説明

作業車輌における制御装置

【課題】切換え(自動)スイッチで自動状態と自動切状態等の作動状態を切換える制御装置において、電源投入時の該切換えスイッチの立上り時の設定を切換える。
【解決手段】自動(ON)状態での自動スイッチのON(S2;YES)又は自動切状態での自動スイッチのON(S3;YES)で、作業中の自動制御が切換えられる(S6,S8)。電源投入による立上り設定は、自動状態から自動切(OFF)状態への切換えが、自動スイッチの長押し操作を必要とし(S4;YES、S5)、自動切状態から自動状態への切換えは通常操作で行う(S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車輌、特にコンバイン、田植機、及びトラクタ等の農業用作業車輌における制御装置に係る。詳しくは、作業車輌、例えばコンバインにあっては、こぎ深さ自動、選別自動、刈高さ自動、水平自動、方向自動等の各自動制御装置があり、これら各自動制御装置を自動切換えスイッチにより自動状態及び自動切り状態に切換えるが、切換えスイッチにより作動状態を切換える制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農業用作業車輌にあっては、車輌本体又は付設する作業機の各部を機体各部に設けたセンサからの信号によって自動的に作動制御し、常に作物、圃場状態に合せた制御を行う各種の自動制御装置を備えている。これら自動制御装置は、上述した自動制御が機能する自動状態と、該自動状態を停止して手動操作とする自動切り状態とに切換える自動制御切換えスイッチをそれぞれ備えている。
【0003】
従来、上記複数の自動制御切換えスイッチをモーメンタリスイッチにて構成し、作業車輌の電源を切断(キースイッチOFF)した後も、該切断時のスイッチの状態を記憶しておき、作業車輌を再始動すべく電源を入れる(キースイッチON)と、前記各自動切換えスイッチは、前回の電源切断時の状態となるようにした制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−28号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各自動制御装置の自動切換えスイッチは、押しボタンスイッチの単なる一回の(短)押し操作により行われるので、単純な操作で自動位置と自動切位置に切換えられ、それが電源切断時に記憶される。従って、一時作業を中断し、電源をオンして再始動する場合、オペレータは、前記自動切換えスイッチの単純操作を記憶していない場合が多く、上記一時中断に先立ち、例えば自動位置から自動切位置に切換え操作をしたにも拘らず、自動切換えスイッチを自動位置に切換えることを忘れて、再始動時、自動状態と思って作業を行う場合がある。
【0006】
また、上記各自動制御装置、例えばコンバインにおけるこぎ深さ自動、選別自動、刈高さ自動は、一般に、自動状態で作業が行われ、従って電源切断時に自動切換えスイッチが自動位置に記憶される場合が多いが、オペレータは自動位置にあると思い込んでしまい、オペレータが手動操作を望む場合、例えば脱穀装置の選別においてチャフシーブを全開にして速く処理を進めたいと望んでいる場合、実際は前回操作で自動切(手動)位置にあるにも拘らず、オペレータは単純作業からなる自動切換えスイッチの押し操作により自動位置から自動切(手動)位置に切換えたと思い込んで作業を進行し、過負荷状態になってしまうことがある。
【0007】
そこで、本発明は、自動切換えスイッチの長押し操作により、電源投入時における設定を切換え可能とし、もって上述した課題を解決した作業車輌における制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、押しボタンスイッチからなる切換えスイッチ(16,23,25,26,27)により作動状態が切換えられる作動部を備え、かつ電源スイッチ(15)のオンにより始動する作業車輌における制御装置において、
前記切換えスイッチを長押し操作する(S4)ことにより、前記電源スイッチ(15)のオンによる再始動における該切換えスイッチの立上り時の作動状態の設定を切換えてなる(S5)、
ことを特徴とする作業車輌における制御装置にある。
【0009】
前記切換えスイッチは、自動状態と自動切状態とに切換える自動制御切換えスイッチ(16,23,25,26,27)であり、
該自動制御切換えスイッチは、押し操作により作動中の自動制御を自動状態と自動切状態に切換える(S2,S6)(S3,S8)と共に、自動状態での長押し操作(S4)により、前記電源スイッチ(15)のオンによる再始動における該自動制御切換えスイッチの立上り時の設定を自動状態から自動切状態に切換えてなる(S5)。
【0010】
前記自動制御切換えスイッチは、自動切状態での押し操作(S3)により、作動中の自動制御を自動切状態から自動状態に切換える(S8)と共に、前記電源スイッチ(15)のオンによる再始動における該自動制御切換えスイッチの立上り時の設定を自動切状態から自動状態に切換えてなる(S7)。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、電源スイッチ投入による再始動における切換えスイッチの立上り時の作動状態の設定は、押しボタンスイッチからなる切換えスイッチの長押し操作により切換えられるので、該長押し操作は、通常の切換えスイッチの切換え(短押し)操作と異なり、オペレータが意識して切換え操作したことを記憶しており、一時中断等にあっては、再始動時思い込みで異なる作動状態で作業を進行することを防止できる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、切換えスイッチが自動制御切換えスイッチであり、作業中での自動状態と自動切状態との切換えは、上記切換えスイッチの通常(短押し)操作により容易に切換えられるが、自動状態から自動切状態への切換えスイッチ立上り時の設定は、長押し操作となるので、操作ミスの発生を減少できる。