位置決め治具
【課題】フランジ形状にばらつきがあったとしても、2つの配管を、高精度にセンタリングすることが可能な位置決め治具を提供することを課題とする。
【解決手段】フランジ結合される2つの配管20、30をセンタリングする位置決め治具Uであって、前記2つの配管20、30のフランジ25、35を、間に挟んで向き合う一対の位置決め部材50R、50Lと、前記一対の位置決め部材50R、50Lの内面壁に設けられたV字型のガイド部52R、52Lと、前記一対の位置決め部材50R、50Lを両間の距離を縮める方向に締め込む締付部90とを備え、前記2つの配管20、30のフランジ25、35を間に挟み込みつつ、前記一対の位置決め部材50R、50Lを前記締付部90により締め付けると、前記一対の位置決め部材50R、50Lに形成したV字型をなす2つのガイド部52R、52Lが、前記2つの配管20、30のフランジ25、35の外周面25A、35Aを両側から挟み込んで、前記2つの配管20、30をセンタリングする。
【解決手段】フランジ結合される2つの配管20、30をセンタリングする位置決め治具Uであって、前記2つの配管20、30のフランジ25、35を、間に挟んで向き合う一対の位置決め部材50R、50Lと、前記一対の位置決め部材50R、50Lの内面壁に設けられたV字型のガイド部52R、52Lと、前記一対の位置決め部材50R、50Lを両間の距離を縮める方向に締め込む締付部90とを備え、前記2つの配管20、30のフランジ25、35を間に挟み込みつつ、前記一対の位置決め部材50R、50Lを前記締付部90により締め付けると、前記一対の位置決め部材50R、50Lに形成したV字型をなす2つのガイド部52R、52Lが、前記2つの配管20、30のフランジ25、35の外周面25A、35Aを両側から挟み込んで、前記2つの配管20、30をセンタリングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ結合される2つの配管をセンタリングする位置決め治具に関する。
【背景技術】
【0002】
配管をフランジ結合する場合、配管結合部にてガス漏れが起きないように、結合する2つの配管の管軸のずれを抑える(以下、センタリングと呼ぶ)必要がある。これを果たす位置決め治具として、下記特許文献1の記載のものがある。このものは、ベース側のフランジ継手F1に対応して、フランジ継手F1の形状に倣った円弧状をなすクランプ金具1L、1Rを設けている。そして、各クランプ金具1L、1Rには、各々2つのスライドゲージSが設けられている。
【0003】
この位置決め治具は、ベース側のフランジ継手F1とクランプ金具1L、1Rが、位置を合わせる際の基準となっており、ベース側のフランジ継手F1をクランプ金具1L、1Rにて挟むと、両者の中心が一致する。そして、クランプ金具1L、1RのスライドゲージSに形成したストッパ突起18により、他方側のフランジ継手F2の位置を規制することで、ベース側のフランジ継手F1に対して他方側のフランジ継ぎ手F2の位置を合わせる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−254870公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記クランプ金具1L、1Rは円弧形状をしており、フランジ継手F1の外周面に整合するようになっている。しかし、フランジ継手F1の円弧が設計形状よりわずかでも大きいと、干渉して、クランプ金具1L、1Rはフランジ継手F1に嵌らない。そのため、実際には、形状のばらつきを見込んで、クランプ金具1L、1Rの形状(円弧)を、ベース側のフランジ継手F1の形状(円弧)に比べて、やや大きめにする必要がある。
【0006】
従って、クランプ金具1L、1Rとフランジ継手F1の外周面との間には隙間が出来、その隙間の分だけ、ベース側のフランジ継手F1とクランプ金具F1、F2の中心がずれてしまう。そのため、ベース側フランジF1に対して他方側のフランジF2を高精度にセンタリングすることが出来ない。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、フランジ形状にばらつきがあったとしても、2つの配管を、高精度にセンタリングすることが可能な位置決め治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フランジ結合される2つの配管をセンタリングする位置決め治具であって、前記2つの配管のフランジを、間に挟んで向き合う一対の位置決め部材と、前記一対の位置決め部材の内面壁に設けられたV字型のガイド部と、前記一対の位置決め部材を両間の距離を縮める方向に締め込む締付部とを備え、前記2つの配管のフランジを間に挟み込みつつ、前記一対の位置決め部材を前記締付部により締め付けると、前記一対の位置決め部材に形成したV字型をなす2つのガイド部が、前記2つの配管のフランジの外周面を両側から挟み込んで、前記2つの配管をセンタリングするところに特徴を有する。尚、ここで言う、センタリングとは、「2つの配管の管軸を合わせること」を意味するものである。
【0008】
この発明では、2つの配管のフランジを、V字型のガイド部により、両側から挟み付けてセンタリングする。そのため、フランジ形状に大小ばらつきがあったとしても、V字の案内作用により、2つの配管を高精度にセンタリングすることが可能となる。
【0009】
この発明の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
・前記一対の位置決め部材の一端をヒンジにより連結し、他端に前記締付部を設ける構成とする。このような構成であれば、配管のフランジに対して位置決め治具を比較的簡単に着脱させることが可能であり、使い勝手がよい。
【0010】
・前記一対の位置決め部材には、前記ガイド部に開口する収容部と、前記収容部に対して重ねた状態で収容され、かつプレート先端を前記2つの配管のフランジ間に挿入可能とするべく前記開口から水平に突出させた2枚のプレートと、前記2枚のプレートのいずれかをプレートの法線方向に直線移動させることにより、前記2枚のプレートの相対距離を変位させる直線移動軸と、を含み、前記フランジの面間距離を調整する調整機構が設けられている。
【0011】
この態様では、次の効果が得られる。配管のフランジはガスケットを介挿させた状態で、ボルト締めされる。このとき、ボルトを強く締め過ぎると、両フランジの面間距離が狭くなって、ガスケットを潰し過ぎてしまう。
【0012】
これ対し、この態様では、両フランジの面間距離を目標値に自動調整できる。というのも、2つの配管を結合するべくフランジをボルト締めすると、2つの配管のフランジは次第に接近し、両フランジの面間距離は狭くなってゆく。そして、フランジの面間距離がプレートの相対距離に一致すると、フランジはプレートに突き当たり、両フランジの面間距離はそれ以上狭くならない。よって、2枚のプレートの相対距離を目標値に予め合わせておけば、両フランジの面間距離を目標値に自動調整できる。
【0013】
以上のことから、フランジをボルト締めしたときに、ガスケットを全く潰さなかったり、また潰し過ぎる事がなく、配管結合部の気密性を一層高めることが可能となる。
【0014】
