説明

住宅完成バックアップ方法、住宅完成バックアップシステム及び住宅完成エスクローシステム

【課題】住宅完成エスクローシステムにおいて、住宅の建築工事の途中で、ビルダーによる建築工事の完了ができなくなっても、住宅を完成させることができる住宅完成バックアップ方法を提供する。
【解決手段】工程終了予定表を作成する工程終了予定表作成工程と、支払予定表作成工程と、各建築工程の工程終了検査日毎に、終了予定の建築工程が終了しているか否かの検査を行う検査工程と、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求確認日毎に、ビルダーからの報酬の支払要求の有無を確認する支払要求確認工程と、を有し、該検査工程の検査結果が「工程未終了」であったとき又は支払要求確認工程の確認結果が「支払要求無し」であったときは、バックアップビルダーに、建築工事の代行指示をすること、を特徴とする住宅完成バックアップ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工主とビルダーとの住宅建築の請負契約に基く報酬の支払いにおいて、信託会社を介在させることによる後払い式出来高払いの住宅完成エスクローシステム、及び該住宅完成エスクローシステムにおいて、ビルダーが建築工事を完了させることができなくなった場合に、バックアップビルダーに、残りの建築工事を代行させ、住宅の建築工事を完了させて、住宅を完成させる住宅完成バックアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
施工主とビルダーとの間の住宅の建築工事の請負契約においては、建築工事の途中で、該ビルダーが倒産等により、建築工事を完了させることができなくなり、住宅の建築工事に対する報酬を全額支払ったにも関らず、住宅が完成されないという該施工主のリスク、及び該施工主の破産等により、建築工事を完了させたにも関らず、報酬が受け取れないという該ビルダーのリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来は、該施工主による住宅の建築工事に対する報酬の先払いが通常であったため、該施工主が上記リスクを一方的に負うことになっていた。そのため、住宅の建築工事の途中で、該ビルダーが倒産等により建築工事を完了させることができなくなった場合には、該施工主が住宅を完成させるためには、新たなビルダーを選定し、終わっていない部分の建築工事を発注し、それに対する報酬を支払わなければならず、その部分についての二重払いのリスクが発生するという問題があった。また、住宅の建築工事が中断されてしまい、住宅が完成されなくなるという問題があった。
【0004】
従って、本発明の課題は、上記のような施工主のリスクを回避し、住宅の建築工事の途中で、ビルダーによる建築工事の完了ができなくなっても、住宅を完成させることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題は、以下の発明によって、解決される。すなわち、本発明(1)は、住宅の建築工事を発注する施工主と、該施工主からの住宅の建築工事を請け負うビルダーと、該施工主が支払うべき報酬を信託財産として預かる信託会社と、該ビルダーが行う建築工事の各建築工程毎に、その工程の終了を検査し又は検査機関に検査をさせ、終了検査に合格したか否かを確認すると共に、該ビルダーからの各建築工程の終了に対する報酬の支払要求を受けて、該信託会社に支払指示をする統括管理体と、建築工事の途中で、建築工事の代行が必要と判断されたときに、該ビルダーに代って建築工事を引き継ぐバックアップビルダーからなる住宅完成エスクローシステムにおいて、
住宅の建築工事の完了までの過程を複数の工程に分け、各建築工程の内容、各建築工程の終了予定日及び各建築工程の終了確認を行う工程終了確認日を定め、工程終了予定表を作成する工程終了予定表作成工程と、
各建築工程の終了毎に、建築工程の終了に対する報酬の支払を、ビルダーが統括管理体に要求する支払要求予定日及び該ビルダーからの報酬の支払要求の有無を確認する支払要求確認日を定め、支払要求予定表を作成する支払予定表作成工程と、
