説明

低臭素無機塩類の製造方法

【課題】作業環境の悪化および過度の装置腐食を招くようなガスを系内に発生させることなく、臭素含有無機塩類から臭素を除去することが可能な低臭素無機塩類の製造方法を提供する。
【解決手段】臭化物イオン(Br)を含む無機塩類溶液に臭素酸イオン(BrO)および酸を添加して臭素を生成させる工程と、前記生成した臭素を気体として前記無機塩類溶液から放出させる工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低臭素無機塩類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塩化ナトリウム、塩化カルシウムおよび塩化カリウム等に代表される数多くの無機塩類が食品および医薬品等の原料に用いられている。この分野で広く用いられている無機塩類の多くは海塩由来の物質である。このような無機塩類溶液は不純物として例えば臭化物塩を含むため、これら分野の商品全般においては前記臭化物塩を可能な限り除去することが望まれている。
【0003】
臭素除去技術として、一般的には、イオン交換膜法/電気分解法または活性炭やゼオライトを用いた吸着分離法が知られている。イオン交換膜法/電気分解法は、臭素除去に有効であるものの、塩化ナトリウムのような塩化物塩を対象にした場合、塩化物イオンと臭化物イオンの性質が類似するために臭化物イオンのみを選択的に除去することが困難である。吸着分離法は、吸着処理工程の設備費用およびランニングコスト等が高騰する問題がある。
【0004】
特許文献1には、食塩水溶液に次亜塩素酸ナトリウムを添加して臭化物イオンを酸化させ、塩酸酸性に調整した後に、ガスでバブリングすることにより臭素として除去する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−18071
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1の方法によると、臭素ガスと共に多量の塩素ガスが発生する。塩素ガス自体、腐食性が高い上に人体にも極めて有害な物質であるため、安全性を考慮して、例えば塩素ガスを処理する排ガス処理設備が必要になる。また、臭素除去装置を耐食性の高い材料で製作する必要もある。その結果、前記設備を含めた装置が高コストになる問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑み、作業環境の悪化および過度な装置腐食を招くようなガスを系内に発生させることなく、臭素含有無機塩類から臭素を除去することが可能な低臭素無機塩類の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、臭化物イオン(Br)を含む無機塩類溶液に臭素酸イオン(BrO)および酸を添加して臭素を生成させる工程と、前記生成した臭素を気体として前記無機塩類溶液から放出させる工程とを含むことを特徴とする低臭素無機塩類の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の無機塩類の製造において、前記臭素酸イオンは前記臭化物イオン1モルに対して、0.05モルを超え、0.5モル未満の範囲で添加されることが好ましい。
【0009】
本発明の無機塩類の製造において、前記酸は、前記無機塩類溶液にpHが3以下になるように添加されることが好ましい。
【0010】
本発明の無機塩類の製造において、前記生成した臭素を気体として放出する前記工程は、60℃以上の温度の無機塩水溶液を用いることによりなされることを許容する。
【0011】
本発明の無機塩類の製造において、前記生成した臭素を気体として放出する前記工程は、前記無機塩水溶液にガスをバブリングすることによりなされることを許容する。
【0012】
また本発明によると、臭化物イオン(Br)を含む60℃以上の無機塩類溶液に臭素酸イオン(BrO)および酸を添加して臭素を生成させた後、その温度を所望時間保持させることにより前記生成した臭素を気体として前記無機塩類溶液から放出させることを特徴とする低臭素無機塩類の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的低コストの装置で臭素含有量が低減された低臭素無機塩類の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明に係る低臭素無機塩類の製造方法を説明する。
