説明

作業機械のバッテリー保持構造

【課題】少ない部材数で複数のバッテリーを保持できる。
【解決手段】バッテリー13,14それぞれの上面13b,14bの、バッテリー並設方向に延びる1対の稜部のうちの一方の稜部の動きを規制するカバープレート16と、サイドフレーム15に係着され、上述の一方の稜部に連設されるバッテリー13,14の一方の立ち上がり面13a,14aに沿って立設される脚部17a,18a、及びバッテリー13,14それぞれの上面13b,14bに係合する係合部17b,18bを有し、カバープレート16と一体に設けられたブラケット17,18と、バッテリー13,14の一方の立ち上がり面13a,14aの反対側に位置する他方の立ち上がり面に沿って立設され、ボルト21,23、及びナット22,24によってブラケット17,18に締結される立設部材19,20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に備えられ、複数のバッテリーを水平方向に並設して保持するバッテリー保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。図6は、この特許文献1に示される従来の作業機械のバッテリー保持構造を示す分解斜視図である。
【0003】
この従来技術は、サイドフレーム30上にケース31が配置され、このケース31内に第1バッテリー32と第2バッテリー33とが水平方向に並べて収容されている。第1,第2バッテリー32,33それぞれの上面の、これらのバッテリー32,33の並設方向に延びる1対の稜部のうちの一方の稜部の動きを規制するカバープレート35が備えられ、このカバープレート35と、ケース31の底部から延設した下部連結プレート36とが、上述した一方の稜部に連設されるバッテリー32,33の一方の立ち上がり面に沿って立設されるハンガーボルト37,38によって連結されている。
【0004】
ハンガーボルト37,38は、下部連結プレート36に形成した連結用穴36a,36bのそれぞれに挿入されると共に、下端にフック部を備え、これらのフック部によってハンガーボルト37,38は下部連結プレート36に係着されている。ハンガーボルト37,38の上端は、カバープレート35に形成された穴に挿入され、ナット39,40によってカバープレート35に締結されている。
【0005】
ケース31の背面側には、このケース31に溶接され、バッテリー32,33の上述した一方の立ち上がり面の反対側に位置する他方の立ち上がり面に沿って立設される上部連結プレート41,42が備えられ、これらの上部連結プレート41,42とカバープレート35とが、このカバープレート35に一端が溶接される丸棒43,44によって連結されている。丸棒43,44の上部連結プレート41,42側に位置する端部は、上部連結プレート41,42に形成した連結用穴41a,42aに挿入されると共に、フック部を備え、これらのフック部によって丸棒43,44は上部連結プレート41,42に係着されている。
【特許文献1】特開平11−342809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術は、第1,第2バッテリー32,33を保持するために、ケース31、カバープレート35、下部連結部材36、ハンガーボルト37,38、上部連結プレート41,42、及び丸棒43,44を必要としており、部材数が多い。これに伴って、各部材を接続して組立てる作業工数も多くなっている。これらにより従来技術は、製作費が高くなりやすい問題がある。
【0007】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、少ない部材数で複数のバッテリーを保持できる作業機械のバッテリー保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械の機体上で複数のバッテリーを水平方向に並設して保持する作業機械のバッテリー保持構造において、上記複数のバッテリーそれぞれの上面の、上記バッテリー並設方向に延びる1対の稜部のうちの一方の稜部の動きを規制するカバープレートと、上記機体側に係着され、上記一方の稜部に連設される上記バッテリーの一方の立ち上がり面に沿って立設される脚部、及び上記バッテリーそれぞれの上面に係合する係合部を有し、上記カバープレートを保持するブラケットと、上記バッテリーの上記一方の立ち上がり面の反対側に位置する他方の立ち上がり面に沿って立設され、上記ブラケットに固定される立設部材とを備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、ブラケットを機体側に係着させたことから、複数のバッテリーを収容するケース等を要することなくこの機体側を利用してバッテリーを保持できる。また、ブラケットがバッテリーそれぞれの上面に係合する係合部を有することから、ブラケットとは別体にバッテリーの上面に係合する丸棒等の部材を要することなくバッテリーを保持できる。これらにより、少ない部材数で複数のバッテリーを保持することができる。
【0010】
また本発明は、上記発明において、上記カバープレートを上記ブラケットに一体に設けたことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、カバープレートとブラケットが一部材となるので、部材数をさらに少なくすることができる。
【0012】
また本発明は、上記発明において、上記ブラケットが、下端に上記機体側に形成した穴に挿入可能なフック部を有することを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、フック部を穴に挿入させて穴の周縁部に係合させることにより、ブラケットを機体側に容易に係着させることができる。
【0014】
また本発明は、上記発明において、上記ブラケットと上記立設部材とを締結する締結手段を備えたことを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、ブラケットの係合部をバッテリーそれぞれの上面に係合させた状態で、締結手段によってブラケットと立設部材とを強固に締結させることができる。
【0016】
