説明

伸縮性シートの製造装置

【課題】糸状弾性体の向きを平面視平行に矯正できると共に、装置の耐久性が高い伸縮性シートの製造装置等を提供すること。
【解決手段】平行配置された一対の糸搬送用長手構造体12,13に巻回して糸状弾性体7の向きを糸搬送用長手構造体12,13の長手方向に交差する向きとする弾性体巻回手段14と、糸搬送用長手構造体12,13により搬送される糸状弾性体7を、長手方向に走行する帯状シート50,60に接着する一体化手段17とを備える伸縮性シートの製造装置11であって、糸搬送用長手構造体12,13は、それぞれ長手方向に向けた回転軸を有する二本の平行な回転柱体12a、12b(13a,13b)と、二本の回転柱体を回転駆動する駆動手段とを有し、回転駆動の際に二本の回転柱体による糸状弾性体7の搬送速度に速度差を生じさせることにより帯状シート50,60との接着箇所に近づくにつれて糸状弾性体7の向きが矯正されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性シートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
資材をできる限り省き、廃棄物をできる限り抑え、環境に優しく、コストを抑えるという観点から、ファスニングテープを備えたウエストパネル材を別工程で製造しておき、吸収体を含む長方形状の吸収性本体にこのウエストパネル材を付加して製造される展開型の使い捨ておむつが知られている。ウエストパネル材は、装着性の観点から、伸縮性の部材であることが好ましく、ウエストパネル材としては、一般的に伸縮性のフィルムを用いて形成されたものが用いられる。しかし、伸縮性のフィルムはコストがかかるため、汎用の弾性部材である所謂糸ゴムを用いてウエストパネル材を形成することが好ましい。但し、糸ゴムを用いてウエストパネル材を得る工程と、そのウエストパネル材を吸収性本体に付加して展開型の使い捨ておむつを得る工程とを一連の流れで連続して行う場合、糸ゴムを用いて形成したウエストパネル材の伸縮方向は、一般的に吸収性本体の搬送方向と同方向となり、展開型の使い捨ておむつの着用時に求められるウエストパネル材の伸縮方向と直交する方向となる。従って、糸ゴムを用いて形成したウエストパネル材をインライン工程で吸収性本体に付加して展開型の使い捨ておむつを製造する場合、糸ゴムを用いて形成したウエストパネル材を90度反転させて吸収性本体に付加する必要がある。このようにウエストパネル材を90度反転させる装置が別途必要となるため、設備投資の増大を招いてしまう。
【0003】
上述のような90度反転させる装置を使用しない方法として、例えば、特許文献1には、長さ方向に走行中の透水性シートに接着剤を塗布し、該接着剤塗布面に、テンションの与えられた糸状弾性体を、走行するシートのシート面に沿って且つシート走行方向に向けてジグザグ状態で平行移動させ、該糸状弾性体を伸張させた状態でシートに接着する工程と、前記糸状弾性体を両端で切断する工程とを行う伸縮性シートの製造方法が記載されている。
更に、特許文献1には、糸状弾性体を巻回する一対の送りベルトのそれぞれに上下2段のベルトを備えたものを用い、一対の搬送ベルトに巻回した平面視ジグザグ状態の糸状弾性体を、円柱部材と円柱部材との間に速度差を設けて、平面視平行に配置し直した後、帯状シートに固定するようにした伸縮性シートの製造装置も記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の上下2段のベルトを用いた装置では、テンションのかかった状態の糸状弾性体が巻回されて使用されるため、上下2段のベルトは摩耗しやすく、装置の耐久性が悪い。一般的に、糸状弾性体と帯状シートとのスムーズな一体化等を図るため、上下各ベルトのベルト幅は小さくすることが求められるため、なおさらこの耐久性が問題となる。
また、特許文献2にあるように糸状弾性体の搬送用にボールネジ等を使用することは可能ではある。しかしボールネジによる搬送において糸状弾性体の向きを平面視平行等に矯正する技術はこれまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−243309号公報
【特許文献2】特開2002−192641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定間隔離間して平行配置された一対の糸搬送用長手構造体と、一対の該糸搬送用長手構造体に糸状弾性体を巻回して該糸状弾性体の向きを該糸搬送用長手構造体の長手方向に交差する向きとする弾性体巻回手段と、該弾性体巻回手段に巻回されて該糸搬送用長手構造体により搬送される該糸状弾性体を、前記長手方向に走行する帯状シートに接着する一体化手段とを備える伸縮性シートの製造装置であって、前記糸搬送用長手構造体は、それぞれ前記長手方向に向けた回転軸を有する二本の平行な回転柱体と、二本の該回転柱体を回転駆動する駆動手段とを有し、該駆動手段による回転駆動の際に二本の該回転柱体による前記糸状弾性体の搬送速度に速度差を生じさせることにより該帯状シートとの接着箇所に近づくにつれて前記糸状弾性体の向きが矯正されるようにした、伸縮性シートの製造装置を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記の伸縮性シートの製造装置を用いて伸縮性シートを製造する伸縮性シートの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、吸収性本体と、該吸収性本体の長手方向の左右両側に連設された左右のウエストパネルを有する使い捨ておむつの製造方法であって、前記の伸縮性シートの製造装置により伸縮性シートを製造する工程、及び該伸縮性シートを、前記ウエストパネルの形成材に用いて前記使い捨ておむつを製造する工程を具備する、使い捨ておむつの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の伸縮性シートの製造装置によれば、帯状シートとの接着箇所へ糸状弾性体を搬送する際に糸状弾性体の向きを平面視平行等に矯正できると共に、装置の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る伸縮性シートの製造方法及び使い捨ておむつの製造方法により得られるウエストパネル材、及びそれを用いた使い捨ておむつを示す平面図である。
【図2】第1実施形態に係る伸縮性シートの製造装置を示す概略斜視図である。
【図3】第1実施形態において各円柱部材の配置等を示す概略中央断面図である。
【図4】円柱部材の外周面に形成されるネジ溝を示す概略斜視図である。
【図5】巻回位置から固定位置まで搬送される間に糸状弾性体の向きが矯正される過程を示す概略斜視図である。
