説明

使い捨ておむつ

【課題】着用者の腹囲変動に対する追従性に優れ、着用者の胴回りに対するフィット性に優れると共に、外観や装着性にも優れた使い捨ておむつを提供すること。
【解決手段】おむつ本体2の背側部分Aの両側部に、止着部31を備えたファスニング部材3を有する使い捨ておむつ1であり、ファスニング部材2は、おむつ本体2に固定された基端部32と、おむつ本体に形成された収容部5内に収容された伸縮性幅広部33と、伸縮性幅広部33よりおむつ長手方向Xの長さが短い把持部37とを有しており、伸縮性幅広部33は、収容部5内においておむつ幅方向Yに伸縮可能であり、把持部37は、収容部5から延出した部分に止着部31を有しており、収容部5は、おむつ幅方向外方側の端部に、おむつ長手方向の長さが伸縮性幅広部33より短いファスニング部材引き出し口52を有し、把持部37がファスニング部材引き出し口52に挿通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、おむつ本体の背側に配される部分(背側部分)の両側部に、止着部を備えたファスニング部材を有し、該おむつ本体の腹側に配される部分(腹側部分)に、該止着部を止着する被止着領域を有する展開型の使い捨ておむつが広く知られている。
また、特許文献1には、展開型の使い捨ておむつとして、おむつ本体の背側部分の外面に、挿通方向がおむつ幅方向となるベルトホールと、このベルトホールに通される、長手方向に弾性伸縮するウエストベルトとを設け、該ウエストベルトの長手方向両端部に、おむつ本体の腹側部分の外面と係止可能な係止部を設けたものが記載されている。
また、特許文献2には、展開型の使い捨ておむつとして、ファスニング部材の一部に伸縮部を設けると共に、該ファスニング部材の大部分を、おむつ本体の背側部分に設けた収容部内に収容しておき、おむつを装着する際に、そのファスニング部材の止着部を引き出して、腹側部分の被止着領域に止着させるようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−72657号公報
【特許文献2】特開2003−275246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1におけるウエストベルトは、おむつ着用中に、伸縮性を有する部分が、おむつ本体の両側縁から引き出されて、おむつの他の部分やおむつに重ねて着る衣類等に接するため、肌等との摩擦等により伸縮性が低下し、着用者の腹囲変動に対して充分な追従性が得られなくなる。また、ベルトホールの存在によって、おむつの外観が悪化したり、ベルトホールが他のものに引っ掛かりやすい等の不都合がある。
【0005】
また、特許文献2の使い捨ておむつにおいては、ファスニング部材が、その略全長においておむつ長手方向の長さが等しく、ファスニング部材の引き出し口の同方向の長さがファスニング部材と同程度であるため、ファスニング部材が引っ張られることにより、ファスニング部材の伸縮部がネックインし、それにより、前記の引き出し口が、おむつの厚み方向に大きく開いて、おむつの外観が悪化したり、開いた引き出し口が他のものに引っかかり易くなる等の不都合がある。なお、ネックインとは、伸長により伸長方向と直交する方向の寸法が減少することをいう。
【0006】
従って、本発明の課題は、着用者の腹囲変動に対する追従性に優れ、着用者の胴回りに対するフィット性に優れると共に、外観や装着性にも優れた使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、おむつ本体の背側部分の両側部に、止着部を備えたファスニング部材を有する使い捨ておむつであって、前記ファスニング部材は、前記おむつ本体に固定された基端部と、該おむつ本体に形成された収容部内に収容された伸縮性幅広部と、該伸縮性幅広部よりおむつ長手方向の長さが短い把持部とを有しており、前記伸縮性幅広部は、前記収容部内においておむつ幅方向に伸縮可能であり、前記把持部は、前記収容部から延出した部分に前記止着部を有しており、前記収容部は、おむつ幅方向外方側の端部に、おむつ長手方向の長さが前記伸縮性幅広部より短いファスニング部材引き出し口を有し、前記把持部が、該ファスニング部材引き出し口に挿通されている使い捨ておむつを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の使い捨ておむつは、着用者の腹囲変動に対する追従性に優れ、着用者の胴回りに対するフィット性に優れると共に、外観や装着性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の使い捨ておむつを示す平面図である。