各建築工程の工程終了確認日毎に、終了予定の建築工程が終了しているか否かの確認を行う工程終了確認工程と、
各建築工程の終了に対する報酬の支払要求確認日毎に、該ビルダーからの報酬の支払要求の有無を確認する支払要求確認工程と、
を有し、
該工程終了確認工程の確認結果が「工程未終了」であったとき又は支払要求確認工程の確認結果が「支払要求無し」であったときは、バックアップビルダーに、建築工事の代行指示をすること、
を特徴とする住宅完成バックアップ方法を提供するものである。
【0006】
また、本発明(2)は、前記各建築工程の終了予定日、前記各建築工程の内容、及び該終了予定日から算出される工程終了確認日、並びに前記支払要求予定日及び該支払要求予定日から算出される支払要求確認日を格納し、各建築工程の工程終了確認工程毎に、検査員に該終了予定日及び検査内容を指示するための検査指示書を作成し、各建築工程の工程終了確認工程毎に、工程終了確認者に確認指示を指示するための工程終了確認指示書を作成し、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求確認工程毎に、支払要求確認者に確認指示をするための支払要求確認指示書を作成し、該工程終了確認者からの報告に基づく「工程未終了」の入力があったとき又は該支払要求確認者からの報告に基づく「支払要求無し」の入力があったときは、前記バックアップビルダーに建築工事の代行指示をするための代行指示書を作成する手段を有することを特徴とする本発明(1)の住宅完成バックアップ方法を実施するための住宅完成バックアップシステムを提供するものである。
【0007】
また、本発明(3)は、住宅の建築工事を発注する施工主と、該施工主からの住宅の建築工事を請け負うビルダーと、該施工主が支払うべき報酬を信託財産として預かる信託会社と、該ビルダーが行う建築工事の各建築工程毎に、その工程の終了を検査し又は検査機関に検査をさせ、終了検査に合格したか否かを確認すると共に、該ビルダーからの各建築工程の終了に対する報酬の支払要求を受けて、該信託会社に支払指示をする統括管理体と、建築工事の途中で、建築工事の代行が必要と判断されたときに、該ビルダーに代って建築工事を引き継ぐバックアップビルダーからなる住宅完成エスクローシステムにおいて、
住宅の建築工事の完了までの過程を複数の工程に分け、各建築工程毎に終了検査を行い、終了と判定されたときは、該ビルダー又は該バックアップビルダーが該統括管理体に報酬の支払要求をし、該支払要求を受けた該統括管理体が該信託会社に該ビルダーへの支払指示をし、該支払指示を受けた該信託会社は、該信託財産の中から、終了と判定された建築工程の終了分に対する報酬を該ビルダー又は該バックアップビルダーに支払うこと、
を特徴とする住宅完成エスクローシステムを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記のような施工主のリスクを回避し、住宅の建築工事の途中で、ビルダーによる建築工事の完了ができなくなっても、住宅を完成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の住宅完成バックアップ方法が実施される住宅完成エスクローシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の住宅完成バックアップ方法が実施される住宅完成エスクローシステムである。図1中、住宅完成エスクローシステム20は、住宅の建築工事を発注する施工主1と、該施工主1からの住宅の建築工事を請け負うビルダー2と、該施工主1が支払うべき報酬を信託財産6として預かる信託会社4と、該ビルダー2が行う建築工事の各建築工程毎に、その工程の終了を検査し又は検査機関に検査させ、終了検査に合格したか否かを確認すると共に、終了と判定されたときは、該ビルダー2からの各建築工程の終了に対する報酬の支払要求8を受けて、該信託会社4に支払指示9をする統括管理体3と、建築工事の途中で、建築工事の代行が必要と判断されたときに、該ビルダー2に代って建築工事を引き継ぐバックアップビルダー5からなる。
【0011】
