説明

位相性呼吸療法

多量の酸素が豊富な気体及び多量の注入ガスを送達することを可能にされた気体送達装置を含む呼吸療法システムが開示されている。当該呼吸療法システムは、気体送達装置に結合された経気管カテーテルをさらに提供する。さらに、気体送達装置は、患者の呼吸周期のうち第1の部分の間に多量の注入ガスを送達すること、及び、呼吸周期のうち第2の部分の間に多量の酸素が豊富な気体を送達することを可能にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、呼吸療法を提供するシステム及び方法に関し、特に、位相性呼吸療法を提供するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国において増加する数の人々が、喘息及び肺気腫等の慢性閉塞性肺疾患(COPD)、並びに、嚢胞性線維症、肺癌、肺損傷、心血管系疾患、さもなければ、病気又は損傷をうけた肺に苦しんでいる。これらの状態のうち多くに対して治療法がないけれども、その有害な影響は、呼吸療法の指示によって軽減することができる。呼吸療法の吸息は、酸素を吸収することにおいて患者の肺の乏しい機能を代償するよう役に立つ。
【0003】
呼息の終わりにて、COを含有する吐き出された気体のうち全てが、例えば、大気に排出されるわけではないと正しく理解することができる。特定の量の吐き出された気体は、患者内の生理学的及び解剖学的死腔、並びに、呼吸回路内の構造的死腔に残る。各呼吸の間、患者が最大量の酸素又は他の治療に役立つ気体、及び、最小量のCOを受けるように、この死腔における吐き出されたCOを多く含む気体が患者によって吸い込まれることを防ぐことが一般的に所望される。頭部損傷を有した患者等、一部の患者において、そのCOレベルは上げられないということが不可避である。
【0004】
気管ガス注入(TGI)は、人工呼吸器で治療されている患者における生理学的、解剖学的、及び、構造的死腔から、吐き出された気体を取り除くよう試みる1つの方法である。気管ガス注入は、酸素、酸素混合物、又は、他の治療に役立つ気体等の注入ガスを、呼吸回路の遠位端にて患者の気道内に導入することを含む。図1に例示された実施形態において、加圧タンク若しくは酸素、又は、酸素ウォールサプライ等の注入ガス供給源48は、患者の気道内への気体流として、導管50を介して注入ガスの流れを送達する。導管50は、「注入カテーテル」と呼ぶこともできる。従来のTGIシステムにおいて、導管50の近位端は、制御弁52を介して注入ガス供給源48に結合され、導管50の遠位端は、矢印54によって指示されているように注入ガスの流れが肺38の方向に向けられるように、大体気管内挿入管30の遠位端内又はその付近に置かれる。一般的に、導管50の遠位端は、患者の竜骨のすぐ上に置かれている。導管50の遠位端から排出された酸素を多量に含んだ注入ガスの流れは解剖学的及び構造的死腔内の吐き出された空気を動かすため、次の呼吸で患者は(COを多く含まない)新鮮な気体を吸い込み、その結果、患者のCOレベルを可能な限り低く保つためにCOの吸い込みを最小限にする。
【0005】
別の呼吸療法増大技術は、経気管増強換気(「TTAV」)である。TTAVは、経気管カテーテルを介した、加熱及び加湿空気/酸素混合物の早い流れの経気管送達である。TTAVは、経気管カテーテルを介して比較的早い流速が患者に送達される標準的な経気管酸素(「TTO」)の進歩した適用である。TTAVは上気道をバイパスするため、粘液の乾燥及び粘液ボールの発達の可能性を防ぐために熱及び湿気を提供することができる。TTAVは、呼吸の努力を減らすことができるため、非常に効果的な呼吸療法の方法であり得る。米国特許第5,101,820号(「‘820特許」)に記載されているように、換気の経気管増強は、COの除去及び呼吸筋の休息を促進し得る。‘820特許は、液体酸素タンク20、酸素の供給源、及び、ブレンダー30に接続された空気の供給源である圧縮機40を含むTTAVシステムを記載している。ブレンダー30は、次に、患者の経気管カテーテルに接続された管を介して患者に酸素/空気の混合物を出力する加湿器70に接続される。‘820特許のTTAVシステムは、酸素/空気の混合物の連続した流れを患者に送達する。
【0006】
