作業車
【課題】走行性能及び変速操作性などを向上できるようにした作業車を提供しようとするものである。
【解決手段】エンジン2を搭載した走行車1と、エンジン2からの伝達動力を変速する油圧ポンプ85・油圧モータ86式の油圧変速機構57と、エンジン2からの伝達動力と油圧変速機構57の変速出力とを合成する遊星ギヤ機構83と、遊星ギヤ機構83の合成出力が一方向の回転力として伝達される合成出力軸84を有するミッションケース4とを備え、合成出力軸84における一方向の回転力を走行出力軸63に伝達する作業車において、油圧変速機構57の変速出力が逆転方向最大の出力制御状態で合成出力軸84の回転数がゼロになるように構成する一方、合成出力軸84における一方向の回転力を正転出力または逆転出力に切換えるギヤ87,88機構を設けたものである。
【解決手段】エンジン2を搭載した走行車1と、エンジン2からの伝達動力を変速する油圧ポンプ85・油圧モータ86式の油圧変速機構57と、エンジン2からの伝達動力と油圧変速機構57の変速出力とを合成する遊星ギヤ機構83と、遊星ギヤ機構83の合成出力が一方向の回転力として伝達される合成出力軸84を有するミッションケース4とを備え、合成出力軸84における一方向の回転力を走行出力軸63に伝達する作業車において、油圧変速機構57の変速出力が逆転方向最大の出力制御状態で合成出力軸84の回転数がゼロになるように構成する一方、合成出力軸84における一方向の回転力を正転出力または逆転出力に切換えるギヤ87,88機構を設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば苗載台及び苗植付爪を備えて連続的に苗植作業を行う田植機またはトラクタまたはコンバインまたは土木建機などの作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動力を油圧変速機構のポンプ軸に入力させ、油圧変速機構のモータ軸と、前記ポンプ軸に連結させるギヤとを、遊星ギヤ機構を介して合成出力軸に連結させ、油圧変速機構の変速可能範囲で、合成出力軸を一方向に回転させる遊星ギヤ機構を設ける技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−60202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ギヤミッションでは高い動力伝達効率となるが、有段変速により操作性を向上し得ない不具合がある。また、油圧式無段変速機構は初速がゼロから発進させるゼロ発進可能な無段変速により優れた操作性を得られるが、動力伝達効率に限界があり、低速での動力損失が大きくなる不具合がある。また、Vベルト及びプーリを用いたベルト式無段変速機構は高効率の無段変速を行えるが、初速がゼロから発進させるゼロ発進を行えない不具合がある。例えば田植機などにおいて、湿田(泥土路面)での走破性、スムーズな圃場の出入、ショックの少ない変速動作、クラッチが不要な発進動作、作業または田面などの状況に適応した速度調節などが要求され、高い動力伝達効率、及びゼロ発進可能な無段変速、及び簡単な変速操作が望まれている。さらに、油圧変速機構の出力とギヤ伝動出力とを遊星ギヤ機構のデフ作用により合成出力してエンジン出力を変速伝達させることにより、高い動力伝達効率並びにゼロ発進可能な無段変速を得られるが、遊星ギヤ機構からの合成出力が停止(ゼロ)を挾んで前後進(正逆転)できるように速度設定した場合、前記合成出力の逆転側の変速領域を小さくして後進出力させ、前記合成出力の正転側の変速領域を大きくして前進出力させ、一般の作業速度において、油圧変速出力が高効率になるように構成することができるが、例えば油圧変速機構の油の粘性が温度(連続運転または気温)などにより変化すると、合成出力の停止(ゼロ)位置が後進側または前進側に移動し、変速操作位置が停止になっているときに前進または後進の出力が生じる不具合がある。そこで、合成出力の停止(ゼロ)位置を自動的に調節するための電気的な制御が必要になり、構造が複雑で製造コストが高くなる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
然るに、請求項1に係る発明は、エンジンを搭載した走行車と、前記エンジンからの伝達動力を変速する油圧ポンプ・油圧モータ式の油圧変速機構と、前記エンジンからの伝達動力と前記油圧変速機構の変速出力とを合成する遊星ギヤ機構と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力として伝達される合成出力軸を有するミッションケースとを備え、前記合成出力軸における一方向の回転力を走行出力軸に伝達する作業車において、前記油圧変速機構の変速出力を出力制御することで前記合成出力軸の回転数を変化させるように構成する一方、前記合成出力軸における一方向の回転力を正転出力または逆転出力に切換えるギヤ機構を設けたものである。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、走行車に連結する植付部と、前記植付部を作動するPTO出力軸と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力としてPTO出力軸に伝達される作業車であって、前記油圧変速機構の変速出力が逆転方向の出力制御状態で前記エンジンからの正転回転数と前記油圧変速機構の逆転回転数とが一致する一方、前記合成出力軸には、前記合成出力軸における一方向の回転力を前進、中立、後進の出力に切換えて前記走行出力軸に伝達する前進ギヤ・後進ギヤ機構を備えているものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンを搭載した走行車と、前記エンジンからの伝達動力を変速する油圧ポンプ・油圧モータ式の油圧変速機構と、前記エンジンからの伝達動力と前記油圧変速機構の変速出力とを合成する遊星ギヤ機構と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力として伝達される合成出力軸を有するミッションケースとを備え、前記合成出力軸における一方向の回転力を走行出力軸に伝達する作業車において、前記油圧変速機構の変速出力を出力制御することで前記合成出力軸の回転数を変化させるように構成する一方、前記合成出力軸における一方向の回転力を正転出力または逆転出力に切換えるギヤ機構を設けたものであるから、ゼロ発進時の出力トルクを容易に確保でき、微速走行性能を容易に向上でき、しかも作業速度で伝達ギヤの高い動力伝達効率の出力を有効に利用でき、泥土路面での作業能率などを向上できる。油圧変速機構の出力特性または変速操作機構の組立誤差などに対し、油圧変速操作の停止(ゼロ速度)位置と合成出力軸のゼロ回転位置とにずれが生じても、油圧変速操作を停止にしたときに合成出力軸が回転して前後進する不具合を容易になくすことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、走行車に連結する植付部と、前記植付部を作動するPTO出力軸と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力としてPTO出力軸に伝達される作業車であって、前記油圧変速機構の変速出力が逆転方向の出力制御状態で前記エンジンからの正転回転数と前記油圧変速機構の逆転回転数とが一致する一方、前記合成出力軸には、前記合成出力軸における一方向の回転力を前進、中立、後進の出力に切換えて前記走行出力軸に伝達する前進ギヤ・後進ギヤ機構を備えているものであるから、ゼロ発進可能な無段変速と高い動力伝達効率を、簡単な油圧変速とギヤ組成とで容易に達成でき、走行性能及び変速操作性などを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】田植機の全体側面図。
【図2】田植機の全体平面図。
【図3】走行車体の側面図。
【図4】走行車体の平面図。