該住宅完成エスクローシステム20は、該施工主1と該ビルダー2との間の住宅の建築工事の請負契約10をきっかけに構築される。先ず、該請負契約10が締結されると、該施工主1、該ビルダー2及び該統括管理体3の3者間で、住宅完成エスクロー契約13が締結される。該住宅完成エスクロー契約13は、該施工主1は、住宅の建築工事に対する報酬を信託財産6として、該信託会社4に預けること、該ビルダー2は、該請負契約10に基づき建築工事を行い、予め定められた住宅の建築工事の過程が終了する毎に、終了検査を受け、終了検査に合格したときには、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求8を該統括管理体3にすること、該統括管理体3は、該ビルダー2からの該支払要求8に基づき、該信託会社4に、該ビルダー2への報酬7の支払指示9ことを、主たる内容とする。
【0012】
次いで、該統括管理体3及び該信託会社4の2者間で、該信託契約11が締結される。該信託契約11は、該施工主1からの該信託財産6を預かると共に、該統括管理体3からの該支払指示9に従い、該信託財産6の中から、該報酬7を該ビルダー2に支払うこと、主たる内容とする。
【0013】
また、該統括管理体3、該ビルダー2及び該バックアップビルダー5の3者間で、住宅完成バックアップ契約12が締結される。該住宅完成バックアップ契約12は、該ビルダー2は、予め定められた住宅の建築工事の過程毎に、該統括管理体3による終了検査を受けること、該統括管理体3は、各建築工程毎に、後述する工程終了確認工程及び支払要求確認工程を行い、その結果が、「工程未終了」又は「支払要求無し」との結果であったときに、該バックアップビルダー5に、建築工事の代行指示14をすること、該バックアップビルダー5は、該統括管理体3からの該建築工事の代行指示14を受け取けたならば、該ビルダー2に代って、住宅の建築工事を代行して、住宅の建築工事を行うことを、主たる内容とする。
【0014】
このように、該住宅完成エスクローシステム20は、該住宅の建築工事の請負契約10をきっかけに締結される、該住宅完成エスクロー契約13、該信託契約11及び該住宅完成バックアップ契約12に基づき構築される。
【0015】
そして、本発明の住宅完成バックアップ方法は、該住宅完成エスクローシステム20において実施される。
【0016】
つまり、本発明の住宅完成バックアップ方法は、該住宅完成エスクローシステム20において、すなわち、住宅の建築工事を発注する施工主と、該施工主からの住宅の建築工事を請け負うビルダーと、該施工主が支払うべき報酬を信託財産として預かる信託会社と、該ビルダーが行う建築工事の各建築工程毎に、その工程の終了を検査し又は検査機関に検査をさせ、終了検査に合格したか否かを確認すると共に、該ビルダーからの各建築工程の終了に対する報酬の支払要求を受けて、該信託会社に支払指示をする統括管理体と、建築工事の途中で、建築工事の代行が必要と判断されたときに、該ビルダーに代って建築工事を引き継ぐバックアップビルダーからなる住宅完成エスクローシステムにおいて、
住宅の建築工事の完了までの過程を複数の工程に分け、各建築工程の内容、各建築工程の終了予定日及び各建築工程の終了確認を行う工程終了確認日を定め、工程終了予定表を作成する工程終了予定表作成工程と、
各建築工程の終了毎に、建築工程の終了に対する報酬の支払を、ビルダーが統括管理体に要求する支払要求予定日及び該ビルダーからの報酬の支払要求の有無を確認する支払要求確認日を定め、支払要求予定表を作成する支払予定表作成工程と、
各建築工程の工程終了確認日毎に、終了予定の建築工程が終了しているか否かの確認を行う工程終了確認工程と、
各建築工程の終了に対する報酬の支払要求確認日毎に、該ビルダーからの報酬の支払要求の有無を確認する支払要求確認工程と、
を有し、
該工程終了確認工程の確認結果が「工程未終了」であったとき又は支払要求確認工程の確認結果が「支払要求無し」であったときは、バックアップビルダーに、建築工事の代行指示をすること、
を特徴とする住宅完成バックアップ方法である。
【0017】