【0015】
まず、臭化物イオンを含有する無機塩類溶液、例えば無機塩類水溶液に臭素酸イオンおよび酸を添加することにより臭素を生成させる。
【0016】
前記無機塩としては例えば塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化マグネシウムなどの塩化物塩、硫酸塩または硝酸塩等を挙げることができる。
【0017】
臭素は臭化物イオン(Br)として、例えば臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム等の臭化物塩の形態で前記無機塩類溶液に含まれる。
【0018】
前記臭素酸イオン(BrO)は、例えば臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、臭素酸マグネシウムの形態で前記無機塩類溶液に添加される。
【0019】
前記臭素酸イオンの添加量は、前記臭素含有無機塩類溶液中に含まれる臭化物イオン1モルに対して0.05モルを超え0.5モル未満の範囲にすることが好ましい。臭素酸イオンの添加量を臭化物イオン1モルに対して0.05モル以下にすると、無機塩類溶液中の臭化物イオンを十分に除去することが困難になる。一方、臭素酸イオンの添加量を臭化物イオン1モルに対し0.5モル以上にすると、無機塩類溶液中に残留する臭素酸イオン量が多くなる恐れがある。より好ましい前記臭素酸イオンの添加量は、臭化物イオン1モルに対し、0.1モルを超え0.3モル未満の範囲である。
【0020】
前記無機塩類溶液への酸の添加にあたって、pH3以下に調節し、溶液中に含まれる臭化物イオンを臭素に変換する反応を促進することが好ましい。より好ましい酸添加によるpHは2以下である。前記酸としては、例えば塩酸、硫酸および硝酸等が挙げられる。
【0021】
前記臭素生成において、臭化ナトリウム(NaBr)を含む塩化ナトリウム水溶液に臭素酸ナトリウム(NaBrO)および硫酸(HSO)を添加して処理する場合、下記式(1)の反応により水溶液中に臭素が生成する。
【0022】
5NaBr + NaBrO + 3HSO
3Br + 3NaSO + 3HO …(1)
また、臭化カリウム(KBr)を含む塩化カリウム水溶液に臭素酸カリウム(NaBrO)および塩酸(HCl)を添加して処理する場合、下記式(2)の反応により水溶液中に臭素が生成する。
【0023】
5KBr + KBrO + 6HCl → 3Br + 6KCl + 3HO …(2)
前記各式に示すように、前記水溶液中の臭化物イオン1モルに対する臭素酸イオンの反応当量は0.2モルである。
【0024】
前記臭素酸イオンの塩、およびpH調整のための酸添加にあたって、臭素を生成するための反応系で随伴する塩が製造対象である無機塩類と同じ物質になるようにそれらを選択すれば、生成される塩が前記無機塩類に異物質として含有されるのを回避できる。具体的には、製造対象の無機塩類が塩化カリウムである場合、臭素酸イオンの塩として臭素酸カリウム、酸として塩酸を選択すれば前述した式(2)の反応から臭素の生成と共に、製造対象と同じ塩化カリウムを生成することが可能になる。
【0025】
次いで、前述した処理により無機塩類中に生成させた臭素をガスとして放出除去する。
【0026】
前記臭素の放出除去手段の1つとして、加熱処理方法を採用することができる。臭素は常圧下で60℃の沸点を有することから、臭素生成後の無機塩類溶液を60℃以上に加熱することによりその臭素をガスとして放出除去する。
【0027】
前記放出除去手段の他の手段として、空気または不活性ガス等のガスを臭素生成後の無機塩類溶液にバブリングする方法を採用することができる。前記不活性ガスとしては例えば窒素等を挙げることができる。なお、このバブリングにおいて、臭素が生成された無機塩類溶液を60℃以上に加熱してもよい。
【0028】
前述した方法で放出、除去した臭素は、スクラバーを用いて水に接触させるか、またはアルカリ溶液中に通すか、いずれかにより容易に回収できる。
【0029】
次いで、臭素を除去した無機塩類溶液から低臭素無機塩類を製造する。具体的には、水に対する溶解度が高い温度依存性を示す無機塩類の場合には溶解度差を利用して結晶を析出する方法を採用する。すなわち、臭素除去後、無機塩類溶液をその塩類が十分に溶解し得る60℃以上に加熱し、その後冷却して無機塩類の結晶を析出させる。続いて、結晶が析出した溶液を固液分離し、乾燥することにより、無機塩類結晶、つまり低臭素無機塩類を製造する。
