説明

作動工具

【課題】 筒体の加工精度のバラツキ等に影響を受けることなく筒体を常に適正な状態に変形させることができ、母材に対して固着部材を確実に固着させることのできる作動工具を提供する。
【解決手段】 ネジ体に対して駆動源からの駆動を伝達する駆動伝達機構を備え、駆動伝達機構が駆動源から駆動を受けてネジ体を軸線周りで回転させることで母材に挿通した筒体を拡大変形させる作動工具であって、押し操作又は引き操作によって駆動源の駆動を停止させるスイッチと、駆動伝達機構の回転に連動して一定位置で回転可能に設けられ、外周に螺旋状の溝が形成された回転体と、回転体の溝の少なくとも一部に嵌入される嵌入凸部を有するストライカーとを備え、ストライカーは、回転体が回転したときに嵌入凸部が溝に案内されて回転体の回転中心線方向に移動するように構成され、所定量移動したときにスイッチを押し操作又は引き操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材、パイプ、形鋼等といった母材に固着部材を固着させる作動工具に関し、特には、一端に鍔部の形成された筒体を備えた固着部材用の作動工具であって、筒体の一部を径方向に拡大変形させて鍔部と拡大部分とで母材を挟み込んだ状態にして固着部材(筒体)を固着させる作動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、板材やパイプ等の母材に固着されることで目的に応じた機能を発揮する固着部材が提供されている。すなわち、重ね合わせた板材に固着されることで、板材同士を締結する締結部材や、薄板やパイプに固着されることで、十分なネジ穴を確保できない薄板等に十分な深さのネジ穴を付与するナット部材等が提供されている。
【0003】
そして、これらの固着部材には、図7(a)及び図8(a)に示す如く、一端に鍔部B,B’が形成された筒体C,C’を備えたものがある。かかる固着部材F,Nは、図7(b)及び図8(b)に示す如く、母材Pに対して筒体C,C’が挿通された状態で、該筒体C,C’に螺入されたネジ体Sを回転させることで、筒体C,C’の一部が径方向に拡大変形するようになっており、拡大変形した部分L,L’と鍔部B,B’とが母材Pを挟み込むことで母材Pに対して固着されるようになっている。すなわち、締結部材Fは、図7(b)に示す如く、鍔部Bと筒体Cの拡大部分Lとが母材Pを挟み込むことで、重ね合わせた母材P同士を締結するようになっている。これに対し、ナット部材Nは、図8(b)に示す如く、鍔部B’と拡大部分L’とが母材Pを挟み込んだ状態で筒体C’からネジ体S’を抜き取ることで、所望する長さのボルト等を筒体C’に螺入できるようになっている。
【0004】
そして、上記構成の固着部材(締結部材Fやナット部材N)を母材Pに固着させるに当り、専用の作動工具が用いられる。かかる作動工具には、駆動源を装備したハンディーツール(例えば、チャック付きドリル等)に着脱可能なアタッチメントとされたものや、当該作動工具自体に駆動源等を備えてハンディーツールとされたものがあるが、何れも、ネジ体Sに対して駆動源からの回転駆動を伝達する駆動伝達機構を備えており、該駆動伝達機構を介してネジ体S,S’を回転させるようになっている。
【0005】
そして、この種の作動工具は、駆動伝達機構にトルクリミッタ(クラッチ機構)が介装されており、ネジ体S,S’に対して回転トルクを所定トルク(筒体C,C’を拡大変形させるのに必要とされる設計上のトルク)以上伝達させないようになっている。すなわち、作動工具は、トルクリミッタでネジ体S,S’に作用させる回転トルクを管理することで、筒体C,C’を必要以上に変形させないようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−236767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記構成の固着部材F,Nは、母材Pを境にして鍔部B,B’が存在する一方側とは反対側で筒体C,C’の一部が変形するように構成されているため、母材Pの存在で筒体C,C’の変形状態を確認することが困難な場合が多いことから、通常、作業者は、トルクリミッタの作動状態(例えば、トルクリミッタの作動音等)を基に作業の完了の良否を判断している。すなわち、作業者は、筒体C,C’を適正に変形させるのに必要な回転トルクがネジ体Sに生じたことを根拠に作業を完了するようにしている。
【0007】
しかしながら、上記構成の固着部材F,Nは、筒体C,C’の加工精度のバラツキや母材Pに対する挿通状態の相違等によって、ネジ体Sに所定の回転トルクが作用しても、筒体C,C’が十分に変形しない場合がある。
【0008】
そのため、上述の如く、ネジ体S,S’に伝達する回転トルクが所定トルクに設定されたトルクリミッタの作動状態を頼りに作業を行うと、固着部材F,Nが母材Pに固着されていない状態で作業が完了されてしまうことがあった。
【0009】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、筒体に螺入されたネジ体を回転させることで筒体を径方向に拡大変形させるように構成された固着部材を用いることを前提に、筒体の加工精度のバラツキ等に影響を受けることなく筒体を常に適正な状態に変形させることができ、母材に対して固着部材を確実に固着させることのできる作動工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る作動工具は、一端に鍔部の形成された筒体に螺入されるネジ体に対して駆動源からの駆動を伝達する駆動伝達機構を備え、駆動伝達機構が駆動源からの駆動を受けてネジ体を軸線周りで回転させることで、母材に挿通した筒体の軸線方向の一部を径方向に拡大変形させ、拡大部分と鍔部とで母材を挟み込んで筒体を固着させる作動工具であって、押し操作又は引き操作によって駆動源の駆動を停止させるスイッチと、駆動伝達機構の回転に連動して一定位置で回転可能に設けられるとともに、外周に螺旋状の溝が形成された回転体と、回転体の溝の少なくとも一部に嵌入される嵌入凸部を有するストライカーとを備え、該ストライカーは、回転体が回転したときに嵌入凸部が前記溝に案内されて該回転体の回転中心線方向に移動するように構成されるとともに、所定量移動したときにスイッチを押し操作又は引き操作するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成の作動工具によれば、回転体が駆動伝達機構と連動して回転すると該回転体に形成された螺旋状の溝に嵌入凸部が案内され、ストライカーが回転体の回転中心線方向に移動することになる。このストライカーの移動量は、螺旋状の溝のピッチと回転体の回転量との相関関係により決定されるため、所定量移動したときにスイッチを押し操作又は引き操作することになる位置にストライカーを配置しておくことで、回転体が連動する駆動伝達機構を介して回転するネジ体の回転量が所定量になった状態で、ストライカーがスイッチを押し操作又は引き操作して駆動源が停止する。
【0012】
従って、ネジ体による筒体に対する引き込み量(ネジ体の回転量に対応する引き込み量)は、ストライカーの移動量(スイッチを押し操作又は引き操作するまでの所定量の移動)と対応することになるため、筒体の変形が常に一定で且つ適正な状態となる。すなわち、上記構成の作動工具は、ネジ体に生じるトルクに関係なく、筒体に対するネジ体の引き込み量を常時一定にできるため、筒体の径方向外方への変形を常に適正で且つ一定の状態で起こさせることができる。
【0013】
