伸縮可能域を備えた面ファスナー
【課題】面ファスナーによる係合部分に伸縮性を付与できる面ファスナーを提供する。
【解決手段】幅方向および/または長さ方向に伸縮性を有するストレッチ性シート1によって、少なくとも2枚の面ファスナー2、2を間隔をおいた状態で連結して面ファスナー2、2間に伸縮可能域3を形成し、雌型面ファスナー2Bと雄型面ファスナー2Aとを結合させたとき、係合部が伸縮できるようになした。
【解決手段】幅方向および/または長さ方向に伸縮性を有するストレッチ性シート1によって、少なくとも2枚の面ファスナー2、2を間隔をおいた状態で連結して面ファスナー2、2間に伸縮可能域3を形成し、雌型面ファスナー2Bと雄型面ファスナー2Aとを結合させたとき、係合部が伸縮できるようになした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサポーターやバンドなど各種の物品を係合するための面ファスナー、詳しくはその係合部分間に伸縮性を付与することができる面ファスナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から織物基布の表面に、合成樹脂モノフィラメントのフックとループパイルが立設されて形成されたマジックテープ(登録商標)に代表されるテープ状の面ファスナーが各種の物品を着脱自在に係合するために汎用されている。
【特許文献1】特開2006−149849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、上記した従来の面ファスナーは雌型面ファスナーと雄型面ファスナーとの係合部分に伸縮性がないため、例えば人体用のサポーター用として使用した場合、係合部分に位置している人体部分の自由度が制限され、時には痛みさえ感じるという問題点があるばかりでなく、サポーターの端部が人体の微妙な曲面に位置してサポーター基布に捩れが生じた場合には、雄型の面ファスナーの端部が雌型の面ファスナーから浮き上がり、両者の係合力が低下する。
【0004】
また、帯状の伸縮性基布の両端部に表裏に単に雌雄の面ファスナーを取り付けた形態のものが棒状物を束ねるためにも利用されているが、この利用においても束ねバンド12の両端に取り付けられている雌型面ファスナー13及び雄型面ファスナー14が柔軟性に乏しいため、図12に示しているように束ねバンド12でもって多数の棒状物15を巻装した場合、雌型の面ファスナー13の曲面から屈曲性に乏しい雄型の面ファスナー14の端部14Aが浮き上がり、両者の係合力が低下するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、間隔をおいて並設した雄型あるいは雌型の面ファスナー間に伸縮可能域を形成することにより上記課題を解決した。即ち本発明の面ファスナーは、間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナーがストレッチ性シートによって連結され、面ファスナー間に伸縮可能域が設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明に適用する雄型あるいは雌型の面ファスナーとしては、従来から汎用されているテープ状のものを利用するとよく、またストレッチ性シートとしては、少なくとも経糸または緯糸に、ポリウレタン糸、ホリエーテル・エステル系繊維糸などの弾性糸を配して製織された織物や編成された編物あるいはゴム弾性を有したフィルムや不織布を適用するとよい。
【0007】
間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナーをストレッチ性シートによって連結するには、図1に示しているように、矢印方向(幅方向)に伸縮性を有した帯状のストレッチ性シート1上に2枚の面ファスナー2、2をフックまたはパイルの面を上にして間隔をおいて配置し、縫着手段あるいは接着手段によりストレッチ性シート1上に固定して2枚の面ファスナー2、2間にストレッチ性シート1による伸縮可能域3を形成するとよい。そして、横断方向に所望の大きさ形状にカットして図2に示しているような面ファスナー2、2間に伸縮可能域3を備えた形態となし、各種の物品に用いることができるようになすとよい。
【0008】