その意図された目的に対して効果的ではあるけれども、従来の装置は、挿管されていない患者に対する人工呼吸の順応性のある便利な方法を提供しない。従って、呼吸療法を届けることにおいて、先行技術の装置は、一部の実行において、且つ、一部の患者に対して無効果であり得る。さらに、効率的な酸素の送達を提供する先行技術の携帯用装置及び家用装置は、患者に換気を提供することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、呼吸療法を提供するシステム及び方法を記載している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例証的な実施形態は、多量の酸素が豊富な気体及び多量の注入ガスを送達することを可能にされた気体送達装置を含む呼吸療法システムを提供している。呼吸療法システムは、さらに、気体送達装置に結合された経気管カテーテルを提供する。さらに、気体送達装置は、患者の呼吸周期のうち第1の部分の間に多量の注入ガスを送達すること、及び、呼吸周期のうち第2の部分の間に多量の酸素が豊富な気体を送達することを可能にされる。
【0009】
呼吸療法システムに加えて、本発明は、呼吸療法の方法を提供する。呼吸療法の方法における例証的な実施形態は、患者による呼気相の開始を決定するステップを含む。呼気相の開始から所定の遅延期間の後、呼吸療法の方法は、所定の呼気フラッシング期間の間、患者に多量の注入ガスを送達するステップを含む。さらに、所定の呼気フラッシング期間の後、呼吸療法の方法は、所定の酸素療法期間の間、患者に多量の酸素が豊富な気体を送達するステップを含む。
【0010】
本発明の前記及び他の目的、特徴、並びに特性だけでなく、操作方法及び関連する構造要素及び部品の組み合わせの機能も製造経済も、付随の図面を参考にして以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮することによってより明らかになり、付随の図面の全てが本願明細書の一部を形成し、類似の参照番号は種々の図において対応する部分を示している。しかし、図面は例証及び説明目的のためだけにあり、本発明の範囲を規定するとして意図されないことを明確に理解されたい。本願明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数名詞を言及する際に不定冠詞又は定冠詞が使用されている場合は、何か他に明確に述べられていない限りその名詞の複数形を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】注入ガスの流れが患者の気道に送達される、一般的に気管ガス注入(TGI)システムと呼ばれる従来のシステムの例を明示している。
【図2】本発明の例証的な実施形態に従い提供された呼吸療法システム200のハイレベルブロック図を提供している。
【図3】本発明の例証的な実施形態により提供された呼吸療法の方法に対するブロック図を提供している。
【図4】本発明の例証的な実施形態により提供された呼吸療法の方法に対するタイミング図を提供している。
【図5】本発明の例証的な実施形態により提供された、酸素貯蔵装置で実行される呼吸療法システムの概略図を提供している。
【図6】本発明の例証的な実施形態により提供された、酸素濃縮装置において実行される呼吸療法システムの概略図を提供している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、患者に対して換気を効率的及び好都合に提供するために、先行技術の呼吸療法装置の無能力に関する先行技術における欠陥に取り組んでいる。著しく、本発明は、経気管カテーテルを介した注入ガスの送達を含む呼吸療法の方法及び装置を提供する。本発明により提供された呼吸療法システムは、患者に注入ガスを送達すること、及び、酸素が豊富な気体を効果的に送達することを可能にされる。さらに、本発明は、先行技術における従来の方法及びシステムの欠点を克服し、携帯用呼吸装置内に換気を提供することを可能にされたシステム及び方法を提供する。
【0013】
例証的な実施形態において、本発明は、多量の酸素が豊富な気体及び多量の注入ガスを送達することを可能にされた気体送達装置を含む呼吸療法システムを提供する。呼吸療法システムは、気体送達装置に結合された経気管カテーテルをさらに提供する。さらに、気体送達装置は、患者の呼吸周期のうち第1の部分の間に多量の注入ガスを送達すること、及び、呼吸周期のうち第2の部分の間に多量の酸素が豊富な気体を送達することを可能にされる。
【0014】
呼吸療法システムに加えて、本発明は、呼吸療法の方法を提供する。呼吸療法の方法の例証的な実施形態は、患者による呼気相の開始を決定するステップを含む。呼気相の開始から所定の遅延期間の後、呼吸療法の方法は、所定の呼気フラッシング期間の間、患者に多量の注入ガスを送達するステップを含む。さらに、所定の呼気フラッシング期間の後、呼吸療法の方法は、所定の酸素療法期間の間、患者に多量の酸素が豊富な気体を送達するステップを含む。
【0015】
