説明

作業装置及び作業機

【課題】固定設備に対する作業機の位置決めを容易かつ安全に行うことができる作業装置及び作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】床面F上に固定設置される固定設備10と、車輪36により床面F上を移動自在であり、固定設備10に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機30から成る作業装置1において、固定設備10は下方に狭まる形状の複数の凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)を備え、作業機30はこれら複数の凹状部16のそれぞれに下方に突出した形状の凸状部38aを上方から押し当ててその押し当て面に作業機30の重量の一部を作用させる押し当て機構(左右の前方ジャッキ38)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面上に固定設置される固定設備と、車輪により床面上を移動自在であり、固定設備に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機とから成る作業装置に関するものである。また本発明は、車輪により床面上を移動自在であり、床面上に固定設置された固定設備に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床面上に固定設置される固定設備と、車輪により床面上を移動自在であり、固定設備に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機とから成る作業装置が用いられている。このような作業装置としては、例えば、電子部品実装装置を固定設備、電子部品実装装置に板状ワークを供給する台車付きの板状ワーク供給装置を作業機とするもの(特許文献1)や、ラベル貼付機械を固定設備、ラベル貼付機械にラベルを供給するモジュール担持体を作業機とするもの(特許文献2)等が知られている。特許文献1には、作業機である板状ワーク供給装置の台車を電子部品実装装置に設けられたガイド斜面上に乗り上げさせて板状ワーク供給装置を台車ごと電子部品実装装置に乗り移らせる構成のものが示されている。また、特許文献2には、昇降装置により持ち上げたモジュール担持体を下ろす際に、モジュール担持体側の下方に開口した調心ブッシュをラベル貼付機械側の上方に突出した調心ピンに結合させるようにした構成のものが示されている。
【特許文献1】特開2001−7595号公報
【特許文献2】特開2005−22873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に示されたものでは、作業者は板状ワーク供給装置を電子部品実装装置に乗り移らせる際、台車がガイド斜面を逆進しないように強い力で台車を部品実装装置に押し込む必要があり、その際、作業者が大きな衝撃を受けるおそれがあった。また、特許文献2に示されたものでは、調心ブッシュは下方に開口していて作業者から見えにくいため、調心ブッシュを調心ピンに結合させるのは容易ではなく、作業者は作業が行いにくいという問題点があった。
【0004】
そこで本発明は、固定設備に対する作業機の位置決めを容易かつ安全に行うことができる作業装置及び作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の作業装置は、床面上に固定設置される固定設備と、車輪により床面上を移動自在であり、固定設備に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機とから成る作業装置であって、固定設備は下方に狭まる形状の複数の凹状部を備え、作業機はこれら複数の凹状部のそれぞれに下方に突出した形状の凸状部を上方から押し当ててその押し当て面に作業機の重量の一部を作用させる押し当て機構を備えた。
【0006】
請求項2に記載の作業装置は、請求項1に記載の作業装置であって、作業機は、固定設備側に臨む前部に前記押し当て機構を備え、後部に固定設備に対して位置決めされた状態の作業機を床面に対して自昇させる後方ジャッキを備えた。
【0007】
請求項3に記載の作業装置は、請求項1又は2に記載の作業装置であって、固定設備は固定設備の重心の位置を通る垂直な基準面に対して直交する方向に水平に張り出して延びた延出部を有し、複数の凹状部は前記延出部の上面に設けられている。