【図2】図2は、図1の使い捨ておむつにおけるファスニング部材の配置部分を、該ファスニング部材を覆うシートを省略して示す図である。
【図3】図3(a)は、図2のI−I線断面図、図3(b)は、図2のII−II線断面図である。
【図4】ファスニング部材が引っ張られて、伸縮性幅広部が、ファスニング部材引き出し口の上下に位置する部分に突き当たった状態を示す図(図2相当図)である。
【図5】図5は、ファスニング部材の他の例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態の使い捨ておむつを示す平面図である。
【図7】図7は、第2実施形態の使い捨ておむつの好ましい製造方法の説明図である。
【図8】図8(a)は、本発明の第3実施形態の使い捨ておむつを示す平面図、図8(b)は、本発明の第4実施形態の使い捨ておむつを示す平面図である。
【図9】図9は、第3及び第4実施形態の図3(a)に対応する断面図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施形態のファスニング部材及びその近傍を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の第1実施形態の使い捨ておむつ1は、図1に示すように、おむつ本体2の背側部分Aの両側部に、止着部31を備えたファスニング部材3,3を有し、該おむつ本体2の腹側部分Bに、該止着部31を止着する被止着領域4を有する。
【0011】
おむつ本体2は、図1に示すように、液透過性の表面シート21、液不透過性又は撥水性の裏面シート22、これら両シート21,22間に介在された液保持性の吸収体23を備えており、更に表面シート21の両側に、一部を表面シート21に重ねた状態に配された一対の立体ガード形成用シート24,24を備えている。立体ガード形成用シート24は、表面シート21の両側部及び該表面シートの両側縁から延出した裏面シート22に固定されている。表面シート21の両側縁(不図示)は、吸収体23の両側縁の近傍に位置し、おむつ1の長手方向Xに沿って延びている。立体ガード形成用シート24は、それぞれ、おむつ1の長手方向中央線CL側の側縁の近傍に、立体ガード形成用の弾性部材25が、該側縁に沿って伸長状態で固定されており、おむつの着用時には、該端縁から所定幅の部分が表面シート21から離間して立体ガードを形成する。また、おむつ本体2の長手方向両側部の脚廻りに配される部分には、レッグギャザー形成用の弾性部材26が配されている。おむつの着用時には、弾性部材26の収縮によりレッグギャザーが形成され、脚廻りに対して良好なフィット性が得られる。
【0012】
おむつ本体2の背側部分Aは、おむつの着用時に着用者の背側に配される部分であり、おむつ本体2の腹側部分Bは、おむつの着用時に着用者の腹側に配される部分であり、おむつ本体2の股下部分Cは、おむつを平面状に拡げた状態において、背側部分Aと腹側部分Bとの間に位置する部分である。おむつの長手方向Xは、背側部分Aから股下部分Cを経て腹側部分Bに至る方向であり、おむつの幅方向Yは、おむつの長手方向Xと交差する方向である。また、背側部分A又は腹側部分Bにおける、おむつ長手方向と同方向を上下方向ともいい、その上下方向のうち股下部分に近づく方向を下方、股下部分Cから離れる方向を上方ともいう。
第1実施形態のおむつ1は、おむつ本体2と一対のファスニング部材3,3とを備えてなる。
【0013】
以下、おむつ1におけるファスニング部材3及びその周辺の構造について説明するが、第1実施形態のおむつ1は、図1に示すように、長手方向中央線CLに対して左右対称に形成されているため、以下の説明においては、主として、図1の右側のファスニング部材及びその周辺の構造について説明するが、左側のファスニング部材及びその周辺の構造についても左右対称である以外は同様の構造を有している。
【0014】
図2及び図3に示すように、ファスニング部材3は、おむつ本体2に固定された基端部32と、おむつ本体2に形成された収容部5内に収容された伸縮性幅広部33と、伸縮性幅広部33よりおむつ長手方向の長さが短い把持部37とを有している。基端部32、伸縮性幅広部33及び把持部37は、おむつ幅方向Yの内側(長手方向中央線CL側)から外側に向かって、この順に形成されている。
【0015】
ファスニング部材3の基端部32は、図3に示すように、おむつ本体を構成する2枚のシート24,22間に接着剤51を介して固定されている。本実施形態における基端部32は、図3に示すように、基端部形成シート32a及び該シート32aの端部に接合されたシート状の伸縮性部材35aの一部からなるが、これに代えて、基端部形成シート32aのみが、おむつ本体を構成する2枚のシート24,22間に固定されて基端部32を構成していても良いし、基端部形成シート32aが存在せずに、シート状の伸縮性部材35aの一部が、おむつ本体を構成する2枚のシート24,22間に固定されて基端部32を構成していても良い。