【図5】車体フレームの側面図。
【図6】駆動部の側面説明図。
【図7】駆動部の平面説明図。
【図8】サイドクラッチ操作系の側面説明図。
【図9】サイドクラッチ操作系の平面説明図。
【図10】ミッションケースの断面図。
【図11】同拡大図。
【図12】遊星ギヤ機構の説明図。
【図13】ミッションケースの部分図。
【図14】遊星ギヤ機構の断面図。
【図15】変速ペダル部の前方からの斜視図。
【図16】変速ペダル部の後側上方からの斜視図。
【図17】ミッションケースのギヤ配列説明図。
【図18】油圧変速操作アーム部の側面図。
【図19】ギヤ変速の中立状態の説明図。
【図20】ギヤ変速の後進状態の説明図。
【図21】ギヤ変速の植付走行状態の説明図。
【図22】ギヤ変速のPTO空転状態の説明図。
【図23】ギヤ変速の移動走行状態の説明図。
【図24】遊星ギヤ機構の回転説明図。
【図25】エンジンの出力説明図。
【図26】低速走行のエンジン出力説明図。
【図27】中速走行のエンジン出力説明図。
【図28】高速走行のエンジン出力説明図。
【図29】油圧変速機構の出力説明図。
【図30】伝達ギヤ側の出力説明図。
【図31】合成出力軸の出力説明図。
【図32】変速ペダルの変速説明図。
【図33】油圧変速出力とギヤ変速出力の相関図。
【図34】図33の出力と油圧損失及びギヤ損失の相関図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1は全体の側面図、図2は同平面図、図3は車体フレームの側面図、図4は同平面図を示し、図中1は作業者が搭乗する走行車であり、エンジン2を車体フレーム3に搭載させ、ミッションケース4側方にフロントアクスルケース5を介して水田走行用前輪6を支持させると共に、前記ミッションケース4後方のリヤアクスルケース7に水田走行用後輪8を支持させる。そして前記エンジン2等を覆うボンネット9両側に予備苗載台10を取付けると共に、作業者が搭乗する車体カバー11によって前記ミッションケース4等を覆い、前記車体カバー11後側上方にシートフレーム12を介して運転席13を取付け、その運転席13の前方で前記ボンネット9後部に操向ハンドル14を設ける。
【0011】
また、図中15は5条植え用の苗載台16並びに複数の苗植付爪17などを具備する植付部であり、前高後低の合成樹脂製の前傾式苗載台16を下部レール18及びガイドレール19を介して植付ケース20に左右往復摺動自在に支持させると共に、一方向に等速回転させるロータリケース21を前記植付ケース20に支持させ、該ケース21の回転軸芯を中心に対称位置に一対の爪ケース22・22を配設し、その爪ケース22・22先端に苗植付爪17・17を取付ける。
【0012】
また、前記植付ケース20前側のヒッチブラケット23をトップリンク24及びロワーリンク25を含む昇降リンク機構26を介し走行車1後側に連結させ、前記リンク機構26を介して植付部15を昇降させる油圧昇降シリンダ27をロワーリンク25に連結させ、前記前後輪6・8を走行駆動して移動すると同時に、左右に往復摺動させる苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取出し、連続的に苗を植える田植作業を行うように構成する。
【0013】
また、図中28は主変速レバー、29は植付昇降レバー、30はブレーキペダル、31は変速ペダル、32はデフロックペダル、33は感度調節レバー、34は植付部15任意高さ位置に停止させるストップレバー、35はユニットクラッチレバー35であり、操向ハンドル14位置近傍に変速及び昇降レバー28・29やブレーキ及び変速ペダル30・31を配設すると共に、運転席13位置近傍に感度調節及びストップ及びユニットクラッチの各レバー33・34・35やデフロックペダル32を配設している。
【0014】
さらに、図中36は1条分均平用センタフロート、37は2条分均平用サイドフロート、38は肥料ホッパ39内の肥料を送風機40の送風力でフレキシブル形搬送ホース41を介しフロート36・37の側条作溝器42に排出させる5条用側条施肥機である。
図3乃至図5に示す如く、前記車体フレーム3は前部フレーム43と中間フレーム44と後部フレーム45とに3分割させ、左右一対の前部フレーム43にエンジン2を、左右一対の中間フレーム44にフロントアクスルケース5を、左右一対の後部フレーム45にリヤアクスルケース7及びエンジン2に燃料を供給する燃料タンク46などを設けるもので、前部フレーム43の前側と中間に前フレーム47とベースフレーム48を連結させて平面視4角枠状に形成し、固定ブラケット49とベースフレーム48に防振ゴムを介しエンジン2を上載させる。
【0015】
また、前記後部フレーム45の中間立上り部50間をパイプフレーム51と門形フレーム52とで略平行に連結させると共に、リヤアクスルケース7に左右下端を固設する門形フレーム53の後端を一体連結させ、前記の左右の立上り部50間に燃料タンク46を配設する。
【0016】
さらに、前部フレーム43後端と後部フレーム45前端に左右中間フレーム44の前後端をボルト54を介して取外し自在に固定させると共に、左右中間フレーム44の下面にボルト55を介して左右フロントアクスルケース5を取外し自在に固定させ、前記ミッションケース4に左右フロントアクスルケース5を接続固定させる。
【0017】
図6乃至図9に示す如く、前記ミッションケース4の前面左側にパワーステアリングケース56を設け、かつケース4の右側に無段油圧変速機構57を設け、油圧変速機構57の変速入力用ポンプ軸58を車体前方向に突出させ、エンジン2下側で前後方向の伝達軸59にポンプ軸58を連結させると共に、エンジン2の出力軸60に伝達ベルト61を介して前記伝達軸59を連結させ、エンジン2出力を油圧変速機構57に伝達する。
【0018】
また、前記ミッションケース4とリヤアクスルケース7を車体の前後方向の中心ライン上でパイプ製の連結フレーム62によって一体連結させ、ミッションケース4後方にリヤ出力軸63及びPTO出力軸64を突出させ、リヤアクスルケース7前方に突出させるリヤ入力軸65にリヤ伝達軸66を介し前記リヤ出力軸63を連結させ、走行出力軸63から左右の後輪8に動力を伝える。またリヤアクスルケース7上部の軸受67に設ける中介軸68に自在継手軸69を介して前記PTO出力軸64を連結させ、前記植付ケース20の入力軸に自在継手軸を介して中介軸68を連結させ、PTO出力軸64から植付部15に動力を伝える。
【0019】
さらに、図10乃至図19に示す如く、前記ミッションケース4は、本体胴部70と、前蓋部71と、後蓋部72を備え、前記胴部70の前後に各蓋部72を着脱自在にボルト固定させ、密閉箱形に形成すると共に、前記胴部70の内部を前後に分割する仕切り壁部73を設ける。また、前蓋部71前面に前記油圧変速機構57を取付け、ミッションケース4内に突出させるポンプ軸58に小径の伝達ギヤ74を係合軸支させ、伝達ギヤ74を前蓋部71にベアリング軸受し、後蓋部72後面に固定させるチャージポンプ75に伝達ギヤ74の動力をパイプ軸76を介して伝える。
【0020】
また、前記ミッションケース4内に突出させる油圧変速機構57のモータ軸77にサンギヤ78を係合軸支させ、サンギヤ78を前蓋部71にベアリング軸受すると共に、前記の小径の伝達ギヤ74に大径のキャリヤギヤ79を常に噛合させ、サンギヤ78のボス部にキャリヤギヤ79を遊転軸支させるもので、キャリヤギヤ79に3枚のプラネタリギヤ80を軸81を介して回転自在に設け、サンギヤ78にプラネタリギヤ80を噛合させると共に、プラネタリギヤ80に噛合させるリングギヤ82を設け、各ギヤ78・80・82によって遊星ギヤ機構83を形成する。
【0021】
また、前記サンギヤ78と後蓋部72に合成出力軸84の前後を回転自在に軸支させ、前記リングギヤ82を合成出力軸84に係合軸支させるもので、油圧変速機構57の油圧ポンプ85及び油圧モータ86の無段油圧変速出力である正逆回転出力と、伝達ギヤ74及びキャリヤギヤ79の減速回転出力(一方向の一定回転)とを、遊星ギヤ機構83のデフ作用によって合成し、ゼロ乃至最大速の一方向の回転力として合成出力軸84に伝える。
