説明

位置決め構造、電子機器および取り付け方法

【課題】 接続部材をシャーシに固定する操作を容易なものにすることができる技術を提供する。
【解決手段】 接続部材20は、シャーシ10における一方の面に配置される板状のベース21と、ベース21から延び出し、電子回路基板2と接触するアーム22と、からなる。ベース21には、挿入部23と、貫通孔24と、が形成されている。
シャーシ10は、キャッチ11と、かしめ用のバーリング12と、が形成されている。
ベース21が所定の位置に配置されると、上記開口13に挿入部23が挿入された状態となる。そのため、接続部材20のバランスが崩れ、ベース21がシャーシ10から浮き上がって倒れる方向に移動しようとしても、キャッチ11が挿入部23に対して上述した一方の面方向から接触するため、ベース21がシャーシ10から浮き上がって倒れてしまう虞が無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性のシャーシと電子回路基板とを電気的に接続する接続部材を、前記シャーシにおける所定の位置に取り付ける際に位置決めを行う位置決め構造,その位置決め構造を備える電子機器,および,上述した接続部材をシャーシに取り付ける取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は電磁ノイズが原因で誤作動や故障を発生する場合がある。電子機器において使用されるマイコン・通信回路等の高速化に伴って、発生する電磁ノイズは増大しており、性能と信頼性確保の観点から、EMC対策の重要性が増している。EMC対策の有効な手段として、電子回路基板の筐体接地の強化があり、従来から種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、シートスイッチとシャーシとを接続し、シャーシと筐体との間に電気伝導性および弾性を有する接続部材を配置することで、効果的に導通する技術が提案されている(特許文献1参照)。上記技術を用いると、インピーダンスを良くして充分に筐体接地を強化することができる。
【特許文献1】特開平6−82705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、筐体のシャーシと電子回路基板とを接続する接続部材として、バネ状の部品を用いることが増えてきている。
例えば、図8に示すように、板バネ状の接続部材101がシャーシ102と電子回路基板103との間に配置され、それらを電気的に接続する構成が用いられている。通常、バネ部品は、シャーシ102および電子回路基板103のいずれか一方(図8においてはシャーシ102)に固定され、シャーシ102と電子回路基板103とを固定した際に、バネによる荷重を掛けつつ他方と接触する構成となっている。
【0005】
しかしながら、近年では、製品の小型化が進められた結果、図9に示すように、シャーシ102と電子回路基板103との幅Cは狭くなっている。一方、接続部材101のバネの機能を発揮するためには、バネ支点から荷重点までの長さDを確保する必要がある。そのため、接続部材101は、上述した長さDがシャーシ102に接触する面の長さEより長いアンバランスな形状になることがある。
【0006】
よって、接続部材101をシャーシ102に固定する工程において、接続部材101を単純にシャーシ102の上に乗せるだけでは、そのアンバランスな形状のために接続部材101が倒れてしまうという問題が発生し、手や治具などを使用して接続部材101が倒れることを抑制する必要があった。
【0007】
さらに、プレスによるかしめ加工にて接続部材101とシャーシ102とを固定する場合には、プレスの金型内部に手や治具などを入れて保持することができない。そこで、従来は、図10に示すように、シャーシ102に空気孔104を形成し、図示しないプレス金型においてシャーシ102に接続部材101を配置した状態で、空気孔104からエア吸引することにより、接続部材101のシャーシ102に接触する面を図10における矢印方向に吸引し、接続部材101の倒れを防止していた。
【0008】
このように、接続部材101の固定をプレスかしめで行う場合には、エア吸引のための設備が必要となると共に、接続部材101のシャーシ102への組み付けを金型装置内でする必要があり、非常に作業性が悪いという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、接続部材をシャーシに固定する操作を容易なものにすることができる位置決め構造,その位置決め構造を備える電子機器,および,接続部材の取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、導電性のシャーシと電子回路基板とを電気的に接続する接続部材を、上記シャーシの一方の面における所定の位置に取り付ける際に位置決めを行う位置決め構造である。
【0011】