【0016】
ファスニング部材3の伸縮性幅広部33は、図3に示すように、シート状の伸縮性部材35aからなる伸縮部35を有している。シート状の伸縮性部材35aは、おむつ1の幅方向Yに伸縮性を備えており、それによって、伸縮部35及び伸縮性幅広部33も、おむつ1の幅方向Yに伸縮性を有している。
伸縮性幅広部33という用語の「幅広」は、伸縮性幅広部33が、把持部37との関係において幅広であることを意味する。ここでいう幅は、ファスニング部材3における、おむつ長手方向Xに沿う方向の長さである。従って、伸縮性幅広部33が把持部37より幅広とは、伸縮性幅広部33のおむつ長手方向の長さL1(図2参照)が、把持部37のおむつ長手方向の長さL2(図2参照)より長いことと同義である。
伸縮性幅広部33のおむつ長手方向の長さL1が、把持部37の同方向の長さL2より長いことによって、伸縮性幅広部33に、把持部37の上縁部37uより上方に張り出し、後述する引き出し口形成用の上方固定部53uに突き当たる上方張り出し部36uと、把持部37の下縁部37dより下方に張り出し、後述する引き出し口形成用の下方固定部53dに突き当たる下方張り出し部36dとが形成されている。
【0017】
伸縮性幅広部33は、おむつ本体2に形成された収容部5内に収容されている。本実施形態における収容部5は、図2及び図3に示すように、おむつ本体を構成する2枚のシート24,22間を、収容部5とする矩形状の領域の周囲において接着剤51により接合する一方、該矩形状の領域においては、シート24,22どうし間、及びファスニング部材3とシート24及び22との間を何れも接合しないことによって形成されている。
また、収容部5は、おむつ幅方向外方側の端部に、おむつ長手方向の長さが伸縮性幅広部33より短いファスニング部材引き出し口52を有している。ファスニング部材引き出し口52のおむつ長手方向の長さL3(図2参照)が、伸縮性幅広部33の同方向の長さL1(図2参照)よりも短いことによって、伸縮性幅広部33における把持部37から張り出した部分、具体的には、上述した上方張り出し部36u及び下方張り出し部36dがファスニング部材引き出し口52の上下に位置する上方固定部53u及び下方固定部53dに確実に突き当たる。
【0018】
本実施形態における伸縮性幅広部33においては、図2及び3に示すように、シート状の伸縮性部材35aのおむつ幅方向内方側(図2,3中左側)の端部には、基端部形成シート32aの端部が公知の接合方法(接着剤、熱融着、それらの併用等)により接合されている。
また、シート状の伸縮性部材35aのおむつ幅方向外方側(図2,3中右側)の端部には、把持部形成シート37aの端部が公知の接合方法(接着剤、熱融着、それらの併用等)により接合されている。把持部形成シート37aの前記端部は、図2に示すように、おむつ長手方向の長さが、把持部37の同方向の長さより長く、伸縮性幅広部33の同方向の長さと略等しくなっている。
【0019】
ファスニング部材3の把持部37は、図2に示すように、ファスニング部材3の引き出し口52に挿通されている。また、把持部37は、収容部5から延出した部分に止着部31を有している。止着部31は、図3に示すように、機械的面ファスナーのオス部材31aを、把持部形成シート37aに公知の接合方法(接着剤、熱融着、それらの併用等)により接合することによって形成されている。他方、おむつ本体2の腹側部分Bの裏面シート側の面には、機械的面ファスナーのメス部材が公知の接合方法(接着剤、熱融着、それらの併用等)によって接合され、それによって、腹側部分Bの外面にファスニング部材3の止着部31を止着する被止着領域4が形成されている。
【0020】
図2に示すファスニング部材3の把持部37は、伸縮性幅広部33に隣接する部位から先端37tに亘る略全域において、おむつ長手方向の長さが略均一であるが、図5に示すように、把持部37のおむつ長手方向の長さは、先端37tに向かって拡大していても良い。但し、把持部37は、おむつ1を着用者に装着する前の状態(伸縮性幅広部33を伸長させていないおむつ自然状態,図2参照)において、伸縮性幅広部33から引き出し口52までの範囲のおむつ長手方向の長さが略均一であることが、伸縮性幅広部33の伸縮性や、ファスニング部材3を引き出したときの安定性等の観点から好ましい。把持部37の幅(おむつ長手方向の長さ)が、おむつ幅方向において変動する場合の把持部37のおむつ長手方向の長さL2は、ファスニング部材引き出し口52の幅とする。