【0008】
請求項4に記載の作業装置は、請求項3に記載の作業装置であって、前記延出部は床面と接触する複数の脚部を有し、複数の凹状部は、複数の脚部のうち前記基準面から最も離れた位置にあるものよりも前記基準面に近い位置に設けられている。
【0009】
請求項5に記載の作業装置は、請求項1乃至4の何れかに記載の作業装置であって、固定設備に備えられた複数の凹状部は固定設備に取り付けられた1つのブロック状部材に形成されており、ブロック状部材は1つの凹状部の中心位置が、その中心位置を上方から挿通する挿通部材によって固定設備に位置決めされてから他の部分が固定設備に固定される。
【0010】
請求項6に記載の作業機は、車輪により床面上を移動自在であり、床面上に固定設置された固定設備に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機であって、固定設備に備えられた下方に狭まる形状の複数の凹状部のそれぞれに下方に突出した形状の凸状部を上方から押し当ててその押し当て面に作業機の重量の一部を作用させる押し当て機構を備えた。
【0011】
請求項7に記載の作業機は、請求項6に記載の作業機であって、固定設備側に臨む前部に前記押し当て機構を備え、後部に固定設備に対して位置決めされた状態の作業機を床面に対して自昇させる後方ジャッキを備えた。
【発明の効果】
【0012】
本発明の作業装置及び作業機では、固定設備が備える複数の凹状部のそれぞれに作業機が備える凸状部を上方から押し当ててその押し当て面に作業機の重量の一部を作用させると、各凸状部が対応する凹状部の形状に倣って移動し、作業機の車輪が転動して作業機が固定設備に対して位置決めされる。このため作業者は従来のように大きな力で作業機を固定設備に押し込むといった作業が不要であり、固定設備に対する作業機の位置決めを容易かつ安全に行うことができる。また、作業者にとって、上方に開口した凹状部に下方に突出した形状の凸状部を上方から押し当てる作業は、作業者が凹状部を上方から見ることができるために比較的容易であり、この点からも作業者は固定設備に対する作業機の位置決めを容易に行うことができる。また、本発明の作業装置及び作業機では、固定設備に対して作業機が位置決めされた状態で、凸状部の凹状部への押し当て面を介して作業機の重量の一部が固定設備に作用している。このため、固定設備の床面上での安定性は高く、作業の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態における作業装置の斜視図、図2は本発明の一実施の形態における作業装置の側面図、図3は本発明の一実施の形態における固定設備の一部断面側面図、図4(a)は本発明の一実施の形態における固定設備の平面図、図4(b)は本発明の一実施の形態における固定設備が備えるブロック状部材の平面図、図5、図6(a),(b)、図7、図8及び図9は本発明の一実施の形態における作業装置を構成する固定設備と作業機の一部断面側面図である。
【0014】
図1及び図2において、作業装置1は床面F上に固定設置される複数の固定設備10と、これら固定設備10に対して位置決めされた状態で作業を行う複数の作業機30から成る創薬関連の作業装置である。固定設備10は、例えば、マイクロタイタープレート(以下、単にプレートと称する)Pの搬送のほか、プレートPの作業機30内への搬入や搬出(移載)等を行うプレート搬送移載装置から成る。また、作業機30は、例えば、固定設備10より移載されたプレートPに対して試薬の分注を行う分注装置や、分注装置により
プレートPに分注された試薬の培養を行うインキュベータ、種々の計測を行う計測装置等から成る。
【0015】
図3及び図4(a)において、各固定設備10は基部11の上面に水平方向に延びた2つの搬送コンベア12を備えている。これら2つの搬送コンベア12の間にはプレート移載ロボット13が設けられている。
【0016】
各搬送コンベア12は、水平かつ平行に延びて設けられた一対のコンベアベルト12aを有して成る。固定設備10の内部に設けられた制御装置14(図3)はこれら一対のコンベアベルト12aを同期して進行させ、両コンベアベルト12aの上面に載置されたプレートPを水平面内の一定の方向(コンベアベルト12aの延びる方向)に往復搬送する。
【0017】
