説明

位置決め装置及びこれを用いた走査型プローブ顕微鏡

【課題】複数軸方向へ駆動する位置決め装置において、高速駆動する移動機構を低速駆動する移動機構と組み合わせた際にクロストークによって高速駆動する軸方向の共振周波数が低下することを防止し高速な測定を可能とする走査型プローブ顕微鏡に好適な位置決め装置を提供する。
【解決手段】XY方向の面の略中央に平面略正方形をなし、少なくともその一辺にX軸方向に撓む第1の弾性支持体と前記一辺に直交する少なくとも一辺にY軸方向に撓む第2の弾性支持体を有するXY方向への被駆動部3と、その対向面がXY方向への被駆動部3の対向面に平行に相対向するようにXY方向へのステージ部1を支持する支持部9を有し、少なくとも前記XY方向への被駆動部3に対応する面と、これに相対向する支持部9の対向面の間が所定の厚さの間隙を有し、前記間隙に粘性剤10が注入されている位置決め装置M1を用いた走査型プローブ顕微鏡とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動素子を用いて被対象物を第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向及びこれら第1の方向と第2の方向に対して直交する第3の方向に移動させることにより前記被対象物の位置決めを行う位置決め装置、及びこれを用いた走査型プローブ顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡とは、自由端に先鋭化した探針を有するカンチレバーと、カンチレバーと被測定物(以下、サンプルと称する。)の相対位置を微小移動させる移動機構を備えており、探針先端とサンプルとの間に働く相互作用によるカンチレバーの自由端の変位を検出しながら、探針をサンプル表面に沿って、第1の方向(以下、X軸方向と称する。)及びこれに直交する第2の方向(以下、Y軸方向と称する。)を含む面方向、すなわちサンプル表面に水平な面方向(以下、XY方向と称する。)に走査し、サンプルの表面形状や物性などの情報を3次元的に測定する装置である。走査型プローブ顕微鏡によってサンプルの表面形状を測定する際には、XY方向に走査しながらカンチレバーのたわみ量からサンプルと探針の間隔を測定し、サンプルと探針の間隔が一定になるようにXY方向と直交する方向、すなわちサンプル表面に垂直な方向(以下、Z軸方向と称する。)に動かすことで、Z軸方向の移動量からサンプルの表面形状を測定する(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
前記の走査型プローブ顕微鏡の移動機構として主に圧電素子を使用した位置決め装置が用いられるが、前述のようにサンプルと探針の相対位置を移動して表面形状に追従させて測定するため、走査型プローブ顕微鏡で用いる位置決め装置はXY方向へはサンプル面に沿って所定の速度で走査するだけでよいが、Z軸方向へはサンプル表面の微細な凹凸に追従しなければならないため、サンプル表面の傾斜によってXY方向よりも高速な応答性が求められる。
【0004】
しかしながら、複数軸方向へ駆動する位置決め装置の応答性は、前記位置決め装置を構成する高速で駆動したい軸方向への機構のみではなく低速で駆動する軸方向への機構を含めた位置決め装置全体の共振周波数によって決定される。そのため、複数軸を組み合わせた位置決め装置の場合、特定方向のみに高速に駆動するということができなくなる。
【0005】
そのため、従来の走査型プローブ顕微鏡では、Z軸方向への応答性を向上させるためにXY方向とZ軸方向の2つの移動機構をサンプル側とカンチレバー側に分離する方法(特許文献1を参照。)や、高速駆動する移動機構にその反作用を打ち消すように駆動素子を取り付けるカウンターバランス方式(特許文献2を参照。)が使われている。しかし、前者の例ではサンプルをXY方向に駆動した際にサンプルの位置ずれが生じる場合があることや、質量の大きなサンプルでは質量の1/2乗に反比例して共振周波数が低下するため高速にXY方向に駆動させることができないといった問題がある。また、後者の例ではカウンターバランスとなる駆動素子をもう一つ追加することとなるため、その駆動素子を駆動するために合計で2倍の電流が必要となり、2つの電源または2倍の容量を持つ電源が必要になるという問題がある。
【非特許文献1】特許庁ホームページ HOME>資料室(その他参考情報)>標準技術集>表面構造の原子領域分析(技術内容、図1、図2)
【特許文献1】特開平10−339735号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2001−330425号公報(第4−5頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数軸方向へ駆動する位置決め装置において、高速駆動する移動機構を低速駆動する移動機構と組み合わせた際にクロストークによって高速駆動する軸方向の共振周波数が低下することを防止し、全体における制御可能な周波数帯域を向上することにより高速駆動する軸方向の応答性を向上し、高速な測定を可能とする走査型プローブ顕微鏡に好適な位置決め装置及びこれを用いた走査型プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、第1の方向(以下、X軸方向と称する)と該X軸方向に直交する第2の方向(以下、Y軸方向と称する)を含む面の略中央に平面略正方形