また本発明は、上記発明において、上記バッテリーのそれぞれに対応させて上記ブラケットを個別に設けると共に、隣り合う上記バッテリーを隙間あけて保持させたことを特徴としている。
【0017】
このように構成した本発明は、2個のバッテリーのうちの一方のバッテリーが、何らかの理由により微小移動しても、隙間によって、その移動が他方のバッテリーを移動させる力として伝えられることがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、少ない部材数で複数のバッテリーを保持でき、これに伴って各部材を接続して組立てる作業工数を低減できる。これらにより本発明は、従来に比べて製作費を安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明に係る作業機械のバッテリー保持構造を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明のバッテリー保持構造が備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルの斜視図である。この図1に示す油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2とを備えている。旋回体2上には、運転室3と、エンジンルーム4と、カウンタウエイト5とが配置されている。また、旋回体2の前側には、この旋回体2に対して上下方向の回動可能にフロント作業機6が取り付けられている。フロント作業機6は、ブーム7と、アーム8と、バケット9と、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とが含まれている。本実施形態が対象としている第1バッテリー13、第2バッテリー14は、後述するように例えばエンジンルーム4内のサイドフレーム15上に配置されている。
【0021】
図2は本発明に係る作業機械のバッテリー保持構造の一実施形態の要部を上方向から見た斜視図、図3は図2に示す本実施形態の要部を下方向から見た斜視図、図4は図2に示す状態からサイドフレームを除いた状態を示す斜視図、図5は本実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【0022】
これらの図2〜4に示すように、本実施形態のバッテリー保持構造にあっては、複数例えば第1バッテリー13と第2バッテリー14の2個のバッテリーが水平方向に並設して保持されるようになっている。
【0023】
本実施形態は、図2〜5に示すように、第1,第2バッテリー13,14それぞれの上面13b,14bの、バッテリー並設方向に延びる1対の稜部のうちの一方の稜部の動きを規制するカバープレート16を備えている。また、機体側、例えば旋回フレームを形成するサイドフレーム15に係着され、上述した一方の稜部に連設されるバッテリー13,14の一方の立ち上がり面13a,14aに沿って立設される脚部17a,18a、及びバッテリー13,14それぞれの上面13b,14bに係合する係合部17b,18bを有し、カバープレート16を保持するブラケット17,18を備えている。さらに、図5に示すように、バッテリー13,14の上述した一方の立ち上がり面13a,14aの反対側に位置する他方の立ち上がり面に沿って立設され、ブラケット17,18にそれぞれ固定される立設部材19,20を備えている。これらの立設部材19,20は、例えば図1に示すエンジンルーム4の側板4aに近接する側に配置してある。
【0024】
上述したカバープレート16は、例えばブラケット17,18に溶接によって一体に設けてある。また、ブラケット17,18のそれぞれは、図3に示すように、下端にサイドフレーム15に形成した穴15a,15bに挿入可能なフック部17c,18cを備えてる。また、ブラケット17と立設部材19、ブラケット18と立設部材20は、それぞれ締結手段、例えば図5に示すボルト21とナット22、ボルト23とナット24によって強固に締結されている。さらに、2個のバッテリー13,14のそれぞれに対応させてブラケット17,18を個別に設けてある。すなわち、1対のブラケット17,18を設けてあり、図2〜4に示すように、これらのブラケット17,18によって隣り合うバッテリー13,14を隙間25をあけて保持させてある。
【0025】
本実施形態によってサイドフレーム15上に水平方向に並設した第1,第2バッテリー13,14を保持するには、例えば1対のブラケット17,18とカバープレート16とから成る一体物を傾けながら、ブラケット17,18のフック部17a,18aをサイドフレーム15の穴15a,15bに挿入し、その後、この一体物を起こす。これによって図3に示すように、ブラケット17,18のフック部17c,18cが、サイドフレーム15の穴15a,15bの周縁部に係着される。また、ブラケット17,18の脚部17a,18aが、第1,第2バッテリー13,14の一方の立ち上がり面13a,14aに沿うように位置し、図2,4に示すようにカバープレート16が、第1,第2バッテリー13,14の上面13b,14bの1対の稜部のうちの一方の稜部に係着される。さらに、図2〜4に示すように、ブラケット17,18の係合部17b,18bがバッテリー13,14の上面13b,14bに係合した状態となる。
【0026】
このような状態において、図5に示すように、立設部材19,20をブラケット17,18の係合部17b,18bの裏面にそれぞれ当接させ、立設部材19,20に形成された穴とブラケツト17,18に形成された穴とを適合させて、ボルト21,23をそれぞれ穴に挿入し、ナット22,24で締め付ける。したがって、ブラケット17,18と立設部材19,20とが一体に固定される。これにより、立設部材19,20が第1,第2バッテリー13,14の他方の立ち上がり面に当接した状態となる。すなわち、第1,第2バッテリー13,14のそれぞれは、カバープレート16と、立設部材19,20とによって、上述した一方の立ち上がり面13a,14aと他方の立ち上がり面とを結ぶ方向に対して動かないように保持され、ブラケット17,18の係合部17b,18bによって上方向に動かないように保持される。これらに伴って第1,第2バッテリー13,14は、これらの第1,第2バッテリー13,14の並設方向に対しても強固に保持される。