本発明による呼吸療法システムによって提供される重要な利点の1つは、換気に寄与する能力である。特に、本発明により提供される呼吸療法システムは、患者の呼吸経路の解剖学的死腔を洗い流す、及び、吐き出された二酸化炭素(CO)をこの死腔から排出する能力を有する。一般的に、患者は、吐き出された気体の消失に寄与するために注入ガスを受けるよう人口呼吸器上に配置されなければならない。本発明により提供された呼吸療法システムは、注入を介して吐き出された気体を動かすという利点を挿管されていない患者が得るのを可能にする。本発明によって可能にされる呼吸療法の方法の例証的な実施形態において、呼吸周期の呼気相の一部の間、注入ガスを患者に送達することができる。
【0016】
図2は、本発明の例証的な実施形態により提供された呼吸療法システム200のハイレベルブロック図を提供している。図2に示されているように、呼吸療法システム200は、酸素供給源205も注入ガス供給源215も含むことができ、さらに、患者の呼吸経路の解剖学的死腔を洗い流すため、及び、治療に役立つ酸素を送達するために、一般的には空気である注入ガスを送達することを可能にされ得る。図2の例証的な実施形態において示されているように、呼吸療法システム200は、患者への酸素の送達を制御するために酸素弁210、及び、患者への注入ガスの送達を制御するために注入弁220をさらに含むことができる。これら2つの弁210及び220は、酸素が豊富な気体及び注入ガスが独立して患者に送達されるのを許可する。さらに、図2に示された呼吸療法システム200の例証的な実施形態は、酸素が豊富な気体及び注入ガスの患者への送達をトリガ及び制御するために、圧力変換器225又は呼吸感知装置を含み得る。示されてはいない制御装置を使用して、本明細書に記載された治療を提供するために弁210及び220の操作を制御することができる。
【0017】
圧力変換器は、呼吸療法システム200の例証的な実施形態において、患者への送達ラインにおける圧力の変化を感知する、その結果、呼気、吸気、又は、他の圧力における変化の開始を感知することを可能にされ得る。圧力変換器225を種々の方法で使用して、呼吸療法システム200の種々の実施形態による注入ガス及び酸素両方の位相性送達に対するトリガを提供することができると当業者は正しく理解するはずである。
【0018】
圧力変換器225は、多くの異なる適した呼吸感知装置の1つであると当業者は正しく理解するはずである。一部の実施形態において、呼吸療法システム200の別の実施形態の気体送達管及び経気管カテーテルを流れる気体の背圧は、気体が流れている間にトリガ圧力信号を効果的に遮蔽することができる。従って、呼吸療法システム200の特定の実施形態において、代わりの、呼吸パターンを感知する且つ気体の流れをトリガする方法を含むことが有利であり得る。例えば、限定することなく、呼吸療法システム200の別の実施形態において、呼吸感知装置は、患者によって腹部又は胸部の周りに装着される「努力ベルト」であり得る。「努力ベルト」装置は、呼吸による患者の胸郭の膨張又は収縮を感知することを可能にされ得る。呼吸療法システム200の別の実施形態における「努力ベルト」の出力は、患者の胸郭の動きと共に上下する電圧信号であり得る。別の実施形態では、呼吸療法システム200は、患者の呼吸パターンを決定するためにこの信号に頼り得る。「努力ベルト」に加えて、他の可能な呼吸感知方法は胸部インピーダンス並びに鼻及び/又は口のカニューレの圧力を含み得ると当業者は正しく理解するはずである。
【0019】
例証的な実施形態において、呼吸療法システム200は、経気管カテーテル又は他の気管内チューブに接続される。経気管カテーテルという用語は、本明細書において、上気道と下気道とを接続する気管又はのど笛を渡るいかなる管にも言及するよう使用される。例証的な実施形態では、経気管カテーテルは、70から90ショアAのデュロメータ、及び、患者の気管の断面積よりも実質的に小さい、3.5mm以下に及ぶ外径を有した9フレンチフレキシブルチューブであり得る。
【0020】
呼吸療法システム200の例証的な実施形態は、経気管の実施例において、死腔を効果的に洗い流す、及び、酸素を送達することができる。一実施形態において、注入ガス供給源215は、気管及び上気道内の死腔を洗い流すために、主として空気から構成される多量の気体を提供することができる。COを含んだ吐き出された気体が注入ガスによって十分に置き換えられると、呼吸療法システム200のこの実施形態は、多量の酸素が豊富な気体を患者に独立して送達することができる。先行技術と比較した本発明の1つの重要な利点は、呼吸療法システム200の例証的な実施形態が、より少ない量の酸素に頼って、大量の酸素を使用する先行技術の装置に等しいレベルにて呼吸療法を提供し得ることである。酸素化のための酸素が続くフラッシングに対して遅い呼気注入ガスを提供することによって、呼吸療法システム200の例証的な実施形態は、酸素の使用を最小化し、より容易に利用可能な注入ガスを用いて換気を最大にすることができる。このように、呼吸療法システム200は、先行技術の装置よりも少ない酸素を消費して、同等レベルの患者酸素化を達成することができる。