をなし、少なくともその一辺に前記X軸方向に撓む第1の弾性支持体と前記少なくとも一辺に直交する少なくとも一辺に前記Y軸方向に撓む第2の弾性支持体を有する第1,2の方向(以下、XY方向と称する)への被駆動部を有し、略板状をなすXY方向へのステージ部と、前記X軸方向に伸縮し、その一端が前記第1の弾性支持体を押圧する第1の駆動素子(以下、X軸方向の駆動素子と称する)と、前記Y軸方向に伸縮し、その一端が前記第2の弾性支持体を押圧する第2の駆動素子(以下、Y軸方向の駆動素子と称する)と、前記XY方向への被駆動部の第1の面側にその一端が配され、前記X軸方向及びY軸方向と直交する第3の方向(以下、Z軸方向と称する)に伸縮する第3の駆動素子(以下、Z軸方向の駆動素子と称する)と、前記XY方向へのステージ部の前記Z軸方向の駆動素子が配される前記第1の面と相対向する第2の面側を、その対向面が前記第2の面に平行に相対向するように前記XY方向へのステージ部を支持する支持部よりなり、前記Z軸方向の駆動素子の前記XY方向への被駆動部と反対側の端部側に被対象物(以下、サンプルと称する)を載置し、前記X軸方向,Y軸方向,Z軸方向の駆動素子をそれぞれの方向に伸縮させることにより、前記サンプルを前記X軸方向,Y軸方向,Z軸方向に移動させることにより前記サンプルの位置決めを行う位置決め装置において、
前記XY方向へのステージ部の前記第2の面の少なくとも前記XY方向への被駆動部に対応する面と、これに相対向する前記支持部の対向面の間が所定の厚さの間隙を有し、前記間隙に粘性剤が注入されていることを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記XY方向への被駆動部に第1,2の弾性支持体を介して固定部が配されてなり、これらXY方向への被駆動部と固定部と第1の弾性支持体及び第2の弾性支持体は、単一の金属ブロックなどから作製される一体構造をなし、それぞれのZ軸方向の上面と下面はつぎ目の無い平面であることが好ましい。このような一体成形は、放電加工等にて達成できる。
【0009】
また、前記Z軸方向の駆動素子はXY方向への被駆動部の第1の面上に接着固定され、Z軸方向の駆動素子はXY方向への被駆動部の支持部への対向面の外周縁からZ軸方向への垂線に囲まれた内側に固定されるものとし、Z軸方向の駆動素子の重心が、XY方向への被駆動部の重心のZ軸方向の直上に位置することが望ましい。
【0010】
さらに、本願の第2の発明は、前記位置決め装置において、前記間隙の厚さが5〜50μmとなされていることを特徴とするものである。より好ましくは、10〜30μmである。
【0011】
前記間隙が50μmよりも厚いとXY方向へのステージ部と支持部との間隔が離れすぎて、粘性剤が流動してしまい、Z軸方向に駆動したときにXY方向への被駆動部がZ軸方向に振動し、XY方向への被駆動部のZ軸方向への振幅が増大するため、好ましくない。また、前記間隙の厚さが5μmよりも小さいと粘性剤の注入が困難となるめ好ましくない。
【0012】
さらに本願の第3の発明は、先述の位置決め装置において、前記XY方向へのステージ部のXY方向への被駆動部以外及び第1,2の弾性支持体以外の部分に対応する第2の面と前記支持部の対向面の間にスペーサーが配され、前記スペーサーの厚さが50μm以下であり、且つ前記粘性剤に含まれる微粒子の直径をrとしたときに、r+(Rzb+Rzh)÷2よりも大きいことを特徴とするものである。
【0013】
ここで、Rzhは前記XY方向への被駆動部の前記第2の面の凹凸の最大高さ及びRzbはその対向面となる前記支持部の凹凸の最大高さであり、いずれも表面粗さを表す。これらは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から最も高い山頂までの高さYpと最も低い谷底までの深さYvとの和により示されるものである。なお、本発明においては、前記基準長さlを本発明の位置決め装置のX軸方向およびY軸方向への最大変位量と規定することとする。
【0014】
前記スペーサーの厚さは前記間隙の厚さを50μm以下とするために50μm以下とし、また実験の結果、前記スペーサーの厚さが50μmよりも厚いとXY方向への被駆動部と支持部の間の間隙が広くなり、その間隙に充填された粘性剤が容易にXY方向に流れてしまうため、スペーサーの厚さは50μm以下であるとする。さらにXY方向への被駆動部と支持部の間隔が粘性剤に含まれる微粒子の直径よりも狭くなる部分が生じないために、スペーサーの厚さの下限を上述のような関係式により規定している。
【0015】
さらに本願の第4の発明は、上述の位置決め装置において、前記XY方向への被駆動部の前記Z軸方向の駆動素子が配される前記第1の面側に凹部を設け、前記凹部内に前記Z軸方向の駆動素子が配されてなり、前記XY方向への被駆動部と前記Z軸方向の駆動素子と前記サンプルの全体の重心が、前記X軸方向の駆動素子及びY軸方向の駆動素子のZ軸方向において相対向する上面と下面の間に入るように調整されていることを特徴とするものである。
【0016】
さらにまた、本願の第5の発明は、上述の位置決め装置において、前記粘性剤がグリースであること、第6の発明は、前記粘性剤が潤滑油であること、第7の発明は、前記粘性剤がゲル状物質であることを特徴とするものである。なお、前記グリースまたは粘性剤としては、含まれる微粒子の直径が5μm以下であり、間隙から流れ出さない程度の粘度を有し、稠度が300(1/10mm)以下であるものが好ましい。また、前記ゲル状物質としては、シリコーンゲルが挙げられる。ただし、ゲルの場合は、高粘度であるため、駆動時の抵抗が大きくなるために留意が必要となる。