図3において、プレート移載ロボット13は複数のアーム部13aと複数の関節部13bを有した多関節ロボットであり、先端にはプレートPを把持する把持部13cを有している。固定設備10が備える制御装置14はプレート移載ロボット13の複数の関節部13bを動かして把持部13cを三次元的に移動させる制御と、把持部13cにプレートPを把持させる制御を行い、把持部13cに把持させたプレートPを搬送コンベア12と作業機30の間、若しくは作業機30同士の間で移載する。このプレート移載ロボット13は、2つの搬送コンベア12の間に設けられたロボット移動溝10a(図4(a)参照)内をプレートPの搬送方向に移動させることができる。
【0018】
図3及び図4(a)において、固定設備10の基部11の下部には一対の延出部11aが設けられている。これら一対の延出部11aは、固定設備10の重心Gの位置を通る垂直な基準面W(ここでは基準面Wは搬送コンベア12の延びる方向と平行になっている)に対して直交する方向に、互いに逆方向に水平に張り出して延びている。各延出部11aの下面には床面Fと接触する複数の脚部15を有しており、固定設備10はこれら脚部15により床面F上に支持されている。なお、図2、図3及び図4(a)から分かるように、各脚部15は上記基準面Wからの水平距離(=S1)が互いに等しい位置に設けられている。
【0019】
図1及び図4(a),(b)において、固定設備10は複数(ここでは2つ)の凹状部16を備えている。これら凹状部16は各々上方に開口して下方に狭まる形状(例えば球面や楕円面、錐面等の一部を転写した形状)を有している。そして、一方の凹状部16は上方から見た形状が円形であり、他方の凹状部16は上方から見た形状が基準面Wと平行な方向に延びた長穴形状である。以下、上方から見た形状が円形である凹状部16を第1凹状部16aと称し、上方から見た形状が長穴形状である凹状部16を第2凹状部16bと称する。
【0020】
図1〜図4から分かるように、固定設備10が備える2つの凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)は、固定設備10の基部11とは別部材として延出部11aの上面に取り付けられた1つのブロック状部材17の上面に形成されている。すなわち、この実施の形態では、2つの凹状部16を有したブロック状部材17が固定設備10の延出部11aの上面に取り付けられることによって、2つの凹状部16が固定設備10の延出部11aの上面に設けられたものとなっている。
【0021】
ブロック状部材17は一の方向に延びた長尺の部材であり、2つの凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)はブロック状部材17の両端に1つずつ配置されている。ブロック状部材17は、その長手方向が基準面Wと平行になるように取り付けられており、これにより2つの凹状部16は、基準面Wと平行な方向に並んで配置された状態と
なっている。
【0022】
ブロック状部材17は、図2、図3及び図4(a)に示すように、各凹状部16の基準面Wから測った水平距離S2が、前述した各脚部15の基準面Wから測った水平距離S1よりも小さくなる位置に配置される。本実施の形態では、ひとつの延出部11aに備えられる脚部15は、いずれも基準面Wからの水平距離が等しい位置に設けられているが、基準面Wからの水平距離が異なる位置に脚部15が設けられていてもよい。この場合、2つの凹状部16は、これら基準面Wからの距離が異なる複数の脚部15のうち、基準面Wから最も離れた位置にある脚部15よりも基準面Wに近い位置に設けられていればよい。
【0023】
ブロック状部材17を固定設備10に取り付けるとき、はじめに基部11の延出部11aの上面に、基準面Wと平行な基準線L(図4(a),(b))を設定する。基準線Lを設定したら、一方の凹状部16(ここでは第1凹状部16aとする)の中心位置を、その中心位置を上方から挿通(上下方向に貫通)する挿通部材(螺子)19によって基準線L上に(延出部11aの上面に)位置決めする。そして、ブロック状部材17全体を、その挿通部材19を中心に(すなわち第1凹状部16aの中心位置を中心に)水平面内で揺動させながら(図4(b)中に示す矢印M参照)、もう一方の凹状部16である第2凹状部16bを基準線L上に位置決めする。第2凹状部16bを基準線L上に位置決めしたら、ブロック状部材17の他の部分(図4(b)中に示すボルト穴17a)をボルト18によって延出部11aに固定する。
【0024】
