説明

作業機械

【課題】部品点数および製造コストを抑えつつ、シリンダからの油漏れを防止できる作業機械を提供する。
【解決手段】パワーショベル1は、旋回台6と、基端ブーム13と、先端ブーム15と、ブームシリンダ14と、アジャストシリンダ16とを有し、基端ブーム13は、旋回台6との枢結部を揺動中心として前上方に延び、ブームシリンダ14は、先端部が基端ブーム13の先端側下面部に枢結されるとともに基端部が旋回台6に枢結されて、先端ブーム15は、基端側から先端側に延びる一対の左壁部および右壁部と、下側に位置する下壁部と、上側に位置する上壁部とにより囲まれて形成されるシリンダ収容空間を有して構成されて、基端ブーム13に対して前方に延びるように設けられ、アジャストシリンダ16は、先端ブーム15内に形成されたシリンダ収容空間内に位置して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として掘削作業等を行うために用いられる作業機械に関し、さらに詳細には、アームの先端部に揺動自在に取り付けられた作業装置により掘削作業等を行うように構成された作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記作業機械の一例として、車体に揺動自在に取り付けられたブームの先端部に揺動自在にアームを取り付け、このアームの先端部にバケット等の作業装置を備えて構成されるパワーショベルが知られている。このようなパワーショベルは、駆動源としての例えばエンジン(ディーゼルエンジン)を備え、このエンジンにより油圧ポンプを回転駆動して得られる作動油(圧油)を、コントロールバルブを介して油圧アクチュエータに供給することで、ブーム、アームおよびバケットを作動させて所要の掘削作業が行われるように構成されている。例えば特許文献1には、揺動自在なブームの先端部に揺動自在にアームを取り付け、このアームの先端部にバケットを取り付けて構成される油圧ショベルが開示されている。なお、最近においては、エンジンから排出される排気ガスの周囲環境に与える影響を考慮して、エンジンに代えて電動モータを用いたパワーショベルの開発も行われている。
【0003】
図7には、従来構成のパワーショベル500の側面図を示している。パワーショベル500は、走行装置510を有して走行可能に構成されており、この走行装置510の上部に旋回可能に旋回台520が設けられている。旋回台520の上部には、運転者が搭乗するためのオペレータキャビン530が備えられている。旋回台520の前部にはブームシリンダ541により揺動される基端ブーム540が枢結され、基端ブーム540の先端部にはアジャストシリンダ551により揺動される先端ブーム550が枢結され、先端ブーム550の先端部にはアームシリンダ561により揺動されるアーム560が枢結され、アーム560の先端部にはバケットシリンダ571により揺動されるバケット570が取り付けられている。
【0004】
各シリンダ541,551,561,571として、シリンダチューブ内がピストンによってロッド側油室およびボトム側油室に仕切られて構成され、このロッド側油室およびボトム側油室の各々に対して圧油を供給制御することで、シリンダチューブに対してロッドが突出入して伸縮動する複動形の油圧シリンダが用いられる。シリンダチューブにおけるロッドを摺動自在に支持する部分には、ロッド側油室から外部に作動油が漏れることを防止するためのロッドパッキンが設けられている。
【0005】
このように構成されるパワーショベル500は、運転者の操作に応じて各シリンダを伸縮させて基端ブーム540,先端ブーム550、アーム560およびバケット570を揺動させることで、例えば路面等を掘削する掘削作業が行われる。例えば、バケット570の矢印Aの方向に揺動させるとともにバケット570を旋回台520側に揺動させてバケット570で土砂等をすくい上げ、その状態で旋回台520を旋回させることですくった土砂等を他の場所に移すようにして掘削作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−95297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図7に示すパワーショベル500においては、アジャストシリンダ551と基端ブーム540との枢結部552が、基端ブーム540と先端ブーム550との枢結部553よりも前側に設けられるとともに、アジャストシリンダ551が基端ブーム540と先端ブーム550との間に跨って外部に露出された状態で取り付けられている。そのため、例えば先端ブーム550を大きく前側下方に揺動させておいてバケット570で土砂をすくうようにして掘削作業を行う場合には、先端ブーム550の近傍に巻き上げられた土砂がアジャストシリンダ551(アジャストシリンダ551のロッドの表面)に付着しやすい。アジャストシリンダ551のロッドに土砂が付着した状態のままでシリンダチューブに対してロッドが突出入されると、ロッドパッキンが損傷されてロッド側油室から外部に作動油が漏れる虞がある。また、パワーショベル500においては、例えば先端ブーム550を大きく下方へ揺動させることでアジャストシリンダ551が路面等に直接接触して損傷することにより、油漏れの原因となる虞もあった。