該工程終了予定表作成工程では、先ず、住宅の建築工事の完了までの過程を複数の工程に分ける。例えば、住宅の建築工事の過程を、基礎背筋工事工程、躯体工事工程、中間工事工程及び最終工事工程の4工程に分ける。次いで、複数に分けた各建築工程で完了されるべき内容、言い換えると、検査員により終了検査を受けるべき内容と、各建築工程の終了予定日と、を定める。なお、本発明において、各建築工程の終了とは、該検査員により終了検査を受け、該終了検査に合格することを言う。次いで、各建築工程の終了予定日に基づいて、該工程終了確認日を定める。該工程終了確認日は、各建築工程の終了を確認する日、言い換えると、各建築工程での終了検査に合格していなければならない日である。該工程終了確認日は、例えば、各建築工程の終了予定日の1週間後に相当する日とのように定められる。そして、住宅の建築工事の完了までの各建築工程と、各建築工程の内容と、各建築工程の終了予定日と、工程終了確認日と、が格納された工程終了予定表を作成する。
【0018】
該工程終了予定表は、例えば、コンピュータに格納される。そして、該工程終了予定表が、コンピュータに格納される場合は、該工程終了確認日は、各建築工程の終了予定日の何日後の日を、該工程終了確認日とするかを、コンピュータで定義し、該工程終了予定日を入力することにより算出される。
【0019】
該支払予定表作成工程では、該工程終了予定表作成工程で複数に分けられた各建築工程が終了する毎に、該ビルダー2が、各建築工程の終了に対する報酬の支払を、該統括管理体3に要求する支払要求予定日を定める。該支払要求予定日は、例えば、各建築工程の終了予定日の2週間後に相当する日とのように定められる。次いで、該支払予定表作成工程では、各建築工程の支払要求予定日に基づいて、該ビルダー3からの報酬の支払要求8の有無を確認する支払要求確認日を定める。該支払要求確認日は、例えば、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求予定日の1週間後に相当する日とのように定められる。そして、住宅の建築工事の完了までの各建築工程と、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求予定日と、支払要求確認日と、が格納された支払予定表を作成する。
【0020】
該支払予定表は、例えば、コンピュータに格納される。そして、該支払予定表が、コンピュータに格納される場合は、該支払要求予定日は、各建築工程の終了予定日の何日後の日を、該支払要求予定日とするかを、コンピュータで定義し、該工程終了予定日を入力することにより算出され、また、該支払要求確認日は、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求予定日の何日後の日を、該支払要求確認日とするかを、コンピュータで定義し、該支払要求予定日が算出されることにより、その日を基に算出される。
【0021】
本発明の住宅完成バックアップ方法では、各建築工程の該工程終了確認工程の前に、各建築工程の終了検査を行う。該終了検査では、先ず、各建築工程毎に、その工程の終了予定日又はそれ以前に、検査員に検査内容を指示するための検査指示表を作成し、該検査員に、作成された検査指示表を提示する。次いで、該検査員が、終了予定日に、該検査指示書の検査内容に基づいて、すなわち、該工程終了予定表作成工程で定められた各建築工程で終了されているべき工事内容と、実際の建築現場の工事の状況と、を比較対比することにより、検査を行う。そして、該検査員は、終了予定の建築工程が終了しているか否かを判定する。
【0022】
終了検査の結果が合格(工程終了との判断)であった場合には、該検査員は、合格であった旨を、該ビルダー2及び該統括管理体3に報告する。そして、合格の報告を受けた該ビルダー2は、該統括管理体3に各建築工程の終了に対する報酬の支払要求8をする。該支払要求8を受けた該統括管理体3は、該信託会社4に該支払指示9をする。
【0023】
一方、終了検査の結果が不合格(工程未終了との判断)であった場合には、該検査員は、不合格であった旨を、該ビルダー2及び該統括管理体3に報告する。そして、該ビルダー2は、不合格箇所を修正し、再度、終了検査を受けために、再検査要請をする。該再検査要請を受けた該検査員は、終了検査の再検査を行い、終了予定の建築工程が終了しているか否かを判定し、その結果を該ビルダー2及び該統括管理体3に報告する。なお、該終了検査の再検査は、複数回行われることもある。
【0024】
