説明

位置特定システム

【課題】 光源からの光信号を利用することにより、屋内外を問わず物体の位置を特定することが可能な位置特定システムを提供する。
【解決手段】 予め定めた固定位置に設置されて固有の識別情報ID1〜ID3を含む光信号を投光する光源ユニット1〜3と、光信号を受光して受光出力を発生する受光部11、受光出力から識別情報ID1〜ID3を抽出して光源ユニット1〜3を識別し、識別した光源ユニット1〜3と自身(物体10)との間の位置関係として距離を計算する位置関係計測部20、及び、地図データベース31に記憶された光源ユニット1〜3の位置情報と位置関係計測部20の情報から自身(物体10)の位置を特定する位置特定部30を有する物体10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光信号を利用して物体の位置を特定する位置特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基地局と端末装置との間で無線通信する通信システムにおいては、基地局と端末装置間の電波の伝搬経路が例えば人の移動等により変動することで、マルチパスフェージングの影響を受けて受信強度が変化する。そのため、通信が不安定となり再送信が必要となる等、通信スループットの低下を招く。
【0003】
マルチパス環境下において、どの場所でも端末の通信スループットを低下させないようにするためには、アダプティブアレイアンテナ技術を応用してアダプティブビームフォーミングやアダプティブヌルステアリングを行い、効率的な電波の送受信を行うようにすればよい。しかし、このようなアダプティブアレイアンテナ技術を応用して効率的な電波の送受信指向性を得ようにも、端末装置の位置が正確に分からなければ、アレイアンテナのビームの向きや等化器の等化特性を最適化できない。
【0004】
上述した端末装置等のような物体の位置を特定する方法としては、例えばGPS(Global Positioning System)を利用した測位システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−298764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、GPSを利用した測位システムは、屋内では衛星からの電波を受信することが難しく、屋内に存在する物体の位置特定には使用できないという問題がある。
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、屋内外を問わず物体の位置を特定することが可能な位置特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、請求項1に記載した本発明の位置特定システムは、少なくとも固有の識別情報を含む光信号を投光する光源と、前記光信号を受光して受光出力を発生する受光部を備えた物体と、前記受光出力から抽出した識別情報に基づいて前記光源を識別し、該識別した光源と前記物体との間の位置関係を前記受光出力に基づいて取得し、該取得した位置関係情報と前記光源の位置を示す光源位置情報とに基づいて、前記物体の存在位置を特定する物体位置特定部と、を備える構成とした。
【0007】
かかる構成では、光源から固有の識別情報を含む光信号を投光し、物体は受光部で光源からの光信号を受光する。物体位置特定部は、物体の受光部の受光出力に基づいて、受光した光信号の発光光源を識別し、識別した光源と物体との間の位置関係を受光出力に基づいて取得し、取得した位置関係情報と前記光源の位置を示す光源位置情報とに基づいて、物体の存在位置を特定する。
【0008】
請求項2の発明では、前記物体位置特定部は、前記光源と前記物体との間の相対位置関係を取得し、該相対位置関係情報と、予め定めた座標系の座標位置で表される前記光源位置情報とに基づいて、前記物体の存在位置として前記座標系における座標位置を特定する構成とした。また、請求項3のように、前記物体位置特定部は、前記光源と前記物体との間の相対位置関係を取得し、該相対位置関係情報と、予め定めた座標系の座標位置で表される前記光源位置情報とに基づいて、前記物体の存在位置として前記光源を原点としたときの位置を特定する構成としてもよい。
【0009】
請求項4の発明では、前記受光部が受光素子を備える構成であるとき、前記位置関係情報として、少なくとも3つ以上の前記光源と前記物体との間の距離情報を取得する構成とした。
