説明

伸縮可能な杖

【課題】 外パイプの中に内パイプを収容して伸縮可能とした杖において、この杖の長さ調整が簡単に出来、しかも無段階調整を行うことの出来る杖の提供。
【解決手段】 外パイプ1の中心軸に位置するように固定した芯金5を内パイプ2へ延ばし、内パイプ端に一端を固定すると共に、他端をフリー端としたジグザグチェーン3の中心部穴に芯金5を挿通し、内パイプ側に設けたアンロックツマミ11によってアンロック部材9を上下動可能とし、ジグザグチェーン3のフリー端をアンロック部材9に連結している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はその長さを自由に変えることが出来る伸縮可能な杖に関するものである。
【0002】
【従来の技術】杖とは歩行者の補助具であり、老人や身体障害者が主として使用し、又登山者が山登りする際には体を支えたり安全の為に用いることも多い。このように、杖はその用途に応じて使用されているが、一般的には1本の棒であり、又棒の上端に握りや支え部を備えている場合もあるが、その長さは不変である。
【0003】例えば脚が不自由な人が使用する杖は、上端に支え部を有しているが、このように体を支える為に使用する杖は、その人の身長や腕の長さに応じて長さの調整が出来ると便利である反面、長さが適していない場合には疲れが大きくなる。すなわち、歩き易い姿勢で体を支えることが出来るように、杖の長さを変えることが出来る構造になっている必要がある。
【0004】ところで、杖にこのような長さ調整機構を備えることは、従来技術を応用することで、比較的容易に実現することが出来るであろうが、杖の利用者の大半は老人であることから、その調整が簡単に出来ることが要求される。例えば、太いパイプの中に細いパイプが嵌ってスライドすることが出来る構造とし、両パイプをピン等にて固定することも可能であるが、このような構造ではその長さ調整は面倒である。
【0005】杖で体を支えなくてはならない場合とは、単に歩く時のみならず、椅子に座った状態から立ち上がる際にも必要となる。このように違った姿勢において杖を利用するには、その長さが自由に調整出来る必要があるが、それも即座に調整が出来る構造となっていることが重要となる。上記のようにピン止め機構ではこの要求を満たすことは出来ない。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】このように、従来の杖には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であって、その長さ調整が至って簡単に行うことが出来ると共に、無段階調整を可能とした杖を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の杖はその長さ(高さ)を無段階に調整することが出来るようにしている訳で、太いパイプ(外パイプ)とその中に嵌る細いパイプ(内パイプ)を組み合わせてスライド可能にし、外パイプ上端には支え部を備え、外パイプの中心軸には芯金を固定して下方へ延ばし、この芯金は内パイプに嵌っている。そして、内パイプの上端にはジグザグ状を成して屈曲したチェーンが取着され、このチェーンをジグザグに屈曲することで形成される中心穴に外パイプから下方へ延びる芯金が挿通している。
【0008】ここでジグザグチェーンの上端は内パイプ側に固定され、その下端は内パイプ内をスライドすることが出来るアンロック部材に連結している。上記チェーンとは、例えば自転車のローラチェーンのようなもので、複数リンクがピンを介して屈曲自在に連結して構成され、ジグザグ状に屈曲するならば、各ピンは一定間隔をおいて並列し、この間に芯金が嵌る。そして、この芯金に沿ってジグザグチェーンを上方へ移動させようとする場合、ピンは芯金に接してチェーンは引き伸ばされ、そして並列するピンは芯金に食い込んでチェーンを移動させることが出来なくなる。すなわちロックされる。