【図6】図1に示す装置の回転アーム(弾性体巻回手段)より上流側の構成を示す斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る各円柱部材の駆動機構を示す概略側面図である。
【図8】第3実施形態に係る各円錐台状柱体の駆動機構を示す概略側面図である。(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図9】回転柱体の配置の変形例を示す概略断面図である。(a)はハの字型、(b)は逆ハの字型、(c)は平行四辺形型の配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
ここで、第1実施形態の製造装置及び製造方法で製造される伸縮性シートは、例えば、図1に示すように、展開型の使い捨ておむつ1のウエストパネル3に用いられる。従って、先ず、図1に基づいて該展開型の使い捨ておむつ1について説明する。図1に示す使い捨ておむつ1は、本発明の使い捨ておむつの製造方法の各実施態様により製造する使い捨ておむつの一例でもある。
【0012】
展開型の使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」ともいう。)は、装着時に装着者の腹側に位置する腹側部A、背側に位置する背側部B、及び腹側部Aと背側部Bとの間に位置する股下部Cを有する吸収性本体2と、背側部Bの左右両外方に連設された左右一対のウエストパネル3,3とを有する。おむつ1は、図1に示すように、腹側部Aの左右両外方に連設された左右一対のパネル材4,4を有している。尚、おむつ1の吸収性本体2は、図1に示すように、平面状に拡げた状態において、長方形状である。また、おむつ1のパネル材4は、図1に示すように、平面状に拡げた状態において、台形状であり、長さの長い下底側が、接着剤や融着等の手段により吸収性本体2に固定されている。
以下の説明では、吸収性本体2の長手方向(おむつ1の長手方向でもある)をY方向、吸収性本体2の幅方向(おむつ1の幅方向でもある)をX方向として説明する。
【0013】
一対のウエストパネル3,3それぞれは、平面状に拡げた状態において、矩形状である。各ウエストパネル3は、2枚のシート5,6と、2枚のシート5,6の間に伸長した状態で配された複数本の糸状弾性体7とを有している。各ウエストパネル3は、一対のシート5,6の間に糸状弾性体7をY方向と交差する方向に伸長した状態で固定された伸縮性シートからなる。具体的には、各ウエストパネル3は、図1に示すように、同形同大の矩形状の2枚のシート5,6の間に、Y方向と直交する方向(X方向)に伸長した糸状弾性体を、Y方向に略等間隔を空けて配して、接着剤や融着等の手段により一体的に固定して形成されている。このように形成された矩形状のウエストパネル3には、そのX方向外方側の端部にファスニングテープ8が接着剤や融着等の手段により固定されている。また、矩形状のウエストパネル3は、そのX方向内方側の端部が接着剤や融着等の手段により吸収性本体2の背側部Bに固定され、背側部BのX方向外方に連設されている。
【0014】
本おむつ1において、ウエストパネル3を構成する伸縮性シートは、製造時におけるシートの搬送方向yがY方向と平行となり、製造時におけるシートの搬送方向に直交する方向xがX方向と一致するように固定されている。
【0015】
吸収性本体2は、図1に示すように、液透過性の表面シート21と、液不透過性又は撥水性の裏面シート22と、これら両シート21,22間に介在された液保持性の吸収体23とを有している。吸収性本体2は、図1に示すように、おむつ1の内面をなす表面シート21と、おむつ1の外面をなす裏面シート22とを、これら両シート21,22間に吸収体23を介在させて接合することにより形成されている。また、吸収性本体2は、図1に示すように、Y方向の両側部に沿って立体ガード形成用シート24,24を配設してなる。立体ガード形成用シート24は、吸収性本体2のY方向両側部に沿って表面シート21に固定されている。各立体ガード形成用シート24は、X方向内方側の端縁近傍に沿って立体ガード形成用の弾性部材25を有しており、着用時には、その弾性部材25の収縮力により、該端縁から所定幅の部分が表面シート21から離間して立体ガードを形成する。また、吸収性本体2の長手方向両側部の脚廻りに配される部分には、レッグギャザー形成用の弾性部材26が配されている。着用時には、弾性部材26の収縮によりレッグギャザーが形成され、脚廻りに対して良好にフィットする。
【0016】
おむつ1の形成材料について説明する。
ウエストパネル3を構成するシート5,6及びパネル材4としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、シート5,6及びパネル材4としては、不織布、織物、フィルムまたはそれらの積層シート等を用いることができる。吸収性本体2を構成する表面シート21、裏面シート22としては、それぞれ、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート21としては、親水性且つ液透過性の不織布等を用いることができ、裏面シート22としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。吸収体23としては、パルプ繊維等の繊維の集合体(不織布であっても良い)又はこれに吸水性ポリマーの粒子を保持させてなる吸収性コアを、透水性の薄紙や不織布からなるコアラップシートで被覆したもの等を用いることができる。立体ガードを構成する立体ガード形成用シート24としては、伸縮性のフィルム、不織布、織物またはそれらの積層シート等を用いることができる。
【0017】
糸状弾性体7及び立体ガードを構成する弾性部材25としては、天然ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン−ポリイソプレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体、アクリル酸エチル−エチレン等のポリエチレン−αオレフィン共重合体等からなる糸状の伸縮性材料を用いることができる。本発明における糸状弾性体には、断面が円形、正方形状のものの他、楕円形、断面矩形等の細幅帯状のものも含まれ、マルチフィラメントタイプのものも用いることができる。糸状弾性部材の幅(又は径)は、例えば、0.1〜3mmであり、好ましくは1mm以下である。
ファスニングテープ8としては、例えば、不織布等のテープ基材の一方の面上にメカニカルファスナーのフック部材を熱融着や接着剤等により貼り付けてなるものを用いることができる。
【0018】
続いて第1実施形態に係る伸縮性シートの製造装置11及び伸縮性シートの製造方法について図2〜図6に基づいて詳述する。
