説明

伸縮ビーム吊り具装置

【課題】従来の吊り具では、伸縮ビームの両端のクランプは固定され、その他のクランプはローラーの下部に設けられており、並設された長さの異なる3個のビームを伸縮することで、クランプを等間隔で伸縮する構造となっており、ローラーは隣接するビームの下部側板を転動するため、伸縮ビーム間にはビームを構成する側板の厚さ分だけ段差があり、そのため伸縮されるビーム間にはクランプの高さに寸法の差が生ずるという課題を有していた。
【解決手段】主ビーム1と、主ビーム1の底面にスライド可能に並設され、互いに対向して逆方向にスライドする2本のスライドビーム2a、2bを備え、前記スライドビーム2a、2bに、主ビーム1から下方に突出する突出部4aを設け、前記突出部4aにスライドビームの伸縮ピッチ幅と合致した間隔のフック取付け穴6を設けたことを特徴とする伸縮ビーム吊り具装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンで、建築資材等の運搬に使用される伸縮ビームを備えた伸縮ビーム吊り具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮ビームを備えた吊り具装置として、長さが異なる3個の伸縮ブーム(ビーム)を備え、各ブームを伸縮するためにブームにローラーが内設され、各ローラーの下部にクランプを設けた吊り具装置が公知である。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平8−189196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載された吊り具では、伸縮ビームの両端のクランプは固定され、その他のクランプはローラーの下部に設けられており、並設された長さの異なる3個のビームを伸縮することで、クランプを等間隔で伸縮する構造となっており、ローラーは隣接するビームの下部側板を転動するため、伸縮ビーム間にはビームを構成する側板の厚さ分だけ段差があり、そのため伸縮されるビーム間にはクランプの高さに寸法の差が生ずるという課題を有していた。
【0004】
また、スライドビームの伸縮作業時に、ローラーが他のビームに乗り移る際には、ビームの段差によりガタが生じ、円滑なビームの伸縮作業の支障になり、また、スライドビームの左右方向及び上下方向の位置を固定する手段がないので、スライドビーム間に緩みが生じ、さらに、クランプ位置がビームの段差の部分になった場合にはクランプ位置が安定しないという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記課題を解決するもので、主ビームと、主ビームの底面にスライド可能に並設され、互いに対向して逆方向にスライドする2本のスライドビームを備え、前記スライドビームに、主ビームから下方に突出する突出部を設け、前記突出部にスライドビームの伸縮ピッチ幅と合致した間隔のフック取付け穴を設けたことを特徴とする。
【0006】
また、スライドビームは、角パイプの一方の側面に固着される対向側板と他方の側面に固着される外側側板を有し、対向側板は、他方のスライドビームの対向側板と対向し、かつ主ビームから下方に突出し、フック取付け穴を設けた突出部を有し、両スライドビームの対向側板のフック取付け穴を合致させ、フック取付け穴にフックを係着するようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、主ビームは、端部にスライドビーム側面に摺接するガイドローラーとスベリ軸受けと、前記ビームの上面及び下面に摺接するスベリ軸受けを有し、スライドビームは、主ビームに常時内接する側の端部に、主ビームの内側上面に摺接するガイドローラーと内側下面に摺接するスベリ軸受けと、主ビームの内側側面に摺接するガイドローラーと他方のスライドビームの側面に摺接するガイドローラーを有することを特徴とする。
【0008】
また、スライドビームは、スライドビームの伸縮ピッチ幅に合致した間隔で設けた挿通孔を有し、前記挿通孔を主ビームに設けた固定ピン挿通孔に合致させ、固定ピンを前記挿通孔に嵌挿し、主ビームとスライドビームを固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、主ビームと、主ビームの底面にスライド可能に並設され、互いに対向して逆方向にスライドする2本のスライドビームを備え、前記スライドビームに、主ビームから下方に突出する突出部を設け、前記突出部にスライドビームの伸縮ピッチ幅と合致した間隔のフック取付け穴を設けた構成とすることで、スライドビームは主ビームの底面にスライド可能に並設されて、かつ、フック取付け穴はスライドビームの下部に設けられているため、各スライドビームのフック取付位置に高さ寸法の差はなく、正確に吊り具によって被搬送物を吊り上げまたは吊り下げて搬送することができ、また、両スライドビームの伸縮動作時においてガタが生ぜず、また、スライドビームの伸縮ピッチとフック取り付け穴のピッチ間隔が同じであるため、両スライドビームを並列した状態で、フック取り付け穴を合致してフックを取り付けることで、両スライドビームをより確実に固定することができる。
【0010】