固定設備10の基部11には、基準面Wと平行な2つの側面11b(図3)のそれぞれに開口するインターロックピン差込ジャック20が設けられている。このインターロックピン差込ジャック20は、固定設備10が備える前述の制御装置14と繋がっている。
【0025】
図5において、作業機30は図示しない種々の装置が内蔵された本体部31と、本体部31上面の作業ステージ31aの上方空間を覆うカバー部32を備えている。カバー部32は、作業機30が固定設備10に対して位置決めされた状態で固定設備10側を向く面に前方開口部32a(図1)を有している。作業者及び固定設備10のプレート移載ロボット13は、この前方開口部32aから作業ステージ31aにアクセスすることができる。
【0026】
また、カバー部32は、前方開口部32aが設けられた面と対向する側の面に後方開口部32bを有している。作業者はこの後方開口部32bからも作業ステージ31aにアクセスすることができる。以下、前方開口部32aと後方開口部32bが対向する方向を作業機30の前後方向とし、前方開口部32aが設けられている側を作業機30の前方、後方開口部32bが設けられている側を作業機30の後方とする。また、この作業機30の前後方向と直交する水平方向を作業機30の左右方向とする。
【0027】
作業ステージ31a上には作業機30の作業内容に応じた種々の設備が設けられている。この設備は、作業機30が分注装置であれば、図5に示すように、固定設備10のプレート移載ロボット13によって搬入されたプレートPが載置されるプレート載置台33や、作業ステージ31aの上方を移動自在な分注ヘッド34等から成る。分注ヘッド34は、下方に延びて設けられた複数の分注ノズル35から、プレート載置台33に載置されたプレートPに試薬の分注を行う。
【0028】
本体部31の下面には4つの車輪36が設けられており、作業機30はこれら4つの車輪36によって床面F上を移動自在になっている。これら4つの車輪36は、左右一対の前輪36aと左右一対の後輪36bから成る。各車輪36は、本体部31の下面に取り付けられた上下軸回りに首振り自在なブラケット37に回転自在に支承されている。このた
め作業者は作業機30を床面F上で任意の方向に移動させることができる。
【0029】
図5において、作業機30の本体部31の前部には左右一対の前方ジャッキ38が設けられている。また、作業機30の本体部31の後部には左右一対の後方ジャッキ39が設けられている。
【0030】
図5において、前方ジャッキ38は、作業機30の本体部31より下方へ突出して設けられ、下方に突出した形状の凸状部38aを下端に有したジャッキボルト38bと、ジャッキボルト38bの外周面に設けられた螺子溝と螺合したナット部材38cと、ナット部材38cの外周歯と噛合したピニオン38dと、本体部31に支持されてピニオン38dを上下軸回りに回転駆動する駆動シャフト38eを有して成る。ここで、ジャッキボルト38bは本体部31に回転不能かつ上下移動自在に支持されており、ナット部材38cは本体部31に上下軸回りに回転自在に支持されており、ピニオン38dは本体部31に上下軸回りに回転自在に支持されている。このため、駆動シャフト38eを上下軸回りに回転させると、その回転力がピニオン38dからナット部材38cに伝達され、ナット部材38cと螺合したジャッキボルト38bが本体部31に対して上下方向に移動するので、凸状部38aが本体部31の下方で昇降する。
【0031】
左右の前方ジャッキ38が備える2つの凸状部38aは、固定設備10に設けられた2つの凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)に対応して設けられている。このため、2つの凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)のそれぞれに凸状部38aを上方から押し当てることができる。各凸状部38aは、固定設備10の凹状部16に上方から押し当てられた状態から、作業機30の本体部31に対して相対的に下降した場合に、凹状部16の形状に倣って移動できる形状(例えば下方に凸となる半球形状)を有している。
【0032】