例えばコンバインの選別自動において、オペレータが速急な作業を望んで選別自動切換えスイッチの通常(短押し)操作で自動切状態で作業しており、雨等で一時停止した後再始動する際、オペレータは、自動状態にあると思い込んで習慣で選別自動切換えスイッチを押し操作することがあるが、この場合選別自動は自動状態にあって、上記オペレータの切換えスイッチの押し操作により自動切状態となって前回の作業を継続することができる。
【0014】
また、自動切状態の作業を連続して続けたい場合、オペレータは、自動状態において切換えスイッチを長押し操作すれば、作業中の自動制御と同様に、切換えスイッチの立上り時も自動切状態となって、再始動時も、切換えスイッチを操作することなく自動切状態での作業を継続することができる。
【0015】
請求項3に係る本発明によると、自動切状態から自動状態の切換えは、作業中であっても切換えスイッチの立上り時の設定であっても、同じ自動制御切換えスイッチの通常(短押し)操作からなるので、例えばコンバインのこぎ深さ自動制御、選別自動制御、刈高さ自動制御等の自動状態が基本の制御にあっては、操作が単純となって、オペレータに違和感を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る制御装置を適用し得るコンバインを示す正面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインの操縦部を示す平面図。
【図4】本発明に係る自動制御装置のフローチャート。
【図5】本発明を適用し得るコンバインの各自動制御装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を適用し得るコンバインについて、図1,図2に沿って説明する。コンバイン1は、クローラ走行装置2で支持される機体3を有しており、該機体3の前方には前処理部5が昇降自在に支持されている。前記機体3には、その一側に脱穀装置6が配置され、その他側に操縦部7及び穀粒排出オーガ8を有するグレンタンク9が配置されている。
【0018】
操縦部7は、図3に示すように、運転シート11、該運転シートの前方に前部パネル12及び側方に側部パネル13を有している。前部パネル12には、機体の左右操向及び前処理部5の昇降操作を行うマルチステアリングレバー13及びキー(電源)スイッチ15が配置されており、更にその左端部分に、機体傾斜角を調整する水平ダイヤル16aを一体的に有する水平自動スイッチ16及び水平操作レバー17が配置されている。
【0019】
側部パネル13には、主変速レバー19、副変速レバー20、エンジンコントロールレバー21及び作業機・刈取りクラッチレバー22が配置されており、更に運転シート11に近い部分に並んで、刈高さダイヤル23aを一体的に有する刈高さ自動スイッチ23、選別ダイヤル25aを一体的に有する選別自動スイッチ25、こぎ深さ自動スイッチ26及び方向自動スイッチ27が配置されている。前記こぎ深さ、選別、刈高さ、水平、方向の各自動(制御切換え)スイッチ26,25,23,16,27は、モーメンタルスイッチである押しボタンスイッチからなり、押し操作により自動状態(位置)と自動切(手動)状態(位置)とに切換えられ、図5に示すように、その信号がマイコンからなる制御部30に送られて各自動制御装置を制御すると共に、かつ自動位置にあってはそれぞれランプ16b,23b,25b,26b,27bが点灯し、自動切位置にあっては各ランプが消灯する。
【0020】
コンバイン1は、圃場を走行しつつ稲等の穀稈を刈取り、脱穀装置6により脱穀すると共に穀粒を選別し、選別された穀粒はグレンタンク9に貯留される。上記コンバイン作業において、方向自動スイッチ27のオンにより方向自動制御が作業して、条列に倣うように走行装置2を制御し、また水平自動スイッチ16のオンにより水平自動制御が作動して、水平ダイヤル16aにて設定された水平又は傾斜角になるように機体3の左右高さが別個に制御される。
【0021】
刈高さ自動スイッチ23のオンにより刈高さ自動制御(刈高さポジションコントロール)が作動して、刈高さダイヤル23aにより設定された高さになるように前処理部5が昇降制御される。こぎ深さ自動スイッチ26のオンによりこぎ深さ自動制御が作動して、刈取り穀稈の穂先が脱穀装置6内の所定位置になるように穀稈搬送の受渡し位置が制御される。選別自動スイッチ25のオンにより選別自動制御が作動して、選別ダイヤル25aで設定された稲又は麦並びに脱穀負荷に合うように脱穀装置6の選別部が制御される。
【0022】
ついで、上述した各自動スイッチ26,25,23,16,27の設定について図4に説明する。押しボタンスイッチからなる自動(制御切換え)スイッチは、まず、自動設定ON(自動位置)状態が判断され(S1)、そして自動スイッチが押し操作されたか判断される(S2,S3)。即ち、自動スイッチがON状態に設定されており(S1;YES)、自動スイッチが操作されていない場合(S2;NO)、自動設定はONであるので(S9;YES)、自動設定ランプがONにあって(S10)、自動制御は作動状態にある。また、自動スイッチがOFF(自動切状態)に設定されており(S1;NO)、自動スイッチが操作されていない場合(S3;NO)、自動設定はOFFにあるので(S9;NO)、自動設定ランプがOFFにあって(S11)、自動制御は切状態(手動制御状態)にある。
