説明

住宅用基礎

【課題】配管レイアウトを自由に行うことができ、床下空間内の移動自由度を大幅に高めながらも、基礎としての強度および剛性を向上させた住宅用基礎を提供すること。
【解決手段】地表面から所定深さ位置まで形成された複数の地中梁部20と、地中梁部20の上端面に連結するスラブ部30と、スラブ部30の外周縁部のみを起立させた立ち上がり部40とを有し、地中梁部20は、スラブ部30の外周縁に沿って形成される外周縁梁部22と、外周縁梁部22の内側領域に形成される内側梁部24と、少なくとも内側梁部24の内側領域に形成される補助梁部26とにより構成され、内側梁部24の平面配置形状は、外周縁梁部22に内接する菱形の外形線配置をなし、内側梁部24と補助梁部26との交差部および補助梁部26どうしの交差部の平面位置に対応させて、スラブ部30表面に束部連結部材70が配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅用基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
地上に建設される構造物の基礎としては、施工現場にコンクリートを打設してなるコンクリート基礎がある。このようなコンクリート基礎は、地表面から浅い位置に支持地盤がある場合において広く用いられている。
住宅用に用いられる基礎としては、このようなコンクリート基礎のうち、特に布基礎やべた基礎と呼ばれるものが主に用いられている。
【0003】
このような布基礎やべた基礎と呼ばれるコンクリート基礎は、特許文献1内の図1において開示されているように、内基礎に相当する部分や基礎の内側領域における基礎の立ち上がり部の存在により、配管のレイアウトに大きな制約を受けることになる。また、配管のメンテナンスを行う際には、作業者が床下空間に潜り込み、目視により配管の状態確認を行うことが多いが、このような場合においても、内基礎に相当する部分や基礎の内側領域における基礎の立ち上がり部はきわめて邪魔な存在である。
また、住宅をリフォームする必要がある場合には、内基礎や基礎の立ち上がり部の存在によりレイアウトの変更にも支障を生じていた。
これに対して特許文献2の発明では、特許文献内の図1および図2において開示されているように、内基礎に開口部を設けることによって排水管の配管レイアウトに自由度を持たせることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献2】特許第4223900号公報(図1)
【特許文献1】特許第4363597号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されている布基礎のように、内基礎部分や基礎の立ち上がり部に開口部を設けたとしても、内基礎や立ち上がり部が存在している以上は配管の自由度は完全ではない。
また、配管のメンテナンスを行う際には、作業者の目視が行われているが、床下空間内に内基礎や立ち上がり部が存在していると、作業者の床下空間での移動が困難である点については、未だに改善されていない状況にあるといえる。
【0006】
そこで本願発明は、配管レイアウトを自由に行うことができ、床下空間内の移動自由度を大幅に高めながらも、基礎としての強度および剛性を向上させた住宅用基礎を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は鋭意研究を行った結果、本願発明者は以下の構成に想到した。
すなわち、地表面から所定深さ位置まで形成された複数の地中梁部と、該地中梁部の上端面に連結するスラブ部と、該スラブ部の外周縁部のみを起立させた立ち上がり部とを有し、前記地中梁部は、前記スラブ部の外周縁に沿って形成される外周縁梁部と、該外周縁梁部の内側領域に形成される内側梁部と、少なくとも前記内側梁部の内側領域に形成される補助梁部と、により構成されていて、前記内側梁部の平面配置形状は、前記外周縁梁部に内接する菱形の外形線配置をなしていて、前記内側梁部と前記補助梁部との交差部および前記補助梁部どうしの交差部の平面位置に対応させて、前記スラブ部表面に束部連結部材が配設されていることを特徴とする住宅用基礎である。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる住宅用基礎によれば、基礎の外周縁のみに立ち上がり部を形成しているので、床下空間に相当する部分にはスラブ部の表面から立ち上がり部のような大きな突出部位がなく、設計時における配管レイアウトはもちろんのこと、リフォーム時等における配管の敷設替えを行う際の自由度が大幅に向上する。
また、スラブ部の下面には外周縁梁部と内側梁部と補助梁部がそれぞれめぐらされており、内側梁部の平面配列形状が外周縁梁部の平面形状に内接する菱形の外形線配置をなしているので、基礎全体の水平面内における剛性を大幅に向上させることができる。