【0030】
ただし、前述した実施形態では無機塩類の溶液状態でいくつかの処理を施すことから、臭素酸イオンの添加時の無機塩類水溶液の温度を60℃以上とし、臭素の生成、除去の工程中にこの温度を保持することにより、その後の冷却により無機塩類の結晶を析出させることが可能である。また、このような温度保持は前述した臭素をガスとして放出、除去する工程も兼用させることが可能で、工程数の短縮(省略)にも寄与することができる。
【0031】
なお、前記臭素を除去した無機塩類溶液から低臭素無機塩類を製造する方法は、前述した溶解度差を利用する再結晶法に限られず、蒸発乾固、減圧蒸留、中和反応による晶析方法等のような他の晶析方法を採用してもよい。
【0032】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば臭素を含有する無機塩類溶液に臭素酸イオンを添加することにより、従来のように腐食性の高い塩素ガスを随併することなく臭素を生成できる。この後、生成した臭素をガスとして放出、除去することにより、低臭素濃度の無機塩類溶液が得られ、これから低臭素無機塩類を製造できる。
【0033】
したがって、作業環境の悪化、および装置の腐食を招く塩素ガスを系内に発生させることなく、比較的低コストの装置を用いて低臭素無機塩類を製造できる。
【0034】
特に、臭素酸イオンの添加量、酸添加によるpH値および臭素生成後の無機塩類溶液の60℃以上の温度保持および/または同溶液へのガスのバブリングのいずれかを規定することによって、より低臭素の無機塩類を製造できる。また、これらの条件を全て規定することにより、例えば臭素含有量が50mg/kg以下の低臭素無機塩類を製造することが可能になる。
【0035】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0036】
(比較例1)
塩化カリウム((株)富田製薬製)40重量%溶液(溶液温度80℃)に、臭化カリウム(和光純薬製)を加えて臭化物イオン濃度1000mg/Lの溶液を調製し、これを溶液Aとした。溶液Aの温度を80℃に2時間保持させた後、溶液の一部をサンプリングした。その後、直ちに容器外部を水道水に浸漬/通水させ冷却して、最終溶液温度を30℃にし、塩化カリウムの結晶を析出させた。晶析後、固液分離/乾燥を行い、塩化カリウムの結晶を製造した。
【0037】
(実施例1)
比較例1と同様な溶液A(臭化物イオン濃度1000mg/L)にKBrOを臭素酸イオン濃度で80mg/Lになるように加え、溶液中の臭化物イオン1モルに対する臭素酸イオンを0.05モルに調整して、溶液Bとした。なお、臭化物イオン1モルに対する臭素酸イオンのモル数を以下に単にモル比と称する。この溶液Bに塩酸(35%、和光純薬製)を加えて溶液をpH1.5に調整した。この溶液の温度を80℃に2時間保持させた後、その一部をサンプリングした。その後、直ちに容器外部を水道水に浸漬/通水させ冷却して、最終溶液温度を30℃にし、塩化カリウムの結晶を析出させた。晶析後、固液分離/乾燥を行い、塩化カリウムの結晶を製造した。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様な溶液B(モル比;0.05)に塩酸を加えて溶液をpH3.5に調整した以外、実施例1と同様の方法でサンプリングし、かつ塩化カリウムの結晶を製造した。
【0039】
(実施例3)
比較例1と同様な溶液A(臭化物イオン濃度1000mg/L)にKBrOを臭素酸イオン濃度で160mg/Lになるように加え、溶液中のモル比を0.1に調整して、溶液Cとした。この溶液Cに塩酸(35%、和光純薬製)を加えて溶液をpH1.5に調整した。この溶液の温度を80℃に2時間保持させた後、その一部をサンプリングした。その後、直ちに容器外部を水道水に浸漬/通水させ冷却して、最終溶液温度を30℃にし、塩化カリウムの結晶を析出させた。晶析後、固液分離/乾燥を行い、塩化カリウムの結晶を製造した。
【0040】
(実施例4)
実施例3と同様な溶液C(モル比;0.1)に塩酸を加えて溶液をpH3.5に調整した以外、実施例3と同様の方法でサンプリングし、かつ塩化カリウムの結晶を製造した。
【0041】
(実施例5)
