説明

作業服の名札カバーの構造

【課題】 洗濯しても名札カバー内に水蒸気がこもることなく短時間で乾燥することが可能で、しかも名札カバー内に糸くずなどの塵がたまり難い作業服の名札カバーの構造を提供する。
【解決手段】 透明な軟質合成樹脂部材3を、挿通口6a、6bを残して周回的に縫合して取り付けてあり、前記縫合領域5が四角形であり、前記挿通口6a、6bが、四角形の縫合領域5の縦辺側に設けられている作業服1の名札カバーの構造において、前記挿通口6a、6bが、縫合領域5の一縦辺側の上端部から下方3/5乃至4/5までと他縦辺側の下端部から上方3/5乃至4/5まで設けられている作業服の名札カバーの構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業服の名札カバーの構造に関し、特には、繰り返し洗濯されるレンタル作業服の名札カバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工場等で使用する作業服は、外部の作業服レンタル企業が自ら作業服を準備しこれを貸し、ある一定期間使用したらこれを引上げて他の洗濯済の作業服を代わりに提供しこれを周期的に繰り返すものである。
【0003】
かかる作業服レンタル業においては、洗濯の都度名札を外したり取り付けたりすることは大変面倒な作業となり、レンタルコスト高の原因となる。従って、名札を外さないでも洗濯が可能なものでなければならない。また、貸与先の事業所は、従業者が退職したならば、次の従業員にすぐに使用できるようする必要があり、名札は必要に応じて、取り替え可能でなければならない。更に、食品会社では、食品への異物混入が社会的信用を著しく低下させる原因となることから細心の注意を払う必要があり、作業服の名札についても例外でない。
【0004】
このような状況下、特開平5−2367号公報(特許文献1)には、洗濯時においても、使用時においても名札の脱落の危険がなく、必要に応じて名札を取り替え可能な作業服の名札カバーの構造について提案されている。特許文献1に開示の名札カバーの構造は、作業服の前身頃等の適宜の箇所に、透明な軟質合成樹脂部材を、挿通口を残して周回的に縫合して取り付けてあり、前記縫合領域が方形であり、前記挿通口が、縫合領域の一短辺側のみにほぼ半分設けられたものである。
【0005】
特許文献1に開示の名札カバーの構造では、洗濯後の乾燥の際に名札カバー内に水蒸気がこもり乾燥に時間を要することから、レンタルコスト高の原因となる。また、繰り返し洗濯を行うことで、徐々に名札カバー内に糸くずなどの塵がたまり、食品への異物混入が懸念されるなどの問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平5−2367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、洗濯しても名札カバー内に水蒸気がこもることなく短時間で乾燥することが可能で、しかも名札カバー内に糸くずなどの塵がたまり難い作業服の名札カバーの構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その要旨とするところは、作業服の前身頃等の適宜の箇所に、透明な軟質合成樹脂部材を、挿通口を残して周回的に縫合して取り付けてあり、前記縫合領域が四角形であり、前記挿通口が、長方形の縫合領域の縦辺側に設けられている作業服の名札カバーの構造において、前記挿通口が、縫合領域の一縦辺側の上端部から下方1/2乃至4/5までと他縦辺側の下端部から上方1/2乃至4/5まで設けられている作業服の名札カバーの構造である。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明の構成により、挿通口より幅が大きい名前を印刷した名札を挿入することで、洗濯中に、名札が軟質合成樹脂部材の縫合領域から外部に脱落するおそれはなく、洗濯の際にその都度外す必要はない。また、本発明は、四角形の縫合領域の一縦辺側の上方と他縦辺側の下方に特定幅の挿通口を設けてあるので、通気性が良く洗濯しても名札カバー内に水蒸気がこもることなく短時間で乾燥することが可能である。そして、本発明は、四角形の縫合領域の一縦辺側の下方に挿通口を設けてあるので、繰り返し洗濯したとしても名札カバー内に糸くずなどの塵がたまり難いことから、異物混入が懸念される食品製造に従事する方々の作業服に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る作業着の一部正面図
【図2】名札部分の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明が適用される作業服は、天然繊維、化学繊維等いずれかの繊維を素材とする被服であり、工場用あるいは事務用いずれのものも含み、また水洗、ドライクリーニング可能なものすべてが含まれる。かかる作業服において、前身頃等適宜の箇所に名札が取り付けられるが、この名札が取り付けられる領域には、透明な軟質合成樹脂部材(望ましくは、塩化ビニ−ル、ポリプロピレンを素材とする)からなる名札カバーを重ね、挿通口を残して周回的にミシンなどで縫合して取り付ける。
【0012】
この縫合線によって囲繞される領域すなわち縫合領域は、一般的な形状である四角形(好ましくは長方形)であり、この挿通口は一縦辺側の上端部から下方1/2乃至4/5まで(好ましくは3/5乃至4/5)と他縦辺側の下端部から上方1/2乃至4/5(好ましくは3/5乃至4/5)まで設けられている。これに対し、一縦辺側の上方と他縦辺側の下方の両箇所に挿通口を設けないと、さらに挿通口が前記幅より小さいと、通気性が悪くなり洗濯後短時間で乾燥することが難しく、繰り返し洗濯すると名札カバー内に糸くずなどの塵がたまり食品への異物混入が懸念される。また、後述する軟質合成樹脂製名札の挿脱作業が円滑に行えず時間を要し好ましくない。一方、挿通口が前記幅より大きいと、挿通口より幅が大きい名前を印刷した名札を挿入したとしても、洗濯中に、名札が軟質合成樹脂部材の縫合領域から外部に脱落するおそれがあり好ましくない。
【0013】
縫合領域内には、挿通口より幅が大きく且つ名前を印刷した軟質合成樹脂製名札を挿入するとよい。その大きさは、縫合領域に内接したり、それよりやや小さくこれと相似の形状となった名札が望ましい。名札の素材は、例えば塩化ビニールである。この名札には、名前(姓、姓名などを含む)を直接印刷し、そのまま前記縫合領域内に挿入してもよいが、その上に透明フィルムを貼付し、名札の名前印刷部分を保護してもよく、また、透明フィルム側に名前を印刷してもよい。透明フィルムの貼着は、耐水性、耐薬性ある接着剤を用いるのは当然である。なおここに印刷とは通常の印刷手段のほか、テプラ(商標)等の器具による印字、刻印を含む。
【0014】
本発明は、先ず、作業着の前身頃例えば胸ポケットの上近辺に、透明な軟質合成樹脂部材を重ね、挿通口を残して方形にミシンを周回させて、軟質合成樹脂部材を縫合して取り付け、この縫合領域内に、別に準備した名前を印刷したフィルムを貼付した名札を挿入する。名札は、挿通口より幅が大きいが、軟質であるから折った状態で、挿入口から差し入れ、縫合領域内で平坦にならす。この際、ピンセットなどを使用すれば、円滑な挿脱作業を行える。この状態でレンタルとして工場等の事業所に貸与し、一定期間使用の後回収し洗濯に回す。洗濯の際には名札は取り外さず、そのまま洗濯する。洗濯するとき、名札は、縫合領域の挿入口の幅よりも大きいので名札が脱出することはない。退職者などが出た場合には、新たな使用者の名札を作り、縫合領域の一部に設けた挿入口から、名札を出し入れして、名札の入れ替えを行う。
【実施例】
【0015】
以下図面に示す実施例を説明すると、1はレンタル用の作業着であり、2は前身頃であり、3はその上方に縫合された長方形の透明な軟質合成樹脂部材である。4はミシンの縫合線、5は縫合線4で囲まれた縫合領域、6aおよび6bは縫合線4の一部を開放した挿通口であり、aは挿通口6aの幅、bは挿通口6bの幅である。7は、縫合領域5に挿入された名前8を印刷した名札である。
【0016】
[試験例]
挿通口6aの幅aおよび挿通口6bの幅bが下記に示す表の大きさであり、名札7の大きさが縫合領域5よりやや小さいものを挿入した作業服50枚を準備した。当該作業服50枚を常法により洗濯機で洗濯し、乾燥機で10分間乾燥処理を行った。なお、表中、「乾燥状態」は1回洗濯し乾燥したときの名札を挿入した縫合領域5内の状態、「糸くずの有無の状態」は100回洗濯と乾燥を繰り返し行ったときの状態をそれぞれ目視で観察し評価した。
【0017】
【表1】

