説明

使い捨ておむつ

【課題】身体表面の立体的な凹凸に対するフィット性に優れ、特に外圧による排泄物の漏出に対しても効果的に漏れを防止できる、使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】身体側に隆起する棒状のバリヤー体20を、背側上端部及び腹側上端部の少なくとも一方に、少なくとも吸収体56と幅方向範囲が重なるように幅方向に沿って延在させる。バリヤー体20は、シートを細長筒状に形成してなる包装体21内における、少なくとも吸収体56と幅方向範囲が重なる部分に圧縮復元性材料22を詰め入れて形成する。また、バリヤー体20は、エンドフラップ部の股間側端部から吸収体56の上端部に跨るように、エンドフラップ部と吸収体56との境界線に沿って設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背漏れ防止を図った使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつの多くは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収要素が介在する部分である吸収性本体部と、この吸収性本体部の前側及び後側に延出する部分であって、且つ吸収要素を有しない部分である腹側及び背側エンドフラップ部とを有している。いわゆる止着式(テープ式)のものでは、背側の両側部にファスニング片がそれぞれ設けられており、これらファスニング片を腹側外面に係止することで装着を行い、パンツ型のものでは背側の両側部と腹側の両側部とがそれぞれ接合され、ウエスト開口部及び脚開口部が予め形成されており、脚開口部に脚を通して胴回りまで引き上げることにより装着を行う。
止着式使い捨ておむつは、所謂パンツ型と比較すると、身体とおむつの背側との間に隙間が生じやすく、この隙間を介して尿、水様便、軟便等の排泄物が漏れ出る事態(所謂背漏れ)が発生し易いという問題点があった。そのため、従来は、特に背側における製品幅方向の伸縮性を改善するものや、背側内面に幅方向に沿う背側バリヤー体を設けることが提案されている(例えば特許文献1〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−328234号公報
【特許文献2】特許3638819号公報
【特許文献3】特開2001−245922号公報
【特許文献4】特開平9−215709号公報
【特許文献5】特許3602134号公報
【特許文献6】特許3605426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のものはいずれも身体表面の立体的な凹凸にフィットし難いものであった。
一方、パンツ型使い捨ておむつは、止着式と比べれば身体に対するフィット性が高く、背漏れし難いものであるが、身体とおむつとの間に隙間が少ないことが裏目に出て、座位時や交換時等に体重等による外圧が加わると排泄物が押し出されて漏れ出てしまう場合がある。もちろん、このような漏れは止着式でも発生する。特に、最近のおむつの吸収体は薄型で柔軟であるため、このような傾向が強い。
さらに、パンツ型使い捨ておむつでは、フィット性を向上させるために特に薄い吸収体を用いた場合、尿が前漏れし易いという問題点もある。
そこで、本発明の主たる課題は、身体表面の立体的な凹凸に対するフィット性に優れ、特に外圧による排泄物の漏出に対しても効果的に漏れを防止できる、使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収体が介在する部分である吸収性本体部と、前記吸収性本体部の後側に延出する部分であって、且つ前記吸収体を有しない部分である背側のエンドフラップ部と、前記吸収性本体部の前側に延出する部分であって、且つ前記吸収体を有しない部分である腹側のエンドフラップ部とを有し、
身体側に隆起する棒状のバリヤー体が、背側上端部及び腹側上端部の少なくとも一方に、少なくとも前記吸収体と幅方向範囲が重なるように幅方向に沿って延在する、
使い捨ておむつであって、
前記バリヤー体は、シートを細長筒状に形成してなる包装体内に圧縮復元性材料を詰め入れてなり、且つ少なくとも前記吸収体と幅方向範囲が重なる部分に前記圧縮復元性材料が詰め入れられているものであり、
前記バリヤー体は、前記エンドフラップ部の股間側端部から前記吸収体の上端部に跨るように、前記エンドフラップ部と前記吸収体との境界線に沿って設けられている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【0006】
(作用効果)
本発明のバリヤー体は、圧縮復元性材料を包装体内に詰めた棒状体であり、それ自体立体的な形状であるとともに、各部が独立的且つ自由に変形できるため、身体表面の複雑且つ立体的な凹凸に対して良好にフィットする。また、バリヤー体の股間側に身体から離間した空間が確保されるため、排泄物の堰き止め許容量が格段に多くなるとともに、外圧が加わってもバリヤー体で堰き止めた排泄物がこの空間内に逃がされて貯められ、排泄物が押し出されて漏出するといった事態が発生し難くなる。なお、圧縮復元性とは、圧縮状態から圧縮力を開放すると元の容積に向かって形状が復元する性質を意味し、容積が完全に復元するものの他、一部しか復元しないものも含む。また、おむつの背側上端部及び腹側上端部というときの上下方向は、股間を下とする装着状態における方向を意味しており、バリヤー体が背側に設けられている場合にはおむつの後端部又は背側上端部を、また腹側に設けられている場合にはおむつの前端部又は腹側上端部を意味する。
また、このようにバリヤー体が、エンドフラップ部の股間側端部から吸収体の上端部に跨っていると、バリヤー体で堰き止めた排泄物を吸収体に吸収させることができるため好ましい。なお、吸収体の上端部というときの上下方向は、股間を下とする装着状態における方向を意味しており、バリヤー体が背側に設けられている場合には吸収体の後端部又は背側上端部を、また腹側に設けられている場合には吸収体の前端部又は腹側上端部を意味する。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記バリヤー体は、初期厚みT0が5〜20mmであり、厚さ方向における圧縮剛さLCが0.75〜0.99であり、厚さ方向における圧縮エネルギーWCが6.000〜9.500gf・cm/cm2であり、厚さ方向における圧縮レジリエンスRCが40〜70%であり、且つ前記吸収体を有する部分の初期厚みT0が4〜8mmである、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【0008】
(作用効果)
バリヤー体の厚みや圧縮復元性は適宜定めることができるが、例えば乳児用のおむつにおける水様便や軟便の堰き止めを想定した場合、本項記載のような特性のバリヤー体が好ましい。なお、初期厚みT0は圧力0.5gf/cm2における厚さを意味し、圧縮剛さLCは1に近い程圧縮剛いことを意味する値であり、圧縮エネルギーWCは大きい程圧縮され易いことを意味する値であり、圧縮レジリエンスRCは値が100に近い程圧縮に対する回復性がよいことを意味する値であり、KES-FB3-AUTO-A 自動化圧縮試験機によりそれぞれ計測することができる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記圧縮復元性材料は、捲縮フィラメントの集合体又はステープルの集合体である、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
本発明の圧縮復元性材料として本項記載のような繊維集合体を用いると、バリヤー体が、変形時の各部の独立性が特に高くなるとともに、任意の立体的形状に形成できるようになり、また弾力性が弱く柔らかな感触となるため好ましい。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記圧縮復元性材料は、シート状の発泡ウレタンフォーム、ゴム若しくは不織布を折り曲げる若しくは丸めてなるもの、又は筒状若しくは棒状の発泡ウレタンフォーム若しくはゴムである、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
本発明の圧縮復元性材料として本項記載のようなものを用いると、バリヤー体の弾力性が高くなり、動きに対する追従性が高まるため好ましい。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記バリヤー体は、おむつ幅方向両端に向かうにつれて厚みが薄くなる形状を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
バリヤー体が本項記載のような形状を有していると、腰部曲線に対するフィット性が高まり、特にバリヤー体20の両端部と身体との間に隙間が生じ難いため好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記包装体はおむつの幅方向一端から他端まで連続的に延在するとともに、少なくとも吸収体と幅方向範囲が重なる部分を含む主要部分及びその幅方向両側に位置する両端部のうち、主要部分内に前記圧縮復元性材料が詰め入れられるとともに、両端部内には前記圧縮復元性材料が詰め入れられていない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
おむつの製造ラインでは、連続的なシート基材をロールに掛け渡して搬送しながら、個々のおむつとなる部分に対して各部部品の取り付けを順次行った後、最終段階で個別の製品に切断するといった方法が広く採用されている。そして、バリヤー体のような細長状の部品を取り付ける場合には、連続状の部品を供給して取り付け、最終段階で個別の製品に切断する段階で同時に切断するのが好ましい。しかし、このような方法でバリヤー体を取り付ける場合、長手方向全体にわたり圧縮復元性材料が詰め入れられていると、側部等の不要な部分までを含めて胴回り全体に厚みのあるバリヤー体が設けられ、側部が不恰好に膨らむため好ましくない。これに対して、本項記載のような構造を有していると、包装体のみがおむつ幅方向に沿って連続し、圧縮復元性材料を内包する主要部分は連続しないため、バリヤー体を連続状で供給して取り付け、最終段階で個別の製品に切断する段階で同時に切断する形態を採用できるとともに、側部が不恰好に膨らむのも防止できる。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記包装体をなすシートは、初期厚みT0が0.05〜1mmであり、曲げ剛さBが1〜100gf・cm2/cmであり、且つ曲げヒステリシス2HBが1〜20gf・cm/cmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0018】
(作用効果)
包装体のシートは適宜定めることができるが、過度に硬いものや柔軟性がないものを用いると、圧縮復元性材料の変形を阻害し、バリヤー体が硬くなるため、本項記載の程度の柔軟なシートが好ましい。なお、曲げ剛さBは大きい程曲げ剛いことを意味する値であり、曲げヒステリシス2HBは大きい程曲げ回復性が悪いことを意味する値であり、KES-FB2-AUTO-A 自動化純曲げ試験機によりそれぞれ計測できるものである。
【0019】
<請求項8記載の発明>
前記包装体をなすシートが撥水性不織布である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0020】