作業ステージ31aの駆動シャフト38eの直上位置には工具挿入穴40が設けられている。作業者は、作業機30とは別個に用意されるクランク状工具Tのボス穴形成部T1を工具挿入穴40から差し込んでボス穴形成部T1に形成されたボス穴(図示せず)を駆動シャフト38eの上端のスプライン部38fに上方から嵌入させ、駆動シャフト38eの中心軸が回転中心となるようにクランク状工具Tの操作部T2を回転させれば、駆動シャフト38eを上下軸回りに回転させることができる。これにより前方ジャッキ38は駆動されて凸状部38aは昇降する。ここでは、クランク状工具Tの操作部T2を図5中に示す矢印R1の方向に回転させたときには凸状部38aが作業機30の本体部31に対して相対的に下降し、操作部T2を図5中に示す矢印R2の方向に回転させたときには凸状部38aが本体部31に対して相対的に上昇するものとする。
【0033】
図5において、後方ジャッキ39は、作業機30の本体部31より下方へ突出して設けられ、下端に接地部39aを有したジャッキボルト39bと、ジャッキボルト39bの外周面に設けられた螺子溝と螺合したナット部材39cと、ナット部材39cの外周歯と噛合したピニオン39dと、本体部31に支持されてピニオン39dを上下軸回りに回転駆動する駆動シャフト39eを有して成る。ここで、ジャッキボルト39bは本体部31に回転不能かつ上下移動自在に支持されており、ナット部材39cは本体部31に上下軸回りに回転自在に支持されており、ピニオン39dは本体部31に上下軸回りに回転自在に支持されている。このため、駆動シャフト39eを上下軸回りに回転させると、その回転力がピニオン39dからナット部材39cに伝達され、ナット部材39cと螺合したジャッキボルト39bが本体部31に対して移動するので、接地部39aが本体部31の下方で昇降する。
【0034】
作業ステージ31aの駆動シャフト39eの直上位置には工具挿入穴41が設けられて
いる。作業者は、上述のクランク状工具Tのボス穴形成部T1を工具挿入穴41から差し込んでボス穴形成部T1のボス穴を駆動シャフト39eの上端のスプライン部39fに上方から嵌入させ、駆動シャフト39eの中心軸が回転中心となるように操作部T2を回転させれば、駆動シャフト39eを上下軸回りに回転させることができる。これにより後方ジャッキ39は駆動されて接地部39aは昇降する。ここでは前方ジャッキ38の場合と同様に、クランク状工具Tの操作部T2を図5中に示す矢印R1の方向に回転させたときには接地部39aが作業機30の本体部31に対して相対的に下降し、操作部T2を図5中に示す矢印R2の方向に回転させたときには接地部39aが本体部31に対して相対的に上昇するものとする。
【0035】
次に、上記構成の作業機30を、予め床面F上に固定設置されている固定設備10に対して位置決めする手順について説明する。作業者は先ず、作業機30の後部等を床面Fと平行な方向に押して、車輪36を床面F上で転動させながら作業機30を移動させ、作業機30を固定設備10の近傍位置に近づける(図5中に示す矢印A)。このとき、作業機30の前方(前方開口部32aが設けられている側)が固定設備10に向き、作業機30の左右方向が固定設備10の基準面Wと平行になるようにする。そして、作業者は、左右の前方ジャッキ38の一方の凸状部38aが固定設備10に備えられた一方の凹状部16のほぼ直上に位置し、他方の凸状部38aが他方の凹状部16のほぼ直上に位置するように、作業機30の位置調節を行う(図5)。
【0036】
作業者は、作業機30の位置調節が終わったら、クランク状工具Tを用いて、左右の前方ジャッキ38の凸状部38aをそれぞれ作業機30の本体部31に対して相対的に下降させ(図6(a)中に示す矢印B1)、各凸状部38aを対応する凹状部16に上方から接触させる(図6(a)参照)。そして、更に凸状部38aを下降させて凸状部38aを凹状部16に押し当て(図6(b)中に示す矢印B2)、その押し当て面に作業機30の重量の一部が作用するようにする。この作業では、左右の前方ジャッキ38を二人の作業者が同時に操作するなどして、左右の凸状部38aがほぼ同じ高さを保ちつつ下降するようにすることが好ましい。
【0037】
このように本実施の形態において、左右の前方ジャッキ38は、固定設備10に設けられた2つの凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)のそれぞれに下方に突出した形状の凸状部38aを上方から押し当ててその押し当て面に作業機30の重量の一部を作用させる押し当て機構として機能する。
【0038】
