説明

位相差フィルム及び液晶表示素子

【目的】 視角の広い液晶表示素子を提供する。
【構成】 位相差フィルムの屈折率楕円体の3つの主軸、即ち光学弾性軸は、通常の一軸延伸法ではフィルム面と平行あるいは垂直な方向にある。この光学弾性軸をフィルム面に対して傾斜させることによって、STN液晶が電圧により立ち上がった状態を正しく補償することが出来、従来よりも上下左右の均衡が取れた広い視角特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は位相差フィルム及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の位相差フィルムは、その光学弾性軸がフィルム面と平行あるいは垂直な方向にあった。図2R>2に従来の位相差フィルムの屈折率楕円体31を示す。光学弾性軸とは、森北出版発行の「結晶光学(第1版)」68ページに定義されているように、屈折率楕円体の3つの主軸の方向であって、図2中のx、y、zを指す。3つの光学弾性軸x、y、zは、フィルム面32に対していずれも平行あるいは垂直な方向にある。
【0003】また従来の位相差フィルムを用いた液晶表示素子は、特公平3−50249号に開示されているように、STN(スーパーツイステッドネマチック)セルの表示の着色を補償するものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来の位相差フィルムは、STNセルの着色解消には大きな効果があったが、逆にコントラストの視角依存性を大きくするという課題があった。これを改良するため特開平2−285303号では、前述の3つの光学弾性軸x、y、z方向の屈折率nx、ny、nzが、nx>nz>nyの関係を満たすようにする方法が提案されているが、それでも充分な視角特性は得られない。
【0005】本発明はこのような課題を解決するもので、その目的とするところは、視角の広い液晶表示素子を提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の位相差フィルムは、その光学弾性軸がフィルム面に対して傾いた方向にあることを特徴とする。
【0007】また本発明の液晶表示素子は、対向する2枚の基板間にツイスト配向をした液晶を挟持してなる液晶セルと、少なくとも1枚の請求項1記載の位相差フィルムと、これらを挟むように配置された1対の偏光板とを備えたことを特徴とする。
【0008】
【実施例】
(実施例1)図3は、本発明の実施例1における液晶表示素子の断面図である。図中、1は上側偏光板、3は液晶セル、4は位相差フィルム、5は下側偏光板である。また、6は液晶セルの上基板、7は下基板、8は透明電極、9は液晶である。
【0009】液晶セル3にはメルク社製の液晶ZLI−4506(Δn=0.1438)を用い、セルギャップdが6.0μmのセルにねじれ配向させた。
【0010】また位相差フィルム4にはポリカーボネートの厚み100μmの延伸フィルムを用いた。その屈折率楕円体を図1に示す。光学弾性軸yはフィルム面32と平行であるが、xとzはフィルム面に対して傾いている。そこでxとフィルム面とのなす角度をθと定義すると、実施例1ではθが約10度である。また各光学弾性軸方向の屈折率は、nx=1.585、ny=1.579、nz=1.582である。以上のような位相差フィルムは、通常の一軸延伸フィルムの製造行程において、フイルムの上面と下面とで異なるテンションをかけて延伸する行程をふくむことにより実現する。
【0011】図4は、実施例1における液晶表示素子の各軸の関係図である。なお以下では位相差フィルムの軸方向を、フィルム面内で最も屈折率の大きい方向と定義する。図4において、上側偏光板の偏光軸方向11が上基板のラビング方向13となす角度20を左45度、13と下基板のラビング方向14により決まる液晶のツイスト角23を左240度、位相差フィルムの軸方向15が14となす角度24を左90度、下側偏光板の偏光軸方向16が15となす角度25を左45度とした。なお前述の位相差フィルムの屈折率楕円体のx軸が傾く方向は、図4の軸方向15の右下が手前となる方向である。
【0012】図7は、実施例1における液晶表示素子の視角特性を示す図である。図の中央がパネル正面方向、それをとりまく6つの同心円は内から順に、正面からの傾き角10゜、20゜、30゜、40゜、50゜、60゜の方向を示している。また41、42、43はそれぞれコントラスト比1:1、1:3、1:10の等コントラスト曲線である。正面からの傾き角47゜の方向まで表示の反転(コントラスト比が1:1以下になること)がなく、上下左右の均衡が取れた優れた視角特性を示している。
【0013】(実施例2)図5は、本発明の実施例2における液晶表示素子の断面図である。図中、1は上側偏光板、2は第一の位相差フィルム、3は液晶セル、4は第二の位相差フィルム、5は下側偏光板である。また、6は液晶セルの上基板、7は下基板、8は透明電極、9は液晶である。