【0027】
このように構成した本実施形態によれば、ブラケット17,18を機体である旋回フレームを形成するサイドフレーム15に係着させたことから、第1,第2バッテリー13,14を収容する特別なケース等を要することなく、このサイドフレーム15を利用してバッテリー13,14を保持できる。また、ブラケット17,18がバッテリー13,14それぞれの上面13b,14bに係合する係合部17b,18bを有することから、ブラケット17,18とは別体にバッテリー13,14の上面13b,14bに係合する特別な丸棒等の部材を要することなくバッテリー13,14を保持できる。したがって、少ない部材数で第1,第2バッテリー13,14を保持することができ、これに伴って各部材を接続して組立てる作業工数を低減できる。これらにより製作費を安くすることができる。
【0028】
また、カバープレート16をブラケット17,18に一体に設けてあり、カバープレート16とブラケット17,18とが一部材となるので、この点でも部材数を少なくすることができる。
【0029】
また、ブラケット17,18が、下端にサイドフレーム15の穴15a,15bに挿入可能なフック部17c,18cを有するので、これらのフック部17c,18cを穴15a,15bに挿入させて穴15a,15bの周縁部に係合させることにより、ブラケット17,18をサイドフレーム15に容易に係着させることができ、組立作業を能率よく行なうことができる。
【0030】
また、ブラケット17,18と立設部材19,20とをそれぞれ締結するボルト21とナット22、及びボルト22とナット24を設けたので、これらのボルト21とナット22、及びボルト23とナット24によってブラケット17,18と立設部材19,20とを、カバープレート16、ブラケット17,18の係合部17b,18b、及び立設部材19,20のそれぞれが、第1,第2バッテリー13,14に当接するように強固に締結させることができ、第1,第2バッテリー17,18の安定した保持構造の実現に貢献する。
【0031】
また、第1,第2バッテリー13,14のそれぞれに対応させて1対のブラケット17,18を設けると共に、隣り合うバッテリー13,14を隙間25をあけて保持させたことから、2個のバッテリー13,14のうちの一方のバッテリーが、例えば掘削作業中にバケットが岩石に衝合するなどの突発的な振動等の何らかの理由により微小移動を生じたとしても、隙間25によって、その移動が他方のバッテリーを移動させる力として伝えられることがない。これにより、バッテリーの移動に伴うカバープレート16、ブラケット17,18、立設部材19,20等の破損を防止することがてきる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のバッテリー保持構造が備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルの斜視図である。
【図2】本発明に係る作業機械のバッテリー保持構造の一実施形態の要部を上方向から見た斜視図である。
【図3】図2に示す本実施形態の要部を下方向から見た斜視図である。
【図4】図2に示す状態からサイドフレームを除いた状態を示す斜視図である。
【図5】本実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図6】従来の作業機械のバッテリー保持構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
2 旋回体
4 エンジンルーム
4a 側板
13 第1バッテリー
13a 立ち上がり面
13b 上面
14 第2バッテリー
14a 立ち上がり面
14b 上面
15 サイドフレーム
15a 穴
15b 穴
16 カバープレート
17 ブラケット
17a 脚部
17b 係合部
17c フック部
18 ブラケット
18a 脚部
18b 係合部
18c フック部
19 立設部材
20 立設部材
21 ボルト
22 ナット
23 ボルト
24 ナット
25 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の機体上で複数のバッテリーを水平方向に並設して保持する作業機械のバッテリー保持構造において、
上記複数のバッテリーそれぞれの上面の、上記バッテリー並設方向に延びる1対の稜部のうちの一方の稜部の動きを規制するカバープレートと、
上記機体側に係着され、上記一方の稜部に連設される上記バッテリーの一方の立ち上がり面に沿って立設される脚部、及び上記バッテリーそれぞれの上面に係合する係合部を有し、上記カバープレートを保持するブラケットと、
上記バッテリーの上記一方の立ち上がり面の反対側に位置する他方の立ち上がり面に沿って立設され、上記ブラケットに固定される立設部材とを備えたことを特徴とする作業機械のバッテリー保持構造。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記カバープレートを上記ブラケットに一体に設けたことを特徴とする作業機械のバッテリー保持構造。
【請求項3】
上記請求項1記載の発明において、
上記ブラケットが、下端に上記機体側に形成した穴に挿入可能なフック部を有することを特徴とする作業機械のバッテリー保持構造。
【請求項4】
上記請求項1記載の発明において、
上記ブラケットと上記立設部材とを締結する締結手段を備えたことを特徴とする作業機械のバッテリー保持構造。
【請求項5】
上記請求項1記載の発明において、
上記バッテリーのそれぞれに対応させて上記ブラケットを個別に設けると共に、隣り合う上記バッテリーを隙間あけて保持させたことを特徴とする作業機械のバッテリー保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−35897(P2006−35897A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214555(P2004−214555)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)