また、スライドビームは、角パイプの一方の側面に固着される対向側板と他方の側面に固着される外側側板を有し、対向側板は、他方のスライドビームの対向側板と対向し、主ビームから下方に突出し、フック取付け穴を設けた突出部を有し、両スライドビームの対向側板のフック取付け穴を合致させ、フック取付け穴にフックを係着する構成とすることで、より確実にスライドビームの位置を固定することができる。
【0011】
また、主ビームは、端部にスライドビーム側面に摺接するガイドローラーとスベリ軸受けと、前記ビームの上面及び下面に摺接するスベリ軸受けを有し、スライドビームは、主ビームに常時内接する側の端部に、主ビームの内側上面に摺接するガイドローラーと内側下面に摺接するスベリ軸受けと、主ビームの内側側面に摺接するガイドローラーと他方のスライドビームの側面に摺接するガイドローラーを有する構成とすることで、スライドビームは主ビームの端部とスライドビームの主ビームに内接する側の端部で、ガイドローラーとスベリ軸受けを介して左右方向及び上下方向の位置が固定されるので、スライドビームと主ビーム間及びスライドビーム間における緩みや揺れの発生が防止されるため、正確かつ円滑にスライドビームの伸縮動作及び吊り具による吊り荷の搬送作業を行うことができる。
【0012】
また、スライドビームは、スライドビームの伸縮ピッチ幅に合致した間隔で設けた挿通孔を有し、前記挿通孔を主ビームに設けた固定ピン挿通孔に合致させ、固定ピンを前記挿通孔に嵌挿し、主ビームとスライドビームを固定した構成とすることで、簡単かつ確実にスライドビームの伸縮ピッチ幅を調節でき、伸縮位置を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)本発明の吊り具装置の要部側面図。(b)スライドビームの端部正面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】(a)スライドビームの対向側板要部側面図、(b)内側端部の正面図。
【図4】図1の主ビームの端部正面図。
【図5】図1の主ビームの中央部正面図。
【図6(a)】本発明の吊り具装置のスライドビーム収納時の側面断面図。
【図6(b)】本発明の吊り具装置のスライドビーム収納時の平面断面図。
【図7(a)】本発明の吊り具装置のスライドビーム伸長時の側面断面図。
【図7(b)】本発明の吊り具装置のスライドビーム伸長時の平面断面図。
【図8】主ビームとスライドビームの伸縮状態説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
1は主ビーム、2a、2bは主ビーム1の底面上で互いに逆方向にスライド可能に並設された2本のスライドビームで、スライドビーム2a、2bの長さは、図6に示すように、収縮時に主ビーム1内に収納できるよう主ビーム1の長さと略同一長さである。3a、3bは縦方向に上下2本設けられた角形パイプで、上部角形パイプ3aと下部角形パイプ3bの一方の側面には対向側板4が、他方の側面には外側側板5が固着され、上下2個の角形パイプ3a、3bを強固に連結され、スライドビーム2a、2bを構成する。角形パイプを断面長方形の1個とし、外側側板を省略することも可能である。両スライドビーム2a、2bの対向側板4は主ビーム1内において互いに対向しており、下部には主ビーム1に設けたガイド溝1aから下方に突出する突出部4aを有し、突出部4aには等間隔で偶数分割で設けられたフック取付け穴6が設けられている。フック取付け穴6はフック7を係着するとともに、主ビーム1内で対向する対向側板4のフック取付け穴6を合致してフック7を係着することで、スライドビーム2a、2bの伸縮長を調節し固定することができる。
8a、8bは主ビーム1の端部内側側面に設けられた2個のブラケット9a、9bに軸着され、上下2個所で前記対向側板4に外接し転動するガイドローラー、10は主ビーム1の端部内側側面に設けられ、前記外側側板5に摺接するスベリ軸受けで、ガイドローラー8a、8bとスベリ軸受け10で、主ビーム1の端部において、スライドビーム2a、2bを両側面から挾んでガイドし、スライドビーム2a、2bの左右位置を固定する。11a、11bは主ビーム1の端部内側の上面と下面に設けられ、上部角形パイプ3aの上面と下部角形パイプ3bの下面に摺接するスベリ軸受けで、両スベリ軸受11a、11bで主ビーム1の端部において、スライドビーム2a、2bを上下面から挾んでガイドし、スライドビーム2a、2bの上下位置が固定される。スライドビーム2a、2bは主ビーム1の端部において、左右両側及び上下位置が固定され、左右及び上下方向の緩みの発生が防止される。
【0016】
12a、12bは2本の角形パイプ3a、3bの主ビーム1に常時内接する側の端部に固設されたガイドローラー取付けブラケット13a、13bに取設され、主ビーム1の内側側面に内接して転動するガイドローラー、14a、14bは前記ガイドローラー取付けブラケット13a、13bに取設され、対向する他方のスライドビーム2aまたは2bの対向側板4に外接して転動するガイドローラー、15は上部角形パイプ3aの主ビーム1に常時内接する側の上端部に固設されたガイドローラー取付けブラケット16の上部に取設され、主ビーム1の内側上面に内接して転動するガイドローラー、17は下部角形パイプ3bの下面に固設され、主ビーム1の内側下面に摺接するスベリ軸受けである。スライドビーム2a、2bは、主ビーム1に常時内接する側の端部において、主ビーム1の内側側面に内接するガイドローラー12a、12bと対向する他方のスライドビーム2aまたは2bの対向側板4に外接するガイドローラー14a、14bでスライドビーム2a、2bの左右両側がガイドされ、スライドビーム2a、2bの左右位置が固定される。また、主ビーム1の内側上面に内接するガイドローラー15と下部角形パイプ3bの下面に固設され、主ビーム1の内側下面に摺接するスベリ軸受け17でスライドビーム2a、2bの上下方向がガイドされ、上下位置が固定される。