【0023】
そして、自動設定がON状態(S1;YES)で、自動スイッチを押し(ON)操作した場合(S2;YES)、該自動スイッチの押し操作が短押しか長押しか判断される(S4)。短押しの場合(S4;NO)、自動設定はOFFに切換えられ(S6)、長押しの場合(S4;YES)、キースイッチ15がON(電源投入)で作業機(コンバイン)が再始動する際の自動の立上り設定がOFFになり、それが記憶された後(S5)、自動設定がOFFとなる(S6)。即ち、自動スイッチを押し操作すると、短押しでも長押しでも、自動制御は自動状態(ON)から自動切状態(OFF)に切換えられるが、通常の短押し操作では、作業中での自動制御が切換えられるだけで、次回再始動時の立上り設定は自動状態(ON設定)のままであるが、通常操作とは異なり、オペレータが意識して操作する長押し操作では、次回再始動時の立上り設定も自動切状態(OFF設定)に切換えられる。
【0024】
上記自動スイッチの押し操作(短押し及び長押し)により自動設定OFFに切換えられると(S6)、自動設定はOFFなので(S9;NO)、自動設定ランプはOFFとなり(S11)、自動制御は切り状態となる。
【0025】
一方、自動設定がOFF状態で(S1;NO)、自動スイッチを押し(ON)操作した場合(S3;YES)、キースイッチONによる自動立上り設定がONになり、それが記憶された後(S7)、自動設定がONに切換わる。即ち、自動制御の自動切状態(OFF)から自動状態(ON)への切換えは、自動スイッチの単なる押し操作(短押しでも)により、作業中の自動制御ばかりでなく、次回再始動における立上り設定も同様に切換えられる。自動設定がONであれば、ステップ9での自動設定の判断はYESであり、自動設定ランプがON(点灯)すると共に該自動制御が作動状態に切換えられる。
【0026】
従って、自動スイッチが自動(ON)位置にあって自動制御が作動状態にある場合、自動スイッチを短押しすると、当該作業中の自動制御は切り(OFF)状態に切換えられるが、キーON時自動立上り時には自動状態のままである。自動スイッチを長押しすると、当該作業中の自動制御は勿論、次回立上り時の設定も切り(OFF)状態に切換えられる。
【0027】
自動スイッチが切り(OFF)位置にあって自動制御が作動しない手動状態にある場合、自動スイッチの押し操作すると、その押し方に拘らず、作業中の自動制御も次回立上り時の設定も自動(ON)状態に切換えられる。
【0028】
上述の実施の形態は、作業車輌としてコンバインに適用し、その各自動制御の自動切換えスイッチについて説明したが、これに限らず、トラクタに適用して、例えば4駆切替スイッチ、倍速旋回・オードブレーキ旋回切替スイッチ、バックアップスイッチ、旋回アップスイッチ等の各切換えスイッチ等にも同様に適用可能であり、また田植機に適用して、例えばマーカ自動切換えスイッチ、植付け部の旋回アップスイッチ、バックアップスイッチにも同様に適用可能であり、作業車輌における各切換えスイッチに本発明を適用することができる。
【0029】
また、上述した説明は、コンバインのすべての自動制御に本発明が適用されるように説明したが、一部の自動制御のみに本発明を適用し、他の自動制御は、従来の技術で説明した切換え又は立上り時はすべてオン若しくはオフになるようにしてもよい。例えば、こぎ深さ自動、選別自動及び刈高さ自動は、本発明を適用し、水平自動及び方向自動は、立上り時にオフになるように設定してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 作業車輌(コンバイン)
16,23,25,26,27 (自動制御)切換えスイッチ
15 電源スイッチ(キースイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタンスイッチからなる切換えスイッチにより作動状態が切換えられる作動部を備え、かつ電源スイッチのオンにより始動する作業車輌における制御装置において、
前記切換えスイッチを長押し操作することにより、前記電源スイッチのオンによる再始動における該切換えスイッチの立上り時の作動状態の設定を切換えてなる、
ことを特徴とする作業車輌における制御装置。
【請求項2】
前記切換えスイッチは、自動状態と自動切状態とに切換える自動制御切換えスイッチであり、
該自動制御切換えスイッチは、押し操作により作動中の自動制御を自動状態と自動切状態に切換えると共に、自動状態での長押し操作により、前記電源スイッチのオンによる再始動における該自動制御切換えスイッチの立上り時の設定を自動状態から自動切状態に切換えてなる、
請求項1記載の作業車輌における制御装置。
【請求項3】
前記自動制御切換えスイッチは、自動切状態での押し操作により、作動中の自動制御を自動切状態から自動状態に切換えると共に、前記電源スイッチのオンによる再始動における該自動制御切換えスイッチの立上り時の設定を自動切状態から自動状態に切換えてなる、
請求項2記載の作業車輌における制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−139658(P2011−139658A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1521(P2010−1521)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】