また、ボルトの締め込みが完了した後には、フランジ間から2枚のプレートを抜き取る必要があり、それには、2枚のプレートの相対距離を縮める必要がある。このとき、2枚のプレートには、ボルトによる締め込み力が作用した状態にあり、構造によっては、動作不良を生じ易い。例えば、特許文献1の図5のように斜面上を滑らせて2枚のプレートの相対距離を変位させるような構造の場合、ボルトの締め込み力によって、2枚のプレートが摺接する斜面上の摩擦が大きくなる結果、動作不良を生じ易い。
【0015】
この点、この態様では、2枚のプレートのうち、いずれかをプレートの法線方向に直線移動させることで、2枚のプレートの相対距離を変位させる方式をとっており、斜面を利用していない。そのため、2枚のプレート間に、動作不良を生じさせるような摩擦が原理上起きず、上記の動作不良を起こすことがない。
【0016】
・前記調整機構を、前記フランジの外周面に対して当接する前記ガイド部上の各4つの当接面に対応して、それぞれ個別に設ける構成とする。このようにしておけば、2つの配管のフランジをボルト締めするとき、2つのフランジの周方向の4点を、4組の調整機構(具体的には、それを構成する2枚のプレート)によって、均等に受けることが可能となる。そのため、フランジの一部を強くボルト締めした場合であっても、フランジの面が傾くことがほとんどない(片締め防止)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フランジ形状(円弧の大きさ)にばらつきがあったとしても、2つの配管を、高精度にセンタリングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1にて位置決めの対象となる配管の正面図
【図2】位置決め治具の平面図
【図3】位置決め治具の斜視図
【図4】その一部を分解した拡大図
【図5】配管に対する位置決め治具の組み付け手順を示す図
【図6】配管に対する位置決め治具の組み付け手順を示す図
【図7】配管に位置決め治具を組み付けた状態を示す斜視図
【図8】図6中のA−A線断面図(2枚のプレートの相対距離を調整する前の状態を示す)
【図9】図6中のA−A線断面図(ボルトの締め込みを完了させた状態を示す)
【図10】ガスケットの位置決め構造を示す断面図
【図11】位置決め治具により2枚のフランジがセンタリングされた状態を示す図
【図12】実施形態2に適用された位置決め治具の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
1.配管の説明
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。図1に示す符号20はガスタービン(図略)の燃焼室に固定された燃焼室側配管、図1に示す符号30は燃料を供給するための燃料配管(フレキシブル配管)である。これら両燃料配管20、30はいわゆるフランジ継ぎ手により接続されており、両配管20、30を通って燃料が燃焼室に供給される構成となっている。
【0020】
周知のように、フランジ継ぎ手は、相対する一対のフランジ25、35を、ガスケット40を間に介挿した状態でボルト締めすることで、2つの配管20、30を接続するものである。以下に説明する位置決め治具U1は、2つの配管20、30をフランジ結合するにあたり、両配管20、30の管軸L2、L3を一致させるセンタリング機能、又両フランジの面間距離Dを適切な値に設定する機能を果たすものである。尚、このものでは、フランジ25、35を結合するボルトの締結点数は4点となっている。また、管軸L2は配管20側の中心軸であり、また管軸L3は配管30側の中心軸である。
【0021】
2.位置決め治具U1の説明
図2、図3に示すように、位置決め治具U1は、左右一対の位置決め部材50R、50Lを備えている。係る位置決め部材50R、50Lはアルミ二ウム合金製とされ、角柱形状をしている。
【0022】
一対の位置決め部材50R、50Lは、図2に示すように、長手方向の中央を折れ点としてV字状に折れており、内面壁がV字型のガイド部52R、52Lを構成している。ガイド部52R、52Lは、配管20、30の両フランジ25、35を位置合わせする機能を担うものであり、V字を構成する2辺の中央部が両フランジ25、35に対する当接面C1〜C4となっている。
【0023】
そして、一対の位置決め部材50R、50Lは一端部をヒンジ55により連結してあり、ヒンジ55を中心に開閉できる構成となっている。その一方、図2、図3に示すように、両位置決め部材50R、50Lの開閉端57は、外方(図2では上方)に平行に張り出しており、そこには、締付部90が設けられている。
【0024】
締付部90は、両位置決め部材50R、50Lを、両間の距離を縮める方向に締め込む機能を果たすものであり、嵌合溝91と締付ピン93とから構成されている。
【0025】
嵌合溝91はU字型の溝形状をしており、図3に示す右手前側の位置決め部材50Rの開閉端57に形成されている。一方、締付ピン93は、ピン本体94と締付ナット95から構成されている。ピン本体94は、嵌合溝91に対して嵌合可能とされ、図3に示す左奥側の位置決め部材50Lの開閉端に、ヒンジ96により連結してある。そして、このピン本体94の先端部に、締付ナット95が取り付けられている。係る締付ナット95は、ピン本体94の先端外周面に形成した螺子部94Aに螺合している。
【0026】
以上のことから、締付ピン93を倒して嵌合溝91に嵌合させた後、締付ナット95を螺子込んでゆくと、締付ピン93によって、左右の開閉端57、57が近接方向に締められる結果、両位置決め部材50R、50Lを、両間の距離を縮める方向に締め込むことが出来る構成となっている。
【0027】
また、図2に示すように、位置決め部材50R、50Lの先端内壁側には、逃がし部58が形成されている。この逃がし部58は、フランジ25、35に取り付けられたアース板43に対する干渉を避けるためのものである。
【0028】
また、位置決め部材50R、50Lには、調整機構60が2組ずつ設けられている。調整機構60は、両フランジ25、35の面間距離Dを調整する機能を果たすものであり、固定プレート61、可動プレート63、螺子軸(本発明の「直線移動軸」に相当)73、収容部81を主体に構成されている。
【0029】
係る調整機構60は、図2に示すように、位置決め部材50R、50Lのうち、V字を構成する2辺の中央部(すなわち、フランジ25、35に対する当接面C1〜C4となる箇所)に、それぞれ設けられている。ここでは、調整機構60の具体的構成を、位置決め部材50Lに設けられた調整機構(当接部C4に対応するもの)を例にとって説明する。
【0030】
図4に示すように、位置決め部材50Lの上面壁には収容部81が凹設されている。係る収容部81は位置決め部材50Lの内壁面、外壁面に開口しており、そこには、固定プレート61と、可動プレート63と、押さえプレート71の、3枚のプレート61、63、71が下から積み上げるように配置されている。
【0031】
押さえプレート71は、固定プレート61を押さえて固定するためのものであり、一対のボルトB7により、収容部81の底面に対して螺子止めされている。尚、押さえプレート71は、可動プレート63の両側に配置されたスペーサ65を介して固定プレート61を押さえており、押さえプレート71の押し込み力が可動プレート63自体には作用しない構成となっている。
【0032】
