説明

伝送符号誤り補償装置

【目的】 フレーム内に伝送誤りが検出された場合に、フレーム内の誤りのないADPCM符号を変換することによる聴感上の音声品質の劣化を防止する。
【構成】 誤り検出器23で伝送誤りが検出された場合に、ADPCM符号器25で求めた逆量子化スケールファクタy(k)が予め設定されたしきい値を超えたときにy(k)をしきい値に変換し、さらに誤り検出器23による伝送誤りとパラメータ誤り検出器27によるパラメータ誤りを検出した場合に、ADPCM符号変換器24でADPCM符号を変換し、これをADPCM復号器25で復号して出力する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ディジタル移動通信などに利用し、国際電信電話諮問委員会勧告G.721に規定される適応差分パルス符号変調(以下、ADPCMと記載する。)方式音声符号化を利用する場合において、ADPCM符号の特性を利用して異音の発生を防止する伝送符号誤り補償装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ADPCM方式では、過去の入力信号から現在の入力有信号を予測し、その予測値と実際の値との差分を量子化し、ADPCM符号として伝送する。こうした音声符号化処理をディジタル移動通信などに適用する場合、伝送符号の誤りを補償する装置が必要になる。
【0003】図2は従来の伝送誤り補償装置の構成を示すブロック図である。図2において、1は送信側装置、2は受信側装置である。送信側装置1には、音声信号を入力する入力端子11と、音声信号をADPCM方式で符号化するADPCM符号器12と、ADPCM符号の数サンプル分を単位として伝送誤り検出符号を付加し、このADPCM符号および誤り検出符号を1フレームとして伝送バーストを生成する伝送誤り検出符号付加器13と、伝送バーストを出力する出力端子14とを備えている。
【0004】一方、受信側装置2は、受信した伝送バーストを入力する入力端子21と、伝送バーストから伝送誤り検出符号を分離する伝送誤り検出符号分離器22と、伝送誤り検出符号を用いて伝送誤りの発生の有無を検出する誤り検出器23と、伝送誤りが生じている場合にADPCM符号を復号信号における振幅のより小さい変化を表すADPCM符号に変換するADPCM符号変換器24と、ADPCM符号を音声信号に復号するADPCM復号器25と、音声信号を出力する出力端子26とを備えている。
【0005】次に、上記従来例の動作について説明する。送信側装置1では、入力端子11から入力した音声信号が、ADPCM符号器12によりADPCM符号化される。このADPCM符号の数サンプル分に対し、伝送誤り検出符号付加器13がCRC等の伝送誤り検出符号を付加し、この伝送誤り検出符号とADPCM符号数サンプル分を1フレームとして伝送バーストを生成し、出力端子14から出力する。
【0006】一方、受信側装置2では、入力端子21から入力した伝送バーストを、伝送誤り検出符号分離器22がADPCM符号と伝送誤り検出符号とに分解する。分解された一方のADPCM符号は、誤り検出器23とADPCM符号変換器24に入力し、他方の伝送誤り検出符号は、誤り検出器23に入力する。誤り検出器23は、その伝送誤り検出符号を用いて、フレーム内のADPCM符号に符号誤りが生じたか否かを判定し、誤り検出信号をADPCM符号変換器24に出力する。ADPCM符号変換器24は、誤り検出信号が符号誤りの検出を示しているときには、符号誤りの検出されたフレームのADPCM符号が、復号信号の振幅の大幅な増大を表す符号である場合には、その符号を復号信号における振幅のより小さい変化を表す符号に変換する。なお、誤り検出信号が符号誤り無しを示しているときは、ADPCM符号変換器24は、ADPCM符号を変換せず、そのままADPCM符号を出力する。ADPCM復号器25は、ADPCM符号変換器24から出力されたADPCM符号を復号し、出力端子26から音声信号として出力する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の伝送符号誤り補償装置では、フレーム内に誤りを検出した場合、フレーム全体に誤りがあることしか分からないため、その中の正常なADPCM符号についても変換を行なってしまうことがあり、聴感上の音声品質が劣化するという問題があった。