本発明の一態様として、前記ストライカーは、前記溝に対する嵌入凸部の嵌入位置が回転体の回転中心線方向に位置変更可能に設けられていることが好ましい。このようにすれば、ストライカーの移動量を調節することができるため、ネジ体による筒体の引き込み量を調整することができる。これにより、筒体の変形量もその施工に応じた適正なものに調節することができる。
【0014】
本発明の他態様として、ネジ体の一端に形成された頭部に対して係合可能に形成されるとともに、駆動伝達機構に作動的に連結されてネジ体と同心又は略同心で回転可能に設けられた第一係合部と、筒体の鍔部に対して係合可能に形成されるとともに、筒体の軸線周りで回転不能に設けられた第二係合部とを備えてもよい。このようにすれば、筒体の供回りを防止した上でネジ体を円滑に回転させることができる。
【0015】
本発明の別の態様として、前記駆動伝達機構は、第一係合部に所定の回転負荷が生じていないときに回転体に対して駆動源からの駆動の伝達を解除する一方で、第一係合部に所定の回転負荷が生じたときに回転体に対して駆動源からの駆動を伝達するクラッチ手段を備えていることが好ましい。このようにすれば、ネジ体が筒体に対して緩んだ状態で螺入されているような場合、第一係合部に負荷が作用するまで、すなわち、ネジ体が筒体を変形させるまで、回転体が回転することがない。これにより、筒体が変形を開始した時点で回転体が回転してストライカーを移動させることになり、作業を行うに当たって、筒体に対するネジ体の緩みを気にすることなく、筒体を適切に変形させることができる。
【0016】
この場合、前記クラッチ手段は、前記回転体に対して同心又は略同心で遊挿され、駆動源からの駆動を受けて軸線周りで回転する軸体と、該軸体の先端側で回転体に対して一端を対向させて配置され、軸線方向に移動自在に設けられるとともに軸体からの回転トルクが伝達されて軸線周りで回転可能に設けられた第一クラッチ体と、第一クラッチ体の他端に対して一端側を対向させて配置され、他端側に第一係合部が直接的又は間接的に連結されるとともに第一クラッチ体と同心又は略同心で回転自在に設けられた第二クラッチ体とを備え、前記第一クラッチ体は、付勢手段によって第二クラッチ体に向けて付勢され、前記回転体及び第一クラッチ体は、軸体からの回転トルクを伝達すべく対向部同士が係合可能に構成され、第一クラッチ体又は第二クラッチ体の何れか一方には、他方に向けて突出した第一トルク伝達部が形成され、他方には、前記第一トルク伝達部の先端が摺接可能となるように周方向に延びるとともに、始点側よりも終点側が前記一方側に位置するように傾斜した傾斜部と、該傾斜部の終点に隣接して前記第一トルク伝達部を周方向で係止可能に形成された第二トルク伝達部とが設けられ、常態で第一トルク伝達部の先端が第一クラッチ体に対する付勢手段による付勢で他方における傾斜部の始点側に圧接し、第一係合部に回転負荷が生じたときに、第一トルク伝達部が傾斜部上を始点側から終点側に向けて摺動して第一クラッチ体を回転体側に移動させ、第一トルク伝達部が第二トルク伝達部に係止された状態で、回転体と第一クラッチ体とが係合するように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成のクラッチ手段によれば、第一クラッチ体が付勢手段の付勢によって第二クラッチ体に押し付けられた状態となり、駆動源が始動した初期の段階において、該駆動源の駆動によって軸体及び第一クラッチ体が回転すると、第一クラッチ体と第二クラッチ体との間に生じる摩擦抵抗によって第二クラッチ体が回転する。そうすると、第二クラッチ体に連結された第一係合部が軸周りで回転し、ネジ体を軸心周りで回転させることになる。そして、筒体に対してネジ体に緩みがある場合には、ネジ体が筒体に対して軸線方向の圧縮力(引き込み力)を作用させない状態で回転することになる。すなわち、第一クラッチ体と第二クラッチ体との摩擦抵抗で伝達可能な小さな回転トルクでネジ体が回転することになる。このとき、第一クラッチ体が第二クラッチ体側に位置し、回転体に対して離間した状態になっているため、回転体が停止状態で維持する。
【0018】
そして、ネジ体が筒体を引き込み始めると、第一クラッチ体が回転し続けるのに対し、第二クラッチ体は、第一クラッチ体との摩擦抵抗だけで回転トルクを伝達できなくなって停止した状態になる。このとき、第一クラッチ体は、上述の如く、回転し続けているため、第一クラッチ体又は第二クラッチ体の何れか一方の設けられた第一トルク伝達部が他方の傾斜部上を摺動した状態になる。そうすると、傾斜部が始点より終点が一方側に位置するように傾斜しているため、第一トルク伝達部が傾斜部を軸線方向に押すことになり、第一クラッチ体が回転するにつれ、第一クラッチ体と第二クラッチ体とが軸線方向で互いに離間することになる。この状態においても、第二クラッチ体に対してトルク伝達できずに第一トルク伝達部が傾斜部上を摺動しているため、第二クラッチ体は停止状態で維持することになる。
【0019】
そして、第一トルク伝達部が第二トルク伝達部に係止されると、第一クラッチ体と回転体とが係合することになり、第一クラッチ体と第二クラッチ体との間でのトルク伝達が可能になるとともに、第一クラッチ体と回転体との間でのトルク伝達が可能になる。
【0020】
この状態で、ネジ体は筒体に対する引き込みを開始する状態にあるため、第一クラッチ体、及び第二クラッチ体が回転すると、ネジ体が筒体を引き込んで軸線方向に変形させ始めることになる。これに併せて、回転体の回転によってストライカーが移動し始めることになる。そして、ネジ体が筒体を引き込んで変形させ、ストライカーがスイッチを押し操作又は引き操作した時点で、駆動源の駆動が停止される。これにより、筒体に対してネジ体の緩みがあっても、その分のネジ体の回転量がストライカーの移動に反映されることがなく、母材に対してより適正に筒体を固着させることができる。なお、クラッチ手段を設けない場合には、その筒体の対するネジ体の緩み(余裕代)を考慮した位置にストライカーを配置すれば、適正な締結作業を行うことはできるが、締結部材を母材に挿入する前に予め筒体に対するネジ体の緩み有無や緩みの量を把握する必要があるので、上記構成を採用することでより作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る作動工具によれば、筒体に螺入されたネジ体を回転させることで筒体を径方向に拡大変形させるように構成された固着部材を用いることを前提に、筒体の加工精度のバラツキ等に影響を受けることなく筒体を常に適正な状態に変形させることができ、母材に対して固着部材を確実に固着させることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る作動工具について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本実施形態に係る作動工具は、重ね合わせた母材(例えば、板材)同士を締結部材で締結する際に用いられるものである。
【0024】
ここで、作動工具の説明に先立って、前提となる締結部材(固着部材)について説明すると、かかる締結部材は、図7(a)に示す如く、一端に鍔部Bが形成された筒体Cと、一端に頭部Hが形成され、鍔部B側から筒体Cに螺入されたネジ体Sとを備えている。前記筒体Cは、他端部の内周に雌ネジ(採番しない)が形成され、その雌ネジ部分よりも一端側の内径が該雌ネジ部分の内径よりも大径にされている。すなわち、筒体Cは、雌ネジの形成された他端部よりも一端側が薄肉に形成されている。これに対し、ネジ体Sは、軸状の雄ネジ部(採番しない)と、該雄ネジ部の一端に形成された頭部Hとを備えている。そして、雄ネジ部は、全ネジとされ、頭部Hは、雄ネジ部よりも大径に形成されるとともに、作動工具の後述する第一係合部と係合可能に構成されている。なお、頭部は、外周形状が多角形状に設定されたり、軸心を通るように十字状又は一文字状の溝や多角形状の凹部が形成されたりしている。これにより、第一係合部が頭部の外周や、溝、凹部等に係合することで、雄ネジ部の軸線周りでの回転トルクが伝達されるようになっている。