第1実施形態に係る伸縮性シートの製造装置11は所定間隔離間すると共に長手方向(y方向)に延設される一対の平行な糸搬送用の長手構造体12,13と、一対の該長手構造体12,13に糸状弾性体7を巻回して糸状弾性体7の向きを長手方向(y方向)に交差する向きとする回転アーム14(弾性体巻回手段)と、回転アーム14に巻回されて該長手構造体12,13により搬送された糸状弾性体7を、長手方向(y方向)に沿って走行する帯状シート50,60に接着する一体化手段17と、帯状シート50,60の幅方向両端部それぞれから延出している糸状弾性体7を切断する切断手段18と、を備えている。
【0019】
図2に示すように、一対の長手構造体12,13の長手方向はいずれもシートの搬送方向と同じy方向である。また一対の長手構造体12,13が離間する方向は該長手方向(y方向)と直交する方向(x方向)である。
シートの搬送方向(y方向)は、一対の長手構造体12,13に巻回された糸状弾性体7の搬送方向又はその糸状弾性体7が固定されるときのシート(帯状シート50及び/又は60)の搬送方向である。
図2中矢印のy方向は、シートの搬送方向であり、糸状弾性体7や一対の帯状シート50,60の搬送方向を示し、最終的に本実施態様により製造されるウエストパネルの搬送方向及び該ウエストパネル(伸縮性シート)を取り付けたおむつ1の連続体の搬送方向とも同じ方向である。また、図2中矢印のx方向は、帯状シート50,60の幅方向であり、シートの搬送方向と直交する方向である。また、一体化手段17は、一対のニップローラー171,172を用いて一対の帯状シート50,60の間に伸長状態の糸状弾性体7を接着して固定するが、図2中矢印のz方向は、当該一対のニップローラー171,172どうしが対向する方向である。
また図2のP1は、回転アーム14により長手構造体12,13に糸状弾性体7が巻回される巻回位置を示す。図2のP2は上述の一対のニップローラー171,172により糸状弾性体7が帯状シート50、60に接着して固定される固定位置を示す。
【0020】
図2に示すように、一方の長手構造体12は互いに平行な2本の円柱部材12a、円柱部材12bを備える。同様に他方の長手構造体13も互いに平行な2本の円柱部材13a、円柱部材13bを備える。円柱部材12aの回転軸s1(図3参照)及び円柱部材12bの回転軸s2(図3参照)は、長手構造体12の長手方向(y方向)を向いており、回転軸s1と回転軸s2とは略平行である。円柱部材13bの回転軸s3(図3参照)及び円柱部材13bの回転軸s4(図3参照)は長手構造体13の長手方向(y方向)を向いており、回転軸s3と回転軸s4とは略平行である。
円柱部材12a,12b,13a,13bは、本実施形態における円柱状の回転柱体である。
図3に示すように、長手構造体12に係る2本の円柱部材12a、12bは隙間を介して鉛直方向(z方向)に上下2段に並列している。長手構造体13に係る2本の円柱部材13a、13bも同様である。4本の円柱部材12a,12b,13a,13bの断面の円径は略同一となっている。
【0021】
図4のように、4本の円柱部材12a,12b,13a,13bの外周面にはそれぞれネジ溝121,122,123,124が各円柱部材の全長に渡って形成されている。ネジ溝121,122,123,124はいずれも軸方向(y方向)に同じピッチu
で同じ深さに形成された同方向の螺旋状をしている。また各円柱部材12a,12b,13a,13bの素材は高負荷に耐えうるものが望ましく、金属製やプラスチック製のものが挙げられるが、これに限定されない。当該円柱部材として汎用の金属製ボールネジを使用することは可能である。
【0022】
ここで4本の円柱部材12a,12b,13a,13bを駆動するのは、各円柱部材12a,12b,13a,13bにそれぞれ対応する4つのダイレクト駆動用のモータ(いずれも不図示)であり、これらは対応する各円柱部材12a,12b,13a,13bにそれぞれ直結している。このためベルト等の連動部品が不要になると共により精密な駆動制御が可能となる。4つのモータ(不図示)はサーボモーター等で構成できる。
【0023】
図2に示すように、4本の円柱部材12a,12b,13a,13bの長さは略等しく、搬送方向(y方向)において略同位置にある。4本の円柱部材12a,12b,13a,13bの搬送方向上流端部は、回転アーム14の導出口146よりも上流側に位置する。また4本の円柱部材12a,12b,13a,13bは一対のニップローラー171,172の上流側から下流側に亘って配されている。なお、長手構造体12(上下一対の円柱部材12a,12b)及び長手構造体13(上下一対の円柱部材13a,13b)は、帯状シート50,60のx方向外方に位置し、互いに左右対称に配されている。
【0024】
そして回転アーム14により一対の長手構造体12,13に巻回された糸状弾性体7はそれぞれ、各円柱部材のそれぞれのネジ溝121,122,123,124に係合される。そして4本の円柱部材12a,12b,13a,13bの各々に対応するモータの回転駆動に伴い円柱部材12a,12b,13a,13bが同方向(ネジ溝121,122,123,124の螺旋の進行方向)に回転することにより搬送方向(y方向)に搬送される。4本の円柱部材12a,12b,13a,13bの各外周面に接する糸状弾性体7のy方向の移動速度がそれぞれ円柱部材12a,12b,13a,13bによる糸状弾性体7の搬送速度(以下糸搬送速度と略記)である。
【0025】
ここで上下一対の円柱部材の間(円柱部材12aと円柱部材12bとの間、並びに円柱部材13aと円柱部材13bとの間)の糸搬送速度に速度差を生じるように、各円柱部材12a,12b,13a,13bの回転速度が設定される。ここで長手構造体12の上段の円柱部材12aの糸搬送速度と下段の円柱部材12bの糸搬送速度との大小関係は、もう一方の長手構造体13の上段の円柱部材13aの糸搬送速度13aと下段の円柱部材13bの糸搬送速度との大小関係と反対になるように設定される。
図3及び図5に基づいて説明すると、例えば、長手構造体12(図3の右側、図5の手前側)において上段の円柱部材12aによる糸搬送速度を下段の円柱部材12bよりも速くすると共に、長手構造体13(図3の左側、図5の奥側)において下段の円柱部材13bによる糸搬送速度を上段の円柱部材13aよりも速くする。このようにするのは、後述のように、y方向への搬送中に糸状弾性体7の長手構造体12と長手構造体13との間の傾きをy方向へ直交させるためである(図5参照)。
【0026】
望ましくは、4つの円柱部材12a,12b,13a,13bのうち糸搬送速度を速くする円柱部材(上記の例では図3における右上側の円柱部材12a及び左下側の円柱部材13b)は下記の理論式1に従ってその糸搬送速度がVaとなるようにそれぞれ回転速度が制御されると共に、糸搬送速度を遅くする円柱部材(上記の例では図3における右下側の円柱部材12b及び左上側の円柱部材13a)は下記の理論式2に従ってその糸搬送速度がVbとなるようにそれぞれ回転速度が制御される。なお、下記2式においてLは、糸状弾性体7の巻回位置P1から固定位置P2までの距離である(図5参照)。またpは最終的に平行状態となった際の糸状弾性体の間隔であり(図5参照)、VOは基準速度である。
