説明

作業機械

【課題】機体フレームへの取付構造の異なる少なくとも2種類のアーム装置を、簡単な構造で、必要に応じて容易に組換え交換することができる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械2が、機体フレーム6に揺動作動を自在に取付けられ先端部に作業具20が取付けられる第1アーム装置16と、機体フレーム6から第1アーム装置16を取外した部位に着脱可能に取付けられるアダプタ部材22と、機体フレーム6に取付けたアダプタ部材22に揺動作動を自在に取付けられ先端部に作業具20が取付けられる第2アーム装置18を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械、さらに詳しくは、作業具が取付けられるアーム装置を備えたホイールローダのような作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダのような作業機械は、機体フレームに上下方向に揺動作動を自在に取付けられ先端部にバケットのような作業具が取付けられるアーム装置を備えている。このアーム装置には、種々の作業に対応できるようにした種々の構造のものが用いられている。代表例には、Zバー型リンク機構を備えたもの(例えば特許文献1、図4参照)、パラレル型リンク機構を備えたもの(特許文献1、図6参照)などがある。
【特許文献1】特開2001−152478号公報(図4、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したとおりの、アーム装置を備える作業機械には、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0004】
すなわち、Zバー型リンク機構、パラレル型リンク機構などのアーム装置は、その構造上、作業機械の機体フレームへの取付構造が異なっている。したがって、種々の作業を効率よく遂行するには、作業それぞれに適合したアーム装置を備える複数台の作業機械の用意が必要である。
【0005】
1台の作業機械に異なった構造のアーム装置を、機体フレームを変更して交換できるようにしたものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながらこの場合は、機体フレームそのものの大幅な変更が必要であるので、機体フレームのコストが高くなるとともに、組換作業に多くの時間がかかる問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、機体フレームへの取付構造の異なる少なくとも2種類のアーム装置を、簡単な構造で、必要に応じて容易に組換え交換することができる、作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記技術的課題を解決する作業機械として、機体フレームに揺動作動を自在に取付けられ先端部に作業具が取付けられる第1アーム装置と、機体フレームから第1アーム装置を取外した部位に着脱可能に取付けられるアダプタ部材と、機体フレームに取付けたアダプタ部材に揺動作動を自在に取付けられ先端部に作業具が取付けられる第2アーム装置と、を備えている、ことを特徴とする作業機械が提供される。
【0008】
好適には、アダプタ部材は、第1アーム装置を機体フレームに取付けるピン部材によって取付けられる。また、第1アーム装置はZバー型リンク機構を備え、第2アーム装置はパラレル型リンク機構を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従って構成された作業機械は、機体フレームに取付けられる第1アーム装置と、機体フレームから第1アーム装置を取外した部位に着脱可能に取付けられるアダプタ部材と、機体フレームに取付けたアダプタ部材に取付けられる第2アーム装置を備えている。したがって、機体フレームへの取付構造の異なる少なくとも2種類のアーム装置を、簡単な構造で、必要に応じて容易に組換え交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された作業機械について、代表的な作業機械であるホイールローダにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0011】
図1を参照して説明する。ホイールローダ2は、前車輪4を取付けた前車体6と、後車輪8を取付けた後車体10を備え、前車体6と後車体10は屈折操向を自在に連結されている。後車体10には運転室12およびエンジン室14が備えられ、前車体6には、第1アーム装置16(図1(a))または第2アーム装置18(図1(b))が組換え交換を可能に取付けられる。
【0012】
すなわち、ホイールローダ2は、機体フレームにとしての前車体6に上下方向に揺動作動を自在に取付けられ先端部に作業具としてのバケット20が取付けられる第1アーム装置16と、前車体6から第1アーム装置16を取外した部位に着脱可能に取付けられるアダプタ部材22(図1(b))と、前車体6に取付けられたアダプタ部材22に上下方向に揺動作動を自在に取付けられ先端部に作業具としてのバケット20が取付けられる第2アーム装置18を備えている。
【0013】
第1アーム装置16はZバー型リンク機構を備えた、また第2アーム装置18はパラレル型リンク機構を備えた、典型的な周知のアーム装置である。
【0014】
第1アーム装置16について、図1(a)を参照して説明する。第1アーム装置16は、一端が前車体6に他端がバケット20に連結された、左右一対(紙面に垂直の方向に間隔を置いて配設された)のリフトアーム16a、16aと、リフトアーム16a、16aの間の長手方向の中間に揺動自在に取付けられたレバー16bと、前車体6とレバー16bの間に連結されたチルトシリンダ16cと、レバー16bとバケット20の間に連結されたリンク16dと、前車体6とリフトアーム16a、16aそれぞれの間に連結された一対のリフトシリンダ16e、16eを備えている。第1アーム装置16は側方から見て(図1(a))Z字形状のZバー型リンク機構を備えている。
【0015】
第1アーム装置16は、前車体6に、一対のリフトアーム16a、16aがピン部材P1、P1によって、リフトシリンダ16e、16eがピン部材P2、P2によって、チルトシリンダ16cがピン部材P3によって、それぞれ連結されている。
【0016】
アダプタ部材22について、図1とともに図2を参照して説明する。アダプタ部材22は、前車体6から第1アーム装置16(図1(a))を取外した部位に取付けられる機体取付部KTと、機体取付部KTに一体に形成されたアーム装置取付部ATを備えている。機体取付部KTは前車体6に、第1アーム装置16を前車体6に取付けた前記の複数個のピン部材P1、P2、P3によって取付けられる。