【0025】
そして、該締結部材Fは、図7(b)に示す如く、筒体Cを母材Pに挿通した状態でネジ体Sを軸線周りで回転させることで、ネジ体Sが回転しつつ筒体Cに対して軸線方向の圧縮力(引き込み力)を作用させるようになっており、その圧縮力によって筒体C(薄肉部分)が軸線方向に変形するようになっている。すなわち、該締結部材Fは、軸線方向の圧縮作用に伴って筒体Cを軸線方向に圧縮変形することで、軸線方向の一部が径方向外方に拡大変形して拡大部分Lが形成されるようになっている。これにより、上記構成の締結部材Fは、重ね合わせた母材P,Pを筒体Cの鍔部Bと、筒体Cにおける拡大部分Lとで挟み込んだ状態にして締結できるようになっている。
【0026】
本実施形態に係る作動工具1は、上記構成の締結部材Fを前提としたもので、図1に示す如く、駆動源(図示しない)からの駆動をネジ体Sに伝達する駆動伝達機構30(図4参照)と、ネジ体Sの一端に形成された頭部Hに対して係合可能に形成されるとともに、駆動伝達機構30に作動的に連結されてネジ体Sと同心又は略同心で回転可能に設けられた第一係合部40と、筒体Cの鍔部Bに対して係合可能に形成されるとともに、筒体Cの軸線周りで回転不能に設けられた第二係合部50とを備えている。
【0027】
具体的に説明すると、本実施形態に係る作動工具1は、ハンディーツールであり、図1〜図3に示す如く、駆動源が内装されたツール本体2と、ツール本体2に連設されるとともに、駆動源からの駆動をネジ体Sに伝達する駆動伝達機構30(図4参照)が内装された作動部3と、第一係合部40が形成されるとともに該駆動伝達機構30からの回転を受けて回転するシャフト4と、第一係合部40を包囲するように第二係合部50が形成され、シャフト4と同心になるように作動部3に連設された筒状のソケット体5とを備えている。
【0028】
前記ツール本体2は、上下方向の延びるように形成されたハンドル部20と、該ハンドル部20の上端部に連設され、横方向に延びるように形成された駆動源内装部21とを備えている。前記ハンドル部20には、駆動源を始動させるためのトリガースイッチ22が設けられている。かかるトリガースイッチ22は、作業者がハンドル部20を把持した指でトリガーを引き操作できるように設けられている。前記駆動源内装部21は、前記ハンドル部20と一体的に成形されており、内部に駆動源と該駆動源の出力を所定回転数に減速して出力する減速機構とが内装されている。すなわち、ツール本体2は、ハンドル部20及び駆動源内装部21の外装を構成するケーシング23を備えており、該ケーシング23における駆動源内装部21に相当する部位に駆動源及び減速機構が内装されている。
【0029】
本実施形態に係る作動工具1は、駆動源にエアーモータが採用されている。これに伴い、前記トリガースイッチ22は、エアーモータにエアーを供給する状態と供給を停止する状態とに切り換えるための弁機構(図示しない)を備えている。すなわち、該トリガースイッチ22は、トリガーを引き操作することで、エアーモータにエアーを供給し、トリガーの引き操作を解除することで、エアーモータへのエアー供給を停止するようになっている。
【0030】
また、該作動工具1は、ハンドル部20の下部にエアーを供給するためのホースを接続するホース接続部24が設けられている。該ホース接続部24は、前記トリガースイッチ22の弁機構に流体的に接続されており、本実施形態においては、後述するスイッチ31も流体的に接続されるようになっている。
【0031】
前記作動部3は、図4に示す如く、前記駆動源内装部21の一端部に連設されている。かかる作動部3は、前記駆動伝達機構30と、押し操作又は引き操作(本実施形態においては押し操作)によって駆動源の駆動を停止させるスイッチ31と、駆動伝達機構30の回転に連動して一定位置で回転可能に設けられるとともに、外周に螺旋状の溝320が形成された回転体32と、該回転体32の溝320の一部に嵌入される嵌入凸部330を有するストライカー33とを備えている。さらに、本実施形態において、前記駆動伝達機構30は、第一係合部40に所定の回転負荷が生じていないときに回転体32に対して駆動源からの駆動の伝達を解除する一方で、第一係合部40に所定の回転負荷が生じたときに回転体32に対して駆動源からの駆動を伝達するクラッチ手段300を備えている。
【0032】
そして、作動部3は、前記ケーシング23に連結された筒状のハウジング34を備えており、該ハウジング34に駆動伝達機構30(クラッチ手段300)及び回転体32が内装されている。
【0033】
前記スイッチ31は、駆動源のタイプ、或いは駆動源の制御方法に応じて選択される。すなわち、駆動源に電気モータが採用される場合には、スイッチ31は、電気モータへの電力供給を遮断する電気スイッチが採用され、駆動源に流体の供給で作動する油圧モータやエアーモータが採用される場合には、スイッチ31は、駆動源に対する流体の供給を停止させる弁機構タイプのスイッチが採用される。また、駆動源に油圧モータやエアーモータが採用され、電力供給によって駆動源への流体の供給と停止とを切り換える弁機構を備える場合には、スイッチ31は、駆動源に対する流体の供給を停止させる弁機構タイプのスイッチ、或いは、弁機構を作動させるべく、弁機構への電力供給と停止とを切り換え可能な電気スイッチが採用される。
【0034】
本実施形態に係る作動工具1は、上述の如く、駆動源にエアーモータが採用されているため、スイッチ31には弁機構タイプのものが採用されている。かかるスイッチ31は、所定の軸線方向にスライド可能なプランジャ310と、該プランジャ310のスライドで流路の開閉が切り替わる弁機構311とを備えている。前記プランジャ310は、図示しないバネによって付勢されている。これにより、プランジャ310は、常態において弁機構311から外方に突出した状態になっており、先端が弁機構311に向けて押されることで、弁機構311が駆動源に対して流体を供給させない状態に切り替わるようになっている。
【0035】
スイッチ31の弁機構311は、当該作動工具1内の流体回路の態様によって種々のタイプが選択される。すなわち、スイッチ31の弁機構311は、プランジャ310が押し操作されたときに、駆動源に流体を供給する供給路を開放して駆動源への流体供給を阻止するようにしたものや、駆動源に繋がる供給路の一部を遮断するもの、流体の供給経路を切り換えるもの等、種々のタイプのものが採用される。本実施形態にスイッチ31は、ハンドル部20の下部に設けられたホース接続部24に対して流体的に接続されており、エアーモータにエアーを供給している状態(すなわち、トリガースイッチ22を引き操作している状態)で、プランジャ310が押し操作されたときに、エアーモータへのエアー供給を停止するように回路構成の一部を構成している。
【0036】
上記構成のスイッチ31は、プランジャ310のスライド方向と回転体32の軸線(回転中心線)とが平行又は略平行になるように配置される。本実施形態に係るスイッチ31は、プランジャ310がハウジング34の先端側(ソケット体5が取り付けられる先端側)に延出するように配置された上で、ハウジング34の外面に固定されている。
【0037】
本実施形態に係る作動工具1は、スイッチ31の配置をプランジャ310のスライド方向に位置調整できるようになっている。具体的に説明すると、スイッチ31は、図3に示す如く、弁機構311の外装を構成するケース312に前記ハウジング34に取り付けるためのフランジ313a,313bが設けられている。かかるフランジ313a,313bは、プランジャ310のスライド方向と直交する方向において、ケース312の両側に設けられている。