【0008】
このような虞に対し、例えばアジャストシリンダ551の下側を覆うカバー部材を別途設ける構成も考えられるが、この構成の場合には部品点数が増えるとともに製造コストの増加を招くことになる。このように、部品点数および製造コストを抑えつつ、シリンダからの油漏れを防止することが難しいという課題があった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、部品点数および製造コストを抑えつつ、シリンダからの油漏れを防止できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業機械は、車体(例えば、実施形態における旋回台6)と、前記車体に基端部が枢結されて上下揺動自在に取り付けられた第1ブーム(例えば、実施形態における基端ブーム13)と、前記第1ブームの先端部に基端部が枢結されて上下揺動自在に取り付けられた第2ブーム(例えば、実施形態における先端ブーム15)と、前記第2ブームの先端部に取り付けられた作業装置と、前記車体と前記第1ブームとの間に設けられて油圧力を受けて伸縮する第1ブームシリンダ(例えば、実施形態におけるブームシリンダ14)と、前記第1ブームと前記第2ブームとの間に設けられて油圧力を受けて伸縮する第2ブームシリンダ(例えば、実施形態におけるアジャストシリンダ16)と、を有して構成される作業機械(例えば、実施形態におけるパワーショベル1)であって、前記第1ブームは、前記基端部における前記車体との枢結部を揺動中心として前上方に延びるように設けられ、前記第1ブームシリンダは、先端部が前記第1ブームの先端側下面部に枢結されるとともに基端部が前記車体に枢結されて前記第1ブームの下面に沿って取り付けられ、前記第2ブームは、基端側から先端側に延びる一対の側壁部(例えば、実施形態における左壁部40Lおよび右壁部40R)と、前記一対の側壁部の下部を繋いで基端側から先端側に延びる下壁部と、前記一対の側壁部および前記下壁部により囲まれて形成されるシリンダ収容空間とを有して構成されて、前記第1ブームに対して前方に延びるように設けられ、前記第2ブームシリンダは、前記シリンダ収容空間内に位置して設けられ、先端部が前記第2ブームに枢結されるとともに基端部が前記第1ブームの先端側における前記第1ブームの先端側下面部と前記第1ブームシリンダの先端部との枢結位置より上面側において前記第1ブームの先端部に枢結されることを特徴とする。
【0011】
なお、上述の作業機械において、前記第2ブームは、前記一対の側壁部の上部を繋いで基端側から先端側に延びて設けられて、前記シリンダ収容空間の上部を覆う上壁部を有して構成され、前記シリンダ収容空間は、前記一対の側壁部、前記下壁部および前記上壁部により囲まれて形成されることが好ましい。
【0012】
また、前記第1ブームにおける前記第1ブームと前記第2ブームとの枢結部が、前記第1ブームと前記第1ブームシリンダの先端部との枢結部と同一位置に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る作業機械は、第2ブームが一対の側壁部および下壁部により囲まれて形成されるシリンダ収容空間を有して構成され、第2ブームシリンダが第2ブームに形成されたシリンダ収容空間内に位置して設けられる。そのため、例えば第2ブームシリンダの下側を覆うカバー部材等を新たに設けることなく、巻き上げられた土砂が第2ブームシリンダに付着することを防止できるので、部品点数および製造コストを抑えつつ、第2ブームシリンダからの油漏れを防止可能である。
【0014】
なお、第2ブームは、一対の側壁部の上部を繋いで基端側から先端側に延びてシリンダ収容空間の上部を覆う上壁部を有する構成が好ましい。この構成の場合、シリンダ収容空間に対して上方から土砂が入り込むことを防止でき、第2ブームシリンダに土砂が付着することを効果的に防止可能となる。
【0015】