【0021】
例証的な実施形態において、注入源215は、圧縮空気の供給源であり得る。特定の実施形態では、呼吸療法システム200は、注入源215として役立ち、その結果、フラッシング目的のために加圧された空気を提供するよう空気圧縮機を含み得る。注入源215としての空気圧縮機の添加は、酸素供給源205が加圧された酸素又は液体酸素である呼吸療法システム200において適切であり得る。別の実施形態では、酸素供給源205は、酸素濃縮装置である。この別の実施形態において、注入源215は、加圧された注入ガス供給源を提供するために酸素濃縮装置の圧縮機に頼るよう実行することができる。この別の実施形態では、注入源215は、酸素濃縮装置用圧縮機に結合され、システム200によって注入ガスとして使用されることになる加圧された周囲空気を受ける。呼吸装置による酸素生成又は消費に対する影響を最小限にするよう注入源215を実行することができる数多くの異なる形状が存在すると当業者は正しく理解するはずである。
【0022】
図3は、本発明の例証的な実施形態により提供された呼吸療法300の方法を例示したブロック図である。呼吸療法300の方法の例証的な実施形態において、患者の呼吸周期に従って、吐き出された気体を流して酸素を送達する、より効率的且つ効果的な呼吸療法の方法が提供される。「呼吸周期」という用語は、本明細書において、患者による1つの吸気相と1つの呼気相との組み合わせに言及するよう使用される。一般的に、呼吸周期の呼気相の間に患者によって吐き出される気体のうち全てが、大気に排出されるわけではない。従って、不必要な吐き出された気体は、患者の生理学的及び解剖学的死腔内、及び、呼吸療法装置の呼吸回路内に残り得る。
【0023】
最大量の治療に役立つ酸素及び最小量のCOが患者に送達されるように、COを多く含む吐き出された気体の再呼吸を防ぐことが一般的に所望される。本発明の例証的な実施形態において提供された呼吸療法300の方法は、不必要な吐き出された気体を除去することに寄与する、及び、吐き出された気体の再呼吸を防ぐことに寄与するために、患者への注入ガスの送達を含む。図3に示された呼吸療法300の方法の例証的な実施形態において示されているように、第1のステップ305は、患者による呼気相の開始を決定するステップを含む。患者の呼気相の開始を決定することによって、呼吸療法300の方法は、患者の呼吸周期と共に順々に実行されることを可能にされる。呼吸周期の呼気相の開始を決定するステップは、呼吸周期と共に並べるために呼吸療法300の方法によって使用することができる多数のあり得るトリガのうちの単なる1つであると当業者は正しく理解するはずである。別の実施形態では、呼吸療法300の方法は、呼吸周期の吸気相の開始によってトリガすることができる。
【0024】
図3において示されているように、呼吸療法300の方法の例証的な実施形態は、呼気相の開始から所定の遅延期間の後に多量の注入ガスを患者に送達するステップ310をさらに含む。所定の遅延期間は、実行ごと及び患者ごとに変わり得る。従って、呼吸療法300の方法の例証的な実施形態において、患者が吐き出し始めた後に多量の注入ガスが送達される。この様式で、呼吸療法300の方法の例証的な実施形態は、COを含めた患者によって吐き出された気体を解剖学的死腔から除去することに寄与するため、及び、吐き出された気体の再呼吸を防ぐことに寄与するために注入ガスを送達することができる。
【0025】
図3に示された呼吸療法300の方法の例証的な実施形態は、所定の呼気フラッシング期間後の所定の酸素療法期間の間に、多量の酸素が豊富な気体を患者に送達するステップを含んだステップ315をさらに含む。ステップ315は、従って、呼吸周期の吸気相の一部の間に酸素の送達を含み得る。呼吸療法300の方法の例証的な実施形態のステップは、呼吸周期に対応するように並べることができ、その結果、呼気相の一部の間に注入ガスを用いてフラッシングする、及び、吸気相の一部の間に治療に役立つ酸素を送達すると当業者は正しく理解するはずである。
【0026】
図4は、本発明の例証的な実施形態により提供された呼吸療法300の方法に対するタイミング図を提供している。図4に示された図は、患者に対する呼吸周期405の呼吸の流れ図の例を示している。図4において示されているように、呼吸周期405は、吸気相410の間の気体の吸入、及び、呼気相415の間の気体の吐き出しを例示している。例証的な実施形態において、呼吸療法300の方法は、吸気相410から呼気相415までの圧力におけるこの変化をトリガとして利用する。例えば、それに限定することなく、一実施形態において、呼息の開始は、カテーテル内の圧力の増加に相当し、従って、呼吸療法300の方法の例証的な実施形態に対する時間ゼロは、この圧力変化の感知に基づき確立することができる。これは、単なるトリガの1つの例であり、呼吸療法300の方法における種々の実施形態は、呼吸周期405において生じる他のトリガに頼り得ると当業者は正しく理解するはずである。