【0022】
さらに、前記合成出力軸84に前進ギヤ87と後進ギヤ88を遊転軸支させ、合成出力軸84に各ギヤ87・88をスライダ89によって選択的に係合させ、前進または中立または後進の出力に切換えると共に、仕切り壁部73と後蓋部72に前記リヤ出力軸63をベアリング軸受する。また、差動ギヤ90を介して左右の前車軸91に動力を伝えるフロント出力軸92と、PTO変速ギヤ93を係合軸支させるカウンタ軸94を設け、図20の状態下で、前記のリヤ及びフロント出力軸63・92に出力ギヤ95・96を介して後進ギヤ88の後進動力を伝え、前後輪6・8を後進駆動させると共に、リヤ出力軸63に移動ギヤ97及び植付ギヤ98を遊転軸支させ、副変速スライダ99によって各ギヤ97・98をリヤ出力軸63に選択的に係合させる。
【0023】
また、カウンタ軸94の高速用ギヤ100を介して前進ギヤ87に移動ギヤ97を常に噛合させると共に、カウンタ軸94の低速用のPTO変速ギヤ93に植付ギヤ98を常に噛合させ、図21の状態下で、各ギヤ100・93・98を介して前進ギヤ87の動力を前記各出力軸63・92に伝え、前後輪6・8を苗の植付け作業速度で前進駆動する。また、図22の状態下で、移動ギヤ97と植付ギヤ98の両方が遊転状態となり、植付爪17などを作業者が手で回転させて詰った苗の除去などを行えるように、PTO出力軸64の手動回転を可能にすると共に、図23の状態下で、前進ギヤ87の動力を各ギヤ100・97を介して各出力軸63・92に伝え、圃場間の路上移動などの高速の移動速度で前後輪6・8を前進駆動する。
【0024】
さらに、図11のように、PTO変速軸101及びPTO変速機構102を介してPTO変速ギヤ93の動力をPTO出力軸64に伝え、株間変速自在に植付部15を駆動すると共に、ミッションケース4に内設させるチェン103を介してPTO出力軸64に施肥出力軸104を連結させ、植付部15と同調させて施肥機38を駆動する。また、図12のように、ミッションケース4にオイルゲージ105を設けると共に、図13のように、前記各スライダ89・99を同一のシフトフォーク106に係止させ、変速レバー28の5位置切換によって前後進及び副変速(低高速)の切換を行う。また、図15乃至図17のように、油圧ポンプ85の斜板107に制御軸108を介して油圧変速操作アーム109を連結させ、該アーム109にロッド110を介して変速ペダル31を連結させると共に、ペダル31の足踏み解除によってペダル31を自動的に停止(速度ゼロ)位置に復帰動作させるバネ111を前記アーム109に連結させ、また定速作動部材であるオイルダンパ112を前記アーム109に連結させ、踏み込んでいたペダル31から足を離したとき、オイルダンパ112の抵抗とバネ111の復動力によりペダル31が緩やかな略一定速度で戻って除々に低速になる動作を行わせる。なお、オイルダンパ112に代え、ガススプリングなどによって定速作動部材を形成してもよい。
【0025】
さらに、図24のように、前記ペダル31から足を離している状態でバネ111によってペダル31が停止(速度ゼロ)位置に戻っているとき、サンギヤ78は最高回転で時計回りに逆転してプラネタリギヤ80を反時計回りに自転させる動作を行わせると同時に、また伝達ギヤ74によってキャリヤギヤ79を回転させることにより、プラネタリギヤ80を時計方向に公転させて反時計回りに自転させる動作を行わせ、リングギヤ82の回転をゼロにし、合成出力軸84を停止維持する。また、ペダル31をバネ111に抗して中位置(中速域)に足で踏んだとき、サンギヤ78は停止し、伝達ギヤ74によってキャリヤギヤ79を回転させ、プラネタリギヤ80を時計方向に自転させ乍ら時計方向に公転させ、伝達ギヤ74のギヤ動力により合成出力軸84を回転させる。また、ペダル31を最大に踏み込んだとき、サンギヤ78は最高回転で反時計回りに正転し、プラネタリギヤ80を時計方向に自転させ乍ら伝達ギヤ74でキャリヤギヤ79を回転させることによって時計方向に公転させ、サンギヤ78からの油圧変速力と伝達ギヤ74動力を加算して合成出力軸84を回転させるもので、図25のように、エンジン2動力を伝達ギヤ74と油圧変速機構57とに伝えて遊星ギヤ機構83により合成して出力させ、ミッションケース4で前後進切換とPTO変速を行い、後進、低速前進(圃場植付走行)、高速前進(路上移動走行)の各動作を行わせる。
【0026】
そして、例えば、一般的な入力動力100に対して、ギヤ74の損失が2で、油圧変速の損失が30の条件下において、図26のように、低速で走行時、エンジン2の入力動力を100とし、油圧伝達動力を50にした場合、油圧伝達動力の50がポンプ軸58に戻ってギヤ74側の伝達動力が150になると、ギヤ74の損失が3で、油圧変速機構57の損失が15となり、出力動力が82の割合で得られる。また、図27のように、前記油圧変速機構57の伝達動力をゼロにする中速で走行時、ギヤ74側の伝達動力が100になり、ギヤ74の損失が2となり、出力動力が98の割合で得られる。また、図28のように、高速で走行時、油圧伝達動力が40で、ギヤ74側の伝達動力が60の場合、ギヤ74の損失が1で、油圧変速機構57の損失が12となり、出力動力が87の割合で得られるもので、例えば、図29のように、油圧変速操作アーム109の角度を−1乃至0乃至1に変化させることにより、モータ軸77が−1000乃至0乃至1000回転になるようにし、図30のように、前記アーム109の角度に関係なくギヤ74側を1000回転させた場合、図31のように、前記アーム109の角度に対して合成出力軸84が0乃至2000回転になるように、ギヤ74・79及び遊星ギヤ機構83を組成する。
【0027】
また、前記アーム109の全制御範囲を−1乃至0乃至1としたとき、図18に示す如く、前記アーム109の低速(ゼロ速度)側及び高速側の制御動作をボルト型低速及び高速ストッパ113・114によって規制し、図32のように、前記各ストッパ113・114によって調節自在な実際のアーム109の操作範囲を−0.8乃至0.6にして、0乃至1.4m/sの作業速度を得ることにより、油圧変速機構57の組立誤差などによって生じる出力特性のバラツキに対して前記各ストッパ113・114により調整すると共に、例えば前記アーム109の−1乃至−0.8の位置を調整域とし、速度をゼロにすることができ、仮りにアーム109が−1でも速度がゼロにならない不具合をなくしている。図33及び図34のように、一般的な作業速度において、油圧変速機構57とギヤ74側の動力分担比が60パーセント以上にし、油圧変速機構57の有効動力に対し、ギヤ74側の有効動力の割合を大きくし、湿田での走破性を向上させ、湿田での作業能率を向上させ、また耕盤の段差に対して余裕の脱出能力を持たせる。
【0028】
上記から明らかなように、エンジン2の駆動力を伝える油圧変速機構57と伝達ギヤ74を設け、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力を合成して変速出力を形成し、前記伝達ギヤ74を用いて高い動力伝達効率の出力を得、前記油圧変速機構57を用いてゼロ発進可能な無段変速の出力を得、簡単な変速操作で状況に応じた速度調節を行い、変速機能の向上並びに取扱い操作性の向上などを図ると共に、油圧変速機構57の正転または逆転の各出力により、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力を合成して変速出力する合成出力軸84を一方向に回転させ、ゼロ発進時の出力トルクを容易に確保し、微速走行性能を容易に向上させ、しかも作業速度で伝達ギヤ74の高い動力伝達効率の出力を有効に利用し、泥土路面での作業能率の向上などを図る。
【0029】
