説明

作業足場における足場板の段差吸収プレート

【課題】作業者が躓く問題を防止することができ、且つ、足場板の段差部への取り付けが容易な作業足場における足場板の段差吸収プレートを提供する。
【解決手段】建築躯体の外側に沿うように配置した支柱に固定された横材2上に、下側の足場板3と上側の足場板3が重ねて配置されることにより歩行面に段差部5が形成される作業足場における足場板の段差吸収プレートであって、段差吸収プレート8は弾力性材料からなるプレート本体9によって形成されており、プレート本体9は、上側の足場板3の端部3'と下側の足場板3の上面との間に形成された段差部5に嵌合する嵌合部10を有し、且つ上側の足場板3の端部3'上端近傍から下側の足場板3の上面に向かって下り勾配に形成された傾斜踏み面11を有し、更に、上側の足場板3と下側の足場板3の間に挾持される挾持部12(係止手段)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における建築躯体の外側面に沿って架設される作業足場に備えられる足場板の端部が上下に重なって配置されることにより生じる段差を解消するための作業足場における足場板の段差吸収プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の構造物を建設する建設現場では作業足場を架設することが一般に行われている。図3(a)、(b)は作業足場の一例を示したもので、作業足場50は、建築躯体51の外側に沿うように鉛直な支柱1を所要の間隔で配置すると共に、該支柱1には足場板を支持するための水平方向に延びる単管パイプ或いは支持ブラケット等からなる横材2をクランプ具等を用いて固定し、該横材2上に例えば木製の足場板3aからなる足場板3を載置して作業者が通行できるようにしている。上記木製の足場板3aには長さが3.6m、幅が20cm、厚さが3.5cmのものが一般に用いられており、法規で定められた歩行幅40cm以上を確保するために、通常は図3(b)に示すように2枚の足場板3aを横並びに配置するようにしている。
【0003】
又、前記木製の足場板3aに代えて、図4に示すような表面に孔4を備えたアルミニウム材、或いは網目鋼材等からなる金属製の足場板3bも用いられている。金属製の足場板3bは長さが2.0m〜4.0m、幅が25cm、厚さが4.0cmのものが一般に用いられている。
【0004】
上記足場板3は、建築躯体の高さに応じて所要の段数(複数作業フロア)に配置する場合、或いは、建築躯体の外側面に沿って同一方向に連続的に旋回通行できるように配置する場合がある。又、足場板3は、図5に示すように、上側の足場板3と下側の足場板3とが交差して配置されるようにした場合もある。
【0005】
足場板3は作業者が移動するための歩廊となるものであるため、面一な歩行面が形成されるように配置されることが好ましいが、実際には図3(a)、(b)に示すように一方の足場板3の端部上に他方の足場板3の端部を直線上で重ねるように配置したり、或いは図5に示すように足場板3,3を交差させて上下に配置するようにしているために、下側の足場板3と上側の足場板3との重なり部における歩行面となる上面には段差部5が形成されている。
【0006】
図3(a)、(b)のように重ねられた足場板3,3の端部同士は、図6に示すような両端に係止金具6a,6bを備えたゴムバンド7、或いは番線等の固縛材を用いて固縛するようにしている。
【0007】
上記足場板3上を通行する作業員は、建設資材等を抱えて移動することが多いために前が見え難かったり、建設資材等が支柱1等と干渉しないように注意を払って移動することによって足元への注意が不十分となるために、足場板3の段差部5に躓いて、建設資材等を落下させたり、足場板3を踏み外したり、転倒するといった問題を生じる可能性がある。
【0008】
このような、問題を解消するために、足場板のうち2枚の足場板の端部が上下に重なって生じた段差上に配置される段差用ステップ板であって、一方の端部を上部の足場板の上に、他方の端部を下部の足場板の上に重ね、裏面には、下部の足場板に係合可能な保持具を取り付けたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−172023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1に記載の段差用ステップ板では、段差部に傾斜スロープを形成するために、金属或いはその他の高強度板によって段差用ステップ板を形成する必要があり、このような金属等の高強度板で形成した段差用ステップ板は、特に雨等で濡れた場合に滑り易くなるという問題がある。
【0011】
又、前記段差用ステップ板は、金具によって足場板に固定するようにしているために、金具の構造が複雑になってコストが増加すると共に、金具による取り付け・取り外しが面倒であり、作業足場に多数配置される各足場板の段差部に対する段差用ステップ板の装着・取り外しに時間が掛るために、その分工期が延長されるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、作業者が躓く問題を防止することができ、且つ、足場板の段差部への取り付けが容易な作業足場における足場板の段差吸収プレートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、建築躯体の外側に沿うように配置した支柱に固定された横材上に、下側の足場板と上側の足場板が重ねて配置されることにより歩行面に段差部が形成される作業足場における足場板の段差吸収プレートであって、段差吸収プレートは弾力性材料からなるプレート本体によって形成されており、該プレート本体は、上側の足場板の端部と下側の足場板の上面との間に形成された段差部に嵌合する嵌合部を有し、且つ上側の足場板の端部上端近傍から下側の足場板の上面に向かって下り勾配に形成された傾斜踏み面を有し、更に、上側の足場板と下側の足場板の少なくとも一方に係止可能な係止手段を有することを特徴とする作業足場における足場板の段差吸収プレート、に係るものである。