(作用効果)
バリヤー体は液分を含む排泄物を堰き止めるものであるため、包装体をなすシートは撥水性不織布であるのが好ましい。これにより、排泄物の染み出しを防止できる。
【0021】
<請求項9記載の発明>
前記包装体をなすシートが親水性不織布であり、前記圧縮復元性材料が液吸収性材料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0022】
(作用効果)
バリヤー体は液分を含む排泄物を堰き止めるものであるが、本項記載のように構成することによって排泄物の吸収を一部負担させることもできる。
【0023】
<請求項10記載の発明>
前記吸収体の少なくとも上端部は、前記バリヤー体に近づくにつれて厚さが増すような隆起形状を有している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0024】
(作用効果)
吸収体が本項記載のような隆起形状を有していると、バリヤー体で堰き止めた排泄物が股間側に戻りやすくなるため好ましい。なお、吸収体の上端部というときの上下方向は、股間を下とする装着状態における方向を意味しており、バリヤー体が背側に設けられている場合には吸収体の後端部又は背側上端部を、また腹側に設けられている場合には吸収体の前端部又は腹側上端部を意味する。
【0025】
<請求項11記載の発明>
おむつの両側部に、使用面側に起立する側部バリヤーカフスがそれぞれ前後方向に沿って設けられており、
各側部バリヤーカフスは、幅方向外側の部分がおむつの側部に固着された固着部分とされ、幅方向内側の部分のうち前後方向両端部がおむつに固定された固定部とされ、且つこれら固定部間の前後方向範囲が自由部分とされており、
前記吸収体よりも幅方向外側に、前記側部バリヤーカフスの固着部分が位置しており、
前記バリヤー体における前記圧縮復元性材料を内包する部分の幅方向範囲は、前記吸収体の一方の側縁から他方の側縁までの幅方向範囲以上、かつ一方の側部バリヤーカフスの固着部分から他方の側部バリヤーカフスの固着部分までの幅方向範囲以下とされている、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0026】
(作用効果)
一般的な使い捨ておむつにおいては、脚周りからの漏れを防止するために、おむつの両側部に、使用面側に起立する側部バリヤーカフスがそれぞれ前後方向に沿って設けられている。このような構造においては、本発明のバリヤー体は本項記載の範囲にわたり設けられているのが好ましい。
【0027】
<請求項12記載の発明>
前記バリヤー体のうち前記圧縮復元性材料を内包する部分は、裏面が前記包装体の円筒状態での外周の1/16〜1/2に相当する接合幅をもっておむつ幅方向に沿って連続的に前記バリヤー体の裏面側に位置する部材に接合されており、この接合部以外の部分は隣接部材に接合されていない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0028】
(作用効果)
バリヤー体がこのように接合されていると、身体に対するフィット性を損ねずに、バリヤー体の変形の自由度を高くすることができ、また、バリヤー体の接合部分に対してその上側が股間側に迫り出し、この迫り出し部分の下側に排泄物を受け入れることができるため、堰き止め効果がより一層のものとなる。
【0029】
<請求項13記載の発明>
前記接合幅は、おむつ幅方向両側に向かうにつれて少なくとも股間側に拡大されている、請求項12記載の使い捨ておむつ。
【0030】
(作用効果)
本項記載のように構成されていることによって、バリヤー体で堰き止めた排泄物がおむつ幅方向外側に広がり難くなる。
【0031】
<請求項14記載の発明>
前記バリヤー体の前記圧縮復元性材料を内包する部分における、おむつ幅方向両端部及びこれらの間の中間部のうち、
おむつ幅方向両端部では、裏面が前記包装体の円筒状態での外周の1/2−5mm〜外周の1/2に相当する接合幅をもって前記バリヤー体の裏面側に位置する部材に接合されるとともに、この接合部以外の部分は隣接部材に接合されておらず、
おむつ幅方向中間部では、裏面が前記包装体の円筒状態での外周の1/16〜1/2に相当する接合幅をもっておむつ幅方向に沿って連続的に前記バリヤー体の裏面側に位置する部材に接合されるとともに、この接合部以外の部分は隣接部材に接合されていない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0032】
(作用効果)
本項記載のように構成されていることによって、おむつ幅方向中間部ではバリヤー体は接合部分に対してその上側が股間側に迫り出すとともに、その両側では迫り出し部分と対応する部分を含めて接合されているため、迫り出し部分の下側に受け入れた排泄物が取り囲まれて、幅方向外側への移動が堰き止められる。
【0033】
<請求項15記載の発明>
前記バリヤー体の圧縮復元性材料を内包する部分における厚み方向中央より裏面側に、弾性部材がおむつ幅方向に沿って伸張した状態で固定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0034】
(作用効果)
このように弾性部材が設けられていると、バリヤー体における圧縮復元性材料を内包する部分が、おむつ幅方向中央側ほど身体側に膨出するように反り、腰部のくびれ形状に対するフィット性が高まるため好ましい。
【0035】
<請求項16記載の発明>
前記バリヤー体の圧縮復元性材料を内包する部分における厚み方向中央より表面側に、弾性部材がおむつ幅方向に沿って伸張した状態で固定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0036】
(作用効果)
このように弾性部材が設けられていると、バリヤー体の反りを防止したり、バリヤー体の断面形状を強制したりすることができるため好ましい。
【0037】
<請求項17記載の発明>
前記バリヤー体の裏面側に撥水性不織布を有し、この撥水性不織布がおむつ前後端で身体側に折り返され、この折り返し部分により前記バリヤー体における少なくともおむつ上端側の面が被覆されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0038】
(作用効果)
おむつの前後端にシートの端が露出していると、肌触りが悪くなる。特にパンツ型の使い捨ておむつの場合、外装体と吸収体を有する内装体とが別体で形成されているため、この内装体の端が露出していると、外装体との段差が肌触りを悪化させる。このため、外装体を構成する撥水性不織布をおむつ前後端で身体側に折り返し、おむつ前後端におけるシートの角を被覆したり、内装体の前後端を被覆したりすることが行われている。本項記載の発明は、このようなバリヤー体の裏面側に位置する撥水性不織布を利用し、この撥水性不織布をおむつ前後端で身体側に折り返してバリヤー体における少なくともおむつ上端側の面を被覆し、バリヤー体内を通じた排泄物の染み出しを防止するものである。なお、おむつ上端というときの上下方向は、股間を下とする装着状態における方向を意味しており、バリヤー体が背側に設けられている場合にはおむつの後端又は背側上端を、また腹側に設けられている場合には吸収体の前端又は腹側上端を意味する。
【発明の効果】
【0039】
以上のとおり、本発明によれば、身体表面の立体的な凹凸に対するフィット性に優れ、特に外圧による排泄物の漏出に対しても効果的に漏れを防止できる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】止着式使い捨ておむつの展開状態平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】バリヤー体の他の例を示す要部断面図である。
【図7】バリヤー体の他の例を示す要部断面図である。
【図8】バリヤー体の他の例を示す要部断面図である。
【図9】バリヤー体の他の例を示す要部断面図である。
【図10】バリヤー体の他の例を示す要部断面図である。
【図11】パンツ型使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図12】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図13】図1の6−6断面図である。
【図14】図1の7−7断面図である。
【図15】図1の8−8断面図である。
【図16】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図17】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、断面図である。
【図18】製品状態の正面図である。
【図19】製品状態の背面図である。
【図20】他のパンツ型使い捨ておむつの要部のみを寸法とともに示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図21】図15の要部拡大図である。
【図22】バリヤー体の他の例を示す要部断面図である。
【図23】バリヤー体の各種接合形態を概略的に示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、止着式とパンツ型の使い捨て紙おむつの基本構造の例について説明する。各図において、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの前身頃両側部と後身頃量側部を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すればウエスト開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0042】
<止着式使い捨ておむつの基本構造の一例>
図1〜図5は止着式使い捨ておむつの一例を示している。図2、図3及び図4及び図5は、図1における2−2線断面、3−3線断面、4−4線断面及び5−5線断面をそれぞれ示した図である。この止着式使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収体56が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分である腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEとを有するものである。
また、この止着式使い捨ておむつは、腹側Fの上縁F1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部FF,FFと、背側Bの上縁B1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部BF,BFとを備えている。また、背側サイドフラップ部BF,BFには、係止部材としてのファスニング片130がそれぞれ設けられている。
より詳細には、吸収性本体部10ならびに背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部バリヤーカフス60,60が設けられており、この側部バリヤーカフス60,60を形成するバリヤーシート62,62が、背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの内面を含め、吸収性本体部10の幅方向外側の全体にわたり延在されている。