この位置決め構造における接続部材は、板状のベースと、ベースから延びだすアームとからなる。上記ベースは、上記所定の位置に配置されるものである。また、上記アームは、上記ベースから所定方向に延び出すものであって、上記電子回路基板と接触するように形成されていることを特徴とする。ここで言う所定方向とは、シャーシおよび電子回路基板が電子機器などの筐体内に取り付けられた状態において、電子回路基板上の接地のための領域に向かう方向である。
【0012】
また、上述したシャーシは、上記ベースが上記所定の位置に配置された状態において、上記ベースに対して上記一方の面方向から接触することで、上記ベースが上記シャーシから離れる方向に移動することを抑制する移動抑制部を備えることを特徴とする。
【0013】
通常、接続部材として板バネのようにアンバランスな形状の部材を用いる場合には、単純にシャーシに接続部材を配置するだけではバランスを崩してしまい、ベースの一部がシャーシから浮き上がって倒れてしまうため、手や治具などを用いて倒れないように位置決めをする必要がある。
【0014】
それに対し、上述した請求項1に記載の位置決め構造であれば、ベースがシャーシから浮き上がって倒れてしまう虞がない。よって、接続部材をシャーシに固定する際に、手や治具などを使ってベースが浮き上がらないように保持する必要が無いので、接続部材をシャーシに固定する操作を容易なものにすることができる。
【0015】
なお、シャーシと接続部材とを固定するための操作としては、例えば、ねじ止めや溶接、プレスかしめなどが考えられる。接続部材の固定をプレスかしめで行う場合、従来は、接続部材が倒れることをエア吸引により抑制する必要があったので、エア吸引装置が配置されたプレス金型上の狭い空間において、シャーシに接続部材を配置する作業を行う必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【0016】
しかしながら、本発明の位置決め構造をプレスかしめにおいて用いると、プレス金型の外部において接続部材のシャーシへの配置作業が可能となり作業性が向上すると共に、エア吸引装置が不要となるため大変都合がよい。
【0017】
なお、本発明におけるシャーシとは、電子回路基板や上述した接続部材などから構成される電子機器の筐体を形成する枠組みや外壁などのうち、電気の伝導性を有する部分をいう。
【0018】
また、上述した接続部材とは、シャーシと電子回路基板とを電気的に接続して、EMC対策のための筐体接地の強化を実現するものであり、電気伝導性を有していれば、その材質は特に限定されない。
【0019】
また、接続部材における電子回路基板と接触する部分の具体的な形状は特に限定されない。例えば、上述したアームが電子回路基板にねじ止めなどで固定される構成であってもよいし、アームがスプリングとして作用するように形成して、電子回路基板に荷重を掛けつつ接触する構成としてもよい。
【0020】
また、上述した移動抑制部は、ベースがシャーシから浮き上がることを抑制するようにベースに接触することができればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、断面コの字型の金具を移動抑制部としてシャーシに取り付けることが考えられる。その断面コの字型金具における上底面と下底面との間の空間にベースを挿入して配置すると、ベースが浮き上がっても、上記上底面にベースが接触するので、ベースの浮き上がりを抑制することができる。
【0021】
移動抑制部の上述したものとは異なる構成としては、シャーシに新たな部材を取り付けることなく、シャーシの一部を変形させて移動抑制部として形成する構成が考えられる。その一例として、請求項1に記載の構成を、請求項2に記載の位置決め構造のように構成することが考えられる。
【0022】
請求項2に記載の位置決め構造において、上記シャーシは、上記一方の面からその面の裏側まで貫通する開口が形成されてなる。また、上記ベースは、上記ベースが所定の位置に配置された状態において上記開口に挿入される挿入領域を有しており、上述した移動抑制部が、上記ベースが所定の位置に配置された状態において、上記挿入領域に対して上記一方の面方向から接触することを特徴とする。
【0023】
このような位置決め構造であれば、ベースを所定の位置に配置すると、挿入領域が開口に挿入され、挿入領域が移動抑制部と接触することにより、ベースの浮き上がりを抑制することができる。また、シャーシ自体を移動抑制部として使用することができるので、移動抑制部として新たな部品を追加する必要が無い。
【0024】
なお、挿入領域は、シャーシの一方の面における所定の位置にベースが配置された状態でシャーシの開口に挿入できるように、ベースからシャーシ側に向かって延びだすように形成するとよい。
【0025】
また、上述した挿入領域は、上記開口に挿入できればその具体的な形状は特に限定されないが、請求項3に記載の位置決め構造のように、挿入領域の幅が、上記開口の幅と略等しくなるように形成される構成であって、挿入領域が上記開口に挿入されることで、上記シャーシに対する上記ベースの上記幅方向に関する移動が抑制されるように構成してもよい。
