説明

作物用キャップ及びキャップ固定串

【課題】水遣り作業が容易な作物用キャップを提供すること。また、苗床から抜け難く、風で吹き飛ばされないように作物用キャップを苗床に固定できるキャップ固定串を提供する。
【解決手段】横断面形状が略円形の周壁面11と、周壁面11の上端部から連続する天井面12とを透光性プラスチック材料でドーム型に一体成形し、天井面12に通気穴12aを形成した作物用キャップ10であって、天井面12の頂部近辺に通気穴12aを形成し、周壁面11と天井面12が屈曲部14を介して連続するように形成し、凸形態の天井面12の中央部を内側へ押し込むと天井面12が凹形態となり、凹形態の天井面12の中央部を外側へ押し込むと天井面12が凸形態となるように構成する。作物用キャップ10,10Aに風圧が作用しても、苗床22に打ち込んだ串片21aの凸部21cが、水遣りや降雨の後に乾燥して固まった苗床22の土に引っ掛かって苗床から抜けなくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野菜や果物の苗に被せて霜、強風、鳥などの害から苗を保護する作物用キャップ及び作物用キャップを苗床に固定するためのキャップ固定串に関する。
【背景技術】
【0002】
作物用キャップの一形式として、実開平2−57366号公報には、横断面形状が略円形の周壁面と、周壁面の上端部から連続し、湾曲して外側に膨出する天井面とを透光性プラスチック材料で一体成形し、天井面の略中央に多数の小径通気穴を形成し、周壁面の下端部にフランジ部を一体成形し、フランジ部に串穴を形成したドーム型の作物用キャップが開示されている。
また、特開2006−296366号には天井面の略中央に単一の通気穴を形成したドーム型の作物用キャップが開示されている。
【0003】
この種の作物用キャップは苗に被せられ、串穴に通したキャップ固定串を地面に打ち込むことにより、苗床に固定して使用される。
キャップ固定串は2本の串片と両串片上端部を連結する押さえ片からなる二股形状を有し、一方の串片を串穴を通して苗床に打ち込み、押さえ片でフランジ部を苗床に押さえ着けて作物用キャップが苗床に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−57366号公報
【特許文献2】特開2006−296366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作物用キャップを被せた苗に水遣りする際、ドーム型の天井面に多数の小径通気穴を形成した作物用キャップの場合、キャップ固定串を抜いて一々、作物用キャップを地面から取り外さなければならず、水遣り作業が煩わしい。一方、天井面に比較的径の大きな通気穴を形成した作物用キャップの場合、作物用キャップを地面から取り外さずに、ホースを通気穴に通して水遣りできる。しかしながら、多数の苗に水遣りする場合、多数の作物用キャップの通気穴に一々ホースを通さなければならず、やはり水遣り作業が煩わしい。
また、従来のキャップ固定串は、風圧で苗床から抜け易く、少し強い風が吹くと作物用キャップが吹き飛ばされてしまう。
本発明はかかる問題点に鑑み、水遣り作業が容易な作物用キャップを提供することを目的とする。
また、苗床から抜け難く、風で吹き飛ばされないように作物用キャップを苗床に固定できるキャップ固定串を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、横断面形状が略円形の周壁面と、周壁面の上端部から連続する天井面とを透光性プラスチック材料でドーム型に一体成形し、天井面に通気穴を形成した作物用キャップであって、
天井面の頂部近辺に通気穴を形成し、
周壁面と天井面が屈曲部を介して連続するように形成し、
屈曲部の屈曲変形により天井面が外側へ湾曲して膨出する凸形態と、内側へ湾曲して窪む凹形態の何れか一方の形態に択一的に保持され、
かつ凸形態の天井面の中央部を内側へ押し込むと天井面が凹形態となり、凹形態の天井面の中央部を外側へ押し込むと天井面が凸形態となるように構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、横断面形状が略円形の周壁面と、周壁面の上端部から連続する天井面とを透光性プラスチック材料でドーム型に一体成形し、天井面に通気穴を形成し、周壁面の下端部にフランジ部を形成し、フランジ部に串穴を形成した作物用キャップを苗床に固定するためのキャップ固定串であって、
2本の串片と両串片上端部を連結する押さえ片からなる二股形状を有し、
一方または両方の串片の下端部近辺に凸部を形成し、