【0043】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0044】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0045】
(中間シート)
トップシート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、トップシート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、トップシート30表面の肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40はトップシート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、トップシート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、トップシート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0046】
(側部バリヤーカフス)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部バリヤーカフス60、60を設けるのは好ましい。
この側部バリヤーカフス60は、実質的に幅方向に連続するバリヤーシート62と、このバリヤーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このバリヤーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
バリヤーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。この固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、バリヤーシート62と外装シート12とが対向する部分のシート間に、前後方向に沿って糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64がそれぞれ設けられている。
脚周りにおいては、側部バリヤーカフス60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム63の収縮力が作用するので、糸ゴム63の収縮力により側部バリヤーカフス60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
図示形態と異なり、バリヤーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0047】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有している。包被シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0048】
(吸収体)
吸収体56は、繊維52,52の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0049】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、図2に示すように高吸収性ポリマー粒子54,54…を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維52,52…の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態も排除されるものではない。
高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子54の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子54としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子54の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子54の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0050】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
この包被シート58は、図2のように、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、連続繊維52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0051】
(ファスニング片)
ファスニング片130は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材からなるファスニング基材130Cの基部がおむつに取り付けられており、おむつから突出する先端側部分に腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック要素130Aが設けられている。フック要素130Aはファスニング基材130Cに接着剤により剥離不能に接合されている。
本発明を適用するのが特に好ましい、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、ファスニング片130の取り付け部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、ファスニング片130の先端側部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さX2は30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さY2は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニング片130の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さY1,Y2や幅方向長さX1,X2が一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニング片130の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フック要素130Aに代えて、ファスニング片130の係止部として粘着材層を設けることもできる。
おむつの装着に際しては、背側サイドフラップ部BFを腹側サイドフラップ部FFの外側に重ねた状態で、ファスニング片を腹側F外面の適所に係止する。ファスニング片130の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁F1との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所には、係止を容易にするためにターゲットテープ74を設けるのが好ましい。ターゲットテープ74は、係止部がフック要素130Aの場合、フック要素の係合突起が絡まるようなループ糸が表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なフィルム状のものを用いることができる。
また、腹側Fにおけるファスニング片130の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニング片130の係止部がフック要素130Aの場合には、ターゲットテープ74を省略し、フック要素130Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。
ファスニング片130は、背側エンドフラップ部BEと吸収要素50の境界線上にファスニング片130の取り付け部分が重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニング片130の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニング片130の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニング片130の取り付け部分間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側エンドフラップBEの前後方向長さは、ファスニング片130の基部の前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0052】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収体56を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部FEであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部BEである。
背側エンドフラップBEの前後方向長さは、前述の理由によりファスニング片130の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収体56とが近接しすぎると、吸収体56の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、本発明を適用するのが特に好ましい、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0053】
(背側伸縮シート)
図示形態では、両ファスニング片130間に、幅方向に弾性伸縮する帯状の背側伸縮シート70が設けられ、おむつ背側部におけるフィット性を向上させている。背側伸縮シート70の両端部は両ファスニング片130の取り付け部分と重なる部位まで延在されているのが好ましいが、幅方向中央側に離間していても良い。背側伸縮シート70の前後方向寸法は、ファスニング片130の取り付け部分の前後方向寸法と概ね同じにするのが適当であるが、±20%程度の寸法差はあってもよい。背側伸縮シート70は、ゴムシート等のシート状弾性部材を用いても良いが、通気性の観点から、図3に示すように、二枚の不織布71をホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせるとともに、両不織布71間に有孔のシート状、網状、細長状(糸状又は紐状等)等の弾性伸縮部材72を幅方向に沿って伸張した状態で固定したものが好適に用いられる。この場合における不織布71としては、外装シート12と同様のものを用いることができる。弾性伸縮部材72の伸張率は150〜250%程度であるのが好ましい。また、弾性伸縮部材72として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔72dで5〜15本程度設けるのが好ましい。
また、図示のように弾性伸縮部材72の一部が吸収体56を横断するように配置すると、吸収体56のフィット性が向上するため好ましいが、この場合は、弾性伸縮部材72が吸収体56と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収体56の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
なお、弾性伸縮部材72は、シートの長手方向(おむつの幅方向)に不織布71の全長にわたって固定されていてもよいが、おむつ本体への取り付け時の縮みやめくれ防止のため、シートの前後方向(おむつの幅方向)端部の5〜20mm程度の範囲においては、収縮力が働かないように、または弾性伸縮部材72が存在しないようにするとよい。