【0014】液晶セル3には実施例1同様メルク社製の液晶ZLI−4506を用い、セルギャップdが6.0μmのセルにねじれ配向させた。一方位相差フィルム2と4には屈折率楕円体の傾き角θ=20度のポリカーボネートフィルムを用いた。いずれのフィルムも屈折率はnx=1.585、ny=1.579、nz=1.582であり、厚みは80μmである。
【0015】図6は、実施例2における液晶表示素子の各軸の関係図である。図中、上側偏光板の偏光軸方向11が第一の位相差フィルムの軸方向12となす角度21を右60度、12が上基板のラビング方向13となす角度22を左100度、13と下基板のラビング方向14により決まる液晶のツイスト角23を左240度、第二の位相差フィルムの軸方向15が14となす角度24を左80度、下側偏光板の偏光軸方向16が15となす角度25を右30度とした。なお前述の位相差フィルムの屈折率楕円体のx軸が傾く方向は、図6の軸方向12の左下および軸方向15の右下が手前となる方向である。
【0016】図8は、実施例2における液晶表示素子の視角特性を示す図である。図中41、42、43、44はそれぞれコントラスト比1:1、1:3、1:10、1:30の等コントラスト曲線である。正面からの傾き角42゜の方向まで表示の反転がなく、上下左右の均衡が取れた優れた視角特性を示している。
【0017】(比較例1)比較例1におけるセル構成、軸関係は図3、図4に示した実施例1と同様である。但し位相差フィルム4には、通常の一軸延伸法により作製したθ=0度のポリカーボネートフィルムを用いた。屈折率はnx=1.585、ny=1.579、nz=1.582である。
【0018】図9は、比較例1における液晶表示素子の視角特性を示す図である。上方向に35゜傾いた方向で表示が反転し、上方向に極端に狭い視角特性を示している。
(比較例2)比較例2におけるセル構成、軸関係は図5R>5、図6に示した実施例2と同様である。但し位相差フィルム2と4には、通常の一軸延伸法により作製したθ=0度のポリカーボネートフィルムを用いた。屈折率はnx=1.585、ny=1.579、nz=1.582である。
【0019】図10は、比較例2における液晶表示素子の視角特性を示す図である。上方向に30゜傾いた方向で表示が反転し、上方向に極端に狭い視角特性を示している。
【0020】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、位相差フィルムの光学弾性軸をフィルム面に対して傾斜させることによって、視角の広い液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の位相差フィルムの屈折率楕円体を示す図である。
【図2】 従来の位相差フィルムの屈折率楕円体を示す図である。
【図3】 本発明の実施例1及び比較例1における液晶表示素子の断面図である。
【図4】 本発明の実施例1及び比較例1における液晶表示素子の各軸の関係図である。
【図5】 本発明の実施例2及び比較例2における液晶表示素子の断面図である。
【図6】 本発明の実施例2及び比較例2における液晶表示素子の各軸の関係図である。
【図7】 本発明の実施例1における液晶表示素子の視角特性を示す図である。
【図8】 本発明の実施例2における液晶表示素子の視角特性を示す図である。
【図9】 比較例1における液晶表示素子の視角特性を示す図である。
【図10】 比較例2における液晶表示素子の視角特性を示す図である。
【符号の説明】
1 上側偏光板
2 第一の位相差フィルム
3 液晶セル
4 (第二の)位相差フィルム
5 下側偏光板
6 液晶セル3の上基板
7 液晶セル3の下基板
8 透明電極
9 液晶
11 上側偏光板1の偏光軸方向
12 第一の位相差フィルム2の軸方向
13 液晶セルの上基板6のラビング方向
14 液晶セルの下基板7のラビング方向
15 (第二の)位相差フィルム4の軸方向
16 下側偏光板5の偏光軸方向
20 11が13となす角度
21 11が12となす角度
22 12が13となす角度
23 液晶9のツイスト角
24 15が14となす角度
25 16が15となす角度
31 位相差フィルムの屈折率楕円体
32 位相差フィルムのフィルム面
41 コントラスト比1:1の等コントラスト曲線
42 コントラスト比1:3の等コントラスト曲線
43 コントラスト比1:10の等コントラスト曲線
44 コントラスト比1:30の等コントラスト曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光学弾性軸がフィルム面に対して傾いた方向にあることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項2】 対向する2枚の基板間にねじれ配向をした液晶を挟持してなる液晶セルと、少なくとも1枚の請求項1記載の位相差フィルムと、これらを挟むように配置された1対の偏光板とを備えたことを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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