【0017】
さらにまた、本願の第8の発明は、前記位置決め装置において、間隙の厚さは5〜50μmであることが好ましいことから、前記位置決め装置の前記第2の面と前記支持部の対向面の間に前記グリースまたは粘性剤に含まれる微粒子が挟まれることを防止するために、XY方向への被駆動部の前記第2の面の表面粗さを表す最大高さをRzhとし、前記支持部の対向面の表面粗さを示す最大高さをRzbとしたときに、Rzhは10μm以下であり、Rzbは10μm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本願の第9の発明は、サンプルに近接又は接触させるプローブと、前記サンプルをX軸方向と前記X軸方向に直交するY軸方向及びこれらX軸方向とY軸方向に対して直交するZ軸方向に移動させることにより前記サンプルの位置決めを行う位置決め装置よりなる走査型プローブ顕微鏡において、前記位置決め装置として、上述した位置決め装置のうちいずれかを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る位置決め装置においては、XY方向への被駆動部の支持部への平滑な対向面である第2の面と、前記支持部の平滑な対向面を、所定の厚さの間隙をあけて相対向させ、前記間隙に粘性剤を注入して支持部上にXY方向への被駆動部を固定し、前記XY方向への被駆動部の前記支持部への対向面と相対向する第1の面側に高速駆動するZ軸方向への駆動素子を配している。
【0020】
本発明の位置決め装置においては、このような構造を有することから、前記XY方向への被駆動部が粘性剤の粘性により支持部に対して密着するように固定されることとなり、位置決め装置のXY方向への被駆動部が支持部に密着せず、浮いているような状態と比較して、Z軸方向の駆動素子を駆動したときに、XY方向への被駆動部に加わる力によって前記XY方向への被駆動部がZ軸方向に振動する振幅が減少する。
【0021】
本発明の位置決め装置においては、このような構造を有することから、前記XY方向への被駆動部が粘性剤の粘性により支持部に対して密着するように固定されることとなり、前記XY方向への被駆動部のZ軸方向への剛性が高くなり、Z軸方向の振動モードの共振周波数が向上する。すなわち、Z軸方向への振動の共振周波数が高くなり、Z軸方向の駆動がより高速化する。通常、このような形状の位置決め装置の外形はXY方向の長さがZ軸方向の長さよりも長いため、1次モードの共振はZ軸方向への振動モードとなることが多いが、そのZ軸方向への振動の共振周波数が向上するため、位置決め装置全体の制御帯域を制限する1次モードの共振周波数が向上することとなる。
【0022】
さらに、本発明の位置決め装置においては、間隙に薄く充填された粘性剤を介してXY方向への被駆動部が支持部に密着することとなるため、粘性剤の粘性によりXY方向への被駆動部がZ軸方向に浮き上がることが無くなり、XY方向への被駆動部の振動方向がXY平面に拘束されることになる。そのため低い共振周波数の振動モードにZ軸方向への動きが含まれなくなり、Z軸方向の制御帯域がXY方向の低い共振周波数によって制限されることが無くなる。
【0023】
従って、本発明の位置決め装置においては、Z軸方向の駆動素子が配されるXY方向への被駆動部のZ軸方向への振動の振幅が減少する上、Z軸方向への振動の共振周波数が高くなり、Z軸方向の駆動がより高速化し、位置決め装置全体の制御帯域を制限するZ軸方向への振動の共振周波数が向上し、且つ低い共振周波数の振動モードにZ軸方向への動きが含まれなくなり、Z軸方向の制御帯域がXY方向の低い共振周波数によって制限されることが無くなることから、位置決め装置全体における制御可能な周波数帯域が向上し、高速駆動するZ軸方向の応答性が向上する。
【0024】
このような本発明の位置決め装置を用いた走査型プローブ顕微鏡においては、サンプルを複数軸方向に移動させて、例えばサンプルの表面形状を測定する場合に、微小な凹凸を有するサンプル表面を追従し、最も高速な応答性が求められるZ軸方向の応答性が高速化され、Z軸方向の制御帯域を拡大することができ、高速な測定が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る位置決め装置においては、前記XY方向への被駆動部の前記Z軸方向の駆動素子が配される前記第1の面側に凹部を設け、前記凹部内に前記Z軸方向の駆動素子が配されてなり、前記XY方向への被駆動部と前記Z軸方向の駆動素子とこのZ軸方向の上側に配されるサンプルの全体の重心が、X軸方向の駆動素子及びY軸方向の駆動素子のZ軸方向において相対向する上面と下面の間に入るように調整されている。
【0026】
本発明の位置決め装置においては、このような構造を有することから、XY方向へ駆動した際にXY方向への被駆動部がZ軸方向に捩れるように動くことを防止でき、XY方向への動作によって生じるZ軸方向へのクロストークを防止することができ、低い共振周波数の振動モードにZ軸方向への動きの混入が更に抑えられ、Z軸方向の制御帯域がXY方向の低い共振周波数によって制限されることが無くなる。
【0027】
また、本発明の位置決め装置においては、このような構造を有することから、XY方向へ駆動した際にZ軸方向の駆動素子7がXY方向に倒れる方向の振動が生じることを防止することができ、Z軸方向の振動へのXY方向のクロストークの混入を防止することができ、Z軸方向の応答性の精度を更に向上することができる。