【0008】本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、誤りのないADPCM符号を変換してしまうことによる異音の発生を少なくし、聴感上での音声品質を向上させた優れた伝送誤り補償装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、受信側において、誤りが検出され、かつADPCM復合化処理により求めた逆量子化スケールファクタy(k)が予め設定されたしきい値を超えたときのみ符号変換を行なうようにしたものである。
【0010】
【作用】したがって本発明によれば、伝送誤りが検出された場合に、受信側装置の復号処理において求めた逆量子化スケールファクタy(k)が予め定めたしきい値を超えた場合には、ADPCM符号を復号信号における振幅のより小さい変化を表すADPCM符号に変換し、そのADPCM符号を復号して出力する。したがって、誤りが検出された場合に、そのフレームすべての符号に対して符号変換をすることを防ぐことができるので、音声出力を行なう際に聴感上の音声品質を向上させることができる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施例における伝送符号誤り補償装置の構成を示すブロック図であり、説明の便宜上、図2の従来例に用いた符号を同様な要素に用いてある。図1において、1は送信側装置、2は受信側装置である。送信側装置1には、音声信号を入力する入力端子11と、音声信号をADPCM方式で符号化するADPCM符号器12と、ADPCM符号数サンプル分を単位として伝送誤り検出符号を付加し、このADPCM符号および伝送誤り検出符号を1フレームとして伝送バーストを生成する伝送誤り検出符号付加器13と、伝送符号を出力する出力端子14とを備えている。
【0012】一方、受信側装置2は、受信した伝送バーストを入力する入力端子21と、伝送バーストから伝送誤り検出符号を分離する伝送誤り検出符号分離器22と、ADPCM符号を音声信号に復号するADPCM復号器25と、ADPCM復号器25により求めた逆量子化スケールファクタy(k)の値の大きい部分を検出するパラメータ誤り検出器27と、伝送誤り検出符号およびパラメータ誤り検出符号を用いて誤りの発生の有無を検出する誤り検出器23と、伝送誤りおよびパラメータ誤りが生じている場合に、ADPCM符号を復号信号における振幅のより小さい変化を表すADPCM符号に変換するADPCM符号変換器24と、音声信号を出力する出力端子26とを備えている。
【0013】次に、上記実施例における動作について説明する。まず、送信側装置1の入力端子11から音声信号を入力すると、ADPCM符号器12は、この信号をADPCM符号に符号化する。この符号に対して、伝送誤り検出符号付加器13がCRC符号などの伝送誤り検出符号を付加し、この伝送誤り検出符号とADPCM符号数サンプル分とを1フレームとして伝送バーストを生成し、出力端子14から出力する。
【0014】一方、受信側装置2では、入力端子21から入力した伝送バーストを、伝送誤り検出符号分離器22がADPCM符号と伝送誤り検出符号とに分解する。分解された一方のADPCM符号は、誤り検出器23とADPCM符号変換器24に入力し、他方の伝送誤り検出符号は、パラメータ誤り検出器22と誤り検出器23とに入力する。誤り検出器23は、その伝送誤り検出符号と後述するパラメータ誤り検出器27からのパラメータ誤り検出符号とを用いて、ADPCM符号に符号誤りが生じたか否かを判定し、誤り検出信号をADPCM符号変換器24に出力する。ADPCM符号変換器24は、誤り検出信号が符号誤りの検出を示しているときには、その符号が復号信号の振幅の大幅な増大を表す符号である場合に、その符号を復号信号における振幅のより小さい変化を表す符号に変換する。なお、誤り検出信号が符号誤り無しを示しているときには、ADPCM符号変換器24は、ADPCM符号を変換せず、そのままADPCM符号を出力する。ADPCM復号器25は、ADPCM符号変換器24から出力されたADPCM符号を復号し、出力端子26から音声信号として出力する。
