説明

作業機械

【課題】検出装置の近傍下流に、吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部が形成されるものにあって、検出装置と乱流部との間に直管路を設けることなく、検出装置の近傍下流を流れる吸入空気の流れの乱れを抑えることができる作業機械の提供。
【解決手段】エンジン吸入ダクト12と、このエンジン吸入ダクト12に導かれる吸入空気の量を検出する検出装置14と、この検出装置14の近傍下流に形成され、エンジン吸入ダクト12に導かれる吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部、例えば蛇腹部13とを有するミニショベルに設けられ、乱流部を形成する蛇腹部13に、エンジン吸入ダクト12に導かれる吸入空気を整流する整流部材15を備えている。この整流部材15は、エンジン吸入ダクト12に内接する環状部15bと、この環状部15bに連設され、先端に行くに従って径寸法が小さくなるテーパ形状部15aとから成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに吸入空気を導くエンジン吸入ダクトと、このエンジン吸入ダクトに導かれる吸入空気の量を検出する検出装置とを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、エアクリーナから供給されるエンジンの吸入空気を導くダクト、すなわちエンジン吸入ダクトと、このエンジン吸入ダクトに導かれる吸入空気の流速である吸気流速を均一化させるために、エンジン吸入ダクトに導かれた吸入空気の量を検出するエアフロメータ、すなわち検出装置と、この検出装置の近傍下流に設けられ、エンジンの振動を吸収する蛇腹部とを備えた構成になっている。検出装置の近傍上流のエンジン吸入ダクトの部分は、吸入空気の流れの乱れを防ぐ直管路に形成されている。すなわち、この従来技術は、検出装置の近傍上流を直管路に形成し、検出装置部分を通過する吸入空気の流れの乱れを抑えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−209857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術は、検出装置の上流側を流れる吸入空気の流れの乱れは直管路によって抑えられるものの、検出装置の下流近傍に蛇腹部を備えていることから、この蛇腹部が吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部を形成し、この乱流部における吸入空気の流れの乱れの影響で、検出装置による吸入空気量の検出精度が低下する懸念がある。
【0005】
なお、このような問題に対応するために、検出装置の近傍下流にも、すなわち検出装置と蛇腹部との間にも、吸入空気の流れの乱れを抑える直管路を設けることが考えられる。しかし、このように検出装置の近傍下流の蛇腹部の上流側にも直管路を設けるようにすると、エンジン吸入ダクトが長くなり、このエンジン吸入ダクトの配設が難しくなる。特に、作業機械がミニショベルのように比較的小型の作業機械の場合は、エンジン吸入ダクトの配設空間に余裕が少ないことから、エンジン吸入ダクトを設けることが困難になりやすい。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、検出装置の近傍下流に、吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部が形成されるものにあって、検出装置と乱流部との間に直管路を設けることなく、検出装置の近傍下流を流れる吸入空気の流れの乱れを抑えることができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る作業機械は、エンジンを備えた作業機械に設けられ、上記エンジンに吸入空気を導くエンジン吸入ダクトと、このエンジン吸入ダクトに導かれる上記吸入空気の量を検出する検出装置と、この検出装置の近傍下流に形成され、上記エンジン吸入ダクトに導かれる上記吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部とを有する作業機械のエンジン吸入ダクト配設構造において、上記乱流部に、上記エンジン吸入ダクトに導かれる上記吸入空気を整流する整流部材を備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、検出装置の近傍下流に形成される乱流部に整流部材を備えたことから、検出装置と乱流部との間に直管路を設けることなく、乱流部における吸入空気の流れの乱れが整流部材によって抑えられる。これにより、検出装置による吸入空気量の検出に際し、乱流部における吸入空気の流れの乱れの影響を抑えることができ、検出装置による精度の高い吸入空気量の検出を実現させることができる。したがって、検出装置と乱流部との距離を短く保つことができ、これに伴ってエンジン吸入ダクトの長さ寸法の増加を抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る作業機械は、上記発明において、上記乱流部は、上記エンジンの振動を吸収する蛇腹部から成ることを特徴としている。このように構成した本発明は、検出装置による吸入空気量の検出に際し、蛇腹部における吸入空気の流れの乱れの影響を抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係る作業機械は、上記発明において、上記整流部材は、上記エンジン吸入ダクトに内接する環状部を含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る作業機械は、上記発明において、上記整流部材は、上記環状部に連設され、先端に行くに従って径寸法が小さくなるテーパ形状部を含むことを特徴としている。これらのように構成した本発明は、整流部材の形状が簡単であり、製作が容易である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、検出装置の近傍下流に形成され、エンジン吸入ダクトに導かれる吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部に、エンジン吸入ダクトに導かれる吸入空気を整流する整流部材を備えたことから、検出装置と乱流部との間に直管路を設けることなく、検出装置の近傍下流を流れる吸入空気の乱れを抑えることができる。これにより、検出装置による精度の高い吸入空気量の検出を実現させることができるとともに、エンジン吸入ダクトの長さ寸法の増加を抑制でき、エンジン吸入ダクトの配設空間に余裕の少ない場合でも設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るエンジン吸入ダクト配設構造の一実施形態が備えられる作業機械の一例として挙げたミニショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示すミニショベルに備えられる機械室の内部を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係るエンジン吸入ダクト配設構造の要部概観を示す側面図である。
【図4】図3の要部側面図である。