【0027】
呼吸療法300の方法の例証的な実施形態の第1のステップ305を構築する、呼気相415の開始のトリガが検出されると、多量の注入ガスを患者に送達する第2のステップ310が、所定の遅延期間の後に生じ得る。図4は、患者への注入ガス送達420を例示している。図4の例証的な実施形態に示されているように、多量の注入ガス420Aは、所定の遅延期間(「Tdelay」)の後で、患者に送達することができる。
【0028】
例証的な実施形態において、Tdelayは、呼気相415の開始から多量の注入ガス420Aの送達の始まりまでの時間である。Tdelayは、呼吸周期405の1つの周期(「Ttotal」)、又は、第1の呼気相415の開始から第2の呼気相415の開始までの時間の一部として計算される。呼吸周期405の1つの周期であるTtotalは、人ごとに変わることができ、一部の人々に対して1秒から他の人々に対して5秒まで及ぶが、一般的に、約3秒の長さを有する。呼吸療法300の方法の例証的な実施形態の目的のために、Ttotalは、短い息又は長い息等の呼吸周期405における異常によって相殺されないように平均として計算される。
【0029】
(「TtotalF」と表された)フィルターされたTtotalの合計値は、移動平均又は低域フィルターとして、例証的な実施形態において、以下の式、
【0030】
【数1】

に従い計算することができ、式中、nは、フィルターの速度を定める定数であり、0から1000に及び得る(1つの例証的な実施形態においてn=20)。TtotalFを使用して、
delay=TtotalF×Z
としてTdelayを定めることができ、式中、Zは、(一般的に0から0.6の範囲にある)定数として定めることができるか、又は、吸気部分(Inspiratory Fraction)から計算することができる。吸気部分は、呼吸周期405のうち、吸息に費やされた部分である。吸気部分は、測定、固定することができるか、又は、調整可能である(例証的な実施形態において、吸気部分は約0.33である)。以下の式、
Z=(1−吸気部分)×V
は、Zと吸気部分との関係を定めており、式中、Vは、0から0.9に及ぶ定数であり、例証的な実施形態において、Vは0.5である。
【0031】
呼吸療法300の方法の例証的な実施形態において、多量の注入ガスを患者に送達する第2のステップ310は、Tdelayが終了した後に始まる。例証的な実施形態において、第2のステップ310は、所定の呼気フラッシング期間(「Tflush」)の間続き得る。Tflushは、排出された気体を患者の解剖学的死腔から放出して患者による吐き出された気体の吸入を減らすために注入ガスが送達される時間を構築する。図3に示されているように、Tflushの間、多量の注入ガス420Aが患者に送達される。Tflushは、
flush=TtotalF×Y
のように、TtotalFの関数として計算することができ、式中、Yは、0.05から0.66に及ぶ定数であり得るか、又は、以下の式、
Y=(1−吸気部分)×(1−V)
として計算することができる。
【0032】
多量の注入ガス420Aが所定の呼気フラッシング期間(Tflush)の間送達されると、呼吸療法300の方法の例証的な実施形態における第3のステップ215が、所定の酸素呼吸期間(「Toxygen」)の間、多量の酸素が豊富な気体425Aを患者に送達することによって完了される。Toxygenは、呼吸周期405の間に酸素が豊富な気体を送達する期間である。Toxygenは、所望の酸素投与量の関数であり、患者及びその患者に対する
酸素処方に基づき変わり得る。Toxygenは、所望の投与量、最大流速、及び、送達装置を含めた多くの要因に応じて変わり得ると当業者は正しく理解するはずである。Toxygenは、一般的に、0.1秒から0.7秒に及ぶ。例えば、それに限定されることなく、例証的な実施形態におけるToxygenは、1分あたり10リットル(1秒あたり166cc)の速度、及び、40mLという所望の投与量で0.24秒に設定することができる。
【0033】