比較例1と同様な溶液A(臭化物イオン濃度1000mg/L)にKBrOを臭素酸イオン濃度で320mg/Lになるように加え、溶液中のモル比を0.2に調整して、溶液Dとした。この溶液Dに塩酸(35%、和光純薬製)を加えて溶液をpH1.5に調整し、溶液Eとした。この溶液Eの調製直後にサンプリングした。その後、直ちに容器外部を水道水に浸漬/通水させ冷却して、最終溶液温度を30℃にし、塩化カリウムの結晶を析出させた。晶析後、固液分離/乾燥を行い、塩化カリウムの結晶を製造した。
【0042】
(実施例6)
実施例5と同様な溶液E(モル比;0.2、pH1.5)の調製後に、80℃に2時間保持させ、かつ保持後に溶液の一部をサンプリングした以外、実施例5と同様の方法で塩化カリウムの結晶を製造した。
【0043】
(実施例7)
実施例5と同様な溶液D(モル比;0.2)に塩酸(35%、和光純薬製)を加えて溶液をpH2.5に調整し、溶液Fとした。この溶液の温度を80℃に2時間保持させた後、その一部をサンプリングした。その後、直ちに容器外部を水道水に浸漬/通水させ冷却して、最終溶液温度を30℃にし、塩化カリウムの結晶を析出させた。晶析後、固液分離/乾燥を行い、塩化カリウムの結晶を製造した。
【0044】
(実施例8)
実施例5と同様な溶液D(モル比;0.2)に塩酸(35%、和光純薬製)を加えて溶液をpH1.5に調整し溶液Gとした。溶液Gの調製直後その一部をサンプリングした。その後、直ちに容器外部を水道水に浸漬/通水させ冷却して、最終溶液温度を30℃にし、塩化カリウムの結晶を析出させた。晶析後、固液分離/乾燥を行い、塩化カリウムの結晶を製造した。
【0045】
(実施例9)
実施例8と同様な溶液G(モル比;0.2、pH3.5)の調製後に80℃に2時間保持させ、かつ保持後に溶液の一部をサンプリングした以外、実施例8と同様の方法で塩化カリウムの結晶を製造した。
【0046】
上記比較例および実施例1〜9においてサンプリングした溶液の臭化物イオン濃度を測定した。また、各例で製造した塩化カリウムの結晶の一部をそれぞれ水に溶解させ臭化物イオン濃度を測定した。なお溶液中および結晶中の臭化物イオン濃度の測定は、European Phamacoeia 1997の第3版(1999年改訂)、P.1198の塩化カリウムに含まれる臭化物の検出方法に準じた方法を用いて行った。装置は分光光度計((株)日立製作所、型式:U−3210、波長590nm、光路長10mm)を用いた。これらの測定の結果を下記の表1に示す。
【表1】

【0047】
前記表1から明らかなように、臭化カリウムを含む塩化カリウムの水溶液に臭素酸カリウムを添加した実施例1〜9は臭素酸カリウム無添加の比較例1に比べて塩化カリウム水溶液中の臭化物イオン濃度を低減でき、かつ塩化カリウムの結晶中の臭素含有量も低減できることがわかる。
【0048】
特に、pHおよび80℃の保持時間が同じ条件で臭素酸カリウムのモル比が異なる実施例1、3、6群(または実施例2、9群)を対比すると、臭素酸カリウムのモル比が0.05モルを超え、0.5モル未満の実施例3,6(または実施例9)は、モル比が前記範囲外の実施例1(または実施例2)に比べて塩化カリウム水溶液中の臭化物イオン濃度をより低減でき、かつ塩化カリウムの結晶中の臭素含有量もより低減できることがわかる。
【0049】
また、臭素酸カリウムのモル比および80℃の保持時間が同じ条件でpHが異なる実施例1,2群(または実施例3,4群、さらに実施例6、7,9群)を対比すると、pHが3以下の実施例1(または実施例3、さらに実施例6,7)はpHが3を超える実施例2(または実施例4、さらに実施例9)に比べて塩化カリウム水溶液中の臭化物イオン濃度をより低減でき、かつ塩化カリウムの結晶中の臭素含有量もより低減できることがわかる。
【0050】
さらに、臭素酸カリウムのモル比およびpHが同じ条件で80℃の保持工程の有無[実施例5,6群(または実施例8,9群)]を対比すると、80℃の保持工程を有する実施例6(または実施例9)は保持工程のない実施例5(または実施例8)に比べて臭素含有量の低減効果が高いことがわかる。
【0051】
中でも、臭素酸カリウムのモル比が0.05モルを超え、0.5モル未満で、pHが3以下、80℃の保持工程を有する実施例3,4,6,7は塩化カリウム水溶液中の臭化物イオン濃度をより一層低減でき、かつ塩化カリウムの結晶中の臭素含有量もより一層低減できることがわかる。
【0052】
(実施例10)