また図3に示しているように、2枚のテープ状の面ファスナー2、2の端縁を、矢印方向(幅方向)に伸縮性を有したテープ状のストレッチ性シート1の上下の端縁にそれぞれ重ね合わせ、この重ね合わせ部分を縫着手段あるいはウエルダー融着あるいは接着剤でもって接合4して2枚の面ファスナー2、2間にストレッチ性シート1による伸縮可能域3を形成し、上記と同様に所望の大きさ形状にカットして図2の形態となすこともできる。
【0009】
また物品に用いる面ファスナー2の形状大きさが予め定められている場合は、図4のイ、ロに示しているように、矢印方向に伸縮性を有した同じストレッチ性シート1、1上に、予め所定形状にカットした雄型面ファスナー2A及び雌型面ファスナー2Bを設定された間隔をおいて配置して固着し、中間部に伸縮可能域3が位置するように切り取って図2のような形となし、各種物品の係合部に利用できるようになしておくことも好ましい実施の形態である。
【0010】
さらにまた面ファスナー全体を広く使用し2方向のストレッチ機能を付与するには、図5に示しているように、正方形或は任意の形状にカットした面ファスナー片20、20をストレッチ性シート1、好ましくは矢印で示しているように縦方向と横方向に伸縮性を有したストレッチ性シート1上に縦横に間隔をおいて配置し、面ファスナー片20、20をストレッチ性シート1に縫着あるいは接着固定し、隣接する少なくとも4個以上の面ファスナー片20、20を含む範囲においてカットすれば、個々の面ファスナー片20、20間に伸縮可能域3を備えた面ファスナーとなすことができる。
【0011】
また、図6に示しているように、正方形或は任意の形状にカットした面ファスナー片20、20をストレッチ性シート1、好ましくは縦方向と横方向に伸縮性を有した基材シートを予めバイアス状に加工したストレッチ性シート1上に縦横に間隔をおいて配置し、面ファスナー片20、20をストレッチ性シート1に縫着あるいは接着固定し、隣接する少なくとも4個以上の面ファスナー片20、20を含む範囲において切断すれば、個々の面ファスナー片20、20間により立体的で多方向に伸縮可能域を備えた面ファスナーとなすことができる。
【0012】
伸縮可能域3を形成するための面ファスナー2、2間の間隔Yは、使用対象となるパーツ全体として求められるストレッチ性能を満たすよう基材となるストレッチ性シート1の伸縮性能より算出した任意の幅とする。例えば、図5において面ファスナー片20の各辺の長さがXcmと仮定して面ファスナー片20で形成される各ブロック中心間の距離は引張りテンション負荷が掛らない状態時X+Yであり、要求される伸び率が一定単位X+Yに対してZ%とすると、Y部分のみが伸縮可動域であることから、Yに求められる伸び量は(X+Y)×Z%となり、ストレッチ性シート1の伸縮性能よりこの数値を安定的実現できる寸法Yが導かれる。XとYのバランス及びストレッチ性シートの伸縮性能は使用目的に応じて任意に設定するものとするが、人体の動きに追随する用途に使用する場合の要求伸び率Zは30%〜60%前後が実用的である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の面ファスナーは、間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナー2、2がストレッチ性シート1によって連結され、面ファスナー2、2間に伸縮可能域3が設けられてなるものであるから、2枚の伸縮性を持たない雄型面ファスナー2A、2Aと2枚の伸縮性を持たない雌型面ファスナー2B、2Bを、例えば図2のようにそれぞれ伸縮可能域を保って並設された同形のものとなしてそれぞれのフック部5とループ部6とを係合させれば、図7に示したようにその係合部同士は伸縮しないが、それぞれの伸縮可能域3、3において矢印方向に伸縮することができ、係合部間に伸縮性を付与することができる。
【0014】