そして、以下に説明する螺子軸73を上下移動させることで、固定プレート61に対して可動プレート63を、図8の上下方向(本発明の「プレートの法線方向」に相当)に移動させることが出来る構成となっている。具体的に説明すると、収容部81の底面中央部には、螺子孔82が形成されている。この螺子孔82には、軸を上下方向に向けた状態で螺子軸73が下方から組み付けられている。
【0033】
係る螺子軸73は、収容部81の底面を貫通した後、更に、固定プレート61を貫通しており、可動プレート63の下面に、ピン先端面を突き当てている。そして、螺子軸73の下端部には鍔部74が設けられており、そこを操作用のハンドル74Aが横向きに貫通している。
【0034】
以上のことから、操作用のハンドル74Aを回して螺子軸73を軸周りに回転させると、螺子軸73が上下に変位する結果、固定プレート61に対して可動プレート63を上下方向に移動させることが出来る。そして、固定プレート61と可動プレート63の両プレートは、図3に示すように、プレート先端を位置決め部材50Lの内面壁52から水平に突出させており、両フランジ25、35間の隙間に、これを挿入できる構成となっている(図8、図9参照)。
【0035】
また、図4に示すように、押さえプレート71には、これを上下に貫通してガイド溝71Aが形成される一方、可動プレート63には、ガイド溝71Aに対応してガイドピン69が設けられている。このような構成とすることで、ガイドピン69とガイド溝71Aの嵌め合いにより案内効果により、可動プレート63を、固定プレート61に対して水平な姿勢を保って、滑らかに上下動させることが可能となる。
【0036】
また、図4に示すように、位置決め部材50Lの内面壁52には、収容部81の下方に位置して座部85が形成されており、そこには、当接プレート75が螺子で固定されている。係る当接プレート75は、押さえプレート71の前面壁72と面一をなす設定になっており、押さえプレート71と共に、2つのフランジ25、35に跨るような面一の当接面C4を形成する構成となっている。尚、当接面C4は位置決め部材50Lの内面壁52と面一であることが好ましく、この実施例でも、位置決め部材50Lの内面壁52と面一となっている。
【0037】
また、上述した固定プレート61、可動プレート63、押さえプレート71、当接プレート75はいずれも炭素鋼を熱処理したものであり、表面の硬度が、配管20、30のフランジ25、35の硬度に比べて十分に高く設定してある。このようにすることで、プレート表面が摩耗し難くなり、位置決め治具U1の耐久性を高めることが可能となる。
【0038】
3.配管接続作業の手順
次に、配管接続作業の手順を説明する。第一ステップでは、配管20、30のフランジ25、35に対して、ボルトB1〜B4を仮締めする作業を行う。具体的には、接続対象となる2つの配管20、30のフランジ25、35を向き合わせ、ボルト挿通孔同士が一致するように位置合わせする。そして、位置合わせが出来たら、各ボルト挿通孔にボルトB1〜B4をそれぞれ通し、更に、各ボルトB1〜B4の先端にナットN1〜N4を螺合させる。その後、各ボルトB1〜B4を、フランジ25、35を締め付けない程度に締め込んでやる。これにて、配管20、30のフランジ25、35に対してボルトB1〜B4が仮締めされた状態になる。
【0039】
次に、第二ステップでは、位置決め治具U1によって、2つの配管20、30をセンタリングする作業を行う。それには、まず、各調整機構60のプレート61、63をフランジ25、35間に差し込みながら、左右の位置決め部材50R、50Lをフランジ25、35を囲い込むように組み付けてやる(図5、図6参照)。
【0040】
あとは、位置決め部材50Lの開閉端57に形成した嵌合溝91に、位置決め部材50Lの開閉端57に取り付けた締付ピン93を嵌合させ、その後、締付ピン93の締付ナット95を締めてやる。これにより、左右の開閉端57、57が近接方向に締められる結果、両位置決め部材50R、50Lは、両間の距離を縮める方向に締め込まれる。
【0041】
このとき、両フランジ25、35は、ガイド部52R、52Lの斜面に沿ってV字の中心側(図6の中心線L0)へと案内されることとなる。そして、最終的には、図6に示すように、4つの当接面C1〜C4が、フランジ25の外周面25A、フランジ35の外周面35Aの双方に対して4点当たりした状態になり、2つのフランジ25、35を円弧の中心点が一致するように位置規制する。以上のことから、図8に示すように、配管接続される2つの配管20、配管30は、管軸L2、L3が一致した状態となる(センタリング)。
【0042】
次に、第三ステップでは、第一ステップにて仮締込めしたボルトB1〜B4を本締めする作業を行う。それには、まず、ハンドル74Aを、先とは逆方向に回して螺子軸73を上昇させ、2枚のプレート61、63の相対距離Sを、フランジ25、35の面間距離Dの目標値に等しくする。例えば、面間距離Dの目標値、すなわちガスケット40の使用時の厚みが6mmであれば、2枚のプレートの相対距離Sを6mmに調整してやればよい。
【0043】
全4組の調整機構60について2枚のプレート61、63の相対距離Sを目標値に調整することが出来たら、あとは、仮締め状態にある4つのボルトB1、B3、B2、B4を順に、少しずつ締めこんでやればよい(本締め)。これを行うと、2つの配管20、30のフランジ25、35はボルトB1〜B4により均等に締め込まれ、ガスケット40を押し潰してゆく。
【0044】
そして、面間距離Dがプレート61、63の相対距離Sに一致すると、フランジ25、35は、プレート61、63の先端に干渉した状態になり、それ以上、ボルトB1〜B4を締められなくなる。以上のことから、本締め後には、両フランジ25、35は、面間距離Dが目標値(ここでは、6mm)に正確に合わされた状態になり、両間に挟まれたガスケット40は、その厚みが丁度、目標値(ここでは、6mm)なる。
【0045】
尚、ボルトB1〜B4を本締めした状態では、図10に示すように、ガスケット40は、4つのボルトB1〜B4によりその位置を規制され、配管20、30の管軸に中心を一致させるように、位置決めされた状態になる。
【0046】
次に、第四ステップでは、位置決め治具U1を取り外す作業を行う。それには、まず、ハンドル74Aを回して、螺子軸73を、下降させてやる。これにより、可動プレート63の位置が下がるので、2枚のプレート61、63の相対距離Sが、フランジの面間距離Dより狭くなり、プレート61、63とフランジ25、35の干渉状態が解かれる。
【0047】
そして、全4組の調整機構60について、螺子軸73を下降操作することが出来たら、あとは、締付ナット95を緩めつつ、締付ピン93を嵌合溝91から外してやればよい。これにより、ヒンジ55を軸に両位置決め部材50R、50Lを開くことが可能となり、図5に示すように、組み付けた位置決め治具U1を、配管20、30のフランジ25、35から簡単に取り外せる。
【0048】
4.効果
(a)ガイド部52R、52Lの効果
本発明の位置決め治具U1は、フランジ25、35を位置合わせするのに、ガイド部52R、52Lの斜面を利用している。そのため、2つのフランジ25、35の円弧の大きさに関係なく、位置決め部材50R、50Lを締め込めば、ガイド部52R、52Lの4つの当接面C1〜C4が、フランジ25、35の外周面25A、35Aに対して各々当接する。
【0049】
以上のことから、フランジ25、35の円弧形状にばらつきがあったとしても(例えば、2つのフランジの双方とも設計値より大きい場合など)、配管20、30のフランジ25、35を、中心同士が一致する状態に位置決めすることが出来る。