【0009】杖を使用する際、握りを押圧する力はその反力として下側にある内パイプには上方への力が作用し、この内パイプの上端に取着しているジグザグチェーンの上固定端を上方へスライドさせようとする力が働くことになるが、芯金にロックされることにより、内パイプがスライドして長さが縮まらないようになる。逆に内パイプを引き伸ばす場合には、ジグザグチェーンの上固定端が下方へ移動することになる。これはチェーンのジグザグ度を更に大きくする方向であることから芯金とロックすることはなく、その結果、内パイプは自由に引き伸ばすことが出来る。
【0010】そこで一旦伸ばした内パイプを縮める場合には、ジグザグチェーンが引き伸ばされないようにアンロック部材を押し上げる。すなわち、ジグザグチェーンの下端(フリー端)はアンロック部材に連結し、これを押し上げることでジグザグ度を拡大することが出来、この状態では芯金に対してチェーンを自由に移動することが出来る状態となり、ひいては内パイプが自由に伸縮可能となる。
【0011】本発明の杖は外パイプを下方に、内パイプを上方に配置し、内パイプの上端に握りを取着することが出来る。さらに、2本のジグザグチェーンを内パイプに対を成して取り付けし、両ジグザグチェーンの中心穴には同じく芯金が挿通することで伸縮することが出来なくなる。すなわち、アンロック部材にてジグザグチェーンのフリー端を移動しない限りロックされた状態となる。以下、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
【実施例】図1は本発明に係る伸縮自在な杖を示している実施例であり、1は外パイプ、2は内パイプ、3はジグザグチェーン、4は握りをそれぞれ表わしている。また5は芯金を示し、この芯金5は外パイプ1の上端に固定されて下方へ延び、また外パイプ1の上端には上記握り(支え部)4が取着されている。外パイプ1はその外径を大きくし、外径の小さな内パイプ2は外パイプ内に嵌って伸縮自在となり、内パイプ2がガタ付かないように外パイプ1の下端にはガイドキャップ6が取着されて内パイプ2の外側面を拘束し、一方の内パイプ上端にはジグザグチェーン3のチェーン取着具7が設けられていて、このチェーン取着具7の一部外周は外パイプ1の内側面に当たってガイド部と成っている。上記芯金5はその上端がL型に屈曲して芯金ホルダー8を介して外パイプ上端に固定されている。
【0013】一方のジグザグチェーン3の上端は内パイプ2に取着しているチェーン取着具7に固定され、ジグザグチェーン3の下端は内パイプ内をスライド可能とするアンロック部材9に連結している。したがって、ジグザグチェーン3の上端は固定されているが下端はフリーな状態にあり、下端はアンロック部材9を押し上げることで、チェーンのジグザグ度は拡大することが出来る。
【0014】このアンロック部材9には細いアンロックパイプ10が連結し、アンロックパイプ10は下方へ延びると共に、内パイプ2の下端部に取付けしているアンロックツマミ11と繋がっている。したがって、アンロックツマミ11を押し上げるならば、アンロック部材9が押し上げられてジグザグチェーン3のジグザグ度を大きくすることが出来る。
【0015】外パイプ上端に固定して下方へ伸びている芯金5はこのジグザグチェーン3の中心部穴を貫通している。図2はジグザグチェーン3と芯金5との関係を図示しているものであり、このジグザグチェーン3は複数リンク12、12…をピン13、13…によって屈曲自在に連結して構成され、例えば自転車チェーンのようなものである。自転車チェーンはピンにブッシュ及びローラが嵌っていて、スプロケットとの噛み合いをスムーズにしているが、本発明において使用するチェーンはブッシュやローラを用いることなく、ピンのみでリンクを繋いだものでよい。むしろ、ブッシュやローラを使用しないで構成することで、よりコンパクトなチェーンと成る。
【0016】このようなチェーンを屈曲してジグザグ状とするならば、各ピン13、13…は2列を成して平行に配列し、この間には貫通する中心穴が形成されることになる訳で、芯金5はこの中心穴を貫通すると共に、各ピン13、13…は芯金5と接している。そこで、芯金5に対してジグザグチェーン3の固定端14を上方へ移動させようとする場合、チェーンのジグザグ度は縮小しようとしてピン13、13…は芯金5に食い込むことになる。従って、固定端14を上方へ移動させることが出来なくなる。