【0021】
第1実施形態のおむつ1を装着する際には、おむつ本体2の背側部分Aを着用者の背中側、腹側部分Bを着用者の腹側にあてがい、ファスニング部材3の把持部37を手で引っ張り、左右両側のファスニング部材3,3の止着部31を、腹側部分Bの外面に設けた被止着領域4に止着させて装着する。
この装着状態においては、ファスニング部材3は、伸縮性幅広部33が適度に伸長した状態となる。
【0022】
本実施形態のおむつ1によれば、おむつ1の装着の際や着用中に、ファスニング部材3に大きな引っ張り力が作用し、伸縮性幅広部33が大きく伸長しても、図4に示すように、伸縮性幅広部33における把持部37から上下に張り出した部分36u,36dが、それぞれ、ファスニング部材引き出し口52の上下に位置する部分53u,53dに突き当たり、伸縮性幅広部33がファスニング部材引き出し口52から外部に引き出されることが阻止される。
そのため、伸縮性幅広部33は、摩擦による伸縮性を阻害されることなく、おむつ本体内の収容部5内において自由に伸縮する。そのため、着用者の腹囲変動に対して充分な追従性が得られ、着用者の胴回りに対するフィット性に優れている。
また、伸縮性幅広部33が、収容部5から外部にでないため、伸縮性幅広部33における把持部37から上下に張り出した部分36u,36dが、肌に触れて着用者、親、介護者等に不快感を与えることもない。
【0023】
また、ファスニング部材引き出し口52の前記長さL3が伸縮性幅広部33の前記長さL1より短く、そのファスニング部材引き出し口52に、引き出し口52と同じ幅のファスニング部材3の把持部37が挿通されているため、ファスニング部材3が引っ張られて伸縮性幅広部33がネックインした場合にも、引き出し口52が、おむつ1の厚み方向に大きく開くといったことが防止される。そのため、引き出し口52が大きく開くことによるおむつの外観が悪化や、引き出し口が他のものに引っかかり易くなる等の不都合を防止することができる。
【0024】
また、把持部37が、伸縮性幅広部33よりもおむつ長手方向の長さが短いファスニング部材引き出し口52に挿通されているため、把持部37における引き出し口52から延出する部分がふらつきにくく安定性が高い。そのため、ファスニング部材3の手による把持や、ファスニング部材3の止着部31の被止着領域4への止着等を素早く行うことができ、装着容易の点からも好ましい。
【0025】
本実施形態のおむつ1においては、伸縮性幅広部33よりもおむつ長手方向の長さの短いファスニング部材引き出し口52が、図2及び図3(b)に示すように、おむつ本体を構成する2枚のシート24,22を、把持部37を挟む両側で接合することによって形成されている。この接合によって、前述した上方固定部53u及び下方固定部53dが、把持部37を挟む上下両側に形成されている。シート24,22の接合には、図3(b)に示すように、接着剤53のみを用いても良いが、接着剤53による接合に代えて熱融着により接合させても良いし、接着剤53による接合部にドット状の熱エンボス加工を施す等、接着剤と熱融着とを併用することもできる。熱融着(接着剤を併用する場合も含む)により接合することで、上方固定部53u及び下方固定部53dを、伸縮性幅広部33における把持部37から上下に張り出した部分36u,36dが突き当たっても破損しにくいものとすることができ、伸縮性幅広部33がファスニング部材引き出し口52から露出することがより確実に防止される。
【0026】
また、第1実施形態のおむつ1においては、シート状の伸縮性部材35aのおむつ幅方向外方側の端部に、把持部形成シート37aのおむつ長手方向に拡大した端部が接合されている。そのため、伸縮性幅広部33における把持部37から上下に張り出した部分36u,36dの剛性が高められ、ファスニング部材引き出し口52の上下に位置する部分53u,53dに突き当たったときに変形しにくいため、伸縮性幅広部33がファスニング部材引き出し口52から露出することがより確実に防止される。
【0027】
上述した一又は二以上の効果がより確実に奏されるようにする観点から、把持部37のおむつ長手方向の長さL2(図2参照)は、伸縮性幅広部33のおむつ長手方向の長さL1(図2参照)の30〜70%、特に40〜60%であることが好ましい。また、伸縮性幅広部33における把持部37の上縁部37u又は下縁部37dから上下に張り出した張り出し部36u,36dそれぞれのおむつ長手方向の長さは、伸縮性幅広部33のおむつ長手方向の長さL1(図2参照)の15〜35%、特に25〜30%であることが好ましい。
【0028】
