低温の脱パラフィン処理
免疫組織化学(IHC)的、インサイチューのハイブリッド形成法(ISH)又はその他の特別染色法又は組織化学的もしくは細胞化学的操作の前に、バッチ法又は自動化装置を使用して、液体組成物により、包埋媒質の融点より低い温度で、生体サンプルから包埋媒質を緩徐に除去するための方法及び装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との関係】
【0001】
本出願は2004年12月30日出願の米国特許仮出願第60/640,477号に対し優先権を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は包埋媒質の融点より低い温度で、生体サンプルから包埋媒質を緩徐に除去するために、液体化合物、そして好ましくはアルカンを使用する方法及び装置に関する。該方法は免疫組織化学的(IHC)、インサイチューのハイブリッド形成(ISH)あるいはその他の特別な染色又は組織化学的又は細胞化学的操作の前にバッチにより又は自動化装置を使用して実施することができる。本発明はまた、mRNAのISHの検出を増加するような細胞又は組織の低温処理のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
疾病をもつ生体から採取される組織又は細胞サンプルの解釈に基づく疾病の診断は過去数年間にわたり劇的に拡大してきた。伝統的な組織学的染色法及び免疫組織化学的アッセイに加えて、インサイチューのハイブリッド形成及びインサイチューポリメラーゼ連鎖反応のようなインサイチューの方法が今日、ヒトにおける疾病状態診断を補助し、そして組織切片中の遺伝子発現サイトを解明するために使用される。従って、細胞形態学のみならずまた、細胞及び組織内の特定の分子(例えばDNA、RNA及びタンパク質)の存在をも測定することができる種々の方法がある。これらの各方法は、サンプルの細胞又は組織がアルデヒド(ホルムアルデヒ、グルタルアルデヒドのような)、ホルマリン代用物、アルコール(エタノール、メタノール、イソプロパノールのような)のような化学薬品でサンプルを固定する工程又は、パラフィン、セロイジン、寒天、ポリマー、樹脂、低温媒質又は種々のプラスチックの包埋媒質(エポキシ樹脂及びアクリル樹脂のような)のような不活性物質中にサンプルを包埋する工程を包含することができる準備法を受けることを必要とする。その他のサンプル組織又は細胞の標本は冷凍(冷凍組織切片)又は細針による吸引(細針吸引(FNA))のような物理的操作を必要とする。
【0004】
組織又は細胞サンプルあるいはその準備又は保存方法にかかわらず、技術者の目標はデータの正確な解釈を可能にする、正確な、読み取り可能なそして再現可能な結果を得ることである。正確な、読み取り可能なそして再現可能なデータを提供する1つの方法は、使用される技術にかかわらず、試験結果を最適化する方法で、組織又は細胞を準備することである。免疫組織化学的(IHC)及びインサイチューのハイブリッド形成(ISH)法の場合には、これは特定の抗体及びプローブから得られるシグナルの量を増加することを意味する。組織化学的染色法の場合には、それは染色の強度を増加又は染色コントラスト増加を意味するかも知れない。
【0005】
試験結果を改善する1つの方法は与えられたサンプルから得られるシグナルを増加することである。概括的に、増加したシグナルはその標的に対する与えられた分子の接近性を増加することにより得ることができる。細胞内の標的は細胞の透過性を増加し、細胞中へのより多数の分子の侵入を許し、そしてそれにより分子がその標的を「発見する」であろう確率を増加することにより、更に接近性にさせることができる。このような増加した透過性はISH、IHC、組織化学及び細胞化学のような方法に対し特に重要である。
【0006】
組織及び細胞は将来の分析のためにそれらを保存する補助をするために、種々の不活性媒質(パラフィン、セロイジン、OCTTM、寒天、プラスチック又はアクリル樹脂、等)中に包埋される。多数のこれらの不活性物質は疎水性である。それに対し、組織学的及び細胞学的適用に使用される試薬は主として親水性である。従って、試薬が、包埋された生体物質に接近するためには、試験前に不活性媒質を生体サンプルから除去することが必要かも知れない。スライドを、トルエン、キシレン、リモネン又はその他の適当な溶媒のような種々の有機溶媒中に通過させることにより、組織切片からパラフィンを除去することにより、次の試験のために、パラフィン包埋そして/又は注入(infused)組織切片を準備することが標準的な先行技術の方法である。これらの有機溶媒は非常に揮発性で、毒性の可能性があり、そして特別の処理(例えば、換気フード中で脱パラフィン処理を実施する)を必要とすること、及び特別の廃棄物投棄法を必要とすることを包含する、種々の問題を引き起こす可能性がある。これらの有機溶媒の使用は分析の経費及び試験される各組織サンプルと関連する露出の危険を増加し、そして、それらに露出される個体及び環境に重大な不都合な影響を有する。
【0007】
生体サンプルから包埋そして/又は注入パラフィンを除去する代わりの方法は特許文献1に開示され、その明細は引用により本明細書に取り入れられている(特許文献1参照)。特許文献1は生体サンプルに液体パラフィン不混和性溶液−水のような−の適用前又は後にパラフィンの融点を超える温度にパラフィン包埋又は注入生体サンプルを加熱する工程を開示している(特許文献1参照)。包埋そして/又は注入パラフィンの融点を超える温度にサンプルを加熱する工程はパラフィンを液化させ、それが不混和性液体の上部に浮揚し、そこでそれが生体サンプルから容易に分離される。この方法は溶媒の脱パラフィン処理に比較して生体サンプルに対する破壊性が弱いが、注入又は包埋媒質の融点より高い温度に生体サンプルを加熱する工程はmRNAのような感受性標的から得られるシグナルに不都合に影響する可能性がある。
【0008】
組織処理工程中の標的組織の脱水もまた、それらのエンハンスメント及び検出に不都合に影響する可能性がある。引用により本明細書にその明細が取り込まれている特許文献2は、湿った又は覆われた組織の上部にLIQUID VOVERSLIPTM層−蒸発インヒビター液−を適用することにより組織の脱水を妨げる方法を開示している(特許文献2参照)。蒸発抑制−液体層は包埋媒質がサンプルから除去された後に水和組織サンプルに適用される。特許文献2に従うと蒸発抑制液は組織サンプルを覆う水分より濃度が濃くはなく、好ましくは、6〜18個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素である。その結果、蒸発抑制液体層がサンプルを覆う水性バッファーの上部に留まる間に、水性試薬をスライド上に配置された生体サンプルに適用することができる。染色液を含有する、より濃厚な1種又は複数の水溶液は蒸発抑制液体層を通過して、生体サンプルに接触する。この方法を使用して、組織サンプルを最少のサンプルの脱水を伴って又は全く脱水を伴わずにISHのような高温工程にさらすことができる。
【0009】
自動化及びバッチ式生体サンプル処理におけるこれらの進歩にもかかわらず、自動化された方法でサンプル組織から不活性媒質を緩徐に除去するための処理法の必要がいまだ残る。
【特許文献1】米国特許第6,544,798号明細書
【特許文献2】米国特許第5,225,325号明細書
【発明の開示】
【0010】
本発明の方法はa)強力な有機溶媒の使用を伴わず、激しい洗浄を伴わず、そして包埋又は注入された生体サンプルを包埋又は注入媒質の融点を超える温度に加熱せずに生体サンプルからのパラフィン基剤の包埋媒質の自動化除去を許す。
【0011】
本発明の方法は自動化ISH装置の誤った操作の結果として発見された。正常の操作においては、液体の包埋媒質と不混和性液体を包埋媒質の融点を超える温度に加熱された生体サンプルに適用する。液化包埋媒質を加熱された不混和性液体の数回の連続的適用により生体サンプルから洗浄する。加熱された不混和性液体は生体サンプルに激しい影響をもつ傾向がある。発明者はmRNA ISHに使用された時に、例外的に好都合に実施され
た自動化ISH装置を発見した。発明者は該装置が前記のように意図されたように作動していないことを見いだした。生体サンプルから液化包埋媒質を洗浄するために不混和性液体を使用する代わりに、装置は包埋生体サンプルに包埋媒質の融点より低い温度で非極性液を適用した。従ってサンプルは高温の不混和性液体の洗浄段階を伴わずに、処理された。従って、発明者は、包埋された生体サンプルがパラフィン基剤の包埋媒質の融点より低い温度において緩徐に脱パラフィン処理することができ、そして生成される脱パラフィン処理生体サンプルが驚くべきことには、その後の処理に対して損なわれず、そして細胞核が特にmRNAのISHに対して損なわれないことを発見した。
【0012】
本発明の方法は先行技術の脱パラフィン処理法に比べて多数の改善点を提供する。本発明の方法は穏やかで、細胞を暴露し、細胞学的又は組織学的標本の透過性を増加し、それによりサンプルの読み易さを増加しそして試験データの解釈を改善するために、自動化システム中のガラスのスライド上に配置された生体サンプル上で室温で又は室温の近位で実施することができる。本発明の方法は細胞学的及び組織学的染色法と関連して使用される大部分の組織学的及び細胞学的サンプルの染色性及び読み易さを改善するために使用することができる。更に、本発明の方法はmRNAのISH法における検出を強化するために特に有用である。
【0013】
本発明の1つのアスペクトは(a)自動化組織染色装置中に複数のパラフィン包埋生体サンプルを装填し、(b)10〜16個の炭素原子を有するパラフィン可溶化液体アルカンを生体サンプルと直接接触させて配置し、(c)パラフィン基剤の包埋媒質の少なくとも一部が液体アルカン中に可溶性になるために十分な時間、パラフィン基剤の包埋媒質の融点より低い温度で、液体アルカンを生体サンプルと接触させて維持し、そして(d)生体サンプルから可溶化パラフィン基剤包埋媒質を包含する液体アルカンを除去して脱パラフィン処理された生体物質を形成する(そこで生体サンプルの温度は段階(b)及び(c)の期間中、包埋媒質の融点以上にならない)、段階を含んでなる、パラフィン包埋生体サンプルからパラフィン基剤の包埋媒質を除去する方法である。