また、0乃至最大車速の中間の伝達速度になる減速比に伝達ギヤ74を形成し、ゼロ発進可能な無段変速の操作を行わせ乍ら、高い動力伝達効率の伝達ギヤ74の出力によって一定の速度を維持する連続作業を行い、走行性能の向上並びに作業能率の向上などを図ると共に、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力の割合を、発進時に略等しくし、発進に必要な大きな出力トルクを確保し乍ら、無段変速の操作によりゼロ発進並びに微速移動の各動作をスムーズに行わせ、例えば圃場または運搬トラックの荷台などへの出入或いは畦越え走行などの超低速の走行性の向上を図る。
【0030】
また、発進時以外の低速乃至高速走行のとき、油圧変速機構57に対して伝達ギヤ74の出力割合を大きくし、高い動力伝達効率の伝達ギヤ74の出力によって一定の速度を維持する連続作業を行い、走行性能の向上並びに作業能率の向上などを図ると共に、0乃至最大車速の中間以上で油圧変速機構57の正逆転の切換を行い、ゼロ発進時の出力トルクを確保し、微速走行性能を向上させ、しかも作業速度で伝達ギヤ74の高い動力伝達効率の出力を有効に利用し、泥土路面での作業能率の向上などを図る。
【0031】
また、伝達ギヤ74の伝動比率が全体の半分以上のときを作業速度にし、高い動力伝達効率の伝達ギヤ74の出力によって一定の速度を維持する連続作業を行い、走行性能の向上並びに作業能率の向上などを図ると共に、0乃至最大車速の間で、油圧変速機構57の逆転出力域を、正転出力域よりも大きくし、ゼロ発進及び微速走行の性能を向上させ、しかも作業速度で伝達ギヤ74の高い動力伝達効率の出力を有効に利用し、泥土路面での作業能率の向上などを図る。
【0032】
また、エンジン2の駆動力を油圧変速機構57のポンプ軸58に入力させ、油圧変速機構57のモータ軸77と、前記ポンプ軸58に連結させる伝達ギヤ74とを、遊星ギヤ機構83を介して合成出力軸84に連結させ、油圧伝動と伝達ギヤ74伝動を合成して出力させる作業車において、油圧変速機構57の変速可能範囲で、合成出力軸84を一方向に回転させるように、伝達ギヤ74及び遊星ギヤ機構83を設け、ゼロ発進可能な無段変速と高い動力伝達効率を、簡単な油圧変速とギヤ組成とで達成し、走行性能及び変速操作性の向上などを図ると共に、油圧変速機構57の油圧変速操作アーム109によって合成出力軸84の回転を調節し、前記操作アーム109の低速出力側の最大操作位置よりも高速出力側にずらせて合成出力軸84のゼロ回転位置を設定し、油圧変速機構57の出力特性または変速操作機構の組立誤差などに対し、操作アーム109の最低速(ゼロ速度)位置と合成出力軸84のゼロ回転位置とにずれが生じても、操作アーム109を最低速に操作したときに合成出力軸84が回転する不具合をなくす。
【0033】
また、油圧変速機構57の出力制御を、自動的に復動させるペダル31の一方向操作で行い、前記ペダル31の足踏み操作により油圧変速機構57を無段変速動作させ、両手による操向ハンドル14操作並びに自由自在な速度調節を行い、例えば一方の手で操向ハンドル14を操作し乍らもう一方の手で変速レバーを操作する従来の煩わしい運転を不要にし、操舵及び変速操作性の向上などを図ると共に、前後進切換用のギヤ87・88及びPTO出力用のギヤ93を、合成出力軸84の出力側に設け、合成出力軸84の入力側をクラッチ等で動力切断することなく、合成出力軸84をゼロ回転にするだけで前記ギヤ87・88・93の切換を行い、エンジン2の出力を断続させるクラッチ等を不要にし、前後進操作またはPTO変速などを行い、しかも前記各ギヤ87・88・93を近接させて前後進切換とPTO変速を同一の操作機構を兼用して行い、かつ前記各ギヤ87・88・93の設置構造のコンパクト化及び簡略化などを図る。
【0034】
以上から明らかなように、エンジン2の駆動力を伝える油圧変速機構57と伝達ギヤ74を設け、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力を合成して変速出力を形成する作業車において、油圧変速機構57の正転または逆転の各出力により、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力を合成して変速出力する合成出力軸84を一方向に回転させると共に、油圧変速機構57の低速側の最大制御位置よりも高速側の出力位置で、油圧変速機構57と伝達ギヤ74側との合成出力をゼロにするもので、ゼロ発進時の出力トルクを容易に確保でき、微速走行性能を容易に向上でき、しかも作業速度で伝達ギヤ74の高い動力伝達効率の出力を有効に利用でき、泥土路面での作業能率の向上などを容易に図ることができると共に、油圧変速機構57の出力特性または変速操作機構の組立誤差などに対し、油圧変速操作の停止(ゼロ速度)位置と合成出力軸84のゼロ回転位置とにずれが生じても、油圧変速操作109を停止にしたときに合成出力軸84が回転して前後進する不具合を容易になくすことができるものである。
【0035】
また、エンジン2の駆動力を油圧変速機構57のポンプ軸58に入力させ、油圧変速機構57のモータ軸77と、前記ポンプ軸58に連結させる伝達ギヤ74とを、遊星ギヤ機構83を介して合成出力軸84に連結させ、油圧伝動と伝達ギヤ74伝動を合成して出力させる作業車において、油圧変速機構57の変速可能範囲で、合成出力軸84を一方向に回転させるように、伝達ギヤ74及び遊星ギヤ機構83を設けたもので、ゼロ発進可能な無段変速と高い動力伝達効率を、簡単な油圧変速とギヤ組成とで容易に達成でき、走行性能及び変速操作性の向上などを容易に図ることができるものである。
【0036】
また、油圧変速機構57の油圧変速操作アーム109によって合成出力軸84の回転を調節するもので、前記操作アーム109の低速出力側の最大操作位置よりも高速出力側にずらせて合成出力軸84のゼロ回転位置を設定でき、油圧変速機構57の出力特性または変速操作機構の組立誤差などに対し、操作アーム109の最低速(ゼロ速度)位置と合成出力軸84のゼロ回転位置とにずれが生じても、操作アーム109を最低速に操作したときに合成出力軸84が回転する不具合を容易になくすことができるものである。
【0037】
また、油圧変速機構57の出力制御を、ペダル31の一方向操作で行うもので、前記ペダル31の足踏み操作により油圧変速機構57を無段変速動作させることができ、両手による操向ハンドル14操作並びに自由自在な速度調節を容易に行うことができ、例えば一方の手で操向ハンドル14を操作し乍らもう一方の手で変速レバーを操作する従来の煩わしい運転を不要にし、操舵及び変速操作性の向上などを容易に図ることができるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 走行車
2 エンジン
4 ミッションケース
57 油圧変速機構
63 走行出力軸
83 遊星ギヤ機構
84 合成出力軸
85 油圧ポンプ
86 油圧モータ
87 前進ギヤ
