説明

伸縮レール装置

【課題】設置に大きな敷地を必要とせず、また据え付け作業が容易な、可動レールの押し上げ機構を持った伸縮レール装置を提供する。
【解決手段】固定レール1と可動レール2との間に、可動レール2を後退させる際にそれを固定レール1の先端部上へ押し上げる押上機構19を設ける。押上機構19は、ベース20上に固定されるばねケース21と、これに上下動自在に支持され伸縮動作時に可動レール本体13の内側天面下を転動するローラ22と、このローラ22を押し上げる方向に付勢するばね23とを具備する。押上機構19が可動レール2の基端側をばね力で押し上げているので、固定レール1への乗り上げ操作を小さな力で円滑に行える。押上機構19は、簡易な構成で安価に製作でき、小型で、設置に大きな敷地を必要とせず、また据え付け作業も極めて容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道線路における本線レールの脇に設けられた作業車両の保管場所から本線レールまで作業車両を移動させるために、本線レールとほぼ直交方向に交差するように伸縮可能に設けられるレール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道作業車両用の伸縮レール装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。これは、作業車両の保管場所に固定された固定レールの上に載せ置かれた可動レールを、必要時にモータ駆動で引き出して所定位置まで延長する形式のものである。固定レールの両端部にスプロケットが取り付けられ、このスプロケットに掛け回されるチェーンの途上が可動レールに係止される。このチェーンをモータ駆動で引き回すことにより、可動レールを固定レール上で移動させる。
上記のような伸縮レール装置においては、可動レールを収縮方向へ後退させる際に、可動レールの基端を固定レールの先端部上へ引き上げる必要がある。作業車両の大重量化にともなう、レールの大型、大重量化により、可動レールの引き上げ作業が困難を増してきたため、可動レールを固定レールの先端部上へ押し上げる押上手段を設けることが特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開3001−146701号公報
【特許文献2】特開3008−150819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の伸縮レール装置における可動レールの押し上げ手段は、これを設置するのに比較的大きな敷地を必要とすると共に、構造が複雑で、設置時の調整も容易でないという問題点がある。
したがって、この出願に係る発明は、設置に大きな敷地を必要とせず、また据え付け作業が容易な、可動レールの押し上げ機構を持った伸縮レール装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明の伸縮レール装置は、本線レールの側方に設けられた作業車両の保管場所から本線レールまで作業車両を移動させるために、本線レールとほぼ直交する延長方向にレールが伸縮可能に設けられるレール装置であって、固定レール1と可動レール2とを有する。固定レール1は、延長方向の基端とその反対側の先端1bとを有し、本線レールに対しほぼ直交方向に伸びるように保管場所のベース上に固定される。可動レール2は、延長方向の基端2aとその反対側の先端とを有し、固定レール1上を収縮位置と伸長位置との間を往復移動可能で、収縮位置において基端2a側を固定レール1の基端部上に、また先端側を固定レールの先端部1b上に配置して、固定レール1上に載せ受けられ、伸長位置においては基端2a側が固定レール1の先端1b側と走行面10,17を一致させて延長方向に固定レール1と連続する。チェーン5の引き回しにより可動レール2を固定レール1上で伸長方向へ前進させ、または収縮方向へ後退させる伸縮駆動機構が設けられる。可動レール2は、収縮状態において固定レール1を跨ぐように下方に開放する断面ほぼコ字状の本体13と、本体の上部に延長方向に延びるように設けられる軌条体14とを具備する。伸長状態における可動レール2の基端部2aを押し上げて、固定レール1上への引き上げ操作時の荷重を軽減する押し上げ機構19が固定レール1の先端に隣接して設けられる。この押し上げ機構19は、ベース20上に固定される支持部材21と、支持部材21に上下動自在に支持され伸縮動作時に可動レール本体13の内側天面下を転動する転動部材22と、この転動部材22を押し上げる方向に付勢するばね23とを具備する。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の装置によれば、設置に大きな敷地を必要とせず、また据え付け作業が容易な、可動レールの押し上げ機構を持った伸縮レール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る伸縮レール装置の概略的正面図で、(a)は収縮状態、(b)は伸長状態を示す。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明に係る伸縮レール装置の固定レールの先端側の正面図である。