【0038】
各フランジ313a,313bには、ネジを挿通するための穴314a,314b,315a,315bがプランジャ310のスライド方向に間隔をあけて複数(図においては二つ)穿設されている。本実施形態に係るフランジ313a,313bのそれぞれは、前記穴として長穴314a,314bと円形穴315a,315bとが交互(隣り合って)形成されている。そして、一方のフランジ313aの穴314a,315aと他方のフランジ313bの穴314b,315bとは、プランジャ310のスライド方向に所定距離オフセットした配置で形成されている。これに伴い、ハウジング34には、各フランジ313a,313bの配置に対応するように、前記長穴314a,314b又円形穴315a,15bに挿通したネジ(図示しない)を螺合させる複数のネジ穴340a…,340b…が穿設されている。
【0039】
ハウジング34のネジ穴340a…,340b…は、等間隔で形成されており、一方のフランジ313aに対応するネジ穴340a…と他方のフランジ313bに対応するネジ穴340b…とは、プランジャ310のスライド方向に所定距離オフセットした配置で形成されている。
【0040】
そして、各フランジ313a,313bの長穴314a,314bは、ハウジング34に形成された隣り合う二つのネジ穴340a…,340b…のうちの一方が完全に重なった状態で他方のネジ穴340a…,340b…の一部が重なるように長手方向の径が設定されている。また、該長穴314a,314bと隣り合う円形穴315a,315bは、何れかのネジ穴340a…,340b…に完全に重なった状態で、長穴314a,314bが何れのネジ穴340a…,340b…にも完全に重ならないように配置されている。本実施形態においては、一方のフランジ313aの長穴314aがハウジング34に形成された隣り合う二つのネジ穴340a……のうちの一方に完全に重なった状態で、他方のフランジ313bの円形穴315bがネジ穴340b…と完全に重なり、また、他方のフランジ313bの長穴314bがハウジング34に形成された隣り合う二つのネジ穴340b…のうちの一方に完全に重なった状態で、一方のフランジ313aの円形穴315aがネジ穴340a…と完全に重なるようになっている。
【0041】
これにより、本実施形態に係る作動工具1は、スイッチ31をプランジャ310のスライド方向に移動させて、長穴314a,314b又は円形穴315a,15bに挿通したネジをハウジング34の何れかのネジ穴340a…,340b…に螺合させることにより、スイッチ31の配置を微調整した上で固定できるようになっている。なお、本実施形態に係るスイッチ31は、位置合わせする際(位置調整すべく移動させる際)に、一対のフランジ313a,313bの下面側が、ハウジング34上に軸線方向に延びるように形成されたガイド用の凸部(採番しない)に案内されるようになっている。
【0042】
前記回転体32は、図4〜図6に示す如く、外観円柱状に形成されており、上述の如く、外周に螺旋状の溝320が形成されている。かかる溝320は、ストライカー33を軸線方向に案内する送りネジとして機能するもので、回転体32の回転中心線(軸線)方向において所定ピッチで形成されている。
【0043】
本実施形態に係る回転体32は、ベアリング10を介してハウジング34に回転自在に支持されている。すなわち、回転体32は、ベアリング10が外嵌されており、該ベアリング10がハウジング34に対して内嵌されることにより、クラッチ手段300の後述する軸体301と同心で回転自在になっている。
【0044】
また、該回転体32は、第一クラッチ体302と対向する端面(対向部)に該第一クラッチ体302と係合するための凸部321…が周方向に間隔をあけて複数形成されている。さらに、該回転体32は、中央部に軸心方向に貫通した軸体挿通穴322が形成されている。該軸体挿通穴322は、クラッチ手段300の軸体301の外径よりも大径に設定されており、軸体301が回転体32と独立して回転できるように形成されている。
【0045】
前記ストライカー33は、図4に示す如く、該回転体32の溝320に嵌入される嵌入凸部330と、該嵌入凸部330から延出し、スイッチ31に対する押し操作が可能に形成された延出部331とを備えている。そして、該ストライカー33は、付勢手段(図示しないバネ)によって軸線方向でスイッチ31と離間する方向に付勢されている。
【0046】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る作動工具1は、ハウジング34に軸線方向の延びるスリット341が形成されており、前記延出部331がハウジング34の内外に跨るように配置されている。そして、該ストライカー33は、前記ハウジング34のスリット341に対して嵌合されてスリット341の延びる方向に案内されるスライド体332に接続されている。かかるスライド体332は、ハウジング34との間に介装されたバネによって付勢されており、ストライカー33をスイッチ31から離間する方向に付勢するようになっている。さらに、ストライカー33は、前記嵌入凸部330が溝320から離脱するように、回転体32の径方向外方に移動できるようにもなっている。
【0047】
ストライカー33は、スライド体332の先端と対向する部位に上向き(ハウジング34の内面側に向く)の傾斜面が形成されており、スライド体332は、先端にストライカー33の上向きの傾斜面に沿う下向き(回転体側に向く)の傾斜面が形成されている。このようにストライカー33及びスライド体332に対応する傾斜面を形成することで、傾斜面同士の接触で付勢手段による付勢がスライド体332を介してストライカー33に作用し、また、ストライカー33を傾斜面に沿って移動させることで、ストライカー33の嵌入凸部330…が溝320から離脱できるようになっている。
【0048】
本実施形態に係るクラッチ手段300は、図4〜図6に示す如く、前記回転体32に対して同心又は略同心で遊挿され、駆動源からの駆動を受けて軸線周りで回転する軸体301と、該軸体301の先端側で回転体32に対して一端を対向させて配置され、軸線方向に移動自在に設けられるとともに軸体301からの回転トルクが伝達されて軸線周りで回転可能に設けられた第一クラッチ体302と、第一クラッチ体302の他端に対して一端側を対向させて配置され、他端側に第一係合部40が直接的又は間接的に連結されるとともに第一クラッチ体302と略同心で回転自在に設けられ第二クラッチ体303とを備えている。
【0049】
前記軸体301は、基端側が駆動源の出力軸に対して作動的に連結されている。すなわち、軸体301は、駆動源内装部21内の減速機構の出力軸に対して直接的又は間接的に接続されており、該減速機構を介して駆動源の駆動を受けて軸心周りで回転するようになっている。該軸体301は、先端側が回転体32の軸体挿通穴322に遊挿されており、少なくとも先端部が回転体32から延出している。そして、該軸体301は、少なくとも回転体32から延出した部分が断面多角形状に形成されており、当該部分が第一クラッチ体302に挿入されている。これにより、該軸体301は、第一クラッチ体302に回転トルクを伝達可能としつつ該第一クラッチ体302の軸線方向に移動を許容するようになっている。なお、該軸体301は、筒状のハウジング34(ベアリング10を介してハウジング34に固定された回転体32)に対して略同心をなすように配置されている。
【0050】