88 後進ギヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば苗載台及び苗植付爪を備えて連続的に苗植作業を行う田植機またはトラクタまたはコンバインまたは土木建機などの作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動力を油圧変速機構のポンプ軸に入力させ、油圧変速機構のモータ軸と、前記ポンプ軸に連結させるギヤとを、遊星ギヤ機構を介して合成出力軸に連結させ、油圧変速機構の変速可能範囲で、合成出力軸を一方向に回転させる遊星ギヤ機構を設ける技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−60202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ギヤミッションでは高い動力伝達効率となるが、有段変速により操作性を向上し得ない不具合がある。また、油圧式無段変速機構は初速がゼロから発進させるゼロ発進可能な無段変速により優れた操作性を得られるが、動力伝達効率に限界があり、低速での動力損失が大きくなる不具合がある。また、Vベルト及びプーリを用いたベルト式無段変速機構は高効率の無段変速を行えるが、初速がゼロから発進させるゼロ発進を行えない不具合がある。例えば田植機などにおいて、湿田(泥土路面)での走破性、スムーズな圃場の出入、ショックの少ない変速動作、クラッチが不要な発進動作、作業または田面などの状況に適応した速度調節などが要求され、高い動力伝達効率、及びゼロ発進可能な無段変速、及び簡単な変速操作が望まれている。さらに、油圧変速機構の出力とギヤ伝動出力とを遊星ギヤ機構のデフ作用により合成出力してエンジン出力を変速伝達させることにより、高い動力伝達効率並びにゼロ発進可能な無段変速を得られるが、遊星ギヤ機構からの合成出力が停止(ゼロ)を挾んで前後進(正逆転)できるように速度設定した場合、前記合成出力の逆転側の変速領域を小さくして後進出力させ、前記合成出力の正転側の変速領域を大きくして前進出力させ、一般の作業速度において、油圧変速出力が高効率になるように構成することができるが、例えば油圧変速機構の油の粘性が温度(連続運転または気温)などにより変化すると、合成出力の停止(ゼロ)位置が後進側または前進側に移動し、変速操作位置が停止になっているときに前進または後進の出力が生じる不具合がある。そこで、合成出力の停止(ゼロ)位置を自動的に調節するための電気的な制御が必要になり、構造が複雑で製造コストが高くなる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
然るに、請求項1に係る発明は、エンジンを搭載した走行車と、前記エンジンからの伝達動力を変速する油圧ポンプ・油圧モータ式の油圧変速機構と、前記エンジンからの伝達動力と前記油圧変速機構の変速出力とを合成する遊星ギヤ機構と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力として伝達される合成出力軸を有するミッションケースとを備え、前記合成出力軸における一方向の回転力を走行出力軸に伝達する作業車において、前記油圧変速機構の変速出力を出力制御することで前記合成出力軸の回転数を変化させるように構成する一方、前記合成出力軸における一方向の回転力を正転出力または逆転出力に切換えるギヤ機構を設けたものである。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、走行車に連結する植付部と、前記植付部を作動するPTO出力軸と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力としてPTO出力軸に伝達される作業車であって、前記油圧変速機構の変速出力が逆転方向の出力制御状態で前記エンジンからの正転回転数と前記油圧変速機構の逆転回転数とが一致する一方、前記合成出力軸には、前記合成出力軸における一方向の回転力を前進、中立、後進の出力に切換えて前記走行出力軸に伝達する前進ギヤ・後進ギヤ機構を備えているものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンを搭載した走行車と、前記エンジンからの伝達動力を変速する油圧ポンプ・油圧モータ式の油圧変速機構と、前記エンジンからの伝達動力と前記油圧変速機構の変速出力とを合成する遊星ギヤ機構と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力として伝達される合成出力軸を有するミッションケースとを備え、前記合成出力軸における一方向の回転力を走行出力軸に伝達する作業車において、前記油圧変速機構の変速出力を出力制御することで前記合成出力軸の回転数を変化させるように構成する一方、前記合成出力軸における一方向の回転力を正転出力または逆転出力に切換えるギヤ機構を設けたものであるから、ゼロ発進時の出力トルクを容易に確保でき、微速走行性能を容易に向上でき、しかも作業速度で伝達ギヤの高い動力伝達効率の出力を有効に利用でき、泥土路面での作業能率などを向上できる。油圧変速機構の出力特性または変速操作機構の組立誤差などに対し、油圧変速操作の停止(ゼロ速度)位置と合成出力軸のゼロ回転位置とにずれが生じても、油圧変速操作を停止にしたときに合成出力軸が回転して前後進する不具合を容易になくすことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、走行車に連結する植付部と、前記植付部を作動するPTO出力軸と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力としてPTO出力軸に伝達される作業車であって、前記油圧変速機構の変速出力が逆転方向の出力制御状態で前記エンジンからの正転回転数と前記油圧変速機構の逆転回転数とが一致する一方、前記合成出力軸には、前記合成出力軸における一方向の回転力を前進、中立、後進の出力に切換えて前記走行出力軸に伝達する前進ギヤ・後進ギヤ機構を備えているものであるから、ゼロ発進可能な無段変速と高い動力伝達効率を、簡単な油圧変速とギヤ組成とで容易に達成でき、走行性能及び変速操作性などを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】田植機の全体側面図。
【図2】田植機の全体平面図。
【図3】走行車体の側面図。
【図4】走行車体の平面図。
【図5】車体フレームの側面図。
【図6】駆動部の側面説明図。
【図7】駆動部の平面説明図。
【図8】サイドクラッチ操作系の側面説明図。
【図9】サイドクラッチ操作系の平面説明図。
【図10】ミッションケースの断面図。
【図11】同拡大図。
【図12】遊星ギヤ機構の説明図。
【図13】ミッションケースの部分図。
【図14】遊星ギヤ機構の断面図。
【図15】変速ペダル部の前方からの斜視図。
【図16】変速ペダル部の後側上方からの斜視図。
【図17】ミッションケースのギヤ配列説明図。
【図18】油圧変速操作アーム部の側面図。
【図19】ギヤ変速の中立状態の説明図。
【図20】ギヤ変速の後進状態の説明図。
【図21】ギヤ変速の植付走行状態の説明図。
【図22】ギヤ変速のPTO空転状態の説明図。
【図23】ギヤ変速の移動走行状態の説明図。
【図24】遊星ギヤ機構の回転説明図。
【図25】エンジンの出力説明図。
【図26】低速走行のエンジン出力説明図。
【図27】中速走行のエンジン出力説明図。
【図28】高速走行のエンジン出力説明図。
【図29】油圧変速機構の出力説明図。
【図30】伝達ギヤ側の出力説明図。
【図31】合成出力軸の出力説明図。
【図32】変速ペダルの変速説明図。
【図33】油圧変速出力とギヤ変速出力の相関図。
【図34】図33の出力と油圧損失及びギヤ損失の相関図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1は全体の側面図、図2は同平面図、図3は車体フレームの側面図、図4は同平面図を示し、図中1は作業者が搭乗する走行車であり、エンジン2を車体フレーム3に搭載させ、ミッションケース4側方にフロントアクスルケース5を介して水田走行用前輪6を支持させると共に、前記ミッションケース4後方のリヤアクスルケース7に水田走行用後輪8を支持させる。そして前記エンジン2等を覆うボンネット9両側に予備苗載台10を取付けると共に、作業者が搭乗する車体カバー11によって前記ミッションケース4等を覆い、前記車体カバー11後側上方にシートフレーム12を介して運転席13を取付け、その運転席13の前方で前記ボンネット9後部に操向ハンドル14を設ける。
【0011】
また、図中15は5条植え用の苗載台16並びに複数の苗植付爪17などを具備する植付部であり、前高後低の合成樹脂製の前傾式苗載台16を下部レール18及びガイドレール19を介して植付ケース20に左右往復摺動自在に支持させると共に、一方向に等速回転させるロータリケース21を前記植付ケース20に支持させ、該ケース21の回転軸芯を中心に対称位置に一対の爪ケース22・22を配設し、その爪ケース22・22先端に苗植付爪17・17を取付ける。