【0050】
もっとも、2つのフランジ25、35の大きさが異なる場合には、図11に示すように、ガイド部52R、52Lは大きい側のフランジ(図11では、フランジ35)の外周面35Aに当接し、小さい側のフランジ(図11では、フランジ25)の外周面25Aとの間には、隙間が出来てしまう。
【0051】
しかし、この場合であっても、小さい側のフランジ25は、ガイド部52R、52Lによって、大きい側のフランジ35の外形範囲内に収まるように、その位置が規制される。よって、結合する2つの配管20、30の管軸L2、L3のずれを最小限に抑えることが可能となる。
【0052】
また、当接面C1〜C4の角度(すなわち、V字の角度)は、90度にすることが好ましい。そのような設定としておけば、4つの当接面C1〜C4が、フランジ25、35の外周面25A、35Aに対して、90度間隔で均等に当接することとなり、フランジ25、35を安定的に位置決め出来る。
【0053】
また、位置決め部材50R、50Lは、一端をヒンジ55により連結しており、ヒンジ55を軸に開閉できる構成となっている。このような構成であれば、配管20、30のフランジ25、35に対して位置決め治具U1を比較的簡単に着脱させることが可能であり、使い勝手がよい。
【0054】
(b)調整機構60の効果
配管20、30のフランジ25、35はガスケット40を介挿させた状態で、ボルト締めされる。このとき、ボルトを強く締め過ぎると、両フランジ25、35の面間距離Dが狭くなって、ガスケット40を潰し過ぎてしまう。
【0055】
この点、位置決め治具U1では、両フランジ25、35の面間距離Dを、調整機構60により目標値に自動調整できる。そのため、フランジ25、35をボルト締めしたときに、ガスケット40を全く潰さなかったり、また潰し過ぎる事がなく、配管結合部の気密性を一層高めることが可能となる。
【0056】
また、調整機構60は、ガイド部52R、52L上の各4つの当接面C1〜C4に対応して、それぞれ個別に設けられている。このようにしておけば、2つの配管20、30のフランジ25、35をボルト締めするとき、2つのフランジ25、35の周方向の4点を、4組の調整機構(具体的には、それを構成する2枚のプレート61、63)によって、均等に受けることが可能となる。そのため、フランジの一部を強くボルト締めした場合であっても、フランジ25、35の面が傾くことがほとんどない(片締め防止)。
【0057】
また、配管20、30の接続作業が完了した後、配管20、30から位置決め治具U1を取り外すには、フランジ25、35間から2枚のプレート61、63を抜き取る必要があり、それには、可動プレート63の位置を下げて、2枚のプレート61、63の相対距離Sを縮める必要がある。このとき、2枚のプレート61、63及びそれを相対移動させる機構には、ボルトによる締め込み力が作用した状態にあり、構造によっては、動作不良を生じ易い。例えば、特許文献1の図5のように斜面上を滑らせて2枚のプレートの相対距離を変位させるような構造の場合、ボルトの締め込み力によって、2枚のプレートが摺接する斜面上の摩擦が大きくなる結果、動作不良を生じ易い。
【0058】
この点、本実施形態では、可動プレート63を、プレートの法線方向(すなわち、図8、図9の上下方向)に直線移動させることで、2枚のプレート61、63の相対距離Sを変位させる方式をとっており、可動プレート63の移動に、斜面を利用していない。そのため、2枚のプレート61、63間に、動作不良を生じさせるような摩擦が原理上起きず、上記の動作不良を起こすことがない。
【0059】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12を参照して説明する。実施形態2に適用の位置決め治具U2は、実施形態1に適用の位置決め治具U1に対して、スプリングプランジャ100を追加した点のみ相違し、それ以外の構成は同一である。よって、ここでは、相違点のみを説明し、それ以外の部品については、実施形態1と同一符号を付して説明を省略するものとする。
【0060】
図12に示すように、調整機構60の押さえプレート71には組み付け孔71Bが形成されており、そこには、ボール110を内側に向けてスプリングプランジャ100が横向きに取り付けられている。係るスプリングプランジャ100は、内部にスプリング(図略)を内蔵しており、先端に設けられたボール110に対して、これを突出させる付勢力を常に作用させる構成となっている。
【0061】
実施形態2の位置決め治具U2は、上記したスプリングプランジャ100を、4つの調整機構60に対して各々設けており、これら4つのスプリングプランジャ100が、フランジ25の周方向の4点を中心に向かって押す構成となっている。そのため、フランジ25、35の大きさが異なっていても、小さい側のフランジ25を、スプリングプランジャ100により、大きい側のフランジ35の中心に位置合わせすることが可能となり、2つの配管20、30をより高精度にセンタリングすることが可能となる。
【0062】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
(1)上記実施形態1、2では、位置決め部材50R、50Lの一端を、ヒンジ55により連結したものを例示したが、位置決め部材50R、50Lは、必ずしもヒンジ55で連結する必要はなく、両端とも締付部90を設けるような構成とすることが可能である。
【0064】
(2)上記実施形態1、2では、位置決め部材50R、50Lのアルミ二ウム合金製としたが、鋼材(S45C)などを削り出して製作してもよく、この場合には、当接プレート75の廃止が可能である。
【符号の説明】
【0065】
20、30…配管
25、35…フランジ
25A、35A…外周面
50R、50L…位置決め部材
52R、52L…ガイド部
55…ヒンジ
60…調整機構
61…固定プレート
63…可動プレート
73…螺子軸(本発明の「直線移動軸」に相当)
81…収容部
82…螺子孔
90…締付部
91…嵌合溝
93…締付ピン
U…位置決め治具
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ結合される2つの配管をセンタリングする位置決め治具に関する。
【背景技術】
【0002】
配管をフランジ結合する場合、配管結合部にてガス漏れが起きないように、結合する2つの配管の管軸のずれを抑える(以下、センタリングと呼ぶ)必要がある。これを果たす位置決め治具として、下記特許文献1の記載のものがある。このものは、ベース側のフランジ継手F1に対応して、フランジ継手F1の形状に倣った円弧状をなすクランプ金具1L、1Rを設けている。そして、各クランプ金具1L、1Rには、各々2つのスライドゲージSが設けられている。
【0003】
この位置決め治具は、ベース側のフランジ継手F1とクランプ金具1L、1Rが、位置を合わせる際の基準となっており、ベース側のフランジ継手F1をクランプ金具1L、1Rにて挟むと、両者の中心が一致する。そして、クランプ金具1L、1RのスライドゲージSに形成したストッパ突起18により、他方側のフランジ継手F2の位置を規制することで、ベース側のフランジ継手F1に対して他方側のフランジ継ぎ手F2の位置を合わせる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−254870公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記クランプ金具1L、1Rは円弧形状をしており、フランジ継手F1の外周面に整合するようになっている。しかし、フランジ継手F1の円弧が設計形状よりわずかでも大きいと、干渉して、クランプ金具1L、1Rはフランジ継手F1に嵌らない。そのため、実際には、形状のばらつきを見込んで、クランプ金具1L、1Rの形状(円弧)を、ベース側のフランジ継手F1の形状(円弧)に比べて、やや大きめにする必要がある。