前記第一クラッチ体302は、付勢手段(採番しない)によって第二クラッチ体303に向けて付勢されている。本実施形態に係る第一クラッチ体302は、円柱状に形成されており、軸線が回転体32の軸線が一致するように配置されている。そして、該第一クラッチ体302は、回転体32に対して軸体301周りの回転トルクを伝達すべく、回転体32の一端面(対向部)と対向する軸線方向の一端面(対向部)に周方向に間隔をあけて複数の凸部304…が形成されている。該第一クラッチ体302の複数の凸部304…は、回転体32の複数の凸部321…間に嵌合可能に形成されており、凸部304…,321…同士が嵌合した状態で第一クラッチ体302の凸部304…が回転体32の凸部321…に対して周方向の回転トルクを伝達するようになっている。
【0051】
さらに、該第一クラッチ体302は、軸線方向の他端面に、周方向に延びて始点側よりも終点側が第二クラッチ303側に位置するように傾斜した傾斜部305…と、該傾斜部305…の終点に隣接するように配置された第二トルク伝達部306…とが設けられている。前記傾斜部305…の第二クラッチ体303と対向する面は、始点が第一クラッチ体302の他端面(平面)と同レベルになるように形成されており、始点と終点との間で該第一クラッチ体302の一端側に僅かに凹をなす湾曲面状に形成されている。前記第二トルク伝達部306…は、傾斜部305…の始点側に向くトルク伝達面307…が形成されている。
【0052】
本実施形態に係る第一クラッチ体302は、前記傾斜部305…及び第二トルク伝達部306…が周方向に等間隔で複数(本実施形態においては、二組)設けられている。
【0053】
そして、該第一クラッチ体302は、中心に軸線方向に延びる断面多角形状の穴が穿設されており、該穴に前記軸体301の先端部が挿入されている。該穴は、該穴を画定する内周面で軸体301からの回転力を当該第一クラッチ体302に伝達でき、且つ該第一クラッチ体302が軸線方向に移動できるようにサイズ設定されている。これにより、第一クラッチ体302は、常態において付勢手段による付勢により、第二クラッチ体303側に位置しているが、付勢手段の付勢力に抗して回転体32側に押されたときに、回転体32側に移動できるようになっている。
【0054】
前記第二クラッチ体303は、円柱状に形成されており、第一クラッチ体302と同心又は略同心になるように配置されている。該第二クラッチ体303は、ベアリング11を介してハウジング34に回転自在に支持されている。すなわち、第二クラッチ体303は、ベアリング11が外嵌されており、該ベアリング11がハウジング34に対して内嵌されることにより、一定位置において、第一クラッチ体302(軸体301)と同心又は略同心で回転自在になっている。
【0055】
該第二クラッチ体303は、第一クラッチ体302の他端面と対向する一端面に、第一クラッチ体302に向けて突出した第一トルク伝達部308が形成されている。該第一トルク伝達部308は、先端が第一クラッチ体302の他端面(傾斜部305…の始点と同レベルの平面)に接触できる突出量で形成されている。これに対し、第一クラッチ体302の第二トルク伝達部306…は、第一トルク伝達部308の先端が第一クラッチ体302の他端面に接触した状態で、第二クラッチ体303の一端面に対して非接触になる延出量に設定されている。該第一トルク伝達部308は、第一クラッチ体302の傾斜部305…及び第二トルク伝達部306…と対応するように形成されている。すなわち、第一クラッチ体302の傾斜部305…及び第二トルク伝達部306…が、軸体301の軸線を中心とした所定直径の仮想円上に位置するように配置されるとともに、第二クラッチ体303の第一トルク伝達部308は、軸体301の軸線を中心とした所定直径(第一クラッチ体302の仮想円と同径)の仮想円上に位置するように配置されている。
【0056】
そして、本実施形態に係る作動工具1は、上述の如く、第一クラッチ体302に対して傾斜部305…及び第二トルク伝達部306…が周方向に等間隔で二組設けられているため、前記第一トルク伝達部308についても周方向に等間隔をあけて二組設けられている。これにより、各第一トルク伝達部308は、両者同様の態様となるように、先端が第一クラッチ体302の他端面又は傾斜部305…に当接した状態になるようになっている。
【0057】
前記シャフト4は、軸状に形成されており、一端部に第一係合部40が形成され、他端側が前記第二クラッチ体303に連結されている。該シャフト4は、一端側から他端側に向けて段々に外径が大きくなる段付き棒状に形成されており、前記第一係合部40は、小径側の一端部で構成されている。そして、該第一係合部40は、ネジ体Sの頭部Hに対して係合できるように形状設定されている。すなわち、ネジ体Sの頭部Hに十字状又は一文字状の溝が形成されている場合には、その溝320の形状に対応して形成され、また、ネジ体Sの頭部Hに多角形状の穴が形成される場合には、その穴の形状に対応した断面形状に形成される。すなわち、第一係合部40は、ネジ体Sの軸線方向から頭部Hにアクセスすることで、該頭部Hに形成された溝に嵌合し、軸線周りの回転トルクをネジ体Sに伝達できるようになっている。
【0058】
かかるシャフト4は、ソケット体5と同心又は略同心になるように配置され、一端部(第一係合部40)がソケットの第二係合部50内に位置して配置されている。また、該シャフト4は、ソケット体5と同様に、対象となる締結部材Fのサイズに対応したものに交換できるようになっている。すなわち、シャフト4は、第二クラッチ体303に対して着脱可能に設けられており、第二係合部50のサイズの異なる別のシャフト4と交換できるようになっている。
【0059】
前記ソケット体5は、図1及び図4に示す如く、筒状に形成されており、その一端が前記駆動伝達機構30のハウジング34の先端に対して連結されている。該ソケット体5は、前記軸体301と同心になるように配置されており、先端部の内周が筒体Cの鍔部Bに対して外嵌できるように形成されている。一般的に筒体Cの鍔部Bは、平面視多角形状(例えば、六角形状)に形成されるため、ソケット体5の先端部内周、すなわち、第二係合部50は、鍔部Bの平面視形状に対応して多角形状の穴を画定するように形成される。そして、第二係合部50(穴の内周面)は、鍔部Bの外周に沿った態様となるため、第二係合部50を鍔部Bに係合させることにより、軸体301(ネジ体S)の軸線周りの回転力が相互に伝達できるようになっている。そして、該ソケット体5は、対象となる締結部材Fのサイズに対応したものに交換できるようになっている。すなわち、ソケット体5は、ハウジング34に対して着脱可能に設けられており、サイズの異なる別のソケット体5と交換できるようになっている。
【0060】
本実施形態に係る作動工具1は、以上の構成からなり、次に、上記構成の作動工具1の作動について説明することとする。
【0061】
まず、重ね合わせた母材Pに穿設された穴に締結部材F(ネジ体Sが螺入された筒体C)を挿入する。この状態で、母材Pに対する締結部材Fのセットが完了する。しかる後、上記構成の作動工具1を用いて締結部材F(筒体C)を変形させる。
【0062】
具体的に説明すると、予め母材Pの締結に用いる締結部材Fの特性を把握しておく。すなわち、ネジ体Sが軸線方向で筒体Cを何ミリ引き込む(ネジ体Sが何回転する)と、母材Pを締結するのに筒体Cが適正な変形状態になるかを把握しておく。この筒体Cの変形量とネジ体Sの引き込み量との関係は、筒体Cの軸線方向の長さ、周壁の厚みや材質等を基に材料力学的に算出することで求めておいてもよいし、実験を行って得られた経験値から把握してもよい。
【0063】