【0014】
本発明の幾つかのアスペクトの1つの態様は、生体サンプルの温度が段階(a)&(b)の期間中、包埋媒質の融点以上には決してならないようにその温度を制御することである。
【0015】
本発明の幾つかのアスペクトのもう1つの態様において、生体サンプルの温度が本質的に室温に維持される。
【0016】
本発明の幾つかのアスペクトのもう1つの態様において、液体組成物は非芳香族の炭化水素である。1つの好ましい態様において、液体組成物は6〜18個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素である。もう1つの好ましい態様において、非芳香族炭化水素はアルカンであり、そしてより好ましくは、ドデカン又はペンタデカンのような10〜16個の炭素原子を有する線状アルカンである。
【0017】
本発明の幾つかのアスペクトの更にもう1つの態様において、鉱油が液体組成物に添加される。
【0018】
本発明の幾つかのアスペクトの更にもう1つの態様において、段階(a)及び(b)は段階(c)の後に少なくとも1回反復される。あるいは又は更に、脱パラフィン処理された生体物質を更に、免疫組織化学的(IHC)方法、インサイチューのハイブリッド形成(ISH)法、特別染色法、組織化学法、細胞化学法から選択される方法により操作するかあるいは脱パラフィン処理した生体物質をインサイチューで、標的mRNA配列に相補的であるポリヌクレオチドプローブと接触させることができる。
【0019】
本発明のもう1つのアスペクトは、(a)支持体上にパラフィン基剤包埋媒質で包埋された少なくとも1種の生体サンプルを置き、そしてその支持体を自動化脱パラフィン処理装置中に装填し、(b)非極性有機溶媒を含んでなる液体組成物に生体サンプルと接触するように指令し、(c)パラフィン基剤包埋媒質の少なくとも一部が液体組成物中で可溶化になるのに十分な時間、液体組成物を、パラフィン包埋生体サンプルと接触させて維持し、そして(d)生体サンプルから可溶性包埋媒質を包含する液体組成物を除去して脱パラフィン処理された生体物質を形成する(ここで段階(b)、(c)及び(d)を自動化脱パラフィン処理装填により実施し、そして生体サンプルの温度は段階(b)及び(c)の期間中、包埋媒質の融点以上にはならない)、段階を含んでなる、パラフィン基剤の包埋媒質で包埋された生体サンプルを脱パラフィン処理する方法である。
【0020】
本発明の更にもう1つのアスペクトは(a)パラフィンの融点より低い温度でパラフィン溶解性の非極性有機溶媒とパラフィン包埋生体サンプルを接触させ、(b)パラフィン可溶化非極性有機溶媒を穏やかに撹拌してパラフィンの溶解度を高め、(c)パラフィン可溶化非極性有機溶媒を除去し、(d)脱パラフィン処理した生体サンプル中の除去する非極性有機溶媒を水性溶媒と交換し、そして(e)検出可能なポリヌクレオチドプローブと脱パラフィン処理した生体サンプルを接触させる、段階を含んでなるパラフィン包埋生体サンプル中のRNA/DNAを検出する方法である。
【0021】
本特許又は出願ファイルはカラーで作成された少なくとも1枚の図面を含有する。1枚又は複数のカラー図面を伴う本特許又は特許出願刊行物のコピーは要請及び必要経費の支払い時に当局により提供されるであろう。
【0022】
本発明は毒性の有機溶媒、著しい高温又は激しい洗浄法を使用せずに、生体サンプルを包埋している媒質を除去することにより、組織学的又は細胞学的試験法における更なる処理のために生体サンプルを脱パラフィン処理する方法に関する。
【0023】
本発明の1つの態様は、生体サンプルが保存及び支持のために包埋された不活性物質を除去することによる生体サンプルの暴露に関する。本発明のこの態様において、生体サンプルをその後の組織処理段階に十分暴露するためにサンプルから十分なパラフィン基剤の包埋物質を除去するのに十分な時間、包埋物質の融点より低い温度で、パラフィン可溶化非極性有機溶媒を含んでなる液体組成物に生体サンプルを暴露することにより、パラフィン又はパラフィン基剤の包埋物質のような不活性包埋物質を、生体サンプルから除去する。
【0024】
用語「包埋物質」は本明細書では生体物質に注入そして/又はそれを包埋するために使用される不活性なパラフィン基剤の物質を表わすことと規定される。本発明に有用な包埋物質は包埋物質の融点より低い温度で、以下に特定される液体組成物中に少なくとも一部は可溶性でなければならない。好ましい包埋物質はパラフィン基剤の包埋物質である。
【0025】
用語「脱パラフィン処理」は本明細書では広義に、パラフィン基剤の包埋物質を注入そして/又はそれで包埋された包埋及び/又は注入された生体サンプルからのあらゆる種類の包埋物質の除去を表わすことと規定される。
【0026】
用語「液体組成物」は本明細書では広義に、包埋物質がパラフィン基剤の包埋物質の融点より低い温度で少なくとも一部は可溶性である非極性有機溶媒を含んでなるあらゆる液体組成物を表わすことと規定される。
【0027】
用語「非極性有機溶媒」は、25℃の室温より十分に上、好ましくは110℃より上、
より好ましくは約140℃から約250℃の沸点を有し、本発明で使用される温度で(通常15〜50℃)液相にあり、そして包埋生体標本に使用されるパラフィンを溶解することができる、非極性炭化水素又は炭化水素の混合物(例えば石油蒸留物からのような)を表わす。非極性有機溶媒は例えば、脂肪酸及び高級グリコールのエステルを含有する長鎖線状及び分枝アルカン炭化水素の複雑な混合物であることができる。25℃の溶媒中のパラフィンの溶解度は典型的には溶媒1リッター当り少なくとも0.1グラム、好ましくは溶媒100ml当り0.1グラム、より好ましくは溶媒10ml当り0.1グラムのパラフィン、そしてもっとも好ましくは溶液重量で溶媒の約50%に等しいパラフィン量を溶解することができる。
【0028】
非極性有機溶媒の限定はしない例は芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、テルペン、その他の油及び石油蒸留物を包含する。好ましい非極性有機溶媒はほとんど又は全く毒性効果をもたない。更に、好ましい溶媒は環境保護機関により有害廃棄物と分類されないものである。好ましいパラフィン可溶化溶媒は更に、可燃性を最少にする約60℃を超える発火点を有する。好ましい溶媒は更に、毒性、発癌性及び腐食性をもたない。イソパラフィン炭化水素は一部は毒性、発癌性、腐食性及び可燃性のその不在のために好ましいパラフィン可溶化溶媒の1例である。好ましいイソパラフィンはおよそC10〜C15の範囲の炭素骨格長をもつ分枝脂肪族炭化水素又はそれらの混合物である。1つの好ましいイソパラフィン炭化水素混合物は約74℃の発火点を有する。もう1つの好ましいパラフィン可溶化溶媒は150℃の沸点〜約250℃の蒸留範囲をもつC10〜C50の分枝又は線状炭化水素鎖の混合物であり、そしてn=10〜50、そしてm=0〜4である場合のCnH(2n+m)の一般式を有する。更により好ましいものは、デカンからヘキサデカン(C10〜C16)のような中間鎖のアルカン族の油である。好ましい中間鎖のアルカンはペンタデカンのようなC15アルカンである。
【0029】
特に好ましい非極性有機溶媒はNORPAR(R)15、ミネラルスピリット又はVentanaからのLIQUID COVERSLIPTMを包含する。NORPAR(R)15は低い揮発性及び高い沸点をもつ、名目上線状C15を含んでなる高濃度の(>95%)通常のパラフィン炭化水素流体(ExxonMobil Chemical)である。短鎖の線状及び分枝脂肪族炭化水素を含んでなるミネラルスピリットはもう1つの好ましいパラフィン可溶化有機溶媒である。好ましいテルペンはリモネンである。使用することができるその他のテルペンはテルピン、テルピネン及びテルピネオールを包含する。それほど好ましくはないが、溶媒はアルキルベンゼン、例えばトルエン又はジアルキルベンゼン、例えばキシレンのような芳香族炭化水素溶媒である。トルエン及びキシレンはそれらの毒性及び有害廃棄物としての分類のためにあまり好ましくない。更に、以下に考察されるように、キシレン又はトルエンは本発明の態様に使用される時ですら、その後のアルコール洗浄物は排除され、非有害水性洗浄液と置き換えられる。
【0030】
本発明の液体組成物は脱パラフィン処理が起る温度に応じて、単独で又は鉱油と組み合わせて使用することができる。用語「鉱油」は本明細書では石油から得られる炭化水素の液体混合物を表わすためにその通常の意味に従って使用される。好ましい態様において、発明者はNORPAR(R)15が生体サンプルからパラフィン基剤の包埋媒質を除去する際に低温で単独で十分有効であることを発見した。彼らはまた、生体サンプルから包埋媒質を除去する際に、室温より上であるが包埋物質の融点より低い温度が使用されると、鉱油及びNORPAR(R)15の組み合わせ物が、生体サンプルからパラフィン基剤の包埋媒質を除去するのに有効であることを発見した。NORPAR(R)15は1:100〜100:1の容量比、好ましくは約1:1の比率で本発明の液体組成物と組み合わせることができる。
【0031】
本発明の方法はほぼ室温(15〜30℃)から包埋媒質の融点より僅かに低い温度まで
の範囲の様々な温度で実施することができる。液体組成物は生体サンプルを更なる処理及び強化に暴露するために十分なパラフィン基剤包埋媒質を除去するのに十分な時間、生体サンプルを含有する包埋媒質と接触させられる。概括的に液体組成物は約1分から約30分間以上、そして好ましくは約5〜15分間の範囲の期間、包埋媒質と接触するであろう。
【0032】
包埋物質は本発明の方法がもっとも有効であるためには室温で液体組成物中に少なくとも僅かに可溶性である。従って、前記に開示された好ましい液体アルカンは生体サンプルからパラフィン基剤の包埋物質を除去するのに特に有用である。一旦所望量の包埋物質が液体組成物に可溶化にされた後に、生体サンプルを洗浄して液体組成物/包埋物質の溶液を除去し、その後、生体サンプルは次の抗原回収又は標的検出及び染色工程のために利用可能である。