【0006】
従って、クランプ金具1L、1Rとフランジ継手F1の外周面との間には隙間が出来、その隙間の分だけ、ベース側のフランジ継手F1とクランプ金具F1、F2の中心がずれてしまう。そのため、ベース側フランジF1に対して他方側のフランジF2を高精度にセンタリングすることが出来ない。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、フランジ形状にばらつきがあったとしても、2つの配管を、高精度にセンタリングすることが可能な位置決め治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フランジ結合される2つの配管をセンタリングする位置決め治具であって、前記2つの配管のフランジを、間に挟んで向き合う一対の位置決め部材と、前記一対の位置決め部材の内面壁に設けられたV字型のガイド部と、前記一対の位置決め部材を両間の距離を縮める方向に締め込む締付部とを備え、前記2つの配管のフランジを間に挟み込みつつ、前記一対の位置決め部材を前記締付部により締め付けると、前記一対の位置決め部材に形成したV字型をなす2つのガイド部が、前記2つの配管のフランジの外周面を両側から挟み込んで、前記2つの配管をセンタリングするところに特徴を有する。尚、ここで言う、センタリングとは、「2つの配管の管軸を合わせること」を意味するものである。
【0008】
この発明では、2つの配管のフランジを、V字型のガイド部により、両側から挟み付けてセンタリングする。そのため、フランジ形状に大小ばらつきがあったとしても、V字の案内作用により、2つの配管を高精度にセンタリングすることが可能となる。
【0009】
この発明の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
・前記一対の位置決め部材の一端をヒンジにより連結し、他端に前記締付部を設ける構成とする。このような構成であれば、配管のフランジに対して位置決め治具を比較的簡単に着脱させることが可能であり、使い勝手がよい。
【0010】
・前記一対の位置決め部材には、前記ガイド部に開口する収容部と、前記収容部に対して重ねた状態で収容され、かつプレート先端を前記2つの配管のフランジ間に挿入可能とするべく前記開口から水平に突出させた2枚のプレートと、前記2枚のプレートのいずれかをプレートの法線方向に直線移動させることにより、前記2枚のプレートの相対距離を変位させる直線移動軸と、を含み、前記フランジの面間距離を調整する調整機構が設けられている。
【0011】
この態様では、次の効果が得られる。配管のフランジはガスケットを介挿させた状態で、ボルト締めされる。このとき、ボルトを強く締め過ぎると、両フランジの面間距離が狭くなって、ガスケットを潰し過ぎてしまう。
【0012】
これ対し、この態様では、両フランジの面間距離を目標値に自動調整できる。というのも、2つの配管を結合するべくフランジをボルト締めすると、2つの配管のフランジは次第に接近し、両フランジの面間距離は狭くなってゆく。そして、フランジの面間距離がプレートの相対距離に一致すると、フランジはプレートに突き当たり、両フランジの面間距離はそれ以上狭くならない。よって、2枚のプレートの相対距離を目標値に予め合わせておけば、両フランジの面間距離を目標値に自動調整できる。
【0013】
以上のことから、フランジをボルト締めしたときに、ガスケットを全く潰さなかったり、また潰し過ぎる事がなく、配管結合部の気密性を一層高めることが可能となる。
【0014】
また、ボルトの締め込みが完了した後には、フランジ間から2枚のプレートを抜き取る必要があり、それには、2枚のプレートの相対距離を縮める必要がある。このとき、2枚のプレートには、ボルトによる締め込み力が作用した状態にあり、構造によっては、動作不良を生じ易い。例えば、特許文献1の図5のように斜面上を滑らせて2枚のプレートの相対距離を変位させるような構造の場合、ボルトの締め込み力によって、2枚のプレートが摺接する斜面上の摩擦が大きくなる結果、動作不良を生じ易い。
【0015】
この点、この態様では、2枚のプレートのうち、いずれかをプレートの法線方向に直線移動させることで、2枚のプレートの相対距離を変位させる方式をとっており、斜面を利用していない。そのため、2枚のプレート間に、動作不良を生じさせるような摩擦が原理上起きず、上記の動作不良を起こすことがない。
【0016】
・前記調整機構を、前記フランジの外周面に対して当接する前記ガイド部上の各4つの当接面に対応して、それぞれ個別に設ける構成とする。このようにしておけば、2つの配管のフランジをボルト締めするとき、2つのフランジの周方向の4点を、4組の調整機構(具体的には、それを構成する2枚のプレート)によって、均等に受けることが可能となる。そのため、フランジの一部を強くボルト締めした場合であっても、フランジの面が傾くことがほとんどない(片締め防止)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フランジ形状(円弧の大きさ)にばらつきがあったとしても、2つの配管を、高精度にセンタリングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1にて位置決めの対象となる配管の正面図
【図2】位置決め治具の平面図
【図3】位置決め治具の斜視図
【図4】その一部を分解した拡大図
【図5】配管に対する位置決め治具の組み付け手順を示す図
【図6】配管に対する位置決め治具の組み付け手順を示す図
【図7】配管に位置決め治具を組み付けた状態を示す斜視図
【図8】図6中のA−A線断面図(2枚のプレートの相対距離を調整する前の状態を示す)
【図9】図6中のA−A線断面図(ボルトの締め込みを完了させた状態を示す)
【図10】ガスケットの位置決め構造を示す断面図
【図11】位置決め治具により2枚のフランジがセンタリングされた状態を示す図
【図12】実施形態2に適用された位置決め治具の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
1.配管の説明
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。図1に示す符号20はガスタービン(図略)の燃焼室に固定された燃焼室側配管、図1に示す符号30は燃料を供給するための燃料配管(フレキシブル配管)である。これら両燃料配管20、30はいわゆるフランジ継ぎ手により接続されており、両配管20、30を通って燃料が燃焼室に供給される構成となっている。
【0020】
周知のように、フランジ継ぎ手は、相対する一対のフランジ25、35を、ガスケット40を間に介挿した状態でボルト締めすることで、2つの配管20、30を接続するものである。以下に説明する位置決め治具U1は、2つの配管20、30をフランジ結合するにあたり、両配管20、30の管軸L2、L3を一致させるセンタリング機能、又両フランジの面間距離Dを適切な値に設定する機能を果たすものである。尚、このものでは、フランジ25、35を結合するボルトの締結点数は4点となっている。また、管軸L2は配管20側の中心軸であり、また管軸L3は配管30側の中心軸である。