【0026】
このような位置決め構造であれば、挿入領域を挿入する方向と交差する方向に関するベースの移動が抑制される。よって、請求項2に記載の位置決め構造の作用効果に加え、さらに上記方向の位置決めがなされるので、接続部材をシャーシに固定する際に、手や治具などにより接続部材を保持する作業をさらに軽減することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置決め構造であって、上記ベースには、その主たる面を貫通する貫通孔が形成されており、上記シャーシは、上記シャーシの表面と略垂直となる方向に延び出し、上記ベースが所定の位置に配置された状態においては、上記貫通孔に挿入される筒部を備えることを特徴とする。
【0028】
このような位置決め構造であれば、ベースを所定の位置に配置することで、ベースの貫通孔にシャーシの筒部が挿入される結果、ベースの貫通孔の位置は、シャーシの筒部の位置に位置決めされる。
【0029】
よって、請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置決め構造による作用効果に加え、貫通孔の位置が位置決めされるので、接続部材をシャーシに固定する際に、手や治具などにより保持する作業をさらに軽減することができる。
【0030】
なお、上述した筒部と貫通孔の形状は特に限定されない。例えば、貫通孔および筒部を共に矩形としたり、共に円形としたりすることが考えられる。
また、上述した筒部の長さは特に限定されない。例えば、請求項5に記載の位置決め構造のように、上記筒部が、上記貫通孔に挿入された状態で、上記ベースにおける上記シャーシと反対側の面から所定長さ突出するように形成してもよい。
【0031】
このような位置決め構造であれば、ベースを所定の位置に配置すると、筒部が貫通孔に挿入され、ベースから所定の長さ突出する。そして、その突出した部分をプレスなどによりかしめることで、接続部材をシャーシに固定することができる。これにより、シャーシまたは接続部材に、かしめに使用される領域を別途形成する必要が無くなる。
【0032】
請求項6に記載の発明は、導電性のシャーシと、電子回路基板と、上記シャーシおよび上記電子回路基板を電気的に接続する接続部材と、からなる電子機器である。この電子機器は、上記シャーシおよび上記接続部材が、請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置決め構造を備えることを特徴とする。
【0033】
このような電子機器であれば、その製造段階において、請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置決め構造と同様の作用効果を得ることができる。
請求項7に記載の発明は、導電性のシャーシに対し、上記シャーシと電子回路基板とを電気的に接続する接続部材を取り付ける取り付け方法である。
【0034】
この取り付け方法に用いられる上述した接続部材は、上記シャーシの一方の面における所定の位置に配置され、貫通孔が形成されてなる板状のベースと、上記ベースから所定方向に延び出し、上記電子回路基板と接触するアームと、を備えている。
【0035】
上述したシャーシは、上記ベースが上記所定の位置に配置された状態において、上記ベースと上記一方の面方向から接触することで、上記ベースが上記シャーシから離れる方向に移動することを抑制する移動抑制部と、上記シャーシの表面と略垂直となる方向に延び、上記貫通孔に挿入可能であって、上記貫通孔に挿入された状態で、上記ベースにおける上記シャーシと反対側の面から所定長さ突出するように形成されている筒部を備えている。
【0036】
そして、この請求項7に記載の取り付け方法では、上記移動抑制部が上記ベースに対して上記一方の面方向から接触する位置に上記ベースを配置すると共に、上記貫通孔に上記筒部を挿入させる第一工程と、上記筒部における上記ベースより突出した部分をかしめて、上記接続部材を上記シャーシに固定する第二工程と、を有することを特徴とする。
【0037】
このような接続部材の取り付け方法であれば、第一工程を経た段階で、ベースが移動抑制部により浮き上がりが抑制された状態となっていることから、第二工程においてベースがシャーシから浮き上がって倒れてしまう虞がなく、ベースの浮き上がりを抑制するために手や治具などで保持する必要がなくなるので、接続部材をシャーシに固定する操作を容易なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
(1)全体構成
本実施例の電子機器1は、図1に示すように、図示しない電子部品を実装し、電子回路を構成してなる電子回路基板2と、電子機器1の筐体を形成する導電性のシャーシ10と、電子回路基板2とシャーシ10とを電気的に接続する接続部材20と、を有している。電子回路基板2は、シャーシ10に対し、ネジ止めにより固定されている。