作業者による左右の前方ジャッキ38の操作によって、凸状部38aの凹状部16への押し当て面に作業機30の重量の一部が作用すると、その押し当て面を介して固定設備10から反力f(図6(b))を受け、その反力fの水平方向成分によって、各凸状部38aは押し当てられている凹状部16の形状に倣ってその凹状部16の中心方向に移動する。そうすると、これら凸状部38aの凹状部16内での移動に伴って作業機30の車輪36は転動し(このときブラケット37は作業機30の移動に追従して首振りを行う)、作業機30は床面F上を移動する(図6(b)中に示す矢印C)。そして、一方の凸状部38aが第1凹状部16aの最も低い位置まで下降して(このとき凸状部38aは第1凹状部16aの中心部まで移動する)、その凸状部38aが第1凹状部16a内で移動できなくなると、他方の凸状部38aも第2凹状部16b内で移動できなくなるので、作業機30は床面F上で停止し、作業機30は固定設備10に対して位置決めされる(図7)。
【0039】
これにより作業機30の固定設備10に対する位置決めは完了するが、作業機30を床面Fに対して安定させるとともに、作業機30を水平姿勢にするため、続いて作業者は、以下に示す作業機30のジャッキアップを行う。
【0040】
作業機30のジャッキアップでは先ず、作業者はクランク状工具Tを用いて左右の前方ジャッキ38の操作を行い、左右の凸状部38aをそれぞれ作業機30の本体部31に対して相対的に下降させて、左右の前輪36aを床面Fから浮き上がらせる(図8)。これにより作業機30は、左右の前輪36aの代わりに左右の凸状部38aによって支持され、作業機30はやや後傾した姿勢となる。
【0041】
左右の前輪36aを床面Fから浮き上がらせたら、作業者は、続いて、クランク状工具Tを用いて左右の後方ジャッキ39の操作を行い、左右の接地部39aを床面Fに接地させた後、床面Fに対して突っ張らせて(図9中に示す矢印E)、左右の後輪36bを床面Fから浮き上がらせる(図9)。
【0042】
このように本実施の形態の作業装置1(作業機30)では、固定設備10側に前部に押し当て機構としての左右の前方ジャッキ38を備え、後部に固定設備10に対して位置決めされた状態の作業機30を床面Fに対して自昇させる左右の後方ジャッキ39を備えたものとなっている。
【0043】
左右の後方ジャッキ39の操作によって左右の後輪36bが床面Fから浮き上がったら、作業者は、更に左右の前方ジャッキ38及び左右の後方ジャッキ39の操作を行って、作業機30が水平姿勢になるようにする。
【0044】
作業機30が水平姿勢になったら、作業者は、作業機30に設けられたインターロックピン42を固定設備10の基部11に設けられた前述のインターロックピン差込ジャック20に差し込む(図2及び図9)。これにより固定設備10の制御装置14は、インターロックピン42が差し込まれた側の領域に作業機30が設置されていることを認識することができ、プレート移載ロボット13の作業領域(プレートPの移載を行うことができる範囲)の設定を行うことができるようになる。
【0045】
これまで説明してきたように、本実施の形態における作業装置1は、床面F上に固定設置される固定設備10と、車輪36により床面F上を移動自在であり、固定設備10に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機30とから成るものであり、固定設備10は下方に狭まる形状の2つの凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)を備え、作業機30はこれら2つの凹状部16のそれぞれに下方に突出した形状の凸状部38aを上方から押し当ててその押し当て面に作業機30の重量の一部を作用させる押し当て機構としての左右の前方ジャッキ38を備えている。
【0046】
また、本実施の形態における作業機30は、車輪36により床面F上を移動自在であり、床面F上に固定設置された固定設備10に対して位置決めされた状態で作業を行うものであり、固定設備10に備えられた下方に狭まる形状の2つの凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)のそれぞれに下方に突出した形状の凸状部38aを上方から押し当ててその押し当て面に作業機30の重量の一部を作用させる押し当て機構としての左右の前方ジャッキ38を備えている。
【0047】
