説明

低騒音静止誘導電気機器

【課題】運転中に発生する振動に伴う騒音を、コストが低くかつ簡易に低減可能とした、タンクの側板の外側に設けられた低騒音静止誘導電気機器を提供することにある。
【解決手段】鉄心、巻線等からなる電気機器本体を収容するタンク1と、タンクの側板2の外側に設けられた縦補強部材30とを備える。縦補強部材の内部に形成される空間内に、重量材33として、例えば、水と砂とセメントとを含む生コンクリートを充填させ、コンクリートとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器やリアクトル等の電気機器本体を収容するタンクの側板の外側に設けられた縦補強部材を備えた低騒音静止誘導電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変圧器やリアクトル等の静止誘導電気機器の騒音は、鉄心の磁歪等による振動が絶縁冷却媒体とタンクの底板を通してタンクの側板に伝達し、側板の振動が騒音として空間に放射されるものである。このような静止誘導電気機器からの振動による騒音を低減するために、種々提案されている。
【0003】
図3は従来の低騒音静止誘導電気機器の一例を示す概略構成正面図、図4は従来の低騒音静止誘導電気機器に用いられる制振鋼板の固定部の要部断面図である。図示するように、低騒音静止誘導電気機器は、そのタンク1の内部に図示しない、鉄心、巻線等からなる電気機器本体が絶縁油等の絶縁冷却媒体と共に収容されており、タンク1の側板2の外側に一定の間隔を空けて設けられた複数の縦補強部材3Aが溶接により取り付けられ、その縦補強部材3Aによって区分された側板2の部分の外側に、制振鋼板5が隣接する縦補強部材3A,3A間にそれぞれ押え金具7により取り付けらて構成されている。
【0004】
押え金具7は、断面がL字状をなし、L字状の曲り角を異に一方を押え部7A、他方を支持部7Bとし、押え部7Aに孔7aが穿設されている。
【0005】
押え金具7を固定するスタットボルト4は、タンク1の側板2に設けた縦補強部材3Aに溶接等により固定されている。このスタットボルト4は制振鋼板5の端面の外側に設けられている。
【0006】
制振鋼板5の端部には、その両面にガスケット6,6′を配設して制振鋼板5を挾み、内側のガスケット6を縦補強部材3Aに当て、外側のガスケット6′の外側に押え金具7を配置し、この押え金具7の孔7aをスタットボルト4に挿入して、座金8を介してナット9により締め付けることにより、制振鋼板5の端部をタンク1の側板2の縦補強部材3Aに固定する。
【0007】
このように構成される低騒音静止誘導電気機器は、例えば、特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開平11−3826号公報(図1及び図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の低騒音静止誘導電気機器では、部品点数が多く、また溶接により取り付けられているため、その組立及び取付作業が繁雑となるという問題がある。また、制振鋼板が用いられているため、コストアップするという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、運転中に発生する振動に伴う騒音を、コストが低くかつ簡易に低減可能とした、タンクの側板の外側に設けられた低騒音静止誘導電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、鉄心、巻線等からなる電気機器本体を収容するタンクと、タンクの側板の外側に設けられた縦補強部材とを備えた低騒音静止誘導電気機器を対象とし、縦補強部材の内部に形成される空間内に重量材が充填されるようにしたものである。
【0011】
第2の発明は、重量材が水と砂とセメントとを含む生コンクリートを縦補強部材内で固化させたコンクリートからなるようにしたものである。
【0012】
第3の発明は、重量材が砂からなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、第1の発明によれば、縦補強部材間の側板は、重量が増した縦補強部材により、その振動が抑制されるので、静止誘導電気機器からの騒音をコストが低くかつ簡易な構成により良好に低減させることができる。
【0014】
第2の発明によれば、縦補強部材により形成される空間内に充填される重量材のコストを低減させると共に、その作業を簡素化させることができる。
【0015】
第3の発明によれば、縦補強部材により形成される空間内に充填される重量材のコストをさらに低減させると共に、その作業をさらに簡素化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の低騒音静止誘導電気機器の一実施形態を示す概略構成正面図、図2は図1のA−A線断面図である。図示するように、低騒音静止誘導電気機器は、そのタンク1の内部に図示しない、鉄心、巻線等からなる電気機器本体が絶縁油等の絶縁冷却媒体と共に収納されており、タンク1の4面の側板2の外側に設けられた長尺の縦補強部材30がタンク1の上下方向に亘ってそれぞれ取り付けらて構成されている。
【0017】
縦補強部材30は、例えば矩形枠(筒)状に形成されており、その上側開口部及び下側開口部は適宜の閉鎖部材31,32がそれぞれ取り付けられ、上側開口部側には封鎖可能な重量材充填口30aが設けられている。なお、上側開口部の閉鎖に閉鎖部材31を用いているが、この閉鎖部材31はタンク1の蓋部材を利用すれば不要である。
【0018】
重量材充填口30aは縦補強部材30をタンク1に取り付ける前に、縦補強部材30の上側開口部端がU字状に切り欠いて形成されており、この状態で縦補強部材30がタンク1に取り付けられている。
【0019】
このような構成においては、重量材33を重量材充填口30aからホース等で流し込み、縦補強部材30の内部に形成される空間内に十分充填された後、U字状に切り欠いて切り落とされた部材を元の位置に戻して溶接により取り付け、重量材充填口30aを封鎖する。
【0020】
重量材33は、コンクリートであり、水と砂(砂利)とセメントとを含む生コンクリートを縦補強部材30内で固化させる。
【0021】
このように構成すると、縦補強部材30,30間の各側板2は、重量が増した縦補強部材30により、その振動が抑制されるので、低騒音静止誘導電器機器からの騒音をコストが低くかつ簡易な構成により良好に低減させることができると共に、重量材を充填する作業を簡素化させることができる。
【0022】
本発明は、重量材33として、砂(砂利)のみを縦補強部材30に充填させるようにしてもよい。このようにすれば、重量材を充填する作業をさらに簡素化させることができる。
【0023】
また本発明は、縦補強部材30に横補強部材が設けられた低騒音静止誘導電気機器にも適用できるので、側板2の振動がさらに抑制されるので、騒音がさらに低減される。
【0024】
上記実施形態では、縦補強部材30の幅寸法を大きくすれば、縦補強部材30,30間の側板2の振動がさらに抑制されるので、騒音がさらに低減される。
【0025】
また上記実施形態では、断面がコ字状の縦補強部材を用いて、重量材31を充填させる空間がこの縦補強部材とタンク1の側板2との間に形成されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の低騒音静止誘導電気機器の一実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】従来の低騒音静止誘導電気機器の一例を示す概略構成正面図である。
【図4】従来の低騒音静止誘導電気機器に用いられる制振鋼板の固定部の要部断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 タンク
2 側板
30 縦補強部材
33 重量材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心、巻線等からなる電気機器本体を収容するタンクと、前記タンクの側板の外側に設けられた縦補強部材とを備えた低騒音静止誘導電気機器において、
前記縦補強部材の内部に形成される空間内に重量材が充填されている低騒音静止誘導電気機器。
【請求項2】
前記重量材は、水と砂とセメントとを含む生コンクリートを前記縦補強部材内で固化させたコンクリートからなる請求項1に記載の低騒音静止誘導電気機器。
【請求項3】
前記重量材は、砂からなる請求項1に記載の低騒音静止誘導電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−49011(P2007−49011A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233128(P2005−233128)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】