【0021】
2.位置決め治具U1の説明
図2、図3に示すように、位置決め治具U1は、左右一対の位置決め部材50R、50Lを備えている。係る位置決め部材50R、50Lはアルミ二ウム合金製とされ、角柱形状をしている。
【0022】
一対の位置決め部材50R、50Lは、図2に示すように、長手方向の中央を折れ点としてV字状に折れており、内面壁がV字型のガイド部52R、52Lを構成している。ガイド部52R、52Lは、配管20、30の両フランジ25、35を位置合わせする機能を担うものであり、V字を構成する2辺の中央部が両フランジ25、35に対する当接面C1〜C4となっている。
【0023】
そして、一対の位置決め部材50R、50Lは一端部をヒンジ55により連結してあり、ヒンジ55を中心に開閉できる構成となっている。その一方、図2、図3に示すように、両位置決め部材50R、50Lの開閉端57は、外方(図2では上方)に平行に張り出しており、そこには、締付部90が設けられている。
【0024】
締付部90は、両位置決め部材50R、50Lを、両間の距離を縮める方向に締め込む機能を果たすものであり、嵌合溝91と締付ピン93とから構成されている。
【0025】
嵌合溝91はU字型の溝形状をしており、図3に示す右手前側の位置決め部材50Rの開閉端57に形成されている。一方、締付ピン93は、ピン本体94と締付ナット95から構成されている。ピン本体94は、嵌合溝91に対して嵌合可能とされ、図3に示す左奥側の位置決め部材50Lの開閉端に、ヒンジ96により連結してある。そして、このピン本体94の先端部に、締付ナット95が取り付けられている。係る締付ナット95は、ピン本体94の先端外周面に形成した螺子部94Aに螺合している。
【0026】
以上のことから、締付ピン93を倒して嵌合溝91に嵌合させた後、締付ナット95を螺子込んでゆくと、締付ピン93によって、左右の開閉端57、57が近接方向に締められる結果、両位置決め部材50R、50Lを、両間の距離を縮める方向に締め込むことが出来る構成となっている。
【0027】
また、図2に示すように、位置決め部材50R、50Lの先端内壁側には、逃がし部58が形成されている。この逃がし部58は、フランジ25、35に取り付けられたアース板43に対する干渉を避けるためのものである。
【0028】
また、位置決め部材50R、50Lには、調整機構60が2組ずつ設けられている。調整機構60は、両フランジ25、35の面間距離Dを調整する機能を果たすものであり、固定プレート61、可動プレート63、螺子軸(本発明の「直線移動軸」に相当)73、収容部81を主体に構成されている。
【0029】
係る調整機構60は、図2に示すように、位置決め部材50R、50Lのうち、V字を構成する2辺の中央部(すなわち、フランジ25、35に対する当接面C1〜C4となる箇所)に、それぞれ設けられている。ここでは、調整機構60の具体的構成を、位置決め部材50Lに設けられた調整機構(当接部C4に対応するもの)を例にとって説明する。
【0030】
図4に示すように、位置決め部材50Lの上面壁には収容部81が凹設されている。係る収容部81は位置決め部材50Lの内壁面、外壁面に開口しており、そこには、固定プレート61と、可動プレート63と、押さえプレート71の、3枚のプレート61、63、71が下から積み上げるように配置されている。
【0031】
押さえプレート71は、固定プレート61を押さえて固定するためのものであり、一対のボルトB7により、収容部81の底面に対して螺子止めされている。尚、押さえプレート71は、可動プレート63の両側に配置されたスペーサ65を介して固定プレート61を押さえており、押さえプレート71の押し込み力が可動プレート63自体には作用しない構成となっている。
【0032】
そして、以下に説明する螺子軸73を上下移動させることで、固定プレート61に対して可動プレート63を、図8の上下方向(本発明の「プレートの法線方向」に相当)に移動させることが出来る構成となっている。具体的に説明すると、収容部81の底面中央部には、螺子孔82が形成されている。この螺子孔82には、軸を上下方向に向けた状態で螺子軸73が下方から組み付けられている。
【0033】
係る螺子軸73は、収容部81の底面を貫通した後、更に、固定プレート61を貫通しており、可動プレート63の下面に、ピン先端面を突き当てている。そして、螺子軸73の下端部には鍔部74が設けられており、そこを操作用のハンドル74Aが横向きに貫通している。
【0034】
以上のことから、操作用のハンドル74Aを回して螺子軸73を軸周りに回転させると、螺子軸73が上下に変位する結果、固定プレート61に対して可動プレート63を上下方向に移動させることが出来る。そして、固定プレート61と可動プレート63の両プレートは、図3に示すように、プレート先端を位置決め部材50Lの内面壁52から水平に突出させており、両フランジ25、35間の隙間に、これを挿入できる構成となっている(図8、図9参照)。
【0035】
また、図4に示すように、押さえプレート71には、これを上下に貫通してガイド溝71Aが形成される一方、可動プレート63には、ガイド溝71Aに対応してガイドピン69が設けられている。このような構成とすることで、ガイドピン69とガイド溝71Aの嵌め合いにより案内効果により、可動プレート63を、固定プレート61に対して水平な姿勢を保って、滑らかに上下動させることが可能となる。
【0036】
また、図4に示すように、位置決め部材50Lの内面壁52には、収容部81の下方に位置して座部85が形成されており、そこには、当接プレート75が螺子で固定されている。係る当接プレート75は、押さえプレート71の前面壁72と面一をなす設定になっており、押さえプレート71と共に、2つのフランジ25、35に跨るような面一の当接面C4を形成する構成となっている。尚、当接面C4は位置決め部材50Lの内面壁52と面一であることが好ましく、この実施例でも、位置決め部材50Lの内面壁52と面一となっている。
【0037】
また、上述した固定プレート61、可動プレート63、押さえプレート71、当接プレート75はいずれも炭素鋼を熱処理したものであり、表面の硬度が、配管20、30のフランジ25、35の硬度に比べて十分に高く設定してある。このようにすることで、プレート表面が摩耗し難くなり、位置決め治具U1の耐久性を高めることが可能となる。
【0038】
3.配管接続作業の手順
次に、配管接続作業の手順を説明する。第一ステップでは、配管20、30のフランジ25、35に対して、ボルトB1〜B4を仮締めする作業を行う。具体的には、接続対象となる2つの配管20、30のフランジ25、35を向き合わせ、ボルト挿通孔同士が一致するように位置合わせする。そして、位置合わせが出来たら、各ボルト挿通孔にボルトB1〜B4をそれぞれ通し、更に、各ボルトB1〜B4の先端にナットN1〜N4を螺合させる。その後、各ボルトB1〜B4を、フランジ25、35を締め付けない程度に締め込んでやる。これにて、配管20、30のフランジ25、35に対してボルトB1〜B4が仮締めされた状態になる。
【0039】