Va=(L+p/2)/L ×VO ・・・・(式1)
Vb=(L−p/2)/L ×VO ・・・・(式2)
【0027】
円柱部材12a,12b,13a,13bのそれぞれは、対応する別のモータ(いずれも不図示)に駆動されるので、長手構造体12に係る円柱部材12aと円柱部材12bとの間の糸搬送速度差は、それぞれを回転駆動するモータの回転速度を異ならせることによって実現できる。長手構造体13における円柱部材13aと円柱部材13bとの糸搬送速度差も同様である。
【0028】
また、回転アーム14は、図2に示すように、軸部142、周回部143及び連結部144を有するアーム部141と、軸部142の中心線を回転軸として、アーム部141を回転させる駆動機構147とを備えている。連結部144は、軸部142及び周回部143のそれぞれに対して角度をなして結合しており、周回部143と軸部142とは略平行となっている。軸部142は、その一端に糸状弾性体7の導入口145を有し、周回部143は、その一端に、糸状弾性体7の導出口146を有しており、導入口145から導入された糸状弾性体7が、軸部142、連結部144及び周回部143を通って導出口146からスムーズに導出される。アーム部141の屈曲部や導出口146等には、糸状弾性体7との間の摩擦を低減し得る各種公知の部材(従動ロールや低摩擦部材等)を配置することもできる。
【0029】
上述のように、周回部143は、導出口146の位置が、長手構造体12(円柱部材12a、12b)及び長手構造体13(円柱部材13a,13b)の上流側の端部より下流側に配されている。回転アーム14は、その駆動部(軸部142)にサーボモーター148が取り付けられており、該サーボモーター148の回転により、周回部142が、長手構造体12(円柱部材12a,12b)及び長手構造体13(円柱部材13a,13b)の外周を周回する。導出口146が回転する軌跡の直径は、一対の長手構造体12,13の外面間の距離より大きい。
このような回転アーム14により、取り込んだ糸状弾性体7を、長手構造体12(円柱部材12a,12b)及び長手構造体13(円柱部材13a、13b)の上流側の端部であって且つそれぞれの外周側に連続的に巻回することができる。回転アーム14の回転速度、即ち、サーボモーター148の回転速度は、製造装置11の備える制御部(不図示)により、制御されている。
【0030】
図6に示すように、伸縮性シートの製造装置11は、糸状弾性体7を連続して繰り出し、回転アーム14(弾性体巻回手段)に糸状弾性体7を伸長状態で導入する弾性体供給手段15を備えている。
弾性体供給手段15は、糸状弾性体7を巻き付けたボビン70の下流側に位置して糸状弾性体7にブレーキによりテンションをかけるテンサー151と、テンサー151の下流側に位置してボビン70から糸状弾性体7を繰り出す繰り出しローラー152と、繰り出しローラー152の下流側に位置してテンションを測定するためのテンション測定器153とを備えている。繰り出しローラー152は、その回転軸方向がx方向に配されている。繰り出しローラー152には、その駆動部にサーボモーター(不図示)が取り付けられている。繰り出しローラー152は、その外周に糸状弾性体7が2回巻き付けられて使用される。製造装置11の備える制御部(不図示)により、テンション測定器153による検出出力に基づき、サーボモーター(不図示)の回転速度、即ち繰り出しローラー152の回転速度を制御し、所定のテンションで糸状弾性体7をボビン70から巻き出すことができる。
【0031】
弾性体供給手段15は、図6に示すように、繰り出しローラー152の下流側に位置するフィードローラー156を備えている。フィードローラー156は、回転アーム14と繰り出しローラー152との間に配され、その回転軸方向がx方向に配されている。フィードローラー156は、その駆動部にサーボモーター(不図示)が取り付けられている。サーボモーター(不図示)の回転速度、即ちフィードローラー156の回転速度は、製造装置11の備える制御部(不図示)により、制御されている。
【0032】
また、一体化手段17は、図2に示すように、一対のニップローラー171,172を備えている。一対のニップローラー171,172としては、金属製の円筒形のローラーや、低硬度シリコンゴム製の円筒形のローラーを用いることができる。一対のニップローラー171,172は、何れか一方の駆動部にサーボモーター(不図示)が取り付けられており、製造装置11が備える制御部(不図示)により回転速度が制御されている。一対のニップローラー171,172それぞれの回転軸には駆動伝達用のギヤが取り付けられている。この駆動手段(不図示)により、伸縮性シートの生産速度に基づき、サーボモーター(不図示)の回転速度、即ち一方のニップローラー171,172の回転速度をコントロールすることができる。その際、駆動伝達用のギヤが噛み合うことによって、他方のニップローラー172,171にも駆動力が伝達され、一対のニップローラー171,172を回転させることができる。一対のニップローラー171,172の軸受け部分は、一対の帯状シート50,60の間に伸長状態の糸状弾性体を確実に固定する為に、油圧、空圧、バネ等の力を利用して、それぞれの軸受け部分が加圧されている。
【0033】
図示しないが平面視において一対のニップローラー171,172は、長手構造体12,13の間に位置している。また、一体化手段17は、糸状弾性体7と合流させる前の帯状シート50及び/又は60に、接着剤を塗布する接着剤塗工機(不図示)を備えている。接着剤吐出機は、帯状シート50における帯状シート60側に向けられる面、及び/又は帯状シート60における帯状シート50側に向けられる面)に、任意の塗布パターンで接着剤を塗布する。接着剤の塗工態様は、ストライプ状、スパイラル状、サイン波形状等のパターン塗工であっても良いし、全面にスプレーしたり、べた塗り状に塗布しても良い。帯状シート50及び/又は60に接着剤を塗布し、その帯状シート50,60に糸状弾性体7を挟んだ状態で、これらをニップローラー171,172で加圧することで、糸状弾性体7が帯状シート50,60間に確実に固定される。
【0034】