背側伸縮シート70は、図示形態では、液不透過性シート11の幅方向両側ではバリヤーシート62と外装シート12との間に挟まれ、且つ液不透過性シート11と重なる部位では、液不透過性シート11と吸収体56との間に挟まれるように設けられているが、トップシート30と吸収体56との間や液不透過性シート11と外装シート12との間に設けても良い。また、外装シート12を複数枚の不織布を重ねて形成する場合には、背側伸縮シート70全体を、外装シート12の不織布間に設けても良い。
【0054】
<パンツ型使い捨ておむつの基本構造の一例>
図11〜図19は、パンツ型使い捨ておむつの一例を示している。
このパンツ型使い捨ておむつは、装着者の胴回りのうち腹側を覆う腹側外装シート12Fと背側を覆う背側外装シート12Bとを有しており、腹側外装シート12Fの幅方向両側縁の接合部12Aと背側外装シート12Bの幅方向両側縁の接合部12Aとが、ヒートシールや超音波溶着等により接合されて筒状の胴回り部100が形成されるように構成されている。図示形態のように、背側外装シート12Bが接合部12Aよりも下側に延出している場合には、この部分までを含む上下方向範囲に一体的にヒートシール等の加工を施し、背側延出部14に延出溶着部12Eを設けることができる。延出溶着部12Eを設けることにより、後述する背側延出部14の第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することができる。この場合、脇部の破りやすさを考慮して、接合部12Aは小さな溶着部の集合からなり、接合部12Aにおける溶着面積の比率が低い接合パターンとすることが一般的であるが、延出溶着部12Eでは破りやすさを考慮する必要が無いため、溶着パターンは接合部12Aよりも溶着面積の比率を高くすることにより第2の細長状弾性伸縮部材16が確実に溶着固定されるようにしてもよい。また、延出溶着部12Eは臀部カバー部14Cの縁部をカーブしたラインで溶着し、臀部カバー部14Cの第2の細長状弾性伸縮部材16の引き込みを防止することもできる。
また、胴回り部100における腹側外装シート12Fの幅方向中央部内面に内装体200の前端部がホットメルト接着剤等により連結されるとともに、背側外装シート12Bの幅方向中央部内面に内装体200の後端部がホットメルト接着剤等により連結されており、腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとが股間側で連続しておらず、離間されている。この離間距離Yは150〜250mm程度とすることができる。
図17及び図18からも判るように、胴回り部100の上部開口は、装着者の胴を通すウエスト開口部WOとなり、内装体200の幅方向両側において胴回り部100の下縁および内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部LOとなる。各接合部12Aを剥がして展開した状態では、図11に示すように砂時計形状をなす。内装体200は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、胴回り部100は内装体200を装着者に対して支持する部分である。
【0055】
(外装シート)
腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bは、図14及び図15にも示すように不織布等のシート12,12を2枚貼り合せてなり、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート12,12間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられているものである。不織布を用いる場合、その坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。また、細長状弾性伸縮部材15〜18,19T,19Uとしては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。各外装シート12F,12Bの両シート12,12の貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定にはホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12F,12B全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0056】
より詳細には、背側外装シート12Bは、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める背側本体部13と、この背側本体部13の下側に延出する背側延出部14とを有している。背側延出部14は、内装体200と重なる幅方向中央部14Mと、その両側に延出した臀部カバー部14Cとを有している。
背側延出部14の形状は適宜定めることができるが、図示例では、背側延出部14の上端部は、背側本体部13と同幅で背側本体部13の下側に延出されており、その下側は股間側に近づくにつれて幅が狭められている。背側本体部13と同幅の部分は省略することもできる。このように構成されていると、臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eが、股間側に近づくにつれて内装体200側に近づくような直線状または曲線状をなすようになり、臀部を覆い易い形状となる。
背側延出部14の寸法は適宜定めることができるが、図16に示すように、臀部カバー部14Cの幅方向長さ14x(臀部カバー部14Cの幅方向外側の縁14eと内装体200の側縁との幅方向の最大離間距離)が80〜160mmであり、臀部カバー部14Cの上下方向の長さ14y(延出長さ)が30〜80mmであると、より好ましい。また、背側延出部14の幅方向に最も広い部位と上下方向に最も広い部位により定まる四角形の面積をSとすると、背側延出部14の面積はSに対して20〜80%、特に40〜60%程度であると、臀部の外観および装着感に優れるため、好ましい。
【0057】
背側本体部13は、上下方向において概念的に上端部(ウエスト部)Wと、これよりも下側の下側部分Uとに分けることができ、その範囲は製品のサイズによって異なるが、一般に、上端部Wの上下方向長さは15〜80mm、下側部分Uの上下方向長さは35〜220mmとすることができる。
背側本体部13の上端部(ウエスト部)Wには、幅方向全体にわたり連続するように、複数の背側ウエスト部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17のうち、背側本体部13の下側部分Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。この背側ウエスト弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えば背側ウエスト部の上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。この背側ウエスト部弾性伸縮部材17は、第1及び第2の細長状弾性伸縮部材15,16に対して太さや伸張率の大小関係無く、自由に定めることができる。
【0058】
また、背側本体部13の下側部分Uにおいては、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第1の細長状弾性伸縮部材15が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
第1の細長状弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0059】
また、背側延出部14においては、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり(少なくとも臀部カバー部14C全体にわたり)連続するように、複数の第2の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
第2の細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0060】
一方、腹側外装シート12Fは背側外装シート12Bの背側本体部13と基本的に同様の腹側本体部(接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分)のみからなるものであり、胴回り方向に沿って延在する矩形状をなし、背側外装シート12Bのような背側延出部14を有していないものである。
すなわち、腹側外装シート(腹側本体部)12Fの上端部(ウエスト部)Wおよび下側部分Uのうち、上端部Wには、幅方向全体にわたり連続するように、複数の腹側ウエスト部弾性伸縮部材18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。この腹側ウエスト部弾性伸縮部材18は、背側ウエスト部弾性伸縮部材17に対して、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0061】
また、腹側外装シート12F(腹側本体部)の下側部分Uにおいては、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の第3の細長状弾性伸縮部材19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。第3の細長状弾性伸縮部材19の上下方向配設範囲は、下側部分の一部としても良いが、実質的に全体(全体に伸縮力が作用する範囲)とするのが好ましい。
第3の細長状弾性伸縮部材19としては、第1の細長状弾性伸縮部材15と、本数、太さ、伸張率、間隔、及び上下方向配置をできるだけ近づけるのが好ましいが、異ならしめることもでき、異ならしめる場合、本数の差は10本以下、好ましくは5本以下、太さの差は1880dtex以下、好ましくは470dtex以下、伸張率の差は100%以下、好ましくは40%以下、間隔の差は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
図示形態の腹側外装シート12Fは、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める部分のみからなるものとしたが、背側と同様に、接合部12Aと同じ上下方向範囲を占める腹側本体部と、この腹側本体部の下側に延出する腹側延出部とからなる構成とすることもできる。これにより、腹側外装シート12Fの脚周り形状を鼠蹊部に沿ってフィットする形状とすることができる。この場合、腹側延出部の面積は、背側延出部の面積の10〜80%であるのが好ましく、20〜50%であるとより好ましい。腹側延出部が過度に大きいと、かえってフィット性を損なうため好ましくない。
【0062】