また、第1ブームと第2ブームとの枢結部が、第1ブームと第1ブームシリンダの先端部との枢結部と同一位置に設けられる構成が好ましい。このように構成した場合には、第1ブームに設けられる枢結部の個数を減らして構成を簡素化することができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用したパワーショベルの斜視図である。
【図2】図1中のII−II部分を示す断面図である。
【図3】上記パワーショベルを構成する先端ブームの斜視図である。
【図4】先端ブームシリンダを示す図であって、(a)は側面図(一部断面図)を、(b)は図4(a)中のIV(b)−IV(b)部分の断面図を、(c)は図4(a)中のIV(c)−IV(c)部分の断面図をそれぞれ示す。
【図5】上記パワーショベルの油圧回路構成を示す概略図である。
【図6】上記パワーショベルの側面図である。
【図7】従来構成のパワーショベルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1には、本発明を適用した作業機械の一例としてのクローラ型のパワーショベル1の斜視図を示している。まず、図1〜図5を参照しながら、このパワーショベル1の全体構成について説明する。説明の便宜上、各図面において矢印方向でパワーショベル1の前後、左右および上下方向を示し、以下この方向を用いて説明を行う。
【0018】
パワーショベル1は、図1に示すように、平面視略H字状の走行台車2の左右に走行機構3,3が設けられて構成される走行装置4と、走行台車2の後部に上下に揺動自在に設けられたブレード5と、走行台車2の上部に旋回可能に設けられた旋回台6と、旋回台6の前部に設けられたショベル機構7と、旋回台6の上部に立設された運転者搭乗用のオペレータキャビン8とから構成されている。
【0019】
走行装置4を構成する左右一対の走行機構3,3は、走行台車2の左右前部に設けられた駆動用スプロケットホイール9と、走行台車2の左右後部に設けられたアイドラホイール10との間に履帯11が巻き掛けられて構成される。駆動用スプロケットホイール9は、油圧駆動式の走行油圧モータ9aにより回転駆動される(図5参照)。ブレード5は油
圧駆動式のブレードシリンダ5aの作動により揺動され,旋回台6は旋回油圧モータ23により旋回動される(図5参照)。
【0020】
ショベル機構7は、図1に示すように、ショベル側スイングポスト12に揺動自在に枢結された基端ブーム13と、基端ブーム13の先端部に基端ブーム13の揺動面内で上下に揺動自在に枢結された先端ブーム15と、先端ブーム15の先端部に先端ブーム15の揺動面内で上下に揺動自在に枢結されたアーム17と、アーム17の先端部に上下に揺動自在に取り付けられたバケット19と、油圧駆動式のブームシリンダ14と、アジャストシリンダ16と、アームシリンダ18と、バケットシリンダ20とから構成されている。
【0021】
ショベル側スイングポスト12は、旋回台6の前部に突出して形成された旋回台側スイングポスト6aに枢結されており、旋回台6に設けられたスイングシリンダ6b(図5参照)を伸縮させることにより、鉛直方向に延びるスイング軸Nを中心として、旋回台側スイングポスト6aに対してショベル側スイングポスト12を所定の角度範囲内で左右に振ることができるようになっている。
【0022】
基端ブーム13は、図1に示すように、掘削作業等に耐えうる強度を有して前側上方に延びて形成されており、その基端部がショベル側スイングポスト12の後部に設けられた基端ブーム用枢結部12aに枢結されて、上下に揺動自在となっている。ブームシリンダ14は、ボトム側端部がショベル側スイングポスト12の前部に設けられたブームシリンダ用枢結部12bに枢結され、ロッド側端部14a(図2参照)が取付部材14bを介して基端ブーム13の先端前部に形成されたブームシリンダ用枢結部13aに枢結されて、基端ブーム13の前側下面13cに沿って上下に延びて取り付けられている(図2参照)。そのため、ブームシリンダ14を伸長させることで、基端ブーム用枢結部12aを中心として基端ブーム13を後側上方に押し上げるように揺動させることができ、反対にブームシリンダ14を縮小させることで、基端ブーム13を前側下方に引き下げるように揺動させることができる。
【0023】
先端ブーム15は、図2および図3に示すように、上壁部40U、下壁部40D、左壁部40Lおよび右壁部40Rから構成され、掘削作業等に耐えうる強度を有して前後に延びて形成されている。先端ブーム15の内部には、これら上壁部40U、下壁部40D、左壁部40Lおよび右壁部40Rによって囲まれるとともに後方に開放されたシリンダ収容空間40が形成されている。左壁部40Lおよび右壁部40Rの前部には、左右に貫通したアーム用枢結部15aが形成され、このアーム用枢結部15aの後方部分には、左右に貫通したアジャストシリンダ用枢結部15bが形成されている。