【0039】
電子機器1を、図1の矢印方向から見た側面図を図2に示す。電子回路基板2は、接続部材20を介してシャーシ10と接続している。これにより、電子回路基板2の筐体に対する接地が強化され、ノイズレベルを低減することができる。
【0040】
接続部材20は、図3に示すように、シャーシ10における一方の面(シャーシ10の主たる面のうち、図3において示されている面)に配置される板状のベース21と、ベース21を上記一方の面に配置した際に、一方の面から離れる方向に傾斜して延び出すアーム22と、からなる。
【0041】
ベース21には、ベース21におけるアーム22の延び出す端部と反対側の端部に位置し、ベース21を上記一方の面に配置した際に、シャーシ10側に傾斜して延びる挿入部23と、ベース21の主たる面を貫通し、後述するバーリング12が挿入可能な円形の貫通孔24と、が形成されている。
【0042】
アーム22の端部22Aは、電子回路基板2がシャーシ10に取り付けられた状態で電子回路基板2と接触する。なお、電子回路基板2がシャーシ10に取り付けられた状態においては、アーム22は電子回路基板2に押されて変形する。このとき、アーム22はスプリングとして機能するため、上記変形の結果生じた弾性力により、電子回路基板2に荷重を掛けつつ接触することとなるので、電子回路基板2とシャーシ10とを確実に接続することができる。
【0043】
シャーシ10は、図3に示すように、キャッチ11と、かしめ用のバーリング12と、が形成されている。
キャッチ11は、プレス金型を用いてシャーシ10を矩形に切り欠き加工することにより形成され、一端(図3における端部11A)がシャーシ10と繋がっている。また、その端部11A以外はシャーシ10から切り離され、折り曲げげられて上記一方の面側に位置している。上述した切り欠き加工により、シャーシ10の上記一方の面からその面の裏側まで貫通する開口13が形成され、上記挿入部23が開口13に挿入可能となっている。
【0044】
バーリング12は、プレス金型を用いてシャーシ10をバーリング加工することにより形成され、シャーシ10の表面と略垂直となる方向に延び出しており、接続部材20の貫通孔24に挿入可能な円筒状の形状となっている。
【0045】
接続部材20をシャーシ10に配置すると、図4に示すように、挿入部23は開口13に挿入された状態となり、バーリング12は貫通孔24に挿入された状態となる。なお、上述した状態におけるベース21の配置された位置を、以降、所定の位置とする。
【0046】
上述したベース21が所定の位置に配置された状態を側面から見た図を図5に示す。挿入部23は、開口13に挿入されて、シャーシ10の上述した一方の面(図5における上側に位置する図示されない面)より下側に位置している。また、バーリング12は、ベース21からシャーシ10の反対側の面から所定長さ(ここでは、かしめ加工が可能な長さ)突出している。
【0047】
また、上記の状態を上方から見た平面図を図6に示す。キャッチ11の幅A(つまり、開口13の幅)と、挿入部23の幅Bとは、挿入部23を開口13に挿入したときに幅方向の間隙が無くなり嵌合する長さに調節されている。
(2)取り付け手順
本実施例の電子機器1における接続部材20は、例えば、次に挙げる手順により取り付けられるものである。
【0048】
取り付け前は、図3に示すように、接続部材20とシャーシ10とが分離している。
まず、接続部材20のベース21における挿入部23を、シャーシ10の開口13に挿入する。具体的には、挿入部23を、図3における矢印方向に移動させ、キャッチ11における端部11Aと反対側の端部が位置する方向から挿入する。同時に、貫通孔24にバーリング12を挿入する。
【0049】
これにより、図4に示すように、ベース21がシャーシ10の上記一方の面と接触した状態となる。このとき、キャッチ11が、ベース21の挿入部23に対して一方の面方向から接触する。
【0050】
次に、図示しない金型プレスに上記の状態のシャーシ10を設置し、バーリング12をプレス加工によりかしめる。その結果、図7に示すように、バーリング12がかしめられて、接続部材20がシャーシ10に固定された状態となる。
(3)作用および効果
本実施例の電子機器1は、上述した構成を有することにより、以下の作用効果を得ることができる。
【0051】
ベース21が所定の位置に配置されると、上記開口13に挿入部23が挿入された状態となる。そのため、アーム22の重さで接続部材20のバランスが崩れ、ベース21がシャーシ10から浮き上がって倒れる方向に移動しようとしても、キャッチ11が挿入部23に対して上述した一方の面方向から接触する(すなわち、キャッチ11が挿入部23の図2における上側の面と接触する)ため、ベース21がシャーシ10から浮き上がって倒れてしまう虞が無い。
【0052】
よって、接続部材20をシャーシ10に固定する際に、エア吸引装置を使ってベース21が浮き上がらないように保持する必要が無いので、接続部材20をシャーシ10に固定する操作を容易なものにすることができる。
