説明

使い捨ておむつ

【課題】排便後のおむつ表面の便除去作業を容易にし、密閉性の高い保管容器や袋を別途用意せずとも、おむつを密封して廃棄できる使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】使い捨ておむつは、股間部における液不透過性シートの裏側に、背側部分のウエスト縁から股間部の裏側に手を挿入するための手挿入ポケット80を設け、手挿入ポケット80の内面には袋体90を内張りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、排便後の使い捨ておむつの廃棄に際しては、おむつを手に持っておむつ表面の便をトイレに落とした後、おむつを表面が内側となるように丸め若しくは折り畳み(以下、廃棄状態ともいう)、サニタリーボックスやおむつ保管容器等の密閉性の高い保管容器に入れて一時保管し、容器内の貯留量がある程度に達したらゴミ袋に入れて廃棄するといったことが行われている。
【0003】
特に使い捨ておむつにおいては、吸収性物品を丸めた状態で固定する後処理手段として、パンツタイプでは物品外面に粘着テープを設けることが一般的となっており、またテープタイプではテープを後処理手段としても利用することが一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−12272号公報
【特許文献2】特許3825977号公報
【特許文献3】特開2010−5270号公報
【特許文献4】特開平11−47190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、おむつ表面の便をトイレに落とす作業は、おむつがもち難いこと(特に適切な持ち位置が排泄物で汚れていたりする場合)に起因して、便が固い場合には便を誤って落とし易く、また便が柔らかくおむつ表面に付着している場合にはおむつから振り落とす又は掻き落とすのが困難であるといった問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、排便後のおむつ表面の便除去作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
股間部に設けられる吸収体と、この吸収体の表側を覆う透液性トップシートと、吸収体の裏側を覆う液不透過性シートと、を備えており、
股間部における前記液不透過性シートの裏側に、股間部の前側又は後側から股間部の裏側に手を挿入するための手挿入ポケットが設けられている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0008】
(作用効果)
本発明の使い捨ておむつにおいては、排便後の使い捨ておむつの廃棄に際し、おむつの手挿入ポケットに手を挿入することにより、手をおむつの股間部の裏側に一体化させることができ、おむつ表面に便を載せたままの移動に便を効果的に保持でき、またおむつ表面の便をトイレ内に落とす際にも手を裏返すだけで、おむつの表面を折り込みなくして逆さまにすることができ、従来のようにおむつの裏面を掴んで逆さまにしたときにおむつ表面に折り込みができ、そこに便が挟まって落とし難くなるといった事態が発生し難くなる。またこの際、手はポケット内に位置しているため排泄物で汚れ難いという利点もある。
【0009】
<請求項2記載の発明>
前記手挿入ポケット内面が袋体により内張りされており、この袋体は前記手挿入ポケットから抜き出して使用後のおむつを入れることが可能とされている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
このような袋体を備えることにより、別途密閉性の高い保管容器や袋を用意せずとも、手挿入ポケットから袋体を抜き出し、おむつを入れて口を縛ることで、おむつを密封して廃棄することができる。特に、手挿入ポケット内に手を入れる際に袋体内に手を入れることができるため、手を抜き出す際に手の周りの部分を摘まんで袋体を手挿入ポケット外に抜き出すようにすれば、一連の動作で袋体を準備することができる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
前記液不透過性シートの裏側に外側液不透過性シートが設けられるとともに、前記液不透過性シートと外側液不透過性シートとの間の空間がおむつの前後いずれか一方のウエスト縁に開口する前記手挿入ポケットとされている、請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
このように液不透過性シートの二重構造により手挿入ポケットを形成すれば、既存の製造技術で容易に製造することができ、また手挿入ポケットの表裏両側が液不透過性シートにより覆われることになるため、手が汚れ難くなる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
前記トップシートの幅方向両側部に、前記トップシート上から起立する立体ギャザーが縦方向に沿って設けられており、前記手挿入ポケットの内部空間が、前記立体ギャザーの起立起点の幅方向外側まで延在している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
このように手挿入ポケットの内部空間が、立体ギャザーの起立起点の幅方向外側まで延在していると、手挿入ポケット内で手を広げることにより親指及び小指を立体ギャザーの外側に位置させ、立体ギャザーの幅方向外側から手で包むようにおむつを持つことができるようになる。よって、排便後のおむつ表面の便除去作業がより一層容易になる。
【0015】
<請求項5記載の発明>
前記吸収体の幅方向両側にそれぞれ延出するサイドフラップ部を有しており、前記液不透過性シートの側部はサイドフラップ部まで延在しており、各サイドフラップ部における前記液不透過性シートよりも表面側に側縁部弾性伸縮部材が縦方向に沿って伸長された状態で固定されることにより、各サイドフラップ部が平面ギャザーとして構成されており、前記手挿入ポケットの内部空間が前記側縁部弾性伸縮部材の裏側まで延在している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
このように、平面ギャザーの裏側に手挿入ポケットの内部空間が位置していると、自然状態において平面ギャザーが浮いて幅方向外側に反り返り、装着者の脚周り表面に対して平面ギャザーが面的にフィットするようになる。さらに、使用後に自然状態で載置してもおむつの幅方向バランスが崩れ難く、外面もより平坦に近くなるため倒れ難い。これに対して、従来のように平面ギャザーの裏側に空間が無いと、自然状態では平面ギャザー幅方向中央側に向かうように折れ曲がり、おむつの裏面が湾曲するため、装着の際には平面ギャザーを手で幅方向外側に広げる必要があり、また使用後においては自然状態で載置するとおむつが幅方向一方側に倒れ易い。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、排便後のおむつ表面の便除去作業が容易になる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図3】図1の6−6線断面図である。
【図4】図1の7−7線断面図である。
【図5】図1の8−8線断面図である。
【図6】図1の9−9線断面図である。
【図7】手挿入ポケットに手を入れた状態の使い捨ておむつを示す斜視図である。