【0012】
また、前記植付ケース20前側のヒッチブラケット23をトップリンク24及びロワーリンク25を含む昇降リンク機構26を介し走行車1後側に連結させ、前記リンク機構26を介して植付部15を昇降させる油圧昇降シリンダ27をロワーリンク25に連結させ、前記前後輪6・8を走行駆動して移動すると同時に、左右に往復摺動させる苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取出し、連続的に苗を植える田植作業を行うように構成する。
【0013】
また、図中28は主変速レバー、29は植付昇降レバー、30はブレーキペダル、31は変速ペダル、32はデフロックペダル、33は感度調節レバー、34は植付部15任意高さ位置に停止させるストップレバー、35はユニットクラッチレバー35であり、操向ハンドル14位置近傍に変速及び昇降レバー28・29やブレーキ及び変速ペダル30・31を配設すると共に、運転席13位置近傍に感度調節及びストップ及びユニットクラッチの各レバー33・34・35やデフロックペダル32を配設している。
【0014】
さらに、図中36は1条分均平用センタフロート、37は2条分均平用サイドフロート、38は肥料ホッパ39内の肥料を送風機40の送風力でフレキシブル形搬送ホース41を介しフロート36・37の側条作溝器42に排出させる5条用側条施肥機である。
図3乃至図5に示す如く、前記車体フレーム3は前部フレーム43と中間フレーム44と後部フレーム45とに3分割させ、左右一対の前部フレーム43にエンジン2を、左右一対の中間フレーム44にフロントアクスルケース5を、左右一対の後部フレーム45にリヤアクスルケース7及びエンジン2に燃料を供給する燃料タンク46などを設けるもので、前部フレーム43の前側と中間に前フレーム47とベースフレーム48を連結させて平面視4角枠状に形成し、固定ブラケット49とベースフレーム48に防振ゴムを介しエンジン2を上載させる。
【0015】
また、前記後部フレーム45の中間立上り部50間をパイプフレーム51と門形フレーム52とで略平行に連結させると共に、リヤアクスルケース7に左右下端を固設する門形フレーム53の後端を一体連結させ、前記の左右の立上り部50間に燃料タンク46を配設する。
【0016】
さらに、前部フレーム43後端と後部フレーム45前端に左右中間フレーム44の前後端をボルト54を介して取外し自在に固定させると共に、左右中間フレーム44の下面にボルト55を介して左右フロントアクスルケース5を取外し自在に固定させ、前記ミッションケース4に左右フロントアクスルケース5を接続固定させる。
【0017】
図6乃至図9に示す如く、前記ミッションケース4の前面左側にパワーステアリングケース56を設け、かつケース4の右側に無段油圧変速機構57を設け、油圧変速機構57の変速入力用ポンプ軸58を車体前方向に突出させ、エンジン2下側で前後方向の伝達軸59にポンプ軸58を連結させると共に、エンジン2の出力軸60に伝達ベルト61を介して前記伝達軸59を連結させ、エンジン2出力を油圧変速機構57に伝達する。
【0018】
また、前記ミッションケース4とリヤアクスルケース7を車体の前後方向の中心ライン上でパイプ製の連結フレーム62によって一体連結させ、ミッションケース4後方にリヤ出力軸63及びPTO出力軸64を突出させ、リヤアクスルケース7前方に突出させるリヤ入力軸65にリヤ伝達軸66を介し前記リヤ出力軸63を連結させ、走行出力軸63から左右の後輪8に動力を伝える。またリヤアクスルケース7上部の軸受67に設ける中介軸68に自在継手軸69を介して前記PTO出力軸64を連結させ、前記植付ケース20の入力軸に自在継手軸を介して中介軸68を連結させ、PTO出力軸64から植付部15に動力を伝える。
【0019】
さらに、図10乃至図19に示す如く、前記ミッションケース4は、本体胴部70と、前蓋部71と、後蓋部72を備え、前記胴部70の前後に各蓋部72を着脱自在にボルト固定させ、密閉箱形に形成すると共に、前記胴部70の内部を前後に分割する仕切り壁部73を設ける。また、前蓋部71前面に前記油圧変速機構57を取付け、ミッションケース4内に突出させるポンプ軸58に小径の伝達ギヤ74を係合軸支させ、伝達ギヤ74を前蓋部71にベアリング軸受し、後蓋部72後面に固定させるチャージポンプ75に伝達ギヤ74の動力をパイプ軸76を介して伝える。
【0020】
また、前記ミッションケース4内に突出させる油圧変速機構57のモータ軸77にサンギヤ78を係合軸支させ、サンギヤ78を前蓋部71にベアリング軸受すると共に、前記の小径の伝達ギヤ74に大径のキャリヤギヤ79を常に噛合させ、サンギヤ78のボス部にキャリヤギヤ79を遊転軸支させるもので、キャリヤギヤ79に3枚のプラネタリギヤ80を軸81を介して回転自在に設け、サンギヤ78にプラネタリギヤ80を噛合させると共に、プラネタリギヤ80に噛合させるリングギヤ82を設け、各ギヤ78・80・82によって遊星ギヤ機構83を形成する。
【0021】
また、前記サンギヤ78と後蓋部72に合成出力軸84の前後を回転自在に軸支させ、前記リングギヤ82を合成出力軸84に係合軸支させるもので、油圧変速機構57の油圧ポンプ85及び油圧モータ86の無段油圧変速出力である正逆回転出力と、伝達ギヤ74及びキャリヤギヤ79の減速回転出力(一方向の一定回転)とを、遊星ギヤ機構83のデフ作用によって合成し、ゼロ乃至最大速の一方向の回転力として合成出力軸84に伝える。
【0022】
さらに、前記合成出力軸84に前進ギヤ87と後進ギヤ88を遊転軸支させ、合成出力軸84に各ギヤ87・88をスライダ89によって選択的に係合させ、前進または中立または後進の出力に切換えると共に、仕切り壁部73と後蓋部72に前記リヤ出力軸63をベアリング軸受する。また、差動ギヤ90を介して左右の前車軸91に動力を伝えるフロント出力軸92と、PTO変速ギヤ93を係合軸支させるカウンタ軸94を設け、図20の状態下で、前記のリヤ及びフロント出力軸63・92に出力ギヤ95・96を介して後進ギヤ88の後進動力を伝え、前後輪6・8を後進駆動させると共に、リヤ出力軸63に移動ギヤ97及び植付ギヤ98を遊転軸支させ、副変速スライダ99によって各ギヤ97・98をリヤ出力軸63に選択的に係合させる。
【0023】
また、カウンタ軸94の高速用ギヤ100を介して前進ギヤ87に移動ギヤ97を常に噛合させると共に、カウンタ軸94の低速用のPTO変速ギヤ93に植付ギヤ98を常に噛合させ、図21の状態下で、各ギヤ100・93・98を介して前進ギヤ87の動力を前記各出力軸63・92に伝え、前後輪6・8を苗の植付け作業速度で前進駆動する。また、図22の状態下で、移動ギヤ97と植付ギヤ98の両方が遊転状態となり、植付爪17などを作業者が手で回転させて詰った苗の除去などを行えるように、PTO出力軸64の手動回転を可能にすると共に、図23の状態下で、前進ギヤ87の動力を各ギヤ100・97を介して各出力軸63・92に伝え、圃場間の路上移動などの高速の移動速度で前後輪6・8を前進駆動する。
【0024】
さらに、図11のように、PTO変速軸101及びPTO変速機構102を介してPTO変速ギヤ93の動力をPTO出力軸64に伝え、株間変速自在に植付部15を駆動すると共に、ミッションケース4に内設させるチェン103を介してPTO出力軸64に施肥出力軸104を連結させ、植付部15と同調させて施肥機38を駆動する。また、図12のように、ミッションケース4にオイルゲージ105を設けると共に、図13のように、前記各スライダ89・99を同一のシフトフォーク106に係止させ、変速レバー28の5位置切換によって前後進及び副変速(低高速)の切換を行う。また、図15乃至図17のように、油圧ポンプ85の斜板107に制御軸108を介して油圧変速操作アーム109を連結させ、該アーム109にロッド110を介して変速ペダル31を連結させると共に、ペダル31の足踏み解除によってペダル31を自動的に停止(速度ゼロ)位置に復帰動作させるバネ111を前記アーム109に連結させ、また定速作動部材であるオイルダンパ112を前記アーム109に連結させ、踏み込んでいたペダル31から足を離したとき、オイルダンパ112の抵抗とバネ111の復動力によりペダル31が緩やかな略一定速度で戻って除々に低速になる動作を行わせる。なお、オイルダンパ112に代え、ガススプリングなどによって定速作動部材を形成してもよい。