【0024】
左壁部40Lおよび右壁部40Rの後部には、左壁部40Lおよび右壁部40Rの後端部に繋がって上下に広がる左基端接続部41Lおよび右基端接続部41Rが形成されている。左基端接続部41Lおよび右基端接続部41Rの下端部には、左右に貫通した基端ブーム用枢結部45が形成され、左基端接続部41Lおよび右基端接続部41Rの上端部には、左右に貫通したアームシリンダ用枢結部15cが形成されている。基端ブーム13と先端ブーム15とは、基端ブーム13のブームシリンダ用枢結部13aの位置と先端ブーム15の基端ブーム用枢結部45の位置とを一致させておき、この部分をブームシリンダ14のロッド側端部14aを用いて枢結される。そのため、先端ブーム15は、基端ブーム13の揺動面内において基端ブーム用枢結部45(ブームシリンダ用枢結部13a)を中心として上下に揺動自在となっている。
【0025】
アジャストシリンダ16は、図4(a)に示すように、いわゆる複動形の油圧シリンダであって、内部に円筒状の油室が形成されたシリンダチューブ51と、シリンダチューブ51に対し軸方向に突出入自在に挿入されたロッド52と、シリンダチューブ51の内部
においてロッド52の基端部に取り付けられるとともに軸方向に摺動自在なピストン55とから構成される。ロッド52の先端部には枢結可能なロッド側端部53が、シリンダチューブ51の基端部(ロッド52が挿入された側とは反対側の端部)には枢結可能なボトム側端部54がそれぞれ形成されている。
【0026】
シリンダチューブ51内に形成された油室は、ピストン55によって、ボトム側油室51aとロッド52が挿入されて位置するロッド側油室51bとに区分けされている。ピストン55の外周部には、例えばゴム等の可撓性材料を用いてリング状に形成されたピストンパッキン55aが取り付けられており、ボトム側油室51aとロッド52との間での油漏れが防止されるようになっている。シリンダチューブ51の先端側におけるロッド52が挿入される部分には、例えばゴム等の可撓性材料を用いてリング状に形成されたロッドパッキン51cが取り付けられており、このロッドパッキン51cにより、ロッド側油室51b内の圧油が外部に漏れ出さないようにシールされている。
【0027】
また、シリンダチューブ51には、ボトム側油室51aに連通するボトム側ポート56、およびロッド側油室51bに連通するロッド側ポート57が設けられている。このボトム側ポート56が、ボトム側油路34aを介してコントロールバルブ33と接続され、ロッド側ポート57が、ロッド側油路34bを介してコントロールバルブ33と接続されている(図5参照)。
【0028】
このように構成されるアジャストシリンダ16は、ボトム側油室51aに油圧を作用させることにより、ピストン55をロッド側端部53の方へ摺動させてロッド52を伸長させることができ、反対にロッド側油室51bに油圧を作用させることにより、ピストン55をボトム側端部54の方へ摺動させてロッド52を縮小させることができるようになっている。なお、ブームシリンダ14、アームシリンダ18およびバケットシリンダ20も、このアジャストシリンダ16と同様に構成された複動形の油圧シリンダが用いられる。
【0029】
アジャストシリンダ16は、先端ブーム15のシリンダ収容空間40に挿入されて、ロッド側端部53がアジャストシリンダ用枢結部15bに枢結され、一方、ボトム側端部54が基端ブーム13の先端部においてブームシリンダ用枢結部13aよりも後方且つ上方に形成されたアジャストシリンダ用枢結部13bに、取付部材59を介して枢結される(図2参照)。そのため、アジャストシリンダ16を伸長させることで、ブームシリンダ用枢結部13a(基端ブーム用枢結部45)を中心として先端ブーム15を前側下方に押し下げるように揺動させることができ、反対にアジャストシリンダ16を縮小させることで、先端ブーム15を後側上方に引き上げるように揺動させることができる。なお、アジャストシリンダ16の伸長量には予め上限値が設定されており、アジャストシリンダ16を大きく伸長させた場合であっても、アジャストシリンダ16のシリンダチューブ51とブームシリンダ14のロッド側端部14aとが干渉しないようになっている。
【0030】