【0017】この固定端14は前記図1に示すチェーン取着具7に設けられ、内パイプ2を縮めることが出来なくなる。すなわち、握り4に力を作用しても杖の長さは縮小せず、杖として機能することが出来る。図3は内パイプ2を引き伸ばした状態の杖を表している。そして内パイプ先端(下端)にはゴム製の滑り止め15を有し、又この滑り止め15には外径を大きくした足掛け部16を形成している。
【0018】上記ジグザグチェーン3は内パイプ2を引き伸ばす方向にはロックしない為に、この足掛け部16に足先を置いて握り4を持ち上げるならば内パイプ2は外パイプ1内をスライドして杖は長くなる。勿論、縮める際には前記の通り、アンロックツマミ11を上方へ移動した状態で握り4を押し下げればよい。そして適当な高さになったところでアンロックツマミ11を放すならばロックされる。
【0019】図4は本発明の杖を示す他の実施例であり、前記実施例の杖の上下方向を逆にした場合である。すなわち、外パイプ1を下方に、内パイプ2を上方に配置して杖を構成し、内パイプ上端には握り4を取着し、又外パイプ下端には脚22を備えている。従って、この脚22には足を掛けて握り4を持ち上げるならば杖は伸長し、逆に短くする場合には握り4の下側に取り付けしているアンロックツマミ11を押し下げた状態で該握りを押し下げることで行うことが出来る。このアンロックツマミ11が不用意に下がらないように、バネ力を付勢することも出来、むしろその方が好ましい。
【0020】このバネ力の付勢は前記図1に示した実施例のアンロックツマミの場合も同じである。そして、この実施例ではジグザグチェーン3の固定端14は下方に位置し、フリー端が上方に位置することで常にジグザグ度が拡大するようになり、芯金をロックすることが出来ない。そこで該ジグザグチェーン3のフリー端をアンロック部材9に連結すると共に、アンロック部材9を常に持ち上げるバネ力を付勢することが必要となる。勿論、アンロック部材9に連結しているアンロックツマミ11にバネ力を付勢してもよい。一方、ジグザグチェーン3自体が伸長する方向へバネ力を付勢してもよく、各ピンにワイヤーをジグザグ状に巻き付け、このワイヤーのバネ力を利用することが出来る。
【0021】ところで、前記実施例で示した杖は握り4に対して上方からの押圧力に対しては耐えることが出来るが、すなわち縮むことは出来ないが、引き伸ばす方向に対しての拘束力は備えていない。従って、握り4を持って振り回すならば内パイプ2が伸びてしまう。勿論、引き伸ばす方向に対してフリーである方が、足掛け部16に足を掛けて引き伸ばすことが出来ることから便利であるが、内パイプ2が自由に伸びないように構成することも可能である。
【0022】図5は引き伸ばす方向と縮む方向を共にロックした場合の杖を示す実施例である。基本的には縮む方向のロック機構を対にして採用している訳であり、ジグザグチェーン3aは内パイプ2が縮まないようにロックする為のチェーンであり、他方のジグザグチェーン3bは内パイプ2が伸びないようにするチェーンである。両ジグザグチェーン3a、3bはチェーン取着具17に一端が固定されているが、ジグザグチェーン3aは上方に固定端14aを有し、ジグザグチェーン3bは下方に固定端14bを有している。
【0023】そこで、図6に示すように両ジグザグチェーン3a、3bの他端であるフリー端18a、18bにはコイルバネ19a、19bがアンロック部材のアーム21と連結している。このコイルバネ19a、19bはジグザグチェーン3a、3bを引き伸ばすことが出来るようにバネ力が作用し、従ってジグザグチェーン3a、3bのピン13、13…は芯金5に常に接することになる。そこで内パイプ2を伸縮する際にはアンロックツマミ11を上下動する。この場合も、ジグザグチェーン3を伸長する為の手段としてコイルバネ19に限定せず、バネ製のワイヤーをジグザグを成して各ピンに巻き付けることが出来る。