本発明の面ファスナーは、間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナー2、2がストレッチ性シート1によって連結され、面ファスナー2、2間に伸縮可能域3が設けられてなるものであるから、例えば図2のようにストレッチ性シート1に2枚の雄型面ファスナー2A、2Aが固着された面ファスナーのフック部5を、全体として長さ方向に伸縮性を有した雌型面ファスナー11のループ部6にそれぞれしっかり係合させることで、図8に示したようにその係合部はそれぞれの伸縮可能域3、3において矢印方向に伸縮することができ、係合部に伸縮性を付与することができる。よって、本発明の効果は、係合強度と伸縮性の適切な組合せを行うことで、面ファスナーフック材についてのみの適用でも効果が得られ、雌型面ファスナーとして既存の全面ストレッチタイプを使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ストレッチ性シート1として、弾性糸、例えばポリウレタン弾性糸を少なくとも緯糸に配して製織した帯状織物(平織物か二重織物が望ましい)を適用し、この幅方向に伸縮性を有したストレッチ性シート1の長さ方向に、図1に示したように、雄型および雌型の2枚のテープ状面ファスナー2、2をそれぞれ別個に間隔2をおいて並行に配置して接着または縫着固定し、雄型と雌型の本発明の面ファスナーとなす。そしてこの面ファスナーを物品の係合に用いる場合は、それぞれを所要の長さ分幅方向に切断して図2に示したような伸縮可能域3を備えた雄型及び雌型の面ファスナーの形態となし、物品の係合位置にそれぞれ取り付けるとよい。
【実施例1】
【0016】
ポリウレタン弾性糸を緯糸に配して製織した幅方向に伸縮性を有する帯状平織物をストレッチ性シート1として用い、このストレッチ性シート1上に、図1に示したように2枚のテープ状の雄型面ファスナー2A、2Aを間隔をおいて並行に配置して接着または縫着固定した。また図示を省略しているが、同様にしてストレッチ性シートに2枚の雌型面ファスナーを接着または縫着固定した。そして両者から所要の長さを切り取ってそれぞれ図2に示した形態となし、図9に示したように伸縮性基布によって形成されたサポーター10の一端部上面に雌型面ファスナー2Bの部分を、他端部下面に雄型面ファスナー2Aの部分を弾性糸でもって縫着したのち、雌型面ファスナー2B上に雄型面ファスナー2Aを係合させたところ、図7に示したように係合部に伸縮可能域3において矢印方向に伸縮性を与えることができた。
【実施例2】
【0017】
長さ方向及び幅方向に伸縮性を有する編物をストレッチ性シート1として用い、このストレッチ性シート1上に、図5に示しているように、正方形状に切断した複数枚の雄型面ファスナー片20、20を間隔をおき並べて接着固定し、雄型の面ファスナーとなした。そして図8に示しているように、一端部の上面に伸縮性雌型面ファスナー11が取り付けられている伸縮性サポーター10の他端部の下面に取り付け、雌型面ファスナー11にこの雄型面ファスナー2を係合させたところ、係合部分は雄型面ファスナー片20、20間において雌型面ファスナー11と共に伸縮し、従来の面ファスナーによる係合部よりも柔軟性に優れた係合部が得られた。
【実施例3】
【0018】
少なくとも経糸に弾性糸を用いて織成された幅10cm、長さ80cmの3重織の帯状の伸縮性基布で作られた束ねバンド12の一端部上面に、実施例1で得られた雌型面ファスナー2Bを伸縮糸でもって縫着固定するとともに、他端部の下面に、実施例1で得られた雄型の面ファスナー2Aを伸縮糸でもって縫着固定して棒状物の束ねバンド12となした。
【0019】
この束ねバンド12でもって図11に示したように建築足場用パイプ13を束ねて縛ったところ、雄型面ファスナー2Aと雌型面ファスナー2Bとの係合部分が不規則な曲面に位置しているにもかかわらず、雌型面ファスナー2B及び雄型面ファスナー2Aがその伸縮可能域3において伸長しながら屈曲して係合状態を保持し、運送中にも図12に示したような雄型面ファスナー14の先端部14Aの浮き上がりが発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の面ファスナーは、間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナー2、2がストレッチ性シート1によって連結され、面ファスナー2、2間に伸縮可能域3が設けられてなるものであり、例えば2枚の雄型面ファスナー2A、2Aと2枚の雌型面ファスナー2B、2Bがそれぞれ並設された同形(図2参照)のものを、図7に示したようにそれぞれのループ部5とフック部6とを係合させれば、その係合部はそれぞれの伸縮可能域3において伸縮することができるから、人体のサポーター用、棒状物の束ね縛り用、梱包用あるいは荷崩れ防止用はもとより、医療・スポーツ・美容・健康・インナー向けに幅広く立体的3次局面的伸縮機能を備えた各種の物品の係合部分に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の面ファスナーの素材形状を示した平面図である。