アーム17は、掘削作業等に耐えうる強度を有して上下に延びて形成されており、その基端部が先端ブーム15の先端部に形成されたアーム用枢結部15aに枢結されて、先端ブーム15の揺動面内において上下に揺動自在となっている。アームシリンダ18は、ボトム側端部18aが先端ブーム15に形成されたアームシリンダ用枢結部15cに取付部材18bを介して枢結され(図2参照)、ロッド側端部がアーム17の基端部に形成されたアームシリンダ用枢結部17aに枢結されている。そのため、アームシリンダ18を伸長させることで、アーム用枢結部15aを中心としてアーム17を下方に押し下げるように揺動させることができ、反対にアームシリンダ18を縮小させることで、アーム17を上方に引き上げるように揺動させることができる。
【0031】
バケット19は、リンク機構17bを介してアーム17の先端部に取り付けられており
、アーム17の揺動面内において上下に揺動自在となっている。バケットシリンダ20は、ボトム側端部がアーム17に形成されたバケットシリンダ用枢結部17cに枢結され、ロッド側端部がリンク機構17bに枢結されている。そのため、バケットシリンダ20を伸長させることで、リンク機構17bを中心としてバケット19を旋回台6側に向けて揺動させることができ、反対にバケットシリンダ20を縮小させることで、バケット19を旋回台6に対して遠ざかる向きに揺動させることができる。
【0032】
このように、パワーショベル1のショベル機構7は、ブームが基端ブーム13と先端ブーム15とに分割されて構成され、基端ブーム13に対して先端ブーム15が揺動自在となっている。そのため、分割されることなく一体的に構成されたブームを備えたパワーショベルと比較して、先端ブーム15を旋回台6側に引き寄せることで最小旋回半径を小さくすることができるので、例えば裏路地のような狭い作業場所においても掘削作業を行うことが可能となる。また、ブームが一体的に構成されたパワーショベルと比較して、バケット19の稼動範囲を広げて、掘削作業の作業範囲を拡大することが可能である。さらには、先端ブーム15を旋回台6側に引き寄せておくことで、走行装置4で走行する際の運転者の視界を十分に確保することができる。
【0033】
図5に示すように、パワーショベル1は、エンジンEにより可変容量型油圧ポンプ31を回転駆動させることで、作動油タンク32に貯留された作動油が吸い上げられて圧油としてコントロールバルブ33に供給される。可変容量型油圧ポンプ31からコントロールバルブ33に供給された圧油は、コントロールバルブ33内に収容されたスプール(図示せず)の位置に応じてブレードシリンダ5a等に供給制御される。なお、以降の説明では、ブレードシリンダ5a、スイングシリンダ6b、走行油圧モータ9a、ブームシリンダ14、アジャストシリンダ16、アームシリンダ18、バケットシリンダ20および旋回油圧モータ23を纏めて、油圧アクチュエータ30と称する。
【0034】
オペレータキャビン8は、図1に示すように、上下前後左右が囲まれた矩形箱状に形成されており、内部に運転者が着座するためのオペレータシート21と、走行装置4やショベル機構7の作動操作を行うための操作装置22とが設けられている。この操作装置22には、パワーショベル1の走行、掘削等の操作を行うための操作レバー(図示せず)が設けられている。運転者により操作レバーが操作されると、その操作に応じてコントロールバルブ33内のスプールが移動され、スプールの移動位置に応じた油圧アクチュエータ30に圧油が供給制御されて、操作レバーの操作に応じた作動をさせることができるようになっている。
【0035】
以上ここまでは、パワーショベル1の全体構成について説明した。このように構成されるパワーショベル1を用いて、例えば路面の掘削作業を行う場合、先端ブーム15等を下方に揺動させてバケット19の先端部を路面に食い込ませるようにして作業が行われる。このとき、先端ブーム15を大きく前側下方に揺動させた状態でバケット19により土砂をすくう掘削作業を行うことで、先端ブーム15の近傍に土砂が巻き上げられることがある。もし、巻き上げられた土砂がアジャストシリンダ16(アジャストシリンダ16のロッド52)に付着すると、この付着した状態のままロッド52がシリンダチューブ51に突出入されることで、ロッドパッキン51cが損傷して油漏れの原因となる虞がある。
【0036】
そこで本発明に係るパワーショベル1は、上述したように、アジャストシリンダ16が先端ブーム15に形成されたシリンダ収容空間40内に収容された状態で、先端ブーム15および基端ブーム13に枢結された構成を特徴構成として有している。そのため、アジャストシリンダ16のロッド52に土砂が付着することを防止するカバー部材を別途設けることなく、先端ブーム15に形成されたシリンダ収容空間40を活用することで、アジャストシリンダ16のロッド52に巻き上げられた土砂が付着することを効果的に防止で
きるので、部品点数および製造コストを抑えつつアジャストシリンダ16からの油漏れを防止可能である。