本実施の形態における作業装置1(及び作業機30)では、固定設備10が備える2つの凹状部16(第1凹状部16a及び第2凹状部16b)のそれぞれに作業機30が備える凸状部38aを上方から押し当ててその押し当て面に作業機30の重量の一部を作用させると、各凸状部38aが対応する凹状部16の形状に倣って移動し、作業機30の車輪36が転動して作業機30が固定設備10に対して位置決めされる。このため作業者は従来のように大きな力で作業機を固定設備に押し込むといった作業が不要であり、固定設備10に対する作業機30の位置決めを容易かつ安全に行うことができる。
【0048】
また、作業者にとって、上方に開口した凹状部16に下方に突出した形状の凸状部38aを上方から押し当てる作業は、作業者が凹状部16を上方から見ることができるために比較的容易であり、この点からも作業者は固定設備10に対する作業機30の位置決めを容易に行うことができる。
【0049】
また、本実施の形態における作業装置1(及び作業機30)では、固定設備10に対して作業機30が位置決めされた状態で、凸状部38aの凹状部16への押し当て面を介して作業機30の重量の一部が固定設備10に作用している。このため、固定設備10の床面F上での安定性は高く、作業の安全性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施の形態における作業装置1(及び作業機30)では、作業機30は、固定設備10側に臨む前部に押し当て機構としての左右の前方ジャッキ38を備え、後部に固定設備10に対して位置決めされた状態の作業機30を床面Fに対して自昇させる後方ジャッキ39を備えており、作業機30が固定設備10に位置決めされた状態で作業機30を水平姿勢かつ安定した状態にすることができるので、作業の安全性を高めることができる。
【0051】
また、本実施の形態における作業装置1では、固定設備10は固定設備10の重心Gの位置を通る垂直な基準面Wに対して直交する方向に水平に張り出して延びた延出部11aを有し、2つの凹状部16はこの延出部11aの上面に設けられているので、固定設備10に対して作業機30が位置決めされた状態では延出部11aが作業機30によって下方に押さえられることになり、固定設備10を極めて安定した状態で床面F上に設置することができる。
【0052】
また、本実施の形態における作業装置1では、延出部11aは床面Fと接触する複数の脚部15を有しているが、2つの凹状部16はこれら複数の脚部15のうち基準面Wから最も離れた位置にあるものよりも基準面Wに近い位置に設けられているので、延出部11aに作業機30の重量(の一部)が作用しても、その作業機30の重量は固定設備10を転倒させない方向に作用するので、固定設備10の床面F上での安定度は高く、安全性が高い。
【0053】
また、本実施の形態における作業装置1では、前述したように、固定設備10に備えられた2つの凹状部16は固定設備10に取り付けられた1つのブロック状部材17に形成されており、ブロック状部材17は2つの凹状部16の1つ(第1凹状部16a)の中心位置が、その中心位置を上方から挿通する挿通部材19によって固定設備10に位置決めされてから他の部分が固定設備10に固定されるようになっている。このため、2つの凹状部16の位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0054】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態では、凹状部16及び凸状部38aはそれぞれ2つであったが、これは固定設備10に対する作業機30の位置決めを行うことができるようにするための最低数であり、複数であれば幾つであってもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、複数の凹状部16は固定設備10に設けられるブロック状部材17に形成されていたが、複数の凹状部16は固定設備10の延出部11a等に直接形成されていてもよい。
【0056】
また、上述の実施の形態では、固定設備10はプレート搬送移載装置であるとしていたが、これは一例に過ぎず、固定設備10はプレート搬送移載装置以外の装置であってもよい。また、作業機30も分注装置やインキュベータ、計測装置等以外の装置であってもよ
い。また、作業装置は、床面上に固定設置される固定設備と、車輪により床面上を移動自在であり、固定設備に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機とから成るものであればよく、上述の実施形態で示した創薬関連の作業装置に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