【0028】
このような本発明の位置決め装置を用いた本発明の走査型プローブ顕微鏡においては、サンプルを複数軸方向に移動させて、例えばサンプルの表面形状を測定する場合に、微小な凹凸を有するサンプル表面を追従し、最も高速な応答性が求められるZ軸方向の応答性が高速化され、Z軸方向の制御帯域を拡大することができ、高速な測定が可能となる。
【0029】
なお、本発明の位置決め装置においては、前記XY方向への被駆動部がZ軸方向に振動すると、粘性剤が支持部とXY方向への被駆動部の間隙から押し出されることとなるが、粘性剤は50μm以下の薄さで配されており、粘性剤の粘性抵抗による摩擦が大きく、押し出される量が非常に少なく、粘性剤を損失しにくいことからXY方向への被駆動部がZ軸方向に振動する振幅を長期間に渡って抑えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
【実施例1】
【0031】
以下、本発明に係る位置決め装置及びこれを用いた走査型プローブ顕微鏡の第1の実施例について図1〜図5を用いて説明する。
【0032】
本実施例の走査型プローブ顕微鏡は図1に示すように、主に、被対象物であるサンプル13に近接又は接触するプローブPとサンプル13をX,Y,Z軸方向(図1中にはX,Z軸方向のみを示すが、Y軸方向は紙面と直交する方向である。)に移動させることによりサンプル13の位置決めを行う位置決め装置M1により構成される。
【0033】
プローブPは図示するように自由端に先鋭化した探針25を有するカンチレバー14とカンチレバー14に振動を与えるカンチレバー加振部15、カンチレバー加振部15を駆動させるための加振電源16により構成される。
【0034】
一方、位置決め装置M1は図1〜5に示すように、X軸方向とY軸方向を含む面の略中央に平面略正方形をなし、相対向する2辺にX軸方向に撓む第1の弾性支持体40a,40bと相対向する2辺にY軸方向に撓む第2の弾性支持体41a,41bを有するXY方向への被駆動部3を有し、前記XY方向への被駆動部3の周辺に第1,2の弾性支持体40a,40b,41a,41bを介して配される固定部2を有し、略板状をなすXY方向へのステージ部1と、X軸方向に伸縮し、その一端が前記第1の弾性支持体40a,40bを押圧するX軸方向の駆動素子5と、Y軸方向に伸縮し、その一端が前記第2の弾性支持体41a,41bを押圧するY軸方向の駆動素子6と、XY方向への被駆動部3の第1の面3a側にその一端が配され、Z軸方向に伸縮するZ軸方向の駆動素子7と、XY方向へのステージ部1のZ軸方向の駆動素子7が配される第1の面1aと相対向する第2の面1b側を、その対向面9aが前記第2の面1bに平行に相対向するようにXY方向へのステージ部1を支持する支持部9よりなる。
【0035】
このとき、前記第1の弾性支持体40a,40b及び前記第2の弾性支持体41a,41bは、X軸方向の駆動素子5及びY軸方向の駆動素子6の駆動により、XY方向への被駆動部3にX軸方向又はY軸方向に力が加わった時に各軸が独立して変位し、その駆動方向をXY方向に拘束すると共にXY方向のクロストークを防止する機能を有している。
【0036】
また、XY方向への被駆動部3と固定部2と第1の弾性支持体40a,40b及び第2の弾性支持体41a,41bは、単一の金属ブロックなどから放電加工により作製される一体構造をなし、それぞれのZ軸方向の上面と下面はつなぎ目の無い同一の平面であることが好ましい。これは、固定部2とXY方向への被駆動部3の間に機械的摩擦が存在するとナノメートルレベルでの反復駆動が不可能となるため、固定部2とXY方向への被駆動部3の間に摩擦面が存在しないようにするためである。
【0037】
なお、XY方向へのステージ部1の固定部2には、第1の弾性支持体40a及び第2の弾性支持体41aに隣接するように貫通孔が設けられ、この各貫通孔内にそれぞれX軸方向の駆動素子5及びY軸方向の駆動素子6が配設されている。これらX,Y,Z方向の駆動素子5,6,7としては、電圧を印加することにより伸長する複数の圧電素子を積層したピエゾ素子等の積層型圧電素子を用いることが望ましい。
【0038】
また、前記Z軸方向の駆動素子7はXY方向への被駆動部3の第1の面3a上に接着固定され、Z軸駆動素子7はXY方向への被駆動部3の支持部9への対向面の外周縁からZ軸方向への垂線に囲まれた内側に固定されるものとし、Z軸方向の駆動素子7の重心が、XY方向への被駆動部3の重心のZ軸方向の直上に位置することが望ましい。このような構成とすることで、XY方向への被駆動部3がXY方向に駆動した場合にZ軸方向の駆動素子7のXY方向への振動が混入することが抑えられ、より精度の高い制御が可能となる。
【0039】
そして、サンプル13はZ軸方向への駆動素子7の上に載置され、その直上にカンチレバー14の自由端に配される探針25がサンプル13に近接又は接触させるように配されている。カンチレバー14にはレーザー光照射部17からレーザー光が照射され、カンチレバー14から反射されたレーザー光はフォトディテクタ18に入射し、この入射位置からカンチレバー14の変位量がカンチレバー変位検出部19で検出される。このような変位量の検出方法は光テコ方式と呼ばれる。カンチレバー変位検出部19で検出されたカンチレバー14の変位量に基づき制御部20でZ軸方向の駆動素子7の制御信号がZ駆動電源22に出力されZ軸方向への駆動素子7が駆動される。また、XY方向についても制御部20から制御信号がXY駆動電源21に出力されX軸方向の駆動素子5及びY軸方向の駆動素子6が駆動される。