【図5】本実施形態に備えられる整流部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る作業機械の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係るエンジン吸入ダクト配設構造の一実施形態が備えられる作業機械の一例として挙げたミニショベルを示す側面図である。
【0016】
この図1に示すミニショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に取り付けられる作業装置3とを備えている。作業装置3は、旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に上下方向の回動可能に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に上下方向の回動可能に取り付けられるバケット6とを含んでいる。旋回体2上の前側位置には運転室7が備えられ、旋回体2の後側には、エンジン、油圧ポンプ等が収容される機械室8が備えられている。さらに機械室8の後側には、重量バランスを確保するカウンタウエイト9が設けられている。機械室8は、運転室7とカウンタウエイト9とに挟まれるように配置され、必要最小限の形状寸法に設定されている。したがって、この機械室8内に設けられる各機器の配設空間は余裕の少ないものとなっている。
【0017】
図2は図1に示すミニショベルに備えられる機械室の内部を示す斜視図、図3は本実施形態に係るエンジン吸入ダクト配設構造の要部概観を示す側面図、図4は図3の要部側面図、図5は本実施形態に備えられる整流部材を示す斜視図である。
【0018】
図2に示すように、機械室8の内部には、図示省略したエンジンに清浄な吸入空気を供給するエアクリーナ10と、エンジンに付設され、圧縮空気を作製してエンジンに供給するターボ11と、エアクリーナ10とターボ11とを連絡し、エンジンに吸入空気を導くエンジン吸入ダクト12が配設されている。
【0019】
図3,4等に示すように、エンジン吸入ダクト12には、このエンジン吸入ダクト12に導かれる吸入空気の量を検出する検出装置14を設けてある。この検出装置14の近傍上流のエアクリーナ10側に位置するエンジン吸入ダクト12部分は、比較的長さ寸法の長い直管路に形成してある。検出装置14の近傍下流には、エンジンの振動を吸収し、本実施形態に係るエンジン吸入ダクト配設構造を安定に保つ蛇腹部13を設けてある。この蛇腹部13は内面に凹凸部を有するものであり、エンジン吸入ダクト12に導かれる吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部を形成している。
【0020】
図4に示すように、本実施形態に係るエンジンダクト配設構造は、乱流部を形成する蛇腹部13の内部に、エンジン吸入ダクト12に導かれる吸入空気を整流する整流部材15を設けてある。この整流部材15は、図5に示すように、エンジン吸入ダクト12に内接する環状部15bと、この環状部15bに連設され、先端に行くに従って径寸法が小さくなるテーパ形状部15aとを含む筒形状に形成してある。
【0021】
整流部材15の取り付け以前にあっては、蛇腹部13とエンジン吸入ダクト12とは互いに別部材として構成されている。整流部材15の取り付けに際しては、エンジン吸入ダクト12の端部の内周面に整流部材15の環状部15bを溶着し、その後エンジン吸入ダクト12と蛇腹部13とを溶着する。これにより、エンジン吸入ダクト12と整流部材15と蛇腹部13とが一体化される。
【0022】
このように構成した本実施形態は、検出装置14の近傍下流の乱流部を形成する蛇腹部13の内部に整流部材15を備えたことから、検出装置14と蛇腹部13との間に長さ寸法が長く設定されるような直管路を設けることなく、蛇腹部13における吸入空気の流れの乱れが整流部材15によって抑えられる。これにより、検出装置14による吸入空気量の検出に際し、乱流部における吸入空気の流れの乱れの影響を抑えることができ、検出装置14による精度の高い吸入空気量の検出を実現させることができる。
【0023】
したがって、本実施形態によれば、検出装置14と蛇腹部13との距離を短くすることができ、これに伴ってエンジン吸入ダクト12の長さ寸法の増加を抑制でき、エンジン吸入ダクト12の配設空間に余裕の少ない状況にあっても設置することができる。
【0024】
また、整流部材15は、環状部15bと、この環状部15bに連設されるテーパ形状部15aとから成る簡単な形状であり、製作が容易で実用性に富む。また、蛇腹部13とエンジン吸入ダクト12とが振動で変位するときに、テーパ形状部15aが蛇腹部13に接触することがなく、整流部材15の安定保持を実現させることができる。
【0025】
なお、上記実施形態にあっては、検出装置14の近傍下流に形成され、エンジン吸入ダクト12に導かれる吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部が、蛇腹部13から成っているが、この乱流部は蛇腹部13によって形成されることには限らない。検出装置14の近傍下流に位置するエンジン吸入ダクト12を構成する配管の継ぎ目部分が、乱流部を形成することもあり、また、エンジン吸入ダクト12内に配置され、検出装置14の近傍下流に位置する何らかの突起物が乱流部を形成することもある。本発明にあっては、上述のようなエンジン吸入ダクト12を形成する配管の継ぎ目部分、あるいはエンジン吸入ダクト12内の突起物等によって乱流部が形成される場合には、上述した整流部材14を該当する乱流部に設ける構成にすればよい。
【符号の説明】
【0026】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
7 運転室
8 機械室
10 エアクリーナ
11 ターボ
12 エンジン吸入ダクト
13 蛇腹部
14 検出装置
15 整流部材
15a テーパ形状部
15b 環状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備えた作業機械に設けられ、上記エンジンに吸入空気を導くエンジン吸入ダクトと、このエンジン吸入ダクトに導かれる上記吸入空気の量を検出する検出装置と、この検出装置の近傍下流に形成され、上記エンジン吸入ダクトに導かれる上記吸入空気の流れの乱れを生じさせる乱流部とを有する作業機械のエンジン吸入ダクト配設構造において、
上記乱流部に、上記エンジン吸入ダクトに導かれる上記吸入空気を整流する整流部材を備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
上記乱流部は、上記エンジンの振動を吸収する蛇腹部から成ることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
上記整流部材は、上記エンジン吸入ダクトに内接する環状部を含むことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
上記整流部材は、上記環状部に連設され、先端に行くに従って径寸法が小さくなるテーパ形状部を含むことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−229934(P2010−229934A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80102(P2009−80102)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)