また、ファスニング部材3に充分な伸縮性を確保する観点から、伸縮性幅広部33、特に伸縮部35のおむつ長手方向の長さL1(図2参照)は、30〜120mm、特に40〜60mmであることが好ましい。
同様の観点から、伸縮部35のおむつ幅方向の長さL4(図2参照)は、20〜100mm、特に30〜60mmであることが好ましい。また、おむつ幅方向Yにおける、伸縮性幅広部33と、上方固定部53u及び下方固定部53dとの間の長さL5は、30〜70mm、特に40〜60mmであることが好ましい。前記長さL5は、収容部5のおむつ幅方向の長さL6の30〜70%、特に40〜60%であることが好ましい。
【0029】
また、把持部37の、引き出し口52から突出する長さL7(図2参照)は、25〜50mm、特に35〜45mmであることが好ましい。
上記の各長さは、おむつ1を着用者に装着する前の状態(伸縮性幅広部33を伸長させていないおむつ自然状態,図2参照)において測定する。
【0030】
使い捨ておむつ1の各部の形成材料について説明する。
シート状の伸縮性部材35aとしては、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来使用されている各種のシート状の伸縮性部材を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2008−179128号公報に記載の伸縮シート、特開2007−138374号公報に記載の伸縮シート等を用いることができる。
特に好ましいのは、収縮状態においても平坦状のものであり、例えば、エラストマー材料からなる中間層の両面に伸長可能な繊維層が結合しているものである。エラストマー材料からなる中間層としては、エラストマー材料からなるフィルム、ネット、糸状体(弾性糸)のマット状物、平行に配した複数本の糸状ないし紐状体等が挙げられる。中間層に結合させる伸長可能な繊維層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維(好ましくは熱可塑性繊維,複数成分からなる複合繊維でも良い。)から形成した不織布や他の繊維シート等に伸長性を持たせたものが挙げられ、それらを中間層に結合させる方法としては、熱融着等が挙げられる。エラストマー材料としては、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、天然ゴム等が挙げられる。不織布等に伸長性を持たせる方法としては、開孔やスリットの形成、延伸による部分的な破断等が挙げられる。これらの加工、特に延伸による部分的な破断は中間層に結合した後に行っても良い。
【0031】
把持部形成シート37a、基端部形成シート32aとしては、ファスニングテープの基材に従来使用されている各種のもの等を使用することができ、例えば、各種の不織布、樹脂フィルム、不織布と樹脂フィルムとの積層体等を用いることができる。
表面シート21、裏面シート22、立体ガード形成用シート24,弾性部材25,26等としては、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく使用することができ、例えば、表面シート21としては、各種製法による液透過性の不織布や開孔フィルム、裏面シート22としては、透湿性若しくは非透湿性の樹脂フィルム、撥水性の不織布、不織布と樹脂フィルムとの積層体等が挙げられる。吸収体23としては、粉砕パルプ等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに高吸水性ポリマーの粒子等を保持してなる吸収性コアを、ティッシュペーパや透水性の不織布等からなるコアラップシートで被覆してなるもの等を用いることができる。
【0032】
次に、本発明の第2〜第4実施形態の使い捨ておむつについて説明する。第2〜第4実施形態の使い捨ておむつについては、第1実施形態のおむつ1と異なる点について説明し、同様の点については同様の符号を付して説明を省略する。第2〜第4実施形態について特に説明しない点は、第1実施形態と同様である。
【0033】
第2実施形態のおむつにおけるファスニング部材3Aにおいては、図6に示すように、伸縮性幅広部33に、おむつ本体を構成するシート22との接着力を低減させるコーティング剤34が塗布されている。
伸縮性幅広部33にコーティング剤34を塗布しておくことで、該伸縮性幅広部33と接するシート22に接着剤51を塗布しておいても、シート22と伸縮性幅広部33との間が接着されないようにしたり、ファスニング部材3Aを引っ張ることにより、シート22と伸縮性幅広部33とが接合が容易に解除されるようにしたりすることができる。
【0034】