【0040】
このように本実施例の位置決め装置M1においては、X方向の駆動素子5を駆動させて、第1の弾性支持体40a,40bを押圧し、これら第1の弾性支持体40a,40bをX軸方向に撓ませると共に、Y軸方向の駆動素子6を駆動させて、第2の弾性支持体41a,41bを押圧し、これら第2の弾性支持体41a,41bをY軸方向に撓ませることにより、各軸を独立して変位させてXY方向への被駆動部3の位置を変化させてXY方向への被駆動部3上に配されるZ軸方向の駆動素子7上に載置されたサンプル13をXY方向に移動させる。また、サンプル13はZ軸方向の駆動素子7上に配されていることからZ軸方向の駆動素子7の伸縮によりZ軸方向において移動する。従って、このような構成により、サンプル13をX,Y,Z軸方向に移動させてサンプル13の位置決めを行う。
【0041】
ここで、X軸方向の駆動素子5とY軸方向の駆動素子6は、図1〜3に示すようにそれぞれその一端が第1の弾性支持体40a,第2の弾性支持体41aに接し、他端が固定部2に接するようにして固定されることとなるが、これらX軸方向の駆動素子5とY軸方向の駆動素子6は、特に図3に示すようにXY方向へのステージ部1の第2の面1bよりも高くなるように固定されており、支持部9へ接触しないようになされ、その駆動が妨げられないようになされている。
【0042】
そして本実施例の位置決め装置M1においては、XY方向へのステージ部1の第2の面1bの少なくともXY方向への被駆動部3に対応する面と、これに相対向する支持部9の対向面9aの間が所定の厚さの間隙を有し、前記間隙に粘性剤10が注入されている。
【0043】
さらに、前記間隙の厚さは、5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0044】
実験の結果、前記間隙が5μmより小さいと粘性剤の注入が非常に困難となり本発明の効果が得られにくくなること、また、前記間隙が50μmよりも大きいとXY方向へのステージ部1と支持部9との間隔が離れすぎて、粘性剤10が流動してしまい、Z軸方向に駆動したときにXY方向への被駆動部3がZ軸方向に振動し、XY方向への被駆動部3のZ軸方向への振幅が増大するためである。
【0045】
さらにまた、本実施例の位置決め装置M1においては、図3及び図5に示すように前記XY方向へのステージ部1のXY方向への被駆動部3以外及び上述の貫通孔以外の部分、すなわち固定部2に対応する第2の面1bと前記支持部9の対向面9aの間にスペーサー8が配され、前記スペーサー8の厚さが50μm以下であり、且つ前記粘性剤10に含まれる微粒子の直径をrとしたときに、r+(Rzb+Rzh)÷2よりも大きくなるようになされている。
【0046】
前記最大高さRzh及び最大高さRzbは、表面粗さを示すものであり、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から最も高い山頂までの高さYpと最も低い谷底までの深さYvとの和により示されるものである。なお、本発明においては、前記基準長さlを本発明の位置決め装置のX軸方向およびY軸方向への最大変位量と規定することとする。
【0047】
なお、粘性剤10として多用されるグリース等に含まれる微粒子の直径は5μm程度であることから、XY方向へのステージ部1の第2の面1bの表面粗さを表す最大高さRzhおよび支持部9のXY方向へのステージ部1を固定する対向面9aの表面粗さを表すRzbは、表面の凹凸の山となる部分が微粒子の直径よりも低くなり、谷となる部分が微粒子の直径よりも浅くなるために10μm以下であることが目安となる。
【0048】
前記スペーサー8の厚さは、実験の結果、50μmよりも厚いとXY方向への被駆動部3と支持部9の間の間隙が広くなり、その間隙に充填された粘性剤10が容易にXY方向に流れてしまい、Z軸方向の駆動素子7を駆動したときにXY方向への被駆動部3が振動してしまうためである。さらにXY方向への被駆動部3と支持部9の間隔が粘性剤10に含まれる微粒子の直径よりも狭くなる部分が生じないために、スペーサー8の厚さの下限を上述のような関係式により規定している。
【0049】
実験の結果、前記間隙の厚さは5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmがより好ましく、汎用的なグリースに含まれる微粒子の直径が5μm程度であることから、上式より前記最大高さRzh及び最大高さRzbが10μm以下であることが好ましい。
【0050】
また、XY方向へのステージ部1は、間にスペーサー8を挟む形で支持部9上にネジ止め固定されている。
【0051】
XY方向へのステージ部1および支持部9の材質は、この位置決め装置M1によって駆動されることが想定される最大質量のサンプル13を、Z軸方向にこの位置決め装置M1で使用される最大加速度で駆動したときに、発生する応力によってこの位置決め装置M1のZ軸方向の分解能以上に変位しない程度の高いヤング率を有していることが必要である。また、支持部9の質量は同様の条件で駆動したときに、この位置決め装置のZ軸方向の分解能以上にZ軸方向に動かない程度に重いことが必要である。
【0052】