図4における図に示されているように、呼吸周期405の各周期に対して、呼吸療法300の方法を実行して、呼気フラッシング期間の間に注入ガスを送達する、及び、酸素呼吸期間の間に酸素を送達することができる。それによって、当該システムは、より効率的且つ効果的な呼吸療法を可能にし得る。患者の解剖学的死腔を洗い流すことによって、呼吸療法300の方法は、肺に再び入る吐き出された気体の量を減らす、及び、吸息の間により多くの酸素が肺胞に対して送達されるのを可能にすることができる。
【0034】
図5は、本発明の例証的な実施形態により提供される、酸素貯蔵装置を用いて実行される呼吸療法システム200の概略図を提供している。図5に示されているように、呼吸療法システム200は、液体酸素装置又は加圧された酸素が豊富な気体の装置において実行することができる。図5に示された呼吸療法システム200の例証的な実施形態は、呼吸療法システム200の例証的な実施形態において酸素の送達を調節することを可能にされた酸素送達弁510に結合された従来の液体酸素装置又は加圧された酸素が豊富な気体の装置505を含むことができる。
【0035】
一実施形態における従来の液体酸素装置505は、固定された液体酸素装置でありえ、別の実施形態において、液体酸素装置は、携帯用液体酸素装置であり得る。同様に、一実施形態における従来の圧縮酸素気体装置505は、固定された圧縮酸素気体装置でありえ、別の実施形態において、圧縮酸素気体装置は、携帯用圧縮酸素気体装置であり得る。呼吸療法システム200は、圧縮機515であるよう図5の例証的な実施形態に示されたさらなる注入ガス供給源を提供することができる。圧縮機515は、入口フィルター520に結合することができ、それによって、フラッシング目的で送達されることになる周囲空気を圧縮することを可能にされ得る。
【0036】
一部の実施形態において呼吸療法システム200は、加圧された注入ガスのたくわえを貯蔵するために任意のリザーバー525と共に構成することができる。さらに、一部の実施形態は、フラッシング周期の間に注入ガスの流れを調節するために、任意の調節器530と共に構成することができる。図5に示された例証的な実施形態において、呼吸療法システム200は、患者の呼吸周期のうち所望の部分の間に注入ガスを患者に送達するための感知及び制御回路によって制御することができるフラッシュ気体送達弁535を含む。圧力変換器540は、呼吸療法システム200の例証的な実施形態において、患者の呼吸周期のうち所望の部分の間に酸素が豊富な気体又は注入ガスの送達を感知及び制御回路が正確にトリガするのを可能にするよう構成される。使用者の気道まで気体の流れを連絡する管に結合された任意のフィルター550が示されている。
【0037】
本発明の重要な利点の1つは、携帯用酸素装置がより効率的であるのを可能にし得ることである。図5に示されているように、呼吸療法システム200は、少しの構成要素のみが従来の携帯用液体酸素装置又は圧縮酸素装置に添加されることを必要とする。図5に示された例証的な実施形態において、呼吸療法システム200は、圧縮機515、フラッシュ気体送達弁535、及び、圧力変換器540のみを液体酸素装置又は圧縮酸素気体装置505に添加している。従って、呼吸療法システム200の携帯用実施形態は、換気も酸素化も提供することができる。これによって、数多くのあり得る利点が患者に対して生じる。
【0038】
図6は、本発明の例証的な実施形態により提供された、酸素濃縮装置において実行される呼吸療法システム200の概略図を提供している。図6に示されているように、呼吸療法システム200は、酸素濃縮装置において実行することができる。図6に示された呼吸療法システム200の例証的な実施形態は、2つのふるいベッド(sieve bed)605及び610、パージ制御弁612、逆止め弁614、生成物蓄積タンク616、流量制御弁618、純度センサー622、及び、圧縮機615等、酸素濃縮システムの従来の構成要素を含むことができる。このように、第1の流路626が、患者への酸素が豊富な気体の流れに対して提供されている。圧縮機615は、例証的な実施形態において、ふるいベッド605及び610へ加圧された周囲空気を提供して、ふるいベッドが選択的な吸着から脱着に順次循環し、その結果、周囲空気から酸素を分離するのを可能にするよう構成される。呼吸療法システム200は、注入ガス供給源として、ふるいベッド605及び610に圧力をかけるために圧縮機615に頼るよう構成することができる。
【0039】
図6における呼吸療法システム200の例証的な実施形態の概略図に示されているように、圧縮機615は、逆止め弁620によって患者への第2の送達路628に結合することができる。このように、圧縮機615は、注入ガスとして使用するための圧力がかけられた周囲空気の供給源を提供することができる。例証的な実施形態において、呼吸療法システム200は、注入ガスとして使用されることになる加圧された周囲空気を貯蔵するために任意のリザーバー625を含み得る。さらに、一部の実施形態は、フラッシング周期の間に注入ガスの流れを調節するために任意の調節器630と共に構成することができる。