請求項5の発明では、前記受光部が、前記光信号を光学系を介して2次元受光デバイスで受光する構成であるとき、前記位置関係情報として、少なくとも1つの前記光源と前記物体との間の仰角及び方位角情報を取得する構成とした。
【0010】
請求項6のように、前記光源から、前記識別情報に加えて自身の前記光源位置情報も含む光信号を投光し、前記物体位置特定部は、前記受光出力から前記光源位置情報を取得する構成とするとよい。また、請求項7のように、前記物体位置特定部は、各光源の位置情報を予め記憶させた地図データベースから前記光源位置情報を取得する構成としてもよい。
【0011】
請求項8のように、前記物体に、前記物体位置特定部を組込むと共に無線通信手段を設け、該無線通信手段を介して、外部に設けた前記地図データベースから前記光源位置情報を取得する構成とするとよい。
かかる構成では、物体に物体位置特定部を組込むことで、物体自身が位置を特定することができるようになると共に、物体毎に地図データベースを設けなくてよい。
【0012】
請求項9のように、基地局と端末装置との間で無線通信する通信システムにおける前記端末装置を前記物体として前記端末装置の位置特定に適用する構成とするとよい。
かかる構成では、端末装置の位置を特定することができるようになるので、アダプティブアレイアンテナ技術を利用して、端末装置と基地局間の通信の効率化を図ることができるようになる。
【0013】
前記物体位置特定部は、具体的には請求項10のように、前記識別情報を抽出して光源を識別すると共に、識別した光源と前記物体との間の位置関係を前記受光出力に基づいて取得する光源・物体間位置関係取得手段と、該光源・物体間位置関係取得手段で取得した位置関係情報と地図データベースに記憶された前記光源の固定位置情報とに基づいて前記地図上における前記物体の存在位置を特定する位置特定手段とを備える構成とするとよい。
【0014】
請求項11のように、前記端末装置に、前記光源・物体間位置関係取得手段を設け、前記基地局に前記位置特定手段を設け、該光源・物体間位置関係取得手段で取得した位置関係情報を無線通信手段を介して基地局に送信する構成とするとよい。
【0015】
請求項12のように、前記基地局は、前記位置特定手段で特定した端末装置の位置情報と地図データベースに記憶された周囲環境情報とに基づいて、端末装置と基地局間の無線電波の伝搬路を推定し、該推定した無線電波伝搬路情報に基づいてアレイアンテナの指向性又は等化器の等化特性を最適制御する構成を有するようにするとよい。
【0016】
請求項13のように、前記光源を、可視光の前記光信号を投光する可視光光源とするとよい。
かかる構成では、可視光光源はあらゆる場所に存在するので、使用場所が制約されない特定位置システムを提供できるようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明の位置特定システムによれば、光源からの光信号を用いて物体の位置を特定する構成としたので、屋内外を問わず照明装置等の光源があればよく、使用場所に制約のない物体位置特定システムを提供できる。
また、基地局と端末装置間で無線通信する通信システムに適用して、端末装置の位置を特定する構成とすれば、基地局側で端末装置の位置を知ることが可能となり、レイトレース法により電波の伝搬経路を計算する場合に短時間でリアルタイムで計算でき、通信システムの効率化及び高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る位置特定システムの第1実施形態を示す概要図である。
図1において、本実施形態の位置特定システムは、例えば複数の光源ユニット1〜3と、位置特定対象である物体10とを備える。
【0019】
前記複数の光源ユニット1〜3は、それぞれ予め設定された互いに異なる各固定位置に設置されて固有の識別情報ID1〜ID3を含む光信号を投光するものであり、各光源ユニット1〜3は、光源L1〜L3と、光源L1〜L3の駆動を制御する駆動制御部1A〜3Aと、前記識別情報ID1〜ID3が格納されたメモリ1B〜3Bとを、それぞれ備えて構成される。その動作は、光源ユニット1を例に説明すると、駆動制御部1Aが、メモリ1Bから識別情報ID1を読込み、その識別情報ID1に応じて光源L1を点滅制御する。これにより、光源L1から前記識別情報ID1を含んだ光信号が送信される。同様にして光源ユニット2,3から、それぞれ識別情報ID2、ID3を含んだ光信号が送信される。ここで、各駆動制御部1A〜3Aは、スペクトル拡散通信方式を適用して前記識別情報ID1〜ID3を互いに異なるそれぞれの巡回符号系列(例えばPN符号系列)で拡散処理した光信号が送信されるよう光源L1〜L3を点滅制御する。尚、光源L1〜L3としては、例えばLED等の可視光光源、赤外線発光源、レーザ光源等が考えられるが、室内外を問わずあらゆる場所に設置できる可視光光源が望ましい。