一方の串片を串穴を通して苗床に打ち込み、押さえ片でフランジ部を苗床に押さえ着けて作物用キャップを苗床に固定するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のキャップ固定串において、針金を曲げ加工して前記キャップ固定串を形成し、前記凸部をプレス成型したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、ドーム型の作物用キャップの天井面を内側へ湾曲して窪む凹形態にすると、天井面が水の受け皿となり、かつ天井面の頂部近辺に形成した通気穴が導水穴となる。そのため、ホースを通気穴に通さなくても天井面にホースから水を注げば通気穴を通って作物用キャップの内部に流入し、苗に水が注がれる。また、天井面に降った雨水も通気穴から効率的に作物用キャップの内部に流入するので、水遣り作業が容易になる。
また、凹形態の天井面に小石等の重石を載せれば、強風時に作物用キャップが吹き飛ばされるのを防止できる。
一方、天井面を凸形態にすれば、地面から天井面までの高さが増大するので、苗の生育に伴い新芽が天井に接触して生育不良となるのを可及的に遅くできる。また、枯れ草等のゴミが天井面に滞留して透光性が低下するのを防止できる。
【0010】
請求項2に記載のキャップ固定串によれば、作物用キャップに風圧が作用しても、苗床に打ち込んだ串片の凸部が、水遣りや降雨の後に乾燥して固まった苗床の土に引っ掛かるため、苗床から抜け難い。そのため、作物用キャップを風に吹き飛ばされないように苗床に固定できる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、キャップ固定串の材質に針金を使用するので、プレス成型で簡単に凸部を加工でき、加工コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例に係る作物用キャップを示す断面図である。
【図2】同作物用キャップの使用状態を示す説明図である。
【図3】同作物用キャップの他の使用状態を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例に係るキャップ固定串を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る作物用キャップの使用状態を示す説明図である。
【実施例1】
【0013】
以下に本発明を図面に基づき説明するに、図1〜図3には本発明の第1実施例に係る作物用キャップ10が示されている。当該作物用キャップ10は横断面形状が略円形の周壁面11と、周壁面11の上端部から連続し、湾曲して外側に膨出する天井面12と、周壁面11の下端部に形成したフランジ部13から成り、周壁面11、天井面12、フランジ部13はポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の透光性プラスチック材料でドーム型に一体成形されている。
【0014】
周壁面は複数本の環状の段差面11aが形成されている。各段差面11aは上下方向に積層され、周壁面11の下端部側の段差面11aから上端部側の段差面11aへと各段差面11aの径が漸減しているので、周壁面11は全体として、上部側ほど径が縮小した円筒形状を備えている。
【0015】
天井面12は周壁面11の上端部から連続し、外側へ緩やかに湾曲して膨出した凸形態を備えている。そして、周壁面11と天井面12との境界部分が屈曲部14として形成され、周壁面11と天井面12が直角より若干大きな角度、本実施例では凸形態のとき約100度の角度を形成している。天井面12の頂部には1個の通気穴12aが形成され、通気穴12aの周囲に断面半円形の環状リブ12bが形成されている。
【0016】
フランジ部13は周壁面11の下端開口面11bの外周に沿って形成されている。フランジ部13には2本の環状リブ13a,13bが形成され、環状リブ13a,13bの間に通気穴12bを中心として等角度間隔で串穴13cが形成されている。
【0017】
本実施例に係る作物用キャップ10の構造は以上の通りであって、図2に示すように苗20にこの作物用キャップ10を被せ、フランジ部13の串穴13cにキャップ固定串21を通して苗床22の土に差し込み、作物用キャップ10を苗床22に固定する。
【0018】
図4にキャップ固定串21の詳細を図示する。キャップ固定串21の材料には針金が使用され、針金を曲げ加工して、2本の串片21aと両串片21aの上端部を連結する押さえ片21bからなる二股形状に成形されている。そして、両方の串片21aの下端部近辺にプレス成型により長方形の凸部21cが形成されている。作物用キャップ10は、一方の串片21aを串穴13cを通して苗床22に打ち込み、押さえ片21bでフランジ部13を苗床22に押さえ着けて苗床22に固定される。
【0019】
水遣りを行う場合、作物用キャップ10の天井面12の中央部を指で内側へ押し込む。図1に想像線で示すように、屈曲部と天井面12と周壁面11が成す角度が約90度を越えるまで屈曲部14が屈曲すると、凸形態を保持していた天井部は図3に示すように、内側へ緩やかに湾曲して窪む凹形態となり、凹形態が保持される。このとき屈曲部14は全周にわたって一平面Pに接する。そこで、ホースから凹形態となった天井面12に水を注ぐと、水が通気穴12aを通って作物用キャップ10の内部に流入し、苗20の根元に浸透する。