【0037】
また、従来構成においては、例えば先端ブームを大きく下方へ揺動させることで、アジャストシリンダが路面等に直接接触してロッドが損傷して油漏れの原因となる虞があったが、一方、本発明に係るパワーショベル1においては、アジャストシリンダ16がシリンダ収容空間40内に収容されているので、アジャストシリンダ16が直接路面等と接触して損傷を受けることが防止され、油漏れを効果的に防ぐことができる。
【0038】
また、パワーショベル1を用いて掘削作業を行う場合、先端ブーム15においては、掘削方向に対して反対方向(先端ブーム15を上方に揺動させる方向)に掘削反力が作用するので、バケット14を確実に路面に食い込ませるためには、この掘削反力に抗して先端ブーム15を下方に揺動させる必要がある。具体的に説明すると、図6に示すパワーショベル1の側面図において、矢印Aの掘削方向にショベル機構7全体を揺動させて掘削作業を行う場合、バケット19およびアーム17を介して、先端ブーム15には矢印Bの方向(掘削方向とは反対方向)に掘削反力が作用する。そのため、先端ブーム15を揺動させるアジャストシリンダ16に対しては、掘削反力に屈して先端ブーム15を矢印Bの方向に揺動させずに先端ブーム15を矢印Aの方向に揺動させる圧油の供給制御が行われる。
【0039】
ここで、アジャストシリンダ16のロッド側油室51bに油圧を作用させる場合について説明すると、図4(b)に示すように、ピストン55におけるロッド側油室51bの油圧が実際に作用する部分の面積は、ピストン55の面積からロッド52の断面積を差し引いたリング状部分の面積となる。これに対し、ボトム側油室51aに油圧を作用させる場合には、図4(c)に示すように、ピストン55の表面全体に対してボトム側油室51aの油圧を作用させることができる。このことから分かるように、ロッド側油室51bに油圧を作用させるよりも、ボトム側油室51aに油圧を作用させる方が、ピストン55を介して大きな力をロッド52に作用させることが可能である。
【0040】
掘削作業時においては、掘削反力に抗しつつ掘削方向(矢印Aの方向)に揺動させることとなるため、先端ブーム15を矢印Bの方向に揺動させる場合よりも矢印Aの方向に揺動させる場合の方が、より大きな力を先端ブーム15に作用させる必要がある。そこで本発明に係るパワーショベル1は、上述したように、基端ブーム13における先端ブーム15の揺動中心(ブームシリンダ用枢結部13a、基端ブーム用枢結部45)を、基端ブーム13におけるアジャストシリンダ16のボトム側端部54の枢結位置(アジャストシリンダ用枢結部13b)よりも前側下部に設けることにより、アジャストシリンダ16のボトム側油室51aに油圧を作用させて大きな力でロッド52を伸長させ、先端ブーム15を矢印Aの方向に揺動させることができるように構成されている。
【0041】
そのため、ロッド側油室に油圧を作用させて矢印Aの方向の先端ブームを揺動させる従来構成と比較して、より小型のアジャストシリンダ16を用いながらも、掘削反力に抗して先端ブーム15を矢印Aの方向に揺動させて掘削作業を行うことが可能なパワーショベル1を構成できる。このようにして、より小型のアジャストシリンダ16を用いることで、パワーショベル1の軽量化が図れると同時に製造コストを低減できる。
【0042】
また、本発明に係るパワーショベル1においては、基端ブーム13の先端前部に先端ブーム15が枢結されているので、図7の基端ブームの先端後部に先端ブームが枢結された従来構成と比較して、同一の作業範囲を確保しつつ先端ブーム15の全長を短くしてパワーショベル1の軽量化を図ることが可能である。このようにパワーショベル1を軽量化することで、エンジンEでの燃料消費を抑えることができる。また、旋回台6の前方に突出したショベル機構7が軽量化されるので、走行時および掘削作業時のパワーショベル1の
ふらつきを抑えて安定性を高めることができる。
【0043】
上述の実施形態においては、アジャストシリンダ16のロッド側端部53が先端ブーム15のアジャストシリンダ用枢結部15bに枢結され、ボトム側端部54が基端ブーム13のアジャストシリンダ用枢結部13bに枢結された構成例について説明したが、本発明はこの構成例に限定されない。例えば、アジャストシリンダ16のロッド側端部53とボトム側端部54とを反対に向けて、ロッド側端部53をアジャストシリンダ用枢結部13bに枢結し、ボトム側端部54をアジャストシリンダ用枢結部15bに枢結する構成も可能である。この構成の場合にも、ボトム側油室51aに油圧を作用させて掘削反力に抗する構成とすることができる。
【0044】