【図2】本発明の面ファスナーの使用時の実施例を示した平面図である。
【図3】本発明の面ファスナーの他の素材形状を示した平面図である。
【図4】本発明の面ファスナーの他の素材形状を示した平面図である。
【図5】本発明の面ファスナーの他の素材形状を示した平面図である。
【図6】本発明の面ファスナーの他の素材形状を示した平面図である。
【図7】本発明の面ファスナーの係合状態示した側面図である。
【図8】本発明の面ファスナーの他の係合状態を示した側面図である。
【図9】本発明の面ファスナーを適用したサポーターの正面斜視図である。
【図10】本発明の面ファスナーを適用したサポーターの正面斜視図である。
【図11】本発明の面ファスナーを適用した束ねバンドによる束ね状態の説明図である。
【図12】従来の束ねによる束ね状態の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ストレッチ性シート
2 面ファスナー
2A 雄型面ファスナー
2B 雌型面ファスナー
3 伸縮可能域
5 フック部
6 ループ部
20 面ファスナー片
【技術分野】
【0001】
本発明はサポーターやバンドなど各種の物品を係合するための面ファスナー、詳しくはその係合部分間に伸縮性を付与することができる面ファスナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から織物基布の表面に、合成樹脂モノフィラメントのフックとループパイルが立設されて形成されたマジックテープ(登録商標)に代表されるテープ状の面ファスナーが各種の物品を着脱自在に係合するために汎用されている。
【特許文献1】特開2006−149849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、上記した従来の面ファスナーは雌型面ファスナーと雄型面ファスナーとの係合部分に伸縮性がないため、例えば人体用のサポーター用として使用した場合、係合部分に位置している人体部分の自由度が制限され、時には痛みさえ感じるという問題点があるばかりでなく、サポーターの端部が人体の微妙な曲面に位置してサポーター基布に捩れが生じた場合には、雄型の面ファスナーの端部が雌型の面ファスナーから浮き上がり、両者の係合力が低下する。
【0004】
また、帯状の伸縮性基布の両端部に表裏に単に雌雄の面ファスナーを取り付けた形態のものが棒状物を束ねるためにも利用されているが、この利用においても束ねバンド12の両端に取り付けられている雌型面ファスナー13及び雄型面ファスナー14が柔軟性に乏しいため、図12に示しているように束ねバンド12でもって多数の棒状物15を巻装した場合、雌型の面ファスナー13の曲面から屈曲性に乏しい雄型の面ファスナー14の端部14Aが浮き上がり、両者の係合力が低下するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、間隔をおいて並設した雄型あるいは雌型の面ファスナー間に伸縮可能域を形成することにより上記課題を解決した。即ち本発明の面ファスナーは、間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナーがストレッチ性シートによって連結され、面ファスナー間に伸縮可能域が設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明に適用する雄型あるいは雌型の面ファスナーとしては、従来から汎用されているテープ状のものを利用するとよく、またストレッチ性シートとしては、少なくとも経糸または緯糸に、ポリウレタン糸、ホリエーテル・エステル系繊維糸などの弾性糸を配して製織された織物や編成された編物あるいはゴム弾性を有したフィルムや不織布を適用するとよい。
【0007】
間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナーをストレッチ性シートによって連結するには、図1に示しているように、矢印方向(幅方向)に伸縮性を有した帯状のストレッチ性シート1上に2枚の面ファスナー2、2をフックまたはパイルの面を上にして間隔をおいて配置し、縫着手段あるいは接着手段によりストレッチ性シート1上に固定して2枚の面ファスナー2、2間にストレッチ性シート1による伸縮可能域3を形成するとよい。そして、横断方向に所望の大きさ形状にカットして図2に示しているような面ファスナー2、2間に伸縮可能域3を備えた形態となし、各種の物品に用いることができるようになすとよい。