【図8】廃棄状態のおむつを袋体に入れた状態を示す、斜視図である。
【図9】他の形態に関する、図1の6−6線断面に相当する断面図である。
【図10】手挿入ポケットに手を入れた状態の使い捨ておむつを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、「前後方向(縦方向)」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側部分と背側部分を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に幅方向と直交する方向を意味する。また、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。
【0020】
図1〜図6はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示している。図3及び図4は、図1における6−6線断面及び7−7線断面をそれぞれ示した図であり、図5及び図6は、図1における8−8線断面及び9−9線断面をそれぞれ示した図である。図中の符号Xはファスニングテープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。
【0021】
このテープタイプ使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性表面シートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収体56が介在する部分である吸収性本体部10と、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分である腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEと、吸収性本体部10の左右両側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分であるサイドフラップ部SF,SFと、を有するものである。
【0022】
また、腹側部分F及び背側部分Bの胴回り部分の両側部は、それぞれ股間部よりも幅方向外側まで延出しており、このうち背側部分Bの延出部分BFからは、腹側部分Fと背側部分Bとを連結する係止部材としてのファスニングテープ13がそれぞれ突出している。
【0023】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに背側および腹側の各サイドフラップ部SF,SFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、および表面シート30がこの順に積層されている。表面シート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、表面シート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、表面シート30よりも若干幅広に形成されている。
【0024】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する立体ギャザー60,60が設けられており、この立体ギャザー60,60を形成するギャザーシート62,62が、背側および腹側の各サイドフラップ部SF,SFの内面を含め、吸収性本体部10の幅方向外側の全体にわたり延在されている。
【0025】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。
【0026】
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0027】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0028】
(表面シート)
表面シート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0029】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0030】
(中間シート)
表面シート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、表面シート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、表面シート30の表面を肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
【0031】
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40は表面シート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材は表面シート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、表面シート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、表面シート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0032】
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0033】
(立体ギャザー)
表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する立体ギャザー60、60を設けるのは好ましい。
【0034】
この立体ギャザー60は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0035】
ギャザーシート62の内面は、表面シート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0036】
脚周りにおいては、立体ギャザー60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部では表面シート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム63の収縮力により起立するようになる。おむつの装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム63の収縮力が作用するので、糸ゴム63の収縮力により立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0037】
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0038】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SF,SFにおける液不透過性シート11よりも表面側に、糸ゴム等からなる側縁部弾性伸縮部材64が前後方向に沿って伸長された状態で固定されることにより、各サイドフラップ部SF,SFの脚周り部分が平面ギャザー65として構成されている。図示例では、ギャザーシート62の固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11とが対向する部分のシート間に側縁部弾性伸縮部材64がそれぞれ設けられている。