【0053】
また、シャーシ10自体をプレス加工してキャッチ11を形成しているため、シャーシ10の製造段階において容易に形成することができると共に、キャッチ11の機能を有する別途の部品を準備する必要が無く都合がよい。
【0054】
また、ベース21をシャーシ10における所定の位置に配置すると、ベース21の貫通孔24にシャーシ10のバーリング12が挿入される結果、貫通孔24の位置は、バーリング12の位置に位置決めされる。同時に、開口13と挿入部23とが嵌合することで、ベース21は、シャーシ10の表面に沿う方向、かつ、挿入部23の挿入の方向と交差する方向(挿入部23および開口13の幅方向)に関する移動が抑制される。
【0055】
このように、ベース21は、所定の位置に配置されたときに、シャーシ10の主たる面の拡がる方向に関して、2箇所で位置決めがなされ、上記方向に関する移動が抑制される。よって、接続部材20をシャーシ10に固定する際に、接続部材20を保持する作業がさらに軽減されるため、作業性を向上させることができる。
【0056】
これに関して、従来は、図11(a)に示すように、シャーシ102に位置決め用のボス部105を形成しており、図11(b)に示すように、接続部材101に形成された孔にボス部105を挿通させることで、かしめ用バーリング106を含めて2箇所で位置決めがなされ、上記方向に関する移動を抑制していた。しかし、本実施例では、ボス部105を形成する必要が無くなる。
【0057】
なお、上述した2箇所の位置決めのうち、いずれか一方のみを有する構成であっても、接続部材20の保持作業を軽減することができるため、作業性の向上は実現される。また、挿入部23と開口13との間に間隙があるとしても、その間隙の大きさ応じた範囲にベース21の移動を抑制できるため、作業性の向上は実現される。
【0058】
また、上述したようにエア吸引を行う必要がないので、エア吸引装置を準備する必要が無くなる。また、エア吸引装置が配置されたプレス金型上の狭い空間において、シャーシ10に接続部材20を配置する作業を行う必要がなくなるので、プレス金型の外部において上記の作業が可能となるため、作業性を向上させることができる。
【0059】
また、バーリング12を、位置決めのためのみでなく、かしめにも利用しているので、接続部材20をシャーシ10に固定する際に、かしめに使用される領域を別途形成する必要が無くなる。
(4)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0060】
例えば、上記実施形態では、キャッチ11をプレス加工により形成する構成を例示したが、ベース21と接触して、シャーシ10から浮き上がることを抑制することができれば、その具体的な形状は特に限定されない。
【0061】
例えば、キャッチ11に変えて、断面コの字型の金具をシャーシ10に取り付けることが考えられる。その断面コの字型金具における上底面と下底面との間の空間にベース21を挿入して配置すると、ベース21が浮き上がっても、上記上底面にベース21が接触するので、ベース21の浮き上がりを抑制することができる。
【0062】
また、上述した金具のように、ベース21の浮き上がりを抑制する専用の部品でなくともよく、他のシャーシや電子部品のフレームなどに、キャッチ11や上述した金具と同様の作用を有する部品を形成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、バーリング12が円筒形であり、貫通孔24が円形である構成を例示したが、それらの具体的な形状は特に限定されない。例えば、バーリング12を断面が矩形の筒状に形成し、貫通孔24をそのバーリング12に合わせた矩形に形成することが考えられる。このような形状とすることで、バーリング12が貫通孔24に沿って回転することも抑制できるため、バーリング12の位置決めをより高度に行うことができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、アーム22がスプリングとして作用するように形成され、電子回路基板2に荷重を掛けるように接触する構成を例示したが、接続部材20がシャーシ10に固定された後において、アーム22が電子回路基板2にねじ止めにより固定される構成であってもよい。
(5)対応関係
以上説明した実施形態において、キャッチ11が、本発明における移動抑制部であり、挿入部23が、本発明における挿入領域であり、バーリング12が、本発明における筒部である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の電子機器を示す斜視図
【図2】本発明の電子機器を示す側面図
【図3】接続部材およびシャーシを拡大した斜視図
【図4】接続部材がシャーシに配置された状態を示す斜視図
【図5】接続部材がシャーシに配置された状態を示す断面図