さらに、内側梁部と補助梁部および補助梁部どうしがそれぞれ交差する部分の平面直上位置に、束部連結部材を配設しているので、上部構造物からスラブ部に作用する集中加重を適切に受けることができ、スラブ部が破損することがなく、高強度で信頼性の高い住宅用基礎を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態にかかる住宅用基礎の平面図である。
【図2】図1中のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかる住宅用基礎10の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態にかかる住宅用基礎の平面図である。図2は、図1中のA−A線における断面図である。図1では、実際に見えている部分を実線であらわし、実際には見えない部分を破線であらわしている。
本実施形態における住宅用基礎10は、原地盤の地表面SLから地中の所定深さ位置まで形成された地中梁部20と、地中梁部20の上端と一体に形成されると共に、地表面を覆うスラブ部30と、スラブ部30の外周縁部に沿って形成された立ち上がり部40とを有している。
【0011】
地中梁部20は、スラブ部30の外周縁部分に沿って形成した外周縁梁部22と、スラブ部30の外周縁梁部22に囲まれた内側領域にそれぞれ所定の深さ寸法まで形成された内側梁部24および補助梁部26とにより構成されている。
本実施形態における内側梁部24は、外周縁梁部22の平面配置形状に内接する菱形配列形状に形成されている。また、補助梁部26は、内側梁部24の各対向辺の中点どうしを連結するように形成されている。図1にも示されているように、外周縁梁部22により囲まれた領域は正方形状をなしているので、内側梁部24の平面形状も正方形に形成されることになる。すなわち、内側梁部24と補助梁部26との平面配列は略「田」の字型をなしている。
【0012】
このように形成された田の字型をなす内側梁部24と補助梁部26は、外周縁梁部22の配設状態に対して水平面内に45°回転させた状態で配設されている。これによりスラブ部30の底面には地中梁部20による補剛体が形成されることになり、住宅用基礎10としての水平面内に作用する外力に対する剛性(耐荷強度)を向上させることができ好都合である。
【0013】
地中梁部20を構成する外周縁梁部22と、内側梁部24と補助梁部26の下端部位置はそれぞれ支持地盤面または地盤改良面位置に到達させている。図2に示すように本実施形態においては、原地盤がほぼ水平面であるので、外周縁梁部22と、内側梁部24と補助梁部26の下端部位置までの原地盤地表面からの深さ位置はそれぞれ等しくなっている。外周縁梁部22の内側の側面と、内側梁部24および補助梁部26の側面には断熱材パネル50が取り付けられている。
【0014】
もし、支持地盤面や地盤改良面が地表面から深い位置にある場合には、いわゆるラップルコンクリート(図示せず)を施工し、ラップルコンクリートに地中梁部20の下端部をアンカーボルト等により連結させた形態を採用することもできる。
【0015】
地中梁部20の上部にはスラブ部30が形成されている。スラブ部30の外周縁には立ち上がり部40が形成されている。本実施形態においては、地中梁部20、スラブ部30、立ち上がり部40は、1回のコンクリート打設により一体に形成されている。また、スラブ部30の底面と、立ち上がり部40の内側側面、スラブ部30の上面において、立ち上がり部40との接続部から所要範囲にわたる部分にも断熱材パネル50がそれぞれ取り付けられている。
スラブ部30の上面には内側梁部24と補助梁部26の交差部分および補助梁部26どうしの交差部分の直上位置に図示しない束部を連結するための連結用部材70が配設されている。このような連結用部材70としては、本願発明者により発明された特許第3814607号にかかる連結構造を採用することができる。
【0016】
本実施形態における住宅用基礎10の上面には、スラブ部30の外周縁部分のみに立ち上がり部40が形成され、線条体とみなせる束部(図示せず)が配設されているだけであるので、立ち上がり部40以外には幅広な突出物が形成されていない。このような住宅用基礎10であれば、住宅等の上部構造物を構築した後の床下空間を利用する際における自由度が大幅に向上し、新築時における配管レイアウトが自在になることはもちろんのこと、住宅のリフォームを行う際の自由度も大幅に向上するため好都合である。床下空間での作業者の移動容易さも向上するのはもちろんである。
【0017】
次に本実施形態における住宅用基礎10の構築方法について説明する。
ここでは、住宅の建設予定地における地盤支持力は、原地盤の地表面部分においても十分であるという前提で説明を行う。
まず、地中梁部20を形成するために地中梁部20の平面配列に沿って凹溝を掘削する。このとき発生した掘削土は敷地内に仮置きしておく。原地盤の地表面SLから所定深さまで凹溝を掘削した後、凹溝の底面を均した後に基礎砕石および捨てコンクリートを施工する。
【0018】