なお、該統括管理体3は、該検査員よる終了検査を、自ら行ってもよいし、あるいは、他の検査機関に行わせてもよい。
【0025】
該工程終了確認工程では、各建築工程の工程終了確認日毎に、工程終了確認者が、終了予定の建築工程が終了しているか否かの確認、すなわち、その日までに各建築工程の終了検査に合格しているか否かの確認を行う。各建築工程毎に、その工程の工程終了確認日又はそれ以前に、工程終了確認者に工程終了確認を指示するための工程終了確認指示書を作成し、該工程終了確認者に、作成された工程終了確認指示書を提示する。次いで、該工程終了確認者が、該工程終了確認指示書に基づいて、該工程終了確認日に各建築工程が終了しているか否かを確認する。
【0026】
該工程終了予定表が、コンピュータに格納される場合は、各建築工程毎に、コンピュータに格納されている該工程終了予定表を基に、コンピュータにより該検査指示書が作成される。また、予め、コンピュータに、該検査員への該検査指示書の発信日及び発信先を入力しておけば、自動的に、コンピュータにより該検査員に該検査指示書を発信させて提示することもできる。また、各建築工程毎に、コンピュータに格納されている該工程終了予定表を基に、コンピュータにより該工程終了確認指示書が作成される。また、予め、コンピュータに、該工程終了確認者への該工程終了確認指示書の発信日及び発信先を入力しておけば、自動的に、コンピュータにより該工程終了確認者に該工程終了確認指示書を発信させて提示することもできる。
【0027】
該支払要求確認工程では、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求確認日毎に、該ビルダー2からの報酬の支払い要求が有ったか否かの確認を行う。先ず、該支払要求確認工程では、各建築工程毎に、その工程の終了に対する報酬の支払要求確認日又はそれ以前に、支払要求確認者に支払要求確認を指示するための支払要求確認指示書を作成し、該支払要求確認者に、作成された支払要求確認指示書を提示する。次いで、該支払要求確認者が、該支払要求確認指示書に基づいて、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求が有ったか否かを確認する。
【0028】
該支払予定表が、コンピュータに格納される場合は、各建築工程毎に、コンピュータに格納されている該支払予定表を基に、コンピュータにより該支払要求指示書が作成される。また、予め、コンピュータに、該支払要求確認者への該支払要求確認指示書の発信日及び発信先を入力しておけば、自動的に、コンピュータにより該支払要求確認者に該支払要求確認指示書を発信させて提示することもできる。
【0029】
そして、本発明の住宅完成バックアップ方法では、該工程終了確認工程の確認結果が「工程未終了」であったとき又は支払要求確認工程の確認結果が「支払要求無し」であったときは、該バックアップビルダー5に、建築工事の代行指示をする。つまり、該工程終了確認者からの「工事未終了」の報告を受け取ったとき、又は該支払要求確認者からの「支払要求無し」の報告を受け取ったときは、該統括管理者3は、建築工事の代行指示書を作成し、該バックアップビルダー5に、該建築工事の代行を指示する。なお、本発明においては、該工程終了確認工程の確認結果が「工程未終了」であったとき又は支払要求確認工程の確認結果が「支払要求無し」であったときを、建築工事の代行が必要なときと判断する。
【0030】
該工程終了予定表及び該支払予定表が、コンピュータに格納される場合は、コンピュータに、該工程終了確認者からの報告に基づく「工程未終了」の入力又は該支払要求確認者からの報告に基づく「支払要求無し」の入力があったときは、コンピュータにより該建築工事の代行指示書が作成され、予め、コンピュータに、該バックアップビルダー5への発信先を入力しておけば、自動的に、コンピュータにより該バックアップビルダー5に該建築工事の代行指示書を発信させて提示することもできる。
【0031】
本発明の住宅完成バックアップ方法が実施されて、該バックアップビルダー5に、該建築工事の代行指示14がされた後は、該バックアップビルダー5は、該ビルダー2に代って、建築工事を代行し、住宅を完成させるために、住宅の建築工事を行う。
【0032】