固定設備に対する作業機の位置決めを容易かつ安全に行うことができる作業装置及び作業機を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態における作業装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態における作業装置の側面図
【図3】本発明の一実施の形態における固定設備の一部断面側面図
【図4】(a)本発明の一実施の形態における固定設備の平面図(b)本発明の一実施の形態における固定設備が備えるブロック状部材の平面図
【図5】本発明の一実施の形態における作業装置を構成する固定設備と作業機の一部断面側面図
【図6】(a)(b)本発明の一実施の形態における作業装置を構成する固定設備と作業機の一部断面側面図
【図7】本発明の一実施の形態における作業装置を構成する固定設備と作業機の一部断面側面図
【図8】本発明の一実施の形態における作業装置を構成する固定設備と作業機の一部断面側面図
【図9】本発明の一実施の形態における作業装置を構成する固定設備と作業機の一部断面側面図
【符号の説明】
【0059】
1 作業装置
10 固定設備
11a 延出部
15 脚部
16 凹状部
17 ブロック状部材
19 挿通部材
30 作業機
36 車輪
38 前方ジャッキ(押し当て機構)
38a 凸状部
39 後方ジャッキ
G 固定設備の重心
W 基準面
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に固定設置される固定設備と、車輪により床面上を移動自在であり、固定設備に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機とから成る作業装置であって、固定設備は下方に狭まる形状の複数の凹状部を備え、作業機はこれら複数の凹状部のそれぞれに下方に突出した形状の凸状部を上方から押し当ててその押し当て面に作業機の重量の一部を作用させる押し当て機構を備えたことを特徴とする作業装置。
【請求項2】
作業機は、固定設備側に臨む前部に前記押し当て機構を備え、後部に固定設備に対して位置決めされた状態の作業機を床面に対して自昇させる後方ジャッキを備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業装置。
【請求項3】
固定設備は固定設備の重心の位置を通る垂直な基準面に対して直交する方向に水平に張り出して延びた延出部を有し、複数の凹状部は前記延出部の上面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業装置。
【請求項4】
前記延出部は床面と接触する複数の脚部を有し、複数の凹状部は、複数の脚部のうち前記基準面から最も離れた位置にあるものよりも前記基準面に近い位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の作業装置。
【請求項5】
固定設備に備えられた複数の凹状部は固定設備に取り付けられた1つのブロック状部材に形成されており、ブロック状部材は1つの凹状部の中心位置が、その中心位置を上方から挿通する挿通部材によって固定設備に位置決めされてから他の部分が固定設備に固定されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の作業装置。
【請求項6】
車輪により床面上を移動自在であり、床面上に固定設置された固定設備に対して位置決めされた状態で作業を行う作業機であって、固定設備に備えられた下方に狭まる形状の複数の凹状部のそれぞれに下方に突出した形状の凸状部を上方から押し当ててその押し当て面に作業機の重量の一部を作用させる押し当て機構を備えたことを特徴とする作業機。
【請求項7】
固定設備側に臨む前部に前記押し当て機構を備え、後部に固定設備に対して位置決めされた状態の作業機を床面に対して自昇させる後方ジャッキを備えたことを特徴とする請求項6に記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−241208(P2009−241208A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91083(P2008−91083)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】