切断手段18は、図2に示すように、搬送されてくる糸状弾性体7が当たる部分が先鋭な切断刃となされたカッター180を備えている(長手構造体13側のカッター180は図示略)。カッター180は、支持体(不図示)により、糸状弾性体7が当たる位置に配置されており、糸状弾性体7が、長手構造体12,13により搬送されてカッター180に押しつけられることにより切断される。各カッター180は、円柱部材12a及び円柱部材12bとの間、並びに円柱部材13aと円柱部材13bとの間に位置している。切断手段18により糸状弾性体7を切断するx方向の位置は、ニップローラー171,172と長手構造体12,13との間であっても良い。また、切断手段18としては、糸状弾性体7を切断し得る各種公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、外周面に周方向に亘る切断刃を備えたカッターローラーと該切断刃を受けるアンビルローラーとを備えたローラーカッター等を用いることもできる。
【0035】
続いて、以上説明した製造装置11を用いて伸縮性シートを製造する工程について説明する。
先ず、図6に示すように、糸状弾性体7を連続して繰り出し、繰り出された糸状弾性体7を伸長状態で弾性体巻回手段としての回転アーム14に導入する。
詳述すると、繰り出しローラー152を用いて、糸状弾性体7を巻き付けたボビン70から糸状弾性体7を連続して繰り出す。繰り出す際には、テンション測定器153による糸状弾性体7のテンションの検出出力に基づき、製造装置11の備える制御部(不図示)によって、巻き出しローラー152の回転速度やテンサー151のブレーキを調整し、所定のテンションでボビン70から糸状弾性体7を繰り出す。
【0036】
そして、その糸状弾性体7を回転アーム14に導入するのであるが、導入する際には、前述したフィードローラー156により、回転アーム14(弾性体巻回手段)に導入する糸状弾性体7の速度を一定の速度に調整して導入する。導入速度は、一対の長手構造体12,13に巻回させる巻回速度に応じた速度とする。
【0037】
そして、図2,図6に示すように、回転アーム14を用いて伸長状態の糸状弾性体7を一対の長手構造体12,13に連続的に巻回し、一対の長手構造体12,13を用いて連続的に巻きかけられた糸状弾性体7を一対の帯状シート50,60の間に搬送する。詳述すると、伸長状態で回転アーム14に供給された糸状弾性体7は、導入口145から、アーム部141内に導入され、軸部142、連結部144及び周回部143内を通って、導出口146から導出される。導出口146から導出される糸状弾性体7は、回転アーム14が回転しながら導出されることによって、一対の長手構造体12,13(円柱部材12a、円柱部材12b、円柱部材13a及び円柱部材13b)の上流側の端部における外周側(巻回位置:P1)に巻回する。ここで、各円柱部材12a,12b,13a,13bの回転により、各円柱部材12a,12b,13a,13bの外周側に糸状弾性体7を連続的に螺旋状に巻きかけられる。この連続的に巻きかけられた糸状弾性体7を下流側の一対の帯状シート50,60の間(固定位置:P2)まで搬送する。
【0038】
図5のように、回転アーム14によって一対の長手構造体12,13に巻きかけられた糸状弾性体7は当初、y方向と交差する方向に伸長しており、y方向と直交する方向には配されていない。しかし図5のように、長手構造体12において上段の円柱部材12aの糸搬送速度が下段の円柱部材12bよりも大きく、長手構造体13において下段の円柱部材13bの糸搬送速度が上段の円柱部材13aよりも大きいことによって、各長手構造体12,13において、上下各段における糸状弾性体の位置が徐々に、搬送方向に沿って前後にずれる。そして、巻回位置(P1)付近では平面視でジグザグ状態だった糸状弾性体7が固定位置(P2)付近では平面視で長手構造体12,13間でy方向に対してほぼ直交して平行となる。
【0039】
図2に示すように、帯状シート50は、予め、セーラー(不図示)等により、長手方向の両側部(x方向の両端部)それぞれが外面側(帯状シート60と接合されない面対向しない非対向面側)に折られており、長手構造体12(円柱部材12a,円柱部材12b)及び長手構造体13(円柱部材13a,円柱部材13b)の上段側から一対のニップローラー171,172の間に供給されている。また、図2に示すように、帯状シート60は、予め、セーラー(不図示)等により、長手方向の両側部(x方向の両端部)それぞれが外面側(帯状シート50と対向しない非対向面側)に折られており、長手構造体12(円柱部材12a,円柱部材12b)及び長手構造体13(円柱部材13a,円柱部材13b)の下段側から一対のニップローラー171,172の間に供給されている。尚、帯状シート50及び/又は帯状シート60は、一対のニップローラー171,172の間に供給される前に、その内面側に接着剤が塗布されている。接着剤の塗布は全面にスパイラル状に塗布されていてもよいし、ベタ状に塗布されていてもよい。
【0040】
次いで、ニップローラー171,172を用いて一対の帯状シート50,60の間に糸状弾性体7を伸長状態で固定する。詳述すると、連続的に巻きかけられた糸状弾性体7が一対の帯状シート50,60の間に配された連続体を、一対のニップローラー171,172間に供給し、一対の帯状シート50,60の間に糸状弾性体7を伸長状態で固定する。
【0041】
次いで、一対の帯状シート50,60の幅方向(x方向)両端部それぞれから延出している糸状弾性体7を前述したカッター180で切断する。
【0042】
次いで、外面側に折られた帯状シート50,60それぞれのx方向の両端部を、セーラー(不図示)等により、折り直し、一対の帯状シート50,60の間に糸状弾性体7をy方向と交差する方向に伸長した状態に固定した帯状の伸縮性シート3Aを連続的に製造することができる。この製造された帯状の伸縮性シートを、公知の切断手段(図示せず)により、間欠的にx方向に亘って切断する。間欠的に切断する間隔は、おむつ1の備えるウエストパネル3の寸法と同じである。これにより、ウエストパネル3(伸縮性シート)を連続的に製造することができる。
【0043】
なお、ウエストパネル3を備えるおむつ1の製造方法においては、公知の方法により、表面シート21の連続体、裏面シート22の連続体、及び両シート21,22の連続体間に、搬送方向(y方向)に間欠的に複数個の吸収体23,23・・・を配し、表面シート21の連続体の搬送方向(y方向)の両側部に伸張した複数本の弾性部材25及び立体ガード形成用シート24の連続体を配した吸収性本体2の連続体を別工程で製造する。
この製造された吸収性本体2の連続体を、搬送方向(y方向)に搬送しながら、x方向両外方に突出するように一対のウエストパネル3を、吸収性本体2の連続体に含まれる吸収体33毎に配したおむつ1の連続体を製造する。ここで、吸収性本体2の連続体の搬送方向(y方向)と、ウエストパネル3(伸縮性シート)を製造する際の搬送方向(y方向)は、同方向であり、ウエストパネル3(伸縮性シート)を90°反転する必要はない。その後、その連続体を、公知の切断手段(図示せず)により、個々のおむつ1の寸法に切断して、おむつ1を製造することができる。