【0033】
本発明の脱パラフィン処理法の1つのアスペクトにおいて、液体組成物がその後の方法に生体サンプルを暴露するために生体サンプルに1回適用される。代わりの態様において、液体組成物が生体サンプルに数回適用され、そして例えば、生体サンプルから包埋物質を更に有効に除去するために液体組成物の各適用後に洗浄段階を実施することができる。いずれの態様においても、生体物質はまた、生体物質から除去される包埋物質の量を最大にするために種々の温度に暴露することができる。例えば、生体サンプルが液体組成物と接触されるたびに生体サンプルの温度を高めることができる。あるいはまた、生体サンプルの温度をその後の液体組成物との接触段階において低下させることができる。生体サンプルからの包埋媒質の除去を改善する生体サンプルのその他の操作を本発明の方法に利用することができる。例えば、液体組成物中の包埋物質の溶解度を高めるために、液体組成物を生体サンプルと接触する時に撹拌する、又は増加した又は減少した圧力を使用することができる。
【0034】
本発明の方法はバッチ法又は連続的方法で徒手であるいは自動化プラットホーム上で実施することができる。更に、該方法はガラススライド、キュベット、ミクロアレープレート等のような様々な容器上又はそれらの中に配置された生体サンプルにつき実施することができる。本発明の好ましい方法において、ガラスの顕微鏡スライド上に配置されたパラフィン包埋生体サンプルは、その明細がそれぞれ引用により本明細書に取り入れられている米国特許第6,054,759号、第5,595,707号、第6,405,609号及び第6,296,809明細書中に記載された装置のような自動化染色装置並びにVentana Medical Systems,Inc.(Tuscon AZ)により製造されたBenchMark(R)、NexES(R)、Discovery(R)及びEOS装置のような装置中で処理される。
【0035】
本発明の方法において前記のような液体組成物が生体サンプルに適用され、生体サンプルから包埋物質を除去するのに十分な時間、液体組成物を生体サンプルと接触させ、それによりその後の処理のために生体サンプルを暴露する。特別の態様において、液体組成物はサンプルから包埋物質の実質的にすべてを除去するのに十分な時間、生体サンプルと接触される。
【0036】
本発明の方法を自動化するために有用な装置の1例は、全体に同様な部品が同様な参照番号により表わされている図1〜4を参照して考察される。図1には、NexES(R)特別染色装置として市場でも知られている、概括的に参照番号10で表わされる分子病理学装置の透視図が示される。装置10は自動的に染色するかあるいは、「特別」染色剤として知られる化学薬品及び/又は特定の時間及び設定温度に対して所望の順序でそれらと関連する他の試薬で、顕微鏡スライド上に設置された組織を処理するようになっている。次にそのように染色又は処理された組織切片を患者の診断、予後又は処置の目的のために
顕微鏡下で観察あるいは例えば、遺伝子発現と組織形態間の相関を決定することができる。
【0037】
1つの態様において、装置10は更にホストコンピューター14、好ましくはパーソナルコンピューター、モニター16、キーボード18、マウス20、バルク流体容器22、廃棄物容器23及び関連装置を含んでなる、システム12(図2)の染色モジュールとして働く。更なる染色モジュール又は他の装置をシステム12に付け加えてサーバーとして働くコンピューター14とネットワークを形成することができる。あるいはまた、これらの別々の構成部品の幾つか又はすべてを装置10に取り入れて、独立した装置にすることができるであろう。
【0038】
システム12のみならずまた、装置10の好ましい形態は概括的に、引用によりその明細が本明細書に取り込まれている米国特許第6,045,759号明細書並びにその内容が引用により本明細書に取り込まれている、Ventana Medical Systems,Inc.(Tuscon,Ariz)から入手できるVentana NexES(R)の使用者ガイドに記載されている。端的には、装置10は、標準的ガラスの顕微鏡スライド上に固定された組織に化学的及び生物学的試薬を自動的に適用するマイクロプロセッサー制御染色モジュールである。カルーセル支持の放射状に配置されたガラススライドはステッピング・モーターにより回転されて、各スライドを一連の試薬分配装置の1つの下に配置する。装置10は分配、洗浄、混合及び加熱を制御して、反応力学を最適化する。コンピューター制御自動化は現場を離れて、すなわちほとんど徒手作業を必要とせずに装置10の使用を許す。
【0039】
図3において更に具体的に、装置10は上部の区域32に移動可能に固定又はヒンジで取り付けられた下方区域30から形成されたハウジングを含んでなる。スライドカルーセル34は軸A−Aの回りを回転するために下方区域30内に設置されている。複数の熱プラットホーム50をカルーセル34の周囲に放射状に固定することができ、その上に組織サンプルを伴う標準的ガラススライドを配置することができる。カルーセル34は好ましくはステンレス鋼から構成される。装置10内にはまた、洗浄物分配ノズル36、液体組成物分配ノズル37、流体ナイフ38、洗浄物容量調整ノズル39、バーコード読み取り鏡40及び空気渦ミキサー42が収納され、それらの詳細は以下に考察される。
【0040】
試薬カルーセル28が上部区域32の上に回転可能に設置されている。分配装置26は試薬トレー29(図4)に取り外し可能に設置され、それは順次カルーセル28とかみ合うようになっている。試薬はそれらに限定はされないが、本発明の液体組成物、核酸プローブ又はプライマー、ポリメラーゼ、一次抗体及び二次抗体、消化酵素、予備定着剤、後定着剤、遮断剤、読みだし化学薬品及び対比染色剤を包含する、スライドに通常適用されるあらゆる化学的又は生物学的物質を包含することができる。試薬分配装置26は好ましくは、コンピューターによる識別のためにバーコード標識27される。各スライドに対し、1種の試薬が適用され、次に温度制御環境内で正確な期間、インキュベートされる。試薬の混合はスライドの端に沿って向けられる圧縮空気ジェット(空気渦ミキサー)42により実施され、それにより試薬の回転を引き起こす。適当なインキュベート後に、ノズル36を使用して試薬をスライドから洗い落とす。次に容量調整ノズル39を使用して残りの洗浄バッファーの容量を調整する。
【0041】
本発明の液体組成物はノズル37によりスライドに適用することができる。スライドは非加熱(室温で維持)でもよく又はスライドを包埋物質の融点より低い温度に加熱することができる。包埋物質がパラフィンワックスである時は、その温度は約60℃である。包埋物質を可溶化させるために、非極性有機溶媒を含んでなる液体組成物を一定時間、包埋生体物質と直接接触させる。一旦一定量の包埋物質が包埋生体物質サンプルから溶解され
た後、液体組成物を含有する可溶化されたパラフィン基剤の包埋物質を洗い落とすことができ、その後生体サンプル−今や本質的に脱パラフィン処理された−は次の処理段階に利用可能である。代わりの態様において、非極性有機溶媒を生体サンプルと接触したまま維持させることができ、そこでそれは生体サンプル及び生体サンプルに適用された試薬の脱水を妨げるカバー物質として働く。この態様において、エアーナイフ38が好ましくは、液体組成物を含有するパラフィンを切断し、その後、所望の試薬を生体サンプルに適用することができ、その後、エアーナイフを終了し、そして液体組成物を含有する可溶化パラフィン基剤包埋物質が適用された試薬及び生体サンプルを覆う。脱パラフィン処理プロトコールが完了するまで、これらの段階はカルーセルが回転するたびに反復される。
【0042】
ホストコンピューター14に加えて、装置10は好ましくは、ホストコンピューター12からの情報がそれにダウンロードされるそれ自身のマイクロプロセッサー44(図3)を包含する。とりわけコンピューターはマイクロプロセッサー44に、実行プログラム中の段階の順序及びセンサーモニター及び「ランルール」と呼ばれる制御ロジック並びにプロトコールの温度パラメーター双方をダウンロードする。Dallas Semiconductor,Dallas Tex.からのモデルNo.DS2251T 128Kはこの機能を実施することができるマイクロプロセッサーの1例である。
実施例
【実施例1】
【0043】
特別染色剤
種々の定常的に準備された臨床パラフィン組織ブロックを切片にし(5μm)、ガラススライド上に置いた。空気乾燥したスライドを:方法1)キシレンによる徒手脱パラフィン処理(対照群)又は方法2)Ventana Medical Systems,Inc.(Tuscon AZ)により製造されたNexES(R) Special Stains Systemを使用してNORPAR(R)15で41℃で12分間本発明の方法に従う脱パラフィン処理(試験群)を受けた。次に可溶化パラフィン包埋物質含有NORPAR(R)15をtris−基剤洗浄バッファーを使用して組織サンプルから洗浄した。
【0044】
包埋物質を方法1又は方法2により生体サンプルから除去後、生体サンプルを種々の自動化特別染色剤適用のために処理した。これらの方法は種々の特別染色剤で染色された種々の細胞上で実施した。実施された特別染色試験は下記の表1に報告されている。すべての事例において、包埋媒質を除去するために本発明の液体組成物と接触された細胞は染色することができた。
【0045】
【表1】
【0046】
図5A〜5BはAFBIII1適用により染色されたヒトの肺細胞を示し、そこでパラフィン包埋細胞をキシレンで徒手で脱パラフィン処理したか(図5A)又は本発明の方法に従う液体組成物で脱パラフィン処理した(図5B)。図5A及び5Bの比較は本発明の脱パラフィン法がAFBIII1特別染色の結果に対し何の悪影響ももたないことを示す。これは本発明の方法が低温で生体サンプルの実質的に完全な脱パラフィン処理を提供することを示す。更に、表1の結果は、幾つかの事例においては、本発明の方法の脱パラフィン処理は、キシレンで脱パラフィン処理されたサンプルに比較して、特定の生体サンプルの染色性を実際に高めることを示す。図面は図5Bにおける細胞染色が図5Aの染色より強力で濃く、本発明の方法がその後の処理及び染色段階のために細胞を暴露するための、キシレン脱パラフィン処理法より優れることを示す。