第2実施形態のおむつは、例えば図7に示す方法で効率的に製造することができる。図7に示す製造方法は、図7(c)に示すように、裏面シート22に対して、接着剤51を、おむつ長手方向に対応する方向X’に連続して塗工する工程、図7(b)に示すように、伸縮性幅広部33のシート22側の面にコーティング剤34(図6参照)を塗工してあるファスニング部材3Aを、そのコーティング剤を塗工した部分が裏面シート22の接着剤塗布領域と重なるように、該裏面シート22上に配置する工程、及び図7(a)に示すように、ファスニング部材3A上に立体ガード形成用シート24を重ね、伸縮性幅広部33からおむつ幅方向外方側に離れた位置における把持部37を挟む両側に、熱エンボス加工等によるシート22,24どうしの融着部54を形成する工程を具備する。
このようにして製造した第2実施形態のおむつにおいては、伸縮性幅広部33とシート22との間が接合されないか、接合されていても、ファスニング部材3Aを引っ張ることにより、その接合が容易に剥離する。第2実施形態のおむつにおけるファスニング部材3Aは、伸縮性幅広部33が融着部54に突き当たることで、伸縮性幅広部33が、おむつ本体2の側縁に位置するファスニング部材引き出し口52から露出することがない。
コーティング剤34としては、シリコーンオイルやワセリン等を用いることができる。
【0035】
第3実施形態のおむつは、図8(a)に示す平面視形状を有し、第4実施形態のおむつは、図8(b)に示す平面視形状を有するが、何れも、図9に示すように、ファスニング部材3の基端部32が、吸収体23と裏面シート22の間に接着剤51を介して固定されている。伸縮性幅広部33が、吸収体23と重なる位置に配置されることにより、着用者の体に吸収体23をより確実に沿わせることができ、排泄物の漏れの防止性能が向上する。また、伸縮性幅広部33(特に伸縮性幅広部33の伸縮部材35a)が、吸収体23とは接合されていないため、伸縮部材が伸縮した際にも、吸収体23に皺が生じることがなく、装着感の悪化や、排泄物の漏れを抑制できる。
【0036】
第1実施形態のおむつにおいては、吸収体23の周縁から延出した表面シート21と立体ガード形成用シート24との間に収容部5が形成されていたが、第3及び第4実施形態のおむつにおいては、裏面シート22と、該裏面シート22と対向する吸収体23、表面シート21及び立体ガード形成用シート24との間に収容部5が形成されている。
第3及び第4実施形態のおむつにおいても、第2実施形態のおむつと同様に、伸縮性幅広部33にコーティング剤34を塗布しても良い。
【0037】
本発明の使い捨ておむつにおいては、ファスニング部材の伸縮性幅広部33が着色されていることが好ましい。ここでいう着色は、伸縮性幅広部33の存在、特に伸縮部35の存在を、おむつ内面又は外面側から視覚的に認識できるようにする着色である。着色は、伸縮性幅広部33の伸縮部35のみに施しても良く、また、伸縮性幅広部33のおむつ内面側の面及びおむつ外面側の面のいずれに施しても良い。また、着色は、赤、青、緑、桃色、紫のような有彩色に着色することが好ましい。
【0038】
また、伸縮性幅広部33を着色するのに代えて又は伸縮性幅広部33を着色すると共に、伸縮性幅広部33(特に伸縮部35)又は該伸縮性幅広部33と重なるシート(例えば、立体ガード形成用シート24、裏面シート22)等に、伸縮性幅広部33の存在を視覚的に認識させる図形又は記号を表示することも好ましい。伸縮性幅広部33の存在を視覚的に認識させる図形又は記号は、伸縮する部材の存在を認識させるものであれば足り、幅広であることを認識させる必要はない。
【0039】
図10は、伸縮部35のおむつ内面側の面に、3本の矢印を印刷により表示した例あり、その3本の矢印は、伸縮部35を被覆するシート24を通して、おむつ内面側から視認可能である。伸縮性幅広部33の存在を視覚的に認識させる図形又は記号は、そのように、伸縮性幅広部33のおむつ内面側の面に表示するのに代えて、伸縮性幅広部33のおむつ外面側の面に表示しても良いし、伸縮性幅広部33のおむつ内面側の面を被覆するシート24や、伸縮性幅広部33のおむつ外面側の面を被覆するシート22に表示しても良い。また、伸縮性幅広部33の存在を視覚的に認識させる図形又は記号は、図10に示す3本の矢印のように、伸縮性幅広部33(特に伸縮部35)の伸縮方向を示すものであることが好ましく、また、伸縮性幅広部33(特に伸縮部35)のおむつ長手方向の大まかな長さを推認させるものであることが好ましい。
【0040】