なお、該住宅完成エスクローシステム20では、該ビルダー2は、各建築工程毎に、終了検査を受ける。そして、その終了検査の結果、終了と判定された場合(再検査の結果、終了と判定された場合も含む。)、該ビルダー2(該バックアップビルダーが代行している場合は、該バックアップビルダー)は、該統括管理体3に報酬の支払要求8をし、該支払要求8を受けた該統括管理体3は該信託会社4に該ビルダー2への支払指示9をし、該支払指示9を受けた該信託会社4は、該信託財産6の中から、終了と判定された建築工程の終了分に対する報酬を該ビルダー(又は該バックアップビルダー)に支払う。
【0033】
また、上記のように、本発明の住宅完成エスクローシステムは、住宅の建築工事を発注する施工主と、該施工主からの住宅の建築工事を請け負うビルダーと、該施工主が支払うべき報酬を信託財産として預かる信託会社と、該ビルダーが行う建築工事の各建築工程毎に、その工程の終了を検査し又は検査機関に検査させ、終了検査に合格したか否かを確認すると共に、該ビルダーからの各建築工程の終了に対する報酬の支払要求を受けて、該信託会社に支払指示をする統括管理体と、建築工事の途中で、建築工事の代行が必要と判断されたときに、該ビルダーに代って建築工事を引き継ぐバックアップビルダーからなる住宅完成エスクローシステムにおいて、
住宅の建築工事の完了までの過程を複数の工程に分け、各建築工程毎に終了検査を行い、終了と判定されたときは、該ビルダー又は該バックアップビルダーが該統括管理体に報酬の支払要求をし、該支払要求を受けた該統括管理体が該信託会社に該ビルダーへの支払指示をし、該支払指示を受けた該信託会社は、該信託財産の中から、終了と判定された建築工程の終了分に対する報酬を該ビルダー又は該バックアップビルダーに支払うこと、
を特徴とする住宅完成エスクローシステムである。
【0034】
従来の住宅完成エスクローシステムでは、ビルダーが住宅の建築工事を完了することができない状態になってから、例えば、倒産してから、施工主が、新たなビルダーを探すことになるので、住宅の完成が非常に遅れることになる。一方、本発明の住宅完成バックアップ方法では、ビルダーが住宅の建築工事を完了することができなくなるよりも、早い段階、すなわち、各建築工程の終了が予定より遅れだしたという段階で、ビルダーの異常を察知することができ、且つ、速やかにバックアップビルダーが建築工事を継続することになるので、住宅の建築工事の途中で、ビルダーによる建築工事の完了ができなくなっても、住宅の建築工事を中断することなく、住宅を完成させることができる。
【0035】
また、ビルダーは、住宅の建築工事に必要な建築資材を、建築資材の供給元から購入しているので、ビルダーが倒産したときの建築資材代金の不払いのリスクを、該建築資材の供給元が負うことになる。そして、従来の住宅完成エスクローシステムでは、該建築資材の供給元が、ビルダーの異常を察知するのが、ビルダーが住宅の建築工事を完了することができない状態になってから、多くは倒産してからになるので、建築資材の代金の不払い額が非常に多くなってしまう。一方、本発明の住宅完成バックアップ方法では、バックアップビルダーを、該建築資材の供給元とすれば、ビルダーが住宅の建築工事を完了することができなくなるよりも、早い段階で、該バックアップビルダーが、該ビルダーの異常を察知することができるという利点もある。
【0036】
また、本発明の住宅完成エスクローシステムによれば、信託会社が未完成分の報酬を保管するので、出来高払いによる後払いになるため、施工主及びビルダー(又はバックアップビルダー)のリスクを回避することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 施工主
2 ビルダー
3 統括管理体
4 信託会社
5 バックアップビルダー
6 信託財産
7 報酬
8 支払要求
9 支払指示
10 住宅の建築工事の請負契約
11 信託契約
12 住宅完成バックアップ契約
13 住宅完成エスクロー契約