【0040】
図6に示された例証的な実施形態において、呼吸療法システム200は、患者の呼吸周期のうち所望の部分の間に注入ガスを患者に送達するために感知及び制御回路(図示せず)によって制御することができるフラッシュ気体送達弁635を含む。圧力変換器640は、呼吸療法システム200の例証的な実施形態において、患者の呼吸周期のうち所望の部分の間に酸素が豊富な気体又は注入ガスの送達を感知及び制御回路が正確にトリガするのを可能にするよう構成される。例示された実施形態において、第1の流路626と第2の流路628とが、各流路によって運ばれた気体を患者の気道に送達することができるように組み合わされる。任意のフィルター642は、患者に対する送達に先立ち気体をろ過するよう提供することができる。本発明は、圧縮機615の入口に提供された気体をろ過するために入口フィルター644を提供することも意図する。
【0041】
図6に示された呼吸療法システム200の例証的な実施形態は、携帯用酸素濃縮システム又は固定された酸素濃縮システムであり得ると当業者は正しく理解するはずである。本発明の重要な利点の1つは、酸素濃縮装置がより効率的であるのを可能にし得ることである。図6に示されているように、呼吸療法システム200は、少しの構成要素のみが従来の酸素濃縮装置に添加されることを必要とする。例証的な実施形態において、呼吸療法システム200は、注入ガスとして使用されることになる圧力を加えられた周囲空気を送達することを可能にされた本質的に第2の出力のみを患者に添加するよう構成することができる。従って、呼吸療法システム200の携帯用実施形態は、換気も酸素化も提供することができる。これは、当該システムが比較的小さく、その結果、より軽量でユーザーフレンドリーであるよう許可するため、携帯用酸素濃縮装置にとって重要である。
【0042】
前記のことから、本発明は、経気管カテーテルを介して位相性の換気を提供する方法、並びに、患者の呼吸周期と同期化されることを可能にされた注入ガスの位相性の送達に対する装置及び方法を提供すると正しく理解することができる。本発明は、家庭内又は携帯用の酸素送達装置を用いた注入ガスの位相性の送達に対する装置及び方法をさらに提供する。
【0043】
本発明は、最も実用的で好ましい実施形態であると現在考慮されるものに基づき例示を目的として詳細に記述されてきたけれども、そのような詳細は単にその目的のためだけであり、本発明は開示された実施形態に限定されないが、それどころか、付随の特許請求の範囲の真意及び範囲内にある修正及び同等の構成をカバーするよう意図されることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な限り、いかなる実施形態の1又は複数の特徴もいかなる他の実施形態の1又は複数の特徴とも組み合わせることができると意図していることを理解されたい。
【0044】
本出願は、2008年12月16日に出願した米国仮特許出願第61/122,905号に基づく優先権を主張するものであり、全内容を本願に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸療法システムであって:
多量の酸素が豊富な気体及び多量の注入ガスを送達することを可能にされた気体送達装置;及び、
該気体送達装置に結合された経気管カテーテル;
を含み、前記気体送達装置は、患者の呼吸周期のうち第1の部分の間に前記多量の注入ガスを送達すること、及び、前記呼吸周期のうち第2の部分の間に前記多量の酸素が豊富な気体を送達することを可能にされた、呼吸療法システム。
【請求項2】
前記呼吸周期の呼気相の開始を検出することを可能にされた圧力変換器をさらに含む、請求項1に記載の呼吸療法システム。
【請求項3】
前記第1の部分は、前記呼吸周期の呼気相の開始から所定の遅延の後に始まり、前記第1の部分は、所定の呼気フラッシング期間の後に終わる、請求項1に記載の呼吸療法システム。
【請求項4】
前記第2の部分は、前記所定の呼気フラッシング期間の後に始まり、前記第2の部分は、所定の酸素療法期間の後に終わる、請求項3に記載の呼吸療法システム。
【請求項5】
呼吸療法システムであって:
ハウジング;
該ハウジングに結合され、多量の注入ガスを患者に送達することを可能にされた注入ガス供給源;及び、
前記ハウジングに結合され、多量の酸素が豊富な気体を前記患者に送達することを可能にされた酸素が豊富な気体の供給源;
を含み、携帯用である呼吸療法システム。
【請求項6】
前記患者が、前記携帯用呼吸療法システムと共に動きまわることを可能にされる、請求項5に記載の呼吸療法システム。