収容部5に収容されて外部に露出しない伸縮性幅広部33の存在を、伸縮性幅広部33の着色や、図形又は記号の表示により、外部から視認可能にすることにより、親や介護者がおむつを着用者に装着させる際に、ファスニングテープが伸縮することを認識しやすくなり、装着時の操作性及び、着用時のフィット性が向上する。
【0041】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に制限されず、種々の変更が可能である。
例えば、機械的面ファスナーのオス部材からなる止着部31を止着させる被止着領域4は、おむつ本体の外面の全体又は一部を係合性に富む不織布から形成し、その不織布の全体又は一部を被止着領域4としても良い。また、止着部31を、機械的面ファスナーのオス部材から形成するのに代えて、粘着剤からなる止着部31を設けることもできる。
また、ファスニング部材のおむつ内面側の面を被覆するシートは、液透過性の表面シートであっても良い。例えば、本発明の使い捨ておむつは、おむつ本体の内面側の全域が、液透過性の表面シートからなり、該表面シートと裏面シートとの間に、ファスニング部材の収容部が形成されていても良い。また、ファスニング部材を挟む2枚のシートは、従来のおむつにおける、ファスニング部材以外(おむつ本体)を構成する任意のシートとすることができる。また、表面シート21の側部に一部を重ねて接合されて、おむつの側方からの防漏性を高めるシートとして、立体ガード形成用シート24に代えて、起立させるための弾性部材25を有しないサイドシートを有していても良い。
また、伸縮性幅広部は、その全域が伸縮部であっても良い。
【0042】
また、把持部形成シート37aは、シート状の伸縮性部材35aとの連結部に、おむつ長手方向の寸法が拡大した幅広部分を有しなくても良い。
【0043】
また、上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 使い捨ておむつ
2 おむつ本体
21 表面シート
22 裏面シート
23 吸収体
24 立体ガード形成用シート
3 ファスニング部材
3,3A ファスニング部材
31 止着部
32 基端部
32a 基端部形成シート
33 伸縮性幅広部
34 コーティング剤
35 伸縮部
35a シート状の伸縮性部材
36u 上方張り出し部
36d 下方張り出し部
37 把持部
37a 把持部形成シート
4 被止着領域
5 収容部
51 接着剤
52 ファスニング部材引き出し口
53u 上方固定部
53d 下方固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おむつ本体の背側部分の両側部に、止着部を備えたファスニング部材を有する使い捨ておむつであって、
前記ファスニング部材は、前記おむつ本体に固定された基端部と、該おむつ本体に形成された収容部内に収容された伸縮性幅広部と、該伸縮性幅広部よりおむつ長手方向の長さが短い把持部とを有しており、
前記伸縮性幅広部は、前記収容部内においておむつ幅方向に伸縮可能であり、前記把持部は、前記収容部から延出した部分に前記止着部を有しており、
前記収容部は、おむつ幅方向外方側の端部に、おむつ長手方向の長さが前記伸縮性幅広部より短いファスニング部材引き出し口を有し、前記把持部が、該ファスニング部材引き出し口に挿通されている、使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記ファスニング部材引き出し口が、前記おむつ本体を構成する2枚のシートを、前記把持部を挟む両側で接合することにより形成されている、請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記2枚のシートが、前記把持部を挟む両側において熱融着により接合されている、請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記伸縮性幅広部に、前記おむつ本体を構成するシートとの接着力を低減させるコーティング剤が塗布されている、請求項1〜3の何れか1項記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記伸縮性幅広部が着色されているか、又は前記伸縮性幅広部の存在を視覚的に認識させる図形若しくは記号が表示されている、請求項1〜4の何れか1項記載の使い捨ておむつ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−70735(P2013−70735A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210353(P2011−210353)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】