【実施例2】
【0047】
mRNAのインサイチューハイブリッド形成
ホルマリン固定され、パラフィン包埋されたマウス腎サンプルを切片にし(5μm)、ガラススライド上に置いた。空気乾燥したスライドを:方法1)キシレンによる徒手の脱パラフィン処理(対照群1)、方法2)水溶液による自動化加熱脱パラフィン処理(対照群2)又は方法3)Ventana Medical Systems,Inc.(Tuscon AZ)により製造されたDiscovery(R)自動化インサイチューハイブリッド形成装置上でNORPAR(R)15で室温(37℃)で10分間脱パラフィン処理(試験群)を受けた。脱パラフィン処理後、標準的方法を使用してVEGF mRNA ISHのためにすべてのスライドを処理した。
【0048】
前記の各方法により脱パラフィン処理したmRNAに対するVEGF ISHの結果を図6A〜6Cに示した断面図に示し、そこで6Aは方法1のキシレンで徒手で脱パラフィン処理した切片の結果であり、6Bは包埋パラフィンの融点を超える温度にパラフィン包埋組織を加熱し、その後方法2の、液化パラフィンがそれに不混和性である界面活性剤含有水溶液により細胞から液化パラフィンを除去することにより脱パラフィン処理した細胞の結果であり、そして6Cは本発明の方法を使用して脱パラフィン処理した切片の結果で
ある。図6B及び6C中のアステリスクは比較の目的のための物質の断面における同一部位を表わす。染色はVEGFのmRNA標的のシグナルを示す。
【0049】
図6A、6B及び6Cの比較は、開示された方法を使用する低温の脱パラフィン処理は細胞核中のmRNAの可視的染色をもたらすことを示す。それに対し、脱パラフィン処理方法1及び2は細胞核中の可視的mRNAを提供しなかった。これは開示された脱パラフィン処理法がmRNA ISH検出のための細胞及び他の生体物質を暴露するための先行技術の方法より優れることを示す。
【実施例3】
【0050】
免疫組織化学
定常的に準備された臨床組織サンプルを切片にし(5μm)ガラススライド上に置いた。空気乾燥したスライドを:方法1)キシレンによる徒手による脱パラフィン処理(対照群1)、方法2)自動化加熱脱パラフィン処理(対照群2)又は方法3)Ventana Medical Systems,Inc.(Tuscon AZ)により製造されたDiscovery(R) 自動化ISH装置を使用して室温で(37℃)10分間NORPAR 15で脱パラフィン処理(試験群)を受けた。脱パラフィン処理後、すべてのスライドを生物学的マーカーCD20の存在に対してISHにより処理した。
【0051】
本実施例のCD20の結果は図7A〜7Cに報告され、そこで7Aはキシレンにより徒手で脱パラフィン処理した組織切片に対するCD20の結果であり(方法1)、7Bは熱及び不混和性液体を使用して脱パラフィン処理した組織切片上のCD20検出の結果であり(方法2)そして図7Cは本発明の方法により脱パラフィン処理した組織サンプルに対するCD20検出の結果である(方法3)。これらの結果は本発明の方法がCD20 IHC検出法におけるその後の処理のための細胞暴露における先行技術の脱パラフィン処理法に少なくとも同等であることを示す。より特別には、サンプル上でより暗い染色点として見える各サンプル中に検出されるCD20の量が各脱パラフィン処理サンプルに対して本質的に等しい。
【0052】
本発明の方法に従って脱パラフィン処理し、そして(i)GFAPマーカーを検出するように処理したヒトの脳組織又は(ii)MAマーカーを検出するように処理したヒトの腸組織についても同様な結果をみた。しかし脱パラフィン処理した脳組織は幾らかの未染色部分を包含した。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】スライドフードを明け、カルーセルのドアを外して示された本発明の自動化法に有用な装置の透視図である。
【図2】コンピューター及びそれによりコンピューターがオペレートする他の装置と関連して示される本発明の自動化法に有用な装置の透視図である。
【図3】本発明の自動化法に有用な装置の分解図である。
【図4】試薬分配装置を伴って示された本発明の自動化法に有用な装置の透視図である。
【図5A−5B】切片がキシレンを使用し(図5A)又は本発明の方法を使用して(図5B)脱パラフィン処理されるAFB III1特別染色により染色されたヒトの肺切片である。
【図6A−6C】キシレンにより徒手で(図6A)、米国特許第6,544,797号明細書に開示された先行技術の脱パラフィン処理法を使用して(図6B)及び本発明の脱パラフィン処理を使用して(図6C)脱パラフィン処理されたマウスの腎臓切片のVEGF mRNA ISHの結果である。
【図7A−7C】切片がキシレンを使用して徒手で(図7A)、米国特許第6,544,797号明細書に開示された脱パラフィン処理法を使用して(図7B)又は本発明の脱パラフィン処理法を使用して(図7C)脱パラフィン処理された、CD20 IHC検出法を使用して処理されたヒトの組織の切片である。
【関連出願との関係】
【0001】
本出願は2004年12月30日出願の米国特許仮出願第60/640,477号に対し優先権を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は包埋媒質の融点より低い温度で、生体サンプルから包埋媒質を緩徐に除去するために、液体化合物、そして好ましくはアルカンを使用する方法及び装置に関する。該方法は免疫組織化学的(IHC)、インサイチューのハイブリッド形成(ISH)あるいはその他の特別な染色又は組織化学的又は細胞化学的操作の前にバッチにより又は自動化装置を使用して実施することができる。本発明はまた、mRNAのISHの検出を増加するような細胞又は組織の低温処理のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
疾病をもつ生体から採取される組織又は細胞サンプルの解釈に基づく疾病の診断は過去数年間にわたり劇的に拡大してきた。伝統的な組織学的染色法及び免疫組織化学的アッセイに加えて、インサイチューのハイブリッド形成及びインサイチューポリメラーゼ連鎖反応のようなインサイチューの方法が今日、ヒトにおける疾病状態診断を補助し、そして組織切片中の遺伝子発現サイトを解明するために使用される。従って、細胞形態学のみならずまた、細胞及び組織内の特定の分子(例えばDNA、RNA及びタンパク質)の存在をも測定することができる種々の方法がある。これらの各方法は、サンプルの細胞又は組織がアルデヒド(ホルムアルデヒ、グルタルアルデヒドのような)、ホルマリン代用物、アルコール(エタノール、メタノール、イソプロパノールのような)のような化学薬品でサンプルを固定する工程又は、パラフィン、セロイジン、寒天、ポリマー、樹脂、低温媒質又は種々のプラスチックの包埋媒質(エポキシ樹脂及びアクリル樹脂のような)のような不活性物質中にサンプルを包埋する工程を包含することができる準備法を受けることを必要とする。その他のサンプル組織又は細胞の標本は冷凍(冷凍組織切片)又は細針による吸引(細針吸引(FNA))のような物理的操作を必要とする。
【0004】
組織又は細胞サンプルあるいはその準備又は保存方法にかかわらず、技術者の目標はデータの正確な解釈を可能にする、正確な、読み取り可能なそして再現可能な結果を得ることである。正確な、読み取り可能なそして再現可能なデータを提供する1つの方法は、使用される技術にかかわらず、試験結果を最適化する方法で、組織又は細胞を準備することである。免疫組織化学的(IHC)及びインサイチューのハイブリッド形成(ISH)法の場合には、これは特定の抗体及びプローブから得られるシグナルの量を増加することを意味する。組織化学的染色法の場合には、それは染色の強度を増加又は染色コントラスト増加を意味するかも知れない。
【0005】
試験結果を改善する1つの方法は与えられたサンプルから得られるシグナルを増加することである。概括的に、増加したシグナルはその標的に対する与えられた分子の接近性を増加することにより得ることができる。細胞内の標的は細胞の透過性を増加し、細胞中へのより多数の分子の侵入を許し、そしてそれにより分子がその標的を「発見する」であろう確率を増加することにより、更に接近性にさせることができる。このような増加した透過性はISH、IHC、組織化学及び細胞化学のような方法に対し特に重要である。
【0006】
組織及び細胞は将来の分析のためにそれらを保存する補助をするために、種々の不活性媒質(パラフィン、セロイジン、OCTTM、寒天、プラスチック又はアクリル樹脂、等)中に包埋される。多数のこれらの不活性物質は疎水性である。それに対し、組織学的及び細胞学的適用に使用される試薬は主として親水性である。従って、試薬が、包埋された生体物質に接近するためには、試験前に不活性媒質を生体サンプルから除去することが必要かも知れない。スライドを、トルエン、キシレン、リモネン又はその他の適当な溶媒のような種々の有機溶媒中に通過させることにより、組織切片からパラフィンを除去することにより、次の試験のために、パラフィン包埋そして/又は注入(infused)組織切片を準備することが標準的な先行技術の方法である。これらの有機溶媒は非常に揮発性で、毒性の可能性があり、そして特別の処理(例えば、換気フード中で脱パラフィン処理を実施する)を必要とすること、及び特別の廃棄物投棄法を必要とすることを包含する、種々の問題を引き起こす可能性がある。これらの有機溶媒の使用は分析の経費及び試験される各組織サンプルと関連する露出の危険を増加し、そして、それらに露出される個体及び環境に重大な不都合な影響を有する。
【0007】