【0018】
<乾燥状態>
○:縫合領域5内に水蒸気がこもっておらず、完全に乾燥していた。
△:一部の作業服の縫合領域5内に若干水蒸気がこもっているが、問題のない程度である。
×:多数の作業服の縫合領域5内に水蒸気がこもっていた。
<糸くずの有無の状態>
○:縫合領域5内に糸くずが殆ど観察されなかった。
△:一部の作業服の縫合領域5内にわずかに糸くずが観察されたが、問題のない程度である。
×:多数の作業服の縫合領域5内に糸くずが観察された。
【0019】
表1より、挿通口6aの幅aおよび挿通口6bの幅bが1/2乃至4/5でないと洗濯しても名札カバー内に水蒸気がこもることなく短時間で乾燥することが可能で、しかも名札カバー内に糸くずなどの塵がたまり難い作業服の名札カバーの構造を提供することは難しいことが理解される。なお、表中のNo.7の一部の作業服において、洗濯中に名札が脱落していた。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の作業服の名札カバーの構造は、透明な軟質合成樹脂部材を、挿通口を残して周回的に縫合して取り付けてあり、一縦辺側の上方および他縦辺側の下方に特定幅の挿通口を有することより、洗濯しても名札カバー内の水蒸気がこもることなく短時間で乾燥することが可能で、しかも名札カバー内に糸くずなどの塵がたまり難い構造となっている。したがって、ある一定期間使用したらこれを引き上げて他の洗濯済の作業服を代わりに提供しこれを周期的に繰り返すレンタル作業服に有用である。
【符号の説明】
【0021】
1 レンタル用の作業着
2 前身頃
3 透明な軟質合成樹脂部材
4 縫合線
5 縫合領域
6a 挿通口
6b 挿通口
7 名札
8 名前
a 挿通口6aの幅
b 挿通口6bの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業服の前身頃等の適宜の箇所に、透明な軟質合成樹脂部材を、挿通口を残して周回的に縫合して取り付けてあり、前記縫合領域が四角形であり、前記挿通口が、四角形の縫合領域の縦辺側に設けられている作業服の名札カバーの構造において、前記挿通口が、縫合領域の一縦辺側の上端部から下方1/2乃至4/5までと他縦辺側の下端部から上方1/2乃至4/5まで設けられていることを特徴とする作業服の名札カバーの構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−215478(P2011−215478A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85153(P2010−85153)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)