他方、図示のように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体と外装シートが剥れにくいため好ましいが、この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。また、背側本体部13および背側延出部14の幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、第1、第2及び第3の細長状弾性伸縮部材15、16及び19の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0063】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図13に示されるように、身体側となる表面シート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。液不透過性シート11の裏面側には、内装体200の裏面全体を覆うように、あるいは腹側外装シート12Fと背側外装シート12Bとの間に露出する部分全体を覆うように、股間部外装シート12Mを固定することもできる。また、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、表面シート30と吸収要素50との間に、中間シート(セカンドシート)40を設けることができる。さらに、吸収部20の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に、身体側に起立するバリヤーカフス60,61を設けることができる。なお、図示しないが、内装体200の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビードまたはスパイラル塗布などにより、適宜相互に固定することができる。また、内装体200は、メカニカルファスナーや粘着材を用い、外装シート20に対して着脱自在に取り付けることもできる。
なお、内装体200の幅方向両側部、特に内装体200の幅方向両側縁と腹側外装シート12Fの下端縁との交点近傍及び背側外装シート12Bの下端縁との交点近傍では、内装体200の剛性(剛度)が15〜50cN/50mm、特に20〜35cN/50mmであると、後述するようなバリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が更に安定するため好ましい。一方、それ以外の部分、例えば幅方向中間部については柔軟性を考慮して、剛性を5〜35cN/50mm、好ましくは10〜25cN/50mmと低くするのが好ましい。なお、剛性を高くする範囲は、幅方向には内装体200の幅方向両側縁から中央側に5〜30mmの範囲、前後方向には内装体200と腹側外装シート12F,背側外装シート12Bの交点から前後方向にそれぞれ50mm以内(吸収体56の括れ部56Nと重複する部分は含まない)とするのが好ましい。
剛性(剛度)は、JIS K 7171(プラスチック−曲げ剛性の試験方法)に準拠し、次の方法で測定する。測定にはテンシロン試験機(圧子先端部の曲率半径R1=5.0±0.1mm、支持プレート先端部の曲率半径R2=5.0±0.2mm)を用い、内装体200の製品前後方向の曲げ剛性を測定する。試験片は、内装体200から測定に影響する弾性伸縮部材を取り除き、これをおむつ長手方向80mm、おむつ幅方向50mmの長方形に切り取ることにより作製する。曲げ剛性値の単位中の50mmは試験片の短辺の長さであり、試験時の圧子でたわませた試験片の幅である。それぞれ断面円弧状の先端部を有し、両先端部の先端(上端)間の間隔を50mmとして、互いに平行に且つ両先端部の高さ位置を揃えて配置された一対の支持プレート上に、上記の試験片を、その長手方向を各プレートに直交する方向に向けて、掛け渡すように載置し、その試験片に僅かに接するように圧子先端部を配置する。ロードセル5kg(レンジ196cN)、速度30mm/minの条件で圧子を降下させ、荷重−たわみ曲線を得る。得られた曲げ応力の最大値を曲げ剛性値(cN/50mm)とする。なお、測定対象となる部位が上記サンプリング寸法より小さい場合は、小スケールの試験片で測定を行い、寸法比に基づいて比例計算にて換算する。
【0064】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
バリヤーカフス60,61を設ける場合、表面シート30の両側部は、液不透過性シート11とバリヤーカフス60,61との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及びバリヤーカフス60,61に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。
【0065】
(中間シート)
表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40が幅方向側部から吸収体56の裏面側まで回り込み、ホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。中間シート40の代表的な素材は液の透過性に優れる不織布である。
【0066】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。これにより、内装体200の両側部の剛性が向上するという効果も得られる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
また、液不透過性シート11の内面または外面には、印刷や着色によるデザインを施しても良い。さらに液不透過性シート11の外側に、股間部外装シート12Mとは別部材の、印刷または着色を施したデザインシートを貼り付けても良い。また、液不透過性シート11の内側に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータ80を設けることができる。
【0067】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60,61は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。
本実施の形態では、図13及び図14にも示すように、内装体200の左右各側において二重にバリヤーカフス60,61が設けられている。おむつを展開した状態では、図示のように、内側バリヤーカフス61は内装体200の側部から幅方向中央側に斜めに起立するものであり、外側バリヤーカフス60は、内側バリヤーカフス61の幅方向外側において内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0068】
より詳細には、内側バリヤーカフス61は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。細長状弾性伸縮部材63は、バリヤーシート62に対し、前後端部では固定されておらず、中間部においてバリヤーカフスが前後に伸縮するように固定されている。バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは420〜1120dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示しないが、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0069】
細長状弾性伸縮部材63は、内側バリヤーカフス61の先端部に1〜2本配置するのが好ましく、先端部と基端部との間の中間部にも1〜2本配置すると更に好ましい。中間部に細長状弾性伸縮部材63があると、これを支点として中間部から先端部に亘る範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。中間部の細長状弾性伸縮部材63の配置位置は内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の30〜70%範囲が好ましい。乳幼児用紙おむつでは、内側バリヤーカフス61の高さは15〜35mm程度が好ましいため、細長状弾性伸縮部材63の配置範囲は先端から基端側に5〜25mmの位置が好ましく、12〜18mmの位置がより好ましい。内側バリヤーカフス61の先端部及び/または中間部にそれぞれ細長状弾性伸縮部材63を平行に設ける場合は、その配置間隔61dは2〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。
【0070】
そして、内側バリヤーカフス61のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分(内側取付部分)65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分であり、内側突出部分に相当する)とされ、この突出部分66のうち前後方向両端部が表面シート30表面にホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67により固定され、前後方向中間部が非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
外側バリヤーカフス60も、内側バリヤーカフス61と基本的に同様の構造を有するものであるが、その取付部分(外側取付部分)68が、内装体200の裏面側における内側バリヤーカフス61の取付部分65よりも幅方向中央側において内側バリヤーカフス61の外面に固定される点、突出部分(外側突出部分)69のうち前後方向両端部が、取付部分68から内装体200の側部を通り内側バリヤーカフス61における内側突出部分66の前後方向両端部の表面まで延在し且つ内側突出部分66の前後方向両端部の表面に固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる点、細長状弾性伸縮部材63の配置及び本数等で異なるものである。
【0071】
ただし、内側バリヤーカフス61についても、内側突出部分の先端部は幅方向外側に折り返される構造、具体的には内側バリヤーカフス61の高さ(突出部の幅方向長さ)の1/2以下、好ましくは1/3以下であれば、外側バリヤーカフス61と同様に先端側部分が幅方向外側に折り返され且つ付け根部側部分に固定される構造を採っても良い。
外側バリヤーカフス60の自由部分(外側自由部分)に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。外側バリヤーカフス60に配置する細長状弾性伸縮部材63の太さや伸長率は、内側バリヤーカフス61に準ずるが、太さは内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより太く、伸長率は内側バリヤーカフス61のものと同じ、またはより低いほうが好ましい。
また、突出部分66,69の前後固定部67の前後方向長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは短く形成するのが好ましく、バリヤーカフス60,61における細長状弾性伸縮部材63の前後方向固定長さは、内側バリヤーカフス61の方が外側バリヤーカフス60と同じかまたは長く形成するのが好ましい。取付部分65と突出部分66との境界は、外側バリヤーカフス60と内側バリヤーカフス61とで同じ位置であっても良いが、外側バリヤーカフス60の境界が内側バリヤーカフス61の境界よりも幅方向中央側に離間しているのが好ましく、その離間距離は10mm以内が好ましい。
【0072】