【0017】
第2アーム装置18について、図1(b)を参照して説明する。第2アーム装置18は、一端がアダプタ部材22に他端がバケット20に連結された、左右一対(紙面に垂直の方向に間隔を置いて配設された)のリフトアーム18a、18aと、リフトアーム18a、18aそれぞれの長手方向前後に揺動自在に取付けられたレバー18b、18cと、前車体6とレバー18bの間に連結されたリンク18dと、レバー18cとバケット20の間に連結されたレバー18eと、レバー18bとレバー18eの間に連結されたチルトシリンダ18fと、アダプタ部材22とリフトアーム18a、18aそれぞれの間に連結された一対のリフトシリンダ18g、18gを備えている。第2アーム装置18は側方から見て(図1(b))平行リンク状のパラレル型リンク機構を備えている。
【0018】
第2アーム装置18は、アダプタ部材22のアーム装置取付部AT(図2)に、一対のリフトアーム18a、18aがピン部材P4、P4によって、一対のリンク18d、18dがピン部材P5、P5によって、一対のリフトシリンダ18g、18gがピン部材P6、P6によって、それぞれ連結されている。
【0019】
アダプタ部材22について、図3を参照してさらに説明する。アダプタ部材22は鋼製部材を溶接接合して形成されている。アダプタ部材22は、左右一対の平行に延びる基板22a、22aと、基板22a、22aの間を連結する角筒体22bと、基板22a、22aそれぞれの外側に立設されアーム装置取付部AT用の開口を形成する断面L形のアングル体22c、22cと、基板22a、22aの間に位置し角筒体22bから機体取付部KT側に突出した板体22dを備えている。
【0020】
機体取付部KTは一対の基板22a、22aの一端側と板体22dによって形成され、それぞれにピン部材P1用のピン孔H1、ピン部材P2用のピン孔H2、ピン部材P3用のピン孔H3が形成されている。
【0021】
アーム装置取付部ATは、一対の基板22a、22aの他端側と一対のアングル体22c、22cによって形成され、それぞれにピン部材P4用のピン孔H4、ピン部材P5用のピン孔H5、ピン部材P6用のピン孔H6が形成されている。
【0022】
なお、第1アーム装置16、第2アーム装置18の先端部には、周知のクイックカプラ装置24が備えられ、作業具であるバケット20はこのクイックカプラ装置24を介して取付けられている。したがって、第1アーム装置16、第2アーム装置18の先端部には適宜の作業具が、クイックカプラ装置24を介して取付けられる。
【0023】
上述したとおりの作業機械2の作用効果について説明する。
【0024】
作業機械2は、機体フレーム6に取付けられる第1アーム装置16と、機体フレーム6から第1アーム装置16を取外した部位に着脱可能に取付けられるアダプタ部材22と、機体フレーム6に取付けたアダプタ部材22に取付けられる第2アーム装置18を備えている。したがって、機体フレーム6への取付構造の異なる少なくとも2種類のアーム装置を、簡単な構造で、必要に応じて容易に組換え交換することができる。
【0025】
また、アダプタ部材22は、第1アーム装置16を機体フレーム6に取付けるピン部材P1、P2、P3によって取付けられる。したがって、取付けのために新規な部品を必要としないので、また取外した部品の保管の問題もないので、経済的にアダプタ部材22を取付けることができる。
【0026】
さらに、第1アーム装置16はZバー型リンク機構を備え、第2アーム装置18はパラレル型リンク機構を備えている。したがって、大きな負荷、衝撃に対して有効なZバー型リンク機構を備えた第1アーム装置16を機体フレーム6に直接装備し、負荷、衝撃が比較的少なく作業具を平行に上下させるような荷役作業に有効なパラレル型リンク機構を備えた第2アーム装置18をアダプタ部材22を介して取付けるようにしたので、作業機械2を有効に活用することができる。
【0027】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0028】
本発明の実施の形態においては、第1アーム装置16はZバー型リンク機構を備え、第2アーム装置18はパラレル型リンク機構を備えているが、作業内容そしてその頻度に応じて、逆に第1アーム装置をパラレル型リンク機構にし、第2アーム装置をZバー型リンク機構にして、それぞれに合わせた形状のアダプタ部材を用意してもよい。あるいは、第1アーム装置、第2アーム装置を、他の形態のアーム装置にしてもよい。
【0029】
本発明の実施の形態においては、作業機械2はホイールローダであるが、作業機械はアーム装置が装備される他の適宜の、積込機、掘削機、荷役機などでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従って構成された作業機械の代表例であるホイールローダの側面図で(a)は第1アーム装置を取付けたもの、(b)は第1アーム装置を取外し、アダプタ部材を介して第2アーム装置を取付けもの。
【図2】図1のA矢印方向の斜めから見た、機体フレームにアダプタ部材を取付けた状態の拡大斜視図。
【図3】(a)アダプタ部材を第2アーム装置取付側から見た拡大斜視図。(b)アダプタ部材を機体フレーム側から見た拡大斜視図。
【符号の説明】
【0031】
2:ホイールローダ(作業機械)
6:前車体(機体フレーム)
16:第1アーム装置
18:第2アーム装置
20:バケット(作業具)
22:アダプタ部材
P1、P2、P3、P4、P5、P6:ピン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームに揺動作動を自在に取付けられ先端部に作業具が取付けられる第1アーム装置と、
機体フレームから第1アーム装置を取外した部位に着脱可能に取付けられるアダプタ部材と、
機体フレームに取付けたアダプタ部材に揺動作動を自在に取付けられ先端部に作業具が取付けられる第2アーム装置と、を備えている、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
アダプタ部材は、第1アーム装置を機体フレームに取付けるピン部材によって取付けられる、
ことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
第1アーム装置はZバー型リンク機構を備え、第2アーム装置はパラレル型リンク機構を備えている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−133089(P2010−133089A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307410(P2008−307410)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】