そして、処理の対象となる締結部材Fの変形量(ネジ体Sの引き込み量)と対応する位置にストライカー33を配置する。また、ストライカー33の配置を一定にしておき、スイッチ31の配置を調整する。このように、ストライカー33の配置又はスイッチ31の配置を調整することで、初期にストライカー33が配置される位置と、ストライカー33がスイッチ31を押し操作する位置までの距離(ストライカー33の移動距離)が、締結部材Fを適正に変形させることのできるネジ体Sの引き込み量と対応することになる。本実施形態においては、クラッチ手段300を備えることで、筒体Cに対するネジ体Sの緩みを考慮する必要がないため、ストライカー33の移動距離と、ネジ体Sの引き込み量とが一致することになる。
【0064】
そして、上述のようにストライカー33又はスイッチ31の配置を調整した上で、第一係合部40をネジ体Sの頭部Hに係合させるとともに、第二係合部50を筒体Cの鍔部Bに係合させる。この状態で、トリガースイッチ22を引き操作すると、駆動源(エアーモータ)が駆動し始める。
【0065】
そうすると、駆動源の駆動(回転)が軸体301に伝達され、軸体301とともに第一クラッチ体302が同心をなして回転する。このとき、第一クラッチ体302は、付勢手段による付勢で第二クラッチ体303側に押されているため、第二クラッチ体303の第一トルク伝達部308の先端が第一クラッチ体302の他端面に圧接した状態となっており、その圧接による抵抗で第二クラッチ体303も第一クラッチ体302と同様に回転することになる。従って、第二クラッチ体303に連結されたシャフト4も回転することになる。
【0066】
そうすると、シャフト4の回転により、第一係合部40に係合されたネジ体Sが同心で回転し始めることになる。このとき、筒体Cの鍔部Bは第二係合部50に係合保持されているため、ネジ体Sが回転しても筒体Cは供回りすることなく停止状態で維持することになる。
【0067】
そして、筒体Cに対してネジ体Sが緩んでいると、ネジ体Sが抵抗を生じさせることなく回転することになる。従って、第一クラッチ体302に対して第二クラッチ体303の第一トルク伝達部308が圧接状態になっているだけで、ネジ体Sが回転することになる。すなわち、第一クラッチ体302と第二クラッチ体303との摩擦抵抗で伝達し得る小さな回転トルクの作用でネジ体Sが回転する。
【0068】
そして、筒体Cに対するネジ体Sの緩みが無いときや緩みが無くなったとき、ネジ体Sが筒体Cを引き込もうとするため、該ネジ体S(第一係合部40)に回転抵抗が生じることになる。
【0069】
そうすると、ネジ体Sに生じた抵抗により、第一係合部40(シャフト4)とこれが連結された第二クラッチ体303が停止しようとする一方、第一クラッチ体302は、軸体301との係合により駆動源からの駆動を受けて回転し続けようとする。
【0070】
そのため、第一クラッチ体302に対する付勢力で生じていた第一トルク伝達部308と第一クラッチ体302との抵抗よりも、第一クラッチ体302の回転力が勝ることになり、第一クラッチ体302と第二クラッチ体303とが軸線周りで逆方向に相対回転した状態になる。そうすると、第二クラッチ体303の第一トルク伝達部308は、第一クラッチ体302の回転によって傾斜部305…の始点から終点に向けて摺動することになる。このように、第一トルク伝達部308が傾斜部305…上を摺動すると、傾斜部305…の終点が始点よりも第二クラッチ体303側に位置してしるため、軸線方向における傾斜部305…の始点と終点との配置の相違により、第一トルク伝達部308が傾斜部305…の終点に近づくにつれて第一クラッチ体302が回転体32側に押されて移動することになる。
【0071】
そして、第一トルク伝達部308が第二トルク伝達部306…に係止される(トルク伝達面307…に当接する)と、第一クラッチ体302の一端面にある複数の凸部304…が回転体32の複数の凸部321…間に嵌合する。そうすると、第一クラッチ体302の凸部304…と回転体32の凸部321…とが周方向で当接することになる結果、第一クラッチ体302と回転体32との間で回転トルクが伝達可能な状態となる。なお、この状態になるまで第二クラッチ体303は停止状態を維持することになるため、ネジ体Sによる筒体Cに対する引き込む作用は筒体Cを変形させるほど大きく作用していない。
【0072】
そして、上述の如く、第一トルク伝達部308が第二トルク伝達部306…に係止されると、第一クラッチ体302の駆動が第二クラッチ体303に伝わり、シャフト4(第一係合部40)を介してネジ体Sが回転し始めることになる。この状態で、上述の如く、回転体32が第一クラッチ体302と係合しているため、ネジ体Sの回転に併せて回転体32も回転し始めることになる。
【0073】
そうすると、ストライカー33は、嵌入凸部330が回転体32の溝320に案内され、延出部331がスイッチ31のプランジャ310に接近するように軸線方向に移動することになる。
【0074】
そして、第一クラッチ体302、第二クラッチ体303、及び回転体32が一体となって回転する結果、筒体Cに対するネジ体Sの引き込み量に応じて、ストライカー33が軸線方向に移動してスイッチ31を押し操作する(延出部331がプランジャ310を押す)と、スイッチ31が駆動源の駆動を停止させる。この状態で、ネジ体Sが筒体Cに対して必要な引き込みを行った状態になっているため、筒体Cの先端側が径方向外方に適正に拡大して変形した状態となり、母材Pに対する締結作業が完了することになる。
【0075】
そして、上述の状態ではストライカー33がスイッチ31を押し操作した状態になっているため、次の締結作業を行う場合には、ストライカー33を初期の位置に戻す。ストライカー33は、付勢手段によって付勢されているため、嵌入凸部330…が回転体32の溝320から離脱するようにストライカー33を回転体32の径方向外方に移動させると、付勢手段の付勢で初期の位置にまで自動的に戻ることになる。
【0076】
従って、このような作業を繰り返し行うことで、複数の締結部材Fに対して適正な処理を行うことができる。
【0077】
以上のように、本実施形態に係る作動工具1によれば、押し操作によって駆動源の駆動を停止させるスイッチ31と、駆動伝達機構30の回転に連動して一定位置で回転可能に設けられるとともに、外周に螺旋状の溝320が形成された回転体32と、回転体32の溝320の少なくとも一部に嵌入される嵌入凸部330を有するストライカー33とを備え、該ストライカー33は、回転体32が回転したときに嵌入凸部330が前記溝320に案内されて該回転体32の回転中心線方向に移動するように構成されるとともに、所定量移動したときにスイッチ31を押し操作するように構成されているので、ネジ体Sに生じるトルクに関係なく、筒体Cに対するネジ体Sの引き込み量を常時一定にできる。従って、締結部材Fの筒体Cの加工精度のバラツキ等に影響を受けることなく筒体Cを常に適正な状態に変形させることができ、母材Pに対して締結部材(固着部材)Fを確実に固着させることができる
【0078】
また、前記ストライカー33は、前記溝320に対する嵌入凸部330の嵌入位置が回転体32の回転中心線方向に位置変更可能に設けられているので、ストライカー33の軸線方向の移動量を調節することができ、ネジ体Sによる筒体Cの引き込み量を調整することができる。これにより、筒体Cの変形量もその施工に応じた適正なものに調節することができる。
【0079】
さらに、前記駆動伝達機構30は、第一係合部40に所定の回転負荷が生じていないときに回転体32に対して駆動源からの駆動の伝達を解除する一方で、第一係合部40に所定の回転負荷が生じたときに回転体32に対して駆動源からの駆動を伝達するクラッチ手段300を備えているので、ネジ体Sが筒体Cに対して緩んだ状態で螺入されているような場合であっても、筒体Cに対するネジ体Sの緩みを気にすることなく、筒体Cを適切に変形させることができる。