生体サンプルから包埋そして/又は注入パラフィンを除去する代わりの方法は特許文献1に開示され、その明細は引用により本明細書に取り入れられている(特許文献1参照)。特許文献1は生体サンプルに液体パラフィン不混和性溶液−水のような−の適用前又は後にパラフィンの融点を超える温度にパラフィン包埋又は注入生体サンプルを加熱する工程を開示している(特許文献1参照)。包埋そして/又は注入パラフィンの融点を超える温度にサンプルを加熱する工程はパラフィンを液化させ、それが不混和性液体の上部に浮揚し、そこでそれが生体サンプルから容易に分離される。この方法は溶媒の脱パラフィン処理に比較して生体サンプルに対する破壊性が弱いが、注入又は包埋媒質の融点より高い温度に生体サンプルを加熱する工程はmRNAのような感受性標的から得られるシグナルに不都合に影響する可能性がある。
【0008】
組織処理工程中の標的組織の脱水もまた、それらのエンハンスメント及び検出に不都合に影響する可能性がある。引用により本明細書にその明細が取り込まれている特許文献2は、湿った又は覆われた組織の上部にLIQUID VOVERSLIPTM層−蒸発インヒビター液−を適用することにより組織の脱水を妨げる方法を開示している(特許文献2参照)。蒸発抑制−液体層は包埋媒質がサンプルから除去された後に水和組織サンプルに適用される。特許文献2に従うと蒸発抑制液は組織サンプルを覆う水分より濃度が濃くはなく、好ましくは、6〜18個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素である。その結果、蒸発抑制液体層がサンプルを覆う水性バッファーの上部に留まる間に、水性試薬をスライド上に配置された生体サンプルに適用することができる。染色液を含有する、より濃厚な1種又は複数の水溶液は蒸発抑制液体層を通過して、生体サンプルに接触する。この方法を使用して、組織サンプルを最少のサンプルの脱水を伴って又は全く脱水を伴わずにISHのような高温工程にさらすことができる。
【0009】
自動化及びバッチ式生体サンプル処理におけるこれらの進歩にもかかわらず、自動化された方法でサンプル組織から不活性媒質を緩徐に除去するための処理法の必要がいまだ残る。
【特許文献1】米国特許第6,544,798号明細書
【特許文献2】米国特許第5,225,325号明細書
【発明の開示】
【0010】
本発明の方法はa)強力な有機溶媒の使用を伴わず、激しい洗浄を伴わず、そして包埋又は注入された生体サンプルを包埋又は注入媒質の融点を超える温度に加熱せずに生体サンプルからのパラフィン基剤の包埋媒質の自動化除去を許す。
【0011】
本発明の方法は自動化ISH装置の誤った操作の結果として発見された。正常の操作においては、液体の包埋媒質と不混和性液体を包埋媒質の融点を超える温度に加熱された生体サンプルに適用する。液化包埋媒質を加熱された不混和性液体の数回の連続的適用により生体サンプルから洗浄する。加熱された不混和性液体は生体サンプルに激しい影響をもつ傾向がある。発明者はmRNA ISHに使用された時に、例外的に好都合に実施され
た自動化ISH装置を発見した。発明者は該装置が前記のように意図されたように作動していないことを見いだした。生体サンプルから液化包埋媒質を洗浄するために不混和性液体を使用する代わりに、装置は包埋生体サンプルに包埋媒質の融点より低い温度で非極性液を適用した。従ってサンプルは高温の不混和性液体の洗浄段階を伴わずに、処理された。従って、発明者は、包埋された生体サンプルがパラフィン基剤の包埋媒質の融点より低い温度において緩徐に脱パラフィン処理することができ、そして生成される脱パラフィン処理生体サンプルが驚くべきことには、その後の処理に対して損なわれず、そして細胞核が特にmRNAのISHに対して損なわれないことを発見した。
【0012】
本発明の方法は先行技術の脱パラフィン処理法に比べて多数の改善点を提供する。本発明の方法は穏やかで、細胞を暴露し、細胞学的又は組織学的標本の透過性を増加し、それによりサンプルの読み易さを増加しそして試験データの解釈を改善するために、自動化システム中のガラスのスライド上に配置された生体サンプル上で室温で又は室温の近位で実施することができる。本発明の方法は細胞学的及び組織学的染色法と関連して使用される大部分の組織学的及び細胞学的サンプルの染色性及び読み易さを改善するために使用することができる。更に、本発明の方法はmRNAのISH法における検出を強化するために特に有用である。
【0013】
本発明の1つのアスペクトは(a)自動化組織染色装置中に複数のパラフィン包埋生体サンプルを装填し、(b)10〜16個の炭素原子を有するパラフィン可溶化液体アルカンを生体サンプルと直接接触させて配置し、(c)パラフィン基剤の包埋媒質の少なくとも一部が液体アルカン中に可溶性になるために十分な時間、パラフィン基剤の包埋媒質の融点より低い温度で、液体アルカンを生体サンプルと接触させて維持し、そして(d)生体サンプルから可溶化パラフィン基剤包埋媒質を包含する液体アルカンを除去して脱パラフィン処理された生体物質を形成する(そこで生体サンプルの温度は段階(b)及び(c)の期間中、包埋媒質の融点以上にならない)、段階を含んでなる、パラフィン包埋生体サンプルからパラフィン基剤の包埋媒質を除去する方法である。
【0014】
本発明の幾つかのアスペクトの1つの態様は、生体サンプルの温度が段階(a)&(b)の期間中、包埋媒質の融点以上には決してならないようにその温度を制御することである。
【0015】
本発明の幾つかのアスペクトのもう1つの態様において、生体サンプルの温度が本質的に室温に維持される。
【0016】
本発明の幾つかのアスペクトのもう1つの態様において、液体組成物は非芳香族の炭化水素である。1つの好ましい態様において、液体組成物は6〜18個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素である。もう1つの好ましい態様において、非芳香族炭化水素はアルカンであり、そしてより好ましくは、ドデカン又はペンタデカンのような10〜16個の炭素原子を有する線状アルカンである。
【0017】
本発明の幾つかのアスペクトの更にもう1つの態様において、鉱油が液体組成物に添加される。
【0018】
本発明の幾つかのアスペクトの更にもう1つの態様において、段階(a)及び(b)は段階(c)の後に少なくとも1回反復される。あるいは又は更に、脱パラフィン処理された生体物質を更に、免疫組織化学的(IHC)方法、インサイチューのハイブリッド形成(ISH)法、特別染色法、組織化学法、細胞化学法から選択される方法により操作するかあるいは脱パラフィン処理した生体物質をインサイチューで、標的mRNA配列に相補的であるポリヌクレオチドプローブと接触させることができる。
【0019】
本発明のもう1つのアスペクトは、(a)支持体上にパラフィン基剤包埋媒質で包埋された少なくとも1種の生体サンプルを置き、そしてその支持体を自動化脱パラフィン処理装置中に装填し、(b)非極性有機溶媒を含んでなる液体組成物に生体サンプルと接触するように指令し、(c)パラフィン基剤包埋媒質の少なくとも一部が液体組成物中で可溶化になるのに十分な時間、液体組成物を、パラフィン包埋生体サンプルと接触させて維持し、そして(d)生体サンプルから可溶性包埋媒質を包含する液体組成物を除去して脱パラフィン処理された生体物質を形成する(ここで段階(b)、(c)及び(d)を自動化脱パラフィン処理装填により実施し、そして生体サンプルの温度は段階(b)及び(c)の期間中、包埋媒質の融点以上にはならない)、段階を含んでなる、パラフィン基剤の包埋媒質で包埋された生体サンプルを脱パラフィン処理する方法である。
【0020】
本発明の更にもう1つのアスペクトは(a)パラフィンの融点より低い温度でパラフィン溶解性の非極性有機溶媒とパラフィン包埋生体サンプルを接触させ、(b)パラフィン可溶化非極性有機溶媒を穏やかに撹拌してパラフィンの溶解度を高め、(c)パラフィン可溶化非極性有機溶媒を除去し、(d)脱パラフィン処理した生体サンプル中の除去する非極性有機溶媒を水性溶媒と交換し、そして(e)検出可能なポリヌクレオチドプローブと脱パラフィン処理した生体サンプルを接触させる、段階を含んでなるパラフィン包埋生体サンプル中のRNA/DNAを検出する方法である。
【0021】
本特許又は出願ファイルはカラーで作成された少なくとも1枚の図面を含有する。1枚又は複数のカラー図面を伴う本特許又は特許出願刊行物のコピーは要請及び必要経費の支払い時に当局により提供されるであろう。
【0022】
本発明は毒性の有機溶媒、著しい高温又は激しい洗浄法を使用せずに、生体サンプルを包埋している媒質を除去することにより、組織学的又は細胞学的試験法における更なる処理のために生体サンプルを脱パラフィン処理する方法に関する。
【0023】
本発明の1つの態様は、生体サンプルが保存及び支持のために包埋された不活性物質を除去することによる生体サンプルの暴露に関する。本発明のこの態様において、生体サンプルをその後の組織処理段階に十分暴露するためにサンプルから十分なパラフィン基剤の包埋物質を除去するのに十分な時間、包埋物質の融点より低い温度で、パラフィン可溶化非極性有機溶媒を含んでなる液体組成物に生体サンプルを暴露することにより、パラフィン又はパラフィン基剤の包埋物質のような不活性包埋物質を、生体サンプルから除去する。
【0024】
用語「包埋物質」は本明細書では生体物質に注入そして/又はそれを包埋するために使用される不活性なパラフィン基剤の物質を表わすことと規定される。本発明に有用な包埋物質は包埋物質の融点より低い温度で、以下に特定される液体組成物中に少なくとも一部は可溶性でなければならない。好ましい包埋物質はパラフィン基剤の包埋物質である。
【0025】
用語「脱パラフィン処理」は本明細書では広義に、パラフィン基剤の包埋物質を注入そして/又はそれで包埋された包埋及び/又は注入された生体サンプルからのあらゆる種類の包埋物質の除去を表わすことと規定される。
【0026】
用語「液体組成物」は本明細書では広義に、包埋物質がパラフィン基剤の包埋物質の融点より低い温度で少なくとも一部は可溶性である非極性有機溶媒を含んでなるあらゆる液体組成物を表わすことと規定される。
【0027】