【0039】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包装シート58とを有している。包装シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0040】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0041】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0042】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート58上にある形態も排除されるものではない。
【0043】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0044】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0045】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0046】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0047】
この包装シート58は、図3に示すように、吸収体56の全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包装するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包装シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0048】
(ファスニングテープ)
図1及び図2に示されるように、ファスニングテープ13は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材からなるシート基材13Cの基部がおむつに取り付けられており、おむつから突出する先端側部分に腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック材13Aが設けられている。フック材13Aはシート基材13Cに接着剤により剥離不能に接合されている。
【0049】
乳幼児用おむつにおいては、ファスニングテープ13の取り付け部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、ファスニングテープ13の先端側部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さ(高さ)は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニングテープ13の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニングテープ13の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。フック材13Aは、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フック材13Aに代えて、ファスニングテープ13の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0050】
おむつの装着に際しては、背側部分Bのサイドフラップ部SFを腹側部分Fのサイドフラップ部SFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープを腹側F外面の適所に係止する。ファスニングテープ13の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0051】
ファスニングテープ13は、背側エンドフラップ部BEと吸収要素50の境界線上にファスニングテープ13の取り付け部分が重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニングテープ13の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13の取り付け部分間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側エンドフラップBEの前後方向長さは、ファスニングテープ13の基部の前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0052】
(ターゲットシート)
腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲット有するターゲットシート74を設けるのが好ましい。ターゲットシート74は、係止部がフック材13Aの場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。 また、腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニングテープ13の係止部がフック材13Aの場合には、ターゲットシート74を省略し、フック材13Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲットシート74を外装シート12と液不透過性シート11との間に設けてもよい。
【0053】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部FEであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部BEである。
【0054】
背側エンドフラップBEの前後方向長さは、前述の理由によりファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収要素50とが近接しすぎると、吸収要素50の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0055】
腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0056】
(手挿入ポケット80)
特徴的には、股間部における液不透過性シート11の裏側に、背側部分Bのウエスト縁から股間部の裏側に手を挿入するための手挿入ポケット80が設けられている。これにより、排便後の使い捨ておむつの廃棄に際し、図7に示すようにおむつの手挿入ポケット80に手を挿入することにより、手をおむつの股間部の裏側に一体化させることができる。その結果、おむつ表面に便を載せたままの移動に便を効果的に保持でき、またおむつ表面の便をトイレ内に落とす際にも手を裏返すだけで、おむつの表面を折り込みなくして逆さまにすることができ、従来のようにおむつの裏面を掴んで逆さまにしたときにおむつ表面に折り込みができ、そこに便が挟まって落とし難くなるといった事態が発生し難くなる。またこの際、手はポケット内に位置しているため排泄物で汚れ難いという利点もある。
【0057】