【0080】
特に、前記クラッチ手段300を上述のように構成したので、筒体Cに対するネジ体Sの螺入に緩みがあっても、その分のネジ体Sの回転量がストライカー33の移動に反映されることがなく、より適正な締結作業を行うことができる。
【0081】
尚、本発明の作動工具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0082】
上記実施形態において、ネジ体Sと筒体Cとで構成された締結部材Fを固着部材として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図8に示す如く、一端に鍔部B’が形成された筒体C’で構成されるナット部材Nを対象とする作動工具1であってもよい。
【0083】
この場合、シャフト4は、第一係合部40に代えて筒体C’に螺入されるネジ体S’が設けられたものを採用すればよい。具体的には、駆動伝達機構30でネジ体S’が連結されたシャフト4を回転させ、そのネジ体S’を筒体C’に螺入することで筒体C’が軸線方向に座屈変形を起こして母材Pの裏面側で径方向外方に拡大変形する。これにより、ナット部材Nは、鍔部B’と拡大部分L’とが母材Pを挟み込んで固着されることになる。そして、シャフト4を逆転させることで、筒体C’からネジ体S’が抜かれ、所望するボルト等を筒体C’に螺入できる状態になる。そして、この場合においても、シャフト4が回転する際に、駆動伝達機構30と連動して回転体32が回転する結果、ストライカー33がネジ体Sの回転量に対応してスライドし、筒体C’の変形が適正となったときにストライカー33がスイッチ31を押し操作して駆動源の駆動が停止される。従って、この場合においても、筒体C’の加工精度のバラツキ等に関係なく筒体C’を適正に変形させることができる。なお、ナット部材Nを対象とする場合、作動工具1には、ソケット体5を必ずしも設ける必要はない。
【0084】
上記実施形態において、ツール本体2と一体的に形成されたハンドツールについて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、汎用のドリル等に着脱可能なアタッチメントとして構成してもよい。この場合、例えば、汎用ドリルのチャックに対して、軸体301を連結するとともに、ハウジング34を汎用ドリルのケーシングに固定するようにすることで、上記ハンディーツールと同様に機能するものとなる。
【0085】
上記実施形態において、スイッチ31をハウジング34の外側に設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、スイッチ31をハウジング34内に設けるとともにストライカー33もハウジング34内で移動できるように設けてもよい。但し、上記実施形態のように、ストライカー33の配置を調整するには、上記実施形態のようにして外部からのアクセスが容易になるようすることが好ましい。
【0086】
上記実施形態において、回転体32を軸体301と同心又は略同心で回転するように配置したが、これに限定されるものではなく、例えば、軸体301の回転を回転体32に伝達させるギア機構を配置することを前提に、回転体32を軸体301と平行な軸周りで回転するように配置したり、軸体301を交差方向に延びる軸線周りで回転できるように配置したりしてもよい。この場合においても、回転体32の回転中心線方向にストライカー33が移動するように構成されるとともに、該ストライカー33によってスイッチ31を押し操作できるように構成されるため、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0087】
また、上記実施形態において、駆動伝達機構30にクラッチ手段300を介装するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、クラッチ手段300を設けることなく、駆動伝達機構30を歯車の組み合わせ(歯車機構)で構成してその出力軸に第一係合部40(シャフト4)を連結するようにしてもよい。また、駆動伝達機構30を単なる軸体で構成してもよい。上述の如く、駆動伝達機構30を歯車機構で構成する場合、例えば、回転体32は、何れかの歯車から回転力を受けて回転するように設ければよく、また、駆動伝達機構を単なる軸体で構成する場合には、軸体301とともに回転可能となるように回転体32を設け、該軸体301又は回転体32にシャフト4を連結するようにしてもよい。このようにしても、回転体32が軸体301(駆動伝達機構30)と連動して回転し、ストライカー33をシャフト4(第一係合部40)の回転量に対応した移動量で移動させてスイッチ31を押し操作することができる。
【0088】
さらに、上記実施形態において、駆動源に連結した減速機構を駆動源内装部21に内装するようにしたが、例えば、作動部3内に減速機構を内装するようにしてもよい。すなわち、減速機構を駆動伝達機構30の一構成としてもよい。そして、上記実施形態において、駆動源(エアーモータ)と駆動源とを別体で構成したが、例えば、駆動源に減速機付きのモータを採用すれば、必ずしも減速機構を設ける必要はなく、駆動源の出力軸に対して軸体301を直接的に連結してもよい。
【0089】
上記実施形態において、シャフト4及びソケット体5を交換可能に構成したが、これに限定されるものではなく、これらは交換不能に構成されてもよい。但し、作動工具1の機能性、汎用性を高めるには、シャフト4及びソケット体5を交換可能にすることが好ましいことは言うまでもない。
【0090】
上記実施形態において、嵌入凸部330を回転体32の螺旋状の溝320の一部に嵌入させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、リング体の内周面に螺旋状の嵌入凸部330を形成するとともに、該リング体の外面に延出部331を延設してストライカー33を構成し、回転体32の溝320に嵌入凸部330を嵌め合わせる(螺合させる)ようにしてもよい。このようにしても回転体32が回転することでストライカー33が回転体32の回転中心線方向に移動することになるため、上記実施形態と同様に、筒体C,C’が適正に変形した状態でストライカー33にスイッチを押し操作させることができる。但し、このようにすると、ストライカー33を元の位置に戻す(復帰させる)際に回転体32を逆転させる必要があるため、構造や駆動源の制御等の簡素化の観点から上記実施形態のようにすることが好ましい。
【0091】
上記実施形態において、駆動源を停止させる際に押し操作するスイッチ31を採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、引き操作によって駆動源を停止させるスイッチを採用するとともに、ストライカー33が、所定量移動したときにスイッチ31を引き操作するように構成してもよい。例えば、図9に示す如く、回転体32の外周に形成される溝320を第一実施形態の溝とは逆向きに巻いた態様で形成(回転体32が第一実施形態と同方向に回転したときにストライカー33をソケット体4側に送ることができる逆ネジで形成)し、ストライカー33の延出部331に対してスイッチ31のプランジャ310に向けて延出して先端部に係止爪333の形成された突片334を設けるとともに、スイッチ31のプランジャ310の先端部に対して前記係止爪333に係止される被係止部317を設け、ストライカー33が回転体32の溝320に案内されて(送られて)軸線方向に所定量移動したときに、係止爪333が被係止部317を係止してプランジャ310(スイッチ31)を引き操作するようにしてもよい。このようにしても、ネジ体Sの回転量が所定量になった状態で、ストライカー33がスイッチ31を引き操作して駆動源が停止するため、ネジ体Sに生じるトルクに関係なく、筒体Cに対するネジ体Sの引き込み量を常時一定にできる。