用語「非極性有機溶媒」は、25℃の室温より十分に上、好ましくは110℃より上、
より好ましくは約140℃から約250℃の沸点を有し、本発明で使用される温度で(通常15〜50℃)液相にあり、そして包埋生体標本に使用されるパラフィンを溶解することができる、非極性炭化水素又は炭化水素の混合物(例えば石油蒸留物からのような)を表わす。非極性有機溶媒は例えば、脂肪酸及び高級グリコールのエステルを含有する長鎖線状及び分枝アルカン炭化水素の複雑な混合物であることができる。25℃の溶媒中のパラフィンの溶解度は典型的には溶媒1リッター当り少なくとも0.1グラム、好ましくは溶媒100ml当り0.1グラム、より好ましくは溶媒10ml当り0.1グラムのパラフィン、そしてもっとも好ましくは溶液重量で溶媒の約50%に等しいパラフィン量を溶解することができる。
【0028】
非極性有機溶媒の限定はしない例は芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、テルペン、その他の油及び石油蒸留物を包含する。好ましい非極性有機溶媒はほとんど又は全く毒性効果をもたない。更に、好ましい溶媒は環境保護機関により有害廃棄物と分類されないものである。好ましいパラフィン可溶化溶媒は更に、可燃性を最少にする約60℃を超える発火点を有する。好ましい溶媒は更に、毒性、発癌性及び腐食性をもたない。イソパラフィン炭化水素は一部は毒性、発癌性、腐食性及び可燃性のその不在のために好ましいパラフィン可溶化溶媒の1例である。好ましいイソパラフィンはおよそC10〜C15の範囲の炭素骨格長をもつ分枝脂肪族炭化水素又はそれらの混合物である。1つの好ましいイソパラフィン炭化水素混合物は約74℃の発火点を有する。もう1つの好ましいパラフィン可溶化溶媒は150℃の沸点〜約250℃の蒸留範囲をもつC10〜C50の分枝又は線状炭化水素鎖の混合物であり、そしてn=10〜50、そしてm=0〜4である場合のCnH(2n+m)の一般式を有する。更により好ましいものは、デカンからヘキサデカン(C10〜C16)のような中間鎖のアルカン族の油である。好ましい中間鎖のアルカンはペンタデカンのようなC15アルカンである。
【0029】
特に好ましい非極性有機溶媒はNORPAR(R)15、ミネラルスピリット又はVentanaからのLIQUID COVERSLIPTMを包含する。NORPAR(R)15は低い揮発性及び高い沸点をもつ、名目上線状C15を含んでなる高濃度の(>95%)通常のパラフィン炭化水素流体(ExxonMobil Chemical)である。短鎖の線状及び分枝脂肪族炭化水素を含んでなるミネラルスピリットはもう1つの好ましいパラフィン可溶化有機溶媒である。好ましいテルペンはリモネンである。使用することができるその他のテルペンはテルピン、テルピネン及びテルピネオールを包含する。それほど好ましくはないが、溶媒はアルキルベンゼン、例えばトルエン又はジアルキルベンゼン、例えばキシレンのような芳香族炭化水素溶媒である。トルエン及びキシレンはそれらの毒性及び有害廃棄物としての分類のためにあまり好ましくない。更に、以下に考察されるように、キシレン又はトルエンは本発明の態様に使用される時ですら、その後のアルコール洗浄物は排除され、非有害水性洗浄液と置き換えられる。
【0030】
本発明の液体組成物は脱パラフィン処理が起る温度に応じて、単独で又は鉱油と組み合わせて使用することができる。用語「鉱油」は本明細書では石油から得られる炭化水素の液体混合物を表わすためにその通常の意味に従って使用される。好ましい態様において、発明者はNORPAR(R)15が生体サンプルからパラフィン基剤の包埋媒質を除去する際に低温で単独で十分有効であることを発見した。彼らはまた、生体サンプルから包埋媒質を除去する際に、室温より上であるが包埋物質の融点より低い温度が使用されると、鉱油及びNORPAR(R)15の組み合わせ物が、生体サンプルからパラフィン基剤の包埋媒質を除去するのに有効であることを発見した。NORPAR(R)15は1:100〜100:1の容量比、好ましくは約1:1の比率で本発明の液体組成物と組み合わせることができる。
【0031】
本発明の方法はほぼ室温(15〜30℃)から包埋媒質の融点より僅かに低い温度まで
の範囲の様々な温度で実施することができる。液体組成物は生体サンプルを更なる処理及び強化に暴露するために十分なパラフィン基剤包埋媒質を除去するのに十分な時間、生体サンプルを含有する包埋媒質と接触させられる。概括的に液体組成物は約1分から約30分間以上、そして好ましくは約5〜15分間の範囲の期間、包埋媒質と接触するであろう。
【0032】
包埋物質は本発明の方法がもっとも有効であるためには室温で液体組成物中に少なくとも僅かに可溶性である。従って、前記に開示された好ましい液体アルカンは生体サンプルからパラフィン基剤の包埋物質を除去するのに特に有用である。一旦所望量の包埋物質が液体組成物に可溶化にされた後に、生体サンプルを洗浄して液体組成物/包埋物質の溶液を除去し、その後、生体サンプルは次の抗原回収又は標的検出及び染色工程のために利用可能である。
【0033】
本発明の脱パラフィン処理法の1つのアスペクトにおいて、液体組成物がその後の方法に生体サンプルを暴露するために生体サンプルに1回適用される。代わりの態様において、液体組成物が生体サンプルに数回適用され、そして例えば、生体サンプルから包埋物質を更に有効に除去するために液体組成物の各適用後に洗浄段階を実施することができる。いずれの態様においても、生体物質はまた、生体物質から除去される包埋物質の量を最大にするために種々の温度に暴露することができる。例えば、生体サンプルが液体組成物と接触されるたびに生体サンプルの温度を高めることができる。あるいはまた、生体サンプルの温度をその後の液体組成物との接触段階において低下させることができる。生体サンプルからの包埋媒質の除去を改善する生体サンプルのその他の操作を本発明の方法に利用することができる。例えば、液体組成物中の包埋物質の溶解度を高めるために、液体組成物を生体サンプルと接触する時に撹拌する、又は増加した又は減少した圧力を使用することができる。
【0034】
本発明の方法はバッチ法又は連続的方法で徒手であるいは自動化プラットホーム上で実施することができる。更に、該方法はガラススライド、キュベット、ミクロアレープレート等のような様々な容器上又はそれらの中に配置された生体サンプルにつき実施することができる。本発明の好ましい方法において、ガラスの顕微鏡スライド上に配置されたパラフィン包埋生体サンプルは、その明細がそれぞれ引用により本明細書に取り入れられている米国特許第6,054,759号、第5,595,707号、第6,405,609号及び第6,296,809明細書中に記載された装置のような自動化染色装置並びにVentana Medical Systems,Inc.(Tuscon AZ)により製造されたBenchMark(R)、NexES(R)、Discovery(R)及びEOS装置のような装置中で処理される。
【0035】
本発明の方法において前記のような液体組成物が生体サンプルに適用され、生体サンプルから包埋物質を除去するのに十分な時間、液体組成物を生体サンプルと接触させ、それによりその後の処理のために生体サンプルを暴露する。特別の態様において、液体組成物はサンプルから包埋物質の実質的にすべてを除去するのに十分な時間、生体サンプルと接触される。
【0036】
本発明の方法を自動化するために有用な装置の1例は、全体に同様な部品が同様な参照番号により表わされている図1〜4を参照して考察される。図1には、NexES(R)特別染色装置として市場でも知られている、概括的に参照番号10で表わされる分子病理学装置の透視図が示される。装置10は自動的に染色するかあるいは、「特別」染色剤として知られる化学薬品及び/又は特定の時間及び設定温度に対して所望の順序でそれらと関連する他の試薬で、顕微鏡スライド上に設置された組織を処理するようになっている。次にそのように染色又は処理された組織切片を患者の診断、予後又は処置の目的のために
顕微鏡下で観察あるいは例えば、遺伝子発現と組織形態間の相関を決定することができる。
【0037】
1つの態様において、装置10は更にホストコンピューター14、好ましくはパーソナルコンピューター、モニター16、キーボード18、マウス20、バルク流体容器22、廃棄物容器23及び関連装置を含んでなる、システム12(図2)の染色モジュールとして働く。更なる染色モジュール又は他の装置をシステム12に付け加えてサーバーとして働くコンピューター14とネットワークを形成することができる。あるいはまた、これらの別々の構成部品の幾つか又はすべてを装置10に取り入れて、独立した装置にすることができるであろう。
【0038】
システム12のみならずまた、装置10の好ましい形態は概括的に、引用によりその明細が本明細書に取り込まれている米国特許第6,045,759号明細書並びにその内容が引用により本明細書に取り込まれている、Ventana Medical Systems,Inc.(Tuscon,Ariz)から入手できるVentana NexES(R)の使用者ガイドに記載されている。端的には、装置10は、標準的ガラスの顕微鏡スライド上に固定された組織に化学的及び生物学的試薬を自動的に適用するマイクロプロセッサー制御染色モジュールである。カルーセル支持の放射状に配置されたガラススライドはステッピング・モーターにより回転されて、各スライドを一連の試薬分配装置の1つの下に配置する。装置10は分配、洗浄、混合及び加熱を制御して、反応力学を最適化する。コンピューター制御自動化は現場を離れて、すなわちほとんど徒手作業を必要とせずに装置10の使用を許す。
【0039】
図3において更に具体的に、装置10は上部の区域32に移動可能に固定又はヒンジで取り付けられた下方区域30から形成されたハウジングを含んでなる。スライドカルーセル34は軸A−Aの回りを回転するために下方区域30内に設置されている。複数の熱プラットホーム50をカルーセル34の周囲に放射状に固定することができ、その上に組織サンプルを伴う標準的ガラススライドを配置することができる。カルーセル34は好ましくはステンレス鋼から構成される。装置10内にはまた、洗浄物分配ノズル36、液体組成物分配ノズル37、流体ナイフ38、洗浄物容量調整ノズル39、バーコード読み取り鏡40及び空気渦ミキサー42が収納され、それらの詳細は以下に考察される。