【0020】
前記物体10は、各光源ユニット1〜3からの光信号を受光し、その受光出力と地図データに基づいて自身の位置を特定するものであり、受光部11と、光源・物体位置関係取得手段である位置関係計測部20と、位置特定手段である位置特定部30と、制御部12とを備えて構成される。ここで、位置関係計測部20と位置特定部30で物体位置特定手段を構成する。
受光部11は、各光源ユニット1〜3の光信号を受光し、受光した光信号に応じた受光出力を発生する受光素子を備えて構成される。
【0021】
位置関係計測部20は、受光部11の受光出力に基づいて識別情報を抽出して光源ユニット1〜3を識別すると共に、識別した光源と物体10との間の位置関係を受光出力に基づいて取得するもので、受光部11の受光出力を受信する入力部21と、各光源ユニット1〜3の巡回符号系列にそれぞれ対応する巡回符号系列を記憶保持する符号保持部22と、入力部21から送信される入力信号を符号保持部22に保持された各巡回符号系列を用いて相関処理する相関処理部23と、相関処理部23の相関出力に基づいて識別情報ID1〜ID3を抽出して受光した光信号の発光元である光源ユニット1〜3を識別する光源判定部24と、相関処理部23の相関出力に基づいて発光時刻と受光時刻の時間差から物体10と各光源ユニット1〜3間の距離情報(位置関係情報)を計算する距離計算部25とを備えて構成される。
【0022】
前記位置特定部30は、位置関係計測部20で得られた距離情報(位置関係情報)と各光源ユニット1〜3の固定位置情報とに基づいて地図上における物体10の存在位置を特定するもので、光源ユニット1〜3の固定位置の地図データ(例えば地図上の座標位置)が格納された地図データベース31と、地図データベース31に格納された各光源ユニット1〜3の固定位置情報と、位置関係計測部20の光源判定部24と距離計算部25からそれぞれ送信される光源ユニット1〜3の識別情報及び距離情報とに基づいて、地図上における物体10自身の存在位置を計算する位置計算部32とを備えて構成される。
前記制御部12は、前記位置関係計測部20及び位置特定部30の動作を制御する。
【0023】
次に、本実施形態の位置特定システムの動作について説明する。
例えば、各光源ユニット1〜3が図2(A)、(B)に示すように室内4の天井の予め設定した互いに異なる各固定位置に取付けられているとする。この固定位置A〜Cの位置情報は地図データベース31に予め格納されている。そして、物体10が、同図に示すように、光源ユニット1から距離r1、光源ユニット2から距離r2、光源ユニット3から距離r3の位置に存在するとする。尚、図2(A)は室内を上方から見た場合の図を示し、(B)は横方向から見た場合の図を示す。
【0024】
光源ユニット1〜3は、基準時計により互いに同期される時計ユニットを備えており、互いに同期して駆動制御部1A〜3Aにより光源L1〜L3を点滅駆動する。これにより、光源ユニット1からは巡回符号系列PN1で拡散処理された自身の識別情報ID1を含む光信号が、光源ユニット2からは巡回符号系列PN2で拡散処理された自身の識別情報ID2を含む光信号が、光源ユニット3からは巡回符号系列PN3で拡散処理された自身の識別情報ID3を含む光信号が、互いに同期して送信され、所定間隔で送信が繰り返し行われる。尚、前記巡回符号系列PN1,PN2,PN3は互いに相関性のない巡回符号系列である。
【0025】
物体10の受光部11が光信号を受光すると、その受光出力が位置関係計測部20の入力部21に入力し、周知のスペクトル拡散通信システムと同様にして相関処理部23で符号保持部22に保持された巡回符号系列PN1〜PN3を用いて相関処理される。この相関処理により、光源ユニット1の光信号が受信されていれば巡回符号系列PN1で相関処理したときに高レベルの相関出力が発生する。同様にして、光源ユニット2の光信号が受信されていれば巡回符号系列PN2で相関処理したときに高レベルの相関出力が発生し、光源ユニット3の光信号が受信されていれば巡回符号系列PN3で相関処理したときに高レベルの相関出力が発生する。光源判定部24では、相関処理部23の相関出力に基づいてどの巡回符号系列の光信号が受光されたかを判定して受光した光源ユニット1〜3を判別する。また、距離計測部25では、GPSシステムと同様の原理により、前記基準時計と同期された物体10内に備えられる図示しない時計ユニットの時刻情報から、光源ユニットからその光信号が発信された時刻とその受光出力の入力時刻、言い換えれば、受光部11でその光信号が受光された時刻との差から各光源ユニットと物体10との距離を計算し、各距離情報r1〜r3を得る。そして、位置関係計測部20から、受光した各光源ユニット1〜3の識別情報ID1〜ID3と対応する距離情報r1〜r3を位置特定部30に送る。