【0015】次に、パラメータ誤り検出器27におけるパラメータ誤り検出符号の検出方法について説明する。ADPCM符号方式では、過去の信号の振幅の変化から次に入力される信号の振幅を予測し、その予測値と実際に入力された信号の振幅値との差分を対数変換し、逆量子化スケールファクタy(k)との差をとることで量子化し、4ビットの符号に変換する。受信側装置2では、このADPCM符号は、逆量子化スケールファクタy(k)との和をとることで逆量子化し、逆対数変換をして量子化差分信号を求める。ここで逆量子化スケールファクタy(k)の値が大きいと、量子化差分信号の値も大きくなり、復号信号の振幅の増大につながる。したがって、伝送誤り検出符号によって誤りが検出された場合に、逆量子化スケールファクタy(k)にある一定のしきい値Mを設け、y(k)としきい値Mを比較し、y(k)>Mである場合、つまり復号信号の振幅の変化が大きくなると推定される場合には、その値を次のようにしきい値に変換し、パラメータ誤り検出符号として、誤り検出器23に出力する。
【0016】y(k)=M次に、誤り検出器23において、フレーム内のADPCM符号の誤りを検出し、かつパラメータ誤りを検出した場合、誤り検出信号をADPCM符号変換器24に出力する。ADPCM符号変換器24は、4ビットのADPCM符号I(k)を極性を示す最上位ビットIs(k)と振幅を示す下位3ビットId(k)に分割し、誤り検出信号が符号誤り検出を示しているときには、Id(k)としきい値Nを比較し、Id(k)>Nである場合には、振幅を示すId(k)を、Id(k)=Nに変換して、Is(k)と合成し、その合成したADPCM符号を出力する。なお、誤り検出信号が符号誤り無しを示しているときには、ADPCM符号変換器24は、ADPCM符号を変換せず、そのままADPCM符号を出力する。ADPCM復号器25は、ADPCM符号変換器24から出力されたADPCM符号を復号し、出力端子26から音声信号として出力する。
【0017】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明による伝送誤り補償装置は、復号する際に求めた逆量子化スケールファクタy(k)の値が誤りによって増加することを抑えるとともに、しきい値を超えた場合には、パラメータ誤りとして検出し、さらに、フレーム内のデータの誤りが検出され、かつパラメータ誤りが検出されたときのみ、ADPCM符号変換の処理を行なうので、誤りのないADPCM符号を変換することが少なくなり、また復号信号の振幅の大きな異音の発生を防止することができ、音声出力を行なう際の聴感上での音声品質を向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における伝送符号誤り補償装置の構成を示すブロック図
【図2】従来の伝送符号誤り補償装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
1 送信側装置
2 受信側装置
11 入力端子
12 ADPCM符号器
13 伝送誤り検出符号付加器
14 出力端子
21 入力端子
22 伝送誤り検出符号分離器
23 誤り検出器
24 ADPCM符号変換器
25 ADPCM復号器
26 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 受信側において、誤り検出処理により誤り検出があり、かつADPCM復号化処理により求めた逆量子化スケールファクタy(k)が予め設定されたしきい値を超えるときのみ符号変換を行なうことを特徴とする伝送符号誤り補償装置。
【請求項2】 受信側において、入力した伝送バーストと伝送誤り検出符号とを分離する伝送誤り検出符号分離手段と、ADPCM符号を復号するADPCM復号手段と、伝送誤りが検出された場合に、前記ADPCM復号手段で求めた逆量子化スケールファクタy(k)の値の大きい部分を検出し、検出した部分を符号パラメータ誤り検出符号として出力するパラメータ誤り検出手段と、前記伝送誤り検出符号およびパラメータ誤り検出符号からADPCM符号に符号誤りが生じたか否かを検出する誤り検出手段と、前記誤りを検出手段において誤りが検出された伝送バーストによって伝送されたADPCM符号を、復号信号における振幅のより小さい変化を表すADPCM符号に変換するADPCM符号変換手段とを備え、前記変換されたADPCM符号を前記ADPCM復号手段によって復号することを特徴とする伝送符号誤り補償装置。

【図1】
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【図2】
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