【0025】
さらに、図24のように、前記ペダル31から足を離している状態でバネ111によってペダル31が停止(速度ゼロ)位置に戻っているとき、サンギヤ78は最高回転で時計回りに逆転してプラネタリギヤ80を反時計回りに自転させる動作を行わせると同時に、また伝達ギヤ74によってキャリヤギヤ79を回転させることにより、プラネタリギヤ80を時計方向に公転させて反時計回りに自転させる動作を行わせ、リングギヤ82の回転をゼロにし、合成出力軸84を停止維持する。また、ペダル31をバネ111に抗して中位置(中速域)に足で踏んだとき、サンギヤ78は停止し、伝達ギヤ74によってキャリヤギヤ79を回転させ、プラネタリギヤ80を時計方向に自転させ乍ら時計方向に公転させ、伝達ギヤ74のギヤ動力により合成出力軸84を回転させる。また、ペダル31を最大に踏み込んだとき、サンギヤ78は最高回転で反時計回りに正転し、プラネタリギヤ80を時計方向に自転させ乍ら伝達ギヤ74でキャリヤギヤ79を回転させることによって時計方向に公転させ、サンギヤ78からの油圧変速力と伝達ギヤ74動力を加算して合成出力軸84を回転させるもので、図25のように、エンジン2動力を伝達ギヤ74と油圧変速機構57とに伝えて遊星ギヤ機構83により合成して出力させ、ミッションケース4で前後進切換とPTO変速を行い、後進、低速前進(圃場植付走行)、高速前進(路上移動走行)の各動作を行わせる。
【0026】
そして、例えば、一般的な入力動力100に対して、ギヤ74の損失が2で、油圧変速の損失が30の条件下において、図26のように、低速で走行時、エンジン2の入力動力を100とし、油圧伝達動力を50にした場合、油圧伝達動力の50がポンプ軸58に戻ってギヤ74側の伝達動力が150になると、ギヤ74の損失が3で、油圧変速機構57の損失が15となり、出力動力が82の割合で得られる。また、図27のように、前記油圧変速機構57の伝達動力をゼロにする中速で走行時、ギヤ74側の伝達動力が100になり、ギヤ74の損失が2となり、出力動力が98の割合で得られる。また、図28のように、高速で走行時、油圧伝達動力が40で、ギヤ74側の伝達動力が60の場合、ギヤ74の損失が1で、油圧変速機構57の損失が12となり、出力動力が87の割合で得られるもので、例えば、図29のように、油圧変速操作アーム109の角度を−1乃至0乃至1に変化させることにより、モータ軸77が−1000乃至0乃至1000回転になるようにし、図30のように、前記アーム109の角度に関係なくギヤ74側を1000回転させた場合、図31のように、前記アーム109の角度に対して合成出力軸84が0乃至2000回転になるように、ギヤ74・79及び遊星ギヤ機構83を組成する。
【0027】
また、前記アーム109の全制御範囲を−1乃至0乃至1としたとき、図18に示す如く、前記アーム109の低速(ゼロ速度)側及び高速側の制御動作をボルト型低速及び高速ストッパ113・114によって規制し、図32のように、前記各ストッパ113・114によって調節自在な実際のアーム109の操作範囲を−0.8乃至0.6にして、0乃至1.4m/sの作業速度を得ることにより、油圧変速機構57の組立誤差などによって生じる出力特性のバラツキに対して前記各ストッパ113・114により調整すると共に、例えば前記アーム109の−1乃至−0.8の位置を調整域とし、速度をゼロにすることができ、仮りにアーム109が−1でも速度がゼロにならない不具合をなくしている。図33及び図34のように、一般的な作業速度において、油圧変速機構57とギヤ74側の動力分担比が60パーセント以上にし、油圧変速機構57の有効動力に対し、ギヤ74側の有効動力の割合を大きくし、湿田での走破性を向上させ、湿田での作業能率を向上させ、また耕盤の段差に対して余裕の脱出能力を持たせる。
【0028】
上記から明らかなように、エンジン2の駆動力を伝える油圧変速機構57と伝達ギヤ74を設け、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力を合成して変速出力を形成し、前記伝達ギヤ74を用いて高い動力伝達効率の出力を得、前記油圧変速機構57を用いてゼロ発進可能な無段変速の出力を得、簡単な変速操作で状況に応じた速度調節を行い、変速機能の向上並びに取扱い操作性の向上などを図ると共に、油圧変速機構57の正転または逆転の各出力により、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力を合成して変速出力する合成出力軸84を一方向に回転させ、ゼロ発進時の出力トルクを容易に確保し、微速走行性能を容易に向上させ、しかも作業速度で伝達ギヤ74の高い動力伝達効率の出力を有効に利用し、泥土路面での作業能率の向上などを図る。
【0029】
また、0乃至最大車速の中間の伝達速度になる減速比に伝達ギヤ74を形成し、ゼロ発進可能な無段変速の操作を行わせ乍ら、高い動力伝達効率の伝達ギヤ74の出力によって一定の速度を維持する連続作業を行い、走行性能の向上並びに作業能率の向上などを図ると共に、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力の割合を、発進時に略等しくし、発進に必要な大きな出力トルクを確保し乍ら、無段変速の操作によりゼロ発進並びに微速移動の各動作をスムーズに行わせ、例えば圃場または運搬トラックの荷台などへの出入或いは畦越え走行などの超低速の走行性の向上を図る。
【0030】
また、発進時以外の低速乃至高速走行のとき、油圧変速機構57に対して伝達ギヤ74の出力割合を大きくし、高い動力伝達効率の伝達ギヤ74の出力によって一定の速度を維持する連続作業を行い、走行性能の向上並びに作業能率の向上などを図ると共に、0乃至最大車速の中間以上で油圧変速機構57の正逆転の切換を行い、ゼロ発進時の出力トルクを確保し、微速走行性能を向上させ、しかも作業速度で伝達ギヤ74の高い動力伝達効率の出力を有効に利用し、泥土路面での作業能率の向上などを図る。
【0031】
また、伝達ギヤ74の伝動比率が全体の半分以上のときを作業速度にし、高い動力伝達効率の伝達ギヤ74の出力によって一定の速度を維持する連続作業を行い、走行性能の向上並びに作業能率の向上などを図ると共に、0乃至最大車速の間で、油圧変速機構57の逆転出力域を、正転出力域よりも大きくし、ゼロ発進及び微速走行の性能を向上させ、しかも作業速度で伝達ギヤ74の高い動力伝達効率の出力を有効に利用し、泥土路面での作業能率の向上などを図る。
【0032】
また、エンジン2の駆動力を油圧変速機構57のポンプ軸58に入力させ、油圧変速機構57のモータ軸77と、前記ポンプ軸58に連結させる伝達ギヤ74とを、遊星ギヤ機構83を介して合成出力軸84に連結させ、油圧伝動と伝達ギヤ74伝動を合成して出力させる作業車において、油圧変速機構57の変速可能範囲で、合成出力軸84を一方向に回転させるように、伝達ギヤ74及び遊星ギヤ機構83を設け、ゼロ発進可能な無段変速と高い動力伝達効率を、簡単な油圧変速とギヤ組成とで達成し、走行性能及び変速操作性の向上などを図ると共に、油圧変速機構57の油圧変速操作アーム109によって合成出力軸84の回転を調節し、前記操作アーム109の低速出力側の最大操作位置よりも高速出力側にずらせて合成出力軸84のゼロ回転位置を設定し、油圧変速機構57の出力特性または変速操作機構の組立誤差などに対し、操作アーム109の最低速(ゼロ速度)位置と合成出力軸84のゼロ回転位置とにずれが生じても、操作アーム109を最低速に操作したときに合成出力軸84が回転する不具合をなくす。