【0026】
位置特定部30では、前記識別情報ID1〜ID3と距離情報r1〜r3と、地図データベース31の光源ユニット1〜3の各座標データから物体10の存在位置を計算する。これは、GPSシステムと同様の原理で、3個所の光源ユニット1〜3からの距離r1〜r3をもとに各光源ユニット1〜3を中心とする半径r1〜r3の3つの球の交点を求めることにより、その交点を物体10の座標位置として求める。尚、物体10の受光部11が4つ以上の光信号を常時受光できるよう光源ユニットを配置すれば、物体10の位置特定精度をより高めることができる。
【0027】
かかる構成の位置特定システムによれば、光信号を用いて物体10の位置を特定することができる。従って、屋内外を問わず照明装置があれば、どのような場所でも物体10の位置を特定することができる。また、照明装置が無い場所でも照明装置を取付ければよい。
例えば、物体10を移動可能なロボットと仮定すれば、照明装置の光信号により自分の位置を把握して移動したり作業したりすることも可能となる。
【0028】
本実施形態のように、地図データベースを物体に設ける構成の場合、例えば光源ユニットが故障して交換する必要が生じ、光源ユニットの識別情報が変更されるような場合、各物体毎に地図データベースの内容を修正しなければならない。地図データベースを外部に設け、物体に通信機能を設けて外部の地図データベースから所望の光源ユニットの位置情報を取込むようにすれば、上述のような地図データベースの内容修正が必要な場合でも、外部の地図データベースの内容だけを修正すればよく、各物体毎に地図データベースの内容を修正しなくて済むので、地図データベースの修正作業が容易にできる。
【0029】
また、光信号の発生源を、本実施形態のような光源ユニットではなく、駆動制御部及びメモリからなるユニット装置に別体の光源を電気的に接続する構成としてもよく、この場合には、光源が故障したときに光源だけを交換すればよく、メンテナンスコスト等を軽減できると共に、メモリ内の識別情報を変更する必要もなくなる。
【0030】
上記実施形態では、受光部11を受光素子で構成したが、例えばCCDやCMOSセンサ等のような2次元受光デバイスで光信号を受光する構成でもよい。
以下に、かかる構成の場合における物体の位置特定動作を図3に基づいて説明する。
この場合、図3に示すように、受光部11は、2次元受光デバイス11Aと、光源ユニット1からの光信号を2次元デバイス11A上に集光させるための光学レンズ11Bを含む光学系とを設けて構成される。
【0031】
光源ユニット1からの光信号は、光学レンズ11Bを含む光学系により2次元受光デバイス11A上に集光される。この場合、2次元受光デバイス11Aの座標原点に対する集光点のずれ位置から、光学レンズ11Bの焦点距離と座標原点と集光点間の距離等を用いて、物体10から見た光源ユニット1の相対位置関係として仰角φと、方位角θを計算することができる。従って、係る構成の場合は、位置関係計測部20は、物体10と光源ユニット1との位置関係情報として距離情報に代えて前記仰角φと方位角θを計算する。また、光源ユニット1の識別情報IDは、2次元受光デバイス11Aの受光出力に基づいて前述と同様の相関処理により識別情報ID1を抽出して受光した光信号を識別でき、受光した光源ユニット1を判定する。そして、前記仰角φ及び方位角θの位置関係情報と識別情報とを位置特定部30に送れば、地図データベース31の光源ユニット1の座標位置データから、物体10の位置を特定することができる。
【0032】
かかる2次元受光デバイス11Aを用いた構成によれば、少なくとも1つの光源ユニットの光信号を受光すれば、物体10の位置を特定することができるようになる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、本発明の位置特定システムを、基地局と端末装置との間で無線通信する通信システムにおける端末装置の位置特定に適用した例である。尚、第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