【0024】内パイプ2を引き伸ばす場合にはアンロックツマミ11を引き下ろし、アンロックパイプ10を介して上記アンロック部材20が降下する。その結果、アーム21はジグザグチェーン3bのフリー端18bを押えてジグザグチェーン3bを圧縮(ジグザグ度を拡大)し、ピン13、13…は芯金5から離れて内パイプ2は伸びることが出来る。逆に、内パイプ2を圧縮する場合にはアンロックツマミ11を押し上げてアンロック部材20のアーム21にてジグザグチェーン3aのフリー端18aを押し上げる。従ってジグザグチェーン3aのジグザグ度は拡大してピン13、13…は芯金5から離れ、内パイプ2は上方へスライドすることが出来る。
【0025】以上述べたように、本発明の杖はその長さが自由に伸縮することが出来るように外パイプと内パイプにて構成し、外パイプから延びる芯金を内パイプに取着したジグザグチェーンにてロックしたものであり、次のような効果を得ることが出来る。
【0026】
【発明の効果】本発明の杖はその長さ(高さ)を自由に変えることが出来る為に、自分の伸長及び腕の長さに合わせて使用することが出来、長さ調整の出来ない杖に比較して使い易く、長時間使っても疲れは少ない。そして、この長さ調整は無断階であって最も適した長さとなり、しかもこの長さ調整は至って簡単に来ると共に、一旦設定した長さは崩れることなく確実にロックされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の伸縮可能な杖を示す実施例。
【図2】杖の伸縮構造を示す具体例。
【図3】杖を引き伸ばした状態。
【図4】本発明の伸縮可能な杖を示す他の実施例。
【図5】本発明の伸縮可能な杖を示す他の実施例。
【図6】ジグザグチェーンのフリー端にコイルバネを連結して張力を付加した場合。
【符号の説明】
1 外パイプ
2 内パイプ
3 ジグザグチェーン
4 握り
5 芯金
6 ガイドキャップ
7 チェーン取着具
8 芯金ホルダー
9 アンロック部材
10 アンロックパイプ
11 アンロックツマミ
12 リンク
13 ピン
14 固定端
15 滑り止め
16 足掛け部
17 チェーン取着具
18 フリー端
19 コイルバネ
20 アンロック部材
21 アーム
22 脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外パイプの中に内パイプを収容して伸縮可能とした杖において、外パイプの中心軸に位置するように固定した芯金を内パイプへ延ばし、内パイプ端に一端を固定すると共に他端をフリー端としたジグザグチェーンの中心部空間に該芯金を挿通し、内パイプ側に設けたアンロックツマミによってアンロック部材を上下動可能とし、上記ジグザグチェーンのフリー端をアンロック部材に連結したことを特徴とする伸縮可能な杖。
【請求項2】 外パイプを上方に、内パイプを下方に位置させて外パイプの上端には握りを取着し、内パイプの下端には滑り止めと足掛けを備えた請求項1記載の伸縮可能な杖。
【請求項3】 外パイプを下方に、内パイプを上方に位置させ、該内パイプの上端には握りを取着し、外パイプ下端には脚を備えた請求項1記載の伸縮可能な杖。
【請求項4】 外パイプの中に内パイプを収容して伸縮可能とした杖において、外パイプの中心軸に位置するように固定した芯金を内パイプへ延ばし、内パイプの端部には一端を固定すると共に他端をフリー端とした2本のジグザグチェーンを対を成して設け、両ジグザグチェーンの間に位置するアンロック部材のアームとバネを介してフリー端を連結すると共にバネ力をアーム側に付勢し、そしてジグザグチェーンの中心部空間に該芯金を挿通し、内パイプ側に設けたアンロックツマミによってアンロック部材を上下動可能とし、上記ジグザグチェーンのフリー端をアンロック部材に連結したことを特徴とする伸縮可能な杖。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−93471(P2000−93471A)
【公開日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−283440
【出願日】平成10年9月19日(1998.9.19)
【出願人】(598136529)