【0044】
これまで詳細に説明したように、第1実施形態の伸縮性シートの製造装置11及び伸縮性シートの製造方法では、長手構造体12はy方向に向いて平行な一対の円柱部材12a,12b及び、当該円柱部材12a,12bをそれぞれ駆動する2つのモータを有すると共に、長手構造体13はy方向に向いて平行な一対の円柱部材13a,13b及び、当該円柱部材13a,13bをそれぞれ駆動する2つのモータを有する。また各円柱部材12a,12b,13a,13bはそれぞれらせん状のネジ溝121,122,123,124を有する。そして各モータによる回転駆動の際に上下の円柱部材の間(円柱部材12aと円柱部材12bの間、並びに円柱部材13a及び円柱部材13bの間)でそれぞれの糸搬送速度に速度差を生じさせることに基づいて、糸状弾性体7が帯状シート50,60との接着箇所に近づくにつれて、その向きが矯正されるようにしている。
よって第1実施形態の伸縮性シートの製造装置11及び伸縮性シートの製造方法では、確実に向きが矯正された状態の糸状弾性体7を帯状シート50に接着させることができると同時に、長手構造体12,13を円柱部材12a,12b,13a,13bにより構成できて長手構造体12,13を高い剛性を有するように構成できるため、装置の耐久性を高めることができる。
【0045】
なお、各円柱部材12a,12b,13a,13bはそれぞれらせん状のネジ溝121,122,123,124を有するとしたが、後述のように、ネジ溝がなくても上記の効果を奏することは可能である。なお、本実施形態では、各円柱部材12a,12b,13a,13bがらせん状のネジ溝121,122,123,124を有するため、より安定的に糸状弾性体7を搬送でき、糸状弾性体7の向きをより確実に矯正できる。
【0046】
また長手構造体12(長手構造体13)において2本のネジ溝付き円柱部材12a,12b(2本のネジ溝付き円柱部材13a,13b)はそれぞれ対応する別のモータに駆動されるため、それぞれのモータの回転速度に基づいて各円柱部材の糸搬送速度を制御でき、糸状弾性体の間隔や向き等の設定の自由度を高めることができる。また高い精度で糸搬送速度を制御できるため確実に糸状弾性体の向きを矯正できる。
【0047】
以下、第2実施形態以降の説明では、第1実施形態で説明した構成と同一又は相等する構成について同じ符号を付し、説明を省略する。また、上述したおむつの具体的構成やおむつの製造方法は、第2実施形態以降でも同様であるため省略する。
【0048】
(第2実施形態)
続いて図7に基づいて第2実施形態の伸縮性シートの製造装置及び伸縮性シートの製造方法を説明する。
図7のように、第2実施形態では、図2の右側の長手構造体12において、上下一対の円柱部材12a,12bが一つのモータ221にそれぞれタイミングベルト251,252によって接続されて回転駆動されると共に、他方の長手構造体13において上下一対の円柱部材13a,13bが一つのモータ222にそれぞれタイミングベルト253、254によって接続されて回転駆動される。そして円柱部材12aがモータ221に接続するギヤ比と、円柱部材12bがモータ221に接続するギヤ比を異なる値にすることによって、円柱部材12aと円柱部材12bの回転速度を異ならせる。同様に円柱部材13aがモータ222に接続するギヤ比と、円柱部材13bがモータ222に接続するギヤ比を異なる値にすることによって円柱部材13aと円柱部材13bの回転速度を異ならせる。モータ221、222はサーボモーター等で構成する。
【0049】
具体的には、図7のように、長手構造体12に係る上下2段の円柱部材12a、円柱部材12bにそれぞれ径の異なる連動軸部241、連動軸部242を同軸上に設ける。連動軸部241、連動軸部242は、それぞれ対応するタイミングベルト251、タイミングベルト252を介してモータ221に接続する。よって径の小さな連動軸部241によりモータ221に接続される上段の円柱部材12aは径の大きな連動軸部242によりモータ221に接続される下段の円柱部材12bよりも速く回転することになる。
一方、長手構造体13に係る上下2段の円柱部材13a,13bには、長手構造体12とは逆に、上段の円柱部材13aの連動軸部243の径を下段の円柱部材13bの連動軸部244よりも大きくして下段の円柱部材13bが上段の円柱部材13aよりも速く回転するようにしている。
【0050】
このように第2実施形態では、上下一対の円柱部材がモータに接続する際のそれぞれの接続ギヤ比を異ならせることによる回転速度の違いによって、上述した「長手構造体12の上段の円柱部材12aの糸搬送速度と下段の円柱部材12bの糸搬送速度との大小関係が、もう一方の長手構造体13の上段の円柱部材13aの糸搬送速度13aと下段の円柱部材13bの糸搬送速度との大小関係と反対になる」状態を実現させ、搬送中の糸状弾性体7の向きを矯正させる。
【0051】
なお、図7と異なり、4つの連動軸部241,242,243,244の径はそれぞれ各円柱部材12a,12b,13a,13bの各径より大きくしてもかまわない。また上下2段の円柱部材が対応するモータにギヤ比を異ならせて接続させる態様として、図7のように各円柱部材の同軸上に連動軸部を設けるのではなく、各モータにそれぞれ、径の異なる回転軸部を同軸上に2つずつ設けて、その径の異なる2つの回転軸部をそれぞれ直接上下2段の円柱部材の外周部とタイミングベルトで接続するように構成するのでもよい。
【0052】
上記のように、第2実施形態に係る伸縮性シートの製造装置及び伸縮性シートの製造方法では、長手構造体12において、上下一対の円柱部材12a,12bが一つのモータ221にそれぞれ異なるギヤ比で接続することに基づいて、円柱部材12a及び円柱部材12bとの間の糸搬送速度の速度差を実現する。長手構造体13でも同様である。よって上述の第1実施形態の製造装置に係る効果を、モータ数を減少させて実現でき、部品点数減や省スペース化、製造コスト減を図ることができる。
【0053】
(第3実施形態)
続いて図8に基づいて第3実施形態に係る伸縮性シートの製造装置を説明する。
図8(a)のように、第3実施形態の伸縮性シートの製造装置及び伸縮性シートの製造方法では、長手構造体12は互いに平行な上下一対の円錐台状柱体112a,112bを有し、長手構造体13は互いに平行な上下一対の円錐台状柱体113a,113bを有する。ここで一対の円錐台状柱体が互いに平行であるとは、一対の円錐台状柱体の回転軸が互いに平行であることを意味する。円錐台状柱体112aの回転軸s101、円錐台状柱体112bの回転軸s102、円錐台状柱体113aの回転軸s103、円錐台状柱体113bの回転軸s104はいずれも長手構造体12,13の長手方向(y方向)に平行である。図8(a)のように、円錐台状柱体112a,112bは鉛直方向(z方向)に上下2段に並列し、円錐台状柱体113a,113bも同様である。