図4に、通信システムの概略構成図を示す。
図4において、本実施形態の通信システムは、通信システムの端末、例えば無線LAN端末等に相当する端末装置40と、通信システムの親局、例えば無線LANのアクセスポイント等に相当する基地局50とからなる。
【0034】
第1実施形態の物体に相当する端末装置40は、受光部41と、位置関係計測部42と、無線部43と、アンテナ44と、通信部45と、制御部46とを備えて構成される。
前記受光部41は、光源ユニット1〜3の各識別情報ID1〜ID3を含む光信号を受光するもので、受光素子により光信号を受光する構成でもよく、2次元受光デバイスで光信号を受光する構成でもよい。
【0035】
前記位置関係計測部42は、端末装置40と光源ユニット1〜3の位置関係を計測するもので、受光部41を受光素子で構成した場合は、少なくとも3つの光源ユニットの光信号に基づいて各光源ユニットまでの距離r1〜r3を計測する図1に示す構成とし、受光部41を例えばCCDやCMOS等の2次元受光デバイスで構成した場合は、図3で説明したような、少なくとも1つの光源ユニットの光信号に基づいて端末装置40から見たその光源ユニットの仰角φと方位買角θを計測する構成とする。
無線部43は、アンテナ44を介して基地局50との間で無線通信を行うためのものである。
通信部45は、例えばパソコン等の上位装置との間で情報通信するためのものである。
制御部46は、位置関係計測部42、無線部43及び通信部45等、端末装置40の各部の制御を行う。
【0036】
基地局50は、位置特定部51と、経路計算部52と、遅延・減衰量計算部53と、等化器制御部54と、等化器55と、アレイアンテナ制御部56と、アレイアンテナ57と、通信部58と、制御部59とを備えて構成される。
前記位置特定部51は、第1実施形態と同様の構成であり、端末装置40から送信された情報と地図データベース31の光源ユニット位置情報に基づいて端末装置40の位置を特定するものである。
【0037】
前記経路計算部52は、位置特定部51で特定された端末装置40の位置情報と、位置特定部51の地図データベースに記憶されている周囲環境情報(例えば、壁、天井、床、什器等の配置データ)及び自身の位置情報から、従来周知のレイトレース法を用いて端末装置40と基地局50間の電波の伝搬経路を推定する。
【0038】
遅延・減衰量計算部53は、経路計算部52で推定された電波伝搬経路情報に基づいて、経路上における各種障害物による電波の損失や経路長に基づく遅延時間を計算する。
前記等化器制御部54は、遅延・減衰量計算部53の計算結果に基づいて等化器55の受信信号に対する等化特性を最適に制御する。
【0039】
前記アレイアンテナ制御部56は、経路計算部52で推定された伝播経路情報に基づいてアレイアンテナ57の最適なビーム方向、ヌル方向を計算し、端末装置40の位置に応じてアレイアンテナ57の指向性を制御する。
前記通信部58は、例えば有線(LAN)回線を介して外部と通信するためのものである。
前記制御部59は、位置特定部51、経路計算部52、遅延・減衰量計算部53、等化器制御部54、アレイアンテナ制御部56等、基地局50内の各部を制御する。
【0040】
次に、本実施形態の通信システムの動作を図5及び図6のフローチャートを参照して説明する。
図5は端末装置40の動作フローチャートである。
ステップ1(図中S1で示し、以下同様とする)では、受光部41から受光出力が発生したか否かを判定する。受光部41で光信号が受光され受光出力が発生すれば、判定がYESとなり、ステップ2に進む。
ステップ2では、位置関係計測部42において、前述した第1実施形態と同様にして、受光した光信号に含まれる識別情報ID1〜ID3に基づいてその発生元である光源ユニットを識別する。
【0041】
また、ステップ3で、識別した光源ユニットまでの距離(又は、仰角φと方位角θ)を計測する。ここで、距離を計測する場合は、少なくとも3つ以上の光源ユニットまでの距離情報を取得する必要があり、仰角φと方位角θを計測する場合は、少なくとも1つの光源ユニットに対する仰角φと方位角θの情報を計測すればよい。
ステップ4では、ステップ2,3で得たID情報とID情報に対応する距離(又は、仰角φと方位角θ)情報を、符号間干渉を起こさない程度の遅い通信速度で基地局50に対して送信する。
【0042】