また、上述の実施形態においては、基端ブーム13、先端ブーム15およびアーム17の3段構成のショベル機構7を備えたパワーショベル1に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定して適用されるものではない。例えば4段構成以上のショベル機構を備えた作業機械や、2段構成のショベル機構を備えた作業機械にも適用可能である。
【0045】
上述の実施形態において、上壁部40U、下壁部40D、左壁部40Lおよび右壁部40Rから構成された先端ブーム15を例示して説明したが、掘削作業に耐えうる強度を有していれば先端ブーム15はこの構成に限定されない。例えば、上壁部40Uを省いて下壁部40D、左壁部40Lおよび右壁部40Rから構成された断面視コの字状の先端ブームを用いることも可能である。この構成の先端ブームを用いた場合には、バケット19で巻き上げられた土砂等が、アジャストシリンダ16のロッド52に付着することを効果的に防止しつつ、パワーショベルを軽量化することができる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜改良可能である。例えば、上述の実施形態においては、エンジンEを駆動源とするパワーショベル1に本発明を適用した構成例について説明したが、この構成例以外にも例えば電動モータを駆動源としたパワーショベルに対しても同様に本発明を適用可能である。
【0047】
上述の実施形態では、クローラ型のパワーショベルに対して本発明を適用した例について説明したが、これに限定されることはなく、例えばホイール型のパワーショベルやショベルローダ等の他の作業機械に本発明を適用させることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 パワーショベル(作業機械)
6 旋回台(車体)
13 基端ブーム(第1ブーム)
14 ブームシリンダ(第1ブームシリンダ)
15 先端ブーム(第2ブーム)
16 アジャストシリンダ(第2ブームシリンダ)
40L 左壁部(側壁部)
40R 右壁部(側壁部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に基端部が枢結されて上下揺動自在に取り付けられた第1ブームと、前記第1ブームの先端部に基端部が枢結されて上下揺動自在に取り付けられた第2ブームと、前記第2ブームの先端部に取り付けられた作業装置と、前記車体と前記第1ブームとの間に設けられて油圧力を受けて伸縮する第1ブームシリンダと、前記第1ブームと前記第2ブームとの間に設けられて油圧力を受けて伸縮する第2ブームシリンダと、を有して構成される作業機械であって、
前記第1ブームは、前記基端部における前記車体との枢結部を揺動中心として前上方に延びるように設けられ、
前記第1ブームシリンダは、先端部が前記第1ブームの先端側下面部に枢結されるとともに基端部が前記車体に枢結されて前記第1ブームの下面に沿って取り付けられ、
前記第2ブームは、基端側から先端側に延びる一対の側壁部と、前記一対の側壁部の下部を繋いで基端側から先端側に延びる下壁部と、前記一対の側壁部および前記下壁部により囲まれて形成されるシリンダ収容空間とを有して構成されて、前記第1ブームに対して前方に延びるように設けられ、
前記第2ブームシリンダは、前記シリンダ収容空間内に位置して設けられ、先端部が前記第2ブームに枢結されるとともに基端部が前記第1ブームの先端側における前記第1ブームの先端側下面部と前記第1ブームシリンダの先端部との枢結位置より上面側において前記第1ブームの先端部に枢結されることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記第2ブームは、前記一対の側壁部の上部を繋いで基端側から先端側に延びて設けられて、前記シリンダ収容空間の上部を覆う上壁部を有して構成され、
前記シリンダ収容空間は、前記一対の側壁部、前記下壁部および前記上壁部により囲まれて形成されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記第1ブームにおける前記第1ブームと前記第2ブームとの枢結部が、前記第1ブームと前記第1ブームシリンダの先端部との枢結部と同一位置に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−140834(P2012−140834A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1280(P2011−1280)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)