【請求項7】
前記注入ガス供給源が、多量の加圧された周囲空気を提供することを可能にされた圧縮機を含む、請求項5に記載の呼吸療法システム。
【請求項8】
前記酸素が豊富な気体の供給源が、酸素濃縮装置である、請求項5に記載の呼吸療法システム。
【請求項9】
前記注入ガス供給源が、前記酸素濃縮装置の圧縮機から多量の加圧された周囲空気を受けるよう構成される、請求項5に記載の呼吸療法システム。
【請求項10】
呼吸療法の方法であって:
患者の呼吸周期の呼気相の開始を決定するステップ;
前記呼気相の開始から所定の遅延期間の後に、所定の呼気フラッシング期間の間、多量の注入ガスを前記患者に送達するステップ;及び、
所定の呼気フラッシング期間の後に、所定の酸素療法期間の間、多量の酸素が豊富な気体を前記患者に送達するステップ;
を含む、呼吸療法の方法。
【請求項11】
前記呼吸周期の呼気相の開始を決定するステップが、圧力変換器を監視するステップを含む、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項12】
前記多量の注入ガス及び前記多量の酸素が豊富な気体が、経気管カテーテルを介して前記患者に送達される、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項13】
前記所定の遅延期間が、前記患者の前記呼吸周期に対する時間のZ倍に等しく、Zが0から0.6に及ぶ、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項14】
前記所定の遅延期間が、前記患者の前記呼吸周期に対する時間のZ倍に等しく、Z=((1−吸気部分)×V)であり、前記吸気部分は、前記呼吸周期のうち、前記患者が吸気に関与する部分であり、Vは、0から0.9という範囲を有する、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項15】
前記所定の呼気フラッシング期間が、前記患者の前記呼吸周期に対する時間のY倍に等しく、Yは、0.05から0.66に及ぶ、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項16】
前記所定の呼気フラッシング期間が、前記患者の前記呼吸周期に対する時間のY倍に等しく、Y=((1−吸気部分)×(1−V))であり、前記吸気部分は、前記呼吸周期のうち、前記患者が吸気に関与する部分であり、Vは、0から0.9という範囲を有する、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項17】
前記所定の酸素療法期間が、前記患者に送達されることになる所望の酸素投与量次第である、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項18】
前記所定の酸素療法期間が0.1から0.7秒に及ぶ、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項19】
前記多量の注入ガス及び前記多量の酸素が豊富な気体が、携帯用酸素装置によって前記患者に送達される、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項20】
呼気相の開始を決定するステップが、呼吸感知装置を監視するステップを含む、請求項10に記載の呼吸療法の方法。
【請求項21】
呼吸療法の方法であって:
経気管カテーテルを介して、所定の呼気フラッシング期間の間、多量の注入ガスを患者に送達するステップ;及び、
前記経気管カテーテルを介して、所定の酸素療法期間の間、多量の酸素が豊富な気体を前記患者に送達するステップ;
を含む、呼吸療法の方法。
【請求項22】
前記多量の注入ガスを送達するステップが、患者の呼吸周期の呼気相の一部の間に生じる、請求項21に記載の呼吸療法の方法。
【請求項23】
前記多量の酸素が豊富な気体を送達するステップが、患者の呼吸周期の吸気相の一部の間に生じる、請求項21に記載の呼吸療法の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−511948(P2012−511948A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540272(P2011−540272)
【出願日】平成21年11月21日(2009.11.21)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055251
【国際公開番号】WO2010/070492
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)