実施例3と同様な溶液C(モル比;0.2)に塩酸(35%、和光純薬製:)を加えてpH1.5の溶液を調整した。この溶液に空気を1時間あたり100Lの流量で2時間バブリングした。バブリング直後にその溶液の一部をサンプリングした。その後、直ちに容器外部を水道水に浸漬/通水させ冷却して、最終溶液温度を30℃にし、塩化カリウムの結晶を析出させた。晶析後、固液分離/乾燥を行い、塩化カリウムの結晶を製造した。
【0053】
(実施例11)
実施例5と同様な溶液E(モル比;0.2、pH1.5)に空気を1時間あたり100Lの流量で2時間バブリングした。バブリング直後にその溶液の一部をサンプリングした。その後、直ちに容器外部を水道水に浸漬/通水させ冷却して、最終溶液温度を30℃にし、塩化カリウムの結晶を析出させた。晶析後、固液分離/乾燥を行い、塩化カリウムの結晶を製造した。
【0054】
上記実施例10、11においてサンプリングした溶液の臭化物イオン濃度を前述した方法で測定した。また、各例で製造した塩化カリウムの結晶の一部をそれぞれ水に溶解させ臭化物イオン濃度を前述した方法で測定した。これらの測定を下記表2に示す。なお、下記表2には参考としての実施例3および6を併記する。
【表2】

【0055】
前記表2から明らかなように、臭化カリウムを含む塩化カリウムの水溶液に臭素酸カリウムを添加し、バブリングする実施例10および11は臭素酸カリウム無添加の比較例1に比べて塩化カリウム水溶液中の臭化物イオン濃度を低減でき、かつ塩化カリウムの結晶中の臭素含有量も低減できることがわかる。
【0056】
特に、臭素酸カリウムのモル比、pHが同じ条件で、生成した臭素除去手段のみが異なる実施例3、10群(または実施例6、11群)を対比すると、臭素除去手段がバブリングである実施例10(または実施例11)は同手段が80℃保持である実施例3(または6)と同様な優れた臭素低減効果を示した。
【0057】
本発明による前述の実施例に従うことで、臭素含有の無機塩類の臭素含有量を低減させ、低臭素含有の無機塩類を製造することが可能になる。特に実施例6のように、無機塩類水溶液のpHを2以下にし、臭素酸イオン/臭化物イオンのモル比が0.2/1となるように臭素酸イオンを添加し、かつ溶液を十分な時間60℃以上に保持することにより、50mg/kg以下という極めて低い臭素含有量の無機塩類を製造することができる。
【0058】
なお、実施例では無機塩類として、臭化カリウムを含有する塩化カリウムを用いたが、塩化ナトリウムのような他の種類の無機塩類中の臭化物の含有量を同様な方法で低減させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭化物イオン(Br)を含む無機塩類溶液に臭素酸イオン(BrO)および酸を添加して臭素を生成させる工程と、前記生成した臭素を気体として前記無機塩類溶液から放出させる工程とを含むことを特徴とする低臭素無機塩類の製造方法。
【請求項2】
前記臭素酸イオンは前記臭化物イオン1モルに対して、0.05モルを超え、0.5モル未満の範囲で添加されることを特徴とする請求項1記載の低臭素無機塩類の製造方法。
【請求項3】
前記酸は、前記無機塩類溶液にpHが3以下になるように添加されることを特徴とする請求項1または2記載の低臭素無機塩類の製造方法。
【請求項4】
前記生成した臭素を気体として放出する前記工程は、60℃以上の温度の無機塩類溶液を用いることによりなされることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の低臭素無機塩類の製造方法。
【請求項5】
前記生成した臭素を気体として放出する前記工程は、前記無機塩類溶液に気体をバブリングすることによりなされることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の低臭素無機塩類の製造方法。
【請求項6】
臭化物イオン(Br)を含む60℃以上の無機塩類溶液に臭素酸イオン(BrO)および酸を添加して臭素を生成させた後、その温度を所望時間保持させることにより前記生成した臭素を気体として前記無機塩類溶液から放出させることを特徴とする低臭素無機塩類の製造方法。

【公開番号】特開2006−137646(P2006−137646A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330156(P2004−330156)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)