【0040】
試薬カルーセル28が上部区域32の上に回転可能に設置されている。分配装置26は試薬トレー29(図4)に取り外し可能に設置され、それは順次カルーセル28とかみ合うようになっている。試薬はそれらに限定はされないが、本発明の液体組成物、核酸プローブ又はプライマー、ポリメラーゼ、一次抗体及び二次抗体、消化酵素、予備定着剤、後定着剤、遮断剤、読みだし化学薬品及び対比染色剤を包含する、スライドに通常適用されるあらゆる化学的又は生物学的物質を包含することができる。試薬分配装置26は好ましくは、コンピューターによる識別のためにバーコード標識27される。各スライドに対し、1種の試薬が適用され、次に温度制御環境内で正確な期間、インキュベートされる。試薬の混合はスライドの端に沿って向けられる圧縮空気ジェット(空気渦ミキサー)42により実施され、それにより試薬の回転を引き起こす。適当なインキュベート後に、ノズル36を使用して試薬をスライドから洗い落とす。次に容量調整ノズル39を使用して残りの洗浄バッファーの容量を調整する。
【0041】
本発明の液体組成物はノズル37によりスライドに適用することができる。スライドは非加熱(室温で維持)でもよく又はスライドを包埋物質の融点より低い温度に加熱することができる。包埋物質がパラフィンワックスである時は、その温度は約60℃である。包埋物質を可溶化させるために、非極性有機溶媒を含んでなる液体組成物を一定時間、包埋生体物質と直接接触させる。一旦一定量の包埋物質が包埋生体物質サンプルから溶解され
た後、液体組成物を含有する可溶化されたパラフィン基剤の包埋物質を洗い落とすことができ、その後生体サンプル−今や本質的に脱パラフィン処理された−は次の処理段階に利用可能である。代わりの態様において、非極性有機溶媒を生体サンプルと接触したまま維持させることができ、そこでそれは生体サンプル及び生体サンプルに適用された試薬の脱水を妨げるカバー物質として働く。この態様において、エアーナイフ38が好ましくは、液体組成物を含有するパラフィンを切断し、その後、所望の試薬を生体サンプルに適用することができ、その後、エアーナイフを終了し、そして液体組成物を含有する可溶化パラフィン基剤包埋物質が適用された試薬及び生体サンプルを覆う。脱パラフィン処理プロトコールが完了するまで、これらの段階はカルーセルが回転するたびに反復される。
【0042】
ホストコンピューター14に加えて、装置10は好ましくは、ホストコンピューター12からの情報がそれにダウンロードされるそれ自身のマイクロプロセッサー44(図3)を包含する。とりわけコンピューターはマイクロプロセッサー44に、実行プログラム中の段階の順序及びセンサーモニター及び「ランルール」と呼ばれる制御ロジック並びにプロトコールの温度パラメーター双方をダウンロードする。Dallas Semiconductor,Dallas Tex.からのモデルNo.DS2251T 128Kはこの機能を実施することができるマイクロプロセッサーの1例である。
実施例
【実施例1】
【0043】
特別染色剤
種々の定常的に準備された臨床パラフィン組織ブロックを切片にし(5μm)、ガラススライド上に置いた。空気乾燥したスライドを:方法1)キシレンによる徒手脱パラフィン処理(対照群)又は方法2)Ventana Medical Systems,Inc.(Tuscon AZ)により製造されたNexES(R) Special Stains Systemを使用してNORPAR(R)15で41℃で12分間本発明の方法に従う脱パラフィン処理(試験群)を受けた。次に可溶化パラフィン包埋物質含有NORPAR(R)15をtris−基剤洗浄バッファーを使用して組織サンプルから洗浄した。
【0044】
包埋物質を方法1又は方法2により生体サンプルから除去後、生体サンプルを種々の自動化特別染色剤適用のために処理した。これらの方法は種々の特別染色剤で染色された種々の細胞上で実施した。実施された特別染色試験は下記の表1に報告されている。すべての事例において、包埋媒質を除去するために本発明の液体組成物と接触された細胞は染色することができた。
【0045】
【表1】
【0046】
図5A〜5BはAFBIII1適用により染色されたヒトの肺細胞を示し、そこでパラフィン包埋細胞をキシレンで徒手で脱パラフィン処理したか(図5A)又は本発明の方法に従う液体組成物で脱パラフィン処理した(図5B)。図5A及び5Bの比較は本発明の脱パラフィン法がAFBIII1特別染色の結果に対し何の悪影響ももたないことを示す。これは本発明の方法が低温で生体サンプルの実質的に完全な脱パラフィン処理を提供することを示す。更に、表1の結果は、幾つかの事例においては、本発明の方法の脱パラフィン処理は、キシレンで脱パラフィン処理されたサンプルに比較して、特定の生体サンプルの染色性を実際に高めることを示す。図面は図5Bにおける細胞染色が図5Aの染色より強力で濃く、本発明の方法がその後の処理及び染色段階のために細胞を暴露するための、キシレン脱パラフィン処理法より優れることを示す。
【実施例2】
【0047】
mRNAのインサイチューハイブリッド形成
ホルマリン固定され、パラフィン包埋されたマウス腎サンプルを切片にし(5μm)、ガラススライド上に置いた。空気乾燥したスライドを:方法1)キシレンによる徒手の脱パラフィン処理(対照群1)、方法2)水溶液による自動化加熱脱パラフィン処理(対照群2)又は方法3)Ventana Medical Systems,Inc.(Tuscon AZ)により製造されたDiscovery(R)自動化インサイチューハイブリッド形成装置上でNORPAR(R)15で室温(37℃)で10分間脱パラフィン処理(試験群)を受けた。脱パラフィン処理後、標準的方法を使用してVEGF mRNA ISHのためにすべてのスライドを処理した。
【0048】
前記の各方法により脱パラフィン処理したmRNAに対するVEGF ISHの結果を図6A〜6Cに示した断面図に示し、そこで6Aは方法1のキシレンで徒手で脱パラフィン処理した切片の結果であり、6Bは包埋パラフィンの融点を超える温度にパラフィン包埋組織を加熱し、その後方法2の、液化パラフィンがそれに不混和性である界面活性剤含有水溶液により細胞から液化パラフィンを除去することにより脱パラフィン処理した細胞の結果であり、そして6Cは本発明の方法を使用して脱パラフィン処理した切片の結果で
ある。図6B及び6C中のアステリスクは比較の目的のための物質の断面における同一部位を表わす。染色はVEGFのmRNA標的のシグナルを示す。
【0049】
図6A、6B及び6Cの比較は、開示された方法を使用する低温の脱パラフィン処理は細胞核中のmRNAの可視的染色をもたらすことを示す。それに対し、脱パラフィン処理方法1及び2は細胞核中の可視的mRNAを提供しなかった。これは開示された脱パラフィン処理法がmRNA ISH検出のための細胞及び他の生体物質を暴露するための先行技術の方法より優れることを示す。
【実施例3】
【0050】
免疫組織化学
定常的に準備された臨床組織サンプルを切片にし(5μm)ガラススライド上に置いた。空気乾燥したスライドを:方法1)キシレンによる徒手による脱パラフィン処理(対照群1)、方法2)自動化加熱脱パラフィン処理(対照群2)又は方法3)Ventana Medical Systems,Inc.(Tuscon AZ)により製造されたDiscovery(R) 自動化ISH装置を使用して室温で(37℃)10分間NORPAR 15で脱パラフィン処理(試験群)を受けた。脱パラフィン処理後、すべてのスライドを生物学的マーカーCD20の存在に対してISHにより処理した。
【0051】
本実施例のCD20の結果は図7A〜7Cに報告され、そこで7Aはキシレンにより徒手で脱パラフィン処理した組織切片に対するCD20の結果であり(方法1)、7Bは熱及び不混和性液体を使用して脱パラフィン処理した組織切片上のCD20検出の結果であり(方法2)そして図7Cは本発明の方法により脱パラフィン処理した組織サンプルに対するCD20検出の結果である(方法3)。これらの結果は本発明の方法がCD20 IHC検出法におけるその後の処理のための細胞暴露における先行技術の脱パラフィン処理法に少なくとも同等であることを示す。より特別には、サンプル上でより暗い染色点として見える各サンプル中に検出されるCD20の量が各脱パラフィン処理サンプルに対して本質的に等しい。
【0052】
本発明の方法に従って脱パラフィン処理し、そして(i)GFAPマーカーを検出するように処理したヒトの脳組織又は(ii)MAマーカーを検出するように処理したヒトの腸組織についても同様な結果をみた。しかし脱パラフィン処理した脳組織は幾らかの未染色部分を包含した。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】スライドフードを明け、カルーセルのドアを外して示された本発明の自動化法に有用な装置の透視図である。
【図2】コンピューター及びそれによりコンピューターがオペレートする他の装置と関連して示される本発明の自動化法に有用な装置の透視図である。
【図3】本発明の自動化法に有用な装置の分解図である。
【図4】試薬分配装置を伴って示された本発明の自動化法に有用な装置の透視図である。
【図5A−5B】切片がキシレンを使用し(図5A)又は本発明の方法を使用して(図5B)脱パラフィン処理されるAFB III1特別染色により染色されたヒトの肺切片である。
【図6A−6C】キシレンにより徒手で(図6A)、米国特許第6,544,797号明細書に開示された先行技術の脱パラフィン処理法を使用して(図6B)及び本発明の脱パラフィン処理を使用して(図6C)脱パラフィン処理されたマウスの腎臓切片のVEGF mRNA ISHの結果である。