【0033】
また、油圧変速機構57の出力制御を、自動的に復動させるペダル31の一方向操作で行い、前記ペダル31の足踏み操作により油圧変速機構57を無段変速動作させ、両手による操向ハンドル14操作並びに自由自在な速度調節を行い、例えば一方の手で操向ハンドル14を操作し乍らもう一方の手で変速レバーを操作する従来の煩わしい運転を不要にし、操舵及び変速操作性の向上などを図ると共に、前後進切換用のギヤ87・88及びPTO出力用のギヤ93を、合成出力軸84の出力側に設け、合成出力軸84の入力側をクラッチ等で動力切断することなく、合成出力軸84をゼロ回転にするだけで前記ギヤ87・88・93の切換を行い、エンジン2の出力を断続させるクラッチ等を不要にし、前後進操作またはPTO変速などを行い、しかも前記各ギヤ87・88・93を近接させて前後進切換とPTO変速を同一の操作機構を兼用して行い、かつ前記各ギヤ87・88・93の設置構造のコンパクト化及び簡略化などを図る。
【0034】
以上から明らかなように、エンジン2の駆動力を伝える油圧変速機構57と伝達ギヤ74を設け、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力を合成して変速出力を形成する作業車において、油圧変速機構57の正転または逆転の各出力により、油圧変速機構57と伝達ギヤ74の各出力を合成して変速出力する合成出力軸84を一方向に回転させると共に、油圧変速機構57の低速側の最大制御位置よりも高速側の出力位置で、油圧変速機構57と伝達ギヤ74側との合成出力をゼロにするもので、ゼロ発進時の出力トルクを容易に確保でき、微速走行性能を容易に向上でき、しかも作業速度で伝達ギヤ74の高い動力伝達効率の出力を有効に利用でき、泥土路面での作業能率の向上などを容易に図ることができると共に、油圧変速機構57の出力特性または変速操作機構の組立誤差などに対し、油圧変速操作の停止(ゼロ速度)位置と合成出力軸84のゼロ回転位置とにずれが生じても、油圧変速操作109を停止にしたときに合成出力軸84が回転して前後進する不具合を容易になくすことができるものである。
【0035】
また、エンジン2の駆動力を油圧変速機構57のポンプ軸58に入力させ、油圧変速機構57のモータ軸77と、前記ポンプ軸58に連結させる伝達ギヤ74とを、遊星ギヤ機構83を介して合成出力軸84に連結させ、油圧伝動と伝達ギヤ74伝動を合成して出力させる作業車において、油圧変速機構57の変速可能範囲で、合成出力軸84を一方向に回転させるように、伝達ギヤ74及び遊星ギヤ機構83を設けたもので、ゼロ発進可能な無段変速と高い動力伝達効率を、簡単な油圧変速とギヤ組成とで容易に達成でき、走行性能及び変速操作性の向上などを容易に図ることができるものである。
【0036】
また、油圧変速機構57の油圧変速操作アーム109によって合成出力軸84の回転を調節するもので、前記操作アーム109の低速出力側の最大操作位置よりも高速出力側にずらせて合成出力軸84のゼロ回転位置を設定でき、油圧変速機構57の出力特性または変速操作機構の組立誤差などに対し、操作アーム109の最低速(ゼロ速度)位置と合成出力軸84のゼロ回転位置とにずれが生じても、操作アーム109を最低速に操作したときに合成出力軸84が回転する不具合を容易になくすことができるものである。
【0037】
また、油圧変速機構57の出力制御を、ペダル31の一方向操作で行うもので、前記ペダル31の足踏み操作により油圧変速機構57を無段変速動作させることができ、両手による操向ハンドル14操作並びに自由自在な速度調節を容易に行うことができ、例えば一方の手で操向ハンドル14を操作し乍らもう一方の手で変速レバーを操作する従来の煩わしい運転を不要にし、操舵及び変速操作性の向上などを容易に図ることができるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 走行車
2 エンジン
4 ミッションケース
57 油圧変速機構
63 走行出力軸
83 遊星ギヤ機構
84 合成出力軸
85 油圧ポンプ
86 油圧モータ
87 前進ギヤ
88 後進ギヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行車と、前記エンジンからの伝達動力を変速する油圧ポンプ・油圧モータ式の油圧変速機構と、前記エンジンからの伝達動力と前記油圧変速機構の変速出力とを合成する遊星ギヤ機構と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力として伝達される合成出力軸を有するミッションケースとを備え、前記合成出力軸における一方向の回転力を走行出力軸に伝達する作業車において、
前記油圧変速機構の変速出力を出力制御することで前記合成出力軸の回転数を変化させるように構成する一方、前記合成出力軸における一方向の回転力を正転出力または逆転出力に切換えるギヤ機構を設けたことを特徴とする作業車。
【請求項2】
走行車に連結する植付部と、前記植付部を作動するPTO出力軸と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力としてPTO出力軸に伝達される作業車であって、
前記油圧変速機構の変速出力が逆転方向の出力制御状態で前記エンジンからの正転回転数と前記油圧変速機構の逆転回転数とが一致する一方、前記合成出力軸には、前記合成出力軸における一方向の回転力を前進、中立、後進の出力に切換えて前記走行出力軸に伝達する前進ギヤ・後進ギヤ機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項1】
エンジンを搭載した走行車と、前記エンジンからの伝達動力を変速する油圧ポンプ・油圧モータ式の油圧変速機構と、前記エンジンからの伝達動力と前記油圧変速機構の変速出力とを合成する遊星ギヤ機構と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力として伝達される合成出力軸を有するミッションケースとを備え、前記合成出力軸における一方向の回転力を走行出力軸に伝達する作業車において、
前記油圧変速機構の変速出力を出力制御することで前記合成出力軸の回転数を変化させるように構成する一方、前記合成出力軸における一方向の回転力を正転出力または逆転出力に切換えるギヤ機構を設けたことを特徴とする作業車。
【請求項2】
走行車に連結する植付部と、前記植付部を作動するPTO出力軸と、前記遊星ギヤ機構の合成出力が一方向の回転力としてPTO出力軸に伝達される作業車であって、
前記油圧変速機構の変速出力が逆転方向の出力制御状態で前記エンジンからの正転回転数と前記油圧変速機構の逆転回転数とが一致する一方、前記合成出力軸には、前記合成出力軸における一方向の回転力を前進、中立、後進の出力に切換えて前記走行出力軸に伝達する前進ギヤ・後進ギヤ機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2011−52833(P2011−52833A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276030(P2010−276030)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【分割の表示】特願2001−233360(P2001−233360)の分割
【原出願日】平成13年8月1日(2001.8.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【分割の表示】特願2001−233360(P2001−233360)の分割
【原出願日】平成13年8月1日(2001.8.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
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