【0020】
本実施例に係る作物用キャップ10によれば、ドーム型の天井面12を内側へ湾曲して窪む凹形態にすると、天井面12が水の受け皿となり、かつ天井面12の頂部に形成した通気穴12aが導水穴となる。そのため、ホースを通気穴12aに通さなくても天井面12にホースから水を注げば通気穴12aを通って作物用キャップ10の内部に水が流入し、苗20に注がれる。また、天井面12に降った雨水も通気穴12aから効率的に作物用キャップ10の内部に流入するので、水遣り作業が容易になる。
【0021】
また、凹形態の天井面12に小石等の重石を載せれば、強風時に作物用キャップ10が吹き飛ばされるのを防止することもできる。
【0022】
一方、通気穴12aに指を入れて凹形態の天井面の中央部を外側へ引き上げると(外側へ押し込むと)天井面が図2に示す凸形態となってこの凸形態が保持される。天井面12を図2に示す凸形態にすれば、地面から天井面12までの高さが増大するので、苗20の生育に伴い新芽が天井面12に接触して生育不良となるのを可及的に遅くできる。また、枯れ草等のゴミが天井面の表面に滞留して透光性が低下するのを防止できる。
【0023】
また、本実施例に係るキャップ固定串21によれば、作物用キャップ10に風圧が作用しても、苗床22に打ち込んだ串片21aの凸部21cが、水遣りや降雨の後に乾燥して固まった苗床22の土に引っ掛かるため、苗床22から抜け難い。そのため、作物用キャップ10を風に吹き飛ばされないように苗床22に固定できる。
【0024】
さらにまた、本実施例に係るキャップ固定串21は、材質に針金を使用するので、プレス成型で簡単に凸部21cを加工でき、加工コストを低減できる。
なお、本実施例に係るキャップ固定串21では、長方形の凸部21cを串変21aに各1個形成したが、複数個形成すれば、よりキャップ固定串が抜け難くなる。また、材質として、針金の曲げ加工の他、鉄板から打ち抜き加工したり、硬質プラスチックで成型することも可能である。
【実施例2】
【0025】
本発明の第2実施例に係る作物用キャップを図4に示す。第1実施例に係る作物用キャップ10では天井面12の頂部に1個の通気穴12aを形成したが、第2実施例に係る作物用キャップ10Aでは頂部近辺に多数の小径通気穴12cが形成されている。
なお、第2実施例に係る作物用キャップ10Aの他の構成は第1実施例に係る作物用キャップ10と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
この作物用キャップ10Aを使用した場合も、図4に示すように天井面12を凸形態にすることにより水遣りを容易にできる。
【符号の説明】
【0027】
10,10A…作物用キャップ
11…周壁面
12…天井面
12a,12c…通気穴
13…フランジ部
14…屈曲部
21…キャップ固定串
21a…串片
21b…押さえ片
21c…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が略円形の周壁面と、周壁面の上端部から連続する天井面とを透光性プラスチック材料でドーム型に一体成形し、天井面に通気穴を形成した作物用キャップであって、
天井面の頂部近辺に通気穴を形成し、
周壁面と天井面が屈曲部を介して連続するように形成し、
屈曲部の屈曲変形により天井面が外側へ湾曲して膨出する凸形態と、内側へ湾曲して窪む凹形態の何れか一方の形態に択一的に保持され、
かつ凸形態の天井面の中央部を内側へ押し込むと天井面が凹形態となり、凹形態の天井面の中央部を外側へ押し込むと天井面が凸形態となるように構成したことを特徴とする作物用キャップ。
【請求項2】
横断面形状が略円形の周壁面と、周壁面の上端部から連続する天井面とを透光性プラスチック材料でドーム型に一体成形し、天井面に通気穴を形成し、周壁面の下端部にフランジ部を形成し、フランジ部に串穴を形成した作物用キャップを苗床に固定するためのキャップ固定串であって、
2本の串片と両串片上端部を連結する押さえ片からなる二股形状を有し、
一方または両方の串片の下端部近辺に凸部を形成し、
一方の串片を串穴を通して苗床に打ち込み、押さえ片でフランジ部を苗床に押さえ着けて作物用キャップを苗床に固定するようにしたことを特徴とするキャップ固定串。
【請求項3】
針金を曲げ加工して前記キャップ固定串を形成し、前記凸部をプレス成型したことを特徴とする請求項2に記載のキャップ固定串。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152191(P2012−152191A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16528(P2011−16528)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(506238271)株式会社カーデン (2)
【Fターム(参考)】