【図7A−7C】切片がキシレンを使用して徒手で(図7A)、米国特許第6,544,797号明細書に開示された脱パラフィン処理法を使用して(図7B)又は本発明の脱パラフィン処理法を使用して(図7C)脱パラフィン処理された、CD20 IHC検出法を使用して処理されたヒトの組織の切片である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)自動化組織染色装置中に複数のパラフィン包埋生体サンプルを装填し、
(b)10〜16個の炭素原子を有するパラフィン可溶化液体アルカンを生体サンプルと直接接触させて配置し、
(c)パラフィン基剤の包埋媒質の少なくとも一部が液体アルカン中に可溶性になるために十分な時間、パラフィン基剤の包埋媒質の融点より低い温度で液体アルカンを生体サンプルと接触させて維持し、そして
(d)生体サンプルから可溶化パラフィン基剤包埋媒質を包含する液体アルカンを除去して、脱パラフィン処理生体物質を形成する(そこで生体サンプルの温度は段階(b)及び(c)の期間中、包埋媒質の融点以上にはならない)、
段階を含んでなる、パラフィン包埋生体サンプルからパラフィン基剤の包埋媒質を除去する方法。
【請求項2】
生体サンプルの温度が段階(b)及び(c)の期間中、本質的に室温に維持される請求項1の方法。
【請求項3】
10〜16個の炭素原子を有する線状アルカンがドデカン、ペンタデカン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項1の方法。
【請求項4】
鉱油が液体組成物に添加される請求項1の方法
【請求項5】
(a)支持体上にパラフィン基剤包埋媒質で包埋された少なくとも1種の生体サンプルを置き、その支持体を自動化脱パラフィン処理装置中に装填し、
(b)非極性有機溶媒を含んでなる液体組成物に生体サンプルと接触するように指令し、(c)パラフィン基剤包埋媒質の少なくとも一部が液体組成物中で可溶化になるのに十分な時間、液体組成物とパラフィン包埋生体サンプルとの接触を維持させ、そして
(d)生体サンプルから可溶性包埋媒質を包含する液体組成物を除去して脱パラフィン処理された生体物質を形成する(ここで段階(b)、(c)及び(d)は自動化脱パラフィン処理装置により実施され、そして生体サンプルの温度は段階(b)及び(c)の期間中、包埋媒質の融点以上にならない)、
段階を含んでなるパラフィン基剤の包埋媒質で包埋された生体サンプルを脱パラフィン処理する自動化された方法。
【請求項6】
段階(b)及び(c)の期間中、生体サンプルの温度が本質的に室温に維持される請求項5の方法。
【請求項7】
液体組成物が6〜18個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素である請求項5の方法。
【請求項8】
非芳香族炭化水素がアルカン又は線状アルカンである請求項7の方法。
【請求項9】
非芳香族炭化水素が10〜16個の炭素原子を有する線状アルカンである請求項7の方法。
【請求項10】
非芳香族炭化水素がドデカン、ペンタデカン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項7の方法。
【請求項11】
鉱油が液体組成物に添加される請求項5の方法。
【請求項12】
脱パラフィン処理された生体物質が、インサイチューで標的mRNA配列と相補的であ
るポリヌクレオチドプローブと脱パラフィン処理した生体物質を接触させることにより更に操作される請求項1の方法。
【請求項13】
(a)パラフィンの融点より低い温度の非極性有機溶媒とパラフィン包埋生体サンプルを接触させ、
(b)非極性有機溶媒を穏やかに撹拌して非極性有機溶媒中のパラフィンの溶解度を高め、
(c)脱パラフィン処理した生体サンプル中の非極性有機溶媒を水性溶媒と交換し、そして
(d)検出可能なポリヌクレオチドプローブと脱パラフィン処理した生体サンプルを接触させる、
段階を含んでなるパラフィン包埋生体サンプル中のRNA/DNAを検出する方法。
【請求項14】
生体サンプルの温度が段階(a)〜(b)の期間中、包埋媒質の融点以上にはならない請求項13の方法。
【請求項15】
生体サンプルの温度が段階(a)〜(b)の期間中、本質的に室温に維持される請求項13の方法。
【請求項16】
非極性有機溶媒がミネラルスピリットである請求項13の方法。
【請求項17】
非極性有機溶媒が10〜16個の炭素原子を有する線状アルカンである請求項13の方法。
【請求項18】
線状アルカンがドデカン、ペンタデカン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項17の方法。
【請求項19】
鉱油が段階(a)の前に非極性有機溶媒に添加される請求項15の方法。
【請求項20】
ポリヌクレオチドプローブが可視的に検出可能である請求項15の方法。
【請求項1】
(a)自動化組織染色装置中に複数のパラフィン包埋生体サンプルを装填し、
(b)10〜16個の炭素原子を有するパラフィン可溶化液体アルカンを生体サンプルと直接接触させて配置し、
(c)パラフィン基剤の包埋媒質の少なくとも一部が液体アルカン中に可溶性になるために十分な時間、パラフィン基剤の包埋媒質の融点より低い温度で液体アルカンを生体サンプルと接触させて維持し、そして
(d)生体サンプルから可溶化パラフィン基剤包埋媒質を包含する液体アルカンを除去して、脱パラフィン処理生体物質を形成する(そこで生体サンプルの温度は段階(b)及び(c)の期間中、包埋媒質の融点以上にはならない)、
段階を含んでなる、パラフィン包埋生体サンプルからパラフィン基剤の包埋媒質を除去する方法。
【請求項2】
生体サンプルの温度が段階(b)及び(c)の期間中、本質的に室温に維持される請求項1の方法。
【請求項3】
10〜16個の炭素原子を有する線状アルカンがドデカン、ペンタデカン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項1の方法。
【請求項4】
鉱油が液体組成物に添加される請求項1の方法
【請求項5】
(a)支持体上にパラフィン基剤包埋媒質で包埋された少なくとも1種の生体サンプルを置き、その支持体を自動化脱パラフィン処理装置中に装填し、
(b)非極性有機溶媒を含んでなる液体組成物に生体サンプルと接触するように指令し、(c)パラフィン基剤包埋媒質の少なくとも一部が液体組成物中で可溶化になるのに十分な時間、液体組成物とパラフィン包埋生体サンプルとの接触を維持させ、そして
(d)生体サンプルから可溶性包埋媒質を包含する液体組成物を除去して脱パラフィン処理された生体物質を形成する(ここで段階(b)、(c)及び(d)は自動化脱パラフィン処理装置により実施され、そして生体サンプルの温度は段階(b)及び(c)の期間中、包埋媒質の融点以上にならない)、
段階を含んでなるパラフィン基剤の包埋媒質で包埋された生体サンプルを脱パラフィン処理する自動化された方法。
【請求項6】
段階(b)及び(c)の期間中、生体サンプルの温度が本質的に室温に維持される請求項5の方法。
【請求項7】
液体組成物が6〜18個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素である請求項5の方法。
【請求項8】
非芳香族炭化水素がアルカン又は線状アルカンである請求項7の方法。
【請求項9】
非芳香族炭化水素が10〜16個の炭素原子を有する線状アルカンである請求項7の方法。
【請求項10】
非芳香族炭化水素がドデカン、ペンタデカン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項7の方法。
【請求項11】
鉱油が液体組成物に添加される請求項5の方法。
【請求項12】
脱パラフィン処理された生体物質が、インサイチューで標的mRNA配列と相補的であ
るポリヌクレオチドプローブと脱パラフィン処理した生体物質を接触させることにより更に操作される請求項1の方法。
【請求項13】
(a)パラフィンの融点より低い温度の非極性有機溶媒とパラフィン包埋生体サンプルを接触させ、
(b)非極性有機溶媒を穏やかに撹拌して非極性有機溶媒中のパラフィンの溶解度を高め、
(c)脱パラフィン処理した生体サンプル中の非極性有機溶媒を水性溶媒と交換し、そして
(d)検出可能なポリヌクレオチドプローブと脱パラフィン処理した生体サンプルを接触させる、
段階を含んでなるパラフィン包埋生体サンプル中のRNA/DNAを検出する方法。
【請求項14】
生体サンプルの温度が段階(a)〜(b)の期間中、包埋媒質の融点以上にはならない請求項13の方法。
【請求項15】
生体サンプルの温度が段階(a)〜(b)の期間中、本質的に室温に維持される請求項13の方法。
【請求項16】
非極性有機溶媒がミネラルスピリットである請求項13の方法。
【請求項17】
非極性有機溶媒が10〜16個の炭素原子を有する線状アルカンである請求項13の方法。
【請求項18】
線状アルカンがドデカン、ペンタデカン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項17の方法。
【請求項19】
鉱油が段階(a)の前に非極性有機溶媒に添加される請求項15の方法。
【請求項20】
ポリヌクレオチドプローブが可視的に検出可能である請求項15の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7c】
【公表番号】特表2008−527330(P2008−527330A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549531(P2007−549531)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046947
【国際公開番号】WO2006/073910
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/046947
【国際公開番号】WO2006/073910
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】
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