【図6】接続部材がシャーシに配置された状態を示す平面図
【図7】接続部材がシャーシに固定された状態を示す斜視図
【図8】従来の接続部材のシャーシおよび電子回路基板に対する取り付け状態を示す斜視図
【図9】従来の接続部材のシャーシおよび電子回路基板に対する取り付け状態を示す側面図
【図10】従来の接続部材のシャーシに対する取り付け状態を示す斜視図
【図11】従来の位置決め構造を示す斜視図
【符号の説明】
【0066】
1…電子機器、2…電子回路基板、10…シャーシ、11…キャッチ、11A…端部、12…バーリング、13…開口、20…接続部材、21…ベース、22…アーム、23…挿入部、24…貫通孔、101…バネ部品、102…シャーシ、103…電子回路基板、104…空気孔、105…ボス部、106…バーリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のシャーシと電子回路基板とを電気的に接続する接続部材を、前記シャーシの一方の面における所定の位置に取り付ける際に位置決めを行う位置決め構造であって、
前記接続部材は、前記所定の位置に配置される板状のベースと、前記ベースから所定方向に延び出し、前記電子回路基板と接触するアームと、を備え、
前記シャーシは、前記ベースが前記所定の位置に配置された状態において、前記ベースに対して前記一方の面方向から接触することで、前記ベースが前記シャーシから離れる方向に移動することを抑制する移動抑制部を備える
ことを特徴とする位置決め構造。
【請求項2】
前記シャーシは、前記一方の面から該面の裏側まで貫通する開口が形成されており、
前記ベースは、前記ベースが前記所定の位置に配置された状態においては、前記開口に挿入される挿入領域を有しており、
前記移動抑制部は、前記ベースが前記所定の位置に配置された状態において、前記挿入領域に対して前記一方の面方向から接触する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置決め構造。
【請求項3】
前記挿入領域の幅は、前記開口の幅と略等しく形成されており、
前記挿入領域が前記開口に挿入されると、前記シャーシに対する前記ベースの前記幅方向に関する移動が抑制される
ことを特徴とする請求項2に記載の位置決め構造。
【請求項4】
前記ベースには、前記ベースにおける主たる面を貫通する貫通孔が形成されており、
前記シャーシは、前記シャーシの表面と略垂直となる方向に延び出し、前記ベースが前記所定の位置に配置された状態においては、前記貫通孔に挿入される筒部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置決め構造。
【請求項5】
前記筒部は、前記貫通孔に挿入された状態で、前記ベースにおける前記シャーシと反対側の面から所定長さ突出するように形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の位置決め構造。
【請求項6】
導電性のシャーシと、電子回路基板と、前記シャーシおよび前記電子回路基板を電気的に接続する接続部材と、からなり、前記シャーシおよび前記接続部材は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置決め構造を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
導電性のシャーシに対し、前記シャーシと電子回路基板とを電気的に接続する接続部材を取り付ける取り付け方法であって、
前記接続部材は、
前記シャーシの一方の面における所定の位置に配置され、貫通孔が形成されてなる板状のベースと、前記ベースから所定方向に延び出し、前記電子回路基板と接触するアームと、を備え、
前記シャーシは、
前記ベースが前記所定の位置に配置された状態において、前記ベースと前記一方の面方向から接触することで、前記ベースが前記シャーシから離れる方向に移動することを抑制する移動抑制部と、
前記シャーシの表面と略垂直となる方向に延び、前記貫通孔に挿入可能であって、前記貫通孔に挿入された状態で、前記ベースにおける前記シャーシと反対側の面から所定長さ突出するように形成されている筒部を備えており、
前記移動抑制部が前記ベースに対して前記一方の面方向から接触する位置に前記ベースを配置すると共に、前記貫通孔に前記筒部を挿入させる第一工程と、
前記筒部における前記ベースより突出した部分をかしめて、前記接続部材を前記シャーシに固定する第二工程と、を有する
ことを特徴とする接続部材の取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−206153(P2009−206153A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44486(P2008−44486)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】