【0017】
スライドビーム2a、2bは主ビーム1に常時内接する側の端部において、主ビーム1の内側側面に内接するガイドローラー12a、12bと対向する他方のスライドビームの対向側板4に外接するガイドローラー14a、14bで左右両側がガイドされ、主ビーム1の内側上面に内接するガイドローラー15と主ビーム1の内側下面に摺接するスベリ軸受け17で上下方向がガイドされる。スライドビーム2a、2bは主ビーム1に常時内接する側の端部において、左右両側及び上下位置が固定され、左右及び上下方向の緩みの発生が防止される。
【0018】
前記した通り、本発明によると、スライドビーム2a、2bは、主ビーム1の端部及び主ビーム1に常時内接する側の端部において、左右方向及び上下方向の位置が固定され、スライドビーム2a、2bの伸縮動作時及び作業時におけるスライドビームと主ビーム間及びスライドビーム2a、2b間における緩みの発生が防止される。
【0019】
18a、18bは上部角形パイプ3aの上面及び下部角形パイプ3bの下面に固設され、主ビーム1の内側上面及び下面に摺接するスベリ軸受け、19aは主ビーム1の中央部に設けた固定ピン挿通孔、19bはスライドビーム2a、2bに設けたフック取付け穴6に合致した間隔で設けられた固定ピン挿通孔、20は挿通孔19に嵌挿され、主ビーム1とスライドビーム2a、2bを固定する固定ピン、21は吊金具である。
【0020】
スライドビームの長さを調節して固定する際は、吊り上げる部材の大きさに応じて、スライドビーム2a、2bの伸縮ピッチ幅を調節して、スライドビーム2a、2bのフック取付け穴6を合わせて、主ビーム1の固定ピン挿通孔19aとスライドビーム2a、2bの固定ピン挿通孔19bを合致させ、固定ピン挿通孔19a、19bに固定ピン20を嵌挿することで主ビーム1とスライドビーム2a、2bを固定する。吊り上げ作業が終了後は、固定ピン20を抜いてスライドビーム2a、2bを主ビーム1内にスライドして収納する。
【符号の説明】
【0021】
1 主ビーム
1a ガイド溝
2a、2b スライドビーム
3a 上部角形パイプ
3b 下部角形パイプ
4 対向側板
4a 突出部
5 外側側板
6 フック取付け穴
7 フック
8a、8b ガイドローラー
9a、9b ガイドローラー取付けブラケット
10 スベリ軸受け
11a、11b スベリ軸受け
12a、12b ガイドローラー
13a、13b ガイドローラー取付けブラケット
14a、14b ガイドローラー
15 ガイドローラー
16 ガイドローラー取付けブラケット
17 スベリ軸受け
18a、18b スベリ軸受け
19a、19b 固定ピン挿通孔
20 固定ピン
21 吊金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ビームと、主ビームの底面にスライド可能に並設され、互いに対向して逆方向にスライドする2個のスライドビームを備え、前記スライドビームに、主ビームから下方に突出する突出部を設け、前記突出部にスライドビームの伸縮ピッチ幅と合致した間隔のフック取付け穴を設けたことを特徴とする伸縮ビーム吊り具装置。
【請求項2】
スライドビームは、角パイプの一方の側面に固着される対向側板と他方の側面に固着される外側側板を有し、対向側板は、他方のスライドビームの対向側板と対向し、かつ主ビームから下方に突出し、フック取付け穴を設けた突出部を有し、両スライドビームの対向側板のフック取付け穴を合致させ、フック取付け穴にフックを係着するようにした請求項1に記載の伸縮ビーム装置。
【請求項3】
主ビームは、端部にスライドビーム側面に摺接するガイドローラーとスベリ軸受けと、前記ビームの上面及び下面に摺接するスベリ軸受けを有し、スライドビームは、主ビームに内接する側の端部に、主ビームの内側上面に摺接するガイドローラーと内側下面に摺接するスベリ軸受けと、主ビームの内側側面に摺接するガイドローラーと他方のスライドビームの対向側板に摺接するガイドローラーを有することを特徴とする請求項1記載の伸縮ビーム装置。
【請求項4】
スライドビームは、スライドビームの伸縮ピッチ幅に合致した間隔で設けた挿通孔を有し、前記挿通孔を主ビームに設けた固定ピン挿通孔に合致させ、固定ピンを前記挿通孔に嵌挿し、主ビームとスライドビームを固定したことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の伸縮ビーム吊り具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−195307(P2011−195307A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65621(P2010−65621)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)
【Fターム(参考)】