外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61の取付部分68,65における突出部分66,69側の縁部には、ホットメルト接着剤やヒートシールによる線状の付け根固定部を形成するのが好ましい。また、他の固定部はホットメルト接着剤等を用いて適宜のパターンで固定することができる。この線状の付け根固定部は、内装体200の表面側の側部近傍(具体的には側縁から幅方向に0〜5mm、好ましくは0〜3mmの位置)または裏面側に位置するのが好ましい。この場合、バリヤーカフスを表面側に折り返して固定しているのは実質的に前後方向両端部のみとなるため、前後固定部67による幅方向中央側への規制が十分に作用しない股間部においては、外側バリヤーカフス60及び内側バリヤーカフス61いずれもが幅方向外側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが広くなる。表面側で側縁から幅方向に5mmを越えて線状の付け根固定部が位置すると、股間部においてもバリヤーカフスが幅方向中央側に向かって起立し、内側バリヤーカフス61の形成するポケットが狭くなるため、好ましくない。裏面側に位置する場合は、内装体200の側縁から0〜20mmの位置が適当だが、20mmを越えて位置してもよい。
外側及び内側バリヤーカフス60,61の取付部分68,65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができ、またいずれか一方のバリヤーカフスを介して他方のバリヤーカフスを内装体200に対して固定することもできる。
【0073】
かくして構成された外側及び内側バリヤーカフス60,61では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66,69のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図13に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分68,65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開くように起立するため、外側及び内側バリヤーカフス60,61が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。一方、股間部の前後両側(腹部及び背部)においては、前後固定部67により外側及び内側バリヤーカフス60,61が幅方向外側へ開かないように規制されるため、内側バリヤーカフス61は高く起立し、外側バリヤーカフス60の下半分も同様に起立するため、腹部及び背部における内装体200両脇からのもれが確実に防止できる。また、内側バリヤーカフス61の突出部分66における前後固定部67は折り返さずに、外側バリヤーカフス60の突出部部分68における前後固定部67は外向きに折り返されているため、外側及び内側バリヤーカフス60,61における内側及び外側自由部分間の離間状態が維持され、外側及び内側バリヤーカフス60,61が広い間隔で確実に起立し、それぞれが脚周りにフィットするようになるため、漏れ防止性に優れたものとなる。
【0074】
バリヤーカフス60,61の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図17に示すように、内側バリヤーカフス61の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W5は10〜50mm、特に15〜35mmであるのが好ましく、外側バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分69の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、内側バリヤーカフス61をトップシート30表面に倒した状態における先端間の離間距離W4は60〜170mm、特に70〜120mmであるのが好ましい。また、外側バリヤーカフス60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
なお、図示形態と異なり、外側及び内側バリヤーカフス60,61のいずれか一方のみを設けることもできる。
【0075】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。包被シート58は省略することもできる。
【0076】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
吸収体56は長方形形状でも良いが、図16にも示すように、前端部56F、後端部56B及びこれらの間に位置し、前端部56F及び後端部56Bと比べて幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60,61の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。具体的な寸法としては、吸収体前端部56Fの前後方向長さをL1とし、吸収体56と腹側外装シート12Fとの重なり部分における前後方向長さをL2とし、吸収体後端部56Bの前後方向長さをL3とし、吸収体56と背側外装シート12Bとの重なり部分における前後方向長さをL4とし、括れ部56Nの最小幅をW1とし、吸収体前端部56Fの幅及び吸収体後端部56Bの幅をW2としたとき、下記の式(1)〜(4)を満足するように構成されていると、好ましい。
70mm ≦ W1 < W2 ≦ 190mm …(1)
0.5 ≦ W1/W2 ≦ 0.85 …(2)
0mm ≦ L1−L2 ≦ 70mm …(3)
0mm ≦ L3−L4 ≦ 50mm …(4)
W1及びW2が狭過ぎると、バリヤーカフス60,61の起立が不安定になり、また吸収量が不十分となり、広過ぎるとフィット性の低下により装着感が悪化する。
また、上記数値範囲にあると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の取付部分65近傍に吸収体56が存在しないため、バリヤーカフス60,61の動きの自由度が増し、バリヤーカフス60,61が幅方向外側に開き易く、肌に対して面で当たりやすくなり、脚の動きに対するフィット面の追従性も向上する。前後両側においては内装体200側部の吸収体56が十分な範囲に存在するため、これを基点(支点)としてバリヤーカフス60,61の起立が安定する。前後両側から股間部に至る部分は、バリヤーカフス60,61が内装体200の幅方向両側縁を基準として幅方向内側に起立した姿勢から幅方向外側に開いていく変位部であり、このバリヤーカフス60,61の姿勢変化が内装体200側部まで存在する吸収体56により支えられ、バリヤーカフス60,61の全体的な起立形状が安定する。上記数値範囲を外れ、括れ部が大きくなりすぎると、股間部においてはバリヤーカフス60,61の自由度が高くなりすぎ、かえって脚周りに隙間ができ易くなるおそれがあり、また股間部の前後両側においても基点(支点)が無いためにバリヤーカフス60,61の起立が不安定になるおそれがある。逆に括れ部が小さくなりすぎると、バリヤーカフス60,61の自由度が低下するので好ましくない。
さらに、括れ部56N全体の前後方向長さL7は好ましくは80mm以上、特に好ましくは120〜260mmとされる。括れ部56Nの前後方向長さL7が短過ぎるとバリヤーカフス60,61の自由度が低下するとともに、吸収体56の脚周りに対するフィット性が低下して脚の動きを妨げるようになり、長すぎるとバリヤーカフス60,61の起立が安定しなくなる。
【0077】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマーとしては、抗菌物質と一体化したものを用いることができる。特に、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を銀イオンで置換してなるゼオライト粒子(以下、これを抗菌消臭性ゼオライトという)を高吸収性ポリマー中に含有させるか、あるいは抗菌消臭性ゼオライト粒子を高吸収性ポリマー粒子の表面に静電気により付着させてなる、抗菌消臭性高吸収性ポリマー粒子が好適である。
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0078】
(包被シート)
包被シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
この包被シート58は、図12のように、吸収体56全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0079】
(股間部外装シート)
内装体200の裏面側には、製品外面に露出する股間部外装シート12Mが設けられている。この股間部外装シート12Mの素材としては、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bと同様のものを用いることができるが、より高強度の素材や消臭剤を含有するもの等、腹側外装シート12F及び背側外装シート12Bとは異なる素材を用いることもできる。具体的には、PP、PP/PE、PP/PET等の繊維からなる、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアーポイント不織布、スパンレース不織布、SMS不織布等の各種不織布、あるいはこれに消臭剤等を添加したもの等を用いることができる。
股間部外装シート12Mには座位時に高い体圧がかかる。よって、摩擦堅牢度の高い(毛羽立たない)特性を有する素材が好ましい。
股間部外装シート12Mは、印刷や着色を行い、デザイン要素を備えたシートとしてもよい。前述のデザインシートと併用する場合は、それぞれのデザインが重ならないように配置することが好ましい。
股間部外装シート12Mとして伸縮不織布を用い、内装体200の長手方向に伸長して貼り付けると、股間部のフィット性が向上するため好ましい。
股間部外装シート12Mが幅方向側部から身体側面まで回り込み、バリヤーシート62の外面にホットメルト接着剤等により接着固定されていると、内装体200の両側部の剛性が向上する。このような形態においては、股間部外装シート12Mに剛度(コシ度)の高いシートを用いることが好ましい。具体的には、クラーク法(JISL1096 C法)によって測定される剛軟度の、シートのMD方向とCD方向との和が100mm以上、好ましくは150mm以上のシートを用いるとよい。
図示例では、腹側及び背側外装シート12F,12Bと内装体200とが重なる部分において、股間部外装シート12Mは内装体200と腹側及び背側外装シート12F,12Bとの間に挟まれているが、腹側及び背側外装シート12F,12Bの外側に貼り付けることも可能である。股間部外装シート12Mは、ホットメルト接着剤等により内装体200の裏面、並びに腹側及び背側外装シート12F,12Bの内面若しくは外面に貼り付けられる。
【0080】
<バリヤー体>
特徴的には、上記止着式おむつ及びパンツ型の各形態において、身体側に隆起する棒状のバリヤー体20が背側上端部に幅方向に沿って設けられている。特に上記パンツ型の形態では、バリヤー体20が背側上端部だけでなく腹側上端部にも設けられており、止着式の形態ではバリヤー体20が腹側上端部には設けられていないが、止着式の形態においても同様の構造を採用することができる。
バリヤー体20は身体側に隆起する限り、図4等に示す形態のようにトップシート30の身体側に設けるほか、トップシート30の裏面側に設けることもでき、例えば図9に示すようにトップシート30とその裏面側の液不透過性シート11との間に設けたり、図示しないが液不透過性シートと外装シート12との間に設けたりすることもできる。また、図示形態では、バリヤー体20は、両側の側部バリヤーカフス60の上に跨るように設けられているが、側部バリヤーカフス60間内に収めてトップシート上にのみ設けたり、幅方向の両端部を側部バリヤーカフス60とトップシート30との間に挟み、これらの間の部分をトップシート30上に配置してもよい。