なお、本実施例の位置決め装置M1に用いられる粘性剤10としては、グリースや潤滑油が挙げられ、これらに含まれる微粒子の直径が5μm以下であり、間隙から流れ出さない程度の粘度を有し、稠度が300(1/10mm)以下であるものが好ましく用いられる。
【0053】
また、本実施例の走査型プローブ顕微鏡においては、カンチレバー変位検出部19より得られた測定データが制御部20に送られ、イメージデータ生成部23に送られてイメージ化され、これが表示部24に表示されることは言うまでもない。
【0054】
さらにまた、走査型プローブ顕微鏡の構造としては、本実施例のようにサンプル13をX,Y,Z軸方向に駆動する構造ではなく、カンチレバー14を本実施例の位置決め装置によりX,Y,Z軸方向に駆動する構造としても良い。また、カンチレバー14の変位量を検出する方法についても、上述した光テコ方式に限らず、歪ゲージを蒸着したカンチレバーを用いてカンチレバーの変位を検出する方式でも良く、さらにカンチレバーを使用せずトンネル電流を使用する走査型トンネル顕微鏡としても良い。
【0055】
なお、カンチレバー14を本実施例の位置決め装置によりX,Y,Z軸方向に駆動する構造とした場合においては、従来のようにサンプル13の質量の1/2乗に反比例する共振周波数が低下することもなく、共振周波数の制限を受けなくなる。
【0056】
また、本実施例の位置決め装置M1においては、Z軸方向の駆動素子7の一端側のみが伸縮するため、従来のように駆動素子を駆動する電流を2倍にする必要も無く、電流量が小さくてすむので電源を比較的小さいものと出来、コスト低減が達成される。
【0057】
従って、本実施例で述べた位置決め装置及びこれを用いた本実施例の走査型プローブ顕微鏡においては、以下のような効果が生じる。
【0058】
1.XY方向への被駆動部3にZ軸方向の駆動素子が載せられた構成の位置決め装置においては、Z軸方向に駆動した際にXY方向への被駆動部3に加わる力によりXY方向への被駆動部3がZ軸方向に振動する問題があるが、本実施例の位置決め装置M1においては、XY方向への被駆動部3を第1,2の弾性支持体40a,40b,41a,41bだけではなく粘性剤10を介して支持部9へZ軸方向に対して支える構造としているため、前記XY方向への被駆動部3が粘性剤10の粘性により支持部9に対して密着するように固定されることから、位置決め装置のXY方向への被駆動部3が支持部9に密着せず、浮いているような状態と比較して、Z軸方向の駆動素子7を駆動したときに、XY方向への被駆動部3に加わる力によって前記XY方向への被駆動部3がZ軸方向に振動する振幅が減少する。
【0059】
2.また、本実施例の位置決め装置M1においては、XY方向への被駆動部3を第1,2の弾性支持体40a,40b,41a,41bだけではなく粘性剤10を介して支持部9へZ軸方向に対して支える構造としているため、前記XY方向への被駆動部3が粘性剤10の粘性により支持部9に対して密着するように固定されることから、前記XY方向への被駆動部3のZ軸方向への剛性が高くなり、Z軸方向の振動モードの共振周波数が向上する。すなわち、Z軸方向への共振周波数が高くなり、Z軸方向の駆動がより高速化する。通常、このような形状の位置決め装置の外形はXY方向の長さがZ軸方向の長さよりも長いため、1次モードの共振はZ軸方向への振動モードとなることが多いが、そのZ軸方向への振動の共振周波数が向上するため、位置決め装置M1全体の制御帯域を制限する1次モードの共振周波数が向上することとなる。
【0060】
3.従来のXY方向への被駆動部3にZ軸方向の駆動素子が載せられた構成の位置決め装置では、低次の振動モードの方向がXYZ軸方向の合成方向であったり、Z軸方向を軸とした回転方向であったりすることがあった。このような回転方向であった場合、凹凸のあるサンプル面と完全に平行ということはないため、これらの低次の振動モードが存在することにより高速で駆動したいZ軸方向の制御帯域が制限されることがあった。しかし、本実施例の位置決め装置M1においては、薄く充填された粘性剤10を介してXY方向への被駆動部3が支持部9に密着しており、粘性剤10の粘性によりXY方向への被駆動部3がZ軸方向に浮き上がることが無くなり、XY方向への被駆動部3の振動方向がXY平面に拘束されることになる。そのため低い共振周波数の振動モードにZ軸方向への動きが含まれなくなり、Z軸方向の制御帯域がXY方向の低い共振周波数によって制限されることが無くなる。
【0061】
従って、本実施例の位置決め装置M1においては、Z軸方向の駆動素子7が配されるXY方向への被駆動部3のZ軸方向への振動の振幅が減少する上、Z軸方向への振動の共振周波数が高くなり、Z軸方向の駆動がより高速化し、位置決め装置M1全体の制御帯域を制限するZ軸方向への振動の共振周波数が向上し、且つ低い共振周波数の振動モードにZ軸方向への動きが含まれなくなり、Z軸方向の制御帯域がXY方向の低い共振周波数によって制限されることが無くなることから、位置決め装置M1全体における制御可能な周波数帯域が向上し、高速駆動するZ軸方向の応答性が向上する。
【0062】
このような本実施例の位置決め装置M1を用いた本実施例の走査型プローブ顕微鏡においては、サンプル13を複数軸方向に移動させて、例えばサンプル13の表面形状を測定する場合に、微小な凹凸を有するサンプル13表面を追従し、最も高速な応答性が求められるZ軸方向の応答性が高速化され、Z軸方向の制御帯域を拡大することができ、高速な測定が可能となる。
【0063】