【図4】本発明に係る伸縮レール装置の可動レールの基端側の正面図である。
【図5】本発明に係る伸縮レール装置の伸長状態における可動レールの基端と固定レールの先端との接続部の正面図である。
【図6】図5におけるVI−VI断面図である。
【図7】本発明に係る伸縮レール装置の伸長状態における可動レールの基端と固定レールの先端との接続部の平面図である。
【図8】可動レールの基端側と固定レールの先端側を対向させて示した平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX方向から見た可動レールの側面図である。
【図10】図8におけるX−X方向から見た固定レールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1において、作業車両Aの保管場所Bには、本線レールRとほぼ直交方向に固定レール1が敷設される。固定レール1は、基端1aと先端1bとを有する。可動レール2は、基端2aと先端2bとを有し、図1(a)に示す収縮位置と、図1(b)に示す伸長位置の間で、固定レール1の上を延長方向前後に往復移動させることができる。すなわち、可動レール2は、不使用時には、図1(a)に示すように、固定レール1の上に重ね置かれた収縮位置にあり、使用時には、図1(b)に示すように伸長位置にある。可動レール2は、伸長位置において、基端2a側が固定レール1の先端1b側に接続し、車輪W1が走行する面が固定レール1の走行面と同じ高さに連続しており、本線レールR上にこれと交差するように延びる。作業車両Aは、別に走行用車輪W2を具備する。この車輪W2を本線レールR上に降ろし、可動レールを後退させた本線レールR上を作業車両Aは、所望の作業現場まで走行する。
【0009】
固定レール1の基端1a側には、モータMに接続される駆動スプロケット3が、また先端1b側には、従動スプロケット4が設けられる。駆動スプロケット3と従動スプロケット4との間には、チェーン5が掛け回され、それの途上が可動レール2の基端2a側に係止される。チェーン5は、モータMの駆動で引き回すことができる。チェーン5の引き回しにより、可動レール2を固定レール1上で伸長方向へ前進させ、または収縮方向へ後退させることができる。
【0010】
図2,9に示すように、固定レール1は、作業車両の横行車輪W1を載せ受ける上部フランジ6と、ベース20に固定される下部フランジ7と、両フランジの中央間を接続する垂直のウェブ8とを具備する。上部フランジ6上には、延長方向に延びる突条9が設けられる。この突条9の上面に、横行車輪W1の踏面Waが転動する走行面10が形成され、突条9の両側には、ベース部11が形成される。なお、車輪のフランジ部Wbの外周は、ベース部11の上面にわずかに浮いた状態で転動する。
【0011】
図3,8,9に示すように、固定レール1の上部フランジ6には、先端側において、突条9をベース部11より長く先端側へ延出させた延出部9aを形成するように、所定長さベース部対応位置が欠落した欠落部12が形成される。
【0012】
図2,10に示すように、可動レール2は、収縮状態において固定レール1を跨ぐように下方に開放した断面ほぼコ字状の本体13と、本体の上部に延長方向に延びるように設けられる軌条体14とを具備する。
【0013】
可動レールの軌条体14は、延長方向に延びる突条部15と、突条部15の両側に沿って、これよりも下位に延長するベース部16とを具備する。突条部15の上面には、伸長状態において固定レール1の走行面10と連続して車輪W1の踏面Waが転動する走行面17が形成される。ベース部16は、伸長状態において固定レール1のベース部11と連続する。
【0014】
図4,8に示すように、軌条体14のベース部16は、可動レールの基端2a側において、ベース部16を突条部17より長く基端側へ延出させる2条のフォーク部16aを具備する。伸長状態において、固定レール1の突条の延出部9aが、2条のフォーク部16aの間に嵌合し、フォーク部16aが、固定レール1の欠落部12に嵌るように構成される。