図示形態では、液不透過性シート11の裏側に外側液不透過性シート14(液不透過性シート11と同様の素材を好適に用いることができる。)が設けられるとともに、液不透過性シート11と外側液不透過性シート14との間の空間が、おむつの前後いずれか一方のウエスト縁に開口する手挿入ポケット80とされているが、液不透過性シート11の裏側に位置する部分を有し、且つ股間部の前側又は後側から股間部の裏側に手を挿入できるポケットであれば、これに限定されずに種々の変更が可能である。例えば、外装シート12と液不透過性シート11との間や、外装シート12を二重にしてその間を手挿入ポケット80とすることができる(図示略)。ただし、図示形態のように液不透過性シート11,14の二重構造により手挿入ポケット80を形成すれば、既存の製造技術で容易に製造することができ、また手挿入ポケット80の表裏両側が液不透過性シート11,14により覆われることになるため、手が汚れ難くなる利点がある。
【0058】
手挿入ポケット80の(内部空間の)深さ(前後方向長さ)は適宜定めることができるが、挿入開口が股間部の後側にある場合は、手挿入ポケット80は前方に向かって吸収体56の前端部又はその前後近傍まで延在しているのが好ましく、挿入開口が股間部の前側にある場合は、手挿入ポケット80は後方に向かって吸収体56の後端部又はその前後近傍まで延在しているのが好ましい。図示形態の手挿入ポケット80は、背側部分Bのウエスト縁(後縁)から吸収体56の前端部近傍まで延在している。
【0059】
また、手挿入ポケット80の(内部空間の)幅は適宜定めることができ、手挿入ポケット80の側縁を吸収体56の側縁又はその内外近傍に位置させることもできるが、特に図示形態のように、手挿入ポケット80をBの起立起点の幅方向外側まで延在させるのが好ましい。このように手挿入ポケット80の内部空間が、立体ギャザー60の起立起点の幅方向外側まで延在していると、手挿入ポケット80内で手を広げることにより親指及び小指を立体ギャザー60の外側に位置させ、立体ギャザー60の幅方向外側から手で包むようにおむつを持つことができるようになる。よって、排便後のおむつ表面の便除去作業がより一層容易になる。
【0060】
さらに、この手挿入ポケット80の幅を広げて手挿入ポケット80を側縁部弾性伸縮部材の裏側まで延在させると、平面ギャザー65の裏側に手挿入ポケット80の内部空間が位置することにより、図7に示すように、自然状態において平面ギャザー65が浮いて幅方向外側に反り返り、装着者の脚周り表面に対して平面ギャザー65が面的にフィットするようになるとともに、立体ギャザー60と平面ギャザー65との間に溝状の窪みが形成され、立体ギャザー60を乗り越えた排泄物がこの窪みに捕捉されるため、より漏れ防止効果に優れたものとなる。さらに、使用後に自然状態で載置してもおむつの幅方向バランスが崩れ難く、外面もより平坦に近くなるため倒れ難い。もちろん、図8及び図9に示すように、手挿入ポケット80の幅を平面ギャザー65の幅方向中央側までとすることも可能である。
【0061】
他方、使用後のおむつを廃棄する場合、ビニール袋に入れて口を縛り、密封した状態で廃棄することが一般に良く行われているため、この後処理等に用いる袋体90を手挿入ポケット80内に装備しておくのも好ましい形態である。この場合、袋体90をそのまま又はある程度の大きさに畳んだ状態で手挿入ポケット80内に装備しても良いが、図示例のように、手挿入ポケット80内面を袋体90により内張りしておけば、手挿入ポケット80内に手を入れる際にこの袋体90内に手を入れるようにし、手を抜き出す際に手の周りの部分を摘まんで袋体90を手挿入ポケット80外に抜き出すようにすれば、一連の動作で袋体90を準備することができる。その後は、図10に示すように使用後のおむつ100を丸める等、廃棄状態にした後、準備した袋体90内に入れて口を縛り廃棄すれば良い。これにより、別途密閉性の高い保管容器や袋を用意せずとも、おむつを密封して廃棄することができる。
【0062】
袋体90の素材は特に限定されないが、液不透過性シート11と同様の素材を好適に用いることができ、中でも気密性の高い素材が好ましい。
【0063】
袋体90は、その全体を非固定としても良いが、使用前に手挿入ポケット80内での位置がずれないように、その一部、例えば図示例のように口部のみを隣接部材(図示例では液不透過性シート11及び外側液不透過性シート14)にホットメルト接着剤等の接着手段や、ヒートシール又は超音波シール等の溶着手段により固定することができる。使用に際しては、この固定部を強引に剥離するか又は袋体90を破り取ることができる。もちろん、袋体90の取外しを容易にするために、袋体90の固定を弱くする、或いは剥離可能な固定手段を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、上記例のようなテープタイプ使い捨ておむつの他、パンツタイプ使い捨ておむつ、パッドタイプ使い捨ておむつにも利用可能なものである。
【符号の説明】
【0065】
11…液不透過性シート、12…外装シート、13…外側液不透過性シート、30…表面シート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…立体ギャザー、62…ギャザーシート、74…ターゲットシート、80…手挿入ポケット、90…袋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部に設けられる吸収体と、この吸収体の表側を覆う透液性トップシートと、吸収体の裏側を覆う液不透過性シートと、を備えており、
股間部における前記液不透過性シートの裏側に、股間部の前側又は後側から股間部の裏側に手を挿入するための手挿入ポケットが設けられている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記手挿入ポケット内面が袋体により内張りされており、この袋体は前記手挿入ポケットから抜き出して使用後のおむつを入れることが可能とされている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記液不透過性シートの裏側に外側液不透過性シートが設けられるとともに、前記液不透過性シートと外側液不透過性シートとの間の空間がおむつの前後いずれか一方のウエスト縁に開口する前記手挿入ポケットとされている、請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記トップシートの幅方向両側部に、前記トップシート上から起立する立体ギャザーが縦方向に沿って設けられており、前記手挿入ポケットの内部空間が、前記立体ギャザーの起立起点の幅方向外側まで延在している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記吸収体の幅方向両側にそれぞれ延出するサイドフラップ部を有しており、前記液不透過性シートの側部はサイドフラップ部まで延在しており、各サイドフラップ部における前記液不透過性シートよりも表面側に側縁部弾性伸縮部材が縦方向に沿って伸長された状態で固定されることにより、各サイドフラップ部が平面ギャザーとして構成されており、前記手挿入ポケットの内部空間が前記側縁部弾性伸縮部材の裏側まで延在している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−120666(P2012−120666A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273335(P2010−273335)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】