図6は基地局50の動作フローチャートである。
ステップ11では、ID情報、距離(又は、仰角φと方位角θ)情報を受信したか否かを判定し、受信すると判定がYESになり、ステップ12に進む。
ステップ12では、位置特定部51において、受信情報と地図データベース内の光源ユニットの位置情報から、情報の送信元である端末装置40の地図上の位置を特定する。
【0043】
ステップ13では、経路計算部52において、ステップ12で得られ端末装置40の位置情報と自身(基地局50)の位置情報から電波の伝搬経路をレイトレース法を用いて計算する。
ステップ14では、遅延・減衰量計算部53において、ステップ13で推定された伝搬経路について地図データベースに予め格納されている周囲環境情報に基づいてその遅延量、減衰量を計算する。
【0044】
ステップ15では、等化器制御部54において、ステップ14の計算結果に基づいて等化器55の等化特性が端末装置40に対して最適となるよう設定値を計算し、計算結果に基づいて等化器55の等化特性を変更する。
ステップ16では、アレイアンテナ制御部56において、ステップ13で推定された伝搬経路情報に基づいて、不要波方向にヌル、希望波方向にビームを向けるようアレイアンテナ57の指向特性を設定変更する。
ステップ17では、別の端末装置から情報を受信したか否かを判定し、受信していなければ判定がNOとなり、フローを終了する。
【0045】
かかる構成の位置特定システムを適用した通信システムによれば、基地局50側で端末装置40の位置を知ることができる。このため、レイトレース法を用いて基地局−端末装置間の電波の伝搬経路を計算する場合に、経路の組合せが限定できリアルタイムで伝搬経路を推定できる。従って、基地局−端末装置間の電波の伝搬環境が人の移動等の影響によって変化しても、基地局−端末装置間の通信を効率的且つ高速化できるようになる。
【0046】
また、本実施形態のように、地図データベースを各端末装置40ではなく基地局50側に持たせることにより、光源ユニット1〜3が故障して交換の必要が生じた場合の交換に伴う地図データベースのID情報の修正作業が、基地局50だけで済む。従って、端末装置40が多数あるような通信システムでは、地図データベースの内容修正作業が容易である。
【0047】
尚、本発明の位置特定システムは、上述した各実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、光源からの光信号を受光した物体から、受光した全ての光源識別情報と、光信号或いは地図データベースから取得した各光源に対応する光源位置情報とを、位置特定部を備える光源に対して送信して物体の位置を特定する構成としてもよい。この場合、物体側から光源側に情報を送信する手段は、光や電波等情報を送信できる通信手段であればどのような通信方式を用いてもよい。このような構成を採用すれば、例えば、トンネル内の照明を利用して、GPSシステムでは難しいトンネル内の車両等の情報をトンネル外部で収集することも可能になる。
【0048】
また、光源は、必ずしも固定設置されていなくともよい。この場合、例えば、各光源から自身の現在位置情報を物体に対して送信する構成でもよく、各光源側から自身の現在位置情報を地図データベースの管理部に通知して地図データベースを逐次更新するような構成としてもよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、光源と物体との間の距離や仰角、方位角等の相対位置関係情報と、予め定めた座標系(例えば地図データ)の座標位置で表した光源位置情報とを用いて、物体の存在位置として前記座標系における絶対的座標位置を特定する構成としたが、例えば、物体の存在位置として、各光源から見た場合の位置、即ち、各光源を原点位置としたときの各光源に対する相対的な位置で特定するようにしてもよく、物体の位置特定形態は種々の形態が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る位置特定システムの第1実施形態の概略構成図
【図2】物体−光源間の距離計測の説明図
【図3】物体から見た光源の仰角と方位角計測の説明図
【図4】本発明を適用した通信システムの概略構成図
【図5】端末装置の動作フローチャート
【図6】基地局の動作フローチャート
【符号の説明】
【0051】
1〜3 光源ユニット
10 物体
11 受光部
20、42 位置関係計測部
24 光源判定部
25 距離計算部
30、51 位置特定部
31 地図データベース