【0015】
伸長状態にある可動レール2を後退させるためには、可動レール2の基端1a側を固定レール1の先端1b上へ引き上げる操作を必要とする。その際の荷重を軽減するための押し上げ機構19が、固定レール1の先端1bに隣接して設けられる。
【0016】
押し上げ機構19は、ベース20上に固定される支持部材であるばねケース21と、これに上下動自在に支持される転動部材であるローラ22と、このローラ22を押し上げる方向に付勢するばね23とを具備する。図5に示すレールの伸長状態において、可動レール2の基端部は、押し上げ機構のローラ22上に支持される。図6に示すように、ローラ22は、レールの伸縮動作時に、可動レール本体13の内側天面下を転動する。ばね23は、図5(a)に示すように、レールの伸長状態において、可動レール2の基端2aを固定レール1の先端1bよりわずかに上方へ押し上げた状態になるばね力に設定される。すなわち、ばね23の設定荷重値は、可動レール2の片側の質量を分担すればよいため、可動レール2の自重の半分以下で、ストロークは、可動レール収納時の固定レール1との高さの差分に設定される。
図5(a)〜(c)に示すように、作業車両Aが、本線レールR上へ移動する際に、車輪W1が固定レール1と可動レール2の接続部を通過するとき、当該車輪W1の踏面Waが、固定レール1の走行面10上を転動しつつ、フランジ部Wbが、可動レール2のフォーク部16aに乗って、可動レール2を固定レール1とほぼ同一高さに押し下げた後、車輪の踏面Waが可動レールの走行面17に円滑に乗り移る。
逆に、作業車両Aが、本線レールR上から保管場所へ移動する際には、図5(c)−(b)−(a)の順で、車輪W1が固定レール1と可動レール2の接続部を通過する。すなわち、作業車両Aが自重で押し上げ機構19のばね23を圧縮し、可動レール2の基端2a側を押し下げ、固定レール1と可動レール2の走行面10,17を連続させて、円滑に固定レール1上へ乗り移る。車輪W1のフランジWbが可動レール2のフォーク部16aを通過すると、押し上げ機構19のばね23が戻り、ローラ22を介して再び可動レール2の基端2a側が押し上げられ図5(a)に示す状態となる。
【0017】
図5に示すように、固定レール1の先端1b側の下部フランジ7上には、可動レール2を固定レール1上へ引き上げる際のガイドとなる補助ローラ24が設けられる。一方、可動レール2の基端2a側の本体13の下部には、後退動作時に補助ローラ24に対して転接する斜面13aが形成される。
【0018】
この実施形態の鉄道作業車両用伸縮レール装置は、本線レールR上を通過する電車の障害にならないように、不使用時には収縮状態(図1(a))にある。収縮状態においては、可動レール2が固定レール1の上に重ね置かれる。この状態において、作業車両Aは、保管場所Bにあって、横行用の車輪W1を可動レール2の上に載せて保管される。
【0019】
使用時には、まず車両Aを付設のリフト装置により持ち上げ、可動レール2を自由にした状態で、チェーン5をモータ Mにより引き回す。チェーン5は、その途上において可動レール2の基端側に連結されているから、可動レール2が固定レール1の上を延長方向に前進し、図1(b)に示すように、本線レールR上に交差するように延出し、可動レール2と固定レール1とが連続する。レールの伸長状態において、可動レール2の基端部2aは、押し上げ機構19のローラ22(図6)上に支持される。
【0020】
レールを伸長させたら、作業車両Aの車体を下降させ、横行用の車輪W1を固定レール1の上に降ろし、これを固定レール1上から可動レール2上へと転動させて本線レールRの上まで移動させる(図1(b))。 ここで再び車体を持ち上げ、チェーン5を反対方向に引き回して可動レール2を収縮位置へ復帰させる。
【0021】
可動レール2が収縮位置(図1(a))まで来たら、作業車両Aを下降させて、走行用の車輪W2を本線レールR上に降ろす。そして、作業車両Aを本線レールR上で所定の作業場所まで走行させる。作業車両Aを保管場所Bに戻すときにはこれと反対の手順で作業を行う。
【0022】
収縮動作の初期には、可動レール2の基端部2aを固定レール1の先端部1bの上部フランジ1c上に乗り上げさせる必要がある。このとき、押上機構19が可動レール2の基端2a側をばね23の力で押し上げているので、この乗り上げ操作を小さな力で円滑に行うことができる。押上機構19は、基本的にばね23とローラ22とからなる簡易な構成で安価に製作できるし、固定レール1の先端部1bに隣接して設置され、使用時には可動レール2の本体13の内側に隠れる大きさであるから、設置に大きな敷地を必要とせず、また据え付け作業も極めて容易である。