【0014】
上記作業足場における足場板の段差吸収プレートにおいて、係止手段は、上側の足場板の端部と下側の足場板の下部との間に挾持されるようにプレート本体に一体に形成された挾持板であってもよい。
【0015】
又、上記作業足場における足場板の段差吸収プレートにおいて、係止手段は、足場板が上面に孔を有する金属製の足場板である場合に、上側の足場板の上面に延長した延長部がプレート本体に形成され、前記延長部の下面に、金属製の足場板の上面に有する孔に嵌合する係止突部を備えていてもよい。
【0016】
又、上記作業足場における足場板の段差吸収プレートにおいて、プレート本体は、ゴム系材料又は樹脂材料で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の作業足場における足場板の段差吸収プレートによれば、段差部に設置されるプレート本体に備えた傾斜踏み面によって足場板端部の重ね部における段差部が解消され、よって、作業者は足場板上を安全に移動することができ、更に、簡単な構成のプレート本体は足場板の段差部への設置作業が容易であり、更に、プレート本体が弾力性材料からなり且つ係止手段を備えたことにより、段差部へ設置したプレート本体が設置位置から移動する問題を防止できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の段差吸収プレートを足場板の段差部に設置した状態を示す正面図、(b)は(a)の段差吸収プレートを斜め上方から見た斜視図である。
【図2】(a)は本発明の他の段差吸収プレートを金属製足場板の段差部に設置した状態を示す正面図、(b)は(a)の段差吸収プレートを斜め下方から見た斜視図である。
【図3】(a)は作業足場の横材上に足場板を設置した状態を示す正面図、(b)は(a)の足場板を斜め上方から見た斜視図である。
【図4】金属製の足場板の一例を示す上面斜視図である。
【図5】足場板が交差するように配置されている場合の説明図である。
【図6】重ねられた足場板の端部同士を固縛するゴムバンドからなる固縛材の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0020】
図1(a)、(b)は本発明の段差吸収プレートの一実施例を示すものであり、図3〜図6に示したものと同一のものには同じ符号を付して説明を省略する。図1(a)、(b)の段差吸収プレート8は、弾力性材料からなるプレート本体9によって形成している。このプレート本体9は、上側の足場板3の端部3'と下側の足場板3の上面との間に形成される段差部5に嵌合する嵌合部10を有している。嵌合部10は下側の足場板3の上面に当接する平坦な下面10aと、該下面10aと直交して前記上側の足場板3の端面に当接する垂直面10bとを有している。更に、前記嵌合部10の上部には、上側の足場板3の端部3'近傍から下側の足場板3の上面に向かって下り勾配に形成された傾斜踏み面11を有しており、これにより嵌合部10は、側面形状が略三角形を有している。更に、前記嵌合部10の下面10aに近い垂直面10bの位置には、前記傾斜踏み面11とは反対方向に前記下面10aと面一に延びて上側と下側の足場板3,3に挾持される薄肉の挾持板12を一体に備えることにより係止手段を構成している。段差部5に配置したプレート本体9は、傾斜踏み面11の上端が上側の足場板3の端部3'の上端に一致するように形成されている。
【0021】
前記プレート本体9は、ゴム系材料、或いは発泡性のエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のような発泡樹脂材料からなる弾力性材料によって形成されており、所要の弾力性と所要の強度を有するものであれば種々の材料を用いることができる。更に、プレート本体9の踏み面11、下面10a及び挾持板12の上面には滑り止めのための凹凸を備えてもよく、又、プレート本体9が発泡樹脂材料で形成されている場合には、踏み面11、下面10a及び挾持板12の上面に滑り止めのためのコーティングを施してもよい。前記プレート本体9は、前記1枚の足場板3の幅と同等の幅で形成されていてもよく、又、2枚の足場板3を横に並べた幅と同等の幅(前記に対して2倍の幅)に形成されていてもよい。
【0022】
上記図1(a)、(b)に示した実施例の作用を説明する。
【0023】