32 位置計算部
40 端末装置
43 無線部
50 基地局
52 経路計算部
53 遅延・減衰量計算部
54 等化器制御部
56 アレイアンテナ制御部
57 アレイアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも固有の識別情報を含む光信号を投光する光源と、
前記光信号を受光して受光出力を発生する受光部を備えた物体と、
前記受光出力から抽出した識別情報に基づいて前記光源を識別し、該識別した光源と前記物体との間の位置関係を前記受光出力に基づいて取得し、該取得した位置関係情報と前記光源の位置を示す光源位置情報とに基づいて、前記物体の存在位置を特定する物体位置特定部と、
を備える構成としたことを特徴とする位置特定システム。
【請求項2】
前記物体位置特定部は、前記光源と前記物体との間の相対位置関係を取得し、該相対位置関係情報と、予め定めた座標系の座標位置で表される前記光源位置情報とに基づいて、前記物体の存在位置として前記座標系における座標位置を特定する構成である請求項1に記載の位置特定システム。
【請求項3】
前記物体位置特定部は、前記光源と前記物体との間の相対位置関係を取得し、該相対位置関係情報と、予め定めた座標系の座標位置で表される前記光源位置情報とに基づいて、前記物体の存在位置として前記光源を原点としたときの位置を特定する構成である請求項1に記載の位置特定システム。
【請求項4】
前記受光部が受光素子を備える構成であるとき、前記位置関係情報として、少なくとも3つ以上の前記光源と前記物体との間の距離情報を取得する構成である請求項1〜3のいずれか1つに記載の位置特定システム。
【請求項5】
前記受光部が、前記光信号を光学系を介して2次元受光デバイスで受光する構成であるとき、前記位置関係情報として、少なくとも1つの前記光源と前記物体との間の仰角及び方位角情報を取得する構成である請求項1〜3のいずれか1つに記載の位置特定システム。
【請求項6】
前記光源から、前記識別情報に加えて自身の前記光源位置情報も含む光信号を投光し、前記物体位置特定部は、前記受光出力から前記光源位置情報を取得する構成である請求項1〜5のいずれか1つに記載の位置特定システム。
【請求項7】
前記物体位置特定部は、各光源の位置情報を予め記憶させた地図データベースから前記光源位置情報を取得する構成である請求項1〜5のいずれか1つに記載の位置特定システム。
【請求項8】
前記物体に、前記物体位置特定部を組込むと共に無線通信手段を設け、該無線通信手段を介して、外部に設けた前記地図データベースから前記光源位置情報を取得する構成である請求項7に記載の位置特定システム。
【請求項9】
基地局と端末装置との間で無線通信する通信システムにおける前記端末装置を前記物体として前記端末装置の位置特定に適用する請求項1〜8のいずれか1つに記載の位置特定システム。
【請求項10】
前記物体位置特定部は、前記識別情報を抽出して光源を識別すると共に、識別した光源と前記物体との間の位置関係を前記受光出力に基づいて取得する光源・物体間位置関係取得手段と、該光源・物体間位置関係取得手段で取得した位置関係情報と前記光源位置情報とに基づいて前記物体の存在位置を特定する位置特定手段とを備える構成である請求項1〜9のいずれか1つに記載の位置特定システム。
【請求項11】
前記端末装置に、前記光源・物体間位置関係取得手段を設け、前記基地局に前記位置特定手段を設け、該光源・物体間位置関係取得手段で取得した位置関係情報を無線通信手段を介して基地局に送信する構成とした請求項10に記載の位置特定システム。
【請求項12】
前記基地局は、前記位置特定手段で特定した端末装置の位置情報と地図データベースに記憶された周囲環境情報とに基づいて、端末装置と基地局間の無線電波の伝搬路を推定し、該推定した無線電波伝搬路情報に基づいてアレイアンテナの指向性又は等化器の等化特性を最適制御する構成を有する請求項11に記載の位置特定システム。
【請求項13】
前記光源は、可視光の前記光信号を投光する可視光光源である請求項1〜13のいずれか1つに記載の位置特定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−220465(P2006−220465A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32403(P2005−32403)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)