【0054】
ここで長手構造体12において、2本の円錐台状柱体112a,112bはy方向に沿って配列して互いに反対方向を向く。長手構造体13における円錐台状柱体113a,113bもy方向に沿って配列し互いに反対方向を向く。同時に、長手構造体12,13各上段の円錐台状柱体同士(円錐台状柱体112a及び円錐台状柱体113a)、各下段の円錐台状柱体同士(円錐台状柱体112b及び円錐台状柱体113b)同士も互いに反対方向を向くように配置されている。
ここで「2本の円錐台状部材が反対方向を向く」とは円錐台状部材が縮径となる方向が互いに反対であることを意味する。
なお、4本の円錐台状柱体112a,112b,113a,113bはほぼ同形状とする。
【0055】
図示しないが、各円錐台状柱体112a,112b,113a,113bにはそれぞれその全長に渡りネジ溝が形成されている。それぞれのネジ溝は螺旋状であり、そのピッチは円錐台状部材の縮径から拡径方向に渡り一定ピッチ、もしくは縮径から拡径にむけて徐々にピッチが大きくなっている。なお、上下一対の円錐台状柱体112a,112b並びに上下一対の円錐台状柱体113a,113bが互いに反対方向を向いていても、各ネジ溝の螺旋は同じ方向を向くように配置される。
【0056】
図8(b)のように、長手構造体12において円錐台状柱体112a,112bはそれぞれ同軸上に連動軸部340,341を有する。2つの連動軸部340,341は同径であり一つのモータ321とそれぞれタイミングベルト350、351を介して接続する。円錐台状柱体112a、円錐台状柱体112bはモータ321と同じギヤ比で接続するため、同じ速度(基準となる回転速度)で回転する。なお、他方の長手構造体13に係る円錐台状柱体113a,113bも長手構造体13と同じ駆動機構を有するため、説明を省略する。
なお、2本の円錐台状柱体112a,112bを同速で回転させるため、モータ321と2つの連動軸部340,341は一本のタイミングベルトにより接続することも可能である。この場合、交換が必要な部品の点数を減らすことができる。
【0057】
図8(a)のように、2本の円錐台状柱体112a,112bの回転速度が同じでも、円錐台状柱体112aにおける搬送方向上流部分は径が小さいため周方向における糸状弾性体7の移動速度が小さい一方、円錐台状柱体112bにおける搬送方向上流部分は径が大きいため周方向における糸状弾性体7の移動速度が大きい。各円錐台状柱体のネジ溝のピッチが円錐台状部材の縮径から拡径方向に渡り一定ピッチに形成されている場合、当該周方向における移動速度差によって円錐台状柱体112aの糸搬送速度を円錐台状柱体112bよりも大きくできる。なお、円錐台状柱体のネジ溝のピッチが縮径から拡径にむけて徐々にピッチが大きくなっている場合、円錐台状柱体112aと円錐台状柱体112bとの糸搬送速度の差は、当該周方向における移動速度差よりも、更に大きくなる。
同様に、搬送方向上流部分の径の大きな円錐台状柱体113aにおける糸搬送速度を、搬送方向上流部分の径の小さな円錐台状柱体113bにおける糸搬送速度よりも小さくできる。
このようにして、上記式1、2に従って各円錐台状柱体112a,112b,113a,113bの形状を利用して上下2段の円錐台状柱体の間(円錐台状柱体112a,112bの間並びに円錐台状柱体113a,113bの間)の糸搬送速度に速度差を生じさせることにより、第3実施形態でも第1実施形態と同様に糸状弾性体7の向きの矯正が可能となる。
【0058】
以上説明したように、第3実施形態では、長手構造体12はそれぞれ縮径となる方向が互いに反対な一対の円錐台状柱体112a,112bを有して、円錐台状柱体112a,112bの間の糸搬送速度に速度差を生じさせる。長手構造体13でも同様である。よって上下2段の円錐台状柱体112a,112bを1つのモータ321により駆動できる。上下2段の円錐台状柱体112a,112bも同様である。よって、第3実施形態の伸縮性シートの製造方法では、上述の第1実施形態で説明した効果を、モータ数を削減しながら実現でき、部品点数減や省スペース化、製造コスト減を図ることができる 。また長手構造体12においてモータ321に接続する際の円錐台状柱体112a及び円錐台状柱体112bの各ギヤ比を等しく出来る(長手構造体13でも同様)から、連動軸部340,341の径を等しくできて製造コスト減を図ることができる。
【0059】
ここで、本発明の伸縮性シートの製造装置又は製造方法は、上述した各実施態様に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0060】
例えば、各実施形態では、上下2段の円柱部材(円錐台状柱体)はz方向(鉛直方法)に並ぶ。例えば第1実施形態では、図3の断面図のように、4本の円柱部材の回転軸s1,s2,s3,s4はx方向とz方向の直線からなる矩形をなす。しかし、図9のように長手構造体12に係る円柱部材12a、12b(長手構造体13では上下一対の円柱部材13a、13b)は、鉛直方向(z方向)に並ぶ替りに、回転軸s1と回転軸s2の位置(又は回転軸s3と回転軸s4の位置)をx方向にずらして、z方向(又は帯状シートと糸状弾性体との接着面)に対して斜めに並列してもよい。
【0061】
例えば、図9(a)ではx方向における帯状シート50,60の中心位置PCに対して上段2本の円柱部材12a,13aは下段2本の円柱部材12b、13bよりも内側に位置し、各回転軸s1,s2,s3,s4がハの字を形成する。一方、図9(b)では中心位置PCに対して上段2本の円柱部材12a,13aは下段2本の円柱部材12b,13bよりも外側に位置し、各回転軸s1,s2,s3,s4が逆ハの字を形成する。
また、図9(c)では帯状シート50,60の中心位置PCに対して上段の円柱部材12aは下段の円柱部材12bよりも外側に位置する一方、上段の円柱部材13aは下段の円柱部材13bよりも内側に位置して、各回転軸s1,s2,s3,s4が略平行四辺形を形成する。この場合、上段2本の円柱部材12a,13a間に配置される糸状弾性体7の張力と、下段2本の円柱部材12a,13a間に配置される糸状弾性体7の張力との間に差が生じず、搬送中の糸状弾性体7の張力を一定に保つことができるため好ましい。なお、上段の円柱部材12aは下段の円柱部材12bよりも内側に位置する一方、上段の円柱部材13aは下段の円柱部材13bよりも外側に位置する平行四辺形を形成してもよい。
このようにすると、搬送中の糸搬送用の長手構造体12,13の鉛直方向(z方向)の高さを抑制でき、当該高さの値が大きすぎることによりニップローラー171,172による帯状シート50,60との一体化の支障となるのを防止できる。
【0062】