【0008】
また図3に示しているように、2枚のテープ状の面ファスナー2、2の端縁を、矢印方向(幅方向)に伸縮性を有したテープ状のストレッチ性シート1の上下の端縁にそれぞれ重ね合わせ、この重ね合わせ部分を縫着手段あるいはウエルダー融着あるいは接着剤でもって接合4して2枚の面ファスナー2、2間にストレッチ性シート1による伸縮可能域3を形成し、上記と同様に所望の大きさ形状にカットして図2の形態となすこともできる。
【0009】
また物品に用いる面ファスナー2の形状大きさが予め定められている場合は、図4のイ、ロに示しているように、矢印方向に伸縮性を有した同じストレッチ性シート1、1上に、予め所定形状にカットした雄型面ファスナー2A及び雌型面ファスナー2Bを設定された間隔をおいて配置して固着し、中間部に伸縮可能域3が位置するように切り取って図2のような形となし、各種物品の係合部に利用できるようになしておくことも好ましい実施の形態である。
【0010】
さらにまた面ファスナー全体を広く使用し2方向のストレッチ機能を付与するには、図5に示しているように、正方形或は任意の形状にカットした面ファスナー片20、20をストレッチ性シート1、好ましくは矢印で示しているように縦方向と横方向に伸縮性を有したストレッチ性シート1上に縦横に間隔をおいて配置し、面ファスナー片20、20をストレッチ性シート1に縫着あるいは接着固定し、隣接する少なくとも4個以上の面ファスナー片20、20を含む範囲においてカットすれば、個々の面ファスナー片20、20間に伸縮可能域3を備えた面ファスナーとなすことができる。
【0011】
また、図6に示しているように、正方形或は任意の形状にカットした面ファスナー片20、20をストレッチ性シート1、好ましくは縦方向と横方向に伸縮性を有した基材シートを予めバイアス状に加工したストレッチ性シート1上に縦横に間隔をおいて配置し、面ファスナー片20、20をストレッチ性シート1に縫着あるいは接着固定し、隣接する少なくとも4個以上の面ファスナー片20、20を含む範囲において切断すれば、個々の面ファスナー片20、20間により立体的で多方向に伸縮可能域を備えた面ファスナーとなすことができる。
【0012】
伸縮可能域3を形成するための面ファスナー2、2間の間隔Yは、使用対象となるパーツ全体として求められるストレッチ性能を満たすよう基材となるストレッチ性シート1の伸縮性能より算出した任意の幅とする。例えば、図5において面ファスナー片20の各辺の長さがXcmと仮定して面ファスナー片20で形成される各ブロック中心間の距離は引張りテンション負荷が掛らない状態時X+Yであり、要求される伸び率が一定単位X+Yに対してZ%とすると、Y部分のみが伸縮可動域であることから、Yに求められる伸び量は(X+Y)×Z%となり、ストレッチ性シート1の伸縮性能よりこの数値を安定的実現できる寸法Yが導かれる。XとYのバランス及びストレッチ性シートの伸縮性能は使用目的に応じて任意に設定するものとするが、人体の動きに追随する用途に使用する場合の要求伸び率Zは30%〜60%前後が実用的である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の面ファスナーは、間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナー2、2がストレッチ性シート1によって連結され、面ファスナー2、2間に伸縮可能域3が設けられてなるものであるから、2枚の伸縮性を持たない雄型面ファスナー2A、2Aと2枚の伸縮性を持たない雌型面ファスナー2B、2Bを、例えば図2のようにそれぞれ伸縮可能域を保って並設された同形のものとなしてそれぞれのフック部5とループ部6とを係合させれば、図7に示したようにその係合部同士は伸縮しないが、それぞれの伸縮可能域3、3において矢印方向に伸縮することができ、係合部間に伸縮性を付与することができる。
【0014】