次に、第二ステップでは、位置決め治具U1によって、2つの配管20、30をセンタリングする作業を行う。それには、まず、各調整機構60のプレート61、63をフランジ25、35間に差し込みながら、左右の位置決め部材50R、50Lをフランジ25、35を囲い込むように組み付けてやる(図5、図6参照)。
【0040】
あとは、位置決め部材50Lの開閉端57に形成した嵌合溝91に、位置決め部材50Lの開閉端57に取り付けた締付ピン93を嵌合させ、その後、締付ピン93の締付ナット95を締めてやる。これにより、左右の開閉端57、57が近接方向に締められる結果、両位置決め部材50R、50Lは、両間の距離を縮める方向に締め込まれる。
【0041】
このとき、両フランジ25、35は、ガイド部52R、52Lの斜面に沿ってV字の中心側(図6の中心線L0)へと案内されることとなる。そして、最終的には、図6に示すように、4つの当接面C1〜C4が、フランジ25の外周面25A、フランジ35の外周面35Aの双方に対して4点当たりした状態になり、2つのフランジ25、35を円弧の中心点が一致するように位置規制する。以上のことから、図8に示すように、配管接続される2つの配管20、配管30は、管軸L2、L3が一致した状態となる(センタリング)。
【0042】
次に、第三ステップでは、第一ステップにて仮締込めしたボルトB1〜B4を本締めする作業を行う。それには、まず、ハンドル74Aを、先とは逆方向に回して螺子軸73を上昇させ、2枚のプレート61、63の相対距離Sを、フランジ25、35の面間距離Dの目標値に等しくする。例えば、面間距離Dの目標値、すなわちガスケット40の使用時の厚みが6mmであれば、2枚のプレートの相対距離Sを6mmに調整してやればよい。
【0043】
全4組の調整機構60について2枚のプレート61、63の相対距離Sを目標値に調整することが出来たら、あとは、仮締め状態にある4つのボルトB1、B3、B2、B4を順に、少しずつ締めこんでやればよい(本締め)。これを行うと、2つの配管20、30のフランジ25、35はボルトB1〜B4により均等に締め込まれ、ガスケット40を押し潰してゆく。
【0044】
そして、面間距離Dがプレート61、63の相対距離Sに一致すると、フランジ25、35は、プレート61、63の先端に干渉した状態になり、それ以上、ボルトB1〜B4を締められなくなる。以上のことから、本締め後には、両フランジ25、35は、面間距離Dが目標値(ここでは、6mm)に正確に合わされた状態になり、両間に挟まれたガスケット40は、その厚みが丁度、目標値(ここでは、6mm)なる。
【0045】
尚、ボルトB1〜B4を本締めした状態では、図10に示すように、ガスケット40は、4つのボルトB1〜B4によりその位置を規制され、配管20、30の管軸に中心を一致させるように、位置決めされた状態になる。
【0046】
次に、第四ステップでは、位置決め治具U1を取り外す作業を行う。それには、まず、ハンドル74Aを回して、螺子軸73を、下降させてやる。これにより、可動プレート63の位置が下がるので、2枚のプレート61、63の相対距離Sが、フランジの面間距離Dより狭くなり、プレート61、63とフランジ25、35の干渉状態が解かれる。
【0047】
そして、全4組の調整機構60について、螺子軸73を下降操作することが出来たら、あとは、締付ナット95を緩めつつ、締付ピン93を嵌合溝91から外してやればよい。これにより、ヒンジ55を軸に両位置決め部材50R、50Lを開くことが可能となり、図5に示すように、組み付けた位置決め治具U1を、配管20、30のフランジ25、35から簡単に取り外せる。
【0048】
4.効果
(a)ガイド部52R、52Lの効果
本発明の位置決め治具U1は、フランジ25、35を位置合わせするのに、ガイド部52R、52Lの斜面を利用している。そのため、2つのフランジ25、35の円弧の大きさに関係なく、位置決め部材50R、50Lを締め込めば、ガイド部52R、52Lの4つの当接面C1〜C4が、フランジ25、35の外周面25A、35Aに対して各々当接する。
【0049】
以上のことから、フランジ25、35の円弧形状にばらつきがあったとしても(例えば、2つのフランジの双方とも設計値より大きい場合など)、配管20、30のフランジ25、35を、中心同士が一致する状態に位置決めすることが出来る。
【0050】
もっとも、2つのフランジ25、35の大きさが異なる場合には、図11に示すように、ガイド部52R、52Lは大きい側のフランジ(図11では、フランジ35)の外周面35Aに当接し、小さい側のフランジ(図11では、フランジ25)の外周面25Aとの間には、隙間が出来てしまう。
【0051】
しかし、この場合であっても、小さい側のフランジ25は、ガイド部52R、52Lによって、大きい側のフランジ35の外形範囲内に収まるように、その位置が規制される。よって、結合する2つの配管20、30の管軸L2、L3のずれを最小限に抑えることが可能となる。
【0052】
また、当接面C1〜C4の角度(すなわち、V字の角度)は、90度にすることが好ましい。そのような設定としておけば、4つの当接面C1〜C4が、フランジ25、35の外周面25A、35Aに対して、90度間隔で均等に当接することとなり、フランジ25、35を安定的に位置決め出来る。
【0053】
また、位置決め部材50R、50Lは、一端をヒンジ55により連結しており、ヒンジ55を軸に開閉できる構成となっている。このような構成であれば、配管20、30のフランジ25、35に対して位置決め治具U1を比較的簡単に着脱させることが可能であり、使い勝手がよい。
【0054】
(b)調整機構60の効果
配管20、30のフランジ25、35はガスケット40を介挿させた状態で、ボルト締めされる。このとき、ボルトを強く締め過ぎると、両フランジ25、35の面間距離Dが狭くなって、ガスケット40を潰し過ぎてしまう。
【0055】
この点、位置決め治具U1では、両フランジ25、35の面間距離Dを、調整機構60により目標値に自動調整できる。そのため、フランジ25、35をボルト締めしたときに、ガスケット40を全く潰さなかったり、また潰し過ぎる事がなく、配管結合部の気密性を一層高めることが可能となる。
【0056】
また、調整機構60は、ガイド部52R、52L上の各4つの当接面C1〜C4に対応して、それぞれ個別に設けられている。このようにしておけば、2つの配管20、30のフランジ25、35をボルト締めするとき、2つのフランジ25、35の周方向の4点を、4組の調整機構(具体的には、それを構成する2枚のプレート61、63)によって、均等に受けることが可能となる。そのため、フランジの一部を強くボルト締めした場合であっても、フランジ25、35の面が傾くことがほとんどない(片締め防止)。
【0057】
また、配管20、30の接続作業が完了した後、配管20、30から位置決め治具U1を取り外すには、フランジ25、35間から2枚のプレート61、63を抜き取る必要があり、それには、可動プレート63の位置を下げて、2枚のプレート61、63の相対距離Sを縮める必要がある。このとき、2枚のプレート61、63及びそれを相対移動させる機構には、ボルトによる締め込み力が作用した状態にあり、構造によっては、動作不良を生じ易い。例えば、特許文献1の図5のように斜面上を滑らせて2枚のプレートの相対距離を変位させるような構造の場合、ボルトの締め込み力によって、2枚のプレートが摺接する斜面上の摩擦が大きくなる結果、動作不良を生じ易い。
【0058】