14 建築工事の代行指示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅の建築工事を発注する施工主と、該施工主からの住宅の建築工事を請け負うビルダーと、該施工主が支払うべき報酬を信託財産として預かる信託会社と、該ビルダーが行う建築工事の各建築工程毎に、その工程の終了を検査し又は検査機関に検査をさせ、終了検査に合格したか否かを確認すると共に、該ビルダーからの各建築工程の終了に対する報酬の支払要求を受けて、該信託会社に支払指示をする統括管理体と、建築工事の途中で、建築工事の代行が必要と判断されたときに、該ビルダーに代って建築工事を引き継ぐバックアップビルダーからなる住宅完成エスクローシステムにおいて、
住宅の建築工事の完了までの過程を複数の工程に分け、各建築工程の内容、各建築工程の終了予定日及び各建築工程の終了確認を行う工程終了確認日を定め、工程終了予定表を作成する工程終了予定表作成工程と、
各建築工程の終了毎に、建築工程の終了に対する報酬の支払を、ビルダーが統括管理体に要求する支払要求予定日及び該ビルダーからの報酬の支払要求の有無を確認する支払要求確認日を定め、支払要求予定表を作成する支払予定表作成工程と、
各建築工程の工程終了確認日毎に、終了予定の建築工程が終了しているか否かの確認を行う工程終了確認工程と、
各建築工程の終了に対する報酬の支払要求確認日毎に、該ビルダーからの報酬の支払要求の有無を確認する支払要求確認工程と、
を有し、
該工程終了確認工程の確認結果が「工程未終了」であったとき又は支払要求確認工程の確認結果が「支払要求無し」であったときは、バックアップビルダーに、建築工事の代行指示をすること、
を特徴とする住宅完成バックアップ方法。
【請求項2】
前記各建築工程の終了予定日、前記各建築工程の内容、及び該終了予定日から算出される工程終了確認日、並びに前記支払要求予定日及び該支払要求予定日から算出される支払要求確認日を格納し、各建築工程の工程終了確認工程毎に、検査員に該終了予定日及び検査内容を指示するための検査指示書を作成し、各建築工程の工程終了確認工程毎に、工程終了確認者に確認指示を指示するための工程終了確認指示書を作成し、各建築工程の終了に対する報酬の支払要求確認工程毎に、支払要求確認者に確認指示をするための支払要求確認指示書を作成し、該工程終了確認者からの報告に基づく「工程未終了」の入力があったとき又は該支払要求確認者からの報告に基づく「支払要求無し」の入力があったときは、前記バックアップビルダーに建築工事の代行指示をするための代行指示書を作成する手段を有することを特徴とする請求項1の住宅完成バックアップ方法を実施するための住宅完成バックアップシステム。
【請求項3】
住宅の建築工事を発注する施工主と、該施工主からの住宅の建築工事を請け負うビルダーと、該施工主が支払うべき報酬を信託財産として預かる信託会社と、該ビルダーが行う建築工事の各建築工程毎に、その工程の終了を検査し又は検査機関に検査をさせ、終了検査に合格したか否かを確認すると共に、該ビルダーからの各建築工程の終了に対する報酬の支払要求を受けて、該信託会社に支払指示をする統括管理体と、建築工事の途中で、建築工事の代行が必要と判断されたときに、該ビルダーに代って建築工事を引き継ぐバックアップビルダーからなる住宅完成エスクローシステムにおいて、
住宅の建築工事の完了までの過程を複数の工程に分け、各建築工程毎に終了検査を行い、終了と判定されたときは、該ビルダー又は該バックアップビルダーが該統括管理体に報酬の支払要求をし、該支払要求を受けた該統括管理体が該信託会社に該ビルダーへの支払指示をし、該支払指示を受けた該信託会社は、該信託財産の中から、終了と判定された建築工程の終了分に対する報酬を該ビルダー又は該バックアップビルダーに支払うこと、
を特徴とする住宅完成エスクローシステム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−54085(P2011−54085A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204570(P2009−204570)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(509145978)株式会社GIR (2)
【出願人】(705000293)サムシングホールディングス株式会社 (4)
【出願人】(506170122)株式会社日本エスクロー信託 (1)