なお、本実施例の位置決め装置M1においては、前記XY方向への被駆動部3がZ軸方向に振動すると、粘性剤10が支持部9とXY方向への被駆動部3の間隙から押し出されることとなるが、粘性剤10は50μm以下の薄さで配されており、粘性剤10の粘性抵抗による摩擦が大きく、押し出される量が非常に少なく、粘性剤10を損失しにくいことからXY方向への被駆動部3がZ軸方向に振動する振幅を長期間に渡って抑えることが可能である。
【実施例2】
【0064】
以下、本発明の第2の実施例について図1、図6及び図7を用いて説明する。本実施例の走査型プローブ顕微鏡は実施例1の走査型プローブ顕微鏡と略同一な構成を有するものである。
【0065】
本実施例の走査型プローブ顕微鏡は図1に示すように、主に、被対象物であるサンプル13に近接又は接触するプローブPと、サンプル13をX,Y,Z軸方向に移動させることによりサンプル13の位置決めを行う位置決め装置M1の代わりに図6及び図7に示す位置決め装置M2により構成される。
【0066】
プローブPの構成及び位置決め装置M2の駆動機構、測定結果の表示機構は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0067】
位置決め装置M2は図6及び図7(図6は位置決め装置M2の平面図を示し、図6中にはX,Y軸方向のみを示すが、Z軸方向は紙面と直交する方向である。図7は位置決め装置M2のB−B断面図を示し、図7中にはX,Z軸方向のみを示すが、Y軸方向は紙面と直交する方向である。)に示されるように実施例1の位置決め装置M1と略同様の構成を有するものであり、同一の部材には実施例1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
本実施例の位置決め装置M2においては、XY方向への被駆動部3のZ軸方向の駆動素子7が配される第1の面1a側に凹部26を設け、前記凹部26内に前記Z軸方向の駆動素子7が配されてなり、前記XY方向への被駆動部3と前記Z軸方向の駆動素子7とサンプル(図示は省略する)の全体の重心が、X軸方向の駆動素子5及びY軸方向の駆動素子6のZ軸方向において相対向する上面と下面の間に入るように調整されている。
【0069】
また、本実施例においては、凹部26内に配されるZ軸方向の駆動素子7を第1の面1a側に板バネ11で上から押さえつけてZ軸方向への駆動素子7を凹部26内に固定するようにしている。なお、Z軸方向の駆動素子7のZ軸方向の上面が板バネ11のZ軸方向の上面よりも低い位置になるため、サンプルを載置する載置台12をZ軸方向の駆動素子7の上面に接着固定している。
【0070】
従って、本実施例で述べた位置決め装置及びこれを用いた本実施例の走査型プローブ顕微鏡においては、以下のような効果が生じる。
【0071】
1.本実施例の位置決め装置M2においては、XY方向への被駆動部3とZ軸方向の駆動素子7とサンプルの全体の重心が、X軸方向の駆動素子5及びY軸方向の駆動素子6のZ軸方向において相対向する上面と下面の間に入るように調整されていることから、XY方向へ駆動した際にXY方向への被駆動部3がZ軸方向に捩れるように動くことを防止でき、XY方向への動作によって生じるZ軸方向へのクロストークを防止することができ、低い共振周波数の振動モードにZ軸方向への動きの混入が更に抑えられ、Z軸方向の制御帯域がXY方向の低い共振周波数によって制限されることが無くなる。
【0072】
2.本実施例の位置決め装置M2においては、XY方向への被駆動部3とZ軸方向の駆動素子7とサンプルの全体の重心が、X軸方向の駆動素子5及びY軸方向の駆動素子6のZ軸方向において相対向する上面と下面の間に入るように調整されていることから、XY方向へ駆動した際にZ軸方向の駆動素子7がXY方向に倒れる方向の振動が生じることを防止することができ、Z軸方向の振動へのXY方向のクロストークの混入を防止することができ、Z軸方向の応答性の精度を更に向上することができる。
【0073】
このような本実施例の位置決め装置M2を用いた本実施例の走査型プローブ顕微鏡においては、サンプル13を複数軸方向に移動させて、例えばサンプル13の表面形状を測定する場合に、微小な凹凸を有するサンプル13表面を追従し、最も高速な応答性が求められるZ軸方向の応答性が更に高速化され、Z軸方向の制御帯域を更に拡大することができ、更に高速な測定が可能となる。
【0074】
本実施例の位置決め装置M2及びこれを用いた走査型プローブ顕微鏡においても、実施例1で示した位置決め装置M1及びこれを用いた走査型プローブ顕微鏡により得られた効果が得られることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に関わる位置決め装置を使用した走査型プローブ顕微鏡の概略図である。
【図2】本発明に係る第1の実施例における位置決め装置M1を示す平面図である。なお図2中にはX,Y軸方向のみを示すが、Z軸方向は紙面と直交する方向である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図、即ち位置決め装置M1のA−A断面図である。なお、図3中にはX,Z軸方向のみを示すが、Y軸方向は紙面と直交する方向である。
【図4】本発明に係る第1の実施例における位置決め装置M1を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る第1の実施例における位置決め装置M1に使用されるスペーサーの形状を示す平面図である。