【符号の説明】
【0023】
1 固定レール
1a 基端
1b 先端
2 可動レール
2a 基端
2b 先端
3 駆動スプロケット
4 従動スプロケット
5 チェーン
6 上部フランジ
7 下部フランジ
8 ウェブ
9 突条
9a 延出部
10 走行面
11 ガイド部
12 欠落部
13 可動レールの本体
14 軌条体
15 突条部
16 ベース部
17 走行面
18 ガイド部
19 押上機構
20 ベース
21 ばねケース
22 ローラ
23 ばね
24 補助ローラ
A 作業用車両
B 保管場所
R 本線レール
M モータ
W1 横行用車輪
W2 走行用車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線レールの側方に設けられた作業車両の保管場所から本線レールまで作業車両を移動させるために、本線レールとほぼ直交する延長方向にレールが伸縮可能に設けられるレール装置であって、
延長方向の基端とその反対側の先端とを有し、前記本線レールに対しほぼ直交方向に伸びるように前記保管場所のベース上に固定される固定レールと、
延長方向の基端とその反対側の先端とを有し、前記固定レール上を収縮位置と伸長位置との間を往復移動可能で、収縮位置において基端側を前記固定レールの基端部上にまた先端側を固定レールの先端部上に配置して前記固定レール上に載せ受けられ、伸長位置において基端側が前記固定レールの先端側と走行面を一致させて延長方向に固定レールと連続する可動レールと、
チェーンの引き回しにより前記可動レールを前記固定レール上で伸長方向へ前進させ、または収縮方向へ後退させる伸縮駆動機構とを具備する伸縮レール装置において、
前記可動レールは、収縮状態において前記固定レールを跨ぐように下方に開放する断面ほぼコ字状の本体と、本体の上部に延長方向に延びるように設けられる軌条体とを具備し、
前記固定レールの先端に隣接して、伸長状態における前記可動レールの基端部を押し上げて、固定レール上への引き上げ操作時の荷重を軽減する押し上げ機構が設けられ、
この押し上げ機構は、ベース上に固定される支持部材と、支持部材に上下動自在に支持され伸縮動作時に前記可動レール本体の内側天面下を転動する転動部材と、この転動部材を押し上げる方向に付勢するばねとを具備することを特徴とする伸縮レール装置。
【請求項2】
前記固定レールは、作業車両の車輪を載せ受ける上部フランジと、前記ベースに固定される下部フランジと、両フランジの中央間を接続する垂直のウェブと、上部フランジ上の延長直交方向両側にベース部を残して延長方向に延びるように設けられる突条と、この突条の上面に形成され車輪の踏面が転動する走行面とを具備し、
前記固定レールの上部フランジは、先端側において、前記突条を前記ベース部より長く先端側へ延出させるように、所定長さベース部対応位置が欠落した欠落部が形成され、
前記可動レールは、収縮状態において前記固定レールを跨ぐように下方に開放した断面ほぼコ字状の本体と、本体の上部に延長方向に延びるように設けられる軌条体とを具備し、
前記可動レールの軌条体は、延長方向に延びる突条部と、突条部の両側に沿ってこれよりも下位に延びるベース部とを具備し、突条部の上面には、伸長状態において固定レールの走行面と連続する走行面が形成され、ベース部は、伸長状態において固定レールのベース部と連続するように構成され、
前記軌条体のベース部は、前記可動レールの基端側において、突条部より長く基端側へ延出させる2条のフォーク部を具備し、
伸長状態において、前記固定レールの先端部の突条が、前記可動レールの基端部の2条のフォーク部の間に嵌合し、フォーク部が前記固定レールの欠落部に嵌るように構成され、
前記押し上げ機構のばねは、伸長状態において可動レールの基端部を固定レールの先端部よりわずかに上方へ押し上げた状態になるばね力に設定され、作業車両の車輪が固定レールと可動レールの接続部を通過するときに、当該車輪の踏面が固定レールの走行面上を転動しつつ、フランジ部が可動レールのフォーク部に乗って、可動レールを固定レールと同一高さに押し下げた後、車輪の踏面が可動レールの走行面に乗り移るように構成されることを特徴とする請求項1に記載の伸縮レール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−208477(P2011−208477A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79654(P2010−79654)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)