本発明の面ファスナーは、間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナー2、2がストレッチ性シート1によって連結され、面ファスナー2、2間に伸縮可能域3が設けられてなるものであるから、例えば図2のようにストレッチ性シート1に2枚の雄型面ファスナー2A、2Aが固着された面ファスナーのフック部5を、全体として長さ方向に伸縮性を有した雌型面ファスナー11のループ部6にそれぞれしっかり係合させることで、図8に示したようにその係合部はそれぞれの伸縮可能域3、3において矢印方向に伸縮することができ、係合部に伸縮性を付与することができる。よって、本発明の効果は、係合強度と伸縮性の適切な組合せを行うことで、面ファスナーフック材についてのみの適用でも効果が得られ、雌型面ファスナーとして既存の全面ストレッチタイプを使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ストレッチ性シート1として、弾性糸、例えばポリウレタン弾性糸を少なくとも緯糸に配して製織した帯状織物(平織物か二重織物が望ましい)を適用し、この幅方向に伸縮性を有したストレッチ性シート1の長さ方向に、図1に示したように、雄型および雌型の2枚のテープ状面ファスナー2、2をそれぞれ別個に間隔2をおいて並行に配置して接着または縫着固定し、雄型と雌型の本発明の面ファスナーとなす。そしてこの面ファスナーを物品の係合に用いる場合は、それぞれを所要の長さ分幅方向に切断して図2に示したような伸縮可能域3を備えた雄型及び雌型の面ファスナーの形態となし、物品の係合位置にそれぞれ取り付けるとよい。
【実施例1】
【0016】
ポリウレタン弾性糸を緯糸に配して製織した幅方向に伸縮性を有する帯状平織物をストレッチ性シート1として用い、このストレッチ性シート1上に、図1に示したように2枚のテープ状の雄型面ファスナー2A、2Aを間隔をおいて並行に配置して接着または縫着固定した。また図示を省略しているが、同様にしてストレッチ性シートに2枚の雌型面ファスナーを接着または縫着固定した。そして両者から所要の長さを切り取ってそれぞれ図2に示した形態となし、図9に示したように伸縮性基布によって形成されたサポーター10の一端部上面に雌型面ファスナー2Bの部分を、他端部下面に雄型面ファスナー2Aの部分を弾性糸でもって縫着したのち、雌型面ファスナー2B上に雄型面ファスナー2Aを係合させたところ、図7に示したように係合部に伸縮可能域3において矢印方向に伸縮性を与えることができた。
【実施例2】
【0017】
長さ方向及び幅方向に伸縮性を有する編物をストレッチ性シート1として用い、このストレッチ性シート1上に、図5に示しているように、正方形状に切断した複数枚の雄型面ファスナー片20、20を間隔をおき並べて接着固定し、雄型の面ファスナーとなした。そして図8に示しているように、一端部の上面に伸縮性雌型面ファスナー11が取り付けられている伸縮性サポーター10の他端部の下面に取り付け、雌型面ファスナー11にこの雄型面ファスナー2を係合させたところ、係合部分は雄型面ファスナー片20、20間において雌型面ファスナー11と共に伸縮し、従来の面ファスナーによる係合部よりも柔軟性に優れた係合部が得られた。
【実施例3】
【0018】
少なくとも経糸に弾性糸を用いて織成された幅10cm、長さ80cmの3重織の帯状の伸縮性基布で作られた束ねバンド12の一端部上面に、実施例1で得られた雌型面ファスナー2Bを伸縮糸でもって縫着固定するとともに、他端部の下面に、実施例1で得られた雄型の面ファスナー2Aを伸縮糸でもって縫着固定して棒状物の束ねバンド12となした。
【0019】
この束ねバンド12でもって図11に示したように建築足場用パイプ13を束ねて縛ったところ、雄型面ファスナー2Aと雌型面ファスナー2Bとの係合部分が不規則な曲面に位置しているにもかかわらず、雌型面ファスナー2B及び雄型面ファスナー2Aがその伸縮可能域3において伸長しながら屈曲して係合状態を保持し、運送中にも図12に示したような雄型面ファスナー14の先端部14Aの浮き上がりが発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の面ファスナーは、間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナー2、2がストレッチ性シート1によって連結され、面ファスナー2、2間に伸縮可能域3が設けられてなるものであり、例えば2枚の雄型面ファスナー2A、2Aと2枚の雌型面ファスナー2B、2Bがそれぞれ並設された同形(図2参照)のものを、図7に示したようにそれぞれのループ部5とフック部6とを係合させれば、その係合部はそれぞれの伸縮可能域3において伸縮することができるから、人体のサポーター用、棒状物の束ね縛り用、梱包用あるいは荷崩れ防止用はもとより、医療・スポーツ・美容・健康・インナー向けに幅広く立体的3次局面的伸縮機能を備えた各種の物品の係合部分に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の面ファスナーの素材形状を示した平面図である。