捨てコンクリートが硬化した後、凹溝により区切られた原地盤の地表面SLに、掘削土を盛土し、盛土を転圧し、住宅を構築する土地内における住宅用基礎10の外周領域の地盤面高さを設計地盤面GLにする。スラブ部30の設計高さおよび設計地盤面GLの高さ位置に対して充てん物60としての掘削土が不足する場合には、再生砕石等を充てん物60に混合させても良い。
このように、住宅用基礎10の構築時における発生土を現場内で有効利用することができるため、掘削土の搬送費の節約や掘削土の搬送に伴う二酸化炭素の排出をなくすことができるため、環境に与える負荷を大幅に削減することができる点で好都合である。
【0019】
充てん物60の盛土(充てん)を終えたら、凹溝の内側壁面および充てん物60の上面に断熱材パネル50を敷設する。この断熱材パネル50は地中梁部20のコンクリート打設をする際の埋め殺し型枠としても用いられる。断熱材パネル50の敷設を終えたら、スラブ部30および立ち上がり部40の鉄筋および型枠を公知の方法で組み立てた後、型枠にコンクリートを投入することで、地中梁部20、スラブ部30、立ち上がり部40を一回で打設する。このとき、スラブ部30の表面には、地中梁部20が交差する部分に束部を連結させるための連結用部材70を予めスラブ部30の鉄筋に連結させた状態で配設しておく。
【0020】
型枠に打設したコンクリートが硬化したら、スラブ部30および立ち上がり部40の型枠を解体し、コンクリートを養生する。コンクリートの養生を終えた後、立ち上がり部40の内周面と、立ち上がり部40内周面よりも内側の所要範囲にわたってスラブ部30の上面に断熱材パネル50を取り付ければ、本実施形態にかかる住宅用基礎10を構築することができる。このようにして住宅用基礎10を構築した後、住宅等の上部構造物の構築をすることができる。住宅を構築する際には、床部材と住宅用基礎10との間に連結用部材70を介して束部を簡単に取り付けることができる。
このようにして構築された住宅は、床下空間には立ち上がり部40の他にも束部材が配設されてはいるものの、束部材は内基礎等に比較してきわめて細く、線条体とみなすことができる。よって、床下空間における配管レイアウトや床下空間内での作業者の移動においては何ら支障を生じさせるものではないのである。
【0021】
以上に住宅用基礎10について実施形態に基づいて説明をしたが、本願発明は以上の実施形態に限定されるものではないのはもちろんである。例えば、本実施形態においては、スラブ部30の平面形状が正方形であるため、内側梁部24の平面配列形状が正方形をなしているが、スラブ部30の平面形状が長方形であれば、内側梁部24の平面配列形状は外周縁梁部22に内接する菱形の外形線配置となるのはもちろんである。
また、本実施形態においては、補助梁部26を内側梁部24により囲まれた内側領域のみに配設しているが、内側梁部24により囲まれた内側領域に配設した補助梁部26の端縁部を延長し、外周縁梁部22に直接連結させるような配列に形成してもよいのはもちろんである。
【0022】
また、本実施形態においては、地中梁部20の施工深度については特に言及していないが、住宅を建築する上で適用される各種の法律等により規制がある場合には、その規制により設定されている基準を満足する数値条件で施工するのはもちろんである。
【符号の説明】
【0023】
10 住宅用基礎
20 地中梁部
22 外周縁梁部
24 内側梁部
26 補助梁部
30 スラブ部
40 立ち上がり部
50 断熱材パネル
60 充てん物
70 連結用部材
GL 設計地盤面
SL 原地盤の地表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面から所定深さ位置まで形成された複数の地中梁部と、該地中梁部の上端面に連結するスラブ部と、該スラブ部の外周縁部のみを起立させた立ち上がり部とを有し、
前記地中梁部は、前記スラブ部の外周縁に沿って形成される外周縁梁部と、該外周縁梁部の内側領域に形成される内側梁部と、少なくとも前記内側梁部の内側領域に形成される補助梁部と、により構成されていて、
前記内側梁部の平面配置形状は、前記外周縁梁部に内接する菱形の外形線配置をなしていて、
前記内側梁部と前記補助梁部との交差部および前記補助梁部どうしの交差部の平面位置に対応させて、前記スラブ部表面に束部連結部材が配設されていることを特徴とする住宅用基礎。
【請求項2】
原地盤と前記スラブ部との間には充てん物が充てんされていて、当該充てん物には、前記地中梁部を根入れさせた際に発生した掘削土が含まれていることを特徴とする請求項1記載の住宅用基礎。
【請求項3】
前記束部平面位置には、前記スラブ部と束部とを連結するための連結具が埋設されていることを特徴とする請求項1または2記載の住宅用基礎。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−163032(P2011−163032A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28085(P2010−28085)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(310002237)
【Fターム(参考)】