【図6】本発明に係る第2の実施例における位置決め装置を示す平面図である。
【図7】図6のB−B線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 XY方向へのステージ部
2 固定部
3 XY方向への被駆動部
5 X軸方向の駆動素子
6 Y軸方向の駆動素子
7 Z軸方向の駆動素子
8 スペーサー
9 支持部
10 粘性剤
11 板バネ
12 載置台
13 サンプル
14 カンチレバー
15 カンチレバー加振部
16 加振電源
17 レーザー光照射部
18 フォトディテクタ
19 カンチレバー変位検出部
20 制御部
21 XY駆動電源
22 Z駆動電源
23 イメージデータ生成部
24 表示部
25 探針
26 凹部
40a,40b 第1の弾性支持体
41a,41b 第2の弾性支持体
M1,M2 位置決め装置
P プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と該第1の方向に直交する第2の方向を含む面の略中央に平面略正方形をなし、少なくともその一辺に前記第1の方向に撓む第1の弾性支持体と前記少なくとも一辺に直交する少なくとも一辺に前記第2の方向に撓む第2の弾性支持体を有する第1,2の方向への被駆動部を有し、略板状をなす第1,第2の方向のステージ部と、
前記第1の方向に伸縮し、その一端が前記第1の弾性支持体を押圧する第1の駆動素子と、
前記第2の方向に伸縮し、その一端が前記第2の弾性支持体を押圧する第2の駆動素子と、
前記第1,第2の方向の被駆動部の第1の面側にその一端が配され、前記第1及び第2の方向と直交する第3の方向に伸縮する第3の駆動素子と、
前記第1,第2の方向のステージ部の前記第3の駆動素子が配される前記第1の面と相対向する第2の面側を、その対向面が前記第2の面に平行に相対向するように前記第1,第2の方向のステージ部を支持する支持部よりなり、
前記第3の駆動素子の前記第1,第2の方向の被駆動部と反対側の端部側に被対象物を載置し、前記第1,2,3の駆動素子をそれぞれの方向に伸縮させることにより、前記被対象物を前記第1,2,3の方向に移動させて、前記被対象物の位置決めを行う位置決め装置において、
前記第1,第2の方向のステージ部の前記第2の面の少なくとも前記第1,第2の方向の被駆動部に対応する面と、これに相対向する前記支持部の対向面の間が所定の厚さの間隙を有し、前記間隙に粘性剤が注入されていることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記間隙の厚さが、5〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記第1,第2の方向のステージ部の第1,2の方向の被駆動部以外及び第1,2の弾性支持体以外の部分に対応する第2の面と前記支持部の対向面の間にスペーサーが配され、前記スペーサーの厚さが50μm以下であり、且つ前記粘性剤に含まれる微粒子の直径をrとしたときに、r+(Rzb+Rzh)÷2よりも大きいことを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記第1,2の方向への被駆動部の前記第3の駆動素子が配される前記第1の面側に凹部を設け、前記凹部内に前記第3の駆動素子が配されてなり、前記第1,2の方向への被駆動部と前記第3の駆動素子と前記被対象物の全体の重心が、前記第1の駆動素子及び第2の駆動素子の第3の方向において相対向する上面と下面の間に入るように調整されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記粘性剤がグリースであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記粘性剤が潤滑油であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項7】
前記粘性剤がゲル状物質であること特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項8】
前記間隙が5〜50μmであり、前記粘性剤に含まれる微粒子の直径が5μm以下であり、前記第1,第2の方向の被駆動部の前記第2の面の表面粗さを表す最大高さをRzhとし、前記支持部の対向面の表面粗さを示す最大高さをRzbとしたときに、Rzhは10μm以下であり、Rzbは10μm以下であることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項9】
被対象物に近接又は接触させるプローブと、前記被対象物を第1の方向と前記第1の方向に直交する第2の方向及びこれら第1の方向と第2の方向に対して直交する第3の方向に移動させることにより前記被対象物の位置決めを行う位置決め装置よりなる走査型プローブ顕微鏡において、
前記位置決め装置が、請求項1から8のいずれかに記載の位置決め装置であることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−8661(P2009−8661A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122675(P2008−122675)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)