また第1実施形態では、4本の円柱部材はそれぞれ対応するモータにダイレクト駆動されていたが、それぞれ独立して駆動されるのであればタイミングベルトを介して駆動されるのでもよい。また第3実施形態では、上下一対の円錐台状柱体は1つのモータにタイミングベルトを介して駆動されていたが、それぞれ別々にダイレクト駆動されてもよい。
【0063】
また第1実施形態及び第2実施形態では4本の円柱部材12a,12b,13a,13bの断面円径が略同一であり、ネジ溝121,122,123,124の形状も略同一としたが、それらが同一でなくとも各モータのモータ回転速度や各円柱部材がモータに接続するギヤ比等によって調整すれば、上記の糸状弾性体7の向きの矯正は可能なので、同一である必要はない。
また、第3実施形態でも、4本の円錐台状柱体112a,112b,113a,113bはほぼ同形状としたが、円錐台状柱体112a,112b,113a,113bをそれぞれ別々のモータによってダイレクト駆動する場合等ではその必要はない。
【0064】
また第1実施形態〜第3実施形態では、回転柱体にネジ溝が形成されるとしているが、ネジ溝は、必ずしも必要ない。例えば、回転柱体の表面が高摩擦材料(例えば、シリコン、ウレタン等の材料)によってコーティングされてあり、一対の長手構造体に巻回された糸状弾性体が摩擦抵抗によって搬送される構造であってもよい。また、回転柱体の表面にネジ溝が形成される替わりに、らせん状の凸部が形成されているのでもよい。
また、第1実施形態〜第3実施形態では、y方向への搬送中に、一対の長手構造体間に配置された糸状弾性体7の傾きをy方向に対し直交させて、当該糸状弾性体7を平面視平行に配置させた。しかし「糸状弾性体の向きを矯正する」とは、糸状弾性体の傾きをy方向に対し直交させて平面視平行に配置することだけではなく、糸状弾性体7を平面視でクロスした状態に配する等、一の長手構造体を構成する2本の回転柱体の糸搬送速度に差に生じさせることにより、帯状シートに固定される際の糸状弾性体の向きが巻回当初の状態から変化すればよい。
【0065】
また弾性体巻回手段としては、特許文献1や特開2010−22588号公報に記載のもの等を用いることもできる。
また、一対のニップロール170,171間に、幅方向両端部をそれぞれの外面側に折り返して細幅にした帯状シートを導入し、その帯状シート間に糸状弾性体を固定するのに代えて、一対のニップロール170,171間に、幅方向両端部が折り返していない帯状シートを導入し、その帯状シート間に糸状弾性体を固定しても良い。また、折り返す場合には、片側のシートの幅方向端部だけでもよく、一方の帯状シートの端部のみでもよい。
【0066】
また、本発明の製造方法により製造される伸縮性シートは、使い捨ておむつ1のウエストパネル3以外に、展開型又はパンツ型の使い捨ておむつの胴周り部、パンツ型の生理用ナプキン、使い捨ての下着、使い捨てマスクの耳掛け部、掃除用シート、包帯などにも使用することができる。
【0067】
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 使い捨ておむつ
2 吸収性本体
21 表面シート
22 裏面シート
23 吸収体
3 ウエストパネル
3A 伸縮性シート
4 パネル材
7 糸状弾性体
11 伸縮性シートの製造装置
12 長手構造体(糸搬送用長手構造体)
12a、12b 円柱部材(回転柱体)
112a,112b 円錐台状柱体(回転柱体)
121,122,123,124 ネジ溝
13 長手構造体(糸搬送用長手構造体)
13a,13b 円柱部材(回転柱体)
113a,113b 円錘台状柱体(回転柱体)
14 回転アーム(弾性体巻回手段)
15 供給手段
17 一体化手段
171,172 ニップローラー
18 切断手段
180 カッター
50、60 帯状シート
221,222,321 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔離間して平行配置された一対の糸搬送用長手構造体と、一対の該糸搬送用長手構造体に糸状弾性体を巻回して該糸状弾性体の向きを該糸搬送用長手構造体の長手方向に交差する向きとする弾性体巻回手段と、該弾性体巻回手段に巻回されて該糸搬送用長手構造体により搬送される該糸状弾性体を、前記長手方向に走行する帯状シートに接着する一体化手段とを備える伸縮性シートの製造装置であって、
前記糸搬送用長手構造体は、それぞれ前記長手方向に向けた回転軸を有する二本の平行な回転柱体と、二本の該回転柱体を回転駆動する駆動手段とを有し、該駆動手段による回転駆動の際に二本の該回転柱体による前記糸状弾性体の搬送速度に速度差を生じさせることにより該帯状シートとの接着箇所に近づくにつれて前記糸状弾性体の向きが矯正されるようにした、伸縮性シートの製造装置。
【請求項2】
前記回転柱体は、螺旋状の溝又は凸部を有する請求項1記載の伸縮性シートの製造装置
【請求項3】
前記各回転柱体は円柱状であり、
前記駆動手段は、前記二本の回転柱体をそれぞれ独立して駆動する二つのモータである、請求項1又は2記載の伸縮性シートの製造装置。
【請求項4】
前記各回転柱体は円柱状であり、
前記駆動手段は、前記二本の回転柱体にそれぞれ異なるギヤ比で接続する一つのモータである、請求項1又は2に記載の伸縮性シートの製造装置。
【請求項5】
前記回転柱体は、円錐台状であって、前記各糸搬送用長手構造体において一本の回転柱体は、前記糸状弾性体の搬送方向に向かうにつれ拡径となると共に、他の一本は前記糸状弾性体の搬送方向に向かうにつれ縮径となる、請求項1又は2に記載の伸縮性シートの製造装置。
【請求項6】
前記二本の回転柱体は、前記糸状弾性体が前記帯状シートと接着する接着面に対して斜めに並列する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の伸縮性シートの製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造装置を用いて、伸縮性シートを製造する、伸縮性シートの製造方法。
【請求項8】
吸収性本体と、該吸収性本体の長手方向の左右両側に連設された左右のウエストパネルを有する使い捨ておむつの製造方法であって、
請求項1〜6の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造装置により伸縮性シートを製造する工程、及び該伸縮性シートを、前記ウエストパネルの形成材に用いて前記使い捨ておむつを製造する工程を具備する、使い捨ておむつの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−120610(P2012−120610A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272218(P2010−272218)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】