商品名「ミペロンXM−220」)をウレタンプレポリマー及びUHMWPEの合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0071】
<実施例6>
ウレタンプレポリマー組成物にUHMWPE(三井化学製 商品名「ミペロンXM−220」)をウレタンプレポリマー及びUHMWPEの合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0072】
<実施例7>
ウレタンプレポリマー組成物にUHMWPE(三井化学製 商品名「ミペロンXM−220」)をウレタンプレポリマーとUHMWPEとカーボンブラックとの合計量に対して15体積%配合した点、ウレタンプレポリマー組成物にカーボンブラック(東海カーボン製 商品名「シースト3」)をウレタンプレポリマーとUHMWPEとカーボンブラックとの合計量に対して15体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0073】
<実施例8>
ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマーとUHMWPEとカーボンブラックとの合計量に対して15体積%配合した点、ウレタンプレポリマー組成物にカーボンブラック(東海カーボン製 商品名「シースト3」)をウレタンプレポリマーとUHMWPEとカーボンブラックとの合計量に対して15体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0074】
<比較例1>
ウレタンプレポリマー組成物にポリアミド短繊維(ローディア製 商品名「1.7T 0.6mm」)をウレタンプレポリマー及びポリアミド短繊維の合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0075】
<比較例2>
ウレタンプレポリマー組成物にポリアミド短繊維(ローディア製 商品名「1.7T 0.6mm」)をウレタンプレポリマーとポリアミド短繊維とPTFEとの合計量に対して15体積%配合した点、ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマーとポリアミド短繊維とPTFEとの合計量に対して15体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0076】
<比較例3>
表2の調製例3のウレタンプレポリマー組成物とした点、ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマー及びPTFEの合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0077】
<比較例4>
表2の調製例4のウレタンプレポリマー組成物とした点、ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマー及びPTFEの合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0078】
<比較例5>
表2の調製例5のウレタンプレポリマー組成物とした点、ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマー及びPTFEの合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0079】
<比較例6>
表2の調製例6のウレタンプレポリマー組成物とした点、ウレタンプレポリマー組成物にPTFE(喜多村製 商品名「KTL−10N」)をウレタンプレポリマー及びPTFEの合計量に対して30体積%配合した点以外は、実施例1と同様にしてVリブドベルトを製造した。
【0080】
(注水異音発生時間の測定)
異音評価の方法は、図2に示すように各実施例、比較例のVリブドベルトを内面側(圧縮ゴム層側)と背面側(帆布側)とにそれぞれ4個のプーリを当接させて架け渡して実施した。
【0081】
すなわち、ベルト内周面と当接されるプーリとして、直径80mmの駆動プーリ(図中"Pd")と、ベルトにテンションを付与すべく荷重が掛けられた直径61mmテンションプーリ(図中"Pt")、注水を実施させるための直径130mmの樹脂製プーリ(図中"Pr")、ならびに、直径61mmのアイドラープーリ(図中"PI1")を用い、ベルト外周面と当接されるプーリとして、直径80mmのアイドラープーリ(図中"PI5")と、3個の直径61mmのアイドラープーリ(図中"PI2"〜"PI4")を用いて実施した。
【0082】
なお、前記樹脂製プーリには、3度のミスアライメント(ずれ角度)を設けた状態とし、前記テンションプーリには、荷重534N(ベルト張力267N)を負荷し、前記駆動プーリを750rpmの速度で回転させつつ、霧吹き10回を1セットとして、1時間あたり1セットの注水を実施した。
【0083】
注水箇所は、樹脂製プーリに当接される寸前のベルト内周面に対して実施し、雰囲気温度5度の環境下において、異音が発生するまでの時間(異音発生時間)を測定した。
なお測定においては、騒音計を用いて注水前後のベルト騒音を測定し、その差が1dB以下の場合か、もしくは、注水前よりも1dBを超える騒音が注水後に発生した場合でも、その1dBを超える騒音の発生時間が1秒間以内であった場合を「異常音発生無し」と判定し、1dBを超える音が1秒間を超える時間観測された場合を「異常音発生有り」として判定し、この「異常音発生有り」の状態が観察されるまでの時間を異音発生時間とした。結果を表3に示す。
【0084】
(熱老化保持率の試験)
実施例1〜8、比較例1〜6で調製したウレタンプレポリマー組成物をPETフィルム上に広げ、wet状態で200μm厚さの膜を形成し、90℃で30分間硬化させた後に引張物性を測定し、熱老化前の破断強度TB(MPa)、破断伸びEB(%)を求めた。140℃で6日間放置し、再び引張物性を測定し、熱老化後のTB、EBを求めた。下記式に従い、熱老化前のEBの値に対する熱老化後のEBの値の割合を熱老化保持率とした。結果を表3に示す。
熱老化保持率=[EB(140℃6日後)/EB(室温放置)]×100
【0085】
(接着力の試験)
製造したVリブドベルトのリブ山(幅2mm、長さ10cm)を切り出して、図3に示すように2つのリブ山を互いに向きが逆になるようにして、一方のテーパー面同士を瞬間接着剤で貼り付け、試験用サンプルを作製した。この試験用サンプルを用い、インストロン(引張試験機)を用いて剥離試験を行った。剥離速度は50mm/min.、温度23℃、剥離時の荷重値を読み取って接着力とした。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
表3から次のことが認められる。実施例1と比較例1との比較、実施例2と比較例2との比較により、表面層に短繊維を含まない場合の方が表面層に短繊維を含む場合より異音発生までの時間が長いことが認められる。実施例2及び実施例3と比較例3〜5との比較により、ポリエステル系ウレタンプレポリマー又はポリオレフィン系ウレタンプレポリマーを用いた場合の方が他のウレタンプレポリマーを用いた場合より異音発生までの時間が長いことが認められる。実施例2と比較例6との比較により、分子量1000以上のウレタンプレポリマーを用いた場合の方が分子量1000未満のウレタンプレポリマーを用いた場合より異音発生までの時間が長いことが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】一実施形態のVリブドベルトを示す断面図。
【図2】異音発生時間の試験方法を示す概略図。
【図3】接着力の試験の試験用サンプルを示す概略図。
【符号の説明】
【0089】
1:Vリブドベルト、10:圧縮ゴム層、11:溝、12:リブ、13:表面層、14:内層、20:接着ゴム層、30:背面層、40:心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリに巻き掛けられて用いられ、前記プーリに当接される表面を構成する表面層(13)が形成されている伝動ベルト(1)であって、
前記表面層(13)が短繊維を含まず、しかも、ポリエステル系ポリオール及びポリオレフィン系ポリオールの少なくともいずれか一方を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分とから得られる分子量1000〜50000のウレタンプレポリマーを含有するウレタンプレポリマー組成物を硬化させて前記表面層(13)が形成されてなることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマー組成物が前記表面層の摩擦係数を低減させる摩擦係数低下剤を含有している請求項1記載の伝動ベルト。
【請求項3】
前記ウレタンプレポリマー組成物が前記表面層の耐摩耗性を向上させる補強性フィラーを含有している請求項1又は2記載の伝動ベルト。
【請求項4】
前記摩擦係数低下剤がポリテトラフルオロエチレン又は超高分子量ポリエチレンである請求項2記載の伝動ベルト。
【請求項5】
前記補強性フィラーがカーボンブラック又はシリカである請求項3記載の伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−24779(P2009−24779A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188617(P2007−188617)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)