この点、本実施形態では、可動プレート63を、プレートの法線方向(すなわち、図8、図9の上下方向)に直線移動させることで、2枚のプレート61、63の相対距離Sを変位させる方式をとっており、可動プレート63の移動に、斜面を利用していない。そのため、2枚のプレート61、63間に、動作不良を生じさせるような摩擦が原理上起きず、上記の動作不良を起こすことがない。
【0059】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12を参照して説明する。実施形態2に適用の位置決め治具U2は、実施形態1に適用の位置決め治具U1に対して、スプリングプランジャ100を追加した点のみ相違し、それ以外の構成は同一である。よって、ここでは、相違点のみを説明し、それ以外の部品については、実施形態1と同一符号を付して説明を省略するものとする。
【0060】
図12に示すように、調整機構60の押さえプレート71には組み付け孔71Bが形成されており、そこには、ボール110を内側に向けてスプリングプランジャ100が横向きに取り付けられている。係るスプリングプランジャ100は、内部にスプリング(図略)を内蔵しており、先端に設けられたボール110に対して、これを突出させる付勢力を常に作用させる構成となっている。
【0061】
実施形態2の位置決め治具U2は、上記したスプリングプランジャ100を、4つの調整機構60に対して各々設けており、これら4つのスプリングプランジャ100が、フランジ25の周方向の4点を中心に向かって押す構成となっている。そのため、フランジ25、35の大きさが異なっていても、小さい側のフランジ25を、スプリングプランジャ100により、大きい側のフランジ35の中心に位置合わせすることが可能となり、2つの配管20、30をより高精度にセンタリングすることが可能となる。
【0062】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
(1)上記実施形態1、2では、位置決め部材50R、50Lの一端を、ヒンジ55により連結したものを例示したが、位置決め部材50R、50Lは、必ずしもヒンジ55で連結する必要はなく、両端とも締付部90を設けるような構成とすることが可能である。
【0064】
(2)上記実施形態1、2では、位置決め部材50R、50Lのアルミ二ウム合金製としたが、鋼材(S45C)などを削り出して製作してもよく、この場合には、当接プレート75の廃止が可能である。
【符号の説明】
【0065】
20、30…配管
25、35…フランジ
25A、35A…外周面
50R、50L…位置決め部材
52R、52L…ガイド部
55…ヒンジ
60…調整機構
61…固定プレート
63…可動プレート
73…螺子軸(本発明の「直線移動軸」に相当)
81…収容部
82…螺子孔
90…締付部
91…嵌合溝
93…締付ピン
U…位置決め治具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ結合される2つの配管をセンタリングする位置決め治具であって、
前記2つの配管のフランジを、間に挟んで向き合う一対の位置決め部材と、
前記一対の位置決め部材の内面壁に設けられたV字型のガイド部と、
前記一対の位置決め部材を両間の距離を縮める方向に締め込む締付部とを備え、
前記2つの配管のフランジを間に挟み込みつつ、前記一対の位置決め部材を前記締付部により締め付けると、前記一対の位置決め部材に形成したV字型をなす2つのガイド部が、前記2つの配管のフランジの外周面を両側から挟み込んで、前記2つの配管をセンタリングすることを特徴とする位置決め治具。
【請求項2】
前記一対の位置決め部材の一端をヒンジにより連結し、他端に前記締付部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の位置決め治具。
【請求項3】
前記一対の位置決め部材には、
前記ガイド部に開口する収容部と、
前記収容部に対して重ねた状態で収容され、かつプレート先端を前記2つの配管のフランジ間に挿入可能とするべく前記開口から水平に突出させた2枚のプレートと、
前記2枚のプレートのいずれかをプレートの法線方向に直線移動させることにより、前記2枚のプレートの相対距離を変位させる直線移動軸と、を含み、前記フランジの面間距離を調整する調整機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の位置決め治具。
【請求項4】
前記調整機構は、前記フランジの外周面に当接する前記ガイド部上の各4つの当接面に対応して、それぞれ個別に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の位置決め治具。
【請求項1】
フランジ結合される2つの配管をセンタリングする位置決め治具であって、
前記2つの配管のフランジを、間に挟んで向き合う一対の位置決め部材と、
前記一対の位置決め部材の内面壁に設けられたV字型のガイド部と、
前記一対の位置決め部材を両間の距離を縮める方向に締め込む締付部とを備え、
前記2つの配管のフランジを間に挟み込みつつ、前記一対の位置決め部材を前記締付部により締め付けると、前記一対の位置決め部材に形成したV字型をなす2つのガイド部が、前記2つの配管のフランジの外周面を両側から挟み込んで、前記2つの配管をセンタリングすることを特徴とする位置決め治具。
【請求項2】
前記一対の位置決め部材の一端をヒンジにより連結し、他端に前記締付部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の位置決め治具。
【請求項3】
前記一対の位置決め部材には、
前記ガイド部に開口する収容部と、
前記収容部に対して重ねた状態で収容され、かつプレート先端を前記2つの配管のフランジ間に挿入可能とするべく前記開口から水平に突出させた2枚のプレートと、
前記2枚のプレートのいずれかをプレートの法線方向に直線移動させることにより、前記2枚のプレートの相対距離を変位させる直線移動軸と、を含み、前記フランジの面間距離を調整する調整機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の位置決め治具。
【請求項4】
前記調整機構は、前記フランジの外周面に当接する前記ガイド部上の各4つの当接面に対応して、それぞれ個別に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の位置決め治具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−99509(P2011−99509A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254321(P2009−254321)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(391019658)株式会社中部プラントサービス (28)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(391019658)株式会社中部プラントサービス (28)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
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