【図2】本発明の面ファスナーの使用時の実施例を示した平面図である。
【図3】本発明の面ファスナーの他の素材形状を示した平面図である。
【図4】本発明の面ファスナーの他の素材形状を示した平面図である。
【図5】本発明の面ファスナーの他の素材形状を示した平面図である。
【図6】本発明の面ファスナーの他の素材形状を示した平面図である。
【図7】本発明の面ファスナーの係合状態示した側面図である。
【図8】本発明の面ファスナーの他の係合状態を示した側面図である。
【図9】本発明の面ファスナーを適用したサポーターの正面斜視図である。
【図10】本発明の面ファスナーを適用したサポーターの正面斜視図である。
【図11】本発明の面ファスナーを適用した束ねバンドによる束ね状態の説明図である。
【図12】従来の束ねによる束ね状態の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ストレッチ性シート
2 面ファスナー
2A 雄型面ファスナー
2B 雌型面ファスナー
3 伸縮可能域
5 フック部
6 ループ部
20 面ファスナー片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナーがストレッチ性シートによって連結され、面ファスナー間に伸縮可能域が形成されていることを特徴とする伸縮可能域を備えた面ファスナー。
【請求項2】
幅方向に伸縮性を有した帯状のストレッチ性シート上に、2枚のテープ状の面ファスナーが間隔をおいてストレッチ性シートに平行に固定されてなる請求項1記載の面ファスナー。
【請求項3】
長さ方向に伸縮性を有した帯状のストレッチ性シート上に、所要の形状にカットされた複数枚の面ファスナーがストレッチ性シートの幅方向に間隔をおいて並設固定されてなる請求項1記載の面ファスナー。
【請求項4】
幅方向及び長さ方向に伸縮性を有した帯状のストレッチ性シート上に、所要の形状にカットされた複数枚の面ファスナー片が幅方向及び長さ方向に間隔をおいて並設固定されてなる請求項1記載の面ファスナー。
【請求項1】
間隔をおいて配置した少なくとも2枚の面ファスナーがストレッチ性シートによって連結され、面ファスナー間に伸縮可能域が形成されていることを特徴とする伸縮可能域を備えた面ファスナー。
【請求項2】
幅方向に伸縮性を有した帯状のストレッチ性シート上に、2枚のテープ状の面ファスナーが間隔をおいてストレッチ性シートに平行に固定されてなる請求項1記載の面ファスナー。
【請求項3】
長さ方向に伸縮性を有した帯状のストレッチ性シート上に、所要の形状にカットされた複数枚の面ファスナーがストレッチ性シートの幅方向に間隔をおいて並設固定されてなる請求項1記載の面ファスナー。
【請求項4】
幅方向及び長さ方向に伸縮性を有した帯状のストレッチ性シート上に、所要の形状にカットされた複数枚の面ファスナー片が幅方向及び長さ方向に間隔をおいて並設固定されてなる請求項1記載の面ファスナー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−86655(P2008−86655A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273218(P2006−273218)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(506336120)株式会社エス企画 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(506336120)株式会社エス企画 (3)
【Fターム(参考)】
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