【0092】
また、回転体32の外周に形成される溝320の向きを第一実施形態と同様にした場合には、プランジャ310が第一実施形態のスイッチ31のプランジャ310とは逆方向に延出するように、ストライカー33を基準にして第一実施形態の配置に対して対称となる位置にスイッチ31を配置し、ストライカー33の延出部331に対してスイッチ31のプランジャ310に向けて延出して先端部に係止爪333の形成された突片334を設けるとともに、スイッチ31のプランジャ310の先端部に対して前記係止爪333に係止される被係止部317を設け、ストライカー33が回転体32の溝320に案内されて(送られて)軸線方向に所定量移動したときに、係止爪333が被係止部317を係止してプランジャ310(スイッチ31)を引き操作するようにしてもよい。このようにしても、ネジ体Sの回転量が所定量になった状態で、ストライカー33がスイッチ31を引き操作して駆動源が停止するため、ネジ体Sに生じるトルクに関係なく、筒体Cに対するネジ体Sの引き込み量を常時一定にできる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施形態に係る作動工具の全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る作動工具の全体側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る作動工具の部分拡大平面図を含んだ全体平面図を示す。
【図4】同実施形態に係る作動工具の部分拡大断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る作動工具のハウジングを省略した要部分解斜視図であって、駆動伝達機構(クラッチ手段)及び回転体の分解斜視図を示す。
【図6】同実施形態に係る作動工具のハウジングを省略した要部拡大図であって、駆動伝達機構(クラッチ手段)及び回転体の部分拡大側面図を示す。
【図7】同実施形態に係る作動工具(及び従来の作動工具)の対象となる締結具の説明図であって、(a)は、処理前の締結具の断面図を示し、(b)は、処理後の締結具の断面図を示す。
【図8】他実施形態に係る作動工具(及び従来の作動工具)の対象となるナット部材の説明図であって、(a)は、処理前の締結具の断面図を示し、(b)は、処理後の締結具の断面図を示す。
【図9】本発明の別の実施形態に係る作動工具の部分拡大断面図を示す。
【符号の説明】
【0094】
1…作動工具、2…ツール本体、3…作動部、5…シャフト、4…ソケット体、10…ベアリング、11…ベアリング、20…ハンドル部、21…駆動源内装部、22…トリガースイッチ、23…ケーシング、24…ホース接続部、30…駆動伝達機構、31…スイッチ、32…回転体、33…ストライカー、34…ハウジング、40…第一係合部、50…第二係合部、300…クラッチ手段、301…軸体、302…第一クラッチ体、303…第二クラッチ体、304…凸部、305…傾斜部、306…第二トルク伝達部、307…トルク伝達面、308…第一トルク伝達部、310…プランジャ、311…弁機構、312…ケース、313a,313b…フランジ、314a,314b…長穴、315a,15b…円形穴、317…被係止部、320…溝、321…凸部、322…軸体挿通穴、330…嵌入凸部、331…延出部、332…スライド体、333…係止爪、334…突片、340a,340b…ネジ穴、341…スリット、B,B’…鍔部、C,C’…筒体、F…締結部材、H…頭部、N…ナット部材、P…母材、S…ネジ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に鍔部の形成された筒体に螺入されるネジ体に対して駆動源からの駆動を伝達する駆動伝達機構を備え、駆動伝達機構が駆動源からの駆動を受けてネジ体を軸線周りで回転させることで、母材に挿通した筒体の軸線方向の一部を径方向に拡大変形させ、拡大部分と鍔部とで母材を挟み込んで筒体を固着させる作動工具であって、押し操作又は引き操作によって駆動源の駆動を停止させるスイッチと、駆動伝達機構の回転に連動して一定位置で回転可能に設けられるとともに、外周に螺旋状の溝が形成された回転体と、回転体の溝の少なくとも一部に嵌入される嵌入凸部を有するストライカーとを備え、該ストライカーは、回転体が回転したときに嵌入凸部が前記溝に案内されて該回転体の回転中心線方向に移動するように構成されるとともに、所定量移動したときにスイッチを押し操作又は引き操作するように構成されていることを特徴とする作動工具。
【請求項2】
前記ストライカーは、前記溝に対する嵌入凸部の嵌入位置が回転体の回転中心線方向に位置変更可能に設けられている請求項1に記載の作動工具。
【請求項3】
ネジ体の一端に形成された頭部に対して係合可能に形成されるとともに、駆動伝達機構に作動的に連結されてネジ体と同心又は略同心で回転可能に設けられた第一係合部と、筒体の鍔部に対して係合可能に形成されるとともに、筒体の軸線周りで回転不能に設けられた第二係合部とを備えている請求項1又は2に記載の作動工具。
【請求項4】
前記駆動伝達機構は、第一係合部に所定の回転負荷が生じていないときに回転体に対して駆動源からの駆動の伝達を解除する一方で、第一係合部に所定の回転負荷が生じたときに回転体に対して駆動源からの駆動を伝達するクラッチ手段を備えている請求項3に記載の作動工具。
【請求項5】
前記クラッチ手段は、前記回転体に対して同心又は略同心で遊挿され、駆動源からの駆動を受けて軸線周りで回転する軸体と、該軸体の先端側で回転体に対して一端を対向させて配置され、軸線方向に移動自在に設けられるとともに軸体からの回転トルクが伝達されて軸線周りで回転可能に設けられた第一クラッチ体と、第一クラッチ体の他端に対して一端側を対向させて配置され、他端側に第一係合部が直接的又は間接的に連結されるとともに第一クラッチ体と同心又は略同心で回転自在に設けられた第二クラッチ体とを備え、前記第一クラッチ体は、付勢手段によって第二クラッチ体に向けて付勢され、前記回転体及び第一クラッチ体は、軸体からの回転トルクを伝達すべく対向部同士が係合可能に構成され、第一クラッチ体又は第二クラッチ体の何れか一方には、他方に向けて突出した第一トルク伝達部が形成され、他方には、前記第一トルク伝達部の先端が摺接可能となるように周方向に延びるとともに、始点側よりも終点側が前記一方側に位置するように傾斜した傾斜部と、該傾斜部の終点に隣接して前記第一トルク伝達部を周方向で係止可能に形成された第二トルク伝達部とが設けられ、常態で第一トルク伝達部の先端が第一クラッチ体に対する付勢手段による付勢で他方における傾斜部の始点側に圧接し、第一係合部に回転負荷が生じたときに、第一トルク伝達部が傾斜部上を始点側から終点側に向けて摺動して第一クラッチ体を回転体側に移動させ、第一トルク伝達部が第二トルク伝達部に係止された状態で、回転体と第一クラッチ体とが係合するように構成されている請求項4記載の作動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−82669(P2010−82669A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255961(P2008−255961)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000232830)株式会社ロブテックス (21)