バリヤー体20は、図4に示されるように、シートを細長筒状に形成してなる包装体21内に、少なくとも吸収体56と幅方向範囲が重なる部分に圧縮復元性材料22が詰め入れられているものである。このようなバリヤー体20は、それ自体立体的な形状であるとともに、各部が独立的且つ自由に変形できるため、身体表面の複雑且つ立体的な凹凸に対して良好にフィットする。また、バリヤー体20の股間側に身体から離間した空間23が確保されるため、排泄物の堰き止め許容量が格段に多くなるとともに、外圧が加わってもバリヤー体20で堰き止めた排泄物がこの空間23内に逃がされて貯められ、排泄物が押し出されて漏出するといった事態が発生し難くなる。
【0081】
バリヤー体20の厚み20hや圧縮復元性は適宜定めることができるが、例えば吸収体56を有する部分の初期厚みT0が4〜8mmである乳児用のおむつにおける水様便や軟便の堰き止めを想定した場合、バリヤー体20は、初期厚みT0が5〜20mmであり、厚さ方向における圧縮剛さLCが0.75〜0.99であり、厚さ方向における圧縮エネルギーWCが6.000〜9.500gf・cm/cm2であり、厚さ方向における圧縮レジリエンスRCが40〜70%であるのが好ましい。また、バリヤー帯20の初期厚みT0は、吸収体56を有する部分の初期厚みT0より厚いと、着用者に良好にフィットするため、好ましい。圧縮剛さLCは1に近い程圧縮剛いことを意味し、圧縮エネルギーWCは大きい程圧縮され易いことを意味し、圧縮レジリエンスRCは値が100に近い程圧縮に対する回復性がよいことを意味する。初期厚みT0、圧縮剛さLC、圧縮エネルギーWCおよび圧縮レジリエンスRCは、KES(Kawabata's Evaluation System for Fabrics)に基づき、KES-FB3-AUTO-A 自動化圧縮試験機を用いて計測する。測定は、圧縮面積2cm2の円形平面をもつ鋼板間で、0gf/cm2から最大圧縮荷重50gf/cm2まで試料を圧縮し、元に戻す間で行う。初期厚みT0は、圧力0.5gf/cm2における試料の厚みである。圧縮剛さLCは、圧縮変位の直線性を表わし、荷重と変位( 圧縮による厚さの減少)が比例するもの程数値が大きくなる。また、圧縮エネルギーWCは圧縮の仕事量を表し、数値が大きい程、膨らみ感、腰感に優れる。また、圧縮回復率RCは、圧縮回復性を表わし、数値が大きい程ヒステリシスが小さい。
【0082】
このような厚みや圧縮復元性は、包装体21内に詰める圧縮復元性材料22の素材、量、構造により調整することができる。圧縮復元性材料22は、包装体21内周面に隙間無く密着しているのが好ましいが、多少の隙間があっても良い。
圧縮復元性材料22の素材としては、捲縮フィラメントのトウを開繊して得られる嵩高な捲縮フィラメントの集合体、パルプ等のステープルを積繊等して得られるステープル集合体、発泡ウレタンフォーム、ゴム、不織布、発泡ホットメルト接着剤等を用いることができる。
圧縮復元性材料22の形状は適宜定めることができ、図4及び図6に示すように棒状のものを用いる他、図7に示すようにシート状のものを折り曲げる若しくは丸めて用いたり、図8に示すように筒状のものを用いたりすることもできる。これらの形態のうち、棒状の形態に用いる素材としては、捲縮フィラメント集合体やステープル集合体等の繊維集合体、発泡ウレタンフォームや発泡ホットメルト接着剤等の発泡樹脂が好適であり、シート状の形態に用いる素材としては、発泡ウレタンフォーム、ゴム、不織布が好適であり、筒状の形態に用いる素材としては、発泡ウレタンフォーム、ゴムが好適である。
【0083】
包装体21に用いるシートとしては、圧縮復元性材料の変形を阻害し難い程度に十分に柔軟なものが好ましく、この観点から、初期厚みT0が0.05〜1.0mm、特に0.1〜0.5mmであり、曲げ剛さBが1〜100gf・cm2/cm、特に4〜20gf・cm2/cmであり、且つ曲げヒステリシス2HBが1〜20gf・cm/cm、特に2〜10gf・cm/cmであるシートが好ましい。曲げ剛さBは大きい程曲げ剛いことを意味し、曲げヒステリシス2HBは大きい程曲げ回復性が悪いことを意味する。曲げ剛さBおよび曲げヒステリシス2HBは、KES(Kawabata's Evaluation System for Fabrics)に基づき、KES-FB2-AUTO-A 自動化純曲げ試験機を用いて計測する。測定は20cm×20cmの試料を間隔1cmのチャックに把持し、曲率K=−2.5〜+2.5cm-1の範囲で、変形速度0.50cm-1/secの等速度曲率の純曲げを行なう。Bは試料の単位長さ当りの曲げモ−メントMと曲率Kとの曲線の傾斜を表わす。ここでは、曲率K=0.5と1.5との間の傾斜、曲率K=−0.5と−1.5との間の傾斜を平均した値を用いる。また2HBは、曲率K=0.5〜1.5及び曲率K=−0.5〜−1.5の範囲におけるヒステリシス幅の平均値のことである。ここでは曲率K=0.5,1.5,−0.5,−1.5の平均値を用いる。
【0084】
これらのシートを筒状に丸めて端部を重ねてホットメルト接着剤を用いて接着することにより、筒状の包装体21を形成することができる。シートの素材としては、排泄物の染み出しを防止する観点からは、撥水性の各種不織布(SMS、スパンボンド、メルトブローン、エアスルー等)が好ましいが、親水性不織布のような液透過性シートを用いるとともに、圧縮復元性材料22として液吸収性材料を用い、バリヤー体20に吸収性を持たせることも可能である。この場合における親水性不織布としてはエアレイド不織布や、スパンボンド不織布、スパンレース不織布が好適であり、また、圧縮復元性材料22としては捲縮フィラメント集合体やステープル集合体が好適であり、これに必要に応じて粒子状又は繊維状の高吸収性ポリマーを混合することができる。
【0085】
また、外装不織布12として撥水性不織布を用いた場合、図15及びその拡大図である図21に示すように、外装不織布12をおむつ前後端で身体側に折り返し、この折り返し部分の先端部12Fを、バリヤー体20の非取付部分(裏面側部材に対する取付部分20Fを除く部分)にホットメルト接着剤HM等により接合するのも好ましい形態である。この場合、バリヤー体20の少なくともおむつ上端側の面が撥水性不織布により被覆され、バリヤー体20内を通じた排泄物の染み出しが防止される。もちろん、バリヤー体20の非取付部分全体を被覆することも可能であり、この場合、外装不織布12の折り返し部分は、バリヤー体20に接合する他、バリヤー体20よりも股間側の他の部材、例えばトップシート30等に接合することもできる。この構造は、止着式の形態でも採用できる。また、パンツ型の形態において、図22に示すように、外装不織布12をおむつ前後端で身体側に折り返した部分の内面に、バリヤー体20を取り付けることもできる。
【0086】
バリヤー体20の厚みは部位に応じて変化させることができる。例えば、バリヤー体20の厚みがおむつ幅方向両端に向かうにつれて薄くなる形状を有していると、腰部曲線に対するフィット性が高まり、特にバリヤー体20の両端部と身体との間に隙間が生じ難いため好ましい。このような形状は、包装体21の形状や、バリヤー体20の長手方向における圧縮復元性材料22の充填量を変化させることにより形成することができる。
バリヤー体20の断面形状は、図4等に示す丸棒状の他、図6に示すような上底が下底よりも長い台形状等の角棒状、図7に示すようなかまぼこ形等適宜定めることができる。特に図6に示すような角棒状とする場合、角位置に沿って、糸ゴム等の細長状弾性部材25が伸張状態で固定されていると、形状保持性、復元性が向上するため好ましい。
【0087】
特に、バリヤー体20の圧縮復元性材料を内包する部分22cにおける厚み方向中央より裏面側に、弾性部材25がおむつ幅方向に沿って伸張した状態で固定されていると、図5に示すように、バリヤー体20における圧縮復元性材料を内包する部分22cが、おむつ幅方向中央側ほど身体側に膨出するように反り、腰部のくびれ形状に対するフィット性が高まる。一方、バリヤー体20の厚み方向中央より表面側に、弾性部材25がおむつ幅方向に沿って伸張した状態で固定されていると、バリヤー体20の反りを防止したり、バリヤー体20の断面形状を強制したりすることができる。図5に示す弾性部材25はバリヤー体20内に設けられているものであるが、同様の効果は、バリヤー体25内に設けられていなくても発揮される。例えば前述の背側伸縮シート70がバリヤー体20の裏面側に設けられているだけでも、その収縮作用により、バリヤー体20がおむつ幅方向中央側ほど身体側に膨出するように反り、腰部に対するフィット性が向上する。
【0088】
他方、包装体21における圧縮復元性材料内包部分22cのおむつ幅方向範囲22Wは適宜定めることができ、その全体とすることもできるが、上記止着式の形態のように、吸収体56よりも幅方向外側に、側部バリヤーカフス60の固着部分が位置する場合、前述の側部バリヤーカフス60が設けられている場合、吸収体56の一方の側縁から他方の側縁までの幅方向範囲56W以上、かつ一方の側部バリヤーカフス60の固着部分から他方の側部バリヤーカフス60の固着部分までの幅方向範囲60W以下とすると、バリヤー体20の両端部と身体との間に隙間が生じ難いため好ましい。上記パンツ型の形態の場合には、圧縮復元性材料内包部分22cのおむつ幅方向範囲22Wは、内装体200における一方の側縁から他方の側縁までの幅方向範囲W1以上、かつ胴回り部の接合部12A間の幅方向範囲12W未満とするのが好ましい。
この場合、上記パンツ型の形態で採用されているように、包装体21だけはおむつの幅方向一端から他端まで連続的に延在させ、前述したように製造時にバリヤー体20を製造ラインの流れ方向に沿って連続的に取り付けられるように構成するのも好ましい。なお、この構造は、止着式においても採用することができるが、止着式の使い捨ておむつは、製造ラインの流れ方向とおむつの幅方向とが直交する製造形態が広く採用されており、パンツ型においては、製造ラインの流れ方向とおむつの幅方向とが平行となる製造形態が広く採用されているため、特にパンツ型の使い捨ておむつに好適な形態ということができる。
【0089】
バリヤー体20をエンドフラップ部BEに設け、バリヤー体20の股間側端と吸収体56の上端との間を離間させると、バリヤー体20の股間側に身体から離間した空間23がより多く確保されるため好ましい。また、この離間距離23Lが過度に狭いと効果が不十分となり、過度に広げても外圧により潰れてしまうため、適度な長さとするのが好ましい。具体的に、水様便、軟便を頻繁に排泄する新生児〜12ヶ月程度までの乳幼児用おむつの場合、この離間距離23Lが5〜15mmであると好ましい。
これに対して、本発明では、図10に示すように、バリヤー体20を、エンドフラップ部BEの股間側端部から吸収体56の上端部(バリヤー体20側端部)に跨るように設け、バリヤー体20で堰き止めた排泄物を吸収体56に吸収させるように構成する。この場合、同図に示すように、吸収体56の少なくとも上端部が、バリヤー体20に近づくにつれて厚さが増すような隆起形状を有していると、バリヤー体20で堰き止めた排泄物が股間側に戻りやすくなるため好ましい。