図3(a)、(b)に示したように、足場板3の端部同士を重ねて配置する際に、図1(a)に示すように、プレート本体9の挾持板12が下側の足場板3と上側の足場板3の端部3'との間に挾持されるように、且つ、垂直面10bが上側の足場板3の端面に当節するようにして、段差部5にプレート本体9を配置する。上記プレート本体9は足場板3の端部を重ねて配置する際に同時に相互間に挾持板12を挟み込むように配置してもよく、又、足場板3を重ねて配置し終えた後で、上側の足場板3の端部3'を持ち上げながら挾持板12を差込むようにプレート本体9を配置してもよい。このとき、足場板3の端部は片手で持ち上げることができるので、プレート本体9は容易に配置することができる。プレート本体9を配置した足場板3はゴムバンド7等に固縛材によって固縛する。又、図5に示すように、足場板3が交差して上下に配置される場合においても、上記と同様にして段差部5に前記プレート本体9を配置することができる。図1(a)、(b)に示したプレート本体9は、足場板3が木製の足場板3a、或いは金属製の足場板3bのいずれの場合にも適用することができる。
【0024】
上記したように、段差部5にプレート本体9を配置したことにより、プレート本体9に備えた傾斜踏み面11によって段差部5が解消され、これにより、作業者は足場板3上を安全に移動することができる。更に、プレート本体9は簡単な構成を有しており、足場板3の段差部5への設置作業が容易であるために工期の短縮を図ることができる。更に、プレート本体9が弾力性材料によって形成されており、且つ下側の足場板3と上側の足場板3の端部3'近傍との間に挾持されるようにした挾持板12からなる係止手段を備えているので、段差部5へ設置したプレート本体9が挾持による摩擦力によって設置位置から移動する問題を防止することができる。
【0025】
又、前記したように弾力性材料によって形成したプレート本体9の挾持板12を、下側の足場板3と上側の足場板3の端部3'との間に挾持させたので、挾持板12がクッション材として作用することにより、作業者の歩行や風による振動に基づく騒音を低減することができる。
【0026】
図2(a)、(b)は、図4に示した金属製の足場板3bを備えた作業足場に適用するようにした本発明の他の実施例を示すもので、図2(a)、(b)に示す弾力性材料で形成しているプレート本体9が図1(a)、(b)の実施例と異なるところは、前記挾持板12は備えておらず、段差部5に嵌合する嵌合部10に、上側の足場板3aの上面に延長するようにした延長部13を形成しており、該延長部13の下面には、金属製の足場板3bの上面に有している孔4に嵌合する係止突部14を備えることにより係止手段を構成している。このとき、金属製の足場板3bの上面には同一位置に規則正しく孔4が形成されているので、前記延長部13に備えた係止突部14は確実に孔4に嵌合させることができる。
【0027】
図2(a)、(b)の実施例では、金属製の足場板3bを重ねて配置し終えた後において、延長部13に備えた係止突部14を上側の足場板3aの孔4に嵌合することでプレート本体9を配置できるので、前記実施例に比してプレート本体9の配置作業を更に簡略化することができる。更に、上側の足場板3bの孔4に嵌合する係止突部14からなる係止手段を備えたので、段差部5へ設置したプレート本体9は設置位置から移動する問題を確実に防止することができる。
【0028】
尚、本発明の作業足場における足場板の段差吸収プレートは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 支柱
2 横材
3 足場板
3' 端部
3a 木製の足場板
3b 金属製の足場板
4 孔
5 段差部
8 段差吸収プレート
9 プレート本体
10 嵌合部
11 傾斜踏み面
12 挾持板(係止手段)
13 延長部(係止手段)
14 係止突部(係止手段)
50 作業足場
51 建築躯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築躯体の外側に沿うように配置した支柱に固定された横材上に、下側の足場板と上側の足場板が重ねて配置されることにより歩行面に段差部が形成される作業足場における足場板の段差吸収プレートであって、段差吸収プレートは弾力性材料からなるプレート本体によって形成されており、該プレート本体は、上側の足場板の端部と下側の足場板の上面との間に形成された段差部に嵌合する嵌合部を有し、且つ上側の足場板の端部上端近傍から下側の足場板の上面に向かって下り勾配に形成された傾斜踏み面を有し、更に、上側の足場板と下側の足場板の少なくとも一方に係止可能な係止手段を有することを特徴とする作業足場における足場板の段差吸収プレート。
【請求項2】
係止手段は、上側の足場板の端部と下側の足場板の下部との間に挾持されるようにプレート本体に一体に形成された挾持板であることを特徴とする請求項1に記載の作業足場における足場板の段差吸収プレート。
【請求項3】
係止手段は、足場板が上面に孔を有する金属製の足場板である場合に、上側の足場板の上面に延長した延長部がプレート本体に形成され、前記延長部の下面に、金属製の足場板の上面に有する孔に嵌合する係止突部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業足場における足場板の段差吸収プレート。
【請求項4】
プレート本体は、ゴム系材料又は樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業足場における足場板の段差吸収プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−52369(P2011−52369A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199166(P2009−199166)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)