バリヤー体20における圧縮復元性材料22を内包する部分22cと、おむつ前後端との離間距離24Lは適宜定めることができるが、バリヤー体20の初期厚みT0以下であることが好ましく、さらに0〜15mmであるのが好ましい。離間距離24Lがあまり大きくなると、おむつの前後端が肌面から浮いてひらひらし、装着感及び外観が悪化する。
バリヤー体20の取り付け構造は適宜定めることができるが、図示形態では、裏面側部材(トップシート30、バリヤーシート62等)に対して、ホットメルト接着剤HMを用いて接合されている。圧縮復元性材料22を内包しない両端部22eでは、包装体21を平坦に潰して固定するために、図23に示すように、ヒートシールや超音波シールによる接合HSを併用して固定するのが好ましい。
【0090】
バリヤー体20の接合幅(装着状態において股間部を下とした場合の上下方向幅)20Wは適宜定めることができるが、圧縮復元性材料22を内包する部分22cでは、図23(a)〜(c)に接着剤HMによる接合部分を点模様で示すように、包装体21の円筒状態での外周の1/16〜1/2、特に1/8〜3/8程度とするのが好ましい。この場合、身体に対するフィット性を損ねずに、バリヤー体20の変形の自由度を高くすることができ、また、図4等に示すように、バリヤー体20における接合部分20Fより上側(装着状態において股間部を下とした場合)が股間側に迫り出し、この迫り出し部分の下側に排泄物を受け入れることができるため、堰き止め効果がより一層のものとなる。
この接合部分の位置は、バリヤー体20の上下方向(装着状態において股間部を下とした場合)の下側のみ、中央部のみ(図23(a))、及び上側のみ(図23(b))のいずれでもよいが、後二者が好ましい。
また、図23(c)に示すように、接合幅20Wがおむつ幅方向両側に向かうにつれて少なくとも股間側に拡大されていると、バリヤー体で堰き止めた排泄物がおむつ幅方向外側に広がり難くなるため好ましい。
【0091】
更にこれを発展させて、圧縮復元性材料内包部分22cにおける、おむつ幅方向両端部c1,c1及びこれらの間の中間部c2のうち、両端部c1における接合幅20W1を包装体21の円筒状態での外周の1/2よりも5mm狭い幅から外周の1/2程度(外周の1/2−5mm〜外周の1/2)とし、中間部c2における接合幅20W2を、包装体21の円筒状態での外周の1/16〜1/2、特に1/8〜3/8程度とし、且つ20W2<20W1とするのも好ましい形態である。この場合、中間部c2ではバリヤー体20の上側部分が股間側に迫り出すとともに、その両側c1では迫り出し部分と対応する部分を含めて接合されているため、迫り出し部分の下側に受け入れた排泄物が取り囲まれて、おむつ幅方向外側への移動が堰き止められる。
特に、図23(d)に示す形態は、中間部c2の接合幅20W2がおむつ幅方向に一定であるものである。また、図23(e)及び(d)に示す形態は、中間部c2の接合幅20W2がおむつ幅方向両側に向かうにつれて少なくとも股間側に拡大されている形態であり、図23(e)に示す形態における接合幅20W2の変化は円弧状をなしており、図23(e)に示す形態における接合幅20W2の変化は直線状をなしているものである。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、上記例のような止着式使い捨ておむつやパンツ型使い捨ておむつに好適なものであるが、他の形態の使い捨ておむつにも適用できるものである。例えば、パンツ型使い捨ておむつでは、上記例のような腹側外装シートと背側外装シートが離間された構造に限らず、腹側から股間部を経て背側に至る一体的な外装シートを有する構造も当然含み、また、パッド型のようなその他の形状の使い捨ておむつにも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10…吸収性本体部、11…液不透過性シート、12…外装シート、20…バリヤー体、21…包装体、22…圧縮復元性材料、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…繊維、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、58…包被シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート、70…背側伸縮シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収体が介在する部分である吸収性本体部と、前記吸収性本体部の後側に延出する部分であって、且つ前記吸収体を有しない部分である背側のエンドフラップ部と、前記吸収性本体部の前側に延出する部分であって、且つ前記吸収体を有しない部分である腹側のエンドフラップ部とを有し、
身体側に隆起する棒状のバリヤー体が、背側上端部及び腹側上端部の少なくとも一方に、少なくとも前記吸収体と幅方向範囲が重なるように幅方向に沿って延在する
使い捨ておむつであって、
前記バリヤー体は、シートを細長筒状に形成してなる包装体内に圧縮復元性材料を詰め入れてなり、且つ少なくとも前記吸収体と幅方向範囲が重なる部分に前記圧縮復元性材料が詰め入れられているものであり、
前記バリヤー体は、前記エンドフラップ部の股間側端部から前記吸収体の上端部に跨るように、前記エンドフラップ部と前記吸収体との境界線に沿って設けられている、
ことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記バリヤー体は、初期厚みT0が5〜20mmであり、厚さ方向における圧縮剛さLCが0.75〜0.99であり、厚さ方向における圧縮エネルギーWCが6.000〜9.500gf・cm/cm2であり、且つ厚さ方向における圧縮レジリエンスRCが40〜70%である、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記圧縮復元性材料は、捲縮フィラメントの集合体又はステープルの集合体である、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記圧縮復元性材料は、シート状の発泡ウレタンフォーム、ゴム若しくは不織布を折り曲げる若しくは丸めてなるもの、又は筒状若しくは棒状の発泡ウレタンフォーム若しくはゴムである、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記バリヤー体は、おむつ幅方向両端に向かうにつれて厚みが薄くなる形状を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記包装体はおむつの幅方向一端から他端まで連続的に延在するとともに、少なくとも吸収体と幅方向範囲が重なる部分を含む主要部分及びその幅方向両側に位置する両端部のうち、主要部分内に前記圧縮復元性材料が詰め入れられるとともに、両端部内には前記圧縮復元性材料が詰め入れられていない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記包装体をなすシートは、初期厚みT0が0.05〜1mmであり、曲げ剛さBが1〜100gf・cm2/cmであり、且つ曲げヒステリシス2HBが1〜20gf・cm/cmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記包装体をなすシートが撥水性不織布である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項9】
前記包装体をなすシートが親水性不織布であり、前記圧縮復元性材料が液吸収性材料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項10】
前記吸収体の少なくとも上端部は、前記バリヤー体に近づくにつれて厚さが増すような隆起形状を有している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項11】
おむつの両側部に、使用面側に起立する側部バリヤーカフスがそれぞれ前後方向に沿って設けられており、
各側部バリヤーカフスは、幅方向外側の部分がおむつの側部に固着された固着部分とされ、幅方向内側の部分のうち前後方向両端部がおむつに固定された固定部とされ、且つこれら固定部間の前後方向範囲が自由部分とされており、
前記吸収体よりも幅方向外側に、前記側部バリヤーカフスの固着部分が位置しており、
前記バリヤー体における前記圧縮復元性材料を内包する部分の幅方向範囲は、前記吸収体の一方の側縁から他方の側縁までの幅方向範囲以上、かつ一方の側部バリヤーカフスの固着部分から他方の側部バリヤーカフスの固着部分までの幅方向範囲以下とされている、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項12】
前記バリヤー体のうち前記圧縮復元性材料を内包する部分は、裏面が前記包装体の円筒状態での外周の1/16〜1/2に相当する接合幅をもっておむつ幅方向に沿って連続的に前記バリヤー体の裏面側に位置する部材に接合されており、この接合部以外の部分は隣接部材に接合されていない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項13】
前記接合幅は、おむつ幅方向両側に向かうにつれて少なくとも股間側に拡大されている、請求項12記載の使い捨ておむつ。
【請求項14】
前記バリヤー体の前記圧縮復元性材料を内包する部分における、おむつ幅方向両端部及びこれらの間の中間部のうち、
おむつ幅方向両端部では、裏面が前記包装体の円筒状態での外周の1/2−5mm〜外周の1/2に相当する接合幅をもって前記バリヤー体の裏面側に位置する部材に接合されるとともに、この接合部以外の部分は隣接部材に接合されておらず、
おむつ幅方向中間部では、裏面が前記包装体の円筒状態での外周の1/16〜1/2に相当する接合幅をもっておむつ幅方向に沿って連続的に前記バリヤー体の裏面側に位置する部材に接合されるとともに、この接合部以外の部分は隣接部材に接合されておらず、
前記おむつ幅方向両端部における接合幅が、前記おむつ幅方向中間部における接合幅よりも大きい、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項15】
前記バリヤー体の圧縮復元性材料を内包する部分における厚み方向中央より裏面側に、弾性部材がおむつ幅方向に沿って伸張した状態で固定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項16】
前記バリヤー体の圧縮復元性材料を内包する部分における厚み方向中央より表面側に、弾性部材がおむつ幅方向に沿って伸張した状態で固定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項17】
前記バリヤー体の裏面側に撥水性不織布を有し、この撥水性不織布がおむつ前後端で身体側に折り返され、この折り返し部分により前記バリヤー体における少なくともおむつ上端側の面が被覆されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−91054(P2012−91054A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31231